(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104906
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】水溶性π共役蛍光1,1’-ビナフチル系タンデムポリマー
(51)【国際特許分類】
G01N 33/533 20060101AFI20230721BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230721BHJP
C08G 61/02 20060101ALI20230721BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
G01N33/533
G01N21/64 F
G01N21/64 E
C08G61/02
C09K11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023004318
(22)【出願日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】22151897
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520094891
【氏名又は名称】ミルテニー バイオテック ベー.フェー. ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Miltenyi Biotec B.V. & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Ebert-Strasse 68, 51429 Bergisch Gladbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ドーゼ
(72)【発明者】
【氏名】ディアク マイネケ
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィス ジェニングズ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ベアント
【テーマコード(参考)】
2G043
4J032
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043BA17
2G043DA02
2G043EA01
2G043FA01
2G043FA02
2G043FA06
2G043LA01
2G043LA03
2G043LA07
4J032CA04
4J032CA12
4J032CA14
4J032CB05
4J032CC01
4J032CD02
4J032CE03
4J032CF03
4J032CG03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】変性単位(MU)を選択することにより、所望の励起エネルギーに調整できる色素を提供する。
【解決手段】一般式(I)を有するコンジュゲート。
[式中、AR、MU、およびMU
*は、ポリマーの繰り返し単位であり、MUおよびMU
*は、ポリマー主鎖に沿って均一にまたはランダムに分布しているポリマー変性単位またはバンドギャップ変更単位であり、G1およびG2は、G1またはG2のうちの少なくとも1つが抗原認識部位であることを条件として、水素、ハロゲン、または抗原認識部位を表す。]
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
[式中、AR、MU、およびMU
*は、ポリマーの繰り返し単位であり、
MUおよびMU
*は、ポリマー主鎖に沿って均一にまたはランダムに分布しているポリマー変性単位またはバンドギャップ変更単位であり、
G1およびG2は、G1またはG2のうちの少なくとも1つが抗原認識部位であることを条件として、水素、ハロゲン、または抗原認識部位を表し、
aは10~100mol%であり、
bは0~90mol%であり、
cは0.1~90mol%であるが、
a+b+c=100mol%であることを条件とし、
dは1~10000である]
を有するコンジュゲートにおいて、
ARが、一般式(II)による2,2’または3,3’または4,4’または5,5’または6,6’または7,7’または8,8’位を介してポリマー鎖に結合していることを特徴とする、コンジュゲート。
【化2】
[式中、残りの位置2,2’;3,3’;4,4’;5,5’;6,6’;7,7’および8,8’は、H、SO
2CF
3、SO
2R
a、CF
3、CCl
3、CN、SO
3H、NO
2、NR
aR
bR
c
+、CHO、COR
a、CO
2R
a、COCl、CONR
aR
b、F、Cl、Br、I、R
a、OR
a、SR
a、OCOR
a、NR
aR
b、NHCOR
a、CCR
a、アリール-、ヘテロアリール-、C
6H
4OR
aまたはC
6H
4NR
aR
bからなる群から選択される同じまたは異なる残基で置換されており、R
a~cは、独立して、水素、アルキル-、アルケニル-、アルキニル-、ヘテロアルキル-、アリール-、ヘテロアリール-、シクロアルキル-、アルキルシクロアルキル-、ヘテロアルキルシクロアルキル-、ヘテロシクロアルキル-、アラルキル-、もしくはヘテロアラルキル残基、または(CH
2)
x(OCH
2CH
2)
yO(CH
2)
zCH
3であり、xは0~20の整数であり、yは0~50の整数であり、zは0~20の整数である]
【請求項2】
主にR-またはS-立体異性体として提供されるARで主たるキラリティーを有することを特徴とする、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項3】
前記抗原認識部位が、抗体、断片化抗体、断片化抗体誘導体、ペプチド/MHC複合体、細胞接着もしくは共刺激分子の受容体、受容体リガンド、抗原、ハプテン結合剤、アビジン、ストレプトアビジン、アプタマー、プライマーおよびリガーゼ基質、TCR分子を標的とするペプチド/MHC複合体、細胞接着受容体分子、共刺激分子の受容体、または人工的に設計された結合分子からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2記載のコンジュゲート。
