(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104920
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】フォトレジスト組成物及びこれを用いた金属多層膜パターニング方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/023 20060101AFI20230721BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230721BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
G03F7/023
G03F7/004 501
H05K3/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005545
(22)【出願日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】10-2022-0007427
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】515068085
【氏名又は名称】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGJIN SEMICHEM CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】513032220
【氏名又は名称】サムスン・ディスプレイ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG DISPLAY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】95, Samsung 2 Ro, Giheung-Gu, Yongin-City, Gyeonggi-Do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】キム ギョンホ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン ヒョクミン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ジュピョ
(72)【発明者】
【氏名】スン ムンチャン
(72)【発明者】
【氏名】イム ヨンス
【テーマコード(参考)】
2H225
【Fターム(参考)】
2H225AF03P
2H225AM80P
2H225AN39P
2H225AN65P
2H225AN72P
2H225AN89P
2H225CA22
2H225CB02
2H225CC03
2H225CC21
(57)【要約】
【課題】液晶ディスプレイの回路などにおける微細回路パターン形成のためのウェットエッチング工程で使用できるフォトレジスト組成物、及びこれを用いた金属多層膜パターニング方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施例によるフォトレジスト組成物は、ノボラック樹脂、ジアジド系感光性化合物及び有機溶媒を含み、前記ジアジド系感光性化合物は、フェノール系バラストにナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が4個以上結合した化合物を含み、前記ジアジド系感光性化合物は、前記ジアジド系感光性化合物全体100モル%に対してナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が4個以上結合したジアジド系感光性化合物を55~80モル%含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノボラック樹脂、
ジアジド系感光性化合物、及び
有機溶媒を含み、
前記ジアジド系感光性化合物は、フェノール系バラスト(ballast)にナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が4個以上結合した化合物を含み、
前記ジアジド系感光性化合物は、前記ジアジド系感光性化合物全体100モル%に対してナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が4個以上結合したジアジド系感光性化合物を55~80モル%含む、フォトレジスト組成物。
【請求項2】
前記ジアジド系感光性化合物は、2~6個の芳香族環を含むフェノール系バラストを含む、請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項3】
前記ジアジド系感光性化合物は、下記化学式1~10で表されるバラスト(ballast)のうちの1種以上のバラストにナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が結合したものを含む、請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
[化学式1]
[化学式2]
[化学式3]
[化学式4]
[化学式5]
[化学式6]
[化学式7]
[化学式8]
[化学式9]
