(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104889
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】精製ガスの製造方法およびその製造装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/047 20060101AFI20230721BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20230721BHJP
【FI】
B01D53/047
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208780
(22)【出願日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2022005732
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西井 菜々子
(72)【発明者】
【氏名】金子 雅之
(72)【発明者】
【氏名】貝川 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】郷田 玲央奈
【テーマコード(参考)】
4D012
4G146
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA01
4D012CA03
4D012CB16
4D012CB18
4D012CD07
4D012CE01
4D012CE03
4D012CF03
4D012CF05
4D012CH08
4D012CJ06
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC07
4G146JC20
4G146JC24
4G146JC27
4G146JD06
(57)【要約】
【課題】消費エネルギーを抑制して高濃度の炭酸ガスを含む精製ガスを取り出すことが可能な精製ガスの製造方法および精製ガスの製造装置を提供すること。
【解決手段】炭酸ガスを含む精製ガスの製造方法であって、炭酸ガスを含む対象ガスから炭酸ガスを吸着する第1吸着塔を用いた真空再生型圧力スイング吸着により前記対象ガスよりも炭酸ガスの濃度の高い中間ガスを生成する第1濃縮工程と、前記中間ガスから炭酸ガスを吸着する第2吸着塔を用いた真空再生型圧力スイング吸着もしくは圧力スイング吸着または膜分離により前記中間ガスよりもさらに炭酸ガスの濃度の高い精製ガスを生成する第2濃縮工程と、を備える精製ガスの製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガスを含む精製ガスの製造方法であって、
炭酸ガスを含む対象ガスから炭酸ガスを吸着する第1吸着塔を用いた真空再生型圧力スイング吸着により前記対象ガスよりも炭酸ガスの濃度の高い中間ガスを生成する第1濃縮工程と、
前記中間ガスから炭酸ガスを吸着する第2吸着塔を用いた真空再生型圧力スイング吸着もしくは圧力スイング吸着または膜分離により前記中間ガスよりもさらに炭酸ガスの濃度の高い精製ガスを生成する第2濃縮工程と、を備える精製ガスの製造方法。
【請求項2】
前記対象ガス中の炭酸ガスの濃度は、3体積%以上70体積%以下である、請求項1に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項3】
前記中間ガス中の炭酸ガスの濃度は、50体積%以上80体積%以下である、請求項1に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項4】
前記精製ガス中の炭酸ガスの濃度は、80体積%以上である、請求項1に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項5】
前記第1濃縮工程および前記第2濃縮工程は、前記第1吸着塔および前記第2吸着塔内の不純物を排出するパージ工程を有しない、請求項1に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項6】
2つ以上の前記第1吸着塔および2つ以上の前記第2吸着塔を用いる、請求項1に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項7】
前記第2濃縮工程は、前記第1濃縮工程よりも高圧で炭酸ガスを濃縮する、請求項1に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項8】
