(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104905
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】吸収が調整可能な水溶性π共役蛍光1,1’-ビナフチル系ポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 61/10 20060101AFI20230721BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20230721BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230721BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230721BHJP
G01N 33/533 20060101ALI20230721BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20230721BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C08G61/10
C08G61/12
G01N21/64 F
G01N21/64 E
G01N33/53 D
G01N33/53 M
G01N33/533
G01N33/543 597
C09K11/06
C09K11/06 680
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023004317
(22)【出願日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】22151720
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520094891
【氏名又は名称】ミルテニー バイオテック ベー.フェー. ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Miltenyi Biotec B.V. & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Ebert-Strasse 68, 51429 Bergisch Gladbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ドーゼ
(72)【発明者】
【氏名】ディアク マイネケ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ベアント
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィス ジェニングズ
【テーマコード(参考)】
2G043
4J032
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043CA04
2G043CA05
2G043CA09
2G043DA02
2G043EA01
2G043FA01
2G043FA02
2G043FA06
2G043KA02
2G043KA03
2G043KA09
2G043LA01
2G043LA03
4J032BA05
4J032BA21
4J032BA25
4J032BB06
4J032BB09
4J032BC02
4J032BC03
4J032BC12
4J032BD07
4J032CA03
4J032CA04
4J032CA14
4J032CB01
4J032CB04
4J032CB12
4J032CC01
4J032CD01
4J032CD02
4J032CE03
4J032CE22
4J032CE24
4J032CF05
4J032CG03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生体試料中の標的部位を検出するためのコンジュゲートおよび検出する方法を提供する。
【解決手段】一般式(I)
[式中、ARおよびMUは、ポリマーの繰り返し単位であり、MUは、ポリマー主鎖に沿って均一にまたはランダムに分布しているポリマー変性単位またはバンドギャップ変更単位であり、G1およびG2は、G1またはG2のうちの少なくとも1つが抗原認識部位であることを条件として、水素、ハロゲン、または抗原認識部位を表し、aは10~100mol%であり、bは0~90mol%であるが、a+b=100mol%であることを条件とし、cは1~10000である]
を有するコンジュゲートを分析に適用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】
[式中、ARおよびMUは、ポリマーの繰り返し単位であり、
MUは、ポリマー主鎖に沿って均一にまたはランダムに分布しているバンドギャップ変更単位であり、
G1およびG2は、G1またはG2のうちの少なくとも1つが抗原認識部位であることを条件として、水素、ハロゲン、または抗原認識部位を表し、
aは10~100mol%であり、
bは0~90mol%であるが、
a+b=100mol%であることを条件とし、
cは1~10000である]
を有するコンジュゲートにおいて、
ARが、一般式(II):
