(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104917
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】高電圧バッテリーにおいて安全性および性能を向上させるための小さな分子の添加物を含む組成物
(51)【国際特許分類】
H01M 50/583 20210101AFI20230721BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20230721BHJP
H01M 50/581 20210101ALI20230721BHJP
【FI】
H01M50/583
H01M10/04 W
H01M50/581
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023005133
(22)【出願日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】63/300,533
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523019653
【氏名又は名称】エマイオネクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Amionx, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100224605
【弁理士】
【氏名又は名称】畠中 省伍
(72)【発明者】
【氏名】ビーミレディ,サンバシバ レディ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヤンボー
【テーマコード(参考)】
5H028
5H043
【Fターム(参考)】
5H028BB07
5H028CC12
5H028EE02
5H028EE04
5H028EE06
5H043AA04
5H043BA11
5H043CA12
5H043EA29
5H043GA02
5H043GA06
5H043JA15E
5H043KA12E
5H043KA14E
5H043KA16E
5H043KA22E
5H043KA26E
(57)【要約】 (修正有)
【課題】性能および安全性のプロファイルが向上したバッテリーセルを提供する。
【解決手段】バッテリーセルは、電解質と、第1電極と、第2電極と、セパレータと、少なくとも1つの保護層とを含んでよい。第1電極は、第1電極層と第1集電体とを含んで成る。第2電極は、第2電極層と第2集電体とを含んで成る。セパレータは、第1電極と第2電極との間に配置されている。例えば、保護層は、第1電極層と第1集電体との間、第2電極層と第2集電体との間、セパレータと第1電極との間、および/または、セパレータと第2電極との間に配置されてよい。活性化されたとき、1以上の保護層は、バッテリーセルを通る電流の流れを減少または阻止することができる。1以上の保護層の組成物は、1以上の小さな分子の添加物を含んでよい。それにより、バッテリーセルの安定性および伝導性が向上する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質と、第1電極と、第2電極と、セパレータと、第1保護層とを含んで成るバッテリーセルであって、
前記第1電極は、第1電極層と第1集電体とを含んで成り、
前記第2電極は、第2電極層と第2集電体とを含んで成り、
前記セパレータは、前記第1電極と前記第2電極との間に配置されており、
前記第1保護層は、活性化すると、当該バッテリーセルの内部で電流の流れを減少または阻止する層であり、
前記第1保護層は、機能性材料および/または伝導性材料と組み合わされる1以上の小さな分子の添加物を含む組成物から形成されている、
バッテリーセル。
【請求項2】
前記1以上の小さな分子の添加物は、芳香族アミン、脂肪族アミン、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、脂肪族カルボキシ化合物、芳香族ヒドロキシル化合物、脂肪族チオール化合物、芳香族チオール化合物、エポキシ置換脂肪族化合物もしくはエポキシ置換芳香族化合物、芳香族置換ピロール-2,5-ジオンもしくは脂肪族置換ピロール-2,5-ジオン、エチレン置換脂肪族化合物もしくはエチレン置換芳香族化合物および/またはフリーラジカル開始剤を含む、請求項1に記載のバッテリーセル。
【請求項3】
前記第1保護層の前記組成物は、重量で0.1%~90%の前記1以上の小さな分子の添加物、重量で1%~50%の前記1以上の小さな分子の添加物、重量で1%~10%の前記1以上の小さな分子の添加物、または重量で1%~5%の前記1以上の小さな分子の添加物を含む、請求項1または2に記載のバッテリーセル。
【請求項4】
前記機能性材料は、ポリアクリル酸(PAA)、架橋したポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ(メチルアクリレート)(PMA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(エチルメタクリレート)(PEMA)および/またはポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のバッテリーセル。
【請求項5】
前記伝導性材料が、カーボンブラックまたは伝導性ポリマーであり、前記伝導性ポリマーが、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、ポリピロール(ドープ)、ポリ(n-アルキルチオフェン)、ポリアルキルフルオレン、およびポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-コ-ポリ(エチレングリコール)(PEDOT-PEG)(ドープ)から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載のバッテリーセル。
【請求項6】
前記第1保護層の前記組成物は、1以上の塩基性材料および/またはバインダ材料をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のバッテリーセル。
【請求項7】
前記第1保護層は、(i)前記第1電極層と前記第1集電体との間、または(ii)前記セパレータと前記第1電極層との間に配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のバッテリーセル。
【請求項8】
前記第1保護層は、シール層と結合されていて、前記シール層は、第2トリガーによって活性化されるまで、当該バッテリーセルの前記第1保護層と、前記第1電極層および前記電解質の少なくとも1つとの間の反応を防止する、請求項1~7のいずれか1項に記載のバッテリーセル。
【請求項9】
第2保護層をさらに含み、前記第2保護層は、前記機能性材料および/または前記伝導性材料と組み合わされる前記1以上の小さな分子の添加物を含む前記組成物から形成されていて、前記第2保護層は、(i)前記第2電極層と前記第2集電体との間、または(ii)前記セパレータと前記第2電極層との間に配置されている、請求項1~8のいずれか1項に記載のバッテリーセル。
【請求項10】
前記第2保護層は、シール層と結合しており、前記シール層は、温度トリガー、電圧トリガー、電流トリガーおよび当該バッテリーセルへの物理的なダメージの少なくとも1つで活性化されるまで、当該バッテリーセルの前記第2保護層と、前記第2電極層および前記電解質の少なくとも1つとの間の反応を防止する、請求項9に記載のバッテリーセル。
【請求項11】
前記第1保護層は、温度トリガー、電圧トリガー、電流トリガーおよび当該バッテリーセルへの物理的なダメージの少なくとも1つで活性化される、請求項1~10のいずれか1項に記載のバッテリーセル。
【請求項12】
前記第1保護層の前記組成物は、以下の(i)、(ii)または(iii):
(i)
カルボポール、水酸化リチウム(LiOH)、スーパーP、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリンおよび水、
(ii)
カルボポール、水酸化リチウム(LiOH)、スーパーP、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸および水、または
(iii)
カルボポール、水酸化リチウム(LiOH)、スーパーP、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートおよび水
を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のバッテリーセル。
【請求項13】
前記第1保護層の前記組成物は、以下の(i)、(ii)または(iii):
(i)
68.53%のカルボポール、24.47%の水酸化リチウム(LiOH)、5%のスーパーP、2%の4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリンおよび水、
(ii)
67.79%のカルボポール、24.21%の水酸化リチウム(LiOH)、5%のスーパーP、3%のビフェニル-4,4’-ジカルボン酸および水、または
(iii)
68.53%のカルボポール、24.47%の水酸化リチウム(LiOH)、5%のスーパーP、1%のペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1%のトリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートおよび水
を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のバッテリーセル。
【請求項14】
電解質と、第1電極と、第2電極と、セパレータと、第1保護層とを含んで成るバッテリーセルであって、
前記第1電極は、第1電極層と第1集電体とを含んで成り、
前記第2電極は、第2電極層と第2集電体とを含んで成り、
前記セパレータは、前記第1電極と前記第2電極との間に配置されており、
前記第1保護層は、活性化すると、当該バッテリーセルの内部で電流の流れを減少または阻止する層であり、
前記第1保護層は、1以上の金属塩、1以上のセラミック・ナノ材料および1以上の伝導性のナノ添加物を含む組成物から形成されている、
バッテリーセル。
【請求項15】
前記1以上の金属塩は、有機の塩であり、前記有機の塩が、ポリ酸の塩[-CR2-(CR2)0-100-COOM-]p、ポリメタクリル塩[-CR2-(CR2)0-100-C(CR3)(COOM)-]p、ポリアクリレート塩[-CR2-(CR2)0-100-CR(COOM)-]p、ポリメチルメタクリル塩[-CR(CR3)-(CR2)0-100-C(CR3)(COOM)-]p、ポリオール-M[-CR2-(CR2)0-100-CR-OM-]p、ポリスルフィド-M[-CR2-(CR2)0-100-CR-SM-]p、および有機ケイ酸塩[-R2Si-O-SiR2-]pから選択され、式中、Mは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、カドミウム(Cd)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、鉛(Pb)、ストロンチウム(Sr)および亜鉛(Zn)を含む金属の群から選択され、Rは、H、-CH3および-CH2CH3から選択される、請求項14に記載のバッテリーセル。
【請求項16】
前記1以上のセラミック・ナノ材料は、金属炭酸塩、金属炭酸水素塩、金属酸化物、金属チタン酸塩および/または金属ケイ酸塩を含む、請求項14~15のいずれか1項に記載のバッテリーセル。
【請求項17】
前記1以上の伝導性のナノ添加物は、カーボンナノ材料、カーボンファイバ、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、金属の粉末、および/または炭素の粉末と金属の粉末との組み合わせを含む、請求項14~16のいずれか1項に記載のバッテリーセル。
【請求項18】
前記第1保護層が、(i)前記第1電極層と前記第1集電体との間、または(ii)前記セパレータと前記第1電極層との間に配置されている、請求項14~17のいずれか1項に記載のバッテリーセル。
【請求項19】
前記第1保護層は、温度トリガー、電圧トリガー、電流トリガーおよび当該バッテリーセルへの物理的なダメージの少なくとも1つで活性化される、請求項14~18のいずれか1項に記載のバッテリーセル。
【請求項20】