【請求項4】
MUおよび/またはMU*が、共役π系を提供する少なくとも1つのベンゼン環またはチオフェン環を有する同じまたは異なる芳香族系を含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項5】
MUおよび/またはMU
*が、独立して、以下の残基
【化3-1】
【化3-2】
のうちの1つ以上から選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項6】
Lが、前記ポリマー主鎖の末端に位置するアリールまたはヘテロアリール基であり、i)アミン、カルバメート、カルボン酸、カルボキシレート、マレイミド、活性化エステル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラジン、アジド、アルキン、アルデヒド、チオール、および分子もしくは生体分子へのコンジュゲートのためのそれらの保護された基から選択される官能基、またはii)エネルギー移動系のエネルギー受容体として結合した有機蛍光色素、またはiii)生体分子、で終端している1つ以上のペンダント鎖で置換されていてよいことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項7】
Lが、以下の残基
【化4-1】
【化4-2】
のうちの1つ以上から選択されることを特徴とする、請求項6記載のコンジュゲート。
【請求項8】
少なくとも2つの位置2,2’;3,3’;4,4’;5,5’;6,6’;7,7’および8,8’が、一般式(III)
【化5】
[式中、n=5~15である]
に従う残基で置換されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項9】
FLが、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、ローダミン、テトラメチルローダミン、ケイ素-ローダミン(SiR)、クマリン、レゾルフィン、ピレン、アントラセン、フェニレン、フタロシアニン、シアニン、キサンテン、アミドピリリウムフルオロフォア、オキサジン、クアドレイン(Quadrain)色素、カルボピロニン、7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(NBD)フルオロフォア、BODIPY(商標)フルオロフォア(Molecular Probes, Inc.)、ALEXA(商標)フルオロフォア(Molecular Probes, Inc.)、DY(商標)フルオロフォア(Dyomics GmbH)、ベンゾピリリウムフルオロフォア、ベンゾピリリウム-ポリメチンフルオロフォア、ランタニドキレート、メタロポルフィリン、ロドール色素、カルボロドール色素、ナフタルイミド、およびポルフィリンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の少なくとも1つのコンジュゲートを用いて生体試料のサンプル中の標的部位を検出する方法であって、
d)前記生体試料のサンプルを少なくとも1つのコンジュゲートと接触させ、それによって、抗原認識部位によって認識される前記標的部位を前記コンジュゲートで標識するステップ、
e)標識された前記標的部位を、前記コンジュゲートの吸光度スペクトル内の波長を有する光で励起するステップ、
f)前記コンジュゲートによって放出される蛍光放射を検出することによって、標識された前記標的部位を検出するステップ、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
蛍光顕微鏡法、フローサイトメーター、蛍光分光法、細胞分離、病理学、または組織学における、請求項1から9までのいずれか1項記載のコンジュゲートの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性蛍光ポリマー系色素、ならびに細胞の検出および分析のための抗体とのコンジュゲートにおけるそれらの使用に関する。
【0002】
発明の背景
免疫蛍光標識は、研究と臨床応用の両方において、生体試料からの標的細胞を詳しく分析し、特異的に分離するために重要である。これらの方法のワークフローでは、一般に、標的分子に結合した蛍光タグが使用され、これはその後生体サンプル中の目的の分析対象を同定するために使用される。分析対象の検出に対する感度と、多くの分析対象を同時にマルチプレックス化する能力の両方が、細胞分析ワークフローで非常に求められている特徴である。分析の感度は、蛍光タグの輝度に大きく依存する一方で、多くの分析対象の検出を同時にマルチプレックス化する能力は、異なる蛍光タグ間を光学的に識別することに依存する。水溶性π共役ポリマーは、感度とマルチプレックス化分析の両方への解決手段を提供する可能性を有している。
【0003】
蛍光プローブとしてのπ共役ポリマーは、生物学的に関連する分析対象の蛍光検出のツールボックスの主力となっている。その強い相互作用と光を吸収する能力のため、蛍光ポリマーは、その明るい蛍光強度と相まって、以前の技術よりも分析対象の検出感度を高める能力が強化されている。生体分析対象の検出における現在の傾向では、個々の蛍光色を使用してマルチプレックス化された分析対象の検出を可能にできるように、色調整可能な特性を持つ蛍光系に対する需要が高まっている。したがって、生体分析対象を検出する用途に有用であるためには、蛍光系は、吸収と発光の両方が望まれる励起と発光の両方に別々に調整できるように、制御可能な設計を有していなくてはならない。同じ系内で、高度に調整可能な励起エネルギーおよび別個に高度に調整可能な発光エネルギーを組み合わせて、生体分子の分析対象の高感度マルチプレックス検出を可能にすることができる蛍光系は、存在しない。
