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  • 特開-試験システム及び流体循環装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104810
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】試験システム及び流体循環装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20230721BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20230721BHJP
   F04B 45/04 20060101ALI20230721BHJP
   F04C 2/08 20060101ALI20230721BHJP
   F04B 49/02 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G05D7/06 Z
F04B45/04 J
F04C2/08
F04B49/02 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006023
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】522024469
【氏名又は名称】エスペックテストシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】岸本 英雄
(72)【発明者】
【氏名】船上 誠
【テーマコード(参考)】
2G024
3H041
3H077
3H145
5H307
【Fターム(参考)】
2G024AA01
2G024BA11
2G024CA16
2G024CA17
2G024EA13
3H041AA02
3H041BB01
3H041CC13
3H041CC19
3H041DD05
3H077AA03
3H077BB05
3H077CC02
3H077EE23
3H077EE31
3H077FF06
3H145AA05
3H145AA24
3H145BA39
3H145BA41
3H145CA14
3H145DA01
5H307AA11
5H307BB07
5H307CC11
5H307DD17
5H307EE21
5H307ES01
5H307FF12
5H307FF15
5H307FF16
(57)【要約】
【課題】 流体が出入する試験対象物において、安定した流体の供給及び排出ができ、回収ポンプの空運転を防止する試験システム及び流体循環装置を提供する。
【解決手段】 本発明の一の態様にかかる試験システムは、流体が出入する試験対象物の流体を循環させて試験を行う試験システムであり、前記試験対象物の入口と出口に接続する流体回路を有する流体循環装置を備え、前記流体回路は、前記試験対象物の下流側に回収ポンプを有し、前記試験対象物と前記回収ポンプの間に、一定幅の負圧に保たれる回収タンクをさらに有し、前記回収タンク内のレベルセンサで前記回収ポンプの発停を制御する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が出入する試験対象物の流体を循環させて試験を行う試験システムであり、
前記試験対象物の入口と出口に接続する流体回路を有する流体循環装置を備え、
前記流体回路は、
前記試験対象物の下流側に回収ポンプを有し、
前記試験対象物と前記回収ポンプの間に、一定幅の負圧に保たれる回収タンクをさらに有し、
前記回収タンク内のレベルセンサで前記回収ポンプの発停を制御する、
試験システム。
【請求項2】
前記流体回路は、
前記回収タンクの下流側に、前記回収タンク内を前記一定幅の負圧に維持する真空ポンプを有し、
前記回収タンクと前記真空ポンプの間に冷却器をさらに有する、
請求項1記載の試験システム。
【請求項3】
前記流体循環装置は、前記流体回路に接続され、流体が貯留される貯蔵タンクをさらに備え、
前記流体回路は、前記試験対象物の入口に接続される上流側のラインと、出口に接続される下流側のラインとを有し、
前記上流側のラインと前記下流側のラインが前記貯蔵タンクに接続されている、
請求項1又は請求項2記載の試験システム。
【請求項4】
前記流体回路は、
前記試験対象物の上流側のラインは、給油ポンプが配され、前記貯蔵タンクから該給油ポンプを介して前記試験対象物に流体を供給し、
前記試験対象物の下流側のラインは、前記試験対象物から前記回収タンクと前記回収ポンプを介して前記貯蔵タンクに流体が排出される第1ラインと、前記貯蔵タンクから前記回収ポンプを介して該貯蔵タンクに流体を戻す第2ラインと、を有し、