【化2】
[式中、残りの位置2,2’;3,3’;4,4’;5,5’;6,6’;7,7’および8,8’は、H、SO
2CF
3、SO
2R
a、CF
3、CCl
3、CN、SO
3H、NO
2、NR
aR
bR
c
+、CHO、CORa、CO
2Ra、COCl、CONRaRb、F、Cl、Br、I、R
a、OR
a、SR
a、OCOR
a、NR
aR
b、NHCOR
a、CCR
a、アリール-、ヘテロアリール-、C
6H
4OR
aまたはC
6H
4NRaRbからなる群から選択される同じまたは異なる残基で置換されており、Ra~cは、独立して、水素、アルキル-、アルケニル-、アルキニル-、ヘテロアルキル-、アリール-、ヘテロアリール-、シクロアルキル-、アルキルシクロアルキル-、ヘテロアルキルシクロアルキル-、ヘテロシクロアルキル-、アラルキル-、もしくはヘテロアラルキル残基、または(CH
2)
x(OCH
2CH
2)
yO(CH
2)
zCH
3であり、xは0~20の整数であり、yは0~50の整数であり、zは0~20の整数である]
による2,2’または3,3’または5,5’または6,6’または7,7’または8,8’位を介してポリマー鎖に結合していることを特徴とする、コンジュゲート。
【請求項2】
前記コンジュゲートの末端に位置する前記MU単位が、以下の式(III)
【化3】
[式中、G1、AR、MU、G2、a、b、およびcは、式(I)と同じ意味を有し、Lは、アルキル、アリール、またはヘテロアリール基を含む分子を表す]
に従ってリンカー基Lを介して結合していることを特徴とする、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項3】
主にR-またはS-立体異性体として提供されるARで主たるキラリティーを有することを特徴とする、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項4】
MUが、共役π系を提供する少なくとも1つのベンゼン環またはチオフェン環を有する芳香族系を含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項5】
MUが、以下の残基
【化4-1】
【化4-2】
のうちの1つ以上から選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項6】
Lが、前記ポリマー主鎖の末端に位置するアリールまたはヘテロアリール基であり、i)アミン、カルバメート、カルボン酸、カルボキシレート、マレイミド、活性化エステル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラジン、アジド、アルキン、アルデヒド、チオール、および分子もしくは生体分子へのコンジュゲートのためのそれらの保護された基から選択される官能基、またはii)エネルギー移動系のエネルギー受容体として結合した有機蛍光色素、またはiii)生体分子、で終端している1つ以上のペンダント鎖で置換されていてよいことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項7】
Lが、以下の残基
【化5-1】
【化5-2】
のうちの1つ以上から選択されることを特徴とする、請求項6記載のコンジュゲート。
【請求項8】
少なくとも2つの位置2,2’;3,3’;4,4’;5,5’;6,6’;7,7’および8,8’が、一般式(III)
【化6】
[式中、n=5~15である]
に従う残基で置換されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項9】
G1およびG2が、独立して、水素、ハロゲン、または抗原認識部位であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項10】
前記抗原認識部位が、抗体、断片化抗体、断片化抗体誘導体、ペプチド/MHC複合体、細胞接着もしくは共刺激分子の受容体、受容体リガンド、抗原、ハプテン結合剤、アビジン、ストレプトアビジン、アプタマー、プライマーおよびリガーゼ基質、TCR分子を標的とするペプチド/MHC複合体、細胞接着受容体分子、共刺激分子の受容体、または人工的に設計された結合分子からなる群から選択されることを特徴とする、請求項9記載のコンジュゲート。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の少なくとも1つのコンジュゲートを用いて生体試料のサンプル中の標的部位を検出する方法であって、
d)前記生体試料のサンプルを少なくとも1つのコンジュゲートと接触させ、それによって、抗原認識部位によって認識される前記標的部位を前記コンジュゲートで標識するステップ、
e)標識された前記標的部位を、前記コンジュゲートの吸光度スペクトル内の波長を有する光で励起するステップ、
f)前記コンジュゲートによって放出される蛍光放射を検出することによって、標識された前記標的部位を検出するステップ、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
蛍光顕微鏡法、フローサイトメーター、蛍光分光法、細胞分離、病理学、または組織学における、請求項1から10までのいずれか1項記載のコンジュゲートの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性蛍光ポリマー系色素、ならびに細胞の検出および分析のための抗体とのコンジュゲートにおけるそれらの使用に関する。