前記機能性材料および/または前記伝導性材料と組み合わされる前記1以上の小さな分子の添加物を含む前記組成物から形成される第2保護層をさらに含んで成り、
前記第2保護層は、(i)前記第2電極層と前記第2集電体との間、または(ii)前記セパレータと前記第2電極層との間に配置されている、
請求項14~19のいずれか1項に記載のバッテリーセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、米国仮出願第63/300,533号(名称 “COMPOSITION WITH SMALL MOLECULE ADDITIVES FOR IMPROVED SAFETY AND PERFORMANCE IN HIGH VOLTAGE LITHIUM-ION BATTERIES” (2022年1月18日付出願))の優先権を主張するものであり、その開示内容は、その全体が参考として本明細書中に組み込まれている。
【0002】
(技術分野)
本開示に記載の主題は、概して、バッテリーセル(又は電池セル又は電池)に関する。より具体的には、バッテリーセルで使用するための小さな分子(又は小分子又は低分子)の添加物(又は添加剤)(又はスモール・モレキュラ・アディティブ)を含む保護層(又はプロテクト層又はプロテクティブ・レイヤー)に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
バッテリーセル(又は電池セル又は電池)は、操作(又は作動又は運転又はオペレーション)の間、過充電(又はオーバーチャージ)、過熱(又はオーバーヒート)および/または短絡(又はショート・サーキット)の可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、過電流(又はオーバーカレント)は、バッテリーセル(又は電池セル又は電池)において、過充電(又はオーバーチャージ)および/または内部での短絡(又はショート・サーキット)(又は内部短絡)が拡がるとき(又は展開するとき)に引き起こされ得るものである。過電流(又はオーバーカレント)は、バッテリーセル(又は電池セル又は電池)に不可逆的なダメージ(又は損傷)を引き起こす可能性がある。特に、過電流(又はオーバーカレント)は、熱暴走(又はサーマル・ランナウェイ)、つまり、危険な状態(又は状況又はコンディション)をもたらす可能性がある。このような状態では、過熱したバッテリーセル(又は電池セル又は電池)から放散された熱(又は放熱)がバッテリーセル(又は電池セル又は電池)の内部で発熱性の反応を加速させて、バッテリー(又は電池)の温度をさらに上昇させる。熱暴走の結果として、とりわけ、恐ろしいこと(例えば、火災および/または爆発など)などが生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
バッテリーセル(又は電池セル又は電池)の保護層(又はプロテクト層又はプロテクティブ・レイヤー)を製造するための方法、システムおよび物(又は物品又はアーティクル)を提供する。本願の主題の1つの態様において、バッテリーセルは、保護層を含んでよい。保護層は、バッテリーセルの操作(又は作動又は運転又はオペレーション)の間に生じ得る危険(又はハザード)を軽減(又は緩和)および/または排除するように構成されている。保護層は、1以上の小さな分子(又は小分子又は低分子)の添加物(又は添加剤)(又はスモール・モレキュラ・アディティブ)を含んでよい。それによって、架橋(又はクロス・リンク)を促進し、保護層の安定性(又はスタビリティ)および伝導性(又は導電性又はコンダクティビティ)を向上(又は改善)させることができる。さらに、保護層は、バッテリーセルの内部において、電流の流れ(又はフロー)を阻止(又は中断又はインタラプト)することによって、温度、電圧および/または電流の増加に応答(又は反応又は対応又は追従)するように構成されてよい。保護層は、バッテリーセルの少なくとも1つの集電体(又は集電層又はカレント・コレクタ)または電極(又はエレクトロード)の片側または両側の表面に配置されてよい。したがって、いくつかの場合において、第1保護層は、バッテリーセルの第1集電体(又は第1集電層又はファースト・カレント・コレクタ)と、対応する第1電極との間に配置(又は挿入)されてよい。代替および/または追加として、第2保護層は、バッテリーセルの第2集電体(又は第2集電層又はセカンド・カレント・コレクタ)と、対応する第2電極との間に配置(又は挿入)されてよい。
【0006】
いくつかの場合において、保護層は、多機能層(又は多官能層又はマルチファンクション層又はマルチファンクショナル・レイヤー)の一部であってよい。多機能層は、保護層と、シール層(又はシーリング層又は封止層)とを含んで成るものである。多機能層は、バッテリーセルの電極と、集電体との間に配置(又は挿入)されてよい。さらに、シール層は、電極と保護層との間に配置(又は挿入)されている。シール層は、バッテリーセルの他の要素(又は成分又は構成又はコンポーネント)(特にバッテリーセルに含まれる電極(又はエレクトロード)および電解質(又は電解液又はエレクトロライト))から保護層を分離(又は隔離又は単離又はアイソレート)することができる層である。このようにして、シール層の存在によって、保護層を形成するために使用される材料の選択に柔軟性(又はフレキシビリティ)をもたらすことができる。例えば、保護層を形成する材料を選択してよく、性能(又はパフォーマンス)を最大化することができる。バッテリーセルの他の要素(又は成分又は構成又はコンポーネント)との適合性(又はコンパチビリティ)に必要な考慮(又は配慮)が最小になる。
【0007】
別の態様において、1以上の小さな分子(又は小分子又は低分子)の添加物(又は添加剤)(又はスモール・モレキュラ・アディティブ)を含む(又は小さな分子の添加物(又は添加剤)を伴う)保護層(又はプロテクト層又はプロテクティブ・レイヤー)を含む(又は有する又は伴う)バッテリーセル(又は電池セル又は電池)を提供する。
バッテリーセルは、電解質と、第1電極と、第2電極と、セパレータと、第1保護層とを含んでよい。
上記第1電極は、第1電極層と第1集電体とを含んで成り、
上記第2電極は、第2電極層と第2集電体とを含んで成り、
上記セパレータは、上記第1電極と上記第2電極との間に配置(又は挿入)されており、
上記第1保護層は、活性化すると、当該バッテリーセルの内部で電流の流れ(又はフロー)(又はカレント・フロー)を減少または阻止(又は中断又はインタラプト)する層であり、
上記第1保護層は、機能性材料(又は官能性材料又はファンクション材料又はファンクショナル・マテリアル)および/または伝導性材料(又は導電性材料又はコンダクティブ材料又はコンダクティブ・マテリアル)と組み合わされた1以上の小さな分子の添加物(又は添加剤)を含む組成物(又は組成又はコンポジション)から形成されている。
【0008】
製造のための方法、システムおよび物(又は物品又はアーティクル)のいくつかのバリエーション(又は変形)において、1以上の以下の特徴(又はフィーチャ)を、必要に応じて、任意の実行可能な組み合わせとして含ませることができる。
【0009】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、上記1以上の小さな分子の添加物(又は添加剤)は、芳香族アミン、脂肪族アミン、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、脂肪族ヒドロキシ化合物、芳香族ヒドロキシル化合物、脂肪族チオール化合物、芳香族チオール化合物、エポキシ置換脂肪族化合物もしくはエポキシ置換芳香族化合物、芳香族置換ピロール-2,5-ジオンもしくは脂肪族置換ピロール-2,5-ジオン、エチレン置換脂肪族化合物もしくはエチレン置換芳香族化合物および/またはフリーラジカル開始剤を含んでよい。
【0010】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、上記第1保護層の上記組成物は、重量で0.1%~90%の上記1以上の小さな分子の添加物、重量で1%~50%の上記1以上の小さな分子の添加物、重量で1%~10%の上記1以上の小さな分子の添加物、または重量で1%~5%の上記1以上の小さな分子の添加物を含んでよい。
【0011】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、上記機能性材料は、ポリアクリル酸(PAA)、架橋したポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ(メチルアクリレート)(PMA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(エチルメタクリレート)(PEMA)および/またはポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)を含んでよい。
【0012】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、上記伝導性材料が、カーボンブラックまたは伝導性ポリマーであってよい。上記伝導性ポリマーが、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、ポリピロール(ドープ(又はドープもしくはドーピングされているもの))、ポリ(n-アルキルチオフェン)、ポリアルキルフルオレン(polyalylfluorene)、およびポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-コ-ポリ(エチレングリコール)(PEDOT-PEG)(ドープ(又はドープもしくはドーピングされているもの))から選択される。
【0013】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、上記第1保護層の上記組成物は、1以上の塩基性材料(又はベース材料又はベース・マテリアル)および/またはバインダ材料(又はバインダ・マテリアル)をさらに含んでよい。
【0014】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、上記第1保護層は、(i)上記第1電極層と上記第1集電体との間、または(ii)上記セパレータと上記第1電極層との間に配置(又は挿入)されていてよい。
【0015】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、上記第1保護層は、シール層と結合されてよい。上記シール層は、第2トリガーによって活性化されるまで、当該バッテリーセルの上記第1保護層と、上記第1電極層および上記電解質の少なくとも1つとの間の反応を防止(又は抑制)する。
【0016】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、当該バッテリーセルは、第2保護層をさらに含んでよい。上記第2保護層は、上記機能性材料および/または上記伝導性材料と組み合わされる上記1以上の小さな分子の添加物を含む上記組成物から形成されている。上記第2保護層は、(i)上記第2電極層と上記第2集電体との間、または(ii)上記セパレータと上記第2電極層との間に配置(又は挿入)されてよい。
【0017】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、上記第2保護層は、シール層と結合してよく、上記シール層は、温度トリガー、電圧トリガー、電流トリガーおよび当該バッテリーセルへの物理的なダメージ(又は損傷)の少なくとも1つで活性化されるまで、当該バッテリーセルの上記第2保護層と、上記第2電極層および上記電解質の少なくとも1つとの間の反応を防止(又は抑制)する。
【0018】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、上記第1保護層は、温度トリガー、電圧トリガー、電流トリガーおよび当該バッテリーセルへの物理的なダメージ(又は損傷)の少なくとも1つで活性化されてよい。
【0019】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、上記第1保護層の上記組成物は、以下の(i)、(ii)または(iii):
(i)
カルボポール、水酸化リチウム(LiOH)、スーパーP、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリンおよび水、
(ii)
カルボポール、水酸化リチウム(LiOH)、スーパーP、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸および水、または
