(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104836
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】ワイヤーグリッド偏光子、これを備える偏光光照射装置、露光装置、ワイヤーグリッド偏光子の角度調整方法、検光子、検光子の角度調整方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20230721BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035535
(22)【出願日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2022005032
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510138741
【氏名又は名称】フェニックス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】井上 智彦
【テーマコード(参考)】
2H149
2H197
【Fターム(参考)】
2H149BA23
2H149BB28
2H149FB03
2H149FB08
2H197AA09
2H197AA44
2H197BA05
2H197BA07
2H197CA01
2H197CD12
2H197HA05
(57)【要約】
【課題】偏光軸方向の調整を高い精度で行うことができるワイヤーグリッド偏光子を提供する。
【解決手段】ワイヤーグリッド偏光子110に互いに平行に形成された複数の偏光用パターン122、および、無偏光部124を形成する。これにより、偏光用パターン122による光の偏光方向と直交する方向に偏光する偏光フィルタ114、および、無偏光部124を透過してきた光源112からの光Lを、偏光用パターン122を一致させるべき角度に沿ってワイヤーグリッド偏光子110に対して相対的に移動するカメラ116で受けることによって角度調整が可能となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に形成された複数の偏光用パターン、および、無偏光部を有するワイヤーグリッド偏光子であって、
前記偏光用パターンによる光の偏光方向と直交する方向に偏光する偏光フィルタ、および、前記無偏光部を透過してきた光源からの光を、前記偏光用パターンを一致させるべき角度に沿って前記ワイヤーグリッド偏光子に対して相対的に移動するカメラで受けることによって角度調整がなされる
ワイヤーグリッド偏光子。
【請求項2】
前記無偏光部は、前記偏光用パターンに対して平行に形成された無偏光スリットである
請求項1に記載のワイヤーグリッド偏光子。
【請求項3】
前記無偏光部は、前記偏光用パターンに対して平行に延びる境界線を含んでいる
請求項1に記載のワイヤーグリッド偏光子。
【請求項4】
互いの前記境界線が前記偏光用パターンに対して平行に延びる仮想線上にくるようにして、一対の前記無偏光部が配置されている
請求項3に記載のワイヤーグリッド偏光子。
【請求項5】
前記無偏光部は、前記偏光用パターンに対して直交する方向に延びる直交境界線を含んでいる
請求項1に記載のワイヤーグリッド偏光子。
【請求項6】
互いの前記直交境界線が前記偏光用パターンに対して直交する方向に延びる仮想線上にくるようにして、一対の前記無偏光部が配置されている
請求項5に記載のワイヤーグリッド偏光子。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のワイヤーグリッド偏光子と、
前記偏光用パターンによる偏光方向と直交する方向に偏光する偏光フィルタと、
前記ワイヤーグリッド偏光子および前記偏光フィルタに向けて光を放射する光源と、
前記光源から放射され、前記無偏光部および前記偏光フィルタを透過してきた光を受けるカメラと、
前記偏光用パターンを一致させるべき角度に沿って前記カメラを移動させるアクチュエータとを備える
偏光光照射装置。
【請求項8】
前記カメラが受けた前記光を表示するモニタを更に備えており、
前記モニタには、前記アクチュエータによって前記カメラが移動したときに、前記カメラの移動方向に直交する方向の前記光の移動幅を確認するためのマーカーが表示されている
請求項7に記載の偏光光照射装置。
【請求項9】
前記マーカーは、所定の間隔で配置された一対のマーカー線で構成されており、
前記カメラで受けた光の端縁が一対の前記マーカー線の間に位置するように前記ワイヤーグリッド偏光子の角度が調整される
請求項8に記載の偏光光照射装置。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に係る偏光光照射装置を備える露光装置。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか1項に記載のワイヤーグリッド偏光子、および、前記偏光用パターンによる光の偏光方向と直交する方向に偏光する偏光フィルタに向けて光源からの光を放射し、
前記無偏光部および前記偏光フィルタを透過してきた光を、前記偏光用パターンを一致させるべき角度に沿って前記ワイヤーグリッド偏光子に対して相対的に移動するカメラで受ける
ワイヤーグリッド偏光子の角度調整方法。
【請求項12】
偏光面、および、前記偏光面が形成された表面周縁部に形成された一対の軸方向マーカーを有する検光子であって、
前記一対の軸方向マーカーを互いに結んだ仮想線は、前記偏光面における偏光軸と平行になっており、
