(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104967
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】ガラスセラミック物品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 17/22 20060101AFI20230721BHJP
C03C 17/36 20060101ALI20230721BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20230721BHJP
C03C 15/00 20060101ALI20230721BHJP
C03C 17/06 20060101ALI20230721BHJP
F24C 15/10 20060101ALI20230721BHJP
H05B 6/12 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C03C17/22 Z
C03C17/36
C03C17/34 Z
C03C15/00 Z
C03C17/06 Z
F24C15/10 B
H05B6/12 305
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023080025
(22)【出願日】2023-05-15
(62)【分割の表示】P 2020524138の分割
【原出願日】2018-10-26
(31)【優先権主張番号】1760239
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】504374919
【氏名又は名称】ユーロケラ ソシエテ オン ノーム コレクティフ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー ペルティエ
(72)【発明者】
【氏名】ルネ ギー
(72)【発明者】
【氏名】テオ ジェゴレル
(72)【発明者】
【氏名】エルワン リュエ
(57)【要約】
【課題】ますます機能的かつ実用的であり、その一方で、特には、熱的及び機械的な制約に配慮しているガラスセラミック製品を提供する。
【解決手段】本発明は、特には少なくとも1つの光源及び/又は少なくとも1つの加熱要素とともに使用するための、ガラスセラミック物品に関し、この物品は、ガラスセラミックでできている少なくとも1つの基材、例えばプレートを有し、この基材は、少なくとも部分的に、少なくとも1つのナノリンクル層を備えており、特にはこの層でコーティングされている。
本発明は、また、この物品を得るための方法にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特には少なくとも1つの光源及び/又は少なくとも1つの加熱要素とともに使用されることが意図されている、ガラスセラミック物品であり、
前記物品が、少なくとも1つの、ガラスセラミックでできている、基材、例えばプレート、を有しており、
前記基材が、少なくとも部分的に、少なくとも1つのナノリンクル層を備えており、特には、少なくとも1つのナノリンクル層でコーティングされている、
ガラスセラミック物品。
【請求項2】
前記ナノリンクル層が、周期と振幅との間の比が4と20との間、好ましくは5と15との間、特には8と14との間になるような、周期及び振幅を有している、請求項1に記載のガラスセラミック物品。
【請求項3】
前記ナノリンクル層が、10nmと40000nmとの間、好ましくは100nmと10000nmとの間、特には500nmと8500nmとの間の周期を有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のガラスセラミック物品。
【請求項4】
前記ナノリンクル層が、5μm未満、より正確には2μm未満、特には1μm以下、好ましくは1μm未満、特には4nmと900nmとの間、好ましくは50nmと850nmとの間の振幅を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項5】
前記ナノリンクル層が、等方性であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項6】
前記ナノリンクル層が、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、及び亜鉛のうちの1又は複数の元素の窒化物及び/又は酸化物及び/又は炭化物及び/又は合金の群から選択される材料のコーティング層であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項7】
前記ナノリンクルコーティングの厚みが、20nmと2000nmとの間、好ましくは、50nm以上であり、かつ300nm以下、特には200nm以下であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項8】