【0004】
この課題に適した理想的なπ共役ポリマーは、本来、紫外線(UV)光による励起を可能にする高エネルギーバンドギャップを有する。それと同時に、バンドギャップ変更単位を使用することにより、可視スペクトル全体で励起エネルギーを赤色シフトさせることが容易に可能になるはずである。さらに、このようなポリマーの蛍光発光エネルギーは、蛍光エネルギー受容体色素を組み込むことにより別々に調整可能になるはずである。これらの受容体色素は、ポリマー骨格からエネルギーを流し、色調整可能な形式で検出するための固有の波長で蛍光を生成するために使用することができる。この形式では、π共役ポリマーは、一般的なレーザーの励起(例えば355nm、405nm、488nm、561nm、または640nmのラインのレーザー)と重なるように励起波長を個別に制御する一方で、それと同時に蛍光発光の波長を別々に調整する能力を有するであろう。この色調整可能なπ共役ポリマー系は、生体分子のマルチプレックス化された分析対象の検出の課題に対して非常に有用であろう。
【0005】
そのような水溶性π共役系ポリマーは、例えば、“Synthesis of Binaphthyl-Oligothiophene Copolymers with Emissions of Different Colors: Systematically Tuning the Photoluminescence of Conjugated Polymers” by K. Y. Musick, Q.-S. Hu, L. Pu, Macromolecules 1998, 31, 2933-2942に記載されている。
【0006】
さらに、米国特許出願公開第20180009990号明細書および米国特許第10604657号明細書には、2,2’位においてPEGで置換された4,4’-重合ビナフチルが記載されている。これは、sp3混成軌道を利用するポリパラエチニリン(PPE)結合を介して隣接するモノマーに4,4’結合が結合しているビナフチルに基づくポリマーについて言及している。本発明で開示されるビナフチルに基づくポリマーは、エチニリン結合なしで隣接するコモノマーに直接結合しており、その結果sp2混成結合および完全芳香族共役系が得られる。水溶媒和ポリマー系色素およびポリマー系タンデム色素が提供される。ポリマー系色素には、共有結合、ビニレン基、またはエチニレン基を介して連結されたアリールまたはヘテロアリールコモノマーの共役セグメントを有する水溶媒和集光性多重発色団が含まれる。ポリマータンデム色素は、そのエネルギーを受容する近接位にある多重発色団に共有結合したシグナル伝達発色団をさらに含む。
【0007】
米国特許第10481161号明細書には、2,2’位の置換基で置換された4,4’-重合ビナフチルが開示されている。水溶媒和ポリマー系色素およびポリマー系タンデム色素が提供される。ポリマー系色素には、共有結合、ビニレン基、またはエチニレン基を介して連結されたアリールまたはヘテロアリールコモノマーの共役セグメントを有する水溶媒和集光性多重発色団が含まれる。ポリマータンデム色素は、そのエネルギーを受容する近接位にある多重発色団に共有結合したシグナル伝達発色団をさらに含む。
【0008】
本発明の目的は、変性単位(MU)を選択することにより、所望の励起エネルギーに調整することができる色素を提供することであった。
【0009】
発明の概要
図1は、ポリビナフチルコモノマータンデム系を使用して、変性単位(MU)の選択によって励起エネルギーを、受容体色素の選択によって発光エネルギーを別々に調整する方法を示すスキームを示す。この方法では、本発明は、励起および発光が別々に制御され得る、物質の色の調整可能な状態を形成するために使用することができる。黒いボックスは、不可能な組み合わせを表す。b)生体部位(G2)に結合したコポリマービナフチルタンデム系の図式的な表示であり、コモノマー(x)の選択によりポリマーの励起エネルギーを調整することができ、タンデム色素(y)の選択により系の発光エネルギーを調整することができ、モノマー間の結合が異なるビナフチルモノマー(z)の選択によりポリマー骨格から受容体色素へのエネルギー移動の効率を調整することができる。
【0010】
したがって、本発明の目的は、一般式(I)
【化1】
[式中、AR(Ar)、MU、およびMU
*は、ポリマーの繰り返し単位であり、
MUおよびMU
*は、ポリマー主鎖に沿って均一にまたはランダムに分布しているポリマー変性単位またはバンドギャップ変更単位であり、
G1およびG2は、G1またはG2のうちの少なくとも1つが抗原認識部位であることを条件として、水素、ハロゲン、または抗原認識部位を表し、
aは10~100mol%であり、
bは0~90mol%であり、
cは0.1~90mol%、好ましくは1~80mol%、より好ましくは5~70mol%、最も好ましくは10~60mol%であるが、
a+b+c=100mol%であることを条件とし、
dは1~10000である。]
を有するコンジュゲートにおいて、
ARが、一般式(II)による2,2’または3,3’または5,5’または6,6’または7,7’または8,8’位を介してポリマー鎖に結合していることを特徴とする、コンジュゲートである。
【化2】
[式中、残りの位置2,2’;3,3’;4,4’;5,5’;6,6’;7,7’および8,8’は、H、SO
2CF
3、SO
2R
a、CF
3、CCl
3、CN、SO
3H、NO
2、NR
aR
bR
c
+、CHO、COR
a、CO
2R
a、COCl、CONR
aR
b、F、Cl、Br、I、R
a、OR
a、SR
a、OCOR
a、NR
aR
b、NHCOR
a、CCR
a、アリール-、ヘテロアリール-、C
6H
4OR
aまたはC
6H
4NR
aR
bからなる群から選択される同じまたは異なる残基で置換されており、R
a~cは、独立して、水素、アルキル-、アルケニル-、アルキニル-、ヘテロアルキル-、アリール-、ヘテロアリール-、シクロアルキル-、アルキルシクロアルキル-、ヘテロアルキルシクロアルキル-、ヘテロシクロアルキル-、アラルキル-、もしくはヘテロアラルキル残基、または(CH