前記軸方向マーカーをカメラで映し、前記偏光軸を一致させるべき角度に沿って前記カメラに対して相対的に移動させられることによって角度調整がなされる
検光子。
【請求項13】
偏光面、および、無偏光部を有する検光子であって、
前記偏光面における偏光軸を一致させるべき角度と直交する方向に偏光する偏光フィルタ、および、前記無偏光部を透過してきた光をカメラで受けつつ、前記一致させるべき角度に沿って前記カメラに対して相対的に移動させられることによって角度調整がなされる
検光子。
【請求項14】
偏光面、および、前記偏光面が形成された表面周縁部に形成された一対の軸方向マーカーを有しており、前記一対の軸方向マーカーを互いに結んだ仮想線は、前記偏光面における偏光軸と平行になっている検光子について、
前記軸方向マーカーをカメラで映し、前記偏光軸を一致させるべき角度に沿って前記検光子を前記カメラに対して相対的に移動させる
検光子の角度調整方法。
【請求項15】
偏光面と無偏光部とを有する検光子、および、前記偏光面における偏光軸を一致させるべき角度と直交する方向に偏光する偏光フィルタに向けて光を放射し、
前記無偏光部を透過してきた光をカメラで受けつつ、前記一致させるべき角度に沿って前記カメラに対して相対的に前記検光子を移動させる
検光子の角度調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶パネルを製造する際の露光用に用いられるワイヤーグリッド偏光子、これを備える偏光光照射装置、露光装置、およびワイヤーグリッド偏光子の角度調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの製造には液晶配向処理が必要であり、光源から放射された偏光していない光からこの液晶配向処理に用いられる直線偏光を得るための偏光子として、ワイヤーグリッド偏光子が一般に用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このようなワイヤーグリッド偏光子を複数個配置して構成された偏光子ユニットを備える偏光光照射装置が液晶配向処理に用いられているが、使用に際しては複数のワイヤーグリッド偏光子の偏光軸方向を所定の方向(基準方向)に合わせる調整が必要となる。
【0004】
この調整方法として、偏光軸の方向が既知の調整用偏光子(検光子)と、調整対象の偏光子および調整用偏光子を透過した光を調整用照度センサで受光し、当該調整用照度センサで受光した光の強度がピークとなるように調整用偏光子に対する調整対象の偏光子の角度を変化させつつ調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の調整方法のように受光した光の強度に基づいて調整しようとすると、受光した光の強度のピーク付近では調整対象の偏光子の角度を細かく変化させても光の強度に有意な変化が表れないことから、0.1deg単位での調整が要求されるような精度の高い調整が困難であるという問題が存在していた。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、偏光軸方向の調整を高い精度で行うことができるワイヤーグリッド偏光子、これを備える偏光光照射装置、露光装置、およびワイヤーグリッド偏光子の角度調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面によれば、
互いに平行に形成された複数の偏光用パターン、および、無偏光部を有するワイヤーグリッド偏光子であって、
前記偏光用パターンによる光の偏光方向と直交する方向に偏光する偏光フィルタ、および、前記無偏光部を透過してきた光源からの光を、前記偏光用パターンを一致させるべき角度に沿って前記ワイヤーグリッド偏光子に対して相対的に移動するカメラで受けることによって角度調整がなされる
ワイヤーグリッド偏光子が提供される。
【0009】
好適には、
前記無偏光部は、前記偏光用パターンに対して平行に形成された無偏光スリットである。
【0010】
好適には、
前記無偏光部は、前記偏光用パターンに対して平行に延びる境界線を含んでいる。
【0011】
好適には、
互いの前記境界線が前記偏光用パターンに対して平行に延びる仮想線上にくるようにして、一対の前記無偏光部が配置されている。
【0012】
好適には、
前記無偏光部は、前記偏光用パターンに対して直交する方向に延びる直交境界線を含んでいる。
【0013】
好適には、
互いの前記直交境界線が前記偏光用パターンに対して直交する方向に延びる仮想線上にくるようにして、一対の前記無偏光部が配置されている。
【0014】
本発明の他の局面によれば、
上述したワイヤーグリッド偏光子と、
前記偏光用パターンによる偏光方向と直交する方向に偏光する偏光フィルタと、
前記ワイヤーグリッド偏光子および前記偏光フィルタに向けて光を放射する光源と、
前記光源から放射され、前記無偏光部および前記偏光フィルタを透過してきた光を受けるカメラと、
前記偏光用パターンを一致させるべき角度に沿って前記カメラを移動させるアクチュエータとを備える
偏光光照射装置が提供される。
【0015】
好適には、
前記カメラが受けた前記光を表示するモニタを更に備えており、
前記モニタには、前記アクチュエータによって前記カメラが移動したときに、前記カメラの移動方向に直交する方向の前記光の移動幅を確認するためのマーカーが表示されている。
【0016】
好適には、
前記マーカーは、所定の間隔で配置された一対のマーカー線で構成されており、