前記ナノリンクル層が、前記ガラスセラミック基材を形成するためのガラス基材のセラミック化の前に堆積された層であり、この層が、前記ガラス基材の前記ガラスセラミック基材へのセラミック化の間にリンクル化をもたらしたことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項9】
前記ナノリンクル層の厚みと前記層の振幅との間の比が、0.15と0.30との間、好ましくは0.20と0.28との間、特には0.21と0.27との間であることを特徴とする、請求項8に記載のガラスセラミック物品。
【請求項10】
前記ナノリンクル層が、前記ガラスセラミック基材それ自体の表面層であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項11】
前記物品又は前記基材が、料理用ホブ又は作業台であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項12】
ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、及び亜鉛のうちの1又は複数の元素の窒化物及び/又は酸化物及び/又は炭化物及び/又は合金の群から選択される材料の少なくとも1つの層を、ガラス基材の少なくとも一部に適用し、そして、
このようにしてコーティングされた前記ガラス基材をセラミック化する、
請求項1~11のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品を製造する方法。
【請求項13】
前記層を、後に、例えば化学エッチング又はレーザー除去によって、除去することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミックスの分野に関する。より具体的には、本発明は、特には加熱要素を覆うことが意図されている、又は、加熱要素を受け取ることが意図されている、ガラスセラミックでできている物品又は製品、例えば料理用ホブ、に関する。ガラスセラミック物品又はガラスセラミックでできている物品は、ガラスセラミック材料の基材、例えばガラスセラミックプレートに基づいている物品として定義され、この基材は、必要であれば、その最終的な使用のために要求されるアクセサリー又は追加的な(装飾的又は機能的な)要素を備えることができる。物品は、基材のみを示している場合もあり、追加的な備品を備えている基材(例えば、制御パネル、その加熱要素等を備えている料理用ホブ)を示している場合もある。本発明は、上述の物品を得るための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に使用されるいくつかのガラスセラミック製品、特にはガラスセラミックホブが存在する。これらは、家電製品取扱業者、製造業者、及びユーザーに非常に人気がある。この成功は、特に、これらのホブの魅力的な外観及びクリーニングの容易性に起因する。
【0003】
ガラスセラミックは、元々は、ガラスであり、前駆体ガラス又は母体ガラス又は緑色ガラスとして知られるガラスであり、その特定の化学組成は、セラミック化と呼ばれる、適切な熱処理によって誘導される制御された結晶化を、可能にする。この特定の、部分的に結晶化された構造は、ガラスセラミックスに特徴的な特性を付与する。
【0004】
現在、異なるタイプのガラスセラミックホブが存在し、これらの変形種それぞれは、広範囲の研究及び無数のテストの結果である;なぜならば、所望の特性に悪影響を及ぼすリスクなくこれらのホブ及び/又はそれらの製造方法を修正することは、非常に困難だからであり、特に料理用ホブとして用いるためには、ガラスセラミックプレートは、一般に、使用していないときに下方の加熱要素の少なくともいくつかを覆い隠す程度に十分に低い、可視光の波長における透過率であって、かつ、安全性の観点から、場合(放射加熱、誘導加熱等)に応じて、ユーザーが使用中に加熱要素を視覚的に検知することができる程度に十分に高い、可視光の波長における透過率を、有している必要がある;また、赤外線範囲の波長における高い透過率も有している必要があり、特に、放射型バーナーを有するプレートの場合に、そうである。ガラスセラミックホブは、また、その使用の分野において要求される十分な機械的強度を有している必要がある。特に、家庭用家電製品の分野における料理用ホブとして使用するためには、ガラスセラミックホブは、圧力、衝撃(支持、及び料理器具の落下等)への(例えばEN60335-2-6に従って定義される)良好な耐性を有している必要がある。
【0005】
最も一般的なガラスセラミックホブは、暗色であり、特には、黒色又はブラウン色又はオレンジ―ブラウン色であるが、比較的明るい外見(特には白色、例えば、仏国特許第2766816号に記載の少なくとも50%のヘイズを有する白色)を有するホブも存在し、又はさらには、大抵は特別な色調効果のための不透明化コーティング又はフィルターを備えている、透明ホブも存在する。
【0006】