2)
x(OCH
2CH
2)
yO(CH
2)
zCH
3であり、xは0~20の整数であり、yは0~50の整数であり、zは0~20の整数である。]
【0011】
式IIから分かるように、ARをポリマー鎖に結合するためには、2,2’;3,3’;4,4’;5,5’;6,6’;7,7’および8,8’からの2つの位置が必要である。したがって、「残りの位置」という用語は、ポリマー鎖中のARの結合に使用されない、開示された残基との置換に利用できるARの12個の位置を指す。
図5に可能な置換パターンが示されている。置換に使用される残基は、各位置で同じであっても異なっていてもよい(例えば2位と2’位は、同じまたは異なる残基を有していてもよい)。
【0012】
任意選択的には、残りの位置にある2つの残基は、共通のシクロアルキル環系またはヘテロシクロアルキル環系を形成し得る。
【0013】
「ARは、2,2’または3,3’または5,5’または6,6’または7,7’または8,8’位を介してポリマー鎖に結合している」という用語は、ARの位置のそれぞれのC原子と、他のAR単位、G1単位、またはL単位のC原子との間のC-C結合を指す。
【0014】
本発明のさらなる目的は、本明細書に開示の少なくとも1つのコンジュゲートを用いて生体試料のサンプル中の標的部位を検出する方法であって、
a)生体試料のサンプルを少なくとも1つのコンジュゲートと接触させ、それによって、抗原認識部位によって認識される標的部位をコンジュゲートで標識するステップ、
b)標識された標的部位を、コンジュゲートの吸光度スペクトル内の波長を有する光で励起するステップ、
c)コンジュゲートによって放出される蛍光放射を検出することによって、標識された標的部位を検出するステップ、
を含むことを特徴とする、方法である。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、蛍光顕微鏡法、フローサイトメトリー、蛍光分光法、細胞分離、病理学、または組織学における方法の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ポリビナフチルコモノマータンデム系を使用して、変性単位(MU)の選択によって励起エネルギーを別々に調整することができる方法を示すスキームを示す図である。
【
図2】標的部位に結合したタンデムビナフチルコモノマーポリマー系の例を示す図である。ビナフチルモノマー間の選択された結合に応じて、ポリマーは、主に直鎖構造から主にらせん構造に移行することができ、これによりポリマー系供与体から受容体色素へのエネルギー移動効率が調整可能にされる。
【
図3】マルチプレックス化された分析対象検出のために生体試料と組み合わされた、異なる標的部位にコンジュゲートした複数の異なる色のビナフチルタンデム色素系の使用例を示す図である。
【
図4a】本発明の実施例によるこれらの化合物からの蛍光共鳴エネルギー移動を示す図である。
【
図4b】本発明の実施例によるこれらの化合物からの蛍光共鳴エネルギー移動を示す図である。
【
図4c】本発明の実施例によるこれらの化合物からの蛍光共鳴エネルギー移動を示す図である。
【
図4d】本発明の実施例によるこれらの化合物からの蛍光共鳴エネルギー移動を示す図である。
【
図4e】本発明の実施例によるこれらの化合物からの蛍光共鳴エネルギー移動を示す図である。
【
図4f】本発明の実施例によるこれらの化合物からの蛍光共鳴エネルギー移動を示す図である。
【
図5】355nmで励起した末梢血単核細胞(PBMC)のフローサイトメトリー分析における、本発明によるポリマー系色素モノクローナル抗体(抗CD19)コンジュゲートの性能を示す図である。
【0017】
詳細な説明
調整可能な吸収帯と調整可能な発光波長の両方を有する式(I)に示されるビナフチル(BNP)系水溶性蛍光π共役ポリマー色素の一般構造。MUは、吸収帯を調整するための変更単位である。Arは1,1’ビナフチルに基づくアリール単位である。Lは任意選択的なリンカーであり、G1とG2は共に末端部位である。FLは、色調整可能な発光のための蛍光色素である。MU*は、色調整可能な発光のための蛍光色素を選択的に付加するために使用することができる化学選択的官能基を持つ変性単位である。
【0018】
本発明の変形形態では、少なくとも2つの位置2,2’;3,3’;4,4’;5,5’;6,6’;7,7’および8,8’は、一般式(IV)
【化3】
[式中、n=5~15である]
に従う残基で置換されている。
【0019】
本発明のコンジュゲートは、好ましくは水溶性である。
【0020】
バンドギャップ変更単位としてのMUおよびMU*
MUおよびMU*は、コンジュゲートの吸収帯をシフトさせるバンドギャップ変更単位である。
【0021】
MU*は、MUと類似または同一のバンドギャップ変更単位であるが、重合に使用されない任意の修飾可能な原子を介して化学選択的部位に結合することができる。化学選択的部位としては、限定するものではないが、アミン、カルバメート、カルボン酸、カルボキシレート、マレイミド、活性化エステル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラジン、アジド、アルキン、アルデヒド、チオール、チオシアネート、ならびに蛍光色素へのコンジュゲートのためおよび蛍光発光の可変性のためのそれらの保護された基が挙げられる。
【0022】
コンジュゲートの吸収帯をシフトさせるために、MUおよびMU*は、任意選択的に電子吸引性残基、電子供与性残基、立体障害基、および/または水溶性を高める残基で置換された、共役π系を提供する少なくとも1つのベンゼン環またはチオフェン環を有する同じまたは異なる芳香族系をそれぞれ含む。
【0023】
より好ましくは、MUおよびMU*は、任意選択的に電子吸引性残基、電子供与性残基、立体障害基、および/または水溶性を高める残基で置換された、共役π系を提供する少なくとも2つの縮合した、環化した、または共役したベンゼン環またはチオフェン環を有する同じまたは異なる芳香族系をそれぞれ含む。
