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特開2023-10480ゴム0-リングシールとバックアップリングシールとを一体化したあり溝適合超低ガス透過率複合シール
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  • 特開-ゴム0-リングシールとバックアップリングシールとを一体化したあり溝適合超低ガス透過率複合シール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010480
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ゴム0-リングシールとバックアップリングシールとを一体化したあり溝適合超低ガス透過率複合シール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
F16J15/10 T
F16J15/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021132080
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】509083692
【氏名又は名称】株式会社EM応用技術研究所
(72)【発明者】
【氏名】三木 正晴
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA01
3J040CA02
3J040EA16
3J040FA05
3J040HA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ゴム0-リングシールの取扱い性を損なうことなくそのシール性能を向上させるバックアップリングシールとゴム0-リングシールとを一体化した溝適合超低ガス透過率複合シールを提供する。
【解決手段】ゴム0-リングシール203とバックアップリングシール103のように、バックアップリングシール103の凹部をあり溝形状とし、バックアップリングシール103とゴム0-リングシール203とが構造上で一体化するようにしたあり溝適合超低ガス透過率複合シール。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密着可能な一定幅かつ一定厚の長尺材の表面の長さ方向に一定形状の凹部を全長に施したバックアップリングシールとその凹部に密着する凸部をもつゴムO-リングシールとを一体化したあり溝適合超低ガス透過率複合シール
【請求項2】
密着可能な一定幅かつ一定厚の長尺材の両側の表面の長さ方向に一定形状の凹部を全長に施したバックアップリングシールとその片側の凹部に密着する凸部をもつゴムO-リングシールとを一体化したあり溝適合超低ガス透過率複合シール
【請求項3】
請求項1記載のゴム0-リングシールと密着するバックアップリングシールにおいてバックアップリングシールの凹部の形状があり溝形状になっているあり溝適合超低ガス透過率複合シール
【請求項4】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3記載のあり溝適合超低ガス透過率複合シールを用いた成膜装置
【請求項5】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3記載のあり溝適合超低ガス透過率複合シールを用いたエキシマレーザ装置
【請求項6】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3記載のあり溝適合超低ガス透過率複合シールを用いた分析装置
【請求項7】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3記載のあり溝適合超低ガス透過率複合シールを用いた真空チャンバー
【請求項8】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3記載のあり溝適合超低ガス透過率複合シールを用いた密封チャンバー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム0-リングシールの取扱い性を損なうことなくそのシール性能を向上させるバックアップリングシールとゴム0-リングシールとを一体化したあり溝適合超低ガス透過率複合シールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置、あるいは、分析装置等の真空を利用する機器において、メタルシールと比べて、その取扱い性が容易であること、価格が安価であること、相手シール面と馴染みやすいこと、相手シール面との熱膨張率の違いによるシール面の変位に強いこと等から、ゴム0-リングシールを利用している場合が多々あるが、近年の半導体製造プロセスにおける更なる微細化、あるいは、計測や分析における更なる高精度化等のために、ゴム0-リングシールの内部を拡散透過する大気中の酸素ガスや水成分ガスあるいはゴム0-リングシール自身から放出される高分子量ガスが、真空チャンバー内環境を仕様内に維持する障害となってきている。