(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104815
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】ワクチンの組み合わせ及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20230721BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20230721BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230721BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230721BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230721BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20230721BHJP
C12N 15/34 20060101ALN20230721BHJP
【FI】
A61K39/00 H ZNA
A61K39/12
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 U
A61P31/12
C12N15/62 Z
C12N15/34
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022006035
(22)【出願日】2022-01-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載アドレス:https://journals.asm.org/journal/mbio、及び、https://doi.org/10.1128/mBio.03224-20 掲載年月日:2021年1月19日 [刊行物等]刊行物:mBIO第12巻第1号の「Development of DNA Vaccine Targeting E6 and E7 Proteins ofHuman Papillomavirus 16 (HPV16) and HPV18 forImmunotherapy in Combination with Recombinant Vaccinia Boost and PD-1 Antibody」 Americal Society for Microbiology 発行日:2021年1月19日
(71)【出願人】
【識別番号】522024481
【氏名又は名称】パピヴァックス バイオテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユン-ニエン チャン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA22
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB33
4C084ZC75
4C085AA03
4C085AA04
4C085AA14
4C085EE03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ワクチンの組み合わせ、特に、ヒトパピローマウイルス(HPV)関連疾患のためのワクチンの組み合わせ、および医薬の製造におけるワクチンの組み合わせの使用を提供する。
【解決手段】第1のワクチンは、特定のポリヌクレオチドを含み、プライミングワクチンとして対象に投与されるものであり、第2のワクチンは、TA-HPVを含み、ブーストワクチンとして前記対象に投与されるものである、ワクチンの組み合わせの使用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の融合タンパク質又は前記第1の融合タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドを含む第1のワクチンであって、ここで、前記第1の融合タンパク質は、N末端からC末端の順に、
(i)ヒトパピローマウイルス16型(HPV-16)のE7タンパク質又はその機能的バリアント、ここで、前記HPV-16のE7タンパク質又はその機能的バリアントは、前記タンパク質の先頭に配列番号1、及び前記タンパク質の末尾に配列番号2を含む、
(ii)ヒトパピローマウイルス18型(HPV-18)のE7タンパク質又はその機能的バリアント、ここで、前記HPV-18のE7タンパク質又はその機能的バリアントは、前記タンパク質の先頭に配列番号3、及び前記タンパク質の末尾に配列番号4を含む、
(iii)HPV-16のE6タンパク質又はその機能的バリアント、ここで、前記HPV-16のE6タンパク質又はその機能的バリアントは、前記タンパク質の先頭に配列番号5、及び前記タンパク質の末尾に配列番号6を含む、
(iv)HPV-18のE6タンパク質又はその機能的バリアント、ここで、前記HPV-18のE6タンパク質又はその機能的バリアントは、前記タンパク質の先頭に配列番号7、及び前記タンパク質の末尾に配列番号8を含む、及び
(v)熱ショックタンパク質又はその機能的バリアント
を含む前記第1のワクチン、並びに
第2の融合タンパク質及び第3の融合タンパク質、又は前記第2の融合タンパク質と前記第3の融合タンパク質とをコードする第2のポリヌクレオチドを含む、第2のワクチンであって、ここで、
前記第2の融合タンパク質は、
HPV-16のE6タンパク質又はその機能的バリアント、及び
HPV-16のE7タンパク質又はその機能的バリアントを含み、
前記第3の融合タンパク質は、
HPV-18のE6タンパク質又はその機能的バリアント、及び
HPV-18のE7タンパク質又はその機能的バリアントを含む、
前記第2のワクチンを含み、
前記第1の融合タンパク質における連結領域のアミノ酸配列は、前記第2の融合タンパク質及び前記第3の融合タンパク質における連結領域のアミノ酸配列と異なっている、
ワクチンの組み合わせ。
【請求項2】
前記HPV-16のE7タンパク質は配列番号9を含み、
前記HPV-18のE7タンパク質は配列番号10を含み、
前記HPV-16のE6タンパク質は配列番号11を含み、
前記HPV-18のE6タンパク質は配列番号12を含む、
請求項1に記載のワクチンの組み合わせ。
【請求項3】
前記HPV-16のE7タンパク質は配列番号13によりコードされ、
前記HPV-18のE7タンパク質は配列番号14によりコードされ、
前記HPV-16のE6タンパク質は配列番号15によりコードされ、
前記HPV-18のE6タンパク質は配列番号16によりコードされる、
請求項1に記載のワクチンの組み合わせ。
【請求項4】
前記第1のポリヌクレオチドは配列番号17を含む、請求項1に記載のワクチンの組み合わせ。
【請求項5】
前記第1のポリヌクレオチドは配列番号18を含む、請求項1に記載のワクチンの組み合わせ。
【請求項6】
前記第2のポリヌクレオチドは組換えウイルス内に含まれている、請求項1に記載のワクチンの組み合わせ。
【請求項7】
前記組換えウイルスはTA-HPVである、請求項6に記載のワクチンの組み合わせ。