前記試験対象物の下流側のラインにおいて、
前記回収タンクと前記回収ポンプの間に、これらが配管を介して接続される三方弁が配され、
前記三方弁はさらに、前記貯蔵タンクからの配管が接続されている、
請求項1乃至3のいずれか1項記載の試験システム。
【請求項5】
前記試験対象物の下流側のラインは、
前記回収タンクから真空ポンプを介して気体が排出される第3ラインが配されている、
請求項1乃至4のいずれか1項記載の試験システム。
【請求項6】
前記流体回路において、
前記貯蔵タンクに、加熱器と温度センサが配され、
前記下流側のラインに、第2冷却装置が配され、
前記上流側のラインと前記下流側のラインに、圧力検知部と温度センサが配されている、
請求項1乃至5のいずれか1項記載の試験システム。
【請求項7】
前記真空ポンプは、ダイヤフラムポンプである、
請求項1乃至6のいずれか1項記載の試験システム。
【請求項8】
前記回収タンクは、タンク内の圧力を設定するための圧力スイッチを備え、
前記圧力スイッチは、前記回収タンク内の圧力を検知する検知部を有し、該検知部により検知されたタンク内の圧力に応じて、前記真空ポンプの発停を行い、
前記流体回路の機器類と接続される動力盤をさらに備え、
前記動力盤は、前記圧力スイッチより圧力信号を受信し、該圧力スイッチに入切信号を送信して、前記真空ポンプの発停を制御する、
請求項1乃至7のいずれか1項記載の試験システム。
【請求項9】
前記回収タンク内の前記一定幅の負圧が、―0.05Mpa以上大気圧未満の範囲内である、
請求項1乃至8のいずれか1項記載の試験システム。
【請求項10】
前記回収タンクと前記真空ポンプとの間にオイルセパレータを有する、
請求項1乃至9のいずれか1項記載の試験システム。
【請求項11】
前記回収ポンプがギヤポンプである、
請求項1乃至10のいずれか1項記載の試験システム。
【請求項12】
前記動力盤が、チラーと前記第2冷却器との間に設けられた制御弁を制御することで、前記第2冷却器に流入する水の流量を制御する、
請求項1乃至11のいずれか1項記載の試験システム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項記載の流体循環装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項記載の試験システムにおける前記流体循環装置であって、
前記試験対象物の入口と出口に接続する流体回路を備え、
前記流体回路は、
前記試験対象物の下流側に回収ポンプを有し、
前記試験対象物と前記回収ポンプの間に、一定幅の負圧に保たれる回収タンクをさらに有し、
前記回収タンク内のレベルセンサで前記回収ポンプの発停を制御する、
流体循環装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験システム及び流体循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体循環装置を備える試験システムでは、試験対象物の出口に回収ギヤポンプを直結して、ギヤポンプの自吸力で流体を循環させていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、液体をポンプで循環させる試験装置が記載されており、ポンプの具体例としてギヤポンプやダイヤフラムポンプが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-37434号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、内部構造が複雑な試験対象物では、流体を供給させても、供給量に応じて安定的に流体が試験対象物から排出されないことがあり、ギヤポンプで直接吸引すると流体が途切れた時に、ポンプが空運転する場合があり、頻繁に起こると空運転が原因でギヤポンプ内が破損し故障に繋がるという問題がある。
【0006】
また、回収ポンプに空運転に強いダイヤフラムポンプが使用されることがあるが、耐熱性が低い。そのため、高温流体を循環させる場合にダイヤフラムポンプを使用することができない。また、試験対象物から排出した流体を、ダイヤフラムポンプの耐熱性を満足する温度まで冷却した後、ダイヤフラムポンプを通過させる場合、温調した流体循環装置では膨大な再加熱エネルギーが必要となり、実用的でないという問題がある。
【0007】