[化学式10]
【請求項4】
前記ジアジド系感光性化合物は、下記化学式11~19で表される化合物のうちの1種又は2種以上の化合物を含む、請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
[化学式11]
[化学式12]
[化学式13]
[化学式14]
[化学式15]
[化学式16]
[化学式17]
[化学式18]
[化学式19]
(前記化学式11~19中、Rは、それぞれ独立して、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホネート、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホネート又は1,2-ナフトキノンジアジド-6-スルホネートである。)
【請求項5】
前記有機溶媒は、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチルラクテート、2-メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及び1-メチル-2-ピロリジノンのうちの1種又は2種以上を含む、請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項6】
前記フォトレジスト組成物の全重量に対して、前記ノボラック樹脂5~30重量%、及び前記ジアジド系感光性化合物2~10重量%を含む、請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項7】
チタン/銅(Ti/Cu)多層膜パターニング用に使用される、請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項8】
メルカプト基を含む接着増進剤をさらに含む、請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項9】
チタン/銅(Ti/Cu)多層膜を提供するステップと、
前記チタン/銅(Ti/Cu)多層膜上にフォトレジストパターンを形成するステップと、
前記フォトレジストパターンに沿ってチタン/銅(Ti/Cu)多層膜をエッチングするステップと、を含み、
前記フォトレジストパターンは、請求項1に記載のフォトレジスト組成物が硬化したものである、金属多層膜パターニング方法。
【請求項10】
40°~50°のテーパー角度でチタン/銅(Ti/Cu)多層膜をパターニングする、請求項9に記載の金属多層膜パターニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ回路などにおける微細回路パターン形成のためのウェットエッチング工程で使用できるフォトレジスト組成物、及びこれを用いた金属多層膜パターニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ回路又は半導体集積回路のように微細な回路パターンを形成するためには、まず、基板上に形成された絶縁膜又は導電性金属膜にフォトレジスト組成物を均一にコーティング又は塗布し、所定の形状のマスク存在下でコーティングされたフォトレジスト組成物を露光し、現像して所望の形状のパターンを形成する。その後、前記パターンの形成されたフォトレジスト膜をマスクとして用いて金属膜をエッチングした後、残存するフォトレジスト膜を除去して基板上に微細回路を形成する。
【0003】
前記金属膜をエッチングする過程でフォトレジスト-金属膜間の接着力は、形成される金属配線幅、回路の信号伝達特性及び高解像度性能を決定する。よって、従来では、フォトレジスト-金属膜間の接着力を向上させるために、架橋剤を適用したフォトレジスト組成物を使用してきた。
【0004】
しかし、架橋剤を適用したフォトレジスト組成物は、ウェットエッチングの後、メタルテーパー角度が60°以上となって後続工程で断線不良が発生し、架橋剤を除いた組成物は、メタルテーパー角度が30°以下となってメタルの面積が低くなり、応答速度が低下するという問題が生じた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、フォトレジスト-金属膜間の接着性に優れ、ウェットエッチング工程後の金属テーパー角度による断線不良問題を解決したフォトレジスト組成物、及びこれを用いた金属多層膜パターニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施例によるフォトレジスト組成物は、ノボラック樹脂、ジアジド系感光性化合物及び有機溶媒を含み、前記ジアジド系感光性化合物は、フェノール系バラスト(ballast)にナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が4個以上結合した化合物を含み、前記ジアジド系感光性化合物は、前記ジアジド系感光性化合物全体100モル%に対してナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が4個以上結合したジアジド系感光性化合物を55~80モル%含む。
【0007】
前記ジアジド系感光性化合物は、2~6個の芳香族環を含むフェノール系バラスト(ballast)を含むことができる。例えば、前記芳香族環はベンゼン環であってもよい。