即ち、その仕様を達成するには、ゴム0-リングシール装着部分のメタルシール化への設計変更、あるいは、真空チャンバー内へ導入するプロセスガス量や被測定ガス量または真空チャンバー内ガスを排気する真空ポンプの排気速度を増大させること等が必要になってきている。また、真空装置ではないが、チャンバー内のあるガス分子の解離と結合によりレーザ発光させるエキシマレーザにおいても、チャンバー内へ侵入する酸素ガスや水成分ガス等を如何に抑制するかがレーザ出力安定の課題になっている。
【先行技術文献】
【0003】
このような問題を解決するために、特願2019-144034では、ゴム0-リングシール溝内に収まる形状のバックアップリングシールをゴム0-リングシールの外周側あるいは内周側に配し、チャンバー部材表面とシール表面間におけるシール性能はゴム0-リングシールで従来通りに実現し、ゴム0-リングシールの内部を拡散透過するガス量の低減は、バックアップリングシールをゴム0-リングシールの場合よりガス透過率が十分低い材質とし、しかもその表面とチャンバー部材表面間におけるシール性能をゴム0-リングシールの悪くとも10~30%程度はあるような表面状態にすること、更にはゴム0-リングシールとの接触面になる表面は充分にシール可能な表面状態であることにより、両シールを密着させた複合シールとし、全体でシール性能を向上させる事を提案している。また、特願2019-239715では安価に製造できるバックアップリングシールの形状を更には特願2020-100469では複雑な形状のゴム0-リングシール溝に対応可能な組み合わせ形状のバックアップリングシールを提案している。
【文献】
【0004】
【出願特許文献1】
特願2019-144034
【出願特許文献2】
特願2019-239715
【出願特許文献3】
特願2020-100469
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出願特許文献1では、ゴム0-リングシールのガス透過率を低減するためのバックアップリングシールのキーポイントを説明しその要件を満たすバックアップリングシールの例を図示しているが、その製造方法には言及していない。また、出願特許文献2では、シート材から成形可能な長尺形状のバックアップリングシールを安価で製造できる形状として提案しているが、短い曲率の円弧形状には対応できない。出願特許文献3では、短い曲率の円弧を含む複雑なゴム0-リングシール溝形状のゴム0-リングシール用のバックアップリングシールを組み合わせ型で対応する事を安価で製造する手段として提案している。しかしながら、それらはシール溝断面形状が一般的な矩形断面形状の場合を想定したもので、半導体製造装置等でシール部の開閉時のゴム0-リングシールの粘着防止等のために用いられているあり溝断面形状の場合には適用しにくい不都合がある。本発明はこの不都合を解消するあり溝適合超低ガス透過率複合シールに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、特願2019-144034から引用した本特許図1に示すバックアップリングシール100、即ち、溝内に収まる形状のバックアップリングシール100をゴム0-リングシール200の外周側に配し、真空チャンバー表面300とシール表面間におけるシール性能はゴム0-リングシール200で従来通りに実現し、ゴム0-リングシール200の内部を拡散透過するガス量の低減はバックアップリングシール100をゴム0-リングシール200の場合よりガス透過率が十分低い材質とし、しかもその表面と真空チャンバー表面300間におけるシール性能をゴム0-リングシール200の悪くとも10~30%程度はあるような表面状態にすること、更にはゴム0-リングシール200との接触面になる表面は充分にシール可能な表面状態であることにより、両シールを密着させた複合シールとして、全体でシール性能を向上させるためのバックアップリングシール100とゴム0-リングシール200とを一体化した超低ガス透過率複合シールを矩形断面形状のシール溝向け超低ガス透過率複合シール構造とすると、図2に示すようなあり溝断面形状、あるいは図3に示すような片あり溝断面形状に適合する超低ガス透過率複合シール構造は、例えば、従来から一般的に用いられている図4のゴム0-リングシール201あるいは図5のゴム0-リングシール202とバックアップリングシールとの組み合わせでできる超低ガス透過率複合シールでなければならない。