ガラスセラミックホブのための既知の(機能的かつ/又は装飾的な)コーティングは、慣用的には、ガラスフリット及び顔料に基づいているエナメルを有する。エナメルの1つの利点は、セラミック化の前に前駆体ガラス(又は母体ガラス若しくは緑色ガラス)に堆積することができ、セラミック化の間に焼成することができる、という点である。これらは、また、高温に耐えることができ、プレートに関して異なる加熱媒体を用いることを可能にする。しかしながら、これらは、ガラスセラミックプレートの機械的な耐性を局所的に低下させることがあり、特に厚い堆積の場合又は複数のパスにおいて製造されるものである場合には、剥離することがあり、さらに、特定の色が、(特に単一のパスでは)実現可能でなく又は得ることが困難である。エナメルの焼成は、また、望ましくないシェード(例えば、黒色エナメルの場合のブラウン色又は灰色)の外観をもたらすこともある。
【0007】
特定の高温耐性ペイントを用いること、特にはケイ素に基づくペイントを用いることも知られており、これらのペイントは、セラミック化の後で基材に堆積される。それらの使用は、それらの比較的低い耐性、特には熱及び摩擦に対する比較的低い耐性に起因して、エナメルの場合よりも、さらに制限されたままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ガラスセラミックスの分野における継続的な関心事は、ガラスセラミックがコーティングされている場合又はコーティングされていない場合に関わらず、クリーニングが容易であり、かつその外観及び特性が長期間にわたって維持される製品を提供することができるようになることである。コーティングを付加することは、大抵の場合、この維持を、さらに複雑にする;なぜならば、ガラスセラミックがクリーニングされるときに、層が劣化しうるからであり、又は、ガラスセラミックの光学的若しくは機械的特性が、変化しうるからである。
【0009】
本発明は、ますます機能的かつ実用的であり、その一方で、制約、特には、上述の製品の使用に特徴的な熱的及び機械的な制約に配慮しているガラスセラミック製品、特には1又は複数の加熱要素とともに使用することが意図されている新規のガラスセラミックプレート、例えば料理用ホブ、を提供することを目的としており、特には、耐久性があり、管理が容易であるガラスセラミック製品を得ることを目的としており、必要な場合には装飾の存在又は必要に応じて追加的な機能を許容できる、簡便でかつ好ましくは柔軟性のある解決策を提案することを、考慮している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明に従って開発された方法、及び、このようにして開発された、結果として得られるガラスセラミック製品によって、達成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1aは、本発明に係る物品を得るために用いられる、基材又はコーティングされた母体ガラス基材の一部の断面の、縮尺どおりではない、概略図である。
図1bは、
図1aの基材又は基材部分のセラミック化の後に得られる、基材又は基材部分である。
【
図2a】
図2aは、本発明の第一の例示的な実施態様において得られるナノリンクル化されている表面の光学顕微鏡像を示す。
【
図2b】
図2bは、本発明の第二の例示的な実施態様において得られるナノリンクル化されている表面の光学顕微鏡像を示す。
【
図2c】
図2cは、本発明の第三の例示的な実施態様において得られるナノリンクル化されている表面の光学顕微鏡像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
したがって、本発明は、新規のガラスセラミック物品(又は製品)に関し、これは、ガラスセラミック(材料)でできている、少なくとも1つの基材(又は支持体)、例えばプレートを有し、この基材が、少なくとも部分的に(その表面において、少なくとも1つの面の少なくとも一部において)、少なくとも1つのナノリンクル層(ナノリンクル化されている層)を備えており、特にはこの層によってコーティングされている。
【0013】
本発明は、また、ガラス基材(セラミック化によってガラスセラミック基材を形成する、母体ガラス基材)から、このような(少なくとも1つのガラスセラミック基材を有する)ガラスセラミック物品を製造する方法にも関し、この方法では、上述のガラス基材(母体ガラス)の少なくとも一部に、セラミック化の前に、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、及び亜鉛のうちの1又は複数の元素の、窒化物及び/又は酸化物及び/又は炭化物及び/又は合金の群から選択される材料の少なくとも1つの層を適用し、そして、そのようにしてコーティングされたガラス基材(母体ガラス基材)をセラミック化し、そして、このセラミック化が、上述の少なくとも1つのナノリンクル層で少なくとも部分的にコーティングされたガラスセラミック基材を得ることを、可能にする。
【0014】