【0024】
電子吸引性残基、電子供与性残基、立体障害基、および/または水溶性を高める残基としては、アルキルもしくはエーテル(グリコール)残基のような1つ以上の残基またはハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基を使用することができる。
【0025】
MUおよびMU*繰り返し単位は、本発明のコンジュゲートにおいて均一にまたはランダムに分布し得る。その限りにおいて、MUおよびMU*は、バンドギャップ変更単位としての機能だけでなく、ポリマー変性単位としての機能も有する。
【0026】
MUおよびMU
*の好ましい残基(任意選択的には開示の通りに置換)は以下の通りである:
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【0027】
末端基G1およびG2
G1およびG2は、共に、水素、ハロゲン、または抗原認識部位の群から独立して選択される。抗原認識部位は、抗体、断片化抗体、断片化抗体誘導体、ペプチド/MHC複合体、細胞接着もしくは共刺激分子の受容体、受容体リガンド、抗原、ハプテン結合剤、アビジン、ストレプトアビジン、アプタマー、プライマーおよびリガーゼ基質、TCR分子を標的とするペプチド/MHC複合体、細胞接着受容体分子、共刺激分子の受容体、または人工的に設計された結合分子から選択することができる。
【0028】
蛍光部位FL
適切な蛍光部位FLは、例えばフローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡法などの免疫蛍光技術の分野で知られているものである。本発明の方法では、コンジュゲートで標識された標的部位は、ポリマー骨格または蛍光部位FLまたはその両方を励起し、FLまたはポリマーから得られる発光(フォトルミネッセンス)を検出することによって検出される。
【0029】
有用な蛍光部位FLは、タンパク質系、例えばフィコビリタンパク質、低分子有機分子色素、例えばフルオレセインのようなキサンテン、またはローダミン、シアニン、オキサジン、クマリン、アクリジン、オキサジアゾール、ピレン、ピロメテン、ピリジロキサゾール、または有機金属錯体、例えばRu、Eu、Pt錯体であってよい。単一の分子体に加えて、蛍光タンパク質または小有機分子色素のクラスター、ならびに量子ドット、アップコンバーティングナノ粒子、金ナノ粒子、色素ポリマーナノ粒子などのナノ粒子も蛍光部位として使用することができる。
【0030】
本発明の変形形態では、フルオロフォアFLは、スルホネート、ホスホネート、ホスフェート、ポリエーテル、スルホンアミド、およびカーボネートからなる群から選択される1つ以上の水溶性付与置換基で置換されている。スルホネート置換基を有する蛍光部位、例えばThermo Fisher Scientific Inc.から供給されているAlexa Fluorファミリーの色素を使用することが特に有利である。フルオロフォア当たりのスルホネート置換度は、2以上であってよい。すなわちローダミン系色素またはシアニン系色素の場合である。
【0031】
適切な市販の蛍光部位は、Miltenyi Biotec BV & Co. KGの製品ライン「Vio」、またはThermofisherのFITCもしくはPromofluorもしくはAlexa色素および/もしくはBodipy色素、またはLumiprobeのシアニン、またはDyomics GmbHのDY(商標)フルオロフォア、またはAberior GmbHのStar色素から購入することができる。
【0032】
リンカー基L
Lは、ポリマー主鎖の末端に位置するアリールまたはヘテロアリール基から構成されるリンカーであり、i)アミン、カルバメート、カルボン酸、カルボキシレート、マレイミド、活性化エステル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラジン、アジド、アルキン、アルデヒド、チオール、および分子もしくは生体分子へのコンジュゲートのためのそれらの保護された基から選択される官能基、またはii)受容体色素としてコンジュゲートした有機色素、またはiii)生体分子、で終端している1つ以上のペンダント鎖で置換されている。
【0033】
好ましくは、Lは、以下の残基:
【化5-1】
【化5-2】
のうちの1つ以上から選択される。
【0034】
抗原認識部位
「抗原認識部位」という用語は、細胞の細胞内または細胞外で発現される抗原のような、生体試料で発現される標的部位に対して向けられる、任意の種類の抗体、断片化抗体、または断片化抗体誘導体を指す。この用語は、完全インタクト抗体、断片化抗体、または断片化抗体誘導体、例えばFab、Fab’、F(ab’)2、sdAb、scFv、di-scFv、ナノボディに関する。そのような断片化された抗体誘導体は、これらの種類の分子を含む共有結合および非共有結合コンジュゲートを含む組み換え手順によって合成することができる。抗原認識部位のさらなる例は、TCR分子を標的とするペプチド/MHC-複合体、細胞接着受容体分子、共刺激分子の受容体、人工的に操作された結合分子、例えば細胞表面分子を標的とする例えばペプチドまたはアプタマーである。
【0035】
本発明の方法で使用されるコンジュゲートは、最大100個、好ましくは1~20個の抗原認識部位Yを含み得る。抗原認識部位と標的抗原との相互作用は、高親和性であっても低親和性であってもよい。単一の低親和性抗原認識部位の結合相互作用は小さすぎて、抗原との安定した結合が得られない。低親和性抗原認識部位は、酵素分解性スペーサーへのコンジュゲートによって多量体化することで、高い結合活性を得ることができる。スペーサーが酵素分解されると、低親和性抗原認識部位が単量体化し、蛍光マーカーが完全に除去される。
【0036】