【請求項8】
処置を必要とする対象におけるHPV関連疾患を処置するための医薬の製造における、請求項1~7のいずれか一項に記載のワクチンの組み合わせの使用であって、前記使用は、
請求項1に記載のワクチンの組み合わせを対象に投与することを含み、
前記第1のワクチンはプライミングワクチンとして前記対象に投与されるものであり、前記第2のワクチンはブーストワクチンとして前記対象に投与されるものである、
ワクチンの組み合わせの使用。
【請求項9】
前記ワクチンの組み合わせの投与が、
プライミングワクチンとしての前記第1のワクチンの投与後であってブーストワクチンとしての前記第2のワクチンの投与前に、ブーストワクチンとして前記第1のワクチンを前記対象に投与することをさらに含む、
請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記第1のワクチンは前記第1のポリヌクレオチドを含み、
前記第1のワクチンは対象当たり10ミリグラム~対象当たり20ミリグラムの用量で投与される、
請求項8に記載の使用。
【請求項11】
前記第2のワクチンはTA-HPVを含み、
前記第2のワクチンは、1×104プラーク形成単位(pfu)~2×109pfuの用量で投与される、
請求項8に記載の使用。
【請求項12】
前記ワクチンの組み合わせの投与が、
前記ワクチンの組み合わせの投与と組み合わせて、化学療法、放射線療法、放射線化学療法、寒冷療法、温熱療法、標的化療法、細胞療法、遺伝子療法、又は免疫療法を行うことをさらに含む、
請求項8に記載の使用。
【請求項13】
前記化学療法、放射線療法、放射線化学療法、寒冷療法、温熱療法、標的化療法、細胞療法、遺伝子療法、又は免疫療法は、前記第1のワクチンの投与の前に、及び/又は前記第1のワクチンの投与と同時に行われる、
請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤を前記対象に投与することを含む、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイント阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、誘導性共刺激分子(ICOS)、T細胞免疫グロブリン-ムチンドメイン3(TIM-3)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、又はT細胞免疫グロブリン-免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(ITIM)ドメイン(TIGIT)を標的にする免疫調節剤である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記免疫チェックポイント阻害剤は抗PD-1抗体である、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本願の添付物は、2021年12月7日に作成され、18,253バイトのサイズである、「211223-US86679-Sequence Listing-v1F.txt」という名称のAmerican Standard Code for Information Interchange(ASCII)テキストファイルの配列表である。前記配列表は、参照により本明細書に完全に取り込まれる。
【0002】
発明者による先開示の記載(37C.F.R.1.77(b)(6))
先開示である2021年1月19日公開の「Development of DNA Vaccine Targeting E6 and E7 Proteins of Human Papillomavirus 16 (HPV16) and HPV18 for Immunotherapy in Combination with Recombinant Vaccinia Boost and PD-1 Antibody」,mBio,January/February 2021,Volume 12,Issue 1,pages 1-19は、本願の権利請求される主題に関する研究について論じるものである。本願の発明者であるYung-Nien Changは、自身が先開示において論じられる主題の唯一の発明者であり、先開示に関する実験を実施するための主要な材料を提供したことを明確に述べる。発明者はまた、先開示の共著者でもある。先開示の残りの共著者は、本発明者の指示の元、実験の種々の態様を実施及び記録したので、その能力内で先行開示に貢献した。先開示のコピーは、本願と同時に提出される情報開示陳述書に関連して提供される。
【0003】
技術分野
本開示は概して、ワクチンの組み合わせ、特に、ヒトパピローマウイルス(HPV)関連疾患のためのワクチンの組み合わせに関し、より具体的には、プライミングワクチン及びブースターワクチンの特定の設計によるワクチンの組み合わせの改善に関する。
【背景技術】
【0004】
HPVは、子宮頸がん、肛門がん、陰茎がん、外陰がん、膣がん、及び頭頚部がんを含む様々なヒトのがんにおける共通の病原因子である。Gardasil(登録商標)及びCervarix(登録商標)など、HPVに対する現在のワクチンは、HPV感染の予防において臨床的有効性を示してきたが、既存のHPV感染又はHPV関連がんを有する患者の治療においては効果がない。そのため、HPVに感染した患者又はHPV関連疾患を患っている患者のための治療的ワクチンの開発に対する需要が高い。
【0005】
デオキシリボ核酸(DNA)ワクチン接種は、1又は複数の抗原をコードするDNA配列を含む遺伝子改変されたプラスミドを注射することによる、感染の予防又は疾患の治療のための技術である。DNAワクチンは、製造の安全性、スピード、及び予測性、温度安定性、設計の柔軟性、並びに広範囲な種類の免疫応答を誘発する能力を含む、従来のワクチンに対する理論的利点を有する。
【0006】
有効なワクチンは、通常、プライムブーストの方式での2回以上の免疫化を必要とする。従来、同種ブースト(homologous boost)として同じワクチンが複数回投与される。いくつかの知見により、プライムブーストは同じ抗原を含む異なる種類のワクチンを用いて行い得ることが提案されている。多くの場合、そのような異種プライムブーストは、同種プライムブーストよりも免疫原性が高いことがある(Curr Opin Immunol.2009 Jun;21(3):346-351)。異種プライムブーストは、同じ又は重複する抗原性挿入断片を発現する2種類の異なるベクター又は送達系の投与を含んでいてもよい。特定のベクターの組み合わせを用いることで抗体及びT細胞免疫の両方が増大し得ることが知られている。しかしながら、共に複数の抗原の融合タンパク質又はそれをコードするベクターのいずれかであり得るプライミングワクチン及びブーストワクチンは、融合タンパク質において同じ抗原配置を有していてもよく、プライムブースト投与計画により引き起こされた増強された免疫はまた、複数の抗原の融合タンパク質における連結に関連したエピトープに対する免疫応答のブーストも含むことがあり、標的病原因子に対する免疫応答阻害又はその他の好ましくない効果を引き起こすことがある。