【0002】
発明の背景
免疫蛍光標識は、研究と臨床応用の両方において、生体試料からの標的細胞を詳しく分析し、特異的に分離するために重要である。分析の感度は、主にフルオロフォアの輝度に依存する。水溶性π共役系ポリマーは、輝度の高いフルオロフォアとして使用されており、また生物学的用途で利用されている。
【0003】
そのような水溶性π共役系ポリマーは、例えば、“Synthesis of Binaphthyl-Oligothiophene Copolymers with Emissions of Different Colors: Systematically Tuning the Photoluminescence of Conjugated Polymers” by K. Y. Musick, Q.-S. Hu, L. Pu, Macromolecules 1998, 31, 2933-2942に記載されている。
【0004】
さらに、米国特許出願公開第20180009990号明細書および米国特許第10604657号明細書には、2,2’位においてPEGで置換された4,4’-重合ビナフチルが記載されている。これは、sp3混成軌道を利用するポリパラエチニリン(PPE)結合を介して隣接するモノマーに4,4’結合が結合しているビナフチルに基づくポリマーについて言及している。本発明で開示されるビナフチルに基づくポリマーは、エチニリン結合なしで隣接するコモノマーに直接結合しており、その結果sp2混成結合および完全芳香族共役系が得られる。水溶媒和ポリマー系色素およびポリマー系タンデム色素が提供される。ポリマー系色素には、共有結合、ビニレン基、またはエチニレン基を介して連結されたアリールまたはヘテロアリールコモノマーの共役セグメントを有する水溶媒和集光性多重発色団が含まれる。ポリマータンデム色素は、そのエネルギーを受容する近接位にある多重発色団に共有結合したシグナル伝達発色団をさらに含む。
【0005】
このように開示されたポリマー系色素は製造コストが高く、特に4,4’官能化ビナフチルモノマーの合成は面倒かつ高コストである。さらに、これらのポリマー系色素を紫外励起光を用いて使用するためには特殊なコモノマーが必要であり、得られるポリマー系色素は非常に複雑である。したがって、本発明の目的は、吸収特性および発光特性をスペクトルのUV領域に向けて調整することにおける柔軟性が高められ、かつ製造がより容易で、より低コストでもある単純な系を提供することである。
【0006】
発明の概要
ビナフチルモノマーに基づくπ共役ポリマーは、非常に広い範囲にわたって吸収波長を調整することを可能にする。この系のエネルギーは、2つのねじれたナフチル単位からなるビナフチルモノマーのユニークな構造のため非常に高い。先行技術のポリフルオレンおよびポリフェナントレンに基づくポリマーとは対照的に、この構造的特徴のため、深紫外領域に吸収を持つポリマーを設計することができる。
【0007】
系のエネルギーは、ビナフチルモノマーと適切なコモノマーとの共重合によって厳密に制御することができる。コモノマーを戦略的に選択することで、ポリマーの吸収帯の端をスペクトルの深紫外から可視範囲に調整する能力が得られる。
【0008】
ユニークなモノマーを使用し、これらを特定のコモノマーと組み合わせることによって、望まれる励起レーザーに正確に一致させるようにスペクトルの吸収帯の位置が制御され、その結果、技術的課題の解決手段が提供される。
【0009】
π共役ポリマーを蛍光プローブとして使用することは、蛍光検出のツールボックスの主力となっている。有用なポリマーの吸収帯は、光源の波長、例えば355nm、405nm、488nm、561nm、または640nmの波長のレーザーと一致する必要がある。しかしながら、現行のポリマーは、その光吸収帯域が紫色の狭い領域に限定されており、そのためその有用性が限られている。調整可能な吸収帯を有する新規なπ共役ポリマーにより、分析対象の検出を含む生物学的用途向けの水溶性ポリマー系色素の収蔵庫の拡大が可能になるであろう。
【0010】
発明の簡単な説明
したがって、本発明の目的は、一般式(I):
【化1】
[式中、ARおよびMUは、ポリマーの繰り返し単位であり、
MUは、ポリマー主鎖に沿って均一にまたはランダムに分布しているバンドギャップ変更単位であり、
G1およびG2は、G1またはG2のうちの少なくとも1つが抗原認識部位であることを条件として、水素、ハロゲン、または抗原認識部位を表し、
aは10~100mol%であり、
bは0~90mol%であるが、
a+b=100mol%であることを条件とし、
cは1~10000である]
を有するコンジュゲートにおいて、
ARが、一般式(II):
【化2】
[式中、残りの位置2,2’;3,3’;4,4’;5,5’;6,6’;7,7’および8,8’は、H、SO
2CF
3、SO
2R
a、CF
3、CCl
3、CN、SO
3H、NO
2、NR
aR
bR
c
+、CHO、CORa、CO
2Ra、COCl、CONRaRb、F、Cl、Br、I、R
a、OR
a、SR
a、OCOR
a、NR
aR
b、NHCOR
a、CCR
a、アリール-、ヘテロアリール-、C