炭酸ガスを含む精製ガスの製造装置であって、
炭酸ガスを含む対象ガス中の炭酸ガスを真空再生型圧力スイング吸着により吸着する第1吸着塔を含み、前記対象ガスよりも炭酸ガスの濃度の高い中間ガスを生成する第1濃縮装置と、
前記中間ガス中の炭酸ガスを真空再生型圧力スイング吸着もしくは圧力スイング吸着により吸着する第2吸着塔または前記中間ガス中の炭酸ガスを選択的に透過させる膜分離装置を含み、前記中間ガスよりもさらに炭酸ガスの濃度の高い精製ガスを生成する第2濃縮装置と、を備える精製ガスの製造装置。
【請求項9】
2つ以上の前記第1吸着塔および2つ以上の前記第2吸着塔を備える、請求項8に記載の精製ガスの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、精製ガスの製造方法およびその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化ガスの削減のために、工場等から排出される排ガス中の炭酸ガス(CO2)を回収し、再利用する方法が検討されている。回収した炭酸ガスは、例えば、80体積%以上の濃度に濃縮することで有効利用することができる。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2021-35654号公報)では、排ガス中の炭酸ガスを温度スイング吸着装置によって濃縮している。また、特許文献2(特開平6-327936号公報)では、低濃度の炭酸ガスを2段階で濃縮しており、第1段階では膜式分離装置によって、第2段階では圧力スイング吸着装置または真空再生型圧力スイング吸着装置によって、それぞれ濃縮している。なお、特許文献3(特開2019-13883号公報)では、空気を2段階で濃縮しており、第1段階では圧力スイング吸着装置によって、第2段階では真空吸引式分離装置、圧力変動式分離装置、膜式分離装置または深冷分留装置のいずれかによって、それぞれ濃縮することで高濃度の酸素を分離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-35654号公報
【特許文献2】特開平6-327936号公報
【特許文献3】特開2019-13883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、炭酸ガスの吸着工程後回収工程前に、吸着塔の空隙部に残存する窒素等のガスを減圧しながら排気するパージ工程を含む。しかし、パージ工程により吸着した炭酸ガスも脱離するため、回収率が低下する。また、パージ工程では真空ポンプを必要とするため、大きな設備が必要となる。さらに、吸着塔内を昇温するための熱源も必要となり、エネルギー効率もよくない。
【0006】
特許文献2では、第1段階前または第2段階前の炭酸ガスを含むガスを、周辺設備の熱源を用いて除湿している。しかし、周辺設備に熱源を有する必要があるため、設置場所が限定される。また、熱源が必要となることから、エネルギー効率もよくない。さらに、特許文献2の記載の装置は、設備点数が多いため、大きな設備が必要となる。
【0007】
本開示の目的は、消費エネルギーを抑制して高濃度の炭酸ガスを含む精製ガスを取り出すことが可能な精製ガスの製造方法および精製ガスの製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔1〕炭酸ガスを含む精製ガスの製造方法であって、
炭酸ガスを含む対象ガスから炭酸ガスを吸着する第1吸着塔を用いた真空再生型圧力スイング吸着により前記対象ガスよりも炭酸ガスの濃度の高い中間ガスを生成する第1濃縮工程と、
前記中間ガスから炭酸ガスを吸着する第2吸着塔を用いた真空再生型圧力スイング吸着もしくは圧力スイング吸着または膜分離により前記中間ガスよりもさらに炭酸ガスの濃度の高い精製ガスを生成する第2濃縮工程と、を備える精製ガスの製造方法。
【0009】
〔2〕前記対象ガス中の炭酸ガスの濃度は、3体積%以上70体積%以下である、〔1〕に記載の精製ガスの製造方法。
【0010】
〔3〕前記中間ガス中の炭酸ガスの濃度は、50体積%以上80体積%以下である、〔1〕または〔2〕に記載の精製ガスの製造方法。
【0011】
〔4〕前記精製ガス中の炭酸ガスの濃度は、80体積%以上である、〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の精製ガスの製造方法。
【0012】