【0008】
前記ジアジド系感光性化合物は、下記化学式1~10で表されるバラスト(ballast)のうちの1種以上のバラストにナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が結合したものを含むことができる。
[化学式1]
[化学式2]
[化学式3]
[化学式4]
[化学式5]
[化学式6]
[化学式7]
[化学式8]
[化学式9]
[化学式10]
【0009】
前記ジアジド系感光性化合物は、下記化学式11~19で表される化合物のうちの1種又は2種以上の化合物を含むことができる。
[化学式11]
[化学式12]
[化学式13]
[化学式14]
[化学式15]
[化学式16]
[化学式17]
[化学式18]
[化学式19]
【0010】
このとき、前記化学式11~19において、Rは、それぞれ独立して、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホネート、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホネート又は1,2-ナフトキノンジアジド-6-スルホネートである。
【0011】
前記有機溶媒は、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチルラクテート、2-メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及び1-メチル-2-ピロリジノンのうちの1種又は2種以上を含むことができる。
【0012】
前記フォトレジスト組成物の全重量に対して、フォトレジスト組成物は、前記ノボラック樹脂5~30重量%、及び前記ジアジド系感光性化合物2~10重量%を含むことができる。
前記フォトレジスト組成物は、具体的に、チタン/銅(Ti/Cu)多層膜パターニング用に使用できる。
また、場合によっては、前記フォトレジスト組成物は、メルカプト基を含む接着増進剤をさらに含むことができる。
【0013】
本発明の他の一実施例による金属多層膜パターニング方法は、チタン/銅(Ti/Cu)多層膜を提供するステップと、前記チタン/銅(Ti/Cu)多層膜上にフォトレジストパターンを形成するステップと、前記フォトレジストパターンに沿ってチタン/銅(Ti/Cu)多層膜をエッチングするステップと、を含む。具体的には、前記フォトレジストパターンは、前記フォトレジスト組成物が硬化したものである。
このとき、前記エッチングによって前記多層膜のテーパー角度が40°~50°となることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によるフォトレジスト組成物は、架橋剤が含まれなくても、優れた接着力を示す。また、本発明の他の態様によれば、従来のフォトレジスト組成物の架橋剤の有無によって発生した断線不良や応答速度低下などの問題を解決することにより、微細回路パターン形成工程の歩留まりを向上させることができ、金属基板の変化にも拘らずウェットエッチングの変化を最小限に抑えて産業現場での生産環境の変化に対する安定性を向上させるという効果がある。
【0015】
特に、本発明のフォトレジスト組成物をTi/Cu基板に適用する場合、ウェットエッチングの後、メタルのテーパー角度を40~50°に維持することができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。
これに先立って、本明細書及び請求の範囲で使用された用語や単語は、通常的又は辞典的な意味に限定されて解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈されるべきである。
【0017】
したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示される構成は、本発明の最も好適な一実施例に過ぎず、本発明の技術思想をすべて代用するものではないので、本出願時点においてこれらは代替することができる様々な均等物及び変形例があり得ることを理解すべきである。
【0018】
本発明の一態様によるフォトレジスト組成物は、ノボラック樹脂、ジアジド系感光性化合物及び有機溶媒を含む。このとき、ジアジド系感光性化合物は、フェノール系バラストにナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が4個以上結合した構造の化合物であり、前記ジアジド系感光性化合物の55~80モル%は、フェノール系バラストにナフトキノンジアジドスルホニル基が4個含まれた化合物であることを特徴とする。
【0019】
本発明のフォトレジスト組成物は、従来の架橋剤の役割を前記ジアジド系感光性化合物の構造によって代替したものである。具体的には、ジアジド系感光性化合物の構造において、芳香族環に直接結合した4個以上のナフトキノンジアジドスルホニルがノボラック樹脂と容易に結合し、別個の架橋剤が不要であるという特徴がある。例えば、前記芳香族環はベンゼン環であってもよい。
【0020】