6H
4OR
aまたはC
6H
4NRaRbからなる群から選択される同じまたは異なる残基で置換されており、Ra~cは、独立して、水素、アルキル-、アルケニル-、アルキニル-、ヘテロアルキル-、アリール-、ヘテロアリール-、シクロアルキル-、アルキルシクロアルキル-、ヘテロアルキルシクロアルキル-、ヘテロシクロアルキル-、アラルキル-、もしくはヘテロアラルキル残基、または(CH
2)
x(OCH
2CH
2)
yO(CH
2)
zCH
3であり、xは0~20の整数であり、yは0~50の整数であり、zは0~20の整数である]
による2,2’または3,3’または5,5’または6,6’または7,7’または8,8’位を介してポリマー鎖に結合していることを特徴とする、コンジュゲートである。
【0011】
式IIから分かるように、ARをポリマー鎖に結合するためには、2,2’;3,3’;4,4’;5,5’;6,6’;7,7’および8,8’からの2つの位置が必要である。したがって、「残りの位置」という用語は、ポリマー鎖中のARの結合に使用されない、開示された残基との置換に利用できるARの12個の位置を指す。
図5に可能な置換パターンが示されている。置換に使用される残基は、各位置で同じであっても異なっていてもよい(例えば2位と2’位は、同じまたは異なる残基を有していてもよい)。
【0012】
任意選択的には、残りの位置にある2つの残基は、共通のシクロアルキル環系またはヘテロシクロアルキル環系を形成し得る。
【0013】
本発明の変形形態では、少なくとも2つの位置2,2’;3,3’;4,4’;5,5’;6,6’;7,7’および8,8’は、一般式(IV)
【化3】
[式中、n=5~15である]
に従う残基で置換されている。
【0014】
本発明のコンジュゲートは、好ましくは水溶性である。
【0015】
「ARは、2,2’または3,3’または5,5’または6,6’または7,7’または8,8’位を介してポリマー鎖に結合している」という用語は、ARの位置のそれぞれのC原子と、他のAR単位、G1単位、またはL単位のC原子との間のC-C結合を指す。
【0016】
本発明のさらなる目的は、本明細書に開示の少なくとも1つのコンジュゲートを用いて生体試料のサンプル中の標的部位を検出する方法であって、
a)生体試料のサンプルを少なくとも1つのコンジュゲートと接触させ、それによって、抗原認識部位によって認識される標的部位をコンジュゲートで標識するステップ、
b)標識された標的部位を、コンジュゲートの吸光度スペクトル内の波長を有する光で励起するステップ、
c)コンジュゲートによって放出される蛍光放射を検出することによって、標識された標的部位を検出するステップ、
を含むことを特徴とする、方法である。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、蛍光顕微鏡法、フローサイトメトリー、蛍光分光法、細胞分離、病理学、または組織学における方法の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】水溶性ポリ(ビナフチル)ホモポリマー1の吸収(実線)および発光(破線)スペクトルを示す図である。
【
図2】水溶性のビナフチルに基づくフェニレンコポリマー2の吸収(実線)および発光(破線)スペクトルを示す図である。
【
図3】水溶性のビナフチルに基づくビチオフェンコポリマー3の吸収(実線)および発光(破線)スペクトルを示す図である。
【
図4】市販のフローサイトメーターでコポリマー2の抗CD4および抗CD19抗体コンジュゲートで染色したときのヒト末梢血単核細胞(PBMC)のフローサイトメトリー分析を示す図である。
【
図6】ポリマー部分と抗原認識部位とを含む本発明のコンジュゲートを示す図である。
【0019】
バンドギャップ変更単位としてのMU
MUは、コンジュゲートの吸収帯のシフトを引き起こすバンドギャップ変更単位である。この目的のために、MUは、任意選択的に電子吸引性残基、電子供与性残基、立体障害基、および/または水溶性を高める残基で置換された、共役π系を提供する少なくとも1つのベンゼン環またはチオフェン環を有する芳香族系を含む。
【0020】
より好ましくは、MUは、任意選択的に電子吸引性残基、電子供与性残基、立体障害基、および/または水溶性を高める残基で置換された、共役π系を提供する少なくとも2つの縮合した、環化した、または共役したベンゼン環またはチオフェン環を有する芳香族系を含む。
【0021】
電子吸引性残基、電子供与性残基、立体障害基、および/または水溶性を高める残基としては、アルキルもしくはエーテル(グリコール)残基のような1つ以上の残基またはハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基を使用することができる。
【0022】
MU繰り返し単位は、本発明のコンジュゲートにおいて均一にまたはランダムに分布し得る。その限りにおいて、MUはバンドギャップ変更単位としての機能だけでなく、ポリマー変性単位としても機能する。
【0023】
MUの好ましい残基は以下の通り:
【化4-1】
【化4-2】
である。
【0024】
末端基G1およびG2