ナノリンクル(ナノひだ)は、ひだ(リンクル)、又は、交互の溝及び隆起を有する湾曲した起伏若しくは歪み(若しくは、角度や急な角度を形成しない、方向の変化)を、ナノスケールで有していること、すなわち、振幅(又は、それぞれのひだの最上点、隆起の頂点、と、最下点、溝の底部、との間の、高さにおける差異)が約1μmを超えないひだ、特には、(厳密に)5μm未満、より正確には(厳密に)2μm未満、特には1μm以下、好ましくは(厳密に)1μm未満の振幅を有するひだを有していることを、意味する。ひだ(又はそれぞれのひだ)の振幅は、有利には、数ナノメートルから数百ナノメートルであり、下記で特定されるように、平均の振幅(算術平均)が、一般に、およそ数百ナノメートルである。
【0015】
本発明は、上述の一群から選択される材料(セラミック化の間におけるガラス基材と比較して、いわゆる「硬性の」材料;ガラス基材は、粘性が低下し、かつ、比較的硬性が高い上記の材料の層と比較して、軟性の基材のように挙動する)の層、特には薄層タイプの(その厚みが数十μmを超えず、特には20μmを超えず、特には、この場合には数μm未満であり、特には2μm未満である)層を、セラミック化の前に母体ガラスに堆積することによって、(一般に900℃を超える高温で行われる)セラミック化の熱処理の後に、ナノスケールでの、表面における層のリンクル化(ひだ化)がもたらされ、また、基材が表面においてリンクル化し、表面が、視覚的にその外観の変化を起こし(コーティングされた表面が、コーティングされていない場合又はセラミック化の後で再コーティングされた場合と比較して、比較的マットになり、かつ、特には反射においてサテン金属外観を示す。サテン外観は、マットと光沢との間の中間である)、かつ、新規の予想しなかった技術的な利点、例えば、クリーニングの大幅な容易性を、示す。
【0016】
以下で述べるように、上述の層の上方又は下方に、層のスタック又は他の層を用いることも可能であり、この場合には、コーティング全体が、有利にはナノリンクル化される。セラミック化の後に得られる本発明に係る製品は、(基材の事前処理及び/又は接着促進材、結合層、若しくはプライマーの使用を必要とすることなく)ナノリンクル層又はナノリンクルコーティングの、ガラスセラミック基材への、又は、基材に存在しうる任意の隣接する層への、良好な接着を示す。この層又はコーティングは、特に、(例えば約600℃での)熱ショックの後でもいかなる剥離も示さず、高温に対して抵抗性を有する。この層又はコーティングは、また、良好な耐傷性を有し、(例えばエナメルとは異なり)ガラスセラミック基材を機械的に脆化しない。
【0017】
したがって、本発明は、所望の場所に(例えば、1つの面の全体に、又はわずかに数カ所の領域に、例えば、取扱い又は汚れにさらされることが比較的多い領域に、例えば、制御若しくは表示領域又は加熱領域等に)ナノリンクル化されている表面を有するガラスセラミック製品を開発することを可能にし、この製品は、上記で規定した方法によって得ることができ、かつ、種々の利点、例えば、ナノリンクル化されている1若しくは複数の領域又は1若しくは複数の表面への食品の接着を比較的少なくすることを可能にするという利点、及び、上述のようにクリーニングが大幅に容易であるという利点を有し、一方で同時に、この製品は、種々の使用(特には、料理用ホブとしての使用)に要求される硬性及び機械手強度を保持している。さらには、ナノリンクル層又はナノリンクルコーティングは、対象としている1又は複数の領域におけるガラスセラミックの光透過性に悪影響を及ぼさず、一方で、ユーザーへのぎらつきを防止する光散乱を可能にし、かつ、独特なサテン様の美的外観を有する。このナノリンクル化は、また、予想外に、特には下記で特定されるようにしてナノリンクル層の厚み及び組成を調節することによって、(他のタイプの層とは異なり)追加的な染料若しくは顔料又はフィルターを必要とすることなく、反射における異なるタイプの色を得ることを可能にする。
【0018】
したがって、本発明に係る解決策は、簡便かつ経済的な方法で、複雑な操作なく(層は、下記に示すように、低圧力堆積技術、例えばカソードスパッタリングによって堆積することができる)、耐久性がありかつ高度に柔軟な態様で、製品の任意の所望の領域に機能的かつ美的な領域を得ることを可能にし、たとえこれらの領域が高温にさらされることが意図されている場合であっても、これを可能にする。特には、本発明に係る物品は、種々のタイプの加熱器の使用と適合的である良好な耐熱性を有しており、かつ、上述のように、維持、傷、又は摩擦の問題を生じない。特に、本発明に係る製品は、400℃以上の温度において熱的な劣化を生じない。400℃以上の温度は、特に料理用ホブとしての使用などの用途において、到達し得る温度である。
【0019】