(iii)
カルボポール、水酸化リチウム(LiOH)、スーパーP、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートおよび水
を含んでよい。
【0020】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、上記第1保護層の上記組成物は、以下の(i)、(ii)または(iii):
(i)
68.53%のカルボポール、24.47%の水酸化リチウム(LiOH)、5%のスーパーP、2%の4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリンおよび水、
(ii)
67.79%のカルボポール、24.21%の水酸化リチウム(LiOH)、5%のスーパーP、3%のビフェニル-4,4’-ジカルボン酸および水、または
(iii)
68.53%のカルボポール、24.47%の水酸化リチウム(LiOH)、5%のスーパーP、1%のペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1%のトリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートおよび水
を含んでよい。
【0021】
別の態様において、電解質と、第1電極と、第2電極と、セパレータと、第1保護層とを含んで成るバッテリーセルを提供する。
上記第1電極は、第1電極層と第1集電体とを含んで成り、
上記第2電極は、第2電極層と第2集電体とを含んで成り、
上記セパレータは、上記第1電極と上記第2電極との間に配置(又は挿入)されており、
上記第1保護層は、活性化すると、当該バッテリーセルの内部で電流の流れ(又はフロー)(又はカレント・フロー)を減少または阻止(又は中断又はインタラプト)する層であり、
上記第1保護層は、1以上の金属塩、1以上のセラミック・ナノ材料(又はセラミック・ナノ・マテリアル)および1以上の伝導性(又は導電性)のナノ添加物(又はナノ添加剤又はナノ・アディティブ)を含む組成物(又は組成又はコンポジション)から形成されている。
【0022】
製造の方法、システムおよび物(又は物品又はアーティクル)のいくつかのバリエーション(又は変形)において、1以上の以下の特徴(又はフィーチャ)を、必要に応じて、任意の実行可能な組み合わせとして含ませることができる。
【0023】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、上記1以上の金属塩は、有機の塩(又はオーガニック・ソルト)であってよい。上記有機の塩が、ポリ酸の塩[-CR2-(CR2)0-100-COOM-]p、ポリメタクリル塩(又はポリメタクリル酸の塩)[-CR2-(CR2)0-100-C(CR3)(COOM)-]p、ポリアクリレート塩[-CR2-(CR2)0-100-CR(COOM)-]p、ポリメチルメタクリル塩(又はポリメチルメタクリル酸の塩)[-CR(CR3)-(CR2)0-100-C(CR3)(COOM)-]p、ポリオール-M[-CR2-(CR2)0-100-CR-OM-]p、ポリスルフィド-M[-CR2-(CR2)0-100-CR-SM-]p、および有機ケイ酸塩(又は有機シリケート)[-R2Si-O-SiR2-]pから選択される。式中、Mは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、カドミウム(Cd)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、鉛(Pb)、ストロンチウム(Sr)および亜鉛(Zn)を含む金属の群から選択される。Rは、H、-CH3および-CH2CH3から選択される。
【0024】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、上記1以上のセラミック・ナノ材料は、金属炭酸塩(又はメタル・カーボネート)、金属炭酸水素塩(又はメタル・ハイドロゲン・カーボネート)、金属酸化物(又はメタル・オキシド)、金属チタン酸塩(又はメタル・チタネート)および/または金属ケイ酸塩(又はメタル・シリケート)を含んでよい。
【0025】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、上記1以上の伝導性のナノ添加物は、カーボンナノ材料、カーボンファイバ、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、金属の粉末、および/または炭素の粉末と金属の粉末との組み合わせを含んでよい。
【0026】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、上記第1保護層は、(i)上記第1電極層と上記第1集電体との間、または(ii)上記セパレータと上記第1電極層との間に配置(又は挿入)されてよい。
【0027】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、上記第1保護層は、温度トリガー、電圧トリガー、電流トリガーおよび当該バッテリーセルへの物理的なダメージ(又は損傷)の少なくとも1つで活性化されてよい。
【0028】
いくつかのバリエーション(又は変形)において、第2保護層は、上記機能性材料および/または上記伝導性材料と組み合わされる上記1以上の小さな分子の添加物(又は添加剤)を含む上記組成物(又は組成又はコンポジション)から形成されてよい。上記第2保護層は、(i)上記第2電極層と上記第2集電体との間、または(ii)上記セパレータと上記第2電極層との間に配置(又は挿入)されている。
【0029】
本開示に記載の主題の1以上のバリエーション(又は変形)の詳細については、添付の図面および以下の詳細な説明に示す。本開示に記載の主題の他の特徴(又はフィーチャ)および利点(又はアドバンテージ)は、詳細な説明および図面ならびに特許請求の範囲の記載からも明らかである。本願で開示される主題の特定の特徴は、例示を目的としたものとして記載されている。かかる特徴については、これらに限定されないことを意図していることを容易に理解するべきである。本開示に続く特許請求の範囲の記載は、保護を求める主題の範囲を規定することを意図したものである。
【0030】
(図面の説明)
添付の図面(この明細書の一部に含まれて、この明細書の一部を成すものである)は、明細書とともに、本願に開示の主題の特定の態様を示し、開示される実施態様に関連する原理のいくつかを説明するのに役立つ。図面は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】
図1Aは、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様と一致する1以上の保護層を有するバッテリーセルの例を示す概略図である。
【
図1B】
図1Bは、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様と一致する1以上の保護層を有するバッテリーセルの別の例を示す概略図である。
【
図1C】
図1Cは、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様と一致する1以上の保護層を有するバッテリーセルの別の例を示す概略図である。
【
図2A】
図2Aは、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様と一致する1以上の多機能層を有するバッテリーセルの例を示す概略図である。
【
図2B】
図2Bは、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様と一致する1以上の多機能層を有するバッテリーセルの別の例を示す概略図である。
【
図2C】
図2Cは、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様と一致する1以上の多機能層を有するバッテリーセルの別の例を示す概略図である。
【
図3A】
図3Aは、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様と一致する小さな分子の添加物の例を示す。
【
図3B】
図3Bは、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様と一致する小さな分子の添加物のさらなる例を示す。
【
図3C】
図3Cは、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様と一致する機能性ポリマーの例を示す。
【
図3D】
図3Dは、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様と一致する機能性の伝導性のポリマーの例を示す。
【
図4】
図4は、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様と一致するバッテリーセルを組み立てるためのプロセスを示すフローチャートである。
【
図5A】
図5Aは、サイクル試験(又はサイクル・テスト)の結果を示すグラフである。サイクル試験は、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様と一致する第1バッテリーセル(保護層を含む(添加物あり))、第2バッテリーセル(保護層を含む(添加物なし))および第3バッテリーセル(保護層を含まない)で行った。
【
図5B】
図5Bは、オーバーチャージ試験(又は過充電試験)の結果を示すグラフである。オーバーチャージ試験は、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様と一致する第1バッテリーセル(保護層を含む(添加物あり))で行った。
【
図5C】
図5Cは、パンク試験(又は穿刺試験)の結果を示すグラフである。パンク試験は、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様と一致する第1バッテリーセル(保護層を含む(添加物あり))で行った。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実務上、図面では、同一または類似の部材(又はアイテム)を指すために、同様の符号を用いている。
【0033】
(詳細な説明)
バッテリーセル(又は電池セル又は電池)は、少なくとも1つの保護層(又はプロテクト層又はプロテクティブ・レイヤー)を含んでよい。それにより、バッテリーセルの操作上(又は運転上又は作動上又はオペレーション上)の危険(又はハザード)(例えば、過充電(又はオーバーチャージ)、過熱(又はオーバーヒート)および/または短絡(又はショート・サーキット)など)などを軽減(又は緩和)および/または排除することができる。バッテリーセルの過充電(又はオーバーチャージ)、過熱(又はオーバーヒート)および/または短絡(又はショート・サーキット)は、熱暴走(又はサーマル・ランナウェイ)、つまり危険な状態(又は状況又はコンディション)をもたらす可能性がある。このような状態において、バッテリーセルは、温度の急激な上昇を受ける。従って、保護層は、バッテリーセルの内部において、電流の流れ(又はフロー)(又はカレント・フロー)を阻止(又は中断又はインタラプト)することによって、温度の上昇に対して応答(又は反応又は対応又は追従)するように構成されてよい。例えば、バッテリーセルが閾値(又はスレショールド・バリュー)を超える温度に曝されるとき、保護層は、相転移(又は相変化又はフェーズ・トランジション)を受けることができる。このような相転移によって、保護層の膨張(又はエキスパンション)および/または収縮(又はコントラクション)が生じる。保護層の膨張(又はエキスパンション)および/または収縮(又はコントラクション)によって、バッテリーセルの内部、例えば、バッテリーセルの電極(又はエレクトロード)と、対応する集電体(又は集電層又はカレント・コレクタ)との間において、電気的な分離(又はデカップリング)(又はエレクトリック・デカップリング)を引き起こすことができる。電気的な分離(又はデカップリング)(又はエレクトリック・デカップリング)によって、バッテリーセルの内部において、電流の流れ(又はフロー)を阻止(又は中断又はインタラプト)することができる。それによって、バッテリーセルの内部において、発熱反応を阻止して、バッテリーセルの温度がさらに上昇することを阻止する。
【0034】