前記カメラで受けた光の端縁が一対の前記マーカー線の間に位置するように前記ワイヤーグリッド偏光子の角度が調整される。
【0017】
本発明の他の局面によれば、
上述した偏光光照射装置を備える露光装置が提供される。
【0018】
本発明の別の局面によれば、
上述したワイヤーグリッド偏光子、および、前記偏光用パターンによる光の偏光方向と直交する方向に偏光する偏光フィルタに向けて光源からの光を放射し、
前記無偏光部および前記偏光フィルタを透過してきた光を、前記偏光用パターンを一致させるべき角度に沿って前記ワイヤーグリッド偏光子に対して相対的に移動するカメラで受ける
ワイヤーグリッド偏光子の角度調整方法が提供される。
【0019】
本発明の別の局面によれば、
偏光面、および、前記偏光面が形成された表面周縁部に形成された一対の軸方向マーカーを有する検光子であって、
前記一対の軸方向マーカーを互いに結んだ仮想線は、前記偏光面における偏光軸と平行になっており、
前記軸方向マーカーをカメラで映し、前記偏光軸を一致させるべき角度に沿って前記カメラに対して相対的に移動させられることによって角度調整がなされる
検光子が提供される。
【0020】
本発明の別の局面によれば、
偏光面、および、無偏光部を有する検光子であって、
前記偏光面における偏光軸を一致させるべき角度と直交する方向に偏光する偏光フィルタ、および、前記無偏光部を透過してきた光をカメラで受けつつ、前記一致させるべき角度に沿って前記カメラに対して相対的に移動させられることによって角度調整がなされる
検光子が提供される。
【0021】
本発明の別の局面によれば、
偏光面、および、前記偏光面が形成された表面周縁部に形成された一対の軸方向マーカーを有しており、前記一対の軸方向マーカーを互いに結んだ仮想線は、前記偏光面における偏光軸と平行になっている検光子について、
前記軸方向マーカーをカメラで映し、前記偏光軸を一致させるべき角度に沿って前記検光子を前記カメラに対して相対的に移動させる
検光子の角度調整方法が提供される。
【0022】
本発明の別の局面によれば、
偏光面と無偏光部とを有する検光子、および、前記偏光面における偏光軸を一致させるべき角度と直交する方向に偏光する偏光フィルタに向けて光を放射し、
前記無偏光部を透過してきた光をカメラで受けつつ、前記一致させるべき角度に沿って前記カメラに対して相対的に前記検光子を移動させる
検光子の角度調整方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るワイヤーグリッド偏光子、これを備える偏光光照射装置、露光装置、および偏光光照射方法によれば、ワイヤーグリッド偏光子に偏光用パターンと無偏光部とが形成されているので、光源から当該ワイヤーグリッド偏光子、および、当該ワイヤーグリッド偏光子の偏光用パターンによる光の偏光方向に直交する方向に偏光する偏光フィルタに向けて放射された光のうち、無偏光部以外(つまり、偏光用パターン)を透過した光は当該偏光フィルタを透過することができず、無偏光部を透過した光が偏光フィルタを(偏光されて)透過する。あるいは、先に偏光フィルタを(偏光されて)透過した光は、無偏光部以外(つまり、偏光用パターン)を透過することができず、無偏光部を透過する。
【0024】
これにより、無偏光部および偏光フィルタを透過してきた光をカメラで受けたとき、当該無偏光部に対応する光の領域が得られるので、偏光用パターンを一致させるべき角度に沿って移動するカメラでこの光の領域の角度を調整することでワイヤーグリッド偏光子の角度調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態に係る露光装置10の概略図である。
【
図2】本実施形態に係る偏光光照射装置100の構成を示す図である。
【
図3】本実施形態に係るワイヤーグリッド偏光子110の構成を示す拡大模式断面図である。
【
図4】本実施形態に係るワイヤーグリッド偏光子110の構成を示す平面図である。
【
図6】モニタ120に表示された光Lの帯とマーカー130との関係を示す図である。
【
図7】変形例3に係るワイヤーグリッド偏光子110の構成を示す図である。
【
図8】変形例3に係る他のワイヤーグリッド偏光子110の構成を示す図である。
【
図9】変形例4に係る偏光光照射装置100の構成を示す図である。
【
図10】変形例4に係る検光子300を示す図である。
【
図11】変形例5に係る検光子300を示す図である。
【
図12】変形例5に係る偏光光照射装置100の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(露光装置10の構成)
本発明が適用された実施形態に係る偏光光照射装置100を備える露光装置10について以下に説明する。露光装置10は、主に液晶パネルに用いられる光配向膜(ワークX)を製造するのに用いられる。この露光装置10は、
図1に示すように、大略、ワーク搬送装置20と、偏光光照射装置100とを備えている。
【0027】
ワーク搬送装置20は、露光装置10によって露光される光配向膜(ワークX)を所定の方向(ワークXの搬送方向)略水平搬送するための装置であり、公知の搬送装置が使用される。
【0028】
例えば、ワーク搬送装置20はワークXを載置するためのステージユニット22と、ステージユニット22をワークXの搬送方向及びワークXの搬送方向に直交する方向へ移動させるための移動機構24とを備えている。
【0029】