【0007】
さらに、新たに開発されたDNAワクチンをクリニックに提供する前に、新規配列のワクチン接種による自己免疫の誘発の可能性は対処すべき大きな懸念である。ワクチンに対するそのような有害反応は、ワクチン接種された対象の感受性と種々のワクチン構成成分の間の相互作用の結果と見なされることがある。ワクチンに含まれるある種の病原因子と特定のヒトタンパク質の間の重要な類似性は、免疫交差反応性をもたらすことがあり、病原性抗原に対する免疫系の反応により類似ヒトタンパク質(自己抗原)を害することがあり、本質的に自己免疫疾患を引き起こす(Cell Mol Immunol.2018 Jun;15(6):586-594)。したがって、ワクチンの免疫原性を高めることに加えて、ワクチンを開発する際に交差反応性による自己免疫の誘発の可能性を回避することも同様に重要である。
【0008】
上述の理由を考慮して、ワクチンにより発現される又はワクチンに含まれる融合タンパク質に潜在的に存在する、連結に関連したエピトープに対する免疫応答を生じるリスク及び自己抗原に対する交差反応性を誘発するリスクの低減に反映されるとおり、免疫原性が増強され、安全性が改善された、HPV関連疾患を処置するためのワクチンの提供に対する満たされていない要求が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様では、ワクチンの組み合わせをが提供されてもよい。前記ワクチンの組み合わせは、第1のワクチン及び第2のワクチンを含む。第1のワクチンは、第1の融合タンパク質、又は前記第1の融合タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドを含んでいてもよい。第1の融合タンパク質は、N末端からC末端の順に、(i)ヒトパピローマウイルス16型(HPV-16)のE7タンパク質又はその機能的バリアント、(ii)ヒトパピローマウイルス18型(HPV-18)のE7タンパク質又はその機能的バリアント、(iii)HPV-16のE6タンパク質又はその機能的バリアント、(iv)HPV-18のE6タンパク質又はその機能的バリアント、及び(v)熱ショックタンパク質又はその機能的バリアントを含んでいてもよい。HPV-16のE7タンパク質又はその機能的バリアントは、前記タンパク質の先頭に配列番号1、及び前記タンパク質の末尾に配列番号2を含んでいてもよい。HPV-18のE7タンパク質又はその機能的バリアントは、前記タンパク質の先頭に配列番号3、及び前記タンパク質の末尾に配列番号4を含んでいてもよい。HPV-16のE6タンパク質は又はその機能的バリアントは、前記タンパク質の先頭に配列番号5、及び前記タンパク質の末尾に配列番号6を含んでいてもよい。HPV-18のE6タンパク質又はその機能的バリアントは、前記タンパク質の先頭に配列番号7、及び前記タンパク質の末尾に配列番号8を含んでいてもよい。第2のワクチンは、第2の融合タンパク質及び第3の融合タンパク質、又は前記第2の融合タンパク質と前記第3の融合タンパク質とをコードする第2のポリヌクレオチドを含んでいてもよい。第2の融合タンパク質は、HPV-16のE6タンパク質又はその機能的バリアント、及びHPV-16のE7タンパク質又はその機能的バリアントを含んでいてもよい。第3の融合タンパク質は、HPV-18のE6タンパク質又はその機能的バリアント、及びHPV-18のE7タンパク質又はその機能的バリアントを含んでいてもよい。第1の融合タンパク質における連結領域のアミノ酸配列は、第2の融合タンパク質及び第3の融合タンパク質における連結領域のアミノ酸配列と異なっていてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、HPV-16のE7タンパク質は配列番号9を含んでいてもよく、HPV-18のE7タンパク質は配列番号10を含んでいてもよく、HPV-16のE6タンパク質は配列番号11を含んでいてもよく、HPV-18のE6タンパク質は配列番号12を含んでいてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、HPV-16のE7タンパク質は配列番号13によりコードされていてもよく、HPV-18のE7タンパク質は配列番号14によりコードされていてもよく、HPV-16のE6タンパク質は配列番号15によりコードされていてもよく、HPV-18のE6タンパク質は配列番号16によりコードされていてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは配列番号17を含んでいてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは配列番号18を含んでいてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは組換えウイルス内に含まれていてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記組換えウイルスはTA-HPVであってもよい。
【0016】
本開示の第2の態様では、処置を必要とする対象においてHPV関連疾患を処置する方法が提供されてもよい。前記方法は、前述のワクチンの組み合わせを対象に投与することを含んでいてもよい。第1のワクチンがプライミングワクチンとして投与されてもよく、第2のワクチンがブーストワクチンとして投与されてもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記方法は、プライミングワクチンとしての第1のワクチンの投与後であってブーストワクチンとしての第2のワクチンの投与前に、ブーストワクチンとして第1のワクチンを対象に投与することをさらに含んでいてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1のワクチンは第1のポリヌクレオチドを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、第1のワクチンは対象当たり10ミリグラム~対象当たり20ミリグラムの用量で投与されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、第2のワクチンはTA-HPVを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、第2のワクチンは、1×104プラーク形成単位(pfu)~2×109pfuの用量で投与されてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記方法は、ワクチンの組み合わせの投与と組み合わせて、化学療法、放射線療法、放射線化学療法、寒冷療法、温熱療法、標的化療法、細胞療法、遺伝子療法、又は免疫療法を行うことをさらに含んでいてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、化学療法、放射線療法、放射線化学療法、寒冷療法、温熱療法、標的化療法、細胞療法、遺伝子療法、又は免疫療法は、第1のワクチンの投与の前に、及び/又は第1のワクチンの投与と同時に行ってもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤を対象に投与することを含んでいてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、誘導性共刺激分子(ICOS)、T細胞免疫グロブリン-ムチンドメイン3(TIM-3)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、又はT細胞免疫グロブリン-免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(ITIM)ドメイン(TIGIT)を標的にする免疫調節剤であってもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体であってもよい。