前記ジアジド系感光性化合物は、芳香族環に直接結合したヒドロキシ基(-OH)にナフトキノンジアジドスルホニル基が縮合結合によって結合した構造であり、化合物構造全体における芳香族環間の位置関係は、本発明のフォトレジスト組成物の効果に大きく影響しない。すなわち、本発明のフォトレジスト組成物の接着力向上効果のためには、ジアジド系感光性化合物において芳香族環の位置よりは芳香族環にナフトキノンジアジドスルホニル基が直接連結された構造が4個以上であることが重要である。そして、ジアジド系感光性化合物において芳香族環にナフトキノンジアジドスルホニル基とフェノール系バラスト(Ballast)との縮合結合反応の際に結合するナフトキノンジアジドスルホニル基が多くなるほど、立体障害が増加して合成速度と反応性が低下するおそれがある。これにより、芳香族環の数の2倍以上のナフトキノンジアジドスルホニル基が結合する確率が著しく低くなるおそれがある。
【0021】
ジアジド系感光性化合物は、ジアジド系感光性化合物全体100モル%に対して、フェノール系バラストにナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が4個以上結合したジアジド系感光性化合物を55~80モル%含む。このとき、フェノール系バラストにナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が4個結合したジアジド系感光性化合物と3個以下又は5個以上のナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が結合したジアジド系感光性化合物は、他のフェノール系バラストに由来するものであってもよいが、同じフェノール系バラストに由来し、一部のヒドロキシ基がナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基で置換されないことによりNQD結合の数が変わり得る。ヒドロキシ基がNQDで置換される割合を示すNQD置換率は、超高性能液体クロマトグラフィー(Ultra Performance Liquid Chromatography、UPLC)分析装備を用いて分析することができる。
【0022】
ジアジド系感光性化合物全体100重量%に対して、フェノール系バラストにナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が4個以上結合したジアジド系感光性化合物が80モル%を超えて含まれた場合、フォトレジスト組成物の保管時間が増加するほど、ジアジド系感光性化合物が析出し、フォトレジスト組成物の貯蔵安定性が大きく低下するという問題が生じる。また、ジアジド系感光性化合物全体100モル%に対して、フェノール系バラストにナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が4個以上結合したジアジド系感光性化合物が55モル%未満で含まれた場合、フォトレジスト-金属膜間の接着力が大きく低下するという問題がある。特に、ジアジド系感光性化合物100モル%に対して、フェノール系バラストにナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が4個以上結合したジアジド系感光性化合物を55~75モル%含む場合、メタルテーパー角度と貯蔵安定性がより優れる。より具体的には、チタン/銅(Ti/Cu)多層膜パターニングのためのフォトレジスト組成物では、ジアジド系感光性化合物100モル%に対して、フェノール系バラストにナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が4個結合したジアジド系感光性化合物を57.0モル%以上含む場合、Ti/Cuメタルテーパー角度が40°~50°と優れている。
【0023】
ジアジド系感光性化合物は、芳香族環を2~6個含むことが好ましい。本発明のフォトレジスト組成物の特性は、ジアジド系感光性化合物において、4個以上のナフトキノンジアジドスルホニルが芳香族環に直接結合しなければならず、前記フェノール系バラストに芳香族環が1個のみある場合、ナフトキノンジアジドスルホニルの構造により、1つの芳香族環に4個以上のナフトキノンジアジドスルホニルが結合するのに困難がある可能性がある。また、前記フェノール系バラストに芳香族環が7個以上含まれている場合、ナフノキノンジアジドスルホニルが結合していない芳香族環によりフォトレジスト組成物の接着力が大きく低下するという問題が生じるそれがある。
【0024】
前記ジアジド系感光性化合物は、例えば、下記化学式1~10で表されるバラスト(ballast)のうちの1種以上のバラスト(ballast)にナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が結合したものを含むことができる。このとき、フェノール系バラストにメチル基が多いほど、立体障害によりNQDがバラストに結合するのに困難があるおそれがあるため、フェノール系バラストにメチル基がないか少ないことが選好される。
[化学式1]
[化学式2]
[化学式3]
[化学式4]
[化学式5]
[化学式6]
[化学式7]
[化学式8]
[化学式9]
[化学式10]
【0025】
ジアジド系感光性化合物は、例えば、下記化学式11~19で表される化合物のうちの1種又は2種以上の化合物を含むことができる。このとき、下記化学式11~19において、Rは、それぞれ独立して、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホネート、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホネート又は1,2-ナフトキノンジアジド-6-スルホネートである。