ここで、本願の発明者らは、一旦タンクで受けて回収ポンプを発停させることを検討したが、高粘度流体を循環させる場合や、試験対象物出口近辺から吸引しないと試験対象物の内部に流体が溜まるような場合に対応できない。また、空運転状態で回収ポンプが吸引し続けると試験対象物側の状態にも影響し、試験条件が変わってしまう。
【0008】
そこで、本願の発明者らは、流体を試験対象物に供給した際に、試験対象物の出口側で安定的に流体が排出されないような場合でも、回収ポンプの空運転を防止し回収ポンプの故障を回避することができる本発明の試験システム及び流体循環装置に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の態様にかかる試験システムは、流体が出入する試験対象物の流体を循環させて試験を行う試験システムであり、前記試験対象物の入口と出口に接続する流体回路を有する流体循環装置を備え、前記流体回路は、前記試験対象物の下流側に回収ポンプを有し、前記試験対象物と前記回収ポンプの間に、一定幅の負圧に保たれる回収タンクをさらに有し、前記回収タンク内のレベルセンサで前記回収ポンプの発停を制御することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、試験対象物と回収ポンプの間に回収タンクを有している。回収タンクを設けず回収ポンプで直接流体を回収した場合には、流体が試験対象物の出口側から排出されず空運転となることがあり、長時間空運転状態が続くと回収ポンプが破損するが、試験対象物と回収ポンプの間に回収タンクを有していることで、空運転を防止し回収ポンプの故障を回避することができる。
【0011】
また、回収タンクが一定幅の負圧に保たれることで生じる吸引効果を利用して、流体をスムーズに循環させることができる。
【0012】
また、回収タンクはレベルセンサを備えるので、レベルセンサが回収タンク内の液面高さを検知し、その高さに合わせて回収ポンプを発停させることができる。
【0013】
また、この試験システムは、前記流体回路が、前記回収タンクの下流側に、前記回収タンク内を前記一定幅の負圧に維持する真空ポンプを有し、前記回収タンクと前記真空ポンプの間に冷却器をさらに有することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、真空ポンプは回収ポンプと比較して、ポンプの空運転に強くポンプの故障を回避できる。ただし、真空ポンプは耐熱性が低いため、回収タンクと真空ポンプの間に冷却器を備えることで、吸引空気を真空ポンプの耐熱温度以下まで冷却し、空運転に強い真空ポンプを使用することができる。この冷却に必要な冷却エネルギーは、液体である回収流体自体を冷却することと比較すると非常に小さいものとなる。
【0015】
また、この試験システムは、前記流体循環装置が、前記流体回路に接続され、流体が貯留される貯蔵タンクをさらに備え、前記流体回路は、前記試験対象物の入口に接続される上流側のラインと、出口に接続される下流側のラインとを有し、前記上流側のラインと前記下流側のラインが前記貯蔵タンクに接続されていることを特徴とする。
【0016】
また、この試験システムは、前記流体回路は、前記試験対象物の上流側のラインは、給油ポンプが配され、前記貯蔵タンクから該給油ポンプを介して前記試験対象物に流体を供給し、前記試験対象物の下流側のラインは、前記試験対象物から前記回収タンクと前記回収ポンプを介して前記貯蔵タンクに流体が排出される第1ラインと、前記貯蔵タンクから前記回収ポンプを介して該貯蔵タンクに流体を戻す第2ラインとを有し、前記試験対象物の下流側のラインにおいて、前記回収タンクと前記回収ポンプの間に、これらが配管を介して接続される三方弁が配され、前記三方弁はさらに、前記貯蔵タンクからの配管が接続されていることを特徴とする。この構成によれば、試験対象物の上流側及び下流側のそれぞれにポンプが配されているので、流体を確実に循環させることができる。また、貯蔵タンクから回収ポンプを介して貯蔵タンクに流体を戻す第2ラインを有しているので、試験対象物に流体を供給開始する前に、第2ラインに流体を循環させることで、貯蔵タンク内の流体の温度調節をすることができ、第2冷却器を有効にするために設けられている。また、試験対象物の下流側のラインにおいて三方弁が配されているので、第1ラインと第2ラインの流路を切り替えることができる。
【0017】
好ましくは、この試験システムは、前記試験対象物の下流側のラインが、前記回収タンクから真空ポンプを介して気体が排出される第3ラインが配されている。
【0018】