【0025】
上記に記載された本開示の特徴を詳細に理解できるように、ふぉr上記に簡潔に概説された本開示のより具体的な記載は、そのいくつかは添付の図面において説明される実施形態が参照されてもよい。しかしながら、本開示はその他の等しく効果的な実施形態を認め得るので、添付の図面は本開示の典型的な実施形態を説明するのみであり、したがって、その範囲を限定するものであるとは見なされないことに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】本開示の一実施形態のワクチンの組み合わせの第1のワクチンの第1の融合タンパク質をコードするDNAコンストラクトを示す略図である。
【
図1B】本開示の一実施形態のワクチンの組み合わせのワクシニアウイルスのゲノム中に挿入されたHPV-16 E6-E7融合タンパク質及びHPV-18 E6-E7融合タンパク質の発現カセットを示す略図である。
【
図2A】本開示の一実施形態による、プライムブースト戦略で本開示のワクチンの組み合わせ(DNAの2回用量及び組換えウイルスの1回用量、DDV投与計画)又はプライムブースト戦略でDNAワクチンのみ(DNAの3回用量、DDD投与計画)をワクチン接種されたマウスにおけるHPV抗原特異的CD8
+T細胞媒介性免疫応答の特徴付けのための実験計画の略図である。
【
図2B】本開示の一実施形態による、HPV-16 E7(アミノ酸49~57)ペプチド結合四量体染色を用い、両側スチューデントt検定を用いた、無感作のマウス又は本開示のワクチンの組み合わせ(DDV投与計画)若しくはDNAワクチンのみ(DDD投与計画)で処置されたマウスから採取された末梢血単核細胞(PBMC)における全CD8
+T細胞に対するHPV-16 E7特異的CD8
+T細胞の割合を示す棒グラフである。
【
図2C】本開示の一実施形態による、HPV-16 E6(アミノ酸50~57)ペプチド、HPV-16 E7(アミノ酸49~57)ペプチド、又はHPV-18 E6(アミノ酸67~75)ペプチドのいずれかで刺激した後の、本開示のワクチンの組み合わせ(DDV投与計画)若しくはDNAワクチンのみ(DDD投与計画)をワクチン接種されたマウスからの3×10
5個の脾臓細胞当たりのHPV-16 E7特異的IFN-γ
+CD8
+T細胞の数を示す棒グラフである。
【
図3A】本開示の一実施形態による、抗PD-1抗体を用いて又は用いずに、プライムブースト戦略で本開示のワクチンの組み合わせで処置されたTC-1腫瘍担持マウスにおけるHPV抗原特異的免疫応答及び抗腫瘍効果を特徴付けるための実験計画の略図である。
【
図3B】本開示の一実施形態による、HPV-16 E7(アミノ酸49~57)ペプチド結合四量体染色を用い、両側スチューデントt検定を用いた、未処置のマウス、抗PD-1抗体のみで処置されたマウス、本開示のワクチンの組み合わせ(DDV)で処置されたマウス、又は抗PD-1抗体と組み合わせた本開示のワクチンの組み合わせ(抗PD-1+DDV)で処置されたマウスから調製された末梢血単核細胞(PBMC)における全CD8
+T細胞に対するHPV-16 E7特異的CD8
+T細胞の割合を示す棒グラフである。
【
図3C】本開示の一実施形態による、未処置のマウス、抗PD-1抗体のみで処置されたマウス、本開示のワクチンの組み合わせ(DDV)で処置されたマウス、又は抗PD-1抗体と組み合わせた本開示のワクチンの組み合わせ(抗PD-1+DDV)で処置されたマウスにおけるTC-1腫瘍容積を示す曲線グラフである。
【
図3D】本開示の一実施形態による、未処置のマウス、抗PD-1抗体のみで処置されたマウス、本開示のワクチンの組み合わせ(DDV)で処置されたマウス、又は抗PD-1抗体と組み合わせた本開示のワクチンの組み合わせ(抗PD-1+DDV)で処置されたマウスにおける生存率を示すカプラン・マイヤー生存曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
一般的な方法にしたがって、記載される種々の特徴は縮尺どおりの図ではなく、本開示に関する特徴を強調するために図示されている。図及び本文を通して、同様の参照文字は同様の要素を示す。
【0028】
本開示の例示的実施形態が示される添付の図面を参照して、以下に本開示をより十分に記載する。しかしながら、この開示は多くの異なる形式で実施されてもよく、本明細書に記載される例示的実施形態に限定するものと見なされるべきではない。むしろ、これらの例示的実施形態は、本開示を詳細かつ完全とし、本開示の範囲を当業者十分に伝えるように提供されるものである。全体を通して、同様の参照文字は同様の要素を示す。
【0029】
本明細書で用いられる専門用語は、特定の例示的実施形態のみを記載することを目的とするものであり、本開示を限定することを意図していない。本明細書で用いられる場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈で別段の明示がない限り、複数形も同様に含むことを意図している。「含む(comprise)」及び/又は「含んでいる(comprising)」、又は「含む(include)」及び/又は「含んでいる(including)」、又は「有する(has)」及び/又は「有している(having)」という用語は、本明細書で用いられる場合、提示されている特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するが、1又は複数のその他の特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではないこともさらに理解されるだろう。
【0030】
本明細書で用いられる場合、「機能的バリアント」という用語は、(i)アミノ酸配列において野生型タンパク質と少なくとも、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上の同一性を有し、且つ、(ii)野生型タンパク質の免疫原性(例えば、タンパク質特異的CD8+T細胞を誘発する能力)を保持しているタンパク質を指す。
【0031】
本明細書で用いられる場合、「~と組み合わせた」との用語は、同一患者の同一疾患を処置する過程において、別段の指示がない限り、2種類以上のワクチン又は治療剤の同時投与又は不特定の制限時間内の任意の順序での連続的投与を含む。