ステージユニット22はワークXを載置するためのステージ26と、ステージ26の高さを調整するための高さ調整機構28と、ステージ26を水平回転させるための水平回転機構30とを備えており、ステージ26の表面にはワークXの位置を保持するための保持機構32を備えている。
【0030】
水平回転機構30には電動ロータリーアクチュエーターが用いられ、移動機構24については複数の電動単軸アクチュエータが組み合わされて使用される。
【0031】
(偏光光照射装置100の構成)
本実施形態に係る偏光光照射装置100は、
図2に示すように、大略、ワイヤーグリッド偏光子110と、光源112と、偏光フィルタ114と、カメラ116と、アクチュエータ118と、モニタ120と、回転装置111とを備えている。
【0032】
ワイヤーグリッド偏光子110は、光源112から放射された光を所定の方向に偏光するための部材であり、
図3および
図4に示すように、ガラス基板121と、このガラス基板121上に形成された、互いに平行に形成された複数の偏光用パターン122と、この偏光用パターン122に対して平行に形成された無偏光部である「無偏光スリット124」とを有している。なお、偏光用パターン122の消光比(P偏光透過率÷S偏光透過率)は、良好な処理を行うために概ね50以上あることが望ましい。また、ガラス基板121としては一般的に石英ガラスが使用される。
【0033】
ワイヤーグリッド偏光子110の具体例(特に偏光用パターン122)としては、直線状の金属または金属化合物構造体を平行に複数周期配列したラインアンドスペース状のものが考えられ、ラインアンドスペースのピッチが光の波長よりも短い幅となるように形成されている。ここでいう「金属」としては、アルミニウム、チタン、モリブデン等が考えられ、これらの酸化物や化合物であってもよい。
【0034】
無偏光スリット124は、光源112からの光を偏光することなく透過する部分であるから、図示するように、偏光用パターン122が形成されていない部分が無偏光スリット124となっている。
【0035】
なお、本実施形態では、無偏光スリット124の幅が0.5mm以上1.0mm以下に設定されている。もちろん、この範囲に限定されるものではないが、ワイヤーグリッド偏光子110の有効幅に対する無偏光スリット124の幅が極力小さくなるように(概ね1/50以下で当該有効幅が50mmの場合は無偏光スリット124の幅は1mm以下)することで、無偏光スリット124からの照射による配向処理への悪影響(消光比が低いこと同様の好ましくない影響)を抑制できる点で望ましい。
【0036】
なお、無偏光スリット124の位置に関し、本実施形態では、
図2中、ワイヤーグリッド偏光子110の左右方向略中央部に無偏光スリット124が形成されているが、当該無偏光スリット124の位置は特に限定されるものではなく、図中左右方向のいずれの位置にあってもよい。
【0037】
さらに、無偏光スリット124は、本実施形態のように一直線状に連続してもよいし、断続的であってもよい。また、無偏光スリット124が延びる長さは、特に限定されるものではない。もちろん、角度調整の精度の観点から、一直線状に連続して無偏光スリット124を形成するのが好適である。
【0038】
また、偏光光照射装置100を備える露光装置10がスキャン露光であって、ワークXのスキャン方向と直交する方向に無偏光スリット124が配置される場合、無偏光スリット124による無偏光部分があっても、ワークXに与える積算偏光エネルギー量および均斉度への影響は軽微である。
【0039】
また、ワイヤーグリッド偏光子110は、回転装置111によって水平あるいは偏光フィルタ114に対して平行に回転することにより、ワークXのスキャン方向に対する偏光用パターン122や無偏光スリット124が延びる方向の角度を調整できるようになっている。
【0040】
回転装置111の一例を
図5に示す。この回転装置111は、保持枠200と、保持枠ホルダー202とで構成されている。
【0041】
保持枠200は、ワイヤーグリッド偏光子110が嵌め込まれる嵌合開口204が形成された略矩形状の枠体であり、いずれかの一辺に回転軸ピン206が嵌合する回転軸ピン孔208が形成されている。
【0042】
保持枠ホルダー202は、ワイヤーグリッド偏光子110が嵌め込まれた状態の保持枠200を回動可能に保持する部材であり、ホルダー本体205と、回転軸ピン206と、押しネジ210とを有している。
【0043】
ホルダー本体205は、2つの開口207が並べて形成された略矩形状の部材であり、各開口207に対する回転軸ピン206がそれぞれ配設されている。
【0044】
また、開口207を挟んで回転軸ピン206の反対側には、ホルダー本体205の段部212が形成されており、その段部212を貫通するようにして一つの開口207に対して一対(2本)の押しネジ210が所定の間隔で配置されている。各押しネジ210は、段部212から開口207に向かう突出長さを変えられるようになっている。
【0045】
これにより、ワイヤーグリッド偏光子110が嵌め込まれた状態の保持枠200における回転軸ピン孔208に回転軸ピン206を挿入することで、保持枠200(およびワイヤーグリッド偏光子110)が保持枠ホルダー202に対して、回転軸ピン206を中心として回動可能に取り付けられる。そして、一対の押しネジ210における段部212から開口207に向かう突出長さを調整することで、保持枠ホルダー202に対する保持枠200の角度を調整することができる。
【0046】
保持枠ホルダー202は、予めワークXのスキャン方向に対する角度が正しく設定されているので、偏光用パターン122や無偏光スリット124が延びる方向の角度を調整できる。
【0047】