好ましくは、「抗原認識部位」という用語は、IL2、FoxP3、CD154のような細胞内、またはCD19、CD3、CD14、CD4、CD、CD25、CD34、CD56、およびCD133のような細胞外の生体試料(標的細胞)により発現する抗原に対する抗体を指す。抗原認識部位G1、G2、特に抗体は、側鎖アミノまたはスルフヒドリル基を介してCPに結合することができる。場合によっては、抗体のグリコシド側鎖が過ヨウ素酸によって酸化されて、アルデヒド官能基が生じることがある。
【0037】
抗原認識部位は、共有結合的にまたは非共有結合的に結合することができる。共有結合または非共有結合によるコンジュゲートの方法は当業者に知られており、蛍光マーカーのコンジュゲートについて述べた方法と同じである。
【0038】
本発明の方法は、複雑な混合物からの特定の細胞タイプの検出および/または単離に特に有用であり、ステップa)~c)の複数の連続した手順を含み得る。この方法は、コンジュゲートの様々な組み合わせを使用することができる。例えば、コンジュゲートは、2つの異なる抗CD34抗体のように、2つの異なるエピトープに特異的な抗体を含み得る。例えば2つの異なるT細胞集団間の分化のための抗CD4と抗CD8、または制御性T細胞のような異なる細胞亜集団の決定のための抗CD4と抗CD25など、異なる抗原は、異なる抗体を含む異なるコンジュゲートで対処され得る。
【0039】
細胞検出方法
コンジュゲートで標識された標的は、蛍光部位FLまたは骨格CPのいずれかを励起し、得られた蛍光シグナルを分析することによって検出される。励起波長は、通常、蛍光部位FLまたはCPの吸収極大に従って選択され、当該技術分野で公知のLASERまたはLED源によって提供される。複数の異なる検出部位FLが複数の色/パラメータ検出に使用される場合、吸収スペクトルが重ならない、少なくとも吸収極大が重ならない蛍光部位を選択するように注意すべきである。蛍光部位の場合、標的は、例えば蛍光顕微鏡、フローサイトメーター、スペクトロフルオロメーター、または蛍光スキャナーで検出することができる。化学発光によって放出される光は、励起を省略した同様の装置によって検出することができる。
【0040】
標的部位
本発明の方法で検出される標的部位は、組織切片、細胞凝集体、懸濁細胞、または接着細胞などの任意の生体試料上にあってよい。細胞は、生きていても死んでいてもよい。好まくは、標的部位は、無脊椎動物(例えば線虫(Caenorhabditis elegans)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))、脊椎動物(例えばゼブラフィッシュ(Danio rerio)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis))、および哺乳類(例えばハツカネズミ(Mus musculus)、ヒト(Homo Sapiens))の動物全体、臓器、組織切片、細胞凝集体、または単一細胞などの生体試料の細胞内または細胞外で発現した抗原である。
【0041】
方法の使用
本発明の方法は、蛍光顕微鏡法、フローサイトメトリー、蛍光分光法、細胞分離、病理学、または組織学におけるような、研究、診断、および細胞治療における様々な用途で使用することができる。
【0042】
本発明の第1の変形形態では、細胞のような生体試料は、計数の目的、すなわちコンジュゲートの抗原認識部位によって認識される抗原の特定のセットを有するサンプルからの細胞の量を確定するために検出される。別の変形形態では、ステップc)でコンジュゲートによって検出された生体試料は、光学的手段、静電力、圧電力、機械的分離、または音響的手段によってサンプルから分離される。
【0043】
本発明の別の変形形態では、コンジュゲートの抗原認識部位によって認識される生体試料上の抗原のような標的部位の位置が決定される。そのような技術は、「マルチエピトープリガンドカートグラフィー(Multi Epitope Ligand Cartography)」、「チップベースサイトメトリー(Chip-based Cytometry)」または「Multiomyx」として知られており、例えば欧州特許第0810428号明細書、欧州特許第1181525号明細書、欧州特許第1136822号明細書、または欧州特許第1224472号明細書に記載されている。この技術では、細胞は固定化され、蛍光部位に結合した抗体と接触する。抗体は、生体試料(例えば細胞表面)上のそれぞれの抗原によって認識され、結合していないマーカーが除去されて蛍光部位が励起された後、蛍光部位の蛍光発光によって抗原の位置が検出される。特定の変形形態では、蛍光部位に結合した抗体の代わりに、MALDI-ImagingまたはCyTOFで検出可能な部位に結合した抗体を使用することができる。当業者は、蛍光部位に基づく技術を、これらの検出部位を扱うために修正する方法を認識している。
【0044】
標的部位の位置付けは、蛍光放射の波長に対して十分な解像度および感度を有するデジタル撮像装置によって達成され、デジタル撮像装置は、例えば蛍光顕微鏡を用いて、光学的拡大の有無にかかわらず使用され得る。得られる画像は、RAW、TIF、JPEG、またはHDF5形式などで、ハードドライブなどの適切な保存デバイスに保存される。
【0045】
異なる抗原を検出するために、同じまたは異なる蛍光部位または抗原認識部位を有する異なる抗体コンジュゲートを提供することができる。異なる波長の蛍光発光の並行検出は限られるため、抗体-蛍光色素コンジュゲートは、別々に、または小さいグループ(2~10)で順々に利用される。
【0046】
本発明による方法のさらに別の変形形態では、生体試料、特にサンプルの懸濁細胞は、マイクロキャビティ内に捕捉することによって、または付着によって固定化される。
【0047】
通常、本発明の方法は、複数の変形形態で行うことができる。例えば、コンジュゲートで標識された標的部位が検出される前に、例えば緩衝液で洗浄することにより、標的部位によって認識されないコンジュゲートを除去することができる。
【0048】
本発明の変形形態では、少なくとも2つのコンジュゲートが同時にまたはその後の染色シーケンスで提供され、各抗原認識部位は異なる抗原を認識する。別の変形形態では、少なくとも2つのコンジュゲートがサンプルに同時に、または後続の染色シーケンスで提供され得る。いずれの場合も、標識された標的部位を同時にまたは逐次的に検出することができる。