また、この試験システムは、前記流体回路において、前記貯蔵タンクに、加熱器と温度センサが配され、前記下流側のラインに、第2冷却装置が配され、前記上流側のラインと前記下流側のラインに、圧力検知部と温度センサが配されていることを特徴とする。この構成によれば、貯蔵タンク内に加熱器と温度センサが配され、下流側のラインに第2冷却器が配されているので、貯蔵タンク内の流体温度を所定の温度に保つことができる。また、上流側のラインと下流側のラインに、圧力検知部と温度センサが配されているので、流体回路を循環する流体の圧力及び温度を所定の圧力及び温度に管理することができる。
【0019】
また、この試験システムは、前記真空ポンプが、ダイヤフラムポンプであることを特徴とする。この構成によれば、真空ポンプがダイヤフラムポンプなので、空運転に強い。また、ダイヤフラムポンプは真空ポンプの中で最も安価な部類の真空ポンプなのでコストを抑えることができる。
【0020】
また、この試験システムは、前記回収タンクが、タンク内の圧力を設定するための圧力スイッチを備え、前記圧力スイッチは、前記回収タンク内の圧力を検知する検知部を有し、該検知部により検知されたタンク内の圧力に応じて、前記真空ポンプの発停を行い、前記流体回路の機器類と接続される動力盤をさらに備え、前記動力盤は、前記圧力スイッチより圧力信号を受信し、該圧力スイッチに入切信号を送信して、前記真空ポンプの発停を制御することを特徴とする。この構成によれば、圧力スイッチの検知部が回収タンク内の圧力を検知し、その圧力の状態に応じて真空ポンプを発停させることで、回収タンク内を常に一定幅の負圧に保つことができる。また、動力盤が、圧力スイッチより圧力信号を受信し、圧力スイッチに入切信号を送信して、真空ポンプの発停を制御するので、安全かつ正確に真空ポンプの発停を制御することができる。
【0021】
また、この試験システムは、前記回収タンク内の前記一定幅の負圧が、―0.05Mpa以上大気圧未満の範囲内であることを特徴とする。
【0022】
また、この試験システムは、前記回収タンクと前記真空ポンプとの間にオイルセパレータを有することを特徴とする。この構成によれば、オイルセパレータが回収タンクから吸引した空気に混在したオイルを分離除去するので、真空ポンプを保護することができる。
【0023】
また、この試験システムは、前記回収ポンプがギヤポンプであることを特徴とする。この構成によれば、ギヤポンプは、脈動が少なく、粘度の高い流体の循環にも対応することができる。また、他のポンプと比較して構造が簡単で、部品数も少なく安価で耐久性に優れる。
【0024】
また、この試験システムは、前記動力盤が、チラーと前記第2冷却器との間に設けられた制御弁を制御することで、前記第2冷却器に流入する水の流量を制御することを特徴とする。この構成によれば、動力盤が第2冷却器に流入する水の流量を制御弁で制御することで、流体循環装置を流れる流体を所望の温度に保つことができる。
【0025】
また、上記試験システムにおける前記流体循環装置は、前記試験対象物の入口と出口に接続する流体回路を備え、前記流体回路は、前記試験対象物の下流側に回収ポンプを有し、前記試験対象物と前記回収ポンプの間に、一定幅の負圧に保たれる回収タンクをさらに有し、前記回収タンク内のレベルセンサで前記回収ポンプの発停を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の試験システムによれば、一定の流体を試験対象物に供給した際に、試験対象物の出口側で安定的に流体が排出されないような場合でも、回収ポンプの空運転を防止し回収ポンプの故障を回避することができる流体循環装置を提供し、正確な評価試験を行うことができる試験システムである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態にかかる試験システムを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態にかかる試験システムについて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は、適宜組み合わせることも可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0029】
図1は、実施形態1にかかる試験システムを示すフロー図である。図1に示すように、試験システムは、試験対象物Tの入口と出口に接続する流体回路100を有する流体循環装置1を備え、流体が出入する試験対象物Tの流体を循環させて評価試験を実施するものである。流体回路100は、給油ポンプ11、及び回収タンク4、及び回収ポンプ2、及び真空ポンプ3、及び上流側のラインL1、及び下流側のラインである第1ラインL2,第2ラインL3,第3ラインL4を有する。流体循環装置1は、流体回路100、及び上流側のラインL1と下流側の第1ラインL2に接続される貯蔵タンク10、及び動力盤22を有する。