本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様では、保護層の安定性(又はスタビリティ)および伝導性(又は導電性又はコンダクティビティ)を改善(又は向上)することによって、バッテリーセルの性能(又はパフォーマンス)をさらに向上(又は増加)させてよい。例えば、1以上の小さな分子(又は小分子又は低分子)の添加物(又は添加剤)(又はスモール・モレキュラ・アディティブ)を含む組成物(又は組成又はコンポジション)から、保護層を形成することによって、保護層の安定性(又はスタビリティ)および伝導性(又は導電性又はコンダクティビティ)を改善(又は向上)させることができる。いくつかの場合において、保護層を形成する組成物は、1以上の機能性材料(又は官能性材料又はファンクション材料又はファンクショナル・マテリアル)(例えば、ポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)など))に対して、1~90%の小さな分子の添加物(又は添加剤)を含んでよい。本開示で使用する通り、用語「小さな分子(又は小分子又は低分子)の添加物(又は添加剤)(又はスモール・モレキュラ・アディティブ)」は、例えば、閾値(又はスレショールド・バリュー)よりも低い、例えば、1000ダルトン(Daltons)、600ダルトン(Daltons)、500ダルトン(Daltons)未満、400ダルトン(Daltons)未満などの分子量を有する添加物(又は添加剤)を意味する。いくつかの場合において、小さな分子の添加物(又は添加剤)は、多くの同じ繰り返し単位(例えば、モノマー)によって形成されるミクロポリマーであってよい。小さな分子の添加物(又は添加剤)の例として、以下のものが挙げられる。
芳香族アミン(類)、脂肪族アミン(類)、脂肪族カルボン酸(類)、芳香族カルボン酸(類)、脂肪族ヒドロキシ化合物(類)、芳香族ヒドロキシル化合物(類)、脂肪族チオール化合物(類)、芳香族チオール化合物(類)、エポキシ置換脂肪族化合物(類)もしくはエポキシ置換芳香族化合物(類)、芳香族置換ピロール-2,5-ジオンもしくは脂肪族置換ピロール-2,5-ジオン、エチレン置換脂肪族化合物(類)もしくはエチレン置換芳香族化合物(類)および/またはフリーラジカル開始剤など(例えば、1,5-ナフタレンジアミン、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリン、2,6-ジアミノアントラセン、脂肪族ジオール、脂肪族ジアミン、脂肪族ジカルボン酸、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、ペンタエリスリトール、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、2,6-ナフタレン ジカルボン酸、4-(ビニルオキシ)アニリン、2-アリルフェノール、トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレート、エチレン グリコール ビス-メルカプトアセテート、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、4-アミノチオフェノール、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレートおよび/または1-(4-アミノフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオンなど)。小さな分子の添加物(又は添加剤)は、少なくとも、大きな分子の添加物(又は添加剤)の代替として使用できることを理解するべきである。なぜなら、大きな分子の添加物(又は添加剤)は、バッテリーの製造に典型的に関連する製造スケールにおいて、あまりにもコストが高くなり得るからである。
【0035】
保護層を形成するために、1以上の小さな分子の添加物(又は添加剤)は、1以上の活性な機能性材料(又は官能性材料又はファンクション材料又はファンクショナル・マテリアル)または無機材料(又は無機マテリアル)と合わされてよい(又は一緒にしてよい)。このとき、1以上の塩基性材料(又はベース材料又はベース・マテリアル)(例えば、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)および/または水酸化カリウム(KOH)など)、バインダ材料(又はバインダ・マテリアル)および/または伝導性材料(又は導電性材料又はコンダクティブ・マテリアル)と一緒であってよい(又は伴ってよい)。機能性材料の例として、ポリアクリル酸(PAA)、架橋したポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ(メチルアクリレート)(PMA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(エチルメタクリレート)(PEMA)、および/またはポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)などが挙げられる。いくつかの場合において、保護層の組成物(又は組成又はコンポジション)は、伝導性ポリマー(又は導電性ポリマー又はコンダクティブ・ポリマー)を含んでよい。例えば、いくつかの場合において、保護層の組成物は、その中に含まれる1以上の伝導性材料に対して、1~100%の伝導性ポリマーを含んでよい。あるいは、保護層の組成物は、その中に含まれる1以上のバインダ材料に対して、1~100%の伝導性ポリマーを含んでよい。あるいは、いくつかの場合において、伝導性ポリマーは、保護層の組成物に存在する単独(又は単一又はソロ)の伝導性材料および活性な機能性材料であってよい。伝導性ポリマーの例として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、ポリピロール(ドープ(又はドープもしくはドーピングされているもの))、ポリ(n-アルキルチオフェン)、ポリアルキルフルオレン(polyalylfluorene)および/またはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-コ-ポリ(エチレングリコール)(PEDOT-PEG)(ドープ(又はドープもしくはドーピングされているもの)などが挙げられる。
【0036】
保護層をバッテリーセルの他の成分(又は構成又はコンポーネント)(例えば、電極および/または電解質)に曝すことによって、望ましくない反応(例えば、保護層の分解および/または保護層の早期活性化など)のトリガー(又は誘因又は引き金又はきっかけ)になる場合がある(又は引き起こす可能性がある)。それ故、本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様において、保護層は、多機能層(又は多官能層又はマルチファンクション層又はマルチファンクション・レイヤー)の一部であってよい。多機能層は、保護層と、シール層(又はシーリング層又は封止層)とを含むものである。多機能層は、バッテリーセルの電極と、集電体との間に配置(又は挿入)されてよい。さらに、シール層は、電極と保護層との間に配置(又は挿入)されるものである。保護層を含む多機能層が存在することによって、セル・サイクルを含むバッテリーセルの性能(又はパフォーマンス)(例えば、容量維持率(又はキャパシティ・リテンション))およびバッテリーセルの高温安定性をさらに改善(又は向上)させることができる。
【0037】
本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様において、シール層(又はシーリング層又は封止層)は、バッテリーセルの反応性の成分(又は構成又はコンポーネント)(例えば、電極および/または電解質)の存在下で不活性(又はイナート)である1以上の材料から形成されてよい。したがって、シール層の存在によって、保護層を形成する材料の選択において、柔軟性(又はフレキシビリティ)がもたらされ得る。なぜなら、シール層は、保護層がバッテリーセルの反応性の成分に曝されることを防止(又は抑制)し得るからである。さらに、シール層が存在することによって、製造プロセス(例えば、電極のカレンダー成形(又はカレンダー処理またはカレンダリング)など)ならびに高温環境への曝露(例えば、電極のコーティングおよび乾燥の間)に対して、さらなる耐性を保護層に与えることができる。それにもかかわらず、シール層が任意であってもよいことを理解すべきである。例えば、保護層およびシール層を含む多機能層は、バッテリーセルの第1電極に結合されてよい。対して、バッテリーセルの第2電極は、シール層なしで保護層に結合されてよい。
【0038】
多数のトリガー(又は誘因又は引き金又はきっかけ)に応答(又は反応又は対応又は追従)するように単一(又はシングル)の保護層を構成することは、チャレンジなこと(又はチャレンジング又は挑戦的)であってよい。対照的に、シール層および保護層は、様々な目的に役立つように構成されている。従って、様々なトリガー(例えば、温度トリガー、電圧トリガーおよび/または電流トリガーなど)などの際に活性化するように構成されてよい。例えば、シール層は、より正確(又は精密又は緻密)なトリガー・ポイント(例えば、第1閾値温度、第1閾値電圧および/または第1閾値電流など)に応答(又は反応又は対応又は追従)するように構成されてよい(保護層を曝露する(又は露出させる)ことによる)。対して、保護層は、曝露(又は露出)および/またはより正確(又は精密又は緻密)でないトリガー・ポイント(例えば、第2閾値温度、第2閾値電圧および/または第2閾値電流など)の際に活性化するように構成されてよい。
【0039】
本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様において、保護層は、バッテリーセルの他の成分(又は構成又はコンポーネント)(例えば、電極および/または電解質など)に対して、不安定性を示すことができる。その一方で、シール層は、これらと同じ成分が存在する場合、イナート(又は不活性)であってよい。対して、例えば、保護層は、電解質が存在する場合、反応性(又は反応的)になってよい。シール層は、非混和性であってよい。従って、バッテリーセルにおいて、保護層と、対応する電極との間において、物理的な分離(又は隔離又はセパレーション)を提供してよい。通常の操作(又は運転又は作動又はオペレーション)の間において(例えば、任意のトリガーが存在しない場合)、シール層が存在することによって、保護層が電解質に曝されて、望ましくない反応を受けないように保護層を護ってよい。しかし、シール層に関連するトリガー(例えば、温度トリガー、電圧トリガーおよび/または電流トリガーなど)による活性化の際、シール層は、分解(又は崩壊)してよい。それにより、保護層を曝露(又は露出)させてよい。この点(又はポイント)において、適切な反応が進行してよい。それにより、バッテリーセルにおいて、熱暴走を防止(又は抑制)することができる。また、保護層は、シール層によって曝露(又は露出)されてよい。シール層は、機械的応力(又は力学的応力又はメカニカル・ストレス)の適用(又は付与)に起因して破壊(又は崩壊)されていてよい。
【0040】
この反応は、物理的な反応(例えば、保護層の膨潤(又はスウェリング)または他の膨張(又はエキスパンション)を含んでよい。このような反応によって、電子伝導経路(又はエレクトロニック・コンダクション・パスウェイ)の阻止(又は中断又はインタラプト)が引き起こされ、これは正温度係数(positive temperature coefficient(PTC))のコンポジット(又は複合体)に類似している。代替的および/または追加的なものとして、この反応は、化学的な反応(例えば、保護層の分解および/または電極と保護層との間の反応)を含んでよい。このような化学反応によって、集電体と電極との間に非伝導性(又は非導電性)の間隙(又はギャップ)(又はノンコンダクティブ・ギャップ)を形成(又は生成)する。また、この反応は、保護層と電解質との間の化学的な反応を含んでよい。このような反応によって、電解質のイオン伝導性(又はイオン伝導度又はイオン導電性又はイオン導電率)が低下する。
【0041】