【0032】
別段の定義がない限り、本明細書で用いられる全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示が属する当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。一般に使用される辞書において定義されるような用語は、関連技術及び本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有していると解釈されるべきであり、本明細書で明確にそのように定義されていない限り、理想化された意味又は過度に形式張った意味で解釈されないこともさらに理解されるだろう。
【0033】
本開示のワクチンの組み合わせは、ヒトパピローマウイルス(HPV)関連疾患を有する対象に提供される。HPV関連疾患を有する対象は、これらに限定されないが、疣贅、乳頭腫、上皮内腫瘍、陰茎がん、膣がん、外陰がん、肛門がん、中咽頭がん、非黒色腫皮膚がん、結膜がん、又は子宮頸がんを患う哺乳類(例えば、ヒト、マウスなど)であってもよい
【0034】
ワクチンの組み合わせは、第1のワクチン及び第2のワクチンを含んでいてもよい。第1のワクチンは、第1の融合タンパク質、又は前記第1の融合タンパク質をコードするよう設計されている第1のポリヌクレオチドを含む。第1の融合タンパク質は、特定の配置を有する複数のHPV抗原及び熱ショックタンパク質を含み、したがって、複数のHPV抗原の間及びHPV抗原と熱ショックタンパク質との間に特定の連結領域を含む。第2のワクチンは、第2の融合タンパク質及び第3の融合タンパク質、又は前記第2の融合タンパク質と前記第3の融合タンパク質とをコードする第2のポリヌクレオチドを含む。第2の融合タンパク質は、特定の配置を有する2つのHPV抗原を含み、したがって、複数のHPV抗原の間に特定の連結領域を含む。第3の融合タンパク質も、特定の配置を有する2つのHPV抗原を含み、したがって、複数のHPV抗原の間に特定の連結領域を含む。第1の融合タンパク質における連結領域のアミノ酸配列は、第2の融合タンパク質及び第3の融合タンパク質における連結領域のアミノ酸配列と異なっている。
【0035】
具体的には、第1の融合タンパク質、第2の融合タンパク質、及び第3の融合タンパク質における複数のHPV抗原の特定の配置は、以下に記載されるものである。
【0036】
第1の融合タンパク質は、N末端からC末端の順に、(i)ヒトパピローマウイルス16型(HPV-16)のE7タンパク質又はその機能的バリアント、ここで、前記HPV-16のE7タンパク質又はその機能的バリアントは、前記タンパク質の先頭に配列番号1、及び前記タンパク質の末尾に配列番号2を含む、(ii)ヒトパピローマウイルス18型(HPV-18)のE7タンパク質又はその機能的バリアント、ここで、前記HPV-18のE7タンパク質又はその機能的バリアントは、前記タンパク質の先頭に配列番号3、及び前記タンパク質の末尾に配列番号4を含む、(iii)HPV-16のE6タンパク質又はその機能的バリアント、ここで、前記HPV-16のE6タンパク質は又はその機能的バリアントは、前記タンパク質の先頭に配列番号5、及び前記タンパク質の末尾に配列番号6を含む、(iv)HPV-18のE6タンパク質又はその機能的バリアント、ここで、前記HPV-18のE6タンパク質又はその機能的バリアントは、前記タンパク質の先頭に配列番号7、及び前記タンパク質の末尾に配列番号8を含む、並びに(v)熱ショックタンパク質又はその機能的バリアントを含んでいてもよい。したがって、第1の融合タンパク質において、連結は、隣接する複数のHPV抗原(例えば、HPV-16のE7タンパク質とHPV-18のE7タンパク質、HPV-18のE7タンパク質とHPV-16のE6タンパク質、HPV-16のE6タンパク質とHPV-18のE6タンパク質)の間、及びHPV-18のE6タンパク質と熱ショックタンパク質との間に形成される。
【0037】
第2の融合タンパク質は、N末端からC末端の順に、HPV-16のE6タンパク質又はその機能的バリアント、及びHPV-16のE7タンパク質又はその機能的バリアントを含んでいてもよい。第3の融合タンパク質は、N末端からC末端の順に、HPV-18のE6タンパク質又はその機能的バリアント、及びHPV-18のE7タンパク質又はその機能的バリアントを含んでいてもよい。したがって、第2の融合タンパク質又は第3の融合タンパク質において、連結は、隣接する複数のHPV抗原(例えば、HPV-16のE6タンパク質とHPV-16のE7タンパク質、又はHPV-18のE6タンパク質とHPV-18のE7タンパク質)の間に形成される。
【0038】
第1の融合タンパク質、第2の融合タンパク質、及び第3の融合タンパク質の前述の配置により、第1の融合タンパク質における連結領域のアミノ酸配列は、第2の融合タンパク質及び第3の融合タンパク質における連結領域のアミノ酸配列と異なっている。
【0039】
ワクチンの組み合わせによる第1のワクチンの第1のポリヌクレオチド及び第2のワクチンの第2のポリヌクレオチドは、
図1A及び
図1Bにそれぞれ示される。
【0040】
図1Aは、第1の融合タンパク質をコードする例示的な第1のポリヌクレオチド(PBI-11と示す)を示す。第1のポリヌクレオチドは、N末端からC末端の順に、シグナルペプチド(「S」と示す)、HPV-16のE7タンパク質(E7
(16)と示す)、HPV-18のE7タンパク質(E7
(18)と示す)、HPV-16のE6タンパク質(E6
(16)と示す)、HPV-18のE6タンパク質(E6
(18)と示す)、及び70キロダルトンの熱ショックタンパク質(HSP70)を含む第1の融合タンパク質をコードする融合遺伝子を含む。
【0041】
したがって、第1の融合タンパク質は、隣接する複数のHPV抗原(例えば、HPV-16のE7タンパク質とHPV-18のE7タンパク質、HPV-18のE7タンパク質とHPV-16のE6タンパク質、HPV-16のE6タンパク質とHPV-18のE6タンパク質)の間に形成された連結領域を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、HPV-16のE7タンパク質は配列番号9を含んでいてもよく、HPV-18のE7タンパク質は配列番号10を含んでいてもよく、HPV-16のE6タンパク質は配列番号11を含んでいてもよく、HPV-18のE6タンパク質は配列番号12を含んでいてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、HPV-16のE7タンパク質は配列番号13によりコードされていてもよく、HPV-18のE7タンパク質は配列番号14によりコードされていてもよく、HPV-16のE6タンパク質は配列番号15によりコードされていてもよく、HPV-18のE6タンパク質は配列番号16によりコードされていてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、pBI-11は、本願のワクチンの組み合わせの第1のワクチンとして用いられてもよい。配列番号17に記載されるヌクレオチド配列を有するpBI-11は、シグナルぺプチドをコードする部分配列、配列番号9に記載されるHPV-16のE7タンパク質、配列番号10に記載されるHPV-18のE7タンパク質、配列番号11に記載されるHPV-16のE6タンパク質、配列番号12に記載されるHPV-18のE6タンパク質をコードする最適化HPV部分配列(