G1およびG2は、共に、水素、ハロゲン、または抗原認識部位の群から独立して選択される。抗原認識部位は、抗体、断片化抗体、断片化抗体誘導体、ペプチド/MHC複合体、細胞接着もしくは共刺激分子の受容体、受容体リガンド、抗原、ハプテン結合剤、アビジン、ストレプトアビジン、アプタマー、プライマーおよびリガーゼ基質、TCR分子を標的とするペプチド/MHC複合体、細胞接着受容体分子、共刺激分子の受容体、または人工的に設計された結合分子から選択することができる。
【0025】
リンカー基L
本発明の第1の実施形態では、コンジュゲートの末端に位置するMU単位は、以下の式(III)
【化5】
[式中、G1、AR、MU、G2、a、b、およびcは、式(I)と同じ意味を有し、Lは、ポリマーをG2に連結するアルキル、アリール、またはヘテロアリール基を含む分子を表す]
に示されるように、リンカー基Lを介して結合している。
【0026】
Lは、ポリマー主鎖の末端に位置するアリールまたはヘテロアリール基であり、i)アミン、カルバメート、カルボン酸、カルボキシレート、マレイミド、活性化エステル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラジン、アジド、アルキン、アルデヒド、チオール、および分子もしくは生体分子へのコンジュゲートのためのそれらの保護された基から選択される官能基、またはii)エネルギー移動系のエネルギー受容体として結合した有機蛍光色素、またはiii)生体分子、で終端している1つ以上のペンダント鎖で置換されていてよい。
【0027】
好ましくは、Lは、以下の残基:
【化6-1】
【化6-2】
のうちの1つ以上から選択される。
【0028】
抗原認識部位
「抗原認識部位」という用語は、細胞の細胞内または細胞外で発現される抗原のような、生体試料で発現される標的部位に対して向けられる、任意の種類の抗体、断片化抗体、または断片化抗体誘導体を指す。この用語は、完全インタクト抗体、断片化抗体、または断片化抗体誘導体、例えばFab、Fab’、F(ab’)2、sdAb、scFv、di-scFv、ナノボディに関する。そのような断片化された抗体誘導体は、これらの種類の分子を含む共有結合および非共有結合コンジュゲートを含む組み換え手順によって合成することができる。抗原認識部位のさらなる例は、TCR分子を標的とするペプチド/MHC-複合体、細胞接着受容体分子、共刺激分子の受容体、人工的に操作された結合分子、例えば細胞表面分子を標的とする例えばペプチドまたはアプタマーである。
【0029】
本発明の方法で使用されるコンジュゲートは、最大100個、好ましくは1~20個の抗原認識部位Yを含み得る。抗原認識部位と標的抗原との相互作用は、高親和性であっても低親和性であってもよい。単一の低親和性抗原認識部位の結合相互作用は小さすぎて、抗原との安定した結合が得られない。低親和性抗原認識部位は、酵素分解性スペーサーへのコンジュゲートによって多量体化することで、高い結合活性を得ることができる。スペーサーが酵素分解されると、低親和性抗原認識部位が単量体化し、蛍光マーカーが完全に除去される。
【0030】
好ましくは、「抗原認識部位」という用語は、IL2、FoxP3、CD154のような細胞内、またはCD19、CD3、CD14、CD4、CD、CD25、CD34、CD56、およびCD133のような細胞外の生体試料(標的細胞)により発現する抗原に対する抗体を指す。抗原認識部位G1、G2、特に抗体は、側鎖アミノまたはスルフヒドリル基を介してCPに結合することができる。場合によっては、抗体のグリコシド側鎖が過ヨウ素酸によって酸化されて、アルデヒド官能基が生じることがある。
【0031】
抗原認識部位は、共有結合的にまたは非共有結合的に結合することができる。共有結合または非共有結合によるコンジュゲートの方法は当業者に知られており、蛍光マーカーのコンジュゲートについて述べた方法と同じである。
【0032】
本発明の方法は、複雑な混合物からの特定の細胞タイプの検出および/または単離に特に有用であり、ステップa)~c)の複数の連続した手順を含み得る。この方法は、コンジュゲートの様々な組み合わせを使用することができる。例えば、コンジュゲートは、2つの異なる抗CD34抗体のように、2つの異なるエピトープに特異的な抗体を含み得る。例えば2つの異なるT細胞集団間の分化のための抗CD4と抗CD8、または制御性T細胞のような異なる細胞亜集団の決定のための抗CD4と抗CD25など、異なる抗原は、異なる抗体を含む異なるコンジュゲートで対処され得る。
【0033】
細胞検出方法
コンジュゲートで標識された標的は、蛍光部位FLまたは骨格CPのいずれかを励起し、得られた蛍光シグナルを分析することによって検出される。励起波長は、通常、蛍光部位FLまたはCPの吸収極大に従って選択され、当該技術分野で公知のLASERまたはLED源によって提供される。複数の異なる検出部位FLが複数の色/パラメータ検出に使用される場合、吸収スペクトルが重ならない、少なくとも吸収極大が重ならない蛍光部位を選択するように注意すべきである。蛍光部位の場合、標的は、例えば蛍光顕微鏡、フローサイトメーター、スペクトロフルオロメーター、または蛍光スキャナーで検出することができる。化学発光によって放出される光は、励起を省略した同様の装置によって検出することができる。
【0034】
標的部位