本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様において、シール層は、ポリマーの層であってよい。1以上の溶液ベースの噴霧(又はスプレー)、コーティング(又は被覆)および/または蒸着(又はベーパー・デポジション)などで適用(又は塗布)されてよい。代替的および/または追加的なものとして、シール層は、金属の層であってよい。1以上の金属蒸発(又はメタル・エバポレーション)および/または蒸着(又はベーパー・デポジション)などで適用(又は塗布)されてよい。代替的および/または追加的なものとして、シール層は、モノマーから形成されてよい。モノマーは、熱、紫外光、X線および/またはレーザーなどに曝されることによって架橋されるものである。代替的および/または追加的なものとして、シール層は、1以上の伝導性(又は導電性)のポリマーおよび/または伝導性(又は導電性)のセラミック(例えば、金属酸化物および/または遷移金属酸化物など)から形成されてよい。また、シール層は、スパッタリングおよび/または原子層堆積(又はアトミック・レイヤー・デポジション)によって形成されてもよい。
【0042】
本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様において、保護層(単独の保護層あるいはシール層をさらに含む多機能層の一部としての保護層)は、バッテリーセルの集電体の片側または両側に塗布(又はコーティング)されてよい。バッテリーセルの用途(例えば、フォーマット)に応じて、1以上の集電体が金属箔(又はメタル・ホイル)またはバッテリーセルのケースから形成されてよい。代替的および/または追加的なものとして、保護層は、バッテリーセルの電極の片側または両側に塗布(又はコーティング)されてよい。形成(又は生成)されるバッテリーセルは、第1保護層を含んでよい。第1保護層は、第1電極と第1集電体との間に配置(又は挿入)されるものである。さらに、いくつかの場合において、バッテリーセルは、第2保護層も含んでよい。第2保護層は、第2電極と第2集電体との間に配置(又は挿入)されるものである。
【0043】
図1A~
図1Cは、バッテリーセル100の例を示す概略図である。バッテリーセル100は、1以上の保護層130を有する。保護層130は、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様と一致するものである。いくつかの場合において、バッテリーセル100は、金属バッテリーセル(又はメタル・バッテリーセル)または金属イオンバッテリーセル(又はメタル・イオン・バッテリーセル)であってよい。金属イオンバッテリーセルとして、例えば、リチウム(Li)イオンバッテリーセル、ナトリウム(Na)イオンバッテリーセル、アルミニウム(Al)イオンバッテリーセルおよび/またはマグネシウム(Mg)イオンバッテリーセルなどが挙げられる。さらに、バッテリーセル100は、任意のフォーマット(又は構成又は形)であってよい。フォーマットとして、例えば、円筒形のバッテリーセル(又はシリンダー・バッテリーセル又はシリンダー電池)、ボタン形のバッテリーセル(又はボタン・バッテリーセル又はボタン電池)、プリズム形のバッテリーセル(又はプリズム・バッテリーセル又はプリズム電池)および/または袋状のバッテリーセル(又はパウチ・バッテリーセル又はパウチ電池)などが挙げられる。本願(又は現行又は今回)の主題の様々な実施態様によると、少なくとも1つの保護層130が、バッテリーセル100のセパレータ140、電極層120および/または集電体(又は集電層又はカレント・コレクタ)130の表面に配置されてよい。
【0044】
図1A~
図1Cに示す通り、バッテリーセル100は、第1電極層120a、第1集電体(又は第1集電層又は第1カレント・コレクタ)130a、第2電極層120bおよび第2集電体(又は第2集電層又は第2カレント・コレクタ)130bを含んでよい。第1電極層120aおよび第2電極層120bは、極性(又はポラリティ)が反対であってよい。例えば、バッテリーセル100の第1電極層120aおよび第1集電体130aが第1電極125a(例えば、正(又はポジティブ)の電極(又は正極))を形成する場合、第2電極層120bおよび第2集電体130bは、バッテリーセル100の第2電極120b(例えば、負(又はネガティブ)の電極(又は負極))を形成してよい。セパレータ140(ポリマーのフィルムであってよい)は、第1電極層120aと第2電極130bとの間に配置(又は挿入)されてよい。いくつかの場合において、第1集電体130aおよび第2集電体130bは、金属ホイル(又はメタル・ホイル)または金属化(又はメタライゼーション)されたホイル(又はメタライズ・ホイル)(例えば、銅(Cu)ホイル、アルミニウム(Al)ホイル、鉄(Fe)ホイル、チタン(Ti)ホイル、ニッケル(Ni)ホイルが挙げられる)、炭素(C)ホイルおよび/または金属化されたポリマーホイルなどから形成されてよい。
【0045】
図1Aに示すバッテリーセル100の例において、バッテリーセル100は、第1保護層130bを含んでよい。第1保護層130bは、第1電極層120aと第1集電体120bとの間に配置(又は挿入)されている。
図1Bに示すバッテリーセル100の例において、さらに、第2保護層130bが、第2電極120bと第2集電体130bとの間に配置(又は挿入)されていてよい。
図1Cに示すバッテリーセル100の例において、1以上の保護層110は、セパレータ140の1以上の表面にコーティング(又は被覆)されている。従って、いくつかの場合において、第1保護層110aは、セパレータ140と第1電極層120aとの間に配置(又は挿入)されていてよい。さらに、いくつかの場合において、第2保護層110bは、セパレータ140と第2電極層120bとの間に配置(又は挿入)されていてよい。
【0046】
図2A~
図2Bは、バッテリーセル100の例を示す概略図である。バッテリーセル100は、1以上の多機能層(又は多官能層又はマルチファンクション層又はマルチファンクション・レイヤー)150を有する。多機能層150は、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様と一致するものである。本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様において、バッテリーセル100の保護層110は、それぞれ、シール層(又はシーリング層又は封止層)155とさらに結合されていてよい。それにより、1以上の多機能層(又は多官能層又はマルチファンクション層又はマルチファンクション・レイヤー)150を形成することができる。例えば、
図2Aにおいて、第1多機能層(又は第1多官能層又は第1マルチファンクション層又は第1マルチファンクション・レイヤー)150aは、第1保護層110aおよび第1シール層155aを含むものであり、第1電極層120aと第1集電体130aとの間に配置(又は挿入)されていてよい。
図2Aに示す例において、第1保護層110aは、第1電極層120aと第1シール層155aとの間に配置(又は挿入)されていてもよい。その一方で、第1シール層155aは、第1保護層110aと第1集電体130aとの間にさらに配置(又は挿入)されている。
【0047】
図2Bは、バッテリーセル100の別の例を示す。バッテリーセル100は、第1多機能層(又は第1多官能層又は第1マルチファンクション層又は第1マルチファンクション・レイヤー)150aと、第2多機能層(又は第2多官能層又は第2マルチファンクション層又は第2マルチファンクション・レイヤー)150bとを含んで成る。第1多機能層150aは、第1電極層120aと、第1集電体130aとの間に配置(又は挿入)されている。第2多機能層150bは、第2電極層120bと、第2集電体130bとの間に配置(又は挿入)されている。
図2Bに示す通り、第2多機能層150bは、第2保護層110bおよび第2シール層155bを含んでよい。第2保護層110bは、第2電極層120bと第2シール層155bとの間に配置(又は挿入)されている。その一方で、第2シール層155bは、第2保護層110bと第2集電体130bとの間にさらに配置(又は挿入)されている。
【0048】
図2Cは、バッテリーセル100の別の例を示す。バッテリーセル100において、多機能層(又は多官能層又はマルチファンクション層又はマルチファンクション・レイヤー)150は、セパレータ140と、第1電極層120aおよび/または第2電極層120bとの間に配置(又は挿入)されている。例えば、いくつかの場合において、第1多機能層150aは、セパレータ140と、第1電極層120aとの間に配置(又は挿入)されてよい。第1保護層110aは、セパレータ140と第1シール層155aとの間に配置(又は挿入)されている。その一方で、第1シール層155aは、さらに、第1保護層110aと第1電極層120aとの間に配置(又は挿入)されている。代替的および/または追加的なものとして、第2多機能層150bは、セパレータ140と第2電極層120bとの間に配置(又は挿入)されていてよい。第2保護層110bは、セパレータ140と第2シール層155bとの間に配置(又は挿入)されている。その一方で、第2シール層155bは、さらに、第2保護層110bと第2電極層120bとの間に配置(又は挿入)されている。
【0049】
本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様において、バッテリーセル100の1以上の保護層110は、危険な作動条件(又は操作条件又は運転条件又はオペレーション・コンディション)(例えば、過熱(又はオーバーヒート)、過充電(又はオーバーチャージ)および/または内部での短絡(又はショート・サーキット)(又は内部短絡))を中和する(又はニュートラルにする)ことができる。例えば、いくつかの場合において、バッテリーセル100の1以上の保護層110は、電流リミッタ(又はカレント・リミッタ)として少なくとも作用(又は作動)することによって、危険な作動条件(又は操作条件又は運転条件又はオペレーション・コンディション)を中和することができる。電流リミッタによって、過熱、過充電および/または内部での短絡の事象(又はイベント)の際にバッテリーセル100を通る電流の流れ(又はフロー)が減少する。いくつかの場合において、1以上の保護層110によって、インピーダンスの増加を少なくとも示すことによって、バッテリーセル100を通る電流の流れ(又はフロー)を減少させてよい(温度、電圧および/またはバッテリーセル100を通る電流が、1以上の閾値を満たす場合)(例えば、通常の作動(又は安全な作動)に関連した温度、電圧および/または電流を超えることによる)。代替的および/または追加的なものとして、バッテリーセル100の1以上の保護層110は、電流遮断層(又は電流遮断部又は電流遮断器又は電流インタラプタ又はカレント・インタラプタ)として少なくとも作用(又は作動)することによって、危険な作動条件(又は操作条件又は運転条件又はオペレーション・コンディション)を中和することができる。電流遮断層によって、過熱、過充電および/または内部での短絡の事象(又はイベント)の際にバッテリーセル100を通る電流の流れ(又はフロー)が排除される。例えば、いくつかの場合において、1以上の保護層110は、非伝導性(又は非導電性)の間隙(又はギャップ)(又はノンコンダクティブ・ギャップ)を少なくとも形成することによって、バッテリーセル100を通る電流の流れ(又はフロー)を停止させることができる(温度、電圧および/またはバッテリーセル100を通る電流が、1以上の閾値を満たす場合)(例えば、通常の作動(又は安全な作動)に関連した温度、電圧および/または電流を超えることによる)。
【0050】
本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様において、バッテリーセル100の1以上の保護層110は、1以上の小さな分子(又は小分子又は低分子)の添加物(又は添加剤)(又はスモール・モレキュラ・アディティブ)を含むように調製されてよい。1以上の保護層110の組成物(又は組成)において、1以上の小さな分子の添加物(又は添加剤)が存在することによって、1以上の保護層110の安定性を増加させることができる。なおかつ、いくつかの場合において、1以上の保護層110の伝導性(又は導電性)を増加させることができる。このようにして、1以上の小さな分子の添加物(又は添加剤)を含ませることによって、バッテリーセル100の性能(又はパフォーマンス)(例えば、セル・サイクル(例えば、容量維持率(又はキャパシティ・リテンション))および/または高温安定性などが挙げられる)を向上させることができる。例えば、いくつかの場合において、1以上の保護層110に存在する1以上の小さな分子の添加物(又は添加剤)と、他の化合物(例えば、ポリマー)との間の反応の結果として、1以上の保護層110の安定性を増加させることができる。記載する通り、小さな分子の添加物(又は添加剤)の例として、芳香族アミン(類)、脂肪族アミン(類)、脂肪族カルボン酸(類)、芳香族カルボン酸(類)、脂肪族ヒドロキシ化合物(類)、芳香族ヒドロキシル化合物(類)、脂肪族チオール化合物(類)、芳香族チオール化合物(類)、エポキシ置換脂肪族化合物(類)もしくはエポキシ置換芳香族化合物(類)、芳香族置換ピロール-2,5-ジオンもしくは脂肪族置換ピロール-2,5-ジオン、エチレン置換脂肪族化合物(類)もしくはエチレン置換芳香族化合物(類)および/またはフリーラジカル開始剤(又はフリーラジカル・イニシエータ)などが挙げられる。いくつかの場合において、1以上の保護層110は、重量で0.1%~90%の小さな分子の添加物(又は添加剤)、重量で1%~50%の小さな分子の添加物(又は添加剤)、重量で1%~10%の小さな分子の添加物(又は添加剤)および/または重量で1%~5%の小さな分子の添加物(又は添加剤)などを含んでよい。