[化学式11]
[化学式12]
[化学式13]
[化学式14]
[化学式15]
[化学式16]
[化学式17]
[化学式18]
[化学式19]
【0026】
ノボラック樹脂は、フォトレジスト物質であって、一般的なフォトレジスト組成物に用いられるノボラック樹脂を用いても構わない。
【0027】
有機溶媒は、ノボラック樹脂と前記ジアジド系感光性化合物とを溶解することが可能な溶媒であれば特に限定されず、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチルラクテート、2-メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及び1-メチル-2-ピロリジノンのうちの1種又は2種以上を含んで使用することができる。
【0028】
本発明の一態様によるフォトレジスト組成物は、前記ジアジド系感光性化合物を用いて、架橋剤を含まないことを特徴とし、例えば、フォトレジスト組成物の全重量に対して、ノボラック樹脂が5~30重量%、前記ジアジド系感光性化合物が2~10重量%含まれてもよいが、上記の例示に限定されるものではない。前記フォトレジスト組成物におけるノボラック樹脂とジアジド系感光性化合物を除いた残りの構成は、有機溶媒からなることができ、具体的な組成として、フォトレジスト組成物全体に対して、ノボラック樹脂5~30重量%、ジアジド系感光性化合物2~10重量%、及び有機溶媒60~93重量%含まれることができる。
【0029】
本発明のフォトレジスト組成物は、特に、チタン/銅(Ti/Cu)多層膜パターニングのウェットエッチング工程に使用される場合、フォトレジスト組成物が前記チタン/銅(Ti/Cu)の上部に別途の架橋剤なしにも優れた接着力で付着でき、ウェットエッチングの後に優れたメタルテーパー角度の実現が可能である。具体的には、前記フォトレジスト組成物をチタン/銅(Ti/Cu)多層膜パターニングのウェットエッチング工程に使用する場合、40°~50°の優れたメタルテーパー角度が実現できる。
【0030】
本発明のフォトレジスト組成物は、ノボラック樹脂、ジアジド系感光性化合物及び有機溶媒のみを含んでもよいが、さらにメルカプト基を含む接着増進剤をさらに含むことができる。例えば、前記メルカプト基を含む接着増進剤は、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール(5-Amino-1,3,4-thiazole-2-thiol)、5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール(5-Methyl-1,3,4-thiadiazole-2-thiol)、及び2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(2,5-Dimercapto-1,3,4-thiadiazole)よりなる群から選択された1種又は2種以上であってもよい。
【0031】
別の例示によれば、前記メルカプト基を含む接着増進剤は、下記一般式1で表される化合物であってもよい。
[一般式1]
【0032】
前記一般式1中、R1及びR2は、それぞれ独立して、アミノ基、アルキル基、メルカプト基及び水素原子のうちのいずれか1種を含み、R1及びR2のうちの少なくとも1つは、メルカプト基を含む。
【0033】
メルカプト基を含む接着増進剤は、少量で含まれても、フォトレジスト-金属膜間の接着力を大きく向上させることができるが、前記接着増進剤が添加されることにより、フォトレジスト組成物の貯蔵安定性に劣るので、少量添加されるのがよい。例えば、前記メルカプト基を含む接着増進剤は、フォトレジスト組成物の全重量に対して0.05重量%以下の少量で含まれても済む。ただし、フォトレジスト組成物の貯蔵安定性の低下が問題となる場合、前記接着増進剤を含まなくてもよい。
【0034】
本発明の別の一態様による金属多層膜パターニング方法は、チタン/銅(Ti/Cu)多層膜を提供するステップと、前記チタン/銅(Ti/Cu)多層膜上にフォトレジストパターンを形成するステップと、前記フォトレジストパターンに沿ってチタン/銅(Ti/Cu)多層膜をエッチングするステップと、を含み、前記フォトレジストパターンは、本発明の様々な実施例によるフォトレジスト組成物が硬化したものである。
【0035】
本発明のフォトレジスト組成物を用いてチタン/銅(Ti/Cu)多層膜をウェットエッチングすることができる。具体的には、Ti/Cu多層膜が付着した基板上に前記フォトレジスト組成物を塗布し、減圧乾燥及び加熱乾燥させてフィルム膜を形成した後、露光工程と現像工程を介してパターンを形成することができる。パターンの形成後に、加熱によってパターン硬化工程を行い、Ti/Cuエッチング液を用いてウェットエッチング工程を行うことができる。前記金属多層膜パターニング方法によってTi/Cu多層膜のテーパー角度を40°~50°に形成することができる。
【0036】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施し得るように本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現でき、ここで説明する実施例に限定されない。