本発明の方法で検出される標的部位は、組織切片、細胞凝集体、懸濁細胞、または接着細胞などの任意の生体試料上にあってよい。細胞は、生きていても死んでいてもよい。好ましくは、標的部位は、無脊椎動物(例えば線虫(Caenorhabditis elegans)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))、脊椎動物(例えばゼブラフィッシュ(Danio rerio)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis))、および哺乳類(例えばハツカネズミ(Mus musculus)、ヒト(Homo Sapiens))の動物全体、臓器、組織切片、細胞凝集体、または単一細胞などの生体試料の細胞内または細胞外で発現した抗原である。
【0035】
方法の使用
本発明の方法は、蛍光顕微鏡法、フローサイトメーター、蛍光分光法、細胞分離、病理学、または組織学におけるような、研究、診断、および細胞治療における様々な用途で使用することができる。
【0036】
本発明の第1の変形形態では、細胞のような生体試料は、計数の目的、すなわちコンジュゲートの抗原認識部位によって認識される抗原の特定のセットを有するサンプルからの細胞の量を確定するために検出される。別の変形形態では、ステップc)でコンジュゲートによって検出された生体試料は、光学的手段、静電力、圧電力、機械的分離、または音響的手段によってサンプルから分離される。
【0037】
本発明の別の変形形態では、コンジュゲートの抗原認識部位によって認識される生体試料上の抗原のような標的部位の位置が決定される。そのような技術は、「マルチエピトープリガンドカートグラフィー(Multi Epitope Ligand Cartography)」、「チップベースサイトメトリー(Chip-based Cytometry)」または「Multiomyx」として知られており、例えば欧州特許第0810428号明細書、欧州特許第1181525号明細書、欧州特許第1136822号明細書、または欧州特許第1224472号明細書に記載されている。この技術では、細胞は固定化され、蛍光部位に結合した抗体と接触する。抗体は、生体試料(例えば細胞表面)上のそれぞれの抗原によって認識され、結合していないマーカーが除去されて蛍光部位が励起された後、蛍光部位の蛍光発光によって抗原の位置が検出される。特定の変形形態では、蛍光部位に結合した抗体の代わりに、MALDI-ImagingまたはCyTOFで検出可能な部位に結合した抗体を使用することができる。当業者は、蛍光部位に基づく技術を、これらの検出部位を扱うために修正する方法を認識している。
【0038】
標的部位の位置付けは、蛍光放射の波長に対して十分な解像度および感度を有するデジタル撮像装置によって達成され、デジタル撮像装置は、例えば蛍光顕微鏡を用いて、光学的拡大の有無にかかわらず使用され得る。得られる画像は、RAW、TIF、JPEG、またはHDF5形式などで、ハードドライブなどの適切な保存デバイスに保存される。
【0039】
異なる抗原を検出するために、同じまたは異なる蛍光部位または抗原認識部位を有する異なる抗体コンジュゲートを提供することができる。異なる波長の蛍光発光の並行検出は限られるため、抗体-蛍光色素コンジュゲートは、個別に、または小さいグループ(2~10)で順々に利用される。
【0040】
本発明による方法のさらに別の変形形態では、生体試料、特にサンプルの懸濁細胞は、マイクロキャビティ内に捕捉することによって、または付着によって固定化される。
【0041】
通常、本発明の方法は、複数の変形形態で行うことができる。例えば、コンジュゲートで標識された標的部位が検出される前に、例えば緩衝液で洗浄することにより、標的部位によって認識されないコンジュゲートを除去することができる。
【0042】
本発明の変形形態では、少なくとも2つのコンジュゲートが同時にまたはその後の染色シーケンスで提供され、各抗原認識部位は異なる抗原を認識する。別の変形形態では、少なくとも2つのコンジュゲートがサンプルに同時に、または後続の染色シーケンスで提供され得る。いずれの場合も、標識された標的部位を同時にまたは逐次的に検出することができる。
【0043】
実施例
例として、以下の水溶性ビナフチルに基づくポリマー1~3
【化7】
【化8】
【化9】
を合成し、位置G1に抗原認識部位を持たせた。
【0044】
【0045】
アセトン(42mL)中の6,6’-ジブロモ-[1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジオール(3.00g、6mmol)の撹拌されている溶液に、34-ヨード-2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデカオキサテトラトリアコンタン(12.6g、20mmol)、続いてK2CO3(2.82g、20mol)を入れ、得られた反応混合物を70℃で16時間撹拌した。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮して乾燥させた。得られた粗製物質を水(20mL)で希釈し、酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。合わせた有機相をブライン(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。得られた粗製残留物を、メタノール/ジクロロメタン(5:95)で溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色の液体を得た。この化合物を、アセトニトリル/水(50:50)で溶出する逆相クロマトグラフィーによりさらに精製した。化合物を凍結乾燥することで、純粋な化合物M1(1.7g、17.6%)を淡黄色の液体として得た。