〔5〕前記第1濃縮工程および前記第2濃縮工程は、前記第1吸着塔および前記第2吸着塔内の不純物を排出するパージ工程を有しない、〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載の精製ガスの製造方法。
【0013】
〔6〕2つ以上の前記第1吸着塔および2つ以上の前記第2吸着塔を用いる、〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載の精製ガスの製造方法。
【0014】
〔7〕前記第2濃縮工程は、前記第1濃縮工程よりも高圧で炭酸ガスを濃縮する、〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載の精製ガスの製造方法。
【0015】
〔8〕炭酸ガスを含む精製ガスの製造装置であって、
炭酸ガスを含む対象ガス中の炭酸ガスを真空再生型圧力スイング吸着により吸着する第1吸着塔を含み、前記対象ガスよりも炭酸ガスの濃度の高い中間ガスを生成する第1濃縮装置と、
前記中間ガス中の炭酸ガスを真空再生型圧力スイング吸着もしくは圧力スイング吸着により吸着する第2吸着塔または前記中間ガス中の炭酸ガスを選択的に透過させる膜分離装置を含み、前記中間ガスよりもさらに炭酸ガスの濃度の高い精製ガスを生成する第2濃縮装置と、を備える精製ガスの製造装置。
【0016】
〔9〕2つ以上の前記第1吸着塔および2つ以上の前記第2吸着塔を備える、〔8〕に記載の精製ガスの製造装置。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、消費エネルギーを抑制して高濃度の炭酸ガスを含む精製ガスを取り出すことが可能な精製ガスの製造方法および精製ガスの製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施形態における精製ガスの製造方法の概略フローチャートである。
【
図2】
図2は、本実施形態における精製ガスの製造装置の構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態が説明される。ただし以下の説明は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0020】
<精製ガスの製造方法>
本開示に係る精製ガスの製造方法は、炭酸ガスを含む対象ガスから炭酸ガスを吸着する第1吸着塔を用いた真空再生型圧力スイング吸着により対象ガスよりも炭酸ガスの濃度の高い中間ガスを生成する第1濃縮工程と、
中間ガスから炭酸ガスを吸着する第2吸着塔を用いた真空再生型圧力スイング吸着もしくは圧力スイング吸着または膜分離により中間ガスよりもさらに炭酸ガスの濃度の高い精製ガスを生成する第2濃縮工程と、を備える。
【0021】
図1は、本実施形態における精製ガスの製造方法の概略フローチャートである。以下、精製ガスの製造方法の各工程について説明する。なお、本開示では第1濃縮工程と第2濃縮工程の2段階による精製ガスの製造方法を説明しているが、2段階に限定されるものではなく、さらに濃縮工程を備えていてもよい。
【0022】
(第1濃縮工程)
第1濃縮工程とは、炭酸ガスを含む対象ガスから炭酸ガスを吸着する第1吸着塔を用いた真空再生型圧力スイング吸着により対象ガスよりも炭酸ガスの濃度の高い中間ガスを生成する工程である。本工程は、(1)吸着工程と、(2)真空排気工程と、(3)復圧工程と、を含む。
【0023】
本明細書において「対象ガス」とは、少なくとも炭酸ガスを含むガスを示す。対象ガス中の炭酸ガスの濃度は、3体積%以上70体積%以下であることが好ましく、5体積%以上50体積%以下であることがより好ましく、10体積%以上50体積%以下であることがさらにより好ましい。対象ガスは、炭酸ガスを含む限り、他のガスを含んでもよい。対象ガスとして、例えば、工場や農場等からの排ガスを用いてもよい。対象ガスは、例えば外部から取り入れられ、第1吸着塔へと導入される。なお、対象ガスとして排ガスを用いる場合、排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)等の有害物質は、適切な処理により除去されることが好ましい。
【0024】
本明細書において「中間ガス」とは、対象ガスよりも炭酸ガスの濃度の高いガスを示す。対象ガス中の炭酸ガスの濃度は、50体積%以上80体積%以下であることが好ましく、60体積%以上80体積%以下であることがより好ましい。中間ガスは、炭酸ガスを含む限り、他のガスを含んでもよい。