【0051】
図3A~
図3Bは、小さな分子(又は小分子又は低分子)の添加物(又は添加剤)(又はスモール・モレキュラ・アディティブ)の様々な例を示す。小さな分子の添加物(又は添加剤)として、1,5-ナフタレンジアミン、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリン、2,6-ジアミノアントラセン、脂肪族ジオール、脂肪族ジアミン、脂肪族ジカルボン酸、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、ペンタエリスリトール、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4-(ビニルオキシ)アニリン、2-アリルフェノール、トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレート、エチレングリコール ビス-メルカプトアセテート、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、4-アミノチオフェノール、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレートおよび1-(4-アミノフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオンが挙げられる。
【0052】
1以上の保護層110を形成(又は生成)するために、1以上の小さな分子の添加物(又は添加剤)は、1以上の活性な機能性材料(又は官能性材料又はファンクション材料又はファンクショナル・マテリアル)または無機材料と組み合わされてよい。また、1以上の塩基性材料(又はベース材料又はベース・マテリアル)(例えば、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)および/または水酸化カリウム(KOH)など)、バインダ材料(又はバインダ・マテリアル)および/または伝導性材料(又は導電性材料又はコンダクティブ・マテリアル)と一緒にしてもよい。例えば、いくつかの場合において、1以上の保護層の組成物(又は組成又はコンポジション)は、1以上の金属塩(例えば、有機の塩(又はオーガニック・ソルト)など)、セラミック・ナノ材料(又はセラミック・ナノ・マテリアル)および伝導性(又は導電性)のナノ添加物(又はナノ添加剤又はナノ・アディティブ)を含んでよい。いくつかの場合において、1以上の保護層の組成物(又は組成又はコンポジション)は、他の化合物(例えば、1以上の機能性材料)に対して、1~90%の小さな分子の添加物(又は添加剤)を含んでよい。
図3Cに示す通り、機能性材料の例として、ポリアクリル酸(PAA)、架橋したポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ(メチルアクリレート)(PMA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(エチルメタクリレート)(PEMA)および/またはポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)などが挙げられる。
【0053】
1以上の保護層100の組成物(又は組成又はコンポジション)に存在してよい1以上の金属塩の例として、以下のものが挙げられる。
ポリ酸の塩(polyacid salts) [-CR2-(CR2)0-100-COOM-]p,
ポリメタクリル塩(又はポリメタクリル酸の塩)(polymethacrylic salts) [-CR2-(CR2)0-100-C(CR3)(COOM)-]p,
ポリアクリレート塩(polyacrylate salts) [-CR2-(CR2)0-100-CR(COOM)-]p,
ポリメチルメタクリル塩(又はポリメチルメタクリル酸の塩)(polymethylmethacrylic salts) [-CR(CR3)-(CR2)0-100-C(CR3)(COOM)-]p,
ポリオール-M [-CR2-(CR2)0-100-CR-OM-]p,
ポリスルフィド-M [-CR2-(CR2)0-100-CR-SM-]p および
有機シリケート(又はオーガニック・シリケート) [-R2Si-O-SiR2-]p
式中、
Mは、金属の群から選択されるものであり、このような金属として、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、カドミウム(Cd)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、鉛(Pb)、ストロンチウム(Sr)および亜鉛(Zn)が挙げられる。
式中、
Rは、H、-CH3、-CH2CH3および他の有機の置換基から選択される。
1以上の金属塩が1以上の保護層110の組成物(又は組成又はコンポジション)に存在する場合、1以上の金属塩は、重量で1%~99%の1以上の保護層110、重量で10%~90%の1以上の保護層110および/または重量で20%~70%の1以上の保護層110などであってよい。
【0054】
記載の通り、1以上の保護層110の組成物(又は組成又はコンポジション)は、1以上のセラミック・ナノ材料(又はセラミック・ナノ・マテリアル)をさらに含んでよい。いくつかの場合において、1以上の保護層110の組成物(又は組成又はコンポジション)に存在してよい1以上のセラミック・ナノ材料は、例えば、特定の寸法(又は大きさ又は次元又はディメンジョン)を示してよい(例えば、少なくとも1つの500ナノメートル未満の寸法、および/または少なくとも1つの100ナノメートル未満の寸法など)。1以上の保護層110の組成物(又は組成又はコンポジション)に存在してよい1以上のセラミック・ナノ材料の例として、
金属炭酸塩(又はメタル・カーボネート)(例えば、Li2CO3,Na2CO3,K2CO3,CaCO3,BeCO3,MgCO3,SrCO3,BaCO3および/またはFeCO3など)、
金属炭酸水素塩(又はメタル・ハイドロゲン・カーボネート)(例えば、LiHCO3,NaHCO3,KHCO3,CsHCO3,Ca(HCO3)2および/またはMg(HCO3)2など)、
金属酸化物(又はメタル・オキシド)(例えば、CaO,MgO,SiO2,Al2O3,TiO2,ZrO2,CuO,SnO2,GeO2,Co3O4および/またはZnOなど)、
金属チタン酸塩(又はメタル・チタネート)(例えば、Li2TiO3,CaTiO3,MgTiO3,BaTiO3および/またはZnTiO3など)、および
金属ケイ酸塩(又はメタル・シリケート)(例えば、Li2SiO3,Na2SiO3,MgSiO3,CaSiO3,FeSO3,MnSiO3,K2SiO3,Zn2SiO4,Mg2SiO4,Fe2SiO4,Mn2SiO4,ZrSiO4および/またはBe2SiO4など)
を含んでよい。
1以上のセラミック・ナノ材料が1以上の保護層110の組成物(又は組成又はコンポジション)に存在する場合、1以上のセラミック・ナノ材料は、重量で0.1%~98.9%の1以上の保護層110、および/または重量で5%~80%の1以上の保護層110などであってよい。
【0055】
いくつかの場合において、1以上の保護層110の組成物(又は組成又はコンポジション)は、1以上の伝導性(又は導電性)のナノ添加物(又はナノ添加剤又はナノ・アディティブ)を含んでよい。例えば、1以上の伝導性のナノ添加物が1以上の保護層110の組成物(又は組成又はコンポジション)に存在する場合、1以上の伝導性のナノ添加物は、重量で0.1%~20%の1以上の保護層110、および/または重量で0.5%~10%の1以上の保護層110などであってよい。1以上の伝導性のナノ添加物の少なくとも1つの寸法(又は大きさ又は次元又はディメンジョン)は、対応する閾値(又はスレショールド)を満たすものであってよい。例えば、いくつかの場合において、1以上の伝導性のナノ添加物の少なくとも1つの寸法(又は大きさ又は次元又はディメンジョン)は、100ナノメートル未満、および/または500ナノメートル未満などであってよい。1以上の伝導性のナノ添加物の例として、カーボンナノ材料およびカーボンファイバ(例えば、グラフェン、グラフェンオキシドおよび/またはカーボンブラックなど)、単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブ、金属の粉末(又はメタル・パウダー)(例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)および/またはマンガン(Mn)など)、または炭素の粉末(又はカーボン・パウダー)と金属の粉末(又はメタル・パウダー)との組み合わせが挙げられる。
【0056】
いくつかの場合において、1以上の保護層110の組成物(又は組成又はコンポジション)は、1以上の伝導性ポリマー(又は導電性ポリマー)を含んでよい。保護層110の組成物(又は組成又はコンポジション)は、その中に含まれる1以上の伝導性材料に対して、1~100%の伝導性ポリマーを含んでよい。または、保護層110の組成物(又は組成又はコンポジション)は、その中に含まれるバインダ材料に対して、1~100%の伝導性ポリマーを含んでよい。あるいは、いくつかの場合において、伝導性ポリマーは、単独(又は単一又はソロ)の伝導性材料および活性な機能性材料であってよく、これらは、保護層の組成物(又は組成又はコンポジション)に存在していてよい。例えば、いくつかの場合において、保護層110の組成物(又は組成又はコンビネーション)は、重量で1%~90%の伝導性ポリマー、重量で1%~50%の伝導性ポリマー、および/または重量で1%~10%の伝導性ポリマーなどを含んでよい。
図3Dに示す伝導性ポリマーの例として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、ポリピロール(ドープ(又はドープもしくはドーピングされているもの))、ポリ(n-アルキルチオフェン)、ポリアルキルフルオレン(polyalylfluorene)および/またはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-コ-ポリ(エチレングリコール)(PEDOT-PEG)(ドープ(又はドープもしくはドーピングされているもの))などが挙げられる。
【0057】
本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様において、保護層110は、シール層(又はシーリング層又は封止層)155と結合されていてよい。そうすることで、
図2A~
図2Cに示される多機能層(又は多官能層又はマルチファンクション層又はマルチファンクション・レイヤー)150の例を形成してよい。シール層155は、1以上の材料(又はマテリアル)から形成されてよい。かかる材料は、バッテリーセル100の反応性の成分(又はコンポーネント)(例えば、電極(例えば、第1電極層110および/または第2電極層210など)および/または電解質(又は電解物又は電解液又はエレクトロライト)など)の存在下で不活性(又はイナート)である。いくつかの場合において、保護層150を形成する材料は、電気的に伝導性(又は導電性)であってよい。保護層150を形成する材料の例は、ポリ(エチレン-コ-ビニルアセテート)(PECVA)、スチレンブタジエンゴム(又はスチレンブタジエンラバー)(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ワックス、シリコン(Si)ゴム(又はシリコン(Si)ラバー)、ポリアクリル(系)ポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム(又はエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ラバー)およびその類似体(又は類縁体又はアナログ)、負の熱膨張(negative thermal expansion(NTE))係数を示す材料(例えば、シアン化亜鉛(ZnCN