図2に戻り、光源112は、ワイヤーグリッド偏光子110に向けて所定の波長を含む光を放射するものである。光源112の種類は特に限定されるものではなく、例えば、LEDや放電灯等を使用することができる。
【0048】
さらに言えば、光源112は露光用光源でなくとも、調整用に別途設置された光源を用いてもよい。その際LEDやLD(レーザーダイオード)などの単一波長光源であれば、消光比を高めるためにどの偏光フィルタを選定すればよいか明確にしやすく、ワイヤーグリッド偏光子110および偏光フィルタ114の消光比が露光用光源と同等、またはそれ以上となる波長の光源であれば後述する光の帯の観察においてモニタ120に表示される際の光Lの帯とそれ以外の領域との明暗(コントラスト)を強くでき、境界線(側線134)の認識がしやすくなるため作業性が向上すると考えられる。
【0049】
また、モニタ120に表示される際の光Lの帯とそれ以外の領域との間の境界線(側線134)が把握できる程度の明暗(コントラスト)が得られるのであれば、偏光光照射装置100が設置されている場所における室内灯等も光源112に含まれ得る。
【0050】
偏光フィルタ114は、ワイヤーグリッド偏光子110に形成された偏光用パターン122による光の偏光方向と直交する方向に偏光する部材であり、本実施形態では、光源112が向かうワイヤーグリッド偏光子110の面とは反対側の面に対向する位置(つまり、ワイヤーグリッド偏光子110とワークXとの間)に配置されている。さらに言えば、この偏光フィルタ114は、ワイヤーグリッド偏光子110に形成された無偏光スリット124から出た光を主に受けることのできる位置に配置されている。また、偏光フィルタ114は、ワイヤーグリッド偏光子110に形成された偏光用パターン122を一致させるべき正しい角度に対して直交する方向に偏光するように調整・位置決めされている。
【0051】
なお、偏光フィルタ114を光源112とワイヤーグリッド偏光子110との間に配置してもよい。この場合、光源112から放射されて偏光フィルタ114で偏光された光がワイヤーグリッド偏光子110を照射することになる。
【0052】
このように、ワイヤーグリッド偏光子110の偏光用パターン122の透過軸(偏光方向)に対して偏光フィルタ114の透過軸(偏光方向)を直交方向に配置することにより、ワイヤーグリッド偏光子110の偏光用パターン122で偏光された光は基本的に偏光フィルタ114を透過できない、あるいは、偏光フィルタ114を偏光透過した光は基本的に偏光用パターン122を透過できないことになる。
【0053】
なお、ワイヤーグリッド偏光子110における偏光用パターン122の透過軸(偏光方向)に対する偏光フィルタ114の透過軸(偏光方向)の直交精度は必ずしも高い必要はなく、後述するように、モニタ120に表示される際の光Lの帯とそれ以外の領域との間の境界線(側線134)が把握できる程度の明暗(コントラスト)が得られるのであればよい。
【0054】
カメラ116は、光源112から放射され、無偏光スリット124および偏光フィルタ114を透過してきた光を受けるものである。
【0055】
アクチュエータ118は、カメラ116を無偏光スリット124に対して平行に移動させる役割を有するものであり、本実施形態では、直交アクチュエータ126と、平行アクチュエータ128とを有している。本実施形態では直交アクチュエータ126および平行アクチュエータ128としてボールねじ駆動やリニアモータ駆動の電動単軸アクチュエータが用いられており、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)によって各アクチュエータ126,128の動作制御が行われている。
【0056】
直交アクチュエータ126は、無偏光スリット124が延びる方向に対して直交する方向にカメラ116を移動させるものである。なお、ワークXの搬送用(ワークXのスキャン方向)に用意されている別のアクチュエーターを直交アクチュエータ126として用いることもできる。
【0057】
また、平行アクチュエータ128は、ワイヤーグリッド偏光子110に形成された偏光用パターン122を一致させるべき正しい角度に沿ってカメラ116を移動させるものである。つまり、平行アクチュエータ128は、予めその移動方向が直交アクチュエータ126の走行軸(ワークXの搬送軸)に対して「正しい角度」となるように調整・位置決めされている。本実施形態における正しい角度とは直角をいう。
【0058】
モニタ120は、カメラ116が受けた光L(無偏光スリット124および偏光フィルタ114を透過してきた帯(線)状の光)を表示するものである。このモニタ120には、アクチュエータ118によってカメラ116が移動したときに、当該カメラ116の移動方向に直交する方向の光の移動幅を確認するためのマーカー130が表示されている。
【0059】
このマーカー130について具体的に説明する。マーカー130の一例としては、
図6に示すような、互いに平行に離間して配置された一対のマーカー線132を挙げることができる。後述するように、ワイヤーグリッド偏光子110の配置角度を調整する際は、カメラ116で受けてモニタ120に表示された帯状の光Lにおける少なくとも一方の側線134(本実施形態では図中下側の側線134を使用しているが、図中上側の側線134を使用してもよい。)が一対のマーカー線132の間に位置するように調整する。
【0060】
(偏光光照射装置100によるワイヤーグリッド偏光子110の角度調整手順)
次に、ここまで説明した偏光光照射装置100を用いたワイヤーグリッド偏光子110の角度調整手順について説明する。