【0046】
【0047】
ジクロロメタン(20mL)中の4-(4-ブロモフェニル)ブタン酸(2.00g、8.22mmol)の撹拌されている溶液を0℃に冷却し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(4.40mL、24.7mmol)を添加し、続いて、3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(2.36g、12.3mmol)を添加した。混合物を10分間撹拌し、N-ヒドロキシスクシンイミド(1.42g、12.3mmol)を添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(50mL)を添加した。懸濁液を濾過し、残留物を減圧乾燥することで、2.4gの粗生成物をオフホワイトの固体として得た。固体をエタノールで洗浄し、減圧乾燥することで、NHSエステルを白色固体として得た(1.24g)。NHS-エステル(2.00g、5.89mmol)を、N-Boc-エチレンジアミン塩酸塩(2.06g、6.48mmol)と共にテトラヒドロフラン(40mL)と水(20mL)との混合物に0℃で溶解し、炭酸水素ナトリウム(2.47g、29.5mmol)を添加した。反応温度を室温までゆっくり上げ、混合物を7時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮してテトラヒドロフランを除去し、次いで水(100mL)を添加し、懸濁液を15分間撹拌した。得られた固体を濾別し、減圧乾燥することで、生成物(2.0g)をオフホワイトの固体として得た。固体をイソプロピルアルコール(24mL)から再結晶することで、化合物M2を白色固体として得た(1.15g、38%)。
【0048】
【0049】
アルゴン雰囲気下、ビス(1,5-シクロオクタジエニル)ニッケル(0)(105mg、382μmol)、2,2’-ビピリジル(60.0mg、382μmol)、および1,5-シクロオクタジエン(41.0mg、382μmol)をジメチルホルムアミド(8mL)に溶解し、70℃で30分間撹拌した。化合物M1(250mg、173μmol)およびM2(1.3mg、3.4μmol)をジメチルホルムアミド(4ml)に溶解し、反応混合物に添加した。溶液を70℃で3時間撹拌した。溶媒を留去し、ポリマーをジクロロメタン(32mL)とピペリジン(8mL)との混合物に溶解した。揮発性物質を減圧下で除去し、残留物をエタノールに懸濁させた。遠心分離を行った後、上清みを凍結乾燥することで生成物を得た(101mg、45%)。GPC(270nm):Mn:7.9kDa、Mw:9.7kDa、D=1.2。
【0050】
ビナフチルビナフチルフェニレンコポリマーの合成2
【化13】
【0051】
アルゴン雰囲気下、ジメチルホルムアミド(4mL)中の化合物M1(250mg、173μmol)と1,4-ベンゼンジボロン酸ビス(ピナコール)エステル(57.0mg、173μmol)との混合物に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(10mg、8.6μmol)を添加した。炭酸カリウム水溶液(2M、750μL)を添加し、混合物を80℃で3時間撹拌した。化合物M2(52.0mg、100μmol)を添加し、溶媒を留去した。残留物を20体積%のエタノール水溶液に懸濁させた。遠心分離を行った後、上清みを凍結乾燥することで黄褐色のポリマーを得た。ポリマーをサイズ排除精製により精製しその後凍結乾燥した。ポリマーをジクロロメタン(32mL)とピペリジン(8mL)との混合物に溶解した。溶媒を留去した後、ポリマーを20体積%のエタノール水溶液に溶解し、サイズ排除精製によって脱塩することで、純粋な生成物(282mg、94.4%)を得た。GPC(270nm):Mn=20.6kDa、Mw=34.2kDa、D=1.7。
【0052】
ビナフチルビチオフェンコポリマーの合成3
【化14】
【0053】
ジメチルホルムアミド(4mL)中の化合物M1(250mg、173μmol)と2,2’ビチオフェン-5,5’-ジボロン酸ビス(ピナコール)エステル(67.0mg、174μmol)との混合物に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(10mg、8.6μmol、0.050当量)を添加した。炭酸カリウム水溶液(2M、750μL)を添加した後、溶液をアルゴン下で80℃で3時間撹拌した。溶媒を留去し、ポリマーをジクロロメタン(32mL)とピペリジン(8mL)との混合物に溶解した。揮発性物質を減圧下で除去し、残留物を20体積%のエタノール水溶液に懸濁させた。遠心分離を行った後、上清みを凍結乾燥することで黄褐色のポリマーを得た(114mg、46%)。GPC(270nm):Mn:10.7kDa;Mw:19.1kDa;D=1.8。
【0054】