上述のように、本発明に係る物品は、基材を有し、この基材が、少なくとも部分的に(すなわち、この基材の少なくとも1つの領域の中又は上において、少なくとも1つの面又はさらには複数の面において)、ナノリンクル化されている少なくとも1つの層、又はナノリンクル化されている少なくとも1つの層の形態のコーティングを、提供されており(若しくはこれらを備えており)、又はこの層若しくはこのコーティングでコーティングされている。この、本件ではナノリンクルと呼ばれるテクスチャは、所望の領域において基材の表面に位置しており、上述の利点を達成し、かつ、基材それ自体において(その表面層において)観察されると同時に、このナノリンクル化を生み出したであろうコーティングにおいても、観察される。このテクスチャは、特定の振幅及び周期性で、ひだの形態のへこみ及び隆起を交互に有し、このリンクルは、一般に(好ましくは所望の効果を得るために)、多方向性であり、形成されるひだが、基材の表面に平行に複数の方向に延在し、下記で
図2a、
図2b、及び
図2cにおいて説明されるように、等方向性のテクスチャ又は構造を形成する。このテクスチャは、ガラスセラミック基材の表面層に反映されており、母体ガラスの表面におけるすべての初期の微細な粗さと置き換わる。このようにして、このテクスチャは、このナノリンクル層が提供されている基材の領域(又は複数の領域)において、5μm未満の振幅の粗さのみを構成する(このテクスチャを備えていない他の領域がある場合には、この他の領域は、必要であれば、他のテクスチャ又は重ねられたテクスチャを有することができる)。
【0020】
このテクスチャ又はナノリンクルのプロファイル又は形態的外観は、一般に、準周期的な曲線に類似しており、これは、下記で定義される特定の制約内で、コーティング層の厚み、その性質、及び、用いられる製造方法の間における温度、プロセス時間、又は適用される応力に応じて、変化しうる。例えば、上述のように、本発明に従って規定される方法は、通常は等方性であるテクスチャを形成する収縮を提供するが、セラミック化又は冷却段階の間に基材が十分に軟性である場合には、基材に異方性の変形又は応力を適用することによって、例えば、冷却と同時に一方向性のけん引を適用することによって、ひだの方向を制御することもできる。したがって、結果として得られるナノリンクルは、単一の方向又は主要な方向にあってよく(一方向ナノリンクルであってよく)、かつ/又は、必要な場合には、異方性であってよい。また、コーティング層の厚み及びその性質も、ひだの形態に影響を及ぼし、特には、その周期及び振幅、並びに(特に、コーティングを備えている領域の反射強度L*に依存する)コーティングの色に、影響を及ぼす。
【0021】
本発明に係るナノリンクルは、下記において
図2a、
図2b、及び
図2cで説明されるように、しわ、又は起伏、又は波立ち、又はひだの形態であり、特には、実質的に丸みを帯びており(準)周期的でありある程度曲がりくねっておりかつ一般に多方向性である頂点を有しており、実質的に一定の幅の隆起及びへこみ並びに振幅を有している。
【0022】
ナノリンクル層、又は、この層のひだ若しくはナノリンクルコーティングのひだは、有利には、10nm~40000nm、好ましくは100nm~10000nm、特には500nm~8500nm、特には500nm超かつ8000nm以下、又は6000nm未満、又は5000nm未満である準周期的なステップ又は間隔(2つの連続している頂点若しくは隆起の最高点の間の、又は2つの連続しているくぼみの最低点の間の、平均距離、すなわち算術平均)を有しており、5μm未満、より正確には2μm未満、特には1μm以下、好ましくは1μm未満、特には4nmと900nmの間、好ましくは50nmと850nmの間の、振幅を有する。周期及びひだの計測及び分析は、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)又は光学的プロフィロメトリー(例えば、商品名DektakでBrukerにより市販されているスタイラスプロフィロメーター)によって、特には、80μm×80μmの分析表面において、例えば1024の計測点で、行われる。
【0023】
有利には、周期の振幅に対する比(すなわち、ナノメートルで表される、周期の、振幅に対する比、又は、振幅との関係における周期)が、4と20の間、好ましくは5と15の間、特には8と14の間、特には約10~約12である。
【0024】
有利には、ナノリンクル層が、コーティング層であり、すなわち、ナノリンクル層が基材の表面層である場合(基材が、この層によって「コーティング」されているのではなく、この層を「備えて」いる場合)(下記で説明する場合)とは反対に、基材が、(関係する領域においてその表面において)上述の層でコーティングされており、特には、ナノリンクル層が、セラミック化の前に適用されセラミック化の間にリンクル化(ひだ化)をもたらした層又はコーティングの層であり、この層又はコーティングは、随意に、その後に、1又は複数のさらなる層によって覆われ、そのようにして、最終的なコーティングに関するナノリンクルプロファイルが保持されるようにしてよい。このナノリンクル層は、有利には、方法において既に見たように、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、及び亜鉛のうちの1又は複数の窒化物及び/又は酸化物及び/又は炭化物及び/又は合金の群から選択される材料でできている。好ましくは、層の材料は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、及び亜鉛のうちの1又は複数の元素の窒化物及び/又は酸化物の群から選択され、特には、Si3N4、SiO2、TiO2、ZnO、SnZnO、又はSnO2であり、特に好ましくは、この材料が、ケイ素窒化物(Si3N4)又はケイ素酸化物(SiO2)であり、より特にはケイ素窒化物である。