【0025】
(1)吸着工程
本工程は、第1吸着塔に対象ガスを導入し、炭酸ガスを吸着する工程である。第1吸着塔には、対象ガスに含まれる炭酸ガスを回収するための炭酸ガス吸着剤が充填される。炭酸ガス吸着剤としては、例えば、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、ゼオライト、金属有機構造体(MOF:Metal Organic Framework)、固体アミン等が挙げられる。これらの中でも、吸着容量の観点から、ゼオライトが好ましい。複数の炭酸ガス吸着剤が組み合わされて第1吸着塔に充填されてもよい。
【0026】
また、第1吸着塔には、対象ガスに含まれる水分を回収するための水分吸着剤が充填されてもよい。水分が含まれている場合、炭酸ガス吸着剤への水分の吸着による炭酸ガスの吸着容量の低下といった不都合が生じるおそれがあるからである。水分吸着剤としては、例えば、シリカゲル、活性アルミナ、疎水性ゼオライト等が挙げられる。これらの中でも、吸着容量の観点から、活性アルミナが好ましい。複数の水分吸着剤が組み合わされて第1吸着塔に充填されてもよい。なお、第1吸着塔に水分吸着剤が充填されている場合、第1吸着塔に対象ガスを導入する前に、対象ガスを除湿しなくてもよい。
【0027】
第1吸着塔に充填されている炭酸ガス吸着剤および水分吸着剤は、第1吸着塔の入口側(第1吸着塔の対象ガスの導入側)に充填されていることが好ましい。このように充填されることで、効率的に炭酸ガスおよび水分が各吸着剤に吸着される。
【0028】
第1吸着塔に充填される炭酸ガス吸着剤および水分吸着剤の充填量は、対象ガスの組成や使用する各吸着剤の種類等によって適宜変更すればよい。
【0029】
本工程では、2つ以上の第1吸着塔を用いることが好ましい。2つ以上の第1吸着塔を用いることで、連続的に吸着工程が実施される。なお、連続的に吸着工程は実施されないが、本工程は、1つの第1吸着塔のみを用いることでも実施することができる。
【0030】
本工程は、例えば、5kPaG以上0.1MPaG未満の圧力下で行ってもよい。
【0031】
(2)真空排気工程
本工程は、吸着工程後のガスを真空ポンプで減圧して中間ガスを回収する工程である。本工程は、負圧まで減圧され、例えば、-60kPaGよりも高真空圧まで減圧してもよい。このように減圧することで、効率的に中間ガスを回収することができる。
【0032】
(3)復圧工程
本工程は、真空排気工程後の第1吸着塔の圧力を戻す工程である。本工程は、例えば、大気圧のガスを導入することで実施される。大気圧のガスとしては、例えば、対象ガス、吸着工程で炭酸ガスを除去した後に第1吸着塔より排出される排出ガス等を用いてもよい。
【0033】
(4)その他
第1濃縮工程では、第1吸着塔内の炭酸ガス以外の成分を排出するパージ工程を有しないことが好ましい。ここで、「パージ工程」とは、吸着工程と真空排気工程との間で、炭酸ガスを第1吸着塔内に流し、第1吸着塔内の空隙に存在する炭酸ガス以外の成分(窒素ガス等)を取り除く工程である。パージ工程を有する場合、第1吸着塔に炭酸ガス用のブロワが必要になり、設備が大型化し、消費エネルギーが増加する。また、パージ工程を実施しなくても、後述する第2濃縮工程においてさらに炭酸ガスが濃縮されることから、パージ工程を実施しないことで、消費エネルギーを削減することができる。
【0034】
(第2濃縮工程)
第2濃縮工程とは、炭酸ガスを含む中間ガスから炭酸ガスを吸着する第2吸着塔を用いた真空再生型圧力スイング吸着もしくは圧力スイング吸着または膜分離により中間ガスよりもさらに炭酸ガスの濃度の高い精製ガスを生成する工程である。真空再生型圧力スイング吸着により精製ガスを生成する場合、本工程は、(1)吸着工程と、(2)均圧工程と、(3)大気排気工程と、(4)真空排気工程と、(5)復圧工程と、を含む。また、圧力スイング吸着により精製ガスを生成する場合、本工程は、(1)吸着工程と、(2)大気排気工程と、(3)回収工程と、(4)復圧工程と、を含む。さらに、膜分離により精製ガスを生成する場合、本工程は、分離工程を含む。
【0035】
本明細書において「精製ガス」とは、中間ガスよりも炭酸ガスの濃度の高いガスを示す。対象ガス中の炭酸ガスの濃度は、80体積%以上であることが好ましく、85体積%以上であることがより好ましい。精製ガスは、炭酸ガスを含む限り、他のガスを含んでもよい。
【0036】
(1)真空再生型圧力スイング吸着による方法
(i)吸着工程