図1A、断片101)、並びにHSP70をコードする部分配列を含む融合遺伝子を含むDNAコンストラクトである。
【0045】
いくつかの実施形態では、代替的に及び/又は追加的に、pBI-12が本願のワクチンの組み合わせの第1のワクチンとして用いられてもよい。配列番号18に記載されるヌクレオチド配列を有するpBI-12は、シグナルぺプチドをコードする最適化シグナル配列、配列番号9に記載されるHPV-16のE7タンパク質、配列番号10に記載されるHPV-18のE7タンパク質、配列番号11に記載されるHPV-16のE6タンパク質、配列番号12に記載されるHPV-18のE6タンパク質をコードする最適化HPV部分配列、並びにHSP70をコードする部分配列を含む融合遺伝子を含むDNAコンストラクトである。
【0046】
いくつかの実施形態では、第1のワクチンは第1のポリヌクレオチドを含んでいてもよく、第1のワクチンは対象当たり10ミリグラム~対象当たり20ミリグラムの用量で投与されてもよい。
【0047】
図1Bは、第2の融合タンパク質と第3の融合タンパク質とをコードする例示的な第2のポリヌクレオチドを示す。
図1Bに示すように、第2の融合タンパク質及び第3の融合タンパク質の発現カセットは、ワクシニアウイルスのゲノム内に含まれている(TA-HPVと示す)。第2のポリヌクレオチドは、HPV-16のE6タンパク質及びE7タンパク質をコードする第1の翻訳領域(
図1BにおいてHPV16 E67と示す)、及びHPV-18のE6タンパク質及びE7タンパク質をコードする第2の翻訳領域(
図1BにおいてHPV18 E67と示す)を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、組換えウイルス中に含まれていてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドを含む組換えウイルスは、これに限定されないが、TA-HPVであってもよい。TA-HPVは、1×104pfu~2×109pfuの用量で投与されてもよい。TA-HPVは、好ましくは、2×104pfu~5×107pfuの用量で投与されてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、本開示のワクチンの組み合わせは、HPV関連疾患の処置のための対象に投与されてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、HPVに対する対象の免疫応答を増強するための異種プライムブースト投与計画において用いられる併用療法を提供するために、ワクチンの組み合わせの第1のワクチンはプライミングワクチンとして投与されてもよく、ワクチンの組み合わせの第2のワクチンはブーストワクチンとして続いて投与されてもよい。例えば、第1のワクチンは、第1のポリヌクレオチドを含んでいてもよく、対象当たり10ミリグラム~対象当たり20ミリグラムの用量で投与されてもよく、第2のワクチンは、TA-HPVを含んでいてもよく、1×104pfu~2×109pfuの用量で投与されてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、HPVに対する対象の免疫応答を増強するための異種プライムブースト投与計画において用いられる併用療法を提供するために、ワクチンの組み合わせの第1のワクチンは、プライミングワクチンとして投与されてもよく、ブーストワクチンとして続いて投与されてもよく、ブーストワクチンとしての第1のワクチンの投与後にワクチンの組み合わせの第2のワクチンもブーストワクチンとして続いて投与されてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、ワクチンの組み合わせは、免疫チェックポイント阻害剤をさらに含んでいてもよい。免疫チェックポイント阻害剤は、第1のワクチン及び/又は第2のワクチンと、同時に又は任意の順序で連続的に投与されてもよい。例えば、免疫チェックポイント阻害剤は、第1のワクチンの投与の前及び/又は第1のワクチンの投与と同時に投与されてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、誘導性共刺激分子(ICOS)、T細胞免疫グロブリン-ムチンドメイン3(TIM-3)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、又はT細胞免疫グロブリン-免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(ITIM)ドメイン(TIGIT)を標的にする免疫調節剤であってもよい。例えば、免疫チェックポイントは、PD-1を標的にする抗体(「抗PD-1抗体」ともいう)であってもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、ワクチンの組み合わせの第1のワクチン及び第2のワクチンは、ワクチン接種を受けた対象においてより強い免疫応答を引き起こすための、免疫賦活剤などの成分をさらに含んでいてもよい。
【実施例0056】
実施例1:ワクチンの組み合わせの設計及び合成
pBI-1 DNAコンストラクトは、pNGVL4a-SigE7(detox)HSP70(C.Trimple et al.Vaccine 2003,21:4036-4042)として以前に記載されている。一つの例においては、pBI-11 DNAコンストラクトは、シグナルペプチド、HPV-16のE7タンパク質、HPV-18のE7タンパク質、HPV-16のE6タンパク質、HPV-18のE6タンパク質、及びHSP70の5’部分(Tth111I部位まで)の融合タンパク質をコードし、5’がEcoRI部位とKozak部位に挟まれ、3’にTth111I部位を有する合成DNA断片のギブソンアセンブリによって得られた。前記合成DNA断片をpBI-1中にクローニングして、EcoRIとTth111Iの間の断片をインフレームでHSP70と置換した。pBI-1中のHPV-16のE7タンパク質、HPV-18のE7タンパク質、HPV-16のE6タンパク質、及びHPV-18のE6タンパク質のための発現遺伝子は、コドン最適化されており、それぞれ配列番号1~4によりコードされる。別の例では、pBI-12 DNAコンストラクトはまた、シグナルペプチド、HPV-16のE7タンパク質、HPV-18のE7タンパク質、HPV-16のE6タンパク質、HPV-18のE6タンパク質、及びHSP70の融合タンパク質をコードする合成DNA断片を含んでいた。pBI-12中のシグナルペプチド、HPV-16 E7、HPV-18 E7、HPV-16 E6、及びHPV-18 E6のための発現遺伝子は、コドン最適化されていた。pBI-12の合成DNA断片をpBI-12中にクローニングして、EcoRIとTth111Iの間の断片をインフレームでHSP70と置換した。