【0025】
基材をコーティングしているナノリンクル層は、最も単純かつ一般的には、上述の材料から選択される材料の単一の層(単層)の形態であるが、それぞれが上述の材料から選択される(準)層(全ての準層が、層を形成しており、かつナノリンクル化されている)のスタックから形成されるナノリンクル層を有していることもでき、又は、本発明に係る上述のナノリンクル層が、それ自体、層のスタック(上述の材料とは異なる材料の他の層を含んでいてもよいスタック)の一部であってよく、全体として、最終的なコーティングを形成し、それ自体が有利にはナノリンクル化されている。
【0026】
ナノリンクルコーティングの厚みは、上述の層で形成されている場合(必要な場合には、準層のスタックで形成されている場合)であっても、又は複数の層で形成されている場合であっても、一般に、20nmと2000nmとの間であり、50nm以上かつ300nm以下、特には200nm以下であってよく、上述の材料から選択される材料でできている層が、それぞれ、特には約20nm~約200nmの厚みを有する薄フィルムタイプの層である。
【0027】
好ましくは、セラミック化の前に堆積されかつセラミック化の間にリンクル化(ひだ化)をもたらしたナノリンクル層の厚みと、このナノリンクル層の1又は複数の振幅との間の比(すなわち、ナノメートルで表される、厚みの、振幅に対する比)が、0.15と0.30との間であり、好ましくは、0.20と0.28との間であり、特には、0.21と0.27との間である。
【0028】
本発明に係る基材は、また、本発明に係る他の非ナノリンクル層でコーティングされていてもよく、この非ナノリンクル層は、例えばセラミック化の後で堆積され、機能的かつ/又は装飾的な効果を有しており、かつ、特にはナノリンクル化されている領域以外の領域に堆積され、例えば、1又は複数のナノリンクル部分とは異なる基材の別の部分における通常のエナメル系パターン又はペイント層である。
【0029】
本発明の方法に係るナノリンクル化のために用いられるコーティング層を、後に、化学的エッチング又はレーザー除去によって取り除き、ガラスセラミック基材自体の表面層をナノリンクル層として残してもよく、これも、クリーニングの観点から、有利である。
【0030】
基材の表面層のリンクル(ひだ)は、ナノリンクル又はナノリンクル層若しくはナノリンクルコーティングに、一致している。リンクルは、ガラスセラミックと、ナノリンクル層又はナノリンクルコーティング若しくはナノリンクル層との間の(非常に良好な)接着を壊さず、結果として得られるナノリンクル又はナノリンクルコーティング若しくはナノリンクル層は、気泡を有しない。
【0031】
上述のように、ナノリンクルは、本発明に係る方法で示されている手順によって、特にかつ有利に、得られる。すなわち、上述の材料から選択される材料の少なくとも1つの層を、セラミック化によってガラスセラミック基材をもたらす母体ガラス基材の少なくとも一部に適用し、そして、このようにしてコーティングされたガラス基材を、セラミック化する。
【0032】
念のため記載すると、ガラスセラミックホブの製造は、一般に、下記のようにして行われる:溶融炉において、選択された組成のガラスを溶融して、ガラスセラミックを形成し、そして、ラミネートローラーの間に溶融ガラスを通過させることによって、溶融ガラスを、標準的なリボン又はシートへとラミネート化し、かつ、ガラスリボンを、所望の寸法に切断する。そして、このようにして切断されたプレートを、それ自体知られている方法でセラミック化する;セラミック化は、選択された熱プロファイルに従ってプレートを焼成し、それによって、ガラスを、熱膨張係数がゼロ又は実質的にゼロでありかつ特には700℃にまで達しうる熱ショックに耐える「ガラスセラミック」と呼ばれる多結晶質材料に変換することを、含む。一般に、セラミック化は、一般的にはガラスの転移範囲近傍である、核生成範囲にまで温度を徐々に上昇させる工程、数分(例えば5分と60分との間)で核生成範囲(例えば、650℃と830℃との間)を超える工程、さらに温度を上げて、結晶の成長を可能にすること(例えば850℃~1000℃の範囲におけるセラミック化;セラミック化段階の温度は、数分(例えば5分~30分)にわたって維持される)、そして、室温にまで急速に冷却すること、を含む。
【0033】