本工程は、中間ガスに含まれる炭酸ガスを吸着する工程である。第2吸着塔には、中間ガス中に含まれる炭酸ガスを回収するための炭酸ガス吸着剤が充填される。炭酸ガス吸着剤としては、例えば、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、ゼオライト、MOF、固体アミン等が挙げられる。複数の炭酸ガス吸着剤が組み合わされて第2吸着塔に充填されてもよい。
【0037】
本工程では、2つ以上の第2吸着塔を用いることが好ましく、3つ以上の第2吸着塔を用いることがより好ましい。2つ以上の第2吸着塔を用いることで、連続的に吸着工程が実施される。なお、連続的に吸着工程は実施されないが、本工程は、1つの第2吸着塔のみを用いることでも実施することができる。
【0038】
本工程は、中間ガスを圧縮して行う必要があり、0.1MPaG以上まで圧縮することが好ましい。圧縮を行わない場合、第2吸着塔に吸着される炭酸ガスの量が低下する。また、本工程は、第1濃縮工程における吸着工程よりも高圧で実施することが好ましい。
【0039】
(ii)均圧工程
本工程は、吸着工程後の第2吸着塔と他の第2吸着塔との間でガスを移動させて均圧する工程である。吸着工程が終了した直後の第2吸着塔内は加圧状態であるため、回収工程が終了した直後で減圧状態の他の第2吸着塔との間でガスを移動させて、両者を均圧する。
【0040】
(iii)大気排気工程
本工程は、均圧工程を経た状態である第2吸着塔からガスを排出することにより、第2吸着塔の圧力を大気圧まで減圧する工程である。なお、排出したガスは大気中に放出せず、再度第2吸着塔に導入してもよい。
【0041】
(iv)真空排気工程
本工程は、大気排気工程後のガスを真空ポンプで減圧することで精製ガスを回収する工程である。本工程は、負圧まで減圧され、例えば、-60kPaGよりも高真空圧まで減圧してもよい。このように減圧することで、効率的に精製ガスを回収することができる。
【0042】
(v)復圧工程
本工程は、真空排気工程後の第2吸着塔の圧力を戻す工程である。本工程は、例えば、大気圧のガスを導入することで実施される。大気圧のガスとしては、例えば、吸着工程で炭酸ガスを除去した後に第2吸着塔より排出される排出ガス等を用いてもよい。
【0043】
(vi)その他
第1濃縮工程と同様、第1吸着塔内の炭酸ガス以外の成分を排出するパージ工程を有しないことが好ましい。なお、上述の第1濃縮工程と同様の内容であり、説明を省略する。
【0044】
(2)圧力スイング吸着による方法
本方法では、真空再生型圧力スイング吸着による方法における吸着工程、大気排気工程および復圧工程を同様に含むため、説明は省略する。また、真空再生型圧力スイング吸着による方法においては、真空ポンプで負圧まで減圧することにより精製ガスを回収しているが、圧力スイング吸着による方法においては、常圧で精製ガスを回収している点が異なる。なお、真空再生型圧力スイング吸着による方法と同様、第1吸着塔内の炭酸ガス以外の成分を排出するパージ工程を有しないことが好ましい。
【0045】
(3)膜分離による方法
本方法では、炭酸ガスを選択的に透過させる分離膜に中間ガスを導入し、炭酸ガスを分離する分離工程を含む。本工程は、中間ガスを圧縮して導入し、膜間の分圧差により分離が進行する。本工程は、0.2MPaG以上まで圧縮することが好ましい。
【0046】
本開示では、消費エネルギーの観点から、第2濃縮工程は、真空再生型圧力スイング吸着による方法を用いることが好ましい。
【0047】
<精製ガスの製造装置>
本開示に係る精製ガスの製造装置は、炭酸ガスを含む対象ガス中の炭酸ガスを真空再生型圧力スイング吸着により吸着する第1吸着塔を含み、対象ガスよりも炭酸ガスの濃度の高い中間ガスを生成する第1濃縮装置と、
中間ガス中の炭酸ガスを真空再生型圧力スイング吸着もしくは圧力スイング吸着により吸着する第2吸着塔または中間ガス中の炭酸ガスを選択的に透過させる炭酸ガス分離膜を含み、中間ガスよりもさらに炭酸ガスの濃度の高い精製ガスを生成する第2濃縮装置と、を備える。
【0048】
図2は、本実施形態における精製ガスの製造装置の構成の一例を示す概略図である。以下、精製ガスの製造装置について説明する。なお、上述の<精製ガスの製造方法>において説明した内容と重複する説明は省略する。また、本開示では第1濃縮装置と第2濃縮装置の2段構成による精製ガスの製造装置を説明しているが、2段構成に限定されるものではなく、さらに濃縮装置を備えていてもよい。
【0049】
(第1濃縮装置)