2)など)、および電解質の分解副生成物と反応する材料を含んでよい。
【0058】
負の熱膨張(NTE)係数を有する材料からシール層155が形成される場合、より高い温度(例えば、特定の閾値(又はスレショールド)を超える温度)に多機能安全層(又は多機能セーフティ層)150が曝されると、保護層110の収縮(又はシュリンク)によって、シール層155に結合した保護層110が曝露(又は露出)されてよい。あるいは、より高い温度および/または電圧(例えば、特定の閾値(又はスレショールド)を超える温度および/または電圧)で分解する傾向がある材料からシール層155が形成される場合において、より高い温度および/または電圧に多機能安全層(又は多機能セーフティ層)150が供されるとき、対応する保護層110が曝露(又は露出)されることになってよい。バッテリーセル100の電解質、電極層120または他の反応性の成分(又はコンポーネント)に保護層110が曝されると、それらの間の反応によって、危険な作動条件(又は操作条件又は運転条件又はオペレーション・コンディション)(例えば、過熱(又はオーバーヒート)、過充電(又はオーバーチャージ)および/または内部での短絡(又はショート・サーキット)(又は内部短絡))を中和する(又はニュートラルにする)ことができる。この反応は、物理的な反応(例えば、保護層110の膨潤(又はスウェリング)または他の膨張(又はエキスパンション))を含んでよい。このような物理的な反応は、バッテリーセル100の内部での電子伝導経路(又はエレクトロニック・コンダクション・パスウェイ)の阻止(又はインタラプション)を引き起こす。代替的および/または追加的なものとして、この反応は、化学反応を含んでよい(例えば、保護層110の分解および/または電極層120と保護層110との間の反応)。このような化学反応によって、集電体130と、対応する電極層120との間に非伝導性(又は非導電性又はノンコンダクティブ)の間隙(又はギャップ)が形成(又は生成)される。また、この反応は、バッテリーセル100の保護層110と電解質との間の化学反応を含んでよい。このような化学反応によって、電解質のイオン伝導性(又はイオン導電性又はイオン・コンダクティビティ)が減少する。
【0059】
本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施形態において、保護層110およびシール層155は、様々なトリガー(又は誘因又は引き金又はきっかけ)によって活性化されてよい。例えば、シール層155は、第1トリガー(例えば、第1温度閾値(又は第1温度スレショールド)、第1電圧閾値(又は第1電圧スレショールド)、第1電流閾値(又は第1電流スレショールド)、金属の浸透(又はメタル・ペネトレーション)によって引き起こされる物理的なダメージ(又は損傷)、および/またはバッテリーセル100の破壊(又はクラッシュ)および衝撃(又はインパクト)など)に応答(又は反応又は対応又は追従)してよい。第1トリガーは、第2トリガーとは異なるものであり、かつ/または第2トリガーよりも正確(又は精密又は緻密)である。第2トリガーは、保護層110を活性化させるトリガーである。従って、第1トリガーによって活性化されているとき、シール層155は、保護層110を少なくとも曝露(又は露出)させることによって、応答(又は反応又は対応又は追従)してよい。保護層110は、この曝露(又は露出)(例えば、バッテリーセル100の内部の電極120、電解質および/または他の反応性の成分(又はコンポーネント)への曝露(又は露出))および/または第2トリガー(例えば、第2温度閾値(又は第2温度スレショールド)、第2電圧閾値(又は第2電圧スレショールド)、第2電流閾値(又は第2電流スレショールド)および/または物理的なダメージ(又は損傷)など)によって活性化されてもよい。
【0060】
図4は、本願(又は現行又は今回)の主題の実施態様に一致するバッテリーセルを組み立てるためのプロセス(又は方法又は工程)400の例を示すフローチャートである。
図4を参照すると、いくつかの場合において、プロセス400は、バッテリーセル100を組み立てるために行われてよい。そうすることで、1以上の保護層110、あるいは、いくつかの場合において、1以上の多機能層(又は多官能層又はマルチファンクション層又はマルチファンクション・レイヤー)150(シール層155に結合した保護層110を含んで成る)を含ませることができる。
【0061】
402において、保護層(又はプロテクト層又はプロテクティブ・レイヤー)を形成することができる。本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様では、バッテリーセル100の1以上の保護層110は、複合材料(又はコンポジット材料又はコンポジット・マテリアル)から形成(又は生成)されてよい。このような複合材料は、1以上の小さな分子(又は小分子又は低分子)の添加物(又は添加剤)(又はスモール・モレキュラ・アディティブ)を含んで成る。1以上の小さな分子(又は小分子又は低分子)の添加物(又は添加剤)は、1以上の機能性材料(又は官能性材料又はファンクション材料又はファンクショナル・マテリアル)(例えば、ポリマーなど)、塩基性材料(又はベース材料又はベース・マテリアル)(例えば、水酸化金属(又は金属水酸化物又は金属ヒドロキシド又はメタル・ヒドロキシド)(例えば、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)および/または水酸化カリウム(KOH)など))、バインダ材料(又はバインダ・マテリアル)および/または伝導性材料(又は導電性材料又はコンダクティブ・マテリアル)(例えば、カーボンブラックおよび/または伝導性ポリマー(又は導電性ポリマー)など)と組み合わされている。例えば、いくつかの場合において、バッテリーセル100の1以上の保護層110を形成(又は生成)する複合材料は、1以上の金属塩、セラミック・ナノ材料および伝導性(又は導電性)のナノ添加物(又はナノ添加剤またはナノ・アディティブ)を含んでよい。さらに、いくつかの場合において、1以上の保護層110を形成(又は生成)する複合材料は、スラリーであってよい。スラリーは、次いで、バッテリーセル100の1以上の電極120、集電体130およびセパレータ140にコーティング(又は被覆)されている。いくつかの場合において、1以上の保護層110は、1以上のシール層155に結合されていてよい。そうすることで、1以上の多機能層150を形成(又は発生)することができる。いくつかの場合において、1以上の保護層110を形成(又は生成)する複合材料は、スラリーであってよい。スラリーは、1以上のシール層155の表面にコーティング(又は被覆)されている。あるいは、1以上のシール層155を形成(又は生成)する材料は、1以上の保護層110の表面にコーティング(又は被覆)されてよい。それにより、1以上の多機能層150を形成(又は生成)することができる。
【0062】
本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様において、1以上の保護層110を形成(又は生成)する複合材料のスラリーを、例えば、1以上の電極120、集電体130、セパレータ140および/またはシール層155の表面にコーティング(又は被覆)した後、乾燥させてよい。いくつかの場合、1以上の保護層110を形成(又は生成)する複合材料のスラリーは、高温での処理(又は高温処理)を受けてよい。例えば、長期間(例えば、約8時間~24時間)にわたって、高温下(例えば、約80℃~150℃)での減圧乾燥による高温処理を受けてよい。形成(又は生成)の間、1以上の保護層110を形成(又は生成)する複合材料のスラリーを高温処理に供することによって、小さな分子の添加物(又は添加剤)と、複合材料に含まれる活性な機能性ポリマー(又は官能性ポリマー又はファンクショナル・ポリマー)との間の反応が促進されてよい。例えば、高温処理の温度および/または期間を選択してよい。それにより、全ての(または実質的に全ての)小さな分子の添加物(又は添加剤)を活性な機能性ポリマー(又は官能性ポリマー又はファンクショナル・ポリマー)と確実に反応させることができる。それにより、バッテリーセル100を組み立てると、電解質の汚染(又はコンタミネーション)の可能性を排除することができる。
【0063】
404において、第1電極を形成(又は生成)してよい。例えば、第1電極125a(例えば、正(又はポジティブ)の電極(又は正極))は、第1電極層120aを形成(又は生成)する1以上の材料(例えば、1以上の材料を含むスラリー)を第1集電体130aの表面にコーティング(又は被覆)することによって形成(又は生成)されてよい。その後、例えば、10時間にわたって140℃で1以上の材料を乾燥させる。バッテリーセル100の第1電極125aは、適切に成形(又はシェイピング)および/または寸法合わせ(又はサイジング)した部品(又はピース)になるように、第1電極層120aをパンチングする(又は打ち抜く)ことによって、さらに形成(又は生成)されてよい。いくつかの場合において、第1保護層110aを形成(又は生成)する複合材料は、第1電極層120aの表面にコーティング(又は被覆)されてよい。さらに、いくつかの場合において、第1シール層155aを形成(又は生成)する材料は、第1保護層110aを形成(又は生成)する複合材料と、第1電極層120aを形成(又は生成)する材料との間に配置(又は挿入)されてよい。
【0064】
406において、第2電極を形成(又は生成)してよい。例えば、第2電極125b(例えば、負の電極(又は負極))は、第2電極層120bを形成(又は生成)する1以上の材料(例えば、1以上の材料を含むスラリー)を第2集電体130bの表面にコーティング(又は被覆)することによって、形成(又は生成)されてよい。乾燥後、例えば、10時間にわたって125℃で1以上の材料を乾燥させる。バッテリーセル200の第2電極125bは、適切に成形(又はシェイピング)および/または寸法合わせ(又はサイジング)した部品(又はピース)になるように、第2電極層120bをパンチングする(又は打ち抜く)ことによって、さらに形成(又は生成)されてよい。いくつかの場合において、第2保護層110bを形成(又は生成)する複合材料は、第2電極層120bの表面にコーティング(又は被覆)されてよい。さらに、いくつかの場合において、第2シール層155bを形成(又は生成)する材料は、第2保護層110bを形成(又は生成)する複合材料と、第2電極層120bを形成(又は生成)する材料との間に配置(又は挿入)されてよい。
【0065】
408において、バッテリーセルを組み立てることができる。そうすることで、バッテリーセルは、保護層、第1電極、第2電極、セパレータおよび電解質(又は電解物又は電解液又はエレクトロライト)を含むことができる。例えば、バッテリーセル100を形成(又は生成)することができる。そうすることで、バッテリーセル100は、1以上の保護層110と、第1電極125a(第1電極層120aと、第1集電体130aと含んで成る)と、第2電極125b(第2電極層120bと、第2集電体130bとを含んで成る)と、セパレータ140と電解質(又は電解物又は電解液又はエレクトロライト)とを含むことができる。バッテリーセル100が円筒形のセル(又は電池)(又はシリンダー・セル又はシリンダー電池)である場合、セパレータ140の層が、バッテリーセル100の第1電極125aと、第2電極125bとの間に配置(又は挿入)されてよい。そうすることで、シートが形成される。このようなシートは、次いで、例えば、マンドレルの周囲に巻き付けられて、ジェリー・ロールが形成される。その後、ジェリー・ロールは、ケースの内部に配置される。バッテリーセル100がパウチ状のセル(又は電池)(又はパウチ・セル又はパウチ電池)である場合、第1電極125aおよび第2電極125bは、セパレータ140の層とともにスタッキング(または積層)されてよい。セパレータ140は、第1電極125aと第2電極125bとの間に配置(又は挿入)されている。次いで、1以上のこのようなスタックをパウチの内部に配置することができる。バッテリーセル100は、電解質(又は電解物又は電解液又はエレクトロライト)で満たされてよい。その後、密封した後、保存(又はエージング)(例えば、室温で24時間)し、1以上の充放電サイクル(例えば、C/20の充電速度)に供する。いくつかの場合において、上記の高温処理に追加して、および/または上記の高温処理の代わりに、形成方法(又は形成プロセス又はフォーメーション・プロセス)の一部として、1以上の保護層110が放射線処理(又はラディエーション処理)を受けてもよい(例えば、ガンマ線(又はγ線)、例えばエックス線(又はX線)、ベータ線(又はβ線)および/または紫外光(UV光)など)。放射線処理によって、1以上の保護層110を形成(又は生成)する複合材料に含まれるポリマーの架橋がさらに促進されてよい。