上述の材料から選択される材料の層(又は必要な場合にはそれぞれの層)の、母体ガラスへのセラミック化前の適用又は堆積は、特には平坦又は均一なこのタイプの層を形成することが可能な任意の適切かつ迅速な技術によって行うことができ、特には、特にはマグネトロンによって支援される、低圧下での堆積方法、例えば、カソードスパッタリングによって、又は、化学気相堆積(CVD)によって、必要であればプラズマエンハンスト化学気相堆積(PECVD)によって、行うことができる。適用は、好ましくは、カソードスパッタリング、特にはマグネトロンで支援されたカソードスパッタリングによって、行われる。
【0034】
そして、コーティングされた基材を、通常は数十分の期間にわたって、上述のようにして、(850~1000℃までの温度における)セラミック化熱処理に供する。高温セラミック化工程の間に、ガラス基材は、その粘性を低下させ、ガラスの密度が高まり(ガラスマトリックスの結晶化)、かつ、(応力が適用されない場合には、通常は等方性である)体積の減少又は収縮、特には約1.5%の堆積の減少又は収縮を経る。基材の収縮は、基材ガラスのガラス転移温度超の温度までの温度上昇、及びその後の基材の冷却、並びに、基材ガラスの熱収縮とコーティング層の熱収縮の差異から生じ、層及びガラス表面が、ひだ状になり又はしわ状になる。ひだ化(リンクル化)は、ガラスセラミックと薄層との間の接着を破壊せず、かつ、この方法は、気泡を生じない。
【0035】
この方法によって、コーティングされた領域のナノスケールのリンクル化が、潜在的には広い範囲にわたって、容易に達成される。コーティングされた領域の表面は、サテン様になり、かつ拡散性となり、かつ、触り心地が良好となる。ナノリンクルは、必要な場合には、元のガラス表面の任意の微細な粗さと置き換わることができる。
【0036】
必要な場合には、この方法は、(一般にセラミック化の前における)切断操作、例えば、ウォータージェット、機械的ホイールトレーシング等による切断操作を含むことができ、その後に続く(研磨、面取りなどの)成形操作を含むことができる。
【0037】
ナノリンクル層又はナノリンクルコーティングは、基材の一部のみを覆うことができ、又は、1つの面のすべてを覆うことができ、例えば、特にクリーニングを受けやすい、使用の位置における上方面を覆うことができ、又は、基材の下方面のすべて若しくは一部を覆うこともできる。
【0038】
好ましくは、基材(又は、本発明に係る物品が基材のみから形成される場合には、本発明に係る物品)は、プレートであり、特には、少なくとも1つの光源及び/又は加熱要素とともに使用すること、特にはこれらを覆うこと又は受け取ること、が意図されている、プレートである。この基材(又はこのプレート)は、一般には、幾何学的に成形されており、特には、四角形、又はさらには正方形、又はさらには円形若しくは楕円形等であり、かつ、一般に、使用の位置における(可視的な面、又はユーザーに向いている面である)「上方」面、又は「外側」面を、有しており、使用の位置における(一般に、例えば備品の枠又は箱に隠されている、)別の「下方」面又は「内側」面、及び、スライス(又は端部又は厚み)を、有する。上方面は、一般に、平坦且つ平滑であるが、少なくとも1つの隆起している領域、及び/又は、少なくとも1つのくぼんでいる領域、及び/又は少なくとも1つの開口部、及び/又は少なくとも1つの面取りされた端部を有していることもできる(これらの形状は、基材の製造の間に、例えば、ローリング若しくは折り畳み若しくは押圧等によって追加され、又は、再加工によって、追加される)。このような形状におけるバリエーションは、有利には、(材料又は付属品の変更なしに)プレートの連続的なバリエーションを構成する。下方面も、平坦かつ平滑であってよく、又は、ピンを備えていてもよい。
【0039】
ガラスセラミック基材の厚みは、一般に、少なくとも2mm、特には少なくとも2.5mmであり、有利には、15mm未満であり、特には、約3mm~15mmの間、特には約3mm~8mm、又は約3mm~6mmである。基材は、好ましくは、平坦又は準平坦なプレート(特には、プレートの対角線方向の0.1%未満、好ましくは約0のたわみを有するプレート)である。
【0040】
基材は、任意のガラスセラミックに基づいていてよく、この基材は、有利には、ゼロ又は実質的にゼロのCTEを有し、特には(絶対値で)20℃と700℃との間での30×10-7K-1未満、特には20℃と700℃との間での15×10-7K-1未満、又はさらには5×10-7K-1未満のCTEを有する。
【0041】