第1濃縮装置1は、炭酸ガスを含む対象ガスから炭酸ガスを吸着する第1吸着塔10を用いた真空再生型圧力スイング吸着により対象ガスよりも炭酸ガスの濃度の高い中間ガスを生成する装置である。すなわち、第1濃縮装置1は真空再生型圧力スイング吸着装置である。
【0050】
第1吸着塔10には、対象ガスに含まれる炭酸ガスを回収するための炭酸ガス吸着剤が充填されている。対象ガスは、対象ガス導出配管11を介して第1ブロワ12により第1吸着塔10に導出され、対象ガスに含まれる炭酸ガスが炭酸ガス吸着剤に吸着する。その後、吸着したガスを第1真空ポンプ13で減圧することで、中間ガスが得られる。なお、吸着されなかったガスは排出ガスとして排出される。
【0051】
また、第1吸着塔10には、対象ガスに含まれる水分を回収するための水分吸着剤が充填されている。このようにすることで、第1吸着塔10に対象ガスを導入する前に、除湿部を設けなくてもよくなるため、設備を簡素化することができる。
【0052】
上述の通り、第1吸着塔に充填されている炭酸ガス吸着剤および水分吸着剤は、第1吸着塔10の入口側(第1吸着塔10の対象ガスの導入側(
図2中、第1吸着塔10の下側))に充填されていることが好ましい。このように充填されることで、効率的に炭酸ガスおよび水分が各吸着剤に吸着される。
【0053】
上述の通り、第1濃縮装置1は第1吸着塔10を2塔以上備えていることが好ましい。
図2においては、第1濃縮装置1は2つの第1吸着塔(第1吸着塔10a、第1吸着塔10b)により構成されており、第1吸着塔10aと第1吸着塔10bに対象ガスが交互に導出されることで、連続的に中間ガスを生成することができる。
【0054】
(第2濃縮装置)
第2濃縮装置2は、中間ガス中の炭酸ガスを真空再生型圧力スイング吸着により吸着する第2吸着塔20または中間ガス中の炭酸ガスを選択的に透過させる膜分離装置を含み、前記中間ガスよりもさらに炭酸ガスの濃度の高い精製ガスを生成する装置である。
図2では、第2濃縮装置2は真空再生型圧力スイング吸着装置である。
【0055】
(1)真空再生型圧力スイング吸着装置
第2吸着塔20には、中間ガスに含まれる炭酸ガスを回収するための炭酸ガス吸着剤が充填されている。中間ガスは、中間ガス導出配管21を介して第2ブロワ22により第2吸着塔20に導出され、中間ガスに含まれる炭酸ガスが炭酸ガス吸着剤に吸着する。その後、吸着したガスを第2真空ポンプ23で減圧することで、精製ガスが得られる。なお、吸着されなかったガスは排出ガスとして排出されるか、または中間ガスに合流させて再度第2吸着塔20に導入される。
【0056】
上述の通り、第2濃縮装置2は第2吸着塔20を2塔以上備えていることが好ましい。
図2においては、第2濃縮装置2は2つの第2吸着塔(第2吸着塔20a、第2吸着塔20b)により構成されており、第2吸着塔20aと第2吸着塔20bに中間ガスが交互に導出されることで、連続的に中間ガスを生成することができる。
【0057】
(2)圧力スイング吸着装置
本装置(図示せず)は、上述の真空再生型圧力スイング吸着装置における第2真空ポンプ23を備えない点を除いては、真空再生型圧力スイング吸着装置と同様の構成である。
【0058】
(3)膜分離装置
本装置(図示せず)には、中間ガスに含まれる炭酸ガスを選択的に透過させるための分離膜モジュールが設置されている。中間ガスは、中間ガス圧縮機により分離膜モジュールに導出され、中間ガスに含まれる炭酸ガスが分離膜により分離され、精製ガスが得られる。
【実施例0059】
以下、実施例が説明される。ただし以下の例は、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0060】
<実施例1~8>
表1に記載の炭酸ガスの濃度である対象ガスが準備された。第1濃縮装置および第2濃縮装置共に真空再生型圧力スイング吸着装置である精製ガスの製造装置が準備された。上述の精製ガスの製造方法に従い、精製ガスが製造された。第1濃縮装置および第2濃縮装置の条件は以下の通りである。対象ガスの流量および中間ガスの流量は表1に示す通りである。第1濃縮装置における炭酸ガス吸着剤としてはゼオライトを用いた。第1濃縮装置における水分吸着剤としては、実施例1~6は活性アルミナを、実施例7はシリカゲルを、実施例8は疎水性ゼオライトを、それぞれ用いた。第2濃縮装置における炭酸ガス吸着剤としては活性アルミナを用いた。なお、パージ工程は実施されていない。また、表1中の「PVSA」は、真空再生型圧力スイング吸着装置を示す。
【0061】
(第1濃縮装置の条件)