【0030】
試験対象物Tを上流側のラインL1の一端側に試験対象物Tの流体流路入口を接続し、下流側のラインの第1ラインL2の一端側に試験対象物Tの流体流路出口を接続することで、試験対象物Tがセットされる。なお、本実施形態においては、試験対象物Tは、例えば潤滑作用、作動作用、冷却作用が必要であるエンジンであり、回路を流れる流体は、例えばエンジンオイルである。また、試験対象物Tは、その他トランスミッション、ウォーターポンプ等にも用いることができる。また、流体についても、LLCやATFオイル、ギヤオイル等の高粘度流体でもよく、特に限定されない。
【0031】
ここで、試験システムは、貯蔵タンク10に貯蔵されている流体を、所定の流量に設定された給油ポンプ11により圧送し、セットされた試験対象物Tに流体を供給し、試験対象物Tの冷却性能や潤滑性能などの評価試験を行うものである。
【0032】
貯蔵タンク10は、温度センサ21、サーモスタット25、貯蔵タンク10内の流体の液面レベルを検出し管理するレベルセンサ26、加熱器12及び加熱器12の異常動作を防止する温度過昇防止器24を備え、上流側のラインL1と下流側の第1ラインL2と第2ラインL3が接続されている。
【0033】
温度センサ21は、貯蔵タンク10内の流体温度を検知して動力盤22に出力する。動力盤22は、温度センサ21から出力された流体温度を読み取り、加熱器12の出力制御と、制御弁32の開度制御がなされる。よって貯蔵タンク10内の流体を所定の温度に維持することができる。
【0034】
上流側のラインL1は、ストップ弁33aを介して試験対象物Tと接続される。ストップ弁33aは、試験対象物Tに供給する流体の流量を調整することができる。上流側のラインL1には、貯蔵タンク10側の先端にサクションストレーナ17aが装着されているので、貯蔵タンク10から上流側のラインL1に吸引される流体から異物を除去することができる。
【0035】
上流側のラインL1の道中には、給油ポンプ11及びポンプの回転速度を制御するインバータ14、リリーフ弁30、ダンパ29を介して接続される圧力スイッチ27及び圧力計28a、流量センサ16、圧力センサ18、温度センサ19が接続されている。
【0036】
所定の圧力に設定された給油ポンプ11は、貯蔵タンク10内の流体を圧送し、試験対象物Tに流体が供給する。給油ポンプ11の下流側に回路保護用の圧力スイッチ27及び圧力計28aが配されており、上流側のラインL1を循環する流体の圧力を所定の圧力以下であることを監視できる。
【0037】
流量センサ16は、上流側のラインL1を流れる流体の流量を検知して動力盤22に出力する。圧力センサ18は、上流側のラインL1を流れる流体の圧力を検知して動力盤22に出力する。温度センサ19は、上流側のラインL1を流れる流体の温度を検知して動力盤22に出力する。
【0038】
第1ラインL2は、ストップ弁33bを介して試験対象物Tと接続される。また、第1ラインL2は、試験対象物Tから回収タンク4と回収ポンプ2を介して貯蔵タンク10に流体が排出される。
【0039】
第1ラインL2の道中には、温度センサ20、回収タンク4、三方弁23、サクションフィルタ15、回収ポンプ2、第2冷却器13が接続され、第3ラインL4が回収タンク4から配管されている。また、温度センサ20は、第1ラインL2を流れる流体の温度を検知して動力盤22に出力する。
【0040】
回収タンク4は、試験対象物Tと回収ポンプ2の間に配され、一定幅の負圧に保たれている。回収タンク4を設けず回収ポンプ2で直接流体を回収した場合には、流体が試験対象物Tの出口側から排出されず空運転となることがあり、長時間空運転状態が続くと回収ポンプ2が破損するが、試験対象物Tと回収ポンプ2の間に回収タンク4を有していることで、空運転を防止し回収ポンプの故障を回避することができる。また、回収タンク4が一定幅の負圧に保たれることで生じる吸引効果を利用して、流体をスムーズに循環させることができる。
【0041】
回収タンク4はレベルセンサ5を備えるので、レベルセンサ5が回収タンク4内の液面高さを検知し、その高さに合わせて回収ポンプ2を発停させることができる。なお、回収ポンプ2の停止中にタンク温度の変動が大きい場合は、回収タンク4内の流体量を調整するために回収ポンプ2を発停させる代わりに、回収ポンプ2は停止させず回収ポンプ2が第2ラインL3から吸引できるように三方弁23を切り替えるのも可能である。その場合、第2冷却器13が有効となる。