従来のゴム0-リングをそのまま利用するには、図6のバックアップリングシール101にゴム0-リングシール形状にあわせた逃げの凹部111をあるいは、図7のバックアップリングシール102にゴム0-リングシール形状にあわせた逃げの凹部112を形成しなければならない。さらに、図7の片あり溝の場合、バックアップリングシールが片あり溝に固定されるように、バックアップリングシールの外周部にも122のような凹部を形成することが必要になる。また、ゴム0-リングシールの断面形状を変更できるなら、図8に示すゴム0-リングシール203とバックアップリングシール103のように、バックアップリングシール103の凹部をあり溝形状とし、バックアップリングシール103とゴム0-リングシール203とが構造上で一体化するようにしたあり溝適合超低ガス透過率複合シールは低価格化と高性能化を両立させるには最適な構造である。
【発明の効果】
【0007】
バックアップリングシールが、従来のゴム0-リングシール溝に収まるような形状であるので、従来のシール部構造を設計変更することなく適用でき、しかも従来のゴム0-リングシールの外側にバックアップリングシールを収めることにより、チャンバー内のガスと接している部分は従来と同様のゴム0-リングシールとなり、チャンバー内のガスとゴム0-リングシール表面との反応やその表面から発生するガスの影響等は従来と全く変わらずに、大気中の酸素ガスや水成分ガス等のチャンバー内への侵入速度を大幅に減少させる効果があり、チャンバー内の酸素ガス濃度や水成分ガス濃度の上昇を嫌う真空チャンバーまたは真空装置、例えば成膜装置用のあり溝適合超低ガス透過率複合シールとして使える。
【0008】
また、真空装置ではなく、大気中の酸素ガスや水成分ガス等のチャンバー内への侵入を嫌うエキシマレーザ装置の密封チャンバー用のあり溝適合超低ガス透過率複合シールとして使える。
【0009】
また、大気側からゴム0-リングシールに侵入するガスが減少するのに従い、ゴム0-リングシールから発生するガス放出速度も低減されるので、高分子量のガスの侵入を嫌う分析装置およびその真空ポンプ用のあり溝適合超低ガス透過率複合シールとして使える。
【0010】
また、バックアップリングシール101、102、103、の形状はシート材から長尺状にカットし、その表面の長尺方向に一定形状の凹部を最適に成形した工具で削り出すことで用意に製作可能なため、安価で量産可能なあり溝適合超低ガス透過率複合シール構造用のバックアップリングシールとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】特願2019-144034の超低ガス透過率複合シールの装着断面
図2】あり溝断面形状
図3】片あり溝断面形状
図4】あり溝断面形状用のゴム0-リングシール装着断面
図5】片あり溝断面形状用のゴム0-リングシール装着断面
図6】あり溝適合超低ガス透過率複合シールの装着断面形状
図7】片あり溝適合超低ガス透過率複合シールの装着断面形状
図8】低価格あり溝適合超低ガス透過率複合シールの装着断面形状
【発明を実施するための形態】
【実施例0012】
図1は特願2019-144034のバックアップリングシールを挿入した超低ガス透過率複合シールの装着断面を示す。この図で本発明のもととなる超低ガス透過率複合シールの動作機構を説明する。実線→経路Eは外側に配置したバックアップリングシール100の表面+ゴム0-リングシール200の表面とフランジ表面300間を通過するガス経路である。ここで、バックアップリングシール100の表面のシール効果がゴム0-リングシール200のそれより劣っていても、ゴムO-リングシール200で経路Eのシールをするため、結果的にはフランジ表面300に対するシール性能は低下しない。一方、図1における破線→経路Fと一点鎖線→経路Gのガス透過量を低減することが肝要である。ここで、経路Gは、ゴム0-リングシール200の表面にガスが侵入する前にガス拡散係数がゴム0-リングシール200の1/100以下のバックアップリングシール100を透過するので、その透過経路長がゴム0-リングシール200の1/10しかなくてもゴム0-リングシール200の大気側表面へのガス侵入数はそれが大気圧にさらされていた従来の場合の1/10以下になる。また経路Fは、たとえバックアップリングシール100の表面のシール性能がゴム0-リングシール200の表面のシール性能の10~30%程度であってもバックアップリングシール100の表面とフランジ表面300の間を通過したガスのみがゴム0-リングシール200の大気側表面に到達し、しかも、その大気側表面の大部分はバックアップリングシール100の表面と密着しているので、ゴム0-リングシール200の大気側表面に侵入するガス数は、それが大気圧にさらされていた従来の場合と比べるとその侵入ガス数は1/10よりはるかに少量となる。従って、本超低ガス透過率複合シールは、ゴム0-リングシール200のみでシールする場合の1/10以下のガス透過率となる。