【0057】
各DNAコンストラクトの合成DNA断片中の、遺伝子発現のために最適化された遺伝子(
図1A、断片101)又は天然のパピローマウイルス配列に基づいた遺伝子(
図1A、断片103)は、
図1Aに示される。
【0058】
TA-HPVは、HPV16型及びHPV18型のがん遺伝子E6及びE7を発現する組換えワクシニアウイルスワクチンである。HPV-16及びHPV-18のがん遺伝子E6及びE7は、ワクシニアウイルスWyeth株ゲノム中の中性部位(L.K.Borysiewicz et al.,Lancet.,1996 Jun 1;347(9014):1523-7)に、p7.5プロモーター及びH6プロモーター(
図1Bにおいて、それぞれp7.5及びH6と示す)の制御下で先頭部分が向かい合う(head-to-head)方向で挿入されてもよい。HPV-16遺伝子及びHPV-18遺伝子の両方について、E6終止コドンは、E6/E7融合タンパク質の翻訳領域、及びE7中のRb結合部位を不活性化するよう導入された特定の変異を生じるように改変されてもよい。
【0059】
実施例2:ワクチンの組み合わせにおいてコードされる融合タンパク質中の複数のHPV抗原の配置は、自己抗原に対する交差反応性免疫を誘発し得る宿主タンパク質に共通する配列を有するペプチドを含まない
自己抗原に対する交差反応性を誘発するであろうワクチンエピトープを同定するため、ヒトタンパク質の配列に対する第1のワクチンにコードされる第1の融合タンパク質の配列を比較した。ペプチド抗原が、CD8 T細胞に対するMHCクラスI上の8~11アミノ酸、又はCD4 T細胞に対するMHCクラスII上の12~20アミノ酸のいずれかの断片として提示されることを考慮して、pBI-11にコードされた融合タンパク質中のHPV16/18 E6/E7ペプチド及び連結領域から作成された全ての8アミノ酸長について、UniProt(登録商標)(Swiss-Prot(登録商標)データベース及びTrEMBL(登録商標)データベースを含む)中のヒトタンパク質配列に対する検索を行った。
【0060】
具体的には、内在的なペプチドと同一であり得る新規ペプチド候補を検索するために、pBI-11のアミノ酸24~550から、長さが5~8アミノ酸(5アミノ酸長~8アミノ酸長)の全ての直鎖状配列を作製した。この直鎖状配列は、シグナルペプチドの最後の7アミノ酸、HPV-16 E7、HPV-18 E7、HPV-18 E6、HPV-16 E6、及びHSP70の最初の11アミノ酸に及ぶ。全体で、520個の8アミノ酸長、521個の7アミノ酸長、522個の6アミノ酸長、及び523個の5アミノ酸長が作成された。
【0061】
さらに、配列は、ウエブサイトで提供されるPeptide Search Toolを用いて80~100配列ずつのグループでUniProt(登録商標)タンパク質データベース(https://www.uniprot.org/)に提出され、ヒトタンパク質についてフィルターをかけられたSwiss-Prot(登録商標)データベース及びTrEMBL(登録商標)データベースに対する完全一致について検索された。結果は、pBI-11にコードされる融合タンパク質と、8アミノ酸以上の内在的なヒトペプチド配列との間に完全一致はないことを明らかにした。
【0062】
代替的な検索アプローチも実施した。pBI-11のタンパク質配列の同じ領域を用いて、Immune Epitope Database(https://www.iedb.org/)を検索した。(2021年11月23日に出願された米国特許出願番号第17/534,256号に開示される)pBI-10.1配列に対してマッピングされた任意のエピトープ配列を得るためのLinear Epitopeについての「部分列(substring)」が選択された。検索により、pBI-11中のHPV-16 E7に由来するB細胞エピトープ同定された(以下の表1参照)。このエピトープは、ヒト対象における安全性が試験されているpBI-1中にも存在している。まとめると、これらの結果は、本願の第1のワクチン(pBI-11又はpBI-12)にコードされる融合タンパク質の配置は自己抗原に対する交差反応性T細胞免疫を誘発し得るペプチドを生成する可能性が低いことを示唆する。
【0063】
【0064】
さらに、pBI-11は、TA-HPV(
図1B参照)における順序と異なる順序で配置された、シグナルペプチド、HPV-16 E7、HPV-18 E7、HPV-16 E6、及びHPV-18 E6(E7
(16)/E7
(18)/E6
(16)/E6
(18)、
図1A参照)の融合タンパク質をコードする。そのような配置は、pBI-11によりコードされる融合タンパク質内に潜在的に含まれる連結に関連したエピトープに対する免疫応答をブーストすることをさらに回避し得る。
【0065】
結果として、本願のワクチンの組み合わせは自己抗原に対する交差反応性の免疫応答を誘発するリスク、及びワクチン内に含まれる又はワクチンにコードされる融合タンパク質中の連結に関連したエピトープに対する免疫が引き起こされる可能性を低減し、したがって、安全性が改善される。
【0066】
実施例3:pBI-11ワクチンにより引き起こされたHPV抗原特異的CD8+T細胞媒介性免疫応答は、TA-HPVワクシニアウイルスワクチンでのブーストによりさらに促進される
pBI-11のみ、又はTA-HPVを組み合わせたpBI-11のいずれかをワクチン接種されたマウスにおける免疫応答を比較するために、in vivo T細胞活性化アッセイが行われた。
【0067】
図2Aは実験計画の略図である。Taconic Biosciences(ニューヨーク州、ジャーマンタウン)から入手した6週齢~8週齢のメスのC57BL/6マウスにpBI-11(マウス当たり25mg/50ml)を筋肉内(I.M.)注射によりワクチン接種した。マウスは、対照群(無感作群)、DDD群、及びDDV群に分けられた。7日後に、各群における各マウスを同じ投与計画でブーストした。第2のワクチン接種の1週間後に、DDD群のマウス(
図2AでDDDと示す)にpBI-11(マウス当たり25mg/50ml)を筋肉内注射によりワクチン接種した。DDV群のマウス(
図2AでDDVと示す)にTA-HPV(マウス当たり10
6pfu/50ml)を筋肉内注射によりワクチン接種した。最後のワクチン接種の6日後、HPV-16 E7四量体染色のために、ワクチン接種したマウス又は無感作のマウスから末梢血を採取した。最後のワクチン接種の14日後、ワクチン接種されたマウスから脾臓細胞を調製し、GolgiPlug(登録商標)(BD Pharmingen、カルフォルニア州、サンディエゴ)の存在下、HPV-16 E6(アミノ酸50~57)ペプチド、HPV-16 E7(アミノ酸49~57)ペプチド、又はHPV-18 E6(アミノ酸67~75)ペプチドのいずれかで刺激した。エピトープHPV-16 E6(アミノ酸50~57)の提示は、免疫優性エピトープであるHPV-16 E7(アミノ酸49~57)により抑制されることが知れられている。抗原特異的CD8