ポリマー系色素の抗体へのバイオコンジュゲーション
抗体は、5mg/mLの抗体濃度で30分間、MES緩衝液(pH6)中のジチオトレイトール(50mM)を使用して還元した。還元された抗体を、ゲル濾過オーブンであるSephadex G-25カラム(Cytiva Europe GmbH, Germany)で精製した。抗体含有画分をクーマシー染色によって特定し、280nmにおける吸光度を測定することによりプールした画分の抗体濃度を決定した。
【0055】
ヘテロ二官能性架橋剤としてスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)を使用して、アミノ官能化ポリマーを還元した抗体にカップリングさせた。クロスカップリングは、市販のSMCCクロスカップリングキット(Thermo Fisher Scientific Inc., USA)を使用して行った。カップリングは、キットの使用説明書に従って行った。抗体-ポリマーコンジュゲートは、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。
【0056】
細胞染色
PEB緩衝液を使用して1mL当たり1×107個の細胞の濃度でボルテックスを行い、続いて300gで5分間遠心分離することにより、細胞を洗浄した。1×107個の細胞を20μLのPEBバッファーに再懸濁し、細胞染色のために1mL当たり1×107個の細胞の濃度に到達するように抗体-色素コンジュゲートおよびPEBバッファーを添加した。細胞は、4℃で10分間インキュベートすることにより染色した。その後、細胞を再度洗浄し、フローサイトメトリー分析のために1mLのPEBバッファーに再懸濁した。染色した細胞は、分析まで4℃で保管した。死細胞の識別のために、ヨウ化プロピジウム溶液(力価1:1000)を測定の直前に装置によって添加した。
【0057】
フローサイトメトリー分析
染色した細胞は、5つのレーザー励起源(355nm、405nm、488nm、561nm、640nm)を379/28nmのバンドパスフィルターと組み合わせたLSR Fortessa(Becton, Dickinson & Company Inc, USA)を用いたフローサイトメトリーによって分析した。フローサイトメトリーデータ分析は、FlowJo(Becton, Dickinson & Company Inc, USA)フローサイトメトリー分析ソフトウェアを使用して行った。
【0058】
考察
図1は、ポリビナフチルホモポリマー1の吸収および発光スペクトルを示す。吸収および発光の極大は、それぞれ315nmおよび408nmである(表1)。
【0059】
図2に示されているように、ビナフチルモノマーとフェニレンモノマーとの共重合(コポリマー2)により、ホモポリマー1と比較して吸収極大が15nm深色シフトした。ホモポリマー1とフェニレンコポリマー2の発光極大は非常に近い(それぞれ408nmおよび406nm、表1を参照)。
【0060】
図3に示されているように、ビナフチルモノマーとビチオフェンモノマーとの共重合(コポリマー3)により、ホモポリマー1と比較して吸収極大が85nm深色シフトした。ビチオフェンコポリマー3の発光極大は、ホモポリマー1と比較して103nm長波長側にシフトしている(表1)。
【0061】
【0062】
表中、Fl.QYは、合成されたポリマーの蛍光量子収率を表し、これは、ポリマーによる蛍光変換効率の単位測定値であり、1.00の値は、吸収された光子から放出された蛍光光子への100%の変換効率を表し、0.00は0%の変換を表す。Mn(kDa)は数平均分子量を意味し、Mw(kDa)は質量平均分子量を意味する。
【0063】
化合物1、2、および3は、水溶性ビナフチルに基づくポリマーの吸収波長が、異なるコモノマーとの共重合によって調整できることを示している。本発明は、一般的に使用される励起レーザーの波長に一致するように吸収帯をシフトさせるために使用することができる。例えば、ポリマー1(純粋なビナフチルポリマー)は、280nmの深紫外レーザーに最適になるように調整され;ポリマー2(フェニレンコモノマー)は355nmのUVレーザーに最適であり、ポリマー3(ビスチオフェンコモノマー)はバイオレットレーザー(405nm)に最適である。
【0064】
本発明の有用性を示すために、ビナフチルフェニレンコポリマー2をヒト抗CD4およびヒト抗CD19モノクローナル抗体にコンジュゲートさせた。このコンジュゲートは
図6に示す構造を有していた。
【0065】
コポリマー2の抗CD4および抗CD19抗体コンジュゲートを、励起源としてUVレーザー(355nm)を使用するヒト末梢血単核細胞(PBMC)のフローサイトメトリー分析に使用した。
図4は、UVレーザーを使用したフローサイトメトリー分析におけるフェニレンコポリマー2抗体コンジュゲートの性能を示している。他の励起波長に合わせるために、コモノマーの選択に応じて吸収波長を調整することができる。例えば、ビチオフェンコポリマー3は、バイオレットレーザー(405nm)を用いる用途に使用することができる。
【0066】
これらの実施例は、スペクトル中の吸収帯の位置を制御して望まれる励起レーザーに正確に一致させることを可能にし、それによって生物学的用途向けの水溶性蛍光ポリマー系色素の収蔵庫の拡大が可能になる本発明の有用性を示している。
【外国語明細書】