【実施例0049】
例として、以下の化合物を、異なる受容体色素FLを用いて以下の一般的な方法で合成し、抗原認識部分にコンジュゲートさせた。
【化6】
【表1】
【0050】
表は、様々なポリマー-受容体色素タンデム系の物理データを示している。上に示したポリ(ビナフチル-co-フェニレン-NH2)ポリマーを、様々な受容体色素FLに結合させ、蛍光発光特性を測定して、発光波長(lem)、蛍光量子収率(QY)、およびエネルギー移動効率(Idonor/Iacceptor)を決定した。全ての測定は、325nmでビナフチルポリマーを励起することによって行った。
【0051】
使用した受容体色素は、公知のスルホシアニンおよびStar Red色素である。
図4a~fは、これらの化合物からの蛍光共鳴エネルギー移動を示している。ビナフチル残基供与体の発光は、各プロットにおいて約400nmを中心としている。受容体色素を介したエネルギー移動による蛍光発光は、a)フルオレセイン(約530nm)、b)Sulfo-Cy3(約576nm)、c)Sulfo-Cy3.5(約605nm)、d)Sulfo-Cy5.5(約706nm)、e)Sulfo-Cy7(約788nm)、およびf)Star Red(約662nm)である。グラフc、d、e、およびfの650nm付近を中心とする鋭い発光の特徴は、発光測定のアーティファクトであり、タンデムポリマーの蛍光の実際の特徴ではない。
【0052】
355nmで励起した末梢血単核細胞(PBMC)のフローサイトメトリー分析におけるポリマー色素モノクローナル抗体(抗CD19)コンジュゲートの性能試験を
図5に示す。明確化のため単球を除外するためにCD14陰性細胞のみが示されている。A)585/42nm発光フィルターで検出されたBNP-sCy3コンジュゲート;B)610/20nm発光フィルターで検出されたBNP-sCy3.3コンジュゲート;C)670/30nm発光フィルターで検出されたBNP-Star Redコンジュゲート;D)710/30nm発光フィルターで検出されたBNP-sCy5.5コンジュゲート;E)780/60nm発光フィルターで検出されたBNP-sCy7コンジュゲート。
【0053】
[一般的合成]
[ビルディングブロックM1の合成]
【化7】
【0054】
アセトン(42mL)中の6,6’-ジブロモ-[1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジオール(3.00g、6mmol)の撹拌されている溶液に、34-ヨード-2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデカオキサテトラトリアコンタン(12.6g、20mmol)、続いてK2CO3(2.82g、20mol)を入れ、得られた反応混合物を70℃で16時間撹拌した。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮して乾燥させた。得られた粗製物質を水(20mL)で希釈し、酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。合わせた有機相をブライン(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。得られた粗製残留物を、メタノール/ジクロロメタン(5:95)で溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色の液体を得た。この化合物を、アセトニトリル/水(50:50)で溶出する逆相クロマトグラフィーによりさらに精製した。化合物を凍結乾燥することで、純粋な化合物M1(1.7g、17.6%)を淡黄色の液体として得た。
【0055】
【0056】
炭酸カリウム(2.74g、19.9mmol)を、ジメチルホルムアミド(40mL)中の2,5-ジブロモフェノール(1.00g、3.97mmol)の溶液に添加した。4-(N-Boc-アミノ)ブチルブロミド(1.2g、4.8mmol、1.2当量)を添加し、溶液を80℃で72時間加熱した。溶媒を減圧下で除去し、残留物をジクロロメタン(50mL)に懸濁させ、水(3×50mL)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除去することで白色固体(1.49g)を得た。粗生成物を、n-ヘキサン中で0体積%から50体積%の酢酸エチルの勾配を用いるシリカフラッシュカラムクロマトグラフィー、およびそれに続く水中で0体積%から100体積%のアセトニトリルの勾配を用いる逆相フラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した。生成物を白色固体として得た(1.46g、87%)。
【0057】
[tert-ブチル4-(4-ブロモフェニル)ブタノエート(M3)の合成]
【化9】
【0058】
1,1’カルボニルジイミダゾール(667mg、4.11mmol)を、ジメチルホルムアミド(4.1mL)中の4-(4-ブロモフェニル)ブタン酸(1.00g、4.11mmol)の溶液に添加し、混合物を40℃で1時間撹拌した。t-ブチルアルコール(610mg、772μL、8.23mmol)と1,8ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7エン(626mg、614μL、4.11mol)を添加し、混合物を40℃で24時間撹拌した。ジエチルエーテル(50mL)を添加し、溶液を10%塩酸(10mL)、水(10mL)、および10%炭酸ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。粗生成物を、n-ヘキサン中で0体積%から10体積%の酢酸エチルの勾配で溶離するシリカフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製することで、生成物を無色オイルとして得た(234mg、17%)。