【0061】
先ず、光源112からワイヤーグリッド偏光子110に向けて光Lを放射させる。すると、当該光Lのうち、無偏光スリット124以外(つまり、偏光用パターン122)を透過した光Lは偏光フィルタ114を透過することができず、無偏光スリット124を透過した光Lが偏光フィルタ114で偏光されてカメラ116側に透過する。
【0062】
然る後、アクチュエータ118のうち、直交アクチュエータ126を動作させて、透過してきた光Lを受ける位置にカメラ116を移動させる。当該光Lをカメラ116で受けると、モニタ120に拡大された光Lの帯が映るので、当該光Lの帯の図中下側の側線134が一対のマーカー線132の間に位置するように、直交アクチュエータ126でワイヤーグリッド偏光子110に形成された偏光用パターン122を一致させるべき正しい角度に略直交する方向のカメラ116の位置を調整する。
【0063】
無偏光スリット124に略直交する方向のカメラ116の位置が決まると、次に、平行アクチュエータ128を動作させて、ワイヤーグリッド偏光子110に形成された偏光用パターン122を一致させるべき正しい角度に沿ってカメラ116を移動させていく。
【0064】
ワイヤーグリッド偏光子110の角度が正しい角度に合っていない場合、すなわち、ワイヤーグリッド偏光子110における偏光用パターン122および無偏光スリット124の角度が正しい角度でない場合、平行アクチュエータ128でカメラ116を移動させていくと、光Lの帯の図中下側の側線134の位置が上下いずれかのマーカー線132から外側に出てしまうことになる。このようになった場合は、ワイヤーグリッド偏光子110の角度を微調整して、再度、直交アクチュエータ126あるいは平行アクチュエータ128によるカメラ116の移動を実施する。
【0065】
ワイヤーグリッド偏光子110の角度が正しい角度に合うと、平行アクチュエータ128による移動の全範囲において、カメラ116で受けた光Lの帯の図中下側の側線134の位置が常に一対のマーカー線132の間に収まるようになる。ここまでで、ワイヤーグリッド偏光子110の角度の調整が完了する。
【0066】
例えば、カメラ116で受けた光の帯を100倍に拡大してモニタ120に映し、一対のマーカー線132の間隔を5mmに設定して、平行アクチュエータ128でカメラ116を50mm移動させたとする。このとき、カメラ116で受けた光Lの帯の図中下側の側線134の位置が常に一対のマーカー線132の間に収まっていれば、atan(0.05/50)=0.057°以内の精度でワイヤーグリッド偏光子110の角度が正しい角度に設定されている。
【0067】
(偏光光照射装置100等の特徴)
本実施形態に係るワイヤーグリッド偏光子110、これを備える偏光光照射装置100、露光装置10によれば、ワイヤーグリッド偏光子110に偏光用パターン122とこの偏光用パターン122に対して平行に形成された無偏光スリット124とが形成されているので、光源112から当該ワイヤーグリッド偏光子110、および、当該ワイヤーグリッド偏光子110の偏光用パターン122による光の偏光方向に直交する方向に偏光する偏光フィルタ114に向けて放射された光のうち、無偏光スリット124以外(つまり、偏光用パターン122)を透過した光は当該偏光フィルタ114を透過することができず、無偏光スリット124を透過した光が偏光フィルタ114を(偏光されて)透過する。あるいは、先に偏光フィルタ114を(偏光されて)透過した光は、無偏光スリット124以外(つまり、偏光用パターン122)を透過することができず、無偏光スリット124を透過する。
【0068】
これにより、無偏光スリット124および偏光フィルタ114を透過してきた光をカメラ116で受けたとき、当該無偏光スリット124に対応する直線状の光Lの帯が得られるので、偏光用パターン122を一致させるべき角度に沿って移動するカメラ116でこの光Lの帯が延びる角度を調整することでワイヤーグリッド偏光子110の角度調整を行うことができる。
【0069】
また、少なくとも偏光フィルタ114で偏光された光をカメラ116で受けるので、(例えば風景を撮影する場合と同じように)無偏光光をカメラ116で見る場合に比べて偏光光のほうが明暗(コントラスト)が向上するので視認性が向上する。
【0070】
(変形例1)
上述した実施形態では、ワイヤーグリッド偏光子110の表面に対して略垂直に光が照射するように光源112を配置していたが、これに変えて、ワイヤーグリッド偏光子110の表面に対して所定の角度で光を照射できるように、当該ワイヤーグリッド偏光子110に対して光源112を斜めに向けてもよい。
【0071】
(変形例2)
また、偏光フィルタ114をカメラ116における受光レンズの先端(受光レンズとワイヤーグリッド偏光子110との間)に取り付けて、当該カメラ116と偏光フィルタ114とが一体で移動するようにしてもよい。
【0072】
(変形例3)
上述した実施形態では、ワイヤーグリッド偏光子110において偏光用パターン122とこの偏光用パターン122に対して平行に形成された無偏光スリット124とを形成していたが、これに変えて、
図7に示すように、ワイヤーグリッド偏光子110の隅部等に無偏光部250を形成してもよい。
【0073】
この無偏光部250は、変形例3では矩形状に形成されている領域であるが、少なくとも偏光用パターン122に対して平行に延びる境界線252を含んでいればよい。
【0074】