【0042】
回収タンク4は、回収タンク4内の圧力を計測する真空計8、及び回収タンク4内の圧力を設定するための圧力スイッチ9を有する。圧力スイッチ9は、回収タンク4内の圧力を検知する検知部9aを有し、検知部9aにより動力盤22に出力する。動力盤22は、回収タンク4内が一定幅の負圧に保たれるよう真空ポンプ3の発停を制御する。
【0043】
圧力スイッチ9の検知部9aが回収タンク4内の圧力を検知し、その圧力の状態に応じて真空ポンプ3を発停させることで、回収タンク4内を常に一定幅の負圧に保つことができる。また、動力盤22が、圧力スイッチ9より圧力信号を受信し、真空ポンプ3に入切信号を送信して、真空ポンプ3の発停を制御するので、安全かつ正確に真空ポンプ3の発停を制御することができる。なお、本実施形態においては、回収タンク4内の一定幅の負圧は、―0.05Mpa以上大気圧未満の範囲内としている。
【0044】
三方弁23は、回収タンク4と回収ポンプ2の間に、配管を介して接続され配される。さらに、貯蔵タンク10からの配管第2ラインが接続されている。三方弁23は、弁体の開度を調整することで、第1ラインL2と第2ラインL3の流路を切り替えることができる。
【0045】
サクションフィルタ15は、回収ポンプ2に吸込される流体から異物を除去する。回収ポンプ2を稼働させることにより、サクションフィルタ15を介して流体が回収ポンプ2に吸込される。
【0046】
回収タンク4内のレベルセンサ5によりタンク内貯蔵流体量が監視される。回収ポンプ2は、耐熱性に優れるので、高温の流体で試験を実施することができる。また本実施形態において回収ポンプ2はギヤポンプであるので、脈動が少なく、粘度の高い流体の循環にも対応することができる。また、他のポンプと比較して構造が簡単で、部品数も少なく安価で耐久性に優れる。回収ポンプ2から吐出された流体は、第2冷却器13に供給される。
【0047】
回収ポンプ2の下流側に圧力計28bが配されており、回収ポンプ2の吐出圧力や第2冷却器13での詰まりを監視している。
【0048】
第2冷却器13は、回収ポンプ2の下流側に配置される。動力盤22が、チラー(図示せず)と第2冷却器13との間に設けられた制御弁32を制御することで、第2冷却器13に流入する水の流量を制御する。第2冷却器13には、流体及び冷却水が供給され、流体と冷却水との間で熱交換することで、流体が冷却される。チラーと第2冷却器の間に温度計31c,31dが配されている。第2冷却器から吐出された流体は、貯蔵タンク10へ戻される。
【0049】
第3ラインL4は、回収タンク4から真空ポンプ3を介して気体を排出する。第3ラインL4の道中には、冷却器6、オイルセパレータ7、真空ポンプ3が接続されている。
【0050】
回収タンク4の下流側に、回収タンク4内を一定幅の負圧に維持する真空ポンプ3を有し、回収タンク4と真空ポンプ3の間に冷却器6をさらに有する。真空ポンプ3は回収ポンプ2と比較して、ポンプの空運転に強くポンプの故障を回避できる。ただし、真空ポンプ3は耐熱性が低いため、回収タンク4と真空ポンプ3の間に冷却器6を備えることで、吸引空気を真空ポンプ3の耐熱温度以下まで冷却し、空運転に強い真空ポンプ3を使用することができる。この冷却に必要な冷却エネルギーは、液体である回収流体自体を冷却することと比較すると非常に小さいものとなる。冷却器6にはチラー(図示せず)から冷却水が供給される。チラーと冷却器6の間に温度計31a,31bが配されている。
【0051】
真空ポンプ3と冷却器6との間にオイルセパレータ7を有する。オイルセパレータ7が回収タンク4から吸引した空気に混在したオイルを分離除去することができるので、真空ポンプ3を保護することができる。
【0052】
真空ポンプ3は、ダイヤフラムポンプであるので、空運転に強い。また、ダイヤフラムポンプは、真空ポンプの中で最も安価な部類の真空ポンプなのでコストを抑えることができる。
【0053】
第2ラインL3は、貯蔵タンク10から回収ポンプ2を介して貯蔵タンク10に流体を戻す。第2ラインL3の道中には、三方弁23、サクションフィルタ15、回収タンク2、ダンパ29を介して接続される圧力計28b、第2冷却器13が接続されている。第2ラインL3に流体を循環させることで、試験対象物Tに流体を流していない間に、貯蔵タンク10に貯蔵している流体の温度調節が可能である。
【0054】
第2ラインL3には、貯蔵タンク10側の先端にサクションストレーナ17bが装着されているので貯蔵タンク10から第2ラインL3に吸引される流体から異物を除去することができる。
【0055】