+T細胞を検出するために細胞内IFN-γサイトカイン染色アッセイを行った。FACSCalibur(登録商標)フローサイトメーターを用いて細胞を獲得し、CellQuest Proソフトウェア(カルフォルニア州、マウンテンビュー、BD Biosciences)を用いてデータを解析した。
【0068】
図2Bに示されるように、DDV投与計画でワクチン接種されたマウスは、pBI-11のみ(DDD)をワクチン接種されたマウス又は無感作マウスよりも、E7特異的CD8
+T細胞の割合が顕著に高かった。
【0069】
さらに、
図2Cは、プライムワクシニアブースト(DDV)におけるマウスは、pBI-11のみを投与されたマウスと比較して、HPV-16 E7特異的T細胞の数が顕著に多く(P=0.0428)、HPV-18 E6特異的T細胞の数が多い(P=0.2116)ことを示す。実際、TA-HPVのみをワクチン接種されたマウスにおけるHPV-16 E7特異的CD8
+T細胞媒介性免疫応答は以前に特徴付けられている(Virology 2018 Dec;525:205-215)。TA-HPVのみをワクチン接種されたマウスは、認識できるHPV-16 E7特異的CD8
+T細胞媒介性免疫応答を引き起こさなかったことが分かっている(Virology 2018 Dec;525:205-215)。しかしながら、発明者らによる結果は、TA-HPVブースターワクチン接種が、pBI-11 DNAワクチンでのプライミング後に引き起こされるHPV-16抗原特異的CD8
+T細胞免疫応答及びHPV-18抗原特異的CD8
+T細胞免疫応答を同時に促進可能であることを示す。
【0070】
上記結果に基づくと、本開示のワクチンの組み合わせによる第2のワクチン(例えば、TA-HPV)と組み合わせて第1のワクチン(例えば、pBI-11)を用いる異種プライムブーストワクチン接種は、第1のワクチン(例えば、pBI-11)のみの投与と比較して、増強されたHPV抗原特異的CD8+T細胞介在性免疫応答を誘発する。
【0071】
実施例4.本開示のワクチンの組み合わせは、治療的抗腫瘍応答を改善するための抗PD-1免疫チェックポイント阻害と組み合わされ得る
HPV関連疾患に対する治療的抗腫瘍効果を引き起こすための抗PD-1免疫チェックポイント阻害剤を組み合わせた本開示のワクチンの組み合わせの能力を、HPV-16 E6/E7+TC-1腫瘍モデルにおいて試験した。
【0072】
図3Aは実験計画の略図である。6週齢~8週齢のメスのC57BL/6マウスに2×10
5個のTC-1腫瘍細胞を0日目に皮下注射した。3日目に、マウスを4つの群(未処置群、抗PD-1群、DDV群、及び抗PD-1+DDV群)に分けた。抗PD-1群のマウスに精製抗マウスPD-1モノクローナル抗体(MAb;クローン29F.1A12、マウス当たり200mg)を腹腔内注射により注入した。処置を一日おきに繰り返した。DDV群のマウスにpBI-11(マウス当たり25mg/50ml)を筋肉内注射でワクチン接種し、3日後にブーストし、3日後に皮膚乱切によりTA-HPVワクシニアウイルスでさらにブーストした。抗PD-1+DDV群のマウスを抗マウスPD-1 MAb及びpBI-11 DNAワクチンプライムの両方で処置した後、TA-HPVワクシニアウイルスブーストで処置した。27日目に、HPV-16 E7ペプチド(アミノ酸49~57)結合四量体染色を用いてHPV-16 E7特異的CD8
+T細胞介在性免疫応答を特徴付けるため、PBMCを採取した。
【0073】
ある例では、
図3Aにおける実験の略図は、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)が異種プライムブーストワクチン接種(例えば、DDV)より前に投与されることを示す。しかしながら、その他の例では、追加的に及び/又は代替的に、免疫チェックポイント阻害剤は異種プライムブーストワクチン接種の過程において投与されてもよい。
【0074】
四量体染色のために、マウスPBMCを精製抗マウスCD16/32で最初に染色し、次に、FITC結合抗マウスCD8a及びPE結合HPV-16 E7(アミノ酸49~57)ペプチド結合H-2D
b四量体で4℃で1時間染色した。洗浄後、細胞を7-AASで染色した。FACSCalibur(登録商標)フローサイトメーターを用いて細胞を獲得し、CellQuest Proソフトウェア(カルフォルニア州、マウンテンビュー、BD Biosciences)を用いて解析した。四量体染色の結果は
図3Bに示される。
【0075】
触診及びデジタルキャリパーにより2週間に1回、腫瘍の増殖を検査した。腫瘍容積は、式:[最大直径×(垂直直径)
2]×3.14/6を用いて計算され、
図3Cに示される。
図3Dに示されるように、腫瘍担持マウスの生存率を記録し、自然死、及び死亡を引き起こす2cm以上の直径の腫瘍の両方を死亡と計数した。
【0076】
図3Bに示されるように、単独でのDDV投与又は抗PD-1抗体と共にDDV投与を受けたマウスは、HPV-16 E7特異的CD8
+T細胞介在性免疫応答を示したが、抗PD-1抗体のワクチン接種が無い場合は、抗PD-1抗体の処置は検出可能なHPV-16 E7特異的CD8
+T細胞応答を引き起こさなかった。
【0077】
さらに、
図3Cは、DDV投与計画に抗PD-1抗体処置を追加することにより、治療的抗腫瘍効果が顕著に促進されたことを実証した。このことは、ワクチン接種と抗PD-1抗体処置との相乗効果、及び抗PD-1抗体処置は事前の免疫応答が無い場合は効果的ではないことを示唆する。さらに、
図3Dは、併用処置(抗PD-1+DDV)により、顕著に(DDVと比較した場合にP=0.0073、抗PD-1と比較した場合にP=0.0002)良好な腫瘍担持マウスの生存率となることを示す。
【0078】
結論として、HPV抗原の図示された配置を有する第1の融合タンパク質を含む第1のワクチン、又は前記第1の融合タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド、並びに前記第1の融合タンパク質におけるHPV抗原の配置とは異なるHPV抗原の配置をいずれも有する第2の融合タンパク質及び第3の融合タンパク質を含む第2のワクチン、又は前記第2の融合タンパク質と前記第3の融合タンパク質とをコードする第2のポリヌクレオチドを含む本開示のワクチンの組み合わせは、自己抗原に対する交差反応性免疫の誘発のリスク、及びワクチンに含まれる又はワクチンによるコードされる融合タンパク質における連結に関連したエピトープに対する免疫応答のブーストのリスクを低減するだけではなく、顕著なHPV抗原特異的免疫応答を示す。さらに、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)と組み合わせた本開示のワクチンの組み合わせは、より強いHPV抗原特異的抗腫瘍応答をin vivoで引き起こし、より強力な抗腫瘍効果をさらにもたらす。
【0079】
当業者は、本開示の教示を保持した上で、装置及び方法の多数の変更及び改変がなされてもよいことに容易に気付くであろう。したがって、上記開示は添付の特許請求の範囲の境界のみにより限定されると解釈されるべきである。