【0066】
記載の通り、1以上の保護層110を含ませることによって、バッテリーセル100の安全性のプロファイル(又はセーフティ・プロファイル)を向上させることができる(バッテリーセル100の場合を含む)。例えば、1以上の保護層110は、電流リミッタ(又はカレント・リミッタ)および/または電流インタラプタ(又はカレント・インタラプタ)として作用(又は作動)してよい。そうすることで、バッテリーセル100における危険な作動条件(又は操作条件又は運転条件又はオペレーション・コンディション)(例えば、過熱(又はオーバーヒート)、過充電(又はオーバーチャージ)および/または内部での短絡(又はショート・サーキット)(又は内部短絡)などが挙げられる)を中和する(又はニュートラルにする)ことができる。バッテリーセル100の性能(又はパフォーマンス)として、セル・サイクル(例えば、容量維持率(又はキャパシティ・リテンション)および/または高温安定性などが挙げられる。バッテリーセル100の性能は、1以上の保護層110を形成することによって、さらに向上させることができる。1以上の保護層110は、複合材料から形成されるものであり、複合材料は、1以上の小さな分子の添加物(又は添加剤)を含んで成る。さらなる例示として、
図5Aは、第1バッテリーセル(添加物(又は添加剤)ありの保護層を含んで成る)、第2バッテリーセル(添加物(又は添加剤)なしの保護層を含んで成る)、第3バッテリーセル(保護層なし)のサイクル性能(又はサイクル・パフォーマンス)を比較するグラフを示す。第1バッテリーセル、第2バッテリーセルおよび第3バッテリーセルをそれぞれサイクル試験(又はサイクル・テスト)に供した。サイクル・テストは、0.7クーロン(C)で4.48ボルト(V)の電圧までの充電と、0.5クーロン(C)で3ボルト(V)の電圧までの放電とを含むものであった。各バッテリーセルのサイクル性能は、各バッテリーセルの容量維持率(又はキャパシティ・リテンション)(最大で150回の充放電サイクルを受けた後のバッテリーセルの容量維持率)に基づいて評価してよい。
図5Aに示す通り、第1バッテリーセル(添加物(又は添加剤)ありの保護層を含んで成る)は、第2バッテリーセル(添加物(又は添加剤)なしの保護層を含んで成る)と比較して、より良好なサイクル性能(又はサイクル・パフォーマンス)を示した(例えば、連続した充放電サイクルにわたって、より高い容量維持率(又はキャパシティ・リテンション)の割合(%)を示した)。さらに、
図5Aの比較は、第1バッテリーセルの保護層に添加物(又は添加剤)を含ませることによって、第1バッテリーセルにサイクル性能をさらに与えることを示している。これは、保護層を含まない第3バッテリーセルによって示されるサイクル性能に匹敵する。従って、第3バッテリーセルは、第1バッテリーセルと比較して、危険な作動条件(又は操作条件又は運転条件又はオペレーション・コンディション)に対して、より敏感である(又は感受性が高い)。換言すると、1以上の添加物(又は添加剤)が存在すると(例えば、小さな分子の添加物(又は添加剤)(本開示に記載の通り)が存在すると)、バッテリーセルのサイクル性能に対して、1以上の保護層を含ませることが与え得る衝撃(又はインパクト)を最小にすることができる。その一方で、そこから得られる安全性の利点(又はセーフティ・ベネフィット)をなおも維持(又は保持)することができる。
【0067】
図5B~
図5Cは、バッテリーセルの安全性のプロファイル(又はセーフティ・プロファイル)を示すグラフである。ここで、バッテリーセルは、1以上の保護層を含むものであり、保護層は、1以上の添加物(又は添加剤)(例えば、本開示に記載の小さな分子の添加物(又は添加剤))を含むように調製されている。
図5Bにおいて、例えば、バッテリーセルは、過充電され得るが、1以上の保護層が電流の流れ(又はフロー)を減少および/または阻止することができる。そうすることで、バッテリーセルの温度および電圧が安定なままとなり、バッテリーセルは、過熱(又はオーバーヒート)しないし、熱暴走(又はサーマル・ランナウェイ)を受けることもない。
図5Cは、バッテリーセルが物理的なダメージ(又は損傷)を受けた後(例えば、浸透(又はペネトレーション)、変形(又はデフォーメーション)および/または衝撃(又はインパクト)など)、バッテリーセルの温度および電圧の変化を示す。
図5Cに示す通り、1以上の保護層が存在することによって、バッテリーセルの温度および電圧に顕著なスパイクが誘発(又はトリガー又はトリガリング)されることから、バッテリーセルへの物理的なダメージ(又は損傷)を抑制する。その代わり、バッテリーセルの温度および電圧は、安定なままであり、1以上の保護層が存在することによっても、バッテリーセルにおいて過熱(又はオーバーヒート)および熱暴走(又はサーマル・ランナウェイ)を引き起こすことから、バッテリーセルへの物理的なダメージ(又は損傷)を抑制することを示している。
【実施例0068】
(実施例I)
本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様において、カルボポールと、水酸化リチウム(LiOH)と、スーパーP(super P)と、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリンと、水とを含んで成る複合材料(又はコンポジット材料又はコンポジット・マテリアル)から、1以上の保護層110を形成することができる。
【0069】
本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様において、カルボポール(68.53%)と、水酸化リチウム(LiOH)(24.47%)と、スーパーP(super P)(5%)と、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリン(2%)と、水とを含んで成る複合材料(又はコンポジット材料又はコンポジット・マテリアル)から、1以上の保護層を形成することができる。
【0070】
(実施例II)
本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様において、カルボポールと、水酸化リチウム(LiOH)と、スーパーP(super P)と、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸と、水とを含んで成る複合材料(又はコンポジット材料又はコンポジット・マテリアル)から、1以上の保護層110を形成することができる。
【0071】
本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様において、カルボポール(67.79%)と、水酸化リチウム(LiOH)(24.21%)と、スーパーP(super P)(5%)と、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸(3%)と、水とを含んで成る複合材料(又はコンポジット材料又はコンポジット・マテリアル)から、1以上の保護層110を形成することができる。
【0072】
(実施例III)
本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様において、カルボポールと、水酸化リチウム(LiOH)と、スーパーP(super P)と、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)と、トリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートと、水とを含んで成る複合材料(又はコンポジット材料又はコンポジット・マテリアル)から、1以上の保護層110を形成することができる。
【0073】
本願(又は現行又は今回)の主題のいくつかの実施態様において、カルボポール(68.53%)と、水酸化リチウム(LiOH)(24.47%)と、スーパーP(super P)(5%)と、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(1%)と、トリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレート(1%)と、水とを含んで成る複合材料(又はコンポジット材料又はコンポジット・マテリアル)から、1以上の保護層110を形成することができる。
【0074】
上記の説明および特許請求の範囲において、「少なくとも1つの(at least one of)」または「1以上の(one or more of)」などの語句が存在してよく、その後に、構成(又は要素又はエレメント)および特徴(又はフィーチャ)の接続的な列挙が続く。また、2以上の構成(又は要素又はエレメント)および特徴(又はフィーチャ)の列挙において、用語「および/または(and/or)」が存在していてもよい。使用される文脈によって他に暗示的または明示的に矛盾しない限り、そのような語句は、記載された構成(又は要素又はエレメント)または特徴(又はフィーチャ)のいずれかを個別に、または記載された構成(又は要素又はエレメント)または特徴(又はフィーチャ)のいずれかを、他に記載された構成(又は要素又はエレメント)または特徴(又はフィーチャ)のいずれかと組み合わせて意味することを意図している。例えば、「少なくとも1つのAおよびB(又はAおよびBの少なくとも1つ)(at least one of A and B)」、「1以上のAおよびB(又はAおよびBの1以上)(one or more of A and B)」および「Aおよび/またはB(A and/or B)」などの語句は、いずれも、「A単独、B単独、あるいはAおよびBの両方」を意味することが意図されている。また、3以上の項目(又はアイテム)を含む列挙についても、同様の解釈が意図されている。例えば、「少なくとも1つのA、BおよびC(又はA、BおよびCの少なくとも1つ)(at least one of A, B and C)」、「1以上のA、BおよびC(又はA、BおよびCの1以上)(one or more of A, B and C)」および「A、Bおよび/またはC(A, B and/or C)」などの語句は、いずれも、「A単独、B単独、C単独、AおよびBの両方、AおよびCの両方、BおよびCの両方、あるいはA、BおよびCの全部」を意味することが意図されている。上記および特許請求の範囲における用語「基づいて(based on)」の使用は、「少なくとも一部に基づく(based at least in part on)」ことを意味することが意図されている。そうすることで、記載されていない特徴(又はフィーチャ)または構成(又は要素又はエレメント)が存在することも許される。
【0075】
本開示に記載の主題は、所望の構造(又は構成又は形状又はコンフィギュレーション)に応じて、システム、装置、方法および/または物(又は物品又はアーティクル)として具体化することができる。上記の説明に記載の実施態様は、本開示に記載の主題と一致する実施態様の全てを表すものではない。それよりも、本開示に記載の主題に関連する態様と一致する例を単にいくつか示すに過ぎない。いくつかのバリエーション(又は変形)を上記に詳細に説明しているが、他の変更(又はモディフィケーション)または追加(又はアディション)も可能である。特に、本開示に記載の特徴(又はフィーチャ)および/またはバリエーション(又は変形)に加えて、さらなる特徴(又はフィーチャ)および/またはバリエーション(又は変形)を提供することができる。例えば、上記で説明した実施態様は、開示された特徴(又はフィーチャ)の様々な組み合わせ(又はコンビネーション)および部分的な組み合わせ(又はサブコンビネーション)ならびに/あるいは上記で開示されたさらなるいくつかの特徴(又はフィーチャ)の様々な組み合わせ(又はコンビネーション)および部分的な組み合わせ(又はサブコンビネーション)に向けられてよい。さらに、添付の図面に記載のロジック・フロー(又は論理フロー又は論理流れ)および/または本開示において説明されるロジック・フロー(又は論理フロー又は論理流れ)は、所望の結果を達成するために、必ずしも、示すような特定の順序(又はオーダー)または連続した順序(又はオーダー)を必要としない。他の実施態様も以下の特許請求の範囲に包含されてよい。