動力盤22は、加熱器12により貯蔵タンク10内の流体の加熱を制御する。動力盤22は、チラーと第2冷却器13との間に設けられた制御弁32の駆動を制御する。動力盤22は、回収タンク4内を一定幅の負圧状態を保持するように真空ポンプ3の運転を制御する。
【0056】
動力盤22は、温度センサ21が検知した貯蔵タンク10内の流体温度を読み取る。動力盤22は、温度センサ19が検知した流体温度を読み取る。動力盤22は、温度センサ20が検知した流体温度を読み取る。動力盤22は、圧力センサ18が検知した圧力を読み取る。動力盤22は、流量センサ16が検知した流量を読み取る。動力盤22は、圧力スイッチ9が検知した回収タンク4内の圧力を読み取る。
【0057】
(試験システムの試験方法)
本実施形態にかかる試験システムの試験方法について説明する。
【0058】
第1工程:流体回路100に試験対象物Tの入口と出口を接続する。
【0059】
第2工程:三方弁23を第2ラインL3側に切り替えて、第2ラインL3に流体を循環させ、貯蔵タンク10内の流体をあらかじめ試験温度にしておく。
【0060】
第3工程:給油ポンプ11によって貯蔵タンク10内の流体を吸引し、上流側のラインL1を介して試験対象物Tの入口に流体を送り込む。
【0061】
第4工程:回収タンク4内の圧力スイッチ9の検知部9aが、回収タンク4内の圧力を検知し、動力盤22に出力する。動力盤22が、回収タンク4内が一定幅の負圧に保たれるよう真空ポンプ3を発停させることで、回収タンク4内を常に一定幅の負圧に保つことができる。回収タンク4内が減圧されることで、試験対象物Tの出口から流体が排出され、回収タンク4に流体が供給される。
【0062】
第5工程:回収ポンプ2により回収タンク4内の流体が吸引される。真空ポンプ3により回収タンク4内を一定の負圧に保つことで、試験対象物Tからの流体の排出がスムーズに行われやすくなる。
【0063】
第6工程:回収ポンプ2から吐出された流体は、貯蔵タンク10へ戻される。
【0064】
そして、貯蔵タンク10は温度センサ21、加熱器12、サーモスタット25を有する。温度センサ21が流体温度を検知し、動力盤22が、温度センサ21から出力された流体温度を読み取り、加熱器12の出力制御と、制御弁32の開度制御がなされる。よって、貯蔵タンク10内の流体温度を所定の温度に保つことができる。
【0065】
上流側のラインL1には圧力スイッチ27及び圧力計28a、流量センサ16、圧力センサ18、温度センサ19が配されている。圧力スイッチ27及び圧力計28aが駆動することで、上流側のラインL1を循環する流体の圧力を所定の圧力以下であることを監視できる。
【0066】
流量センサ16は、上流側のラインL1を流れる流体の流量を検知して動力盤22に出力する。圧力センサ18は、上流側のラインL1を流れる流体の圧力を検知して動力盤22に出力する。温度センサ19は、上流側のラインL1を流れる流体の温度を検知して動力盤22に出力する。
【0067】
第1ラインL2には温度センサ20、圧力計28b、第2冷却器13が配されている。温度センサ20は、第1ラインL2を流れる流体の温度を検知して動力盤22に出力する。圧力計28bが配されることにより、流体回路100を循環する流体の圧力を所定の圧力以下であることを監視できる。
【0068】
第2冷却器13は、動力盤22が制御弁32を制御し、第2冷却器13に流入する水の流量を制御することで、流体の温度を所定の温度に保つことができる。
【0069】
したがって、流体の流量、温度の条件を設定し維持することができ、試験対象物Tに流体を供給し試験を行う場合に、回収ポンプ2の空運転を回避しポンプの故障を防ぐことができ、冷却性能や潤滑性能などの評価試験を安定的かつ正確に行うことができる。
【0070】
以上の通り、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例又は修正例についても、本発明の技術的範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0071】
T 試験対象物
1 流体循環装置
2 回収ポンプ
3 真空ポンプ
4 回収タンク
5 レベルセンサ
6 冷却器
7 オイルセパレータ
8 真空計
9 圧力スイッチ
10 貯蔵タンク
11 給油ポンプ
12 加熱器
13 第2冷却器
14 インバータ
15 サクションフィルタ
16 流量センサ
17a,17b サクションストレーナ
18 圧力センサ
19 温度センサ
20 温度センサ
21 温度センサ
22 動力盤
23 三方弁
26 レベルセンサ
27 圧力スイッチ
28a,28b 圧力計
32 制御弁
100 流体回路
図1