【0037】
[製造例1:ジアジド系感光性化合物の合成]
本発明の一実施例のフォトレジスト組成物に含まれているジアジド系感光性化合物は、フェノールバラストを含む、下記化学式aで表される2,3,4,4-テトラヒドロキシベンゾフェノンと下記化学式bで表されるナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホクロリドを用いて前記2,3,4,4-テトラヒドロキシベンゾフェノンの4つのヒドロキシ基がナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホネート(NQD)で置換され、下記化学式cで表される2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホネートを製造することができる。下記化学式cは、4つのヒドロキシ基が全てNQDで置換された場合を示し、実際の合成では、3つ以下のヒドロキシ基のみNQDで置換され、NQDで置換されていないヒドロキシ基が存在する。
[化学式a]
[化学式b]
[化学式c]
前記化学式cのRは、前記化学式bのスルホネート化合物である。
【0038】
[製造例2:フォトレジスト組成物の製造]
ノボラック樹脂(Mn=3,000~13,000g/mol)として、メタクレゾール:パラクレゾールの重量比が5:5であるノボラック樹脂を100g用い、感光性化合物として、前記製造例1で製造した2,3,4,4-テトラヒドロキシベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホネート感光性化合物20gを用いた。比較例の架橋剤としては、チアジアゾール系化合物を用いた。そして、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を共通に使用し、各組成を混合してフォトレジスト組成物を製造した。
【0039】
感光性化合物は、ナフトキノンジアジドスルホニル(NQD)基が4つ置換された比率である4-NQD置換率を異にして製造した。4-NQD置換率は、UPLC(Ultra Performance Liquid Chromatography)分析装備(Waters製のAquitiy Model)を用いて分析した。
各実施例及び比較例の組成について下記表1に示す。
【0040】
【表1】
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
架橋剤:メルカプト基を含むチアジアゾール系化合物(5-Amino-1,3,4-thiadiazole-2-thiol)
【0041】
[実験例1:フォトレジスト組成物のメタルテーパー角度の比較]
製造例2で製造した実施例及び比較例の液晶ディスプレイ回路用フォトレジスト組成物を横100mm×縦100mmサイズのTi/Cu付着ガラス基板に塗布した後、60秒間減圧乾燥させ、前記基板を110℃で135秒間加熱乾燥させて厚さ1.4μmのフィルム膜を形成した。その後、露光工程と現像工程を経てパターンを形成した後、125℃で65秒間加熱してパターン硬化工程を行った。その後、Ti/Cuエッチング液を用いてウェットエッチング工程を行い、エッチングされた基板のメタルテーパー角度を走査電子顕微鏡(SEM)で測定し、その結果を下記表2に示す。
【0042】
【0043】
前記表2を参照すると、感光性化合物における4-NQDの置換率に応じてメタルテーパー角度の変化が大きいことを確認することができる。具体的に4-NQD置換率が55~80モル%に属する実施例の場合は、メタルテーパー角度として40°~50°の優れた角度が実現されたが、感光性化合物における4-NQDの置換率が本発明の範囲から外れる場合、比較例3を除いて、メタルテーパー角度があまり低いか高いことを確認することができる。
【0044】
[実験例2:フォトレジスト組成物の貯蔵安定性の比較]
製造例2で製造した実施例及び比較例の貯蔵安定性を比較するために、実施例及び比較例の組成物を50℃のオーブンに保管して時間経過による物性の変化開始時間を測定し、その結果を下記表3に示す。
【0045】
【0046】
前記表3を参照すると、感光性化合物における4-NQDの置換率が55~80モル%に属する実施例の場合、物性変化時間が20日以上であって、貯蔵安定性に優れることを確認することができる。しかし、比較例1を除いて、比較例2と3の場合は、物性変化時間が短く、貯蔵安定性に大きく劣ることを確認することができる。実験例1及び実験例2によって、本発明の実施例の場合は、メタルテーパー角度として40°~50°の優れた角度が実現されながらも、貯蔵安定性に優れることを確認することができ、4-NQD置換率が低い比較例1の場合は、貯蔵安定性は良好であったが、金属テーパー角度で大きな欠陥を示した。また、4-NQD置換率が高い比較例3の場合は、メタルテーパー角度は良好であったが、貯蔵安定性に大きく劣るという問題を示した。
【0047】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱することなく、様々な修正及び変形が可能であるのは、当技術分野分野における通常の知識を有する者には自明であろう。