【0013】
図2はあり溝形状の断面図、図3は片あり溝形状の断面図である。また図4の201はあり溝形状用のゴム0-リングシールの断面形状の例で、図5の202は片あり溝形状用のゴム0-リングシールの断面形状の例である。
【0014】
図6は本発明のあり溝適合超低ガス透過率複合シールの一つの実施例の装着断面形状図である。バックアップリングシール101にゴム0-リングシール201の形状に合わせた凹部111をバックアップリングシール101のゴム0-リングシール側の表面に形成し、ゴム0-リングシールとバックアップリングシールとを密着・一体化することにより、あり溝適合超低ガス透過率複合シールとなる。
【0015】
図7は本発明の片あり溝断面形状に適合するあり溝適合超低ガス透過率複合シールの一つの実施例の装着断面形状図である。バックアップリングシール102にゴム0-リングシール202の形状に合わせた凹部112をバックアップリングシール102のゴム0-リングシール側の表面に形成し、ゴム0-リングシールとバックアップリングシールとを密着・一体化し、さらにあり溝にバックアップリングシール102が固定されるように、バックアップリングシール102のゴム0-リングシール202と反対側の表面に凹部122を形成することにより、あり溝適合超低ガス透過率複合シールが片あり溝から外れないようにしたあり溝適合超低ガス透過率複合シールである。
【0016】
図8は本発明の低価格あり溝適合超低ガス透過率複合シールの一つの実施例の装着断面形状図である。バックアップリングシール103にゴム0-リングシール203の形状に合わせたあり溝様の凹部をバックアップリングシール103のゴム0-リングシール203側の表面に形成し、ゴム0-リングシール203とバックアップリングシール103とを密着・一体化し、バックアップリングシール103もあり溝から外れないようにしたあり溝適合超低ガス透過率複合シールである。
【産業上の利用可能性】
【0017】
中古の成膜装置の性能向上を目的とするアップグレイド整備の際に、図6図7図8に示したあり溝適合超低ガス透過率複合シールを利用することにより、排気速度の大きな真空ポンプに変更することなく、真空チャンバー内に微量ながら侵入する酸素ガス、水成分ガス等の大気成分ガスの濃度を低くすることが可能になる。また、メタルシールを使用したくても使用できなかった箇所、例えばセラミック電極とアルミ製部材間のゴム0-リングシールのシール性能をメタルシールとほぼ同等まで向上させることが可能になる。
【0018】
図6図7図8に示したあり溝適合超低ガス透過率複合シールを利用することにより、チャンバー内のガスと接している部分は従来と同様のゴム0-リングシールとなり、チャンバー内のガスとゴム0-リングシール表面との反応やその表面から発生するガスの影響等は従来と全く変わらずに、大気中の酸素ガスや水成分ガス等のチャンバー内への侵入を大幅に減少させる効果があり、チャンバー内の酸素ガス濃度や水成分ガス濃度の上昇を嫌う真空チャンバー、例えば成膜装置用のあり溝適合超低ガス透過率複合シールとして使える。
【0019】
図6図7図8に示したあり溝適合超低ガス透過率複合シールを利用することにより、ゴム0-リングシール仕様で設計されたエキシマレーザ装置の密封チャンバーにおけるそのシール部からチャンバー内に侵入する酸素ガス、水成分ガス等のガス侵入速度を低減できるため、チャンバー内のガス交換頻度を低減したエキシマレーザ装置を実現できる。
【0020】
また、ゴム0-リングシールから発生するガス放出速度も低減されるので、高分子量のガスの侵入を嫌う分析装置およびその真空ポンプ用のあり溝適合超低ガス透過率複合シールとして使える。
【符号の説明】
【0021】
100、101、102、103 バックアップリングシール
111、112、113 ゴム0-リングシールの形状に合わせたバックアップリングシールの凹部
200、201、202、203 ゴムO-リングシール
300 フランジ表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8