吸着圧力:30kPaG
再生圧力:-90kPaG
温度 :40℃
【0062】
(第2濃縮装置の条件)
吸着圧力:0.1MPaG
再生圧力:-90kPaG
温度 :40℃
【0063】
<実施例9~11>
表1に記載の炭酸ガスの濃度である対象ガスが準備された。第1濃縮装置として実施例1~6と同様の装置が、第2濃縮装置として圧力スイング吸着装置が準備された。第1濃縮装置の条件は実施例1と同様である。第1濃縮装置における炭酸ガス吸着剤としてはゼオライトを、水分吸着剤としては活性アルミナを、それぞれ用いた。第2濃縮装置の条件は以下の通りである。対象ガスの流量および中間ガスの流量は表1に示す通りである。第2濃縮装置における炭酸ガス吸着剤としては活性アルミナを用いた。なお、パージ工程は実施されていない。また、表1中の「PSA」は、圧力スイング吸着装置を示す。
【0064】
(第2濃縮装置の条件)
吸着圧力:0.7MPaG
再生圧力:大気圧
温度 :40℃
【0065】
<実施例12>
表1に記載の炭酸ガスの濃度である対象ガスが準備された。第1濃縮装置として実施例1~6と同様の装置が、第2濃縮装置として膜分離装置が準備された。第1濃縮装置の条件は実施例1と同様である。第1濃縮装置における炭酸ガス吸着剤としてはゼオライトを、水分吸着剤としては活性アルミナを、それぞれ用いた。第2濃縮装置の条件は以下の通りである。対象ガスの流量および中間ガスの流量は表1に示す通りである。
【0066】
(第2濃縮装置の条件)
圧力:0.5MPaG
温度:30℃
【0067】
<比較例1>
表1に記載の炭酸ガスの濃度である対象ガスが準備された。第1濃縮装置として実施例12の膜分離装置と同様の装置が、第2濃縮装置として実施例1~8の第2濃縮装置と同様の装置が準備された。第1濃縮装置の条件は実施例12と、第2濃縮装置の条件は実施例1~8と同様である。対象ガスの流量および中間ガスの流量は表1に示す通りである。
【0068】
<評価>
(炭酸ガスの濃度)
実施例1~12および比較例1において、第1濃縮装置により得られた中間ガス中の炭酸ガスの濃度および第2濃縮装置により得られた精製ガス中の炭酸ガスの濃度を、それぞれ測定した。測定には、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、型番:GC-2014AF)を用いた。結果を表1の「CO2濃度」の各欄に示す。
【0069】
(炭酸ガスの排出量評価)
実施例1~12および比較例1について、炭酸ガスの排出量評価を行った。これは、消費エネルギーと電力における炭酸ガス排出量から算出される評価値である。排出量評価は、以下の式(1)を用いて求められる。
排出量評価=電力(kW)×CO2係数(kg/kW)/CO2回収量(kg)・・・式(1)
式(1)中、CO2係数は0.47とする。また、実施例1~12および比較例1について、炭酸ガスの回収量は10.6kgであることから、式(1)中のCO2回収量は10.6kgとする。
【0070】
結果を表1の「排出量評価」の欄に示す。この値が1より小さければ、炭酸ガスの排出量より回収量が上回っていることを示し、1より大きければ炭酸ガスの回収量より排出量が上回っていることを示す。本実施例では、評価値が小さいほど良好(炭酸ガスの削減効果がある)とした。
【0071】
【0072】
<結果>
表1に示されるように、実施例1~12において、80体積%以上の炭酸ガスを含有する精製ガスを得ることができた。また、炭酸ガスの排出量評価は、実施例1~12において1未満であり、炭酸ガスの削減効果が確認された。
【0073】
比較例1では、実施例と同等の98体積%の炭酸ガスを含有する精製ガスを得ることができた。一方、炭酸ガスの排出量評価は1.5であり、1よりも高い値を示した。
【0074】
このように、本開示に記載の精製ガスの製造方法および精製ガスの製造装置を用いることによって、消費エネルギーを抑制して高濃度の炭酸ガスを含む精製ガスを取り出すことができる。そのため、地球温暖化ガスを削減することができ、持続可能な開発目標(SDGs)の一部活動に貢献することができる。なお、電力は再生可能エネルギーを使用してもよい。
【0075】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 第1濃縮装置、2 第2濃縮装置、10,10a,10b 第1吸着塔、11 対象ガス導出配管、12 第1ブロワ、13 第1真空ポンプ、20,20a,20b 第2吸着塔、21 中間ガス導出配管、22 第2ブロワ、23 第2真空ポンプ。