光源112から当該ワイヤーグリッド偏光子110および偏光フィルタ114に向けて放射された光のうち、無偏光部250を透過した光が偏光フィルタ114を(偏光されて)透過する。あるいは、先に偏光フィルタ114を(偏光されて)透過した光は無偏光部250以外(つまり、偏光用パターン122)を透過することができず、無偏光部250を透過する。
【0075】
この結果、境界線252を含む無偏光部250に対応する領域がモニタ120に表示されるので、上述した実施形態と同様に、境界線252を利用してワイヤーグリッド偏光子110の配置角度を調整することができる。
【0076】
また、
図8に示すように、偏光用パターン122に対して直交する方向に延びる直交境界線254を含む無偏光部250を配置してもよい。
【0077】
この場合、偏光用パターン122に対して直交する方向に延びるマーカー130をモニタ120に表示させて、同方向にカメラ116を移動させることにより、ワイヤーグリッド偏光子110の配置角度を調整することになる。
【0078】
さらに言えば、偏光用パターン122に対して直交する方向に延びる直交境界線254を含む少なくとも一対の無偏光部250を、互いの直交境界線254が偏光用パターン122に対して直交する方向に延びる仮想線256上にくるように配置してもよい。
【0079】
この場合、モニタ120に表示されるマーカー130は、1本のマーカー線132でよい。具体的には、平行アクチュエータ128を用いて一方の無偏光部250における直交境界線254に対応する位置に当該マーカー線132を合わせた後、直交アクチュエータ126を用いて(ワークXの搬送に用いられる別のアクチュエータでもよい)マーカー線132を他方の無偏光部250における直交境界線254に寄せていく。
【0080】
その結果として、マーカー線132が他方の無偏光部250における直交境界線254に一致するように、上述した方法でワイヤーグリッド偏光子110の角度調整を行う。
【0081】
このように、ワイヤーグリッド偏光子110に少なくとも一対の無偏光部250を形成するやり方については、
図7に示すように、偏光用パターン122に対して平行に延びる境界線252が偏光用パターン122に対して平行に延びる仮想線258上にくるようにして一対の無偏光部250が配置される場合にも適用できる。
【0082】
(変形例4)
ここまでは、ワイヤーグリッド偏光子110の偏光軸方向を調整することについて説明してきたが、同様の手法を「背景技術」に記載した調整用偏光子(検光子)に適用してもよい。
【0083】
調整用偏光子(「検光子300」という)は、偏光軸の方向が既知となっており、ワイヤーグリッド偏光子110の偏光軸方向を基準方向に合わせる際に使用される。万一、検光子300の偏光軸の方向がズレていれば、ワイヤーグリッド偏光子110の偏光軸方向も基準方向からズレてしまうので、当該検光子300の偏光軸の調整も非常に重要である。
【0084】
図9に示すように、検光子300はワイヤーグリッド偏光子110と調整用照度センサ302との間に配置されている。より具体的には、一例として、検光子300は、調整用照度センサ302と一体に組み合わされている。また、検光子300(および調整用照度センサ302)は、アクチュエータ118(直交アクチュエータ126および平行アクチュエータ128)によって移動できるようになっている。さらに、この検光子300をワイヤーグリッド偏光子110側から撮影できる位置にカメラ304を配設する。
【0085】
そして、
図10に示すように、検光子300の偏光面301が形成された表面周縁部に一対の軸方向マーカー310,312を設けておく。この軸方向マーカー310,312は、検光子300の表面周縁部における一方端部と、この一方端部の反対側に位置する他方端部とに配設されている。また、一対の軸方向マーカー310,312を互いに結んだ仮想線314が検光子300の偏光面301における偏光軸と平行になっている。
【0086】
先ず、アクチュエータ118を用いて、一方の軸方向マーカー310がカメラ304で撮影できるような位置に検光子300を移動させる(検光子300は調整用照度センサ302と一体に組み合わされているので、調整用照度センサ302も同じく移動する。)。具体的には、カメラ304で撮影された一方の軸方向マーカー310がモニタ120に拡大された状態で映るので、当該一方の軸方向マーカー310が一対のマーカー線132の間に位置するように検光子300を移動させる。
【0087】
然る後、平行アクチュエータ128を動作させて、ワイヤーグリッド偏光子110に形成された偏光用パターン122を一致させるべき正しい角度に沿って検光子300を移動させていく。
【0088】
検光子300の角度が正しい角度に合っていない場合、平行アクチュエータ128で検光子300を移動させていくと、他方の軸方向マーカー312の位置が上下いずれかのマーカー線132から外側に出てしまうことになる。このようになった場合は、検光子300の角度を微調整して、再度、アクチュエータ118による検光子300の移動を実施する。
【0089】
検光子300の角度が正しい角度に合うと、他方の軸方向マーカー312の位置が一対のマーカー線132の間に収まるようになる。ここまでで、検光子300の角度の調整が完了する。
【0090】
(変形例5)
一対の軸方向マーカー310,312に変えて、
図11に示すように、偏光面301に無偏光部としての無偏光スリット320が形成された検光子300を用いてもよい。なお、無偏光スリット320に変えて、偏光面301の隅部等に例えば矩形状の無偏光部を形成してもよい。偏光面301の隅部に矩形状の無偏光部を形成した場合における検光子300の角度調整方法については、上記変形例3における説明を援用する。