好ましくは、基材は、暗色の外観を有して使用され、低透過性及び低拡散性を有し、特には、内在的な様式で、0.8%~40%、特には0.8%~5%、特には0.8%~2%の範囲の光透過率、及び、可視範囲に含まれる625nmの波長に関して少なくとも2.5%の(所与の波長において、透過強度と入射強度との間の比をとることによって既知の方法で決定される)光学的透過率を有する、任意のガラスセラミックに基づいている。「内在的に」は、プレートが、いかなるコーティングの存在もなく、それ自体としてこのような透過率を有していることを、意味している。特に、黒色又はブラウン色の外観を有する基材が使用され、これは、下に配置される光源との組み合わせにおいて、下方にある任意の要素を隠しつつ、照明領域又は装飾を表示することを可能にする。これは、特には、残存ガラス相の中にβ水晶構造の結晶を有する黒色ガラスセラミックに基づいていてよく、その膨張係数の絶対値が、有利には、15×10-7K-1以下、又はさらには5×10-7K-1以下であり、例えば、EurokeraによってKerablack+の名称で市販されているプレートのガラスセラミックであってよい。特には、欧州特許出願公開第0437228号明細書又は米国特許出願第5070045号明細書又は仏国特許出願第2657079号明細書に記載の組成のヒ素で精製されたガラスセラミックであってよく、又は、例えば国際公開第2012/156444号に記載されている組成の、0.2%未満の酸化ヒ素を含有する、スズで精製されたガラスセラミック、又は、国際公開第2008053110号に記載されている1又は複数の硫化物で精製されているガラスセラミックであってよい。
【0042】
代替的には、透明基材を用いることができ、これは、必要な場合には、不透明化コーティングで、例えばEurokeraによってKeralite(商標)の名称で市販されているシートで、通常はその下方面が、コーティングされている。
【0043】
ナノリンクル層又はナノリンクルコーティングを備えた、(好ましくは外観が暗色であり、又は不透明な透過性であってよい)上述の基材は、特には、0%と10%との間の光透過率LT、8%と20%との間の光反射率を有し、その拡散率が、90%超である。
【0044】
光学的な計測は、EN410に従って行われる。特には、光透過率LTは、EN410に従って、ルミナントD65を用いて計測され、かつ、(特には、可視範囲において統合され、かつ人間の目の感受性曲線によって重みづけされた)合計透過率であり、直接の及び可能性のある拡散透過率が、考慮される。計測は、例えば、統合球を備えるスペクトロフォトメーターを用いて(特には、Lambda950の名称の下でPerkin Elmerによって市販されているスペクトロフォトメーターによって)行われる。光反射も、スペクトロフォトメーター(例えば、Lambda950の名称の下でPerkin Elmerによって市販されているスペクトロフォトメーター)によって、合計反射モードで、計測される。光散乱度は、ルミナントD65を用いて、拡散透過率の、合計透過率に対する比として定義され、これもまた、例えば、光透過率及び光反射の計測に用いられる統合球を有するスペクトロフォトメーターによって、評価される。
【0045】
上述のように、上記の層以外の他のタイプのコーティングの、基材における存在は、排除されず、特に、他の機能層(傷抵抗性層、オーバーフロー防止層、不透明化層、など)、又は、追加的な、特には局所的な、装飾(例えば、単純なパターン又はロゴを形成するための、上方側におけるエナメル)の、基材における存在は、排除されない。
【0046】
本発明に係る物品は、基材に関連して、又は基材と組み合わせて、一般的には基材の下に配置される、1若しくは複数の光源、及び/若しくは1若しくは複数の加熱要素(又は、例えば、1若しくは複数の放射型若しくはハロゲン要素、及び/若しくは、1若しくは複数の周囲雰囲気ガスバーナー及び/若しくは1若しくは複数の誘導加熱要素)を、さらに有してよい。
【0047】
1又は複数の発生源は、1又は複数の、ディスプレータイプの構造(例えば、7セグメントLED)、タッチ感受性ボタン及びデジタルディスプレーを有するエレクトロニクス制御パネルなどに、統合されてよく、かつ/又は、これらに結合してよい。光源は、有利には、ある程度の距離を空けて配置されている発光ダイオードによって形成されてよく、発光ダイオートは、1又は複数の光学的ガイドに関連付けられていてよい。
【0048】
物品は、随意に、光源と組み合わせて、物品の1つの部分から別の部分に(特には全内部反射によって、若しくは金属反射によって)光を伝搬するための少なくとも1つの導波器、1若しくは複数のガイドと協調して作動しかつ例えば関連する1若しくは複数のガイドの端部に結合されておりかつ/若しくは当該端部を介して照射する1若しくは複数の光源、及び/又は、一般的には1又は複数の光源と基材との間で、基材の下方にある、1若しくは複数のフィルターを、有することができる。
【0049】
本発明に係る物品は、特には、例えば、機能的若しくは装飾的な特徴を有するディスプレー若しくは少なくとも1つの照明領域、及び/若しくは加熱要素を有する、料理用ホブ又は任意のガラスセラミック物品であってよく、例えば、ガラスセラミック作業台若しくはセントラルアイランドであってよく、又はさらには、(例えば基材が上部を形成している)コンソールタイプの家具、などであってよい。その最も一般的な用途において、本発明に係る物品は、料理用ホブとして使用されることが意図されており、このホブは、一般に、コンロ上面又はレンジに組み込まれることが意図されており、コンロ上面又はレンジもまた、加熱要素、例えば、放射若しくはハロゲンバーナー又は誘導加熱要素を有している。別の有利な用途では、本発明に係る物品が、異なるディスプレーを有する作業台であり、