【0059】
[ポリマー骨格の合成]
【化10】
c=0.1、a=0.9、d=27
【0060】
ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)(117mg、424μmol)、2,2’-ビピリジル(66.0mg、424μmol)、および1,5-シクロオクタジエン(46.0mg、424μmol)をジメチルホルムアミド(8ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下で70℃で30分間撹拌した。モノマーM1(250mg、173μmol)、M2(8mg、19μmol)、およびM3(1.1mg、3.9μmol)をアルゴン雰囲気下でジメチルホルムアミド(8mL)に溶解し、Ni錯体含有溶液に添加した。混合物を70℃で3時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を20体積%のエタノール水溶液に懸濁させた。遠心分離を行った後、上清みをサイズ排除濾過を使用して精製し、続いて凍結乾燥することでポリマーを黄色の泡状物として得た。ポリマーをジクロロメタン(50mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(5mL)を添加した。溶液を室温で2時間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、残留物を20体積%のエタノール水溶液(100mL)に溶解し、サイズ排除濾過(カットオフ10kDa)によって精製し、凍結乾燥することで、最終生成物(122mg、44%)を得た。
【0061】
[ポリマータンデム色素の合成]
【化11】
c=10%、a=90%、d=27
【0062】
DMSO(0.33μL)中のポリマー骨格(5.0mg)の溶液に、DMSO(0.1~0.7mL)中のNHS受容体色素(1.128μmol)の溶液を添加した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(10.8μL)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を20体積%のEtOH(40mL)に注ぎ入れた。限外濾過により過剰の受容体色素を除去した。ポリマーを20体積%のEtOH(15mL)に溶解して濾液が無色になるまで限外濾過によって濃縮する手順を繰り返すことにより精製した。
【0063】
【0064】
ポリマータンデム色素(5.0mg)を、20体積%のエタノールを含有するMESバッファー(50mM、pH6)(0.50mL)に溶解した。50mMのMESバッファー中のN-ヒドロキシスクシンイミド(2.3mg、20μmol)の溶液(192μL)と、50mMのMESバッファー中の1エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(3.8mg、20μmol)の溶液(190μL)を添加した。混合物を室温で20分間撹拌した。エチレンジアミン(1.73μL、1.56mg、26μmol)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を50mMのMESバッファー(10mL)で希釈し、限外濾過により濃縮した。ポリマーを20体積%のEtOH(15mL)に溶解し、続いて限外濾過および凍結乾燥することによって精製した。
【0065】
[ポリマータンデム色素の抗体へのバイオコンジュゲーション]
抗体は、5mg/mLの抗体濃度で30分間、MES緩衝液(pH6)中のジチオトレイトール(50mM)を使用して還元した。還元された抗体を、ゲル濾過オーブンであるSephadex G-25カラム(Cytiva Europe GmbH, Germany)で精製した。抗体含有画分をクーマシー染色によって特定し、280nmにおける吸光度を測定することによりプールした画分の抗体濃度を決定した。
【0066】
ヘテロ二官能性架橋剤としてスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)を使用して、アミノ官能化ポリマーを還元した抗体にカップリングさせた。クロスカップリングは、市販のSMCCクロスカップリングキット(Thermo Fisher Scientific Inc., USA)を使用して行った。カップリングは、キットの使用説明書に従って行った。抗体-ポリマーコンジュゲートは、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。
【0067】
[細胞染色]
PEB緩衝液を使用して1mL当たり1×107個の細胞の濃度でボルテックスを行い、続いて300gで5分間遠心分離することにより、細胞を洗浄した。1×107個の細胞を20μLのPEBバッファーに再懸濁し、細胞染色のために1mL当たり1×107個の細胞の濃度に到達するように抗体-色素コンジュゲートおよびPEBバッファーを添加した。細胞は、4℃で10分間インキュベートすることにより染色した。その後、細胞を再度洗浄し、フローサイトメトリー分析のために1mLのPEBバッファーに再懸濁した。染色した細胞は、分析まで4℃で保管した。死細胞の識別のために、ヨウ化プロピジウム溶液(力価1:1000)を測定の直前に装置によって添加した。
【0068】
[フローサイトメトリー分析]
染色した細胞は、5つのレーザー励起源(355nm、405nm、488nm、561nm、640nm)を379/28nmのバンドパスフィルターと組み合わせたLSR Fortessa(Becton, Dickinson & Company Inc, USA)を用いたフローサイトメトリーによって分析した。フローサイトメトリーデータ分析は、FlowJo(Becton, Dickinson & Company Inc, USA)フローサイトメトリー分析ソフトウェアを使用して行った。