【0091】
この場合、
図12に示すように、検光子300とカメラ304との間に偏光フィルタ322を設ける。この偏光フィルタ322は、上述した実施形態における偏光フィルタ114と同様に、検光子300によって調整されるワイヤーグリッド偏光子110に形成された偏光用パターン122を一致させるべき正しい角度と直交する方向に偏光する部材である。なお、偏光フィルタ322はカメラ304と一体に組み合わせてもよいし、別体であってもよい。
【0092】
検光子300から見てカメラ304側あるいはカメラ304側とは反対側に配置した光源(図示せず。なお、外部からの光があれば、露光装置10としてこの光源を備える必要はない。)からの光のうち、検光子300の偏光面における無偏光スリット320以外を透過した光は、偏光フィルタ322を透過することができず、無偏光スリット320を透過した光のみが偏光フィルタ322で偏光されてカメラ304側に透過する。
【0093】
当該光をカメラ304で受けると、モニタ120に拡大された光の帯が映るので、当該光の帯の下側の側線134が一対のマーカー線132の間に位置するように、直交アクチュエータ126でワイヤーグリッド偏光子110に形成された偏光用パターン122を一致させるべき正しい角度に略直交する方向のカメラ304の位置を調整する。
【0094】
次に、平行アクチュエータ128を動作させて、ワイヤーグリッド偏光子110に形成された偏光用パターン122を一致させるべき正しい角度に沿って検光子300を移動させていく。
【0095】
検光子300の角度が正しい角度に合っていない場合、すなわち、検光子300における無偏光スリット320の角度が正しい角度でない場合、平行アクチュエータ128でカメラ304を移動させていくと、光の帯の下側の側線134の位置が上下いずれかのマーカー線132から外側に出てしまうことになる。このようになった場合は、検光子300の角度を微調整して、再度、アクチュエータ118による検光子300の移動を実施する。
【0096】
検光子300の角度が正しい角度に合うと、平行アクチュエータ128による移動の全範囲において、カメラ304で受けた光の帯の下側の側線134の位置が常に一対のマーカー線132の間に収まるようになる。ここまでで、検光子300の角度の調整が完了する。
【0097】
なお、ここまでは、検光子300の偏光面301における「偏光軸を一致させるべき角度」としてワイヤーグリッド偏光子110に形成された偏光用パターン122を用いる場合について説明したが、例えば、直交アクチュエータ126の動作方向に対して平行な向き(あるいは、平行アクチュエータ128の動作方向に対して直交する向き)を「偏光軸を一致させるべき角度」としてもよい。
【0098】
この場合、カメラ304を直交アクチュエータ126の走査軸上に配置し、偏光フィルタ322の偏光方向を当該直交アクチュエータ126の動作方向に対して直交する向きに設定することになる。
【0099】
(変形例6)
本明細書に記載したすべて実施例・変形例について、ワイヤーグリッド偏光子110・検光子300を固定しつつカメラ116,304を移動させてもよいし、ワイヤーグリッド偏光子110・検光子300を移動させてカメラ116,304を固定してもよい。さらに言えば、ワイヤーグリッド偏光子110・検光子300、および、カメラ116,304の両方を移動させてもよい。要は、ワイヤーグリッド偏光子110・検光子300に対して相対的にカメラ116,304が移動すればよい。
【0100】
なお、上述してきた実施例・変形例では、ワイヤーグリッド偏光子110・検光子300に対して相対的にカメラ116,304が連続的に移動する例を示してきたが、本明細書全体を通して、「相対的に移動する」とは、このように連続的に移動するだけでなく、「断続的に移動する」場合も含む概念である。「断続的に移動する」とは、ワイヤーグリッド偏光子110・検光子300に対して停止した状態でカメラ116,304が光を受け、その後、ワイヤーグリッド偏光子110・検光子300に対して相対的にカメラ116,304が移動し、再び、停止した状態でカメラ116,304が光を受けるといった動きを複数回行うことを意味する。
【0101】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0102】
10…露光装置、20…ワーク搬送装置、22…ステージユニット、24…移動機構、26…ステージ、28…高さ調整機構、30…水平回転機構、32…保持機構
100…偏光光照射装置、110…ワイヤーグリッド偏光子、111…回転装置、112…光源、114…偏光フィルタ、116…カメラ、118…アクチュエータ、120…モニタ
121…ガラス基板、122…偏光用パターン、124…無偏光スリット、126…直交アクチュエータ、128…平行アクチュエータ、130…マーカー、132…マーカー線、134…側線
200…保持枠、202…保持枠ホルダー、204…嵌合開口、205…ホルダー本体、206…回転軸ピン、207…開口、208…回転軸ピン孔、210…押しネジ、212…段部
250…無偏光部、252…境界線、254…直交境界線、256…仮想線、258…仮想線
300…検光子、301…偏光面、302…調整用照度センサ、304…カメラ
310…(一方端部の)軸方向マーカー、312…(他方端部の)軸方向マーカー、314…仮想線
320…(検光子300の偏光面における)無偏光スリット、322…偏光フィルタ
L…光、X…ワーク