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  • 特開-ポーラス状金属トレー 図1
  • 特開-ポーラス状金属トレー 図2
  • 特開-ポーラス状金属トレー 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104828
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】ポーラス状金属トレー
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/00 20060101AFI20230721BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230721BHJP
   H05K 13/02 20060101ALN20230721BHJP
【FI】
B65D1/00 110
B65D65/40 D
H05K13/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022016742
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】592129486
【氏名又は名称】株式会社長峰製作所
(72)【発明者】
【氏名】有村 聡
(72)【発明者】
【氏名】窪田 平安
(72)【発明者】
【氏名】甄 理
(72)【発明者】
【氏名】中村 力
【テーマコード(参考)】
3E033
3E086
5E353
【Fターム(参考)】
3E033AA10
3E033BA07
3E033BB08
3E033CA15
3E033DD01
3E033DD08
3E033EA07
3E033FA01
3E086AD05
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA35
3E086BB01
3E086CA31
3E086DA08
5E353BB01
5E353HH51
5E353JJ08
5E353JJ19
(57)【要約】
【課題】今後ますます微細化が予想されるコンデンサチップ等の実装工程で不可欠とされるキャリアテープ上へのチップの載置の際に好適に用いられるポーラス状金属トレーを提供する。
【解決手段】金属粉末成形物の焼結体からなるポーラス状金属トレーであって、最上表面に平均粒径15μm以下の金属微粉末層を配し、その下部を平均粒径20μm以上の金属粗粉末層で構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末成形物の焼結体からなるポーラス状金属トレーであって、最上表面に平均粒径15μm以下の金属微粉末層を配し、その下部を平均粒径20μm以上の金属粗粉末層で構成したことを特徴とするポーラス状金属トレー。
【請求項2】
前記金属微粉末層の厚さが、全厚さの5~40%である請求項1記載のポーラス状金属トレー。
【請求項3】
前記トレーの平均気孔率が20~50%である請求項1及び2記載のポーラス状金属トレー。
【請求項4】
前記トレーの最上表面に部品収納用の凹部が縦横に一定ピッチで設けられた請求項1及び2、3記載のポーラス状金属トレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属多孔質体からなるポーラス状金属トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサの分野ではサイズの微細化が進み、最近では0201規格より小さい外寸が125×60μm角もの超微細なコンデンサチップまで登場している。この超微細なコンデンサチップは、通常、袋又は容器に入れて物流し、その後の実装工程では、高速連続運転するためにキャリアテープ上に一旦コンデンサチップを一定のピッチで整列載置する必要がある。キャリアテープ上にチップを載置するには、多数のコンデンサチップを1~2mmピッチでチップより大きめに打設された多数の凹部を有するトレー上に斜め上部より流し入れて、トレーに設けた凹部にチップを嵌入させた後、トレーの凹部に嵌入された列状のチップを複数同時にキャリアテープ上に移動載置する方法が採られている。この時、微細なチップを効率よくトレー表面の凹部に嵌入させる方法として、予め傾斜させたトレーの裏面からエアーを吹き出し、チップを浮かせ加減で流し入れて凹部に嵌入させるのであるが、チップが微細になるとエアーの吹き出しに必要な適度な通気性を確保するための吹き出し孔と、吹き出し孔にチップが引っ掛からないような鏡面に近いきめ細かな平滑性といった相反する性質がトレーに要求される。かかるトレーとして、下記特許文献1及び2に例示のようなセラミックス製のポーラス状トレーが報告されているが、焼成後のセラミックストレーに多数の凹部を打設するにはレーザー加工という煩雑で複雑な作業が必要で、材料コストや製造コストの面で普及の大きな妨げとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-85996号公報
【特許文献2】特開平9-191197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑み、今後ますます微細化が予想されるコンデンサチップの実装工程で不可欠とされるキャリアテープ上へのチップの載置の際に好適に用いられるポーラス状金属トレーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、トレーの材質を金属多孔体とし、コンデンサチップを載置する面に特定粒径の微粉末層を配し、その下部を粗粉末層とする少なくとも2層構造のトレーとすることで、上記したトレーに必要とされる適度な通気性と表面平滑性を両立させることに成功し、本発明を完成させたものである。
【0006】
即ち、本発明のうちの第1の発明は、金属粉末成形物の焼結体からなるポーラス状金属トレーであって、最上表面に平均粒径15μm以下の金属微粉末層を配し、その下部を平均粒径20μm以上の金属粗粉末層で構成したポーラス状金属トレーであり、第2の発明は、前記金属微粉末層の厚さが全厚さの5~40%のものであり、第3の発明は前記ポーラス状金属トレーの平均気孔率が20~50%であり、更に第4の発明は前記トレーの最上表面に部品収納用の凹部が縦横に一定ピッチで設けられたポーラス状金属トレーである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポーラス状金属トレーによれば、トレーの最上表面を金属微粉末層とし、その下部を金属粗粉末層で構成すると共に、両層の金属粉末の平均粒径をそれぞれ特定したことで前記した適度な通気性と表面平滑性を確保したもので、将来的な超微細チップの実装工程で不可欠とされるキャリアテープ上へのチップの載置用トレーとして極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明のポーラス状金属トレーの一例を示す外形平面図である。
図2図2は、本発明のポーラス状金属トレーの一例を示す拡大断面図である。
図3図3は、本発明のポーラス状金属トレーの表面に打設された凹部にチップを嵌入させる際に使用する吹き出し搖動装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について図面に基づき詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものでない。
【0010】
図1は、本発明のポーラス状金属トレーの一例を示し、ポーラス状金属トレー1の金属微粉末層2からなる最上表面に、凹部3が整列する形で縦横に一定ピッチで多数打設されたものである。本発明において、金属粉末とは特に限定するものでないが、ステンレス、ニッケル、チタン、銅、銀等の少なくとも1種が好ましく、中でもコストや成形性、安全性等の点でステンレスが好ましい。尚、ステンレス粉末の種類としては、オーステナイト系やフェライト系、マルテンサイト系等いかなる種類のものでもよい。本発明では、かかる金属粉末の中でも最上表面部とその下部を構成する金属粉末の平均粒径をそれぞれの部位ごとに特定したもので、具体的に最上表面の金属微粉末層には15μm以下、好ましくは3~10μmの平均粒径のものを、また下部を構成する金属粗粉末層には20μm以上、好ましくは30μm以上の平均粒径のものを使用する。最上表面の金属微粉末層の平均粒径が15μmより大きいと、トレーの凹部にチップを嵌入させる際、吹き出し孔にチップが引っ掛かってスムーズなチップの嵌入が困難となる。一方、下部を構成する金属粗粉末層の平均粒径が20μm未満では、チップを吹き上げるための通気性の確保が困難となる。
【0011】
本発明のポーラス状金属トレー1は、平板状や皿状、箱状等いかなる形状のものでも差し支えないが、その搬送性や工程内取扱い性等を考慮すると2~10mm程度の厚さの平板形状のものが好ましい。また、かかるトレーにおいて、最上表面に配される金属微粉末層2の厚さ比率は、全厚さの5~40%のもの、中でも特に5~30%のものが好ましく、金属微粉末層2の厚さ比率が5%より小さいとチップを嵌入させるに十分な深さの凹部3の確保が困難となる一方、厚さ比率が40%を超えるとトレーの通気性が低下して、チップの吹き出しが不十分となり、凹部3の中に均一にコンデンサチップを嵌入させることが困難となる。
【0012】
本発明のポーラス状金属トレー1はまた、該トレーの平均気孔率が20~50%、中でも特に25~40%のものが好ましく、平均気孔率が20%未満では通気性の確保が困難となる一方、平均気孔率が50%より大きいと通気性が大きくなりすぎて、特に微細なチップの場合、エアーによる吹き上げが強くなりすぎて凹部へのチップの均一な嵌入ができなくなる。
【0013】
図2は、本発明のポーラス状金属トレーの一例を示す拡大断面図であり、金属微粉末層2と金属粗粉末層5からなる平板トレー1の金属微粉末層2側表面にチップより大きめに打設された凹部3の中にコンデンサチップ4が嵌入された状態を示すものである。
【0014】
また図3は、本発明のトレーの表面に打設された凹部にチップを嵌入させる際に使用する装置の一例を示すもので、型枠固定傾斜させたトレー1の裏面にコンプレッサーに連結するエアー吹き出し口6から加圧エアーを導入し、トレーの上部に流し入れた多数のチップ4をエアー圧によって浮かし加減で下方向に移動させ、チップ4を凹部3の中に嵌入させる方法を示すものである。
【0015】
本発明のポーラス状金属トレーは、上記の如く、コンデンサチップ等の微細チップを実装する際に使用するトレーの最適化に資するもので、かかるトレーの使用目的に合致させるべく、最上表面とその下部を構成するそれぞれの層の金属粉末の平均粒径を特定したことに最大無二の特徴を有するものである。従って、最上表面とその下部層は、上記平均粒径を満足するものであれば金属微粉末と粗粉末を混合した層で構成したり、それぞれの層を多層構造としたものでもよいことは言うまでもない。
【0016】
また、本発明のポーラス状金属トレーは、金属粉末をポーラス状の多孔質形態に成形したものであるため、従来のセラミックス製トレーに比べて成形性やコストの面ではるかに有利であるほか、最上表面に凹部を打設する場合も放電加工によって複数同時に打設できるといった特筆すべき効果も奏する。尚、本発明では、前記したポーラス状金属トレーの下部を構成する金属粗粉末層の外面側に、該ポーラス状金属トレーの前記通気性を損なわない範囲で、補強などの目的でアルミナやジルコニア製の多孔質セラミックス材を積層したものでも差し支えない。
【0017】
本発明のポーラス状金属トレーを製造する方法としては、一般周知の如何なる方法でも差し支えないが、例えば、最上表層と下部層を別途でそれぞれ粉末成形法やスラリー成形法等の方法で個別成形したものを接着積層し、その後適宜乾燥、焼成して製造する方法や、最上表層用にフォーミングされた金属微粉末上に、下部層用の金属粗粉末をフォーミングし、一気にプレス成形、乾燥、焼成工程を経て製造する方法等が例示される。
【産業上の利用分野】
【0018】
本発明のポーラス状金属トレーは、今後ますます微細化が進むコンデンサチップ等の実装工程において、キャリアテープ上への微細チップの載置用トレーとして極めて利用価値の高いものである。
【符号の説明】
【0019】
1 ポーラス状金属トレー
2 表面金属微粉末層
3 凹部
4 チップ
5 下部金属粗粉末層
6 エアー吹き出し口
図1
図2
図3