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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104803
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】画像投影装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20230721BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006012
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】安達 玄紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 英明
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA13
2H199DA14
2H199DA15
2H199DA17
2H199DA18
2H199DA27
2H199DA29
2H199DA30
2H199DA32
2H199DA48
3D344AA08
3D344AA19
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】外光による画像照射部の温度上昇を抑制することが可能な画像投影装置を提供する。
【解決手段】虚像を表示するための表示部に対して投影画像を照射する画像投影装置であって、画像光を照射する画像照射部(20)と、表示部を介して画像光を投影画像として視点方向に照射する投影光学部(40)と、画像照射部(20)から表示部の間の画像光の光路上に配置され、光を透過する透過モードと光を遮断する遮断モードを切り替えるシャッター部(30)と、を備える画像投影装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚像を表示するための表示部に対して投影画像を照射する画像投影装置であって、
画像光を照射する画像照射部と、
前記表示部を介して前記画像光を前記投影画像として視点方向に照射する投影光学部と、
前記画像照射部から前記表示部の間の前記画像光の光路上に配置され、光を透過する透過モードと光を遮断する遮断モードを切り替えるシャッター部と、を備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記画像照射部は、点灯と消灯を繰り返すパルス駆動によって前記画像光を照射し、
前記シャッター部は、前記パルス駆動の点灯期間中に前記透過モードが選択され、前記パルス駆動の消灯期間中に前記遮断モードが選択されることを特徴とする画像投影装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像投影装置であって、
前記シャッター部は、透光部と遮光部を備えた回転体と、前記回転体を回転駆動する駆動部とを備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記シャッター部は、前記画像照射部と前記投影光学部の間に配置されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項5】
請求項1から3の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記投影光学部は、前記光路上の中間結像位置で前記画像光を結像し、
前記シャッター部は、前記中間結像位置に配置されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記画像照射部は、第1画像を照射する第1照射領域と、第2画像を照射する第2照射領域を備え、
前記シャッター部は、前記第1照射領域と前記第2照射領域のそれぞれに対して、前記透過モードと前記遮断モードが選択されることを特徴とする画像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置に関し、特に虚像を表示するための表示部に対して投影画像を照射する画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両内に各種情報を表示する装置として、アイコンを点灯表示する計器盤が用いられている。また、表示する情報量の増加とともに、計器盤に画像表示装置を埋め込むことや、計器盤全体を画像表示装置で構成することも提案されている。
【0003】
しかし、計器盤は車両のフロントガラス(ウィンドシールド)より下方に位置しているため、計器盤に表示された情報を運転者が視認するには、運転中に視線を下方に移動させる必要があるため好ましくない。そこで、フロントガラスに画像を投影して、運転者が車両の前方を視認したときに情報を読み取れるようにするヘッドアップディスプレイ(以下HUD:Head Up Display)も提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-119248号公報
【特許文献2】特開2019-119262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来のHUD装置では、表示部であるウィンドシールドを介して投影画像を照射するため、ウィンドシールドの下方から上方に向けて光を照射するための投影光学系を備えている。そのため、太陽光等の外光がウィンドシールドの上方から入射した場合には、画像を表示する画像照射部まで投影光学系を介して外光が到達してしまう。このとき、投影光学系を介して画像照射部まで到達する外光は、投影光学系の光学パワーによって集光され、温度上昇による劣化を引き起こすという問題があった。
【0006】
このような温度上昇を抑制するために、投影光学系の光路上に波長カットフィルターを配置して、外光に含まれる赤外光や紫外光をカットすることも提案されている。しかし、外光に含まれる可視光が波長カットフィルターを透過して表示部まで到達することは避けられず、波長カットフィルターの光透過率が100%ではないため、表示部からの照射光も一部減衰されてしまい画像投影における輝度低下を引き起こす可能性もあった。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、外光による画像照射部の温度上昇を抑制することが可能な画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の画像投影装置は、虚像を表示するための表示部に対して投影画像を照射する画像投影装置であって、画像光を照射する画像照射部と、前記表示部を介して前記画像光を前記投影画像として視点方向に照射する投影光学部と、前記画像照射部から前記表示部の間の前記画像光の光路上に配置され、光を透過する透過モードと光を遮断する遮断モードを切り替えるシャッター部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このような本発明の画像投影装置では、シャッター部で光の透過と遮断を切り替えるため、画像照射部からの画像光を透過して画像投影をする透過モードと、外光を遮断して画像照射部の温度上昇を抑制する遮断モードを適宜選択でき、外光による画像照射部の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記画像照射部は、点灯と消灯を繰り返すパルス駆動によって前記画像光を照射し、前記シャッター部は、前記パルス駆動の点灯期間中に前記透過モードが選択され、前記パルス駆動の消灯期間中に前記遮断モードが選択される。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記シャッター部は、透光部と遮光部を備えた回転体と、前記回転体を回転駆動する駆動部とを備える。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記シャッター部は、前記画像照射部と前記投影光学部の間に配置されている。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記投影光学部は、前記光路上の中間結像位置で前記画像光を結像し、前記シャッター部は、前記中間結像位置に配置されている。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記画像照射部は、第1画像を照射する第1照射領域と、第2画像を照射する第2照射領域を備え、前記シャッター部は、前記第1照射領域と前記第2照射領域のそれぞれに対して、前記透過モードと前記遮断モードが選択される。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、外光による画像照射部の温度上昇を抑制することが可能な画像投影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る画像投影装置100の構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る画像投影装置100の構成例を示す模式断面図である。
図3】第1実施形態に係るシャッター部30の一例を示す模式平面図である。
図4】シャッター部30による透過モードと遮断モードを説明する模式図であり、図4(a)は画像照射部20における表示領域を示し、図4(b)は透過モードを示し、図4(c)は遮断モードを示している。
図5】第1実施形態の変形例におけるタイミングチャートであり、図5(a)はシャッター部30の開閉タイミングを示し、図5(b)は光源部10の点消灯を示している。
図6】第2実施形態に係るシャッター部30の構成と画像照射部20の関係を示す模式図であり、図6(a)は全透過モードを示し、図6(b)は遠方遮断モードを示し、図6(c)は全遮断モードを示し、図6(d)は近方遮断モードを示している。
図7】第3実施形態に係る画像投影装置100の構成例を示す図であり、図7(a)は全体の模式断面図であり、図7(b)はシャッター部30の一例を示す模式斜視図である。
図8】第4実施形態に係るシャッター部30の構成例を示す模式図であり、図8(a)は略矩形型の構成例を示し、図8(b)は一部の領域にのみ遮断モードを設ける構成例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。図1は、本実施形態に係る画像投影装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように画像投影装置100は、光源部10と、画像照射部20と、シャッター部30と、投影光学部40と、制御部50とを備えている。画像投影装置100から投影された光は図示を省略するウィンドシールド(表示部)を介して運転者の視点位置に照射される。
【0018】
光源部10は、画像照射部20に対して光を照射する光源である。光源部10からの発光は、常時発光であってもよいが、後述するように制御部50からの制御信号に従ってPWM(Pulse Width Modulation)制御されるものであることが好ましい。光源部10の具体的な構成は限定されないが、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や有機EL素子等を用いることができる。
【0019】
画像照射部20は、制御部50からの画像情報に基づいて、画像を含んだ光(画像光)を照射する部分である。画像照射部20の具体的構成は限定されず、例えば液晶表示装置、有機EL表示装置、レーザ光源と光変調素子の組み合わせ等の従来公知のものを用いることができる。図1に示した例では、液晶表示装置の背面側から光源部10により光を照射するものを用いている。後述するように、画像照射部20は、近方画像と遠方画像をそれぞれ表示する近方表示領域22と遠方表示領域23を含んで構成されていてもよい。
【0020】
シャッター部30は、制御部50からの制御信号に応じて、光を透過する透過モードと光を遮断する遮断モードを切り替える部分である。シャッター部30の構成は限定されないが、電気信号に応じて光の透過率を変更できる液晶シャッターや、光の反射方向を切り替えるデジタルミラーデバイス、開口部と遮光部を機械的に切り替える機械的シャッター等を用いることができる。シャッター部30として機械的シャッターを用いる場合には、シャッター部30の遮光板を動作させる機構と駆動部をシャッター部30に備えるとしてもよい。シャッター部30は外光を遮る遮光部を備えているため、遮った外光によってシャッター部30自体の温度が上昇しやすい。したがって、シャッター部30は熱伝導率の高い金属材料で構成することが好ましい。
【0021】
投影光学部40は、画像照射部20からの画像光を表示部であるウィンドシールドに対して照射するための光学部材である。投影光学部40には複数の光学部材を含むとしてもよく、レンズや凹面鏡、凸面鏡、プリズム等を複数備えて組み合わせるものであってもよい。また、画像照射部20からの画像光を一つの光路で同じ距離に結像させるとしてもよく、複数の光路に分岐して複数の焦点距離に結像させるとしてもよい。
【0022】
制御部50は、各部と情報通信可能に接続されて、各部を制御する部分である。制御部50の構成は限定されないが、一例として情報処理を行うためのCPU(Central Processing Unit)や、メモリ装置、記録媒体、情報通信装置等を備えるものが挙げられる。制御部50は、予め定められたプログラムに従って各部の動作を制御し、画像を含んだ情報(画像情報)を画像照射部20に送出する。
【0023】
図2は、本実施形態に係る画像投影装置100の構成例を示す模式断面図である。図2に示した例では、LEDを有する光源部10の光照射面に、画像照射部20として透過型の液晶表示装置が配置されており、画像照射部20の光出射面に対向してシャッター部30が配置されている。シャッター部30の具体的な構成例は後述して説明する。また、図2に示した例では、投影光学部40として光分岐部41と、自由曲面ミラー42と、反射鏡43と、自由曲面ミラー44を備えている。
【0024】
光分岐部41は、画像照射部20から照射される画像光を分岐する光学部材であり、少なくとも遠方表示領域23で表示される第1画像を第1画像光L1とし、近方表示領域22で表示される第2画像を第2画像光L2として分岐する。光分岐部41と画像照射部20の間にはシャッター部30が配置されている。光分岐部41は光を分岐する光学部材であれば構造は限定されず、プリズムを用いるとしてもよく、反射鏡で光の入射角と反射角を異ならせる等の手法を用いるとしてもよい。図2に示した例では光分岐部41としてプリズムを用い、プリズムを画像照射部20の遠方表示領域23に重ねて配置している。
【0025】
ここで、光分岐部41を画像照射部20に重ねて配置するとは、平面視において光分岐部41を配置した領域が画像照射部20の画像表示領域と重複することを意味している。したがって、遠方表示領域23から照射された第1画像光L1は光分岐部41によって第2画像光L2とは異なる経路で自由曲面ミラー42で反射されて自由曲面ミラー44に到達する。また、近方表示領域22から照射された第2画像光L2は反射鏡43で反射されて自由曲面ミラー44に到達する。
【0026】
自由曲面ミラー44に到達した第1画像光L1および第2画像光L2は、上方に反射されて図示しないウィンドシールドに到達し、ウィンドシールドで反射されて搭乗者の視点に入射する。投影光学部40には、必要に応じて凸レンズや凹レンズを配置して光径の拡大や縮小をするとしてもよい。また、光分岐部41、自由曲面ミラー42、反射鏡43、自由曲面ミラー44の配置や向きは図2に示されたものに限定されない。また、必要に応じて、第1画像光L1および/または第2画像光L2の光路上に、外光を遮蔽する遮蔽板を別途配置するとしてもよい。
【0027】
自由曲面ミラー42は、光分岐部41を介して第1画像光L1が入射し、第1画像光L1を自由曲面ミラー44方向に反射する光学部材である。自由曲面ミラー42の反射面は、ウィンドシールドを介して虚像として投影するために、運転者の視点方向に光径が拡大するように設計されている。ここで、視点方向に光径が拡大するとは、反射後に光径が一貫して拡大する場合だけでなく、光径が縮小して中間地点において結像した後に拡大する場合も含む。
【0028】
反射鏡43は、画像照射部20から照射された第2画像光L2が入射し、第2画像光L2を自由曲面ミラー44方向に反射する光学部材である。図2に示した例では、反射鏡43として凸面形状のミラーを示しているが、第2画像光L2を虚像として投影するために必要な光学設計されたものを用いることができ、必要に応じて凹面鏡、平面鏡、自由曲面ミラー等を用いることができる。また、反射鏡43を省略して、画像照射部20からの第2画像光L2が自由曲面ミラー44に直接入射するとしてもよい。
【0029】
自由曲面ミラー44は、第1画像光L1および第2画像光L2が入射し、ウィンドシールド方向に第1画像光L1および第2画像光L2を反射する凹面鏡である。自由曲面ミラー44の反射面は、ウィンドシールドを介して虚像として投影するために、運転者の視点方向に光径が拡大するように設計されている。ここで、視点方向に光径が拡大するとは、反射後に光径が一貫して拡大する場合だけでなく、光径が縮小して中間地点において結像した後に拡大する場合も含む。
【0030】
ウィンドシールド(図示省略)は、車両の運転席前方に設けられて可視光を透過する部分である。ウィンドシールドは、車両の内側面では自由曲面ミラー44から入射した第1画像光L1および第2画像光L2を視点方向に対して反射し、車両の外部からの光を視点方向に対して透過するため、本発明における表示部に相当している。ここでは表示部としてウィンドシールドを用いた例を示したが、ウィンドシールドとは別に表示部としてコンバイナーを用意し、自由曲面ミラー44からの光を視点方向に反射するとしてもよい。また、車両の前方に位置するものに限定されず、搭乗者の視点に対して画像を投影するものであれば側方や後方に配置するとしてもよい。
【0031】
虚像は、ウィンドシールドで反射された第1画像光L1および第2画像光L2が運転者等の視点(アイボックス)に到達した際に、空間中に結像されたように表示される画像である。虚像が結像される位置は、画像照射部20から照射された光が、自由曲面ミラー42、反射鏡43、自由曲面ミラー44およびウィンドシールドで反射された後に視点方向に進行する際の拡がり角度によって決まる。
【0032】
図2に示した画像投影装置100では、遠方表示領域23に重なる位置に光分岐部41であるプリズムを配置し、遠方表示領域23からの第1画像光L1と近方表示領域22からの第2画像光L2の経路を分岐させている。遠方表示領域23で表示された第1画像は、光分岐部41、自由曲面ミラー42、自由曲面ミラー44およびウィンドシールドを介して搭乗者の視点に到達する。また、近方表示領域22で表示された第2画像は、反射鏡43、自由曲面ミラー44およびウィンドシールドを介して搭乗者の視点に到達する。第1画像光L1および第2画像光L2は、それぞれ投影光学部40によって光径が拡大して視点に到達するため、搭乗者は第1画像光L1および第2画像光L2による第1画像および第2画像光の虚像が所定距離に結像されているように視認する。ここで、虚像の結像位置は、第1画像のほうが第2画像よりも視点位置から遠いものとなっている。
【0033】
図3は、本実施形態に係るシャッター部30の一例を示す模式平面図である。図3に示した例では、シャッター部30は略円形の平板状部材で構成された回転体であり、遮光部31と近方開口部32と遠方開口部33が設けられている。遮光部31は光を遮る材料で構成されており、遮光部31に到達した第1画像光L1、第2画像光L2および外光を遮る部分である。近方開口部32は、近方表示領域22に重なる位置に設けられた開口部分である。遠方開口部33は、遠方表示領域23に重なる位置に設けられた開口部分である。近方開口部32および遠方開口部33は、シャッター部30に設けられた開口部であるため光を透過し、本発明における透光部に相当している。ここでは透光部として開口部である近方開口部32および遠方開口部33を示しているが、シャッター部30を光透過性の材質で構成して遮光部31に光を透過しない遮光層を形成し、遮光層が形成されていない領域を透光部としてもよい。
【0034】
またシャッター部30は、駆動部としてモータ部(図示省略)を備えており、制御部50からの制御信号に従って所定の回転速度でシャッター部30を回転させ、透過モードと遮断モードが切り替え可能とされている。モータ部によるシャッター部30の回転駆動の機構は限定されず、シャッター部30の中心軸を直接モータ部の回転軸に連結するとしてもよく、何らかのギヤ機構を介して駆動させるとしてもよい。また、シャッター部30の外周に回転体を当接させて、当該回転体をモータ部で回転させることで間接的にシャッター部30を回転させるとしてもよい。また、モータ部の構成は限定されないが、ステッピングモータを用いると回転速度と位相を制御できるため、シャッター部30の透過モードと遮断モードを正確に切り替えることができる。
【0035】
図4は、シャッター部30による透過モードと遮断モードを説明する模式図であり、図4(a)は画像照射部20における表示領域を示し、図4(b)は透過モードを示し、図4(c)は遮断モードを示している。図4(a)に示すように、画像照射部20の全表示領域21中には、近方表示領域22と遠方表示領域23が異なる位置に設けられている。全表示領域21のうち画像を表示する領域は近方表示領域22と遠方表示領域23のみである場合には、遮光部材を全表示領域21に設けて近方表示領域22と遠方表示領域23に対応する開口部を形成するとしてもよい。
【0036】
近方表示領域22は、搭乗者から比較的近方の位置に結像されたように視認される近方画像を含んだ第2画像光L2を照射する領域であり、本発明における第2照射領域に相当している。遠方表示領域23は、搭乗者から比較的遠方の位置に結像されたように視認される遠方画像を含んだ第1画像光L1を照射する領域であり、本発明における第1照射領域に相当している。前述したように第1画像光L1および第2画像光L2はそれぞれ投影光学部40およびウィンドシールドで反射されて搭乗者の視点に到達する。したがって、画像照射部20上での近方表示領域22と遠方表示領域23は、ウィンドシールドでの反射後に矩形状の虚像となるように、図4(a)に示したような歪んだ形状の領域とされている。
【0037】
図4(b)に示すように、シャッター部30の透過モードでは、近方開口部32が近方表示領域22に重なり、遠方開口部33が遠方表示領域23に重なる。したがって、近方表示領域22から照射された第2画像光L2は、近方開口部32を透過して光分岐部41に入射し、自由曲面ミラー42、自由曲面ミラー44およびウィンドシールドで反射されて近方画像を虚像として結像する。同様に、遠方表示領域23から照射された第1画像光L1は、遠方開口部33を透過し反射鏡43に入射し、自由曲面ミラー44およびウィンドシールドで反射されて遠方画像を虚像として結像する。このとき、第1画像光L1および第2画像光L2は、透過率が高い近方開口部32および遠方開口部33を通過するため光量の減衰が少なく、投影される虚像の輝度を高めることができる。
【0038】
ここで、近方開口部32および遠方開口部33は、円盤形状のシャッター部30において円周方向に沿って扇形状に曲率を持った形状とされている。したがって、図4(b)に示すように、近方開口部32と遠方開口部33の曲がり方向が、近方表示領域22と遠方表示領域23の歪み方向と一致するようにシャッター部30を配置することが好ましい。また、遠方表示領域23のほうが近方表示領域22よりも大きな面積とされることが多いため、円盤形状のシャッター部30において、近方開口部32を内周側に設け、遠方開口部33を外周側に設けることが好ましい。
【0039】
図4(c)に示すように、シャッター部30の遮断モードでは、遮光部31が近方表示領域22および遠方表示領域23に重なる。したがって、ウィンドシールドから投影光学部40を介してシャッター部30に到達した外光は、遮光部31で遮られて画像照射部20には到達しない。これにより、画像照射部20に到達する外光の光量を低減して、画像照射部20の温度上昇と劣化を抑制することができる。
【0040】
上述したように本実施形態の画像投影装置100では、シャッター部30で光の透過と遮断を切り替えるため、画像照射部20からの画像光を透過して画像投影をする透過モードと、外光を遮断して画像照射部20の温度上昇を抑制する遮断モードを適宜選択でき、外光による画像照射部20の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0041】
(第1実施形態の変形例)
次に、本発明の第1実施形態の変形例について図5を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。本変形例は、省電力化のために光源部10がPWM制御によってパルス駆動されて、点灯と消灯を所定のデューティ比で繰り返す点が第1実施形態とは異なっている。図5は、本変形例におけるタイミングチャートであり、図5(a)はシャッター部30の開閉タイミングを示し、図5(b)は光源部10の点消灯タイミングを示している。
【0042】
図5(a)(b)に示したようにシャッター部30は、光源部10の消灯タイミングでは閉状態つまり遮断モードとされ、光源部10の点灯タイミングでは開状態つまり透過モードとされる。シャッター部30を図4(b)(c)に示したように透過モードと遮断モードの間で切り替えることで、図5(a)に示したように開閉が切り替えられる。このとき、制御部50からモータ部の回転を制御して、開閉の切り替えの際にのみシャッター部30を回転させるとしてもよく、一定速度で継続的にシャッター部30を回転させるとしてもよい。
【0043】
光源部10の消灯タイミングでは光源部10から光が照射されないため、画像照射部20に表示されている画像も虚像として投影されない。したがって、光源部10の消灯タイミングとシャッター部30の遮断モードを同期させることで、虚像の投影に寄与していない時間には、外光が画像照射部20に到達せず、外光による画像照射部20の温度上昇と劣化を抑制できる。
【0044】
また、光源部10の点灯タイミングでは光源部10から光が照射されるため、画像照射部20に表示されている画像が虚像として投影される。したがって、光源部10の点灯タイミングとシャッター部30の透過モードを同期させることで、虚像の投影に寄与する時間には、第1画像光L1および第2画像光L2が減衰されずに投影され、投影される虚像の輝度を向上させることができる。
【0045】
図5では、光源部10の全時間における点灯時間の比率であるデューティ比を50%とした例を示したが、光源部10のデューティ比を変更して輝度を調整するとしてもよい。その場合には、光源部10の点灯期間がシャッター部30の透過モードの期間に含まれる範囲でデューティ比を変化させることが好ましい。
【0046】
図3に示したシャッター部30では、180度の角度範囲に遮光部31を設けることで、開閉のデューティ比が50%となっている。しかし、一定の回転速度でシャッター部30を回転させることで、透過モードと遮断モードを繰り返す場合には、遮光部31を設ける割合を変化させることでデューティ比を設定するとしてもよい。一例としては、遮光部31を90度の範囲に設け、近方開口部32と遠方開口部33を270度の範囲に設けると、開閉のデューティ比を75%にすることができる。
【0047】
また、図5(a)(b)に示した例では、シャッター部30の開閉を切り替えるタイミングと、光源部10の点消灯のタイミングが一致した例を示したが、点灯期間中に透過モードが含まれ、消灯期間中に前記遮断モードが含まれるように、互いが重なるようにタイミングが選択されればよい。
【0048】
上述したように本変形例の画像投影装置100では、画像照射部20は、点灯と消灯を繰り返す光源部10のパルス駆動によって画像光を照射し、シャッター部30は、点灯期間中に透過モードが選択され消灯期間中に遮断モードが選択される。これにより、遮断モードでの外光による画像照射部20の温度上昇と劣化を抑制しながらも、透過モードでの輝度向上を図ることが可能となる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図6を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。本実施形態は、第1画像光L1と第2画像光L2の透過と遮断を個別に設定する点が第1実施形態とは異なっている。図6は、本実施形態に係るシャッター部30の構成と画像照射部20の関係を示す模式図であり、図6(a)は全透過モードを示し、図6(b)は遠方遮断モードを示し、図6(c)は全遮断モードを示し、図6(d)は近方遮断モードを示している。
【0050】
図6(a)~図6(d)に示したように、本実施形態のシャッター部30は、近方開口部32と遠方開口部33が90度異なる位置に設けられている。同様に、遮光部31は遠方遮光部31aと近方遮光部31bを備えており、遠方遮光部31aと近方遮光部31bは90度異なる位置に設けられている。
【0051】
図6(a)に示す全透過モードでは、近方開口部32が近方表示領域22に重なり、遠方開口部33が遠方表示領域23に重なる。したがって、第1画像光L1および第2画像光L2は、透過率が高い近方開口部32および遠方開口部33を通過するため光量の減衰が少なく、投影される虚像の輝度を高めることができる。
【0052】
図6(b)に示す遠方遮断モードでは、近方開口部32が近方表示領域22に重なり、遠方遮光部31aが遠方表示領域23に重なる。したがって、近方表示領域22からの第2画像光L2は、透過率が高い近方開口部32を通過するため光量の減衰が少なく、投影される虚像の輝度を高めることができる。また、外光による画像照射部20の温度上昇は、遠方表示領域23で顕著になる傾向があるため、制御部50が遠方遮断モードを選択することで、遠方表示領域23での温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0053】
図6(c)に示す全遮断モードでは、近方遮光部31bが近方表示領域22に重なり、遠方遮光部31aが遠方表示領域23に重なる。したがって、ウィンドシールドから投影光学部40を介してシャッター部30に到達した外光は、近方遮光部31bおよび遠方遮光部31aで遮られて画像照射部20には到達しない。これにより、画像照射部20に到達する外光の光量を低減して、画像照射部20の温度上昇と劣化を抑制することができる。
【0054】
図6(d)に示す近方遮断モードでは、近方遮光部31bが近方表示領域22に重なり、遠方開口部33が遠方表示領域23に重なる。したがって、遠方表示領域23からの第1画像光L1は、透過率が高い遠方開口部33を通過するため光量の減衰が少なく、投影される虚像の輝度を高めることができる。また、制御部50が近方遮断モードを選択することで、近方表示領域22での温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0055】
上述したように本実施形態の画像投影装置100では、画像照射部20における温度上昇を抑制したい領域と、輝度を高めたい投影される虚像の表示領域に応じて、制御部50がシャッター部30の遮光モードを選択して、多様な状況に対応して画像照射部20の温度上昇の抑制と輝度向上を実現できる。
【0056】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図7を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。本実施形態では、投影光学部40において画像光を中間結像させて、中間結像位置にシャッター部30を配置する点が第1実施形態と異なっている。図7は、本実施形態に係る画像投影装置100の構成例を示す図であり、図7(a)は全体の模式断面図であり、図7(b)はシャッター部30の一例を示す模式斜視図である。
【0057】
図7(a)(b)に示すように、本実施形態の画像投影装置100は、光源部10と、画像照射部20と、シャッター部30と、外光遮断部60とを備えている。また、投影光学部40として、自由曲面ミラー42と自由曲面ミラー44を備えている。画像照射部20から照射された画像光は、自由曲面ミラー42および自由曲面ミラー44で反射されてウィンドシールドに到達し、搭乗者の視点方向に投影される。自由曲面ミラー42で反射された画像光は、自由曲面ミラー44に到達する前の中間結像位置において少なくとも一軸方向の成分が集光され、中間結像位置に集光された後に拡大しながら自由曲面ミラー44に到達する。
【0058】
外光遮断部60は、遮光性の材料で構成され、中間結像位置に開口部が設けられた部材である。外光遮断部60を中間結像位置に配置することで、ウィンドシールドから入射してきた外光のうち、画像照射部20まで到達しない外光の成分を遮断して、迷光が生じることを防止できる。
【0059】
図7(a)(b)に示したように、シャッター部30は遮光性の材料で構成され、略円筒形状に形成されている。シャッター部30の側面には互いに対向する位置に開口部35a,35bが設けられている。シャッター部30の側面は本発明における遮光部に相当し、開口部35a,35bは本発明における透光部に相当している。
【0060】
シャッター部30は、自由曲面ミラー42の中間結像位置において、中間結像した画像光が開口部35a,35bを透過可能に配置されている。また、シャッター部30は円筒の中心軸を回転軸として駆動部によって回転駆動され、側面および開口部35a,35bの位置が切り替え可能とされている。したがって、画像光の光路上にシャッター部30の側面が位置する場合が遮断モードとなり、開口部35a,35bが位置する場合が透過モードとなる。
【0061】
本実施形態の画像投影装置100でも、シャッター部30で光の透過と遮断を切り替えるため、画像照射部20からの画像光を透過して画像投影をする透過モードと、外光を遮断して画像照射部20の温度上昇を抑制する遮断モードを適宜選択でき、外光による画像照射部20の温度上昇を抑制することが可能となる。また、シャッター部30が中間結像位置に設けられることで、シャッター部30および画像投影装置100の小型化と軽量化を図ることが可能となる。
【0062】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図8を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。図8は、本実施形態に係るシャッター部30の構成例を示す模式図であり、図8(a)は略矩形型の構成例を示し、図8(b)は一部の領域にのみ遮断モードを設ける構成例を示している。
【0063】
図8(a)に示したシャッター部30では、円盤形状の一部を切り欠いて、切欠部分36を透光部とし、残された略矩形の部分を遮光部31としている。このような単純な形状であっても、回転駆動することで切欠部分36の透光部と遮光部31とを切り替えることができる。
【0064】
図8(b)に示したシャッター部30では、円盤形状の内周側に360度にわたって近方開口部32を設けられ、外周側に180度にわたって遠方開口部33を設けられている。外光による画像照射部20の温度上昇は、遠方表示領域23で顕著になる傾向があるため、遠方表示領域23に対してのみ遮光モードと透過モードを切り替えることで、遠方表示領域23での温度上昇と劣化を効果的に抑制することができる。また、近方表示領域22に対しては遮光部31を設けず常に透過モードとしているため、近方画像の輝度向上を図ることもできる。
【0065】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
100…画像投影装置
10…光源部
20…画像照射部
30…シャッター部
40…投影光学部
50…制御部
60…外光遮断部
21…全表示領域
22…近方表示領域
23…遠方表示領域
31…遮光部
31a…遠方遮光部
31b…近方遮光部
32…近方開口部
33…遠方開口部
35a,35b…開口部
36…切欠部分
41…光分岐部
42,44…自由曲面ミラー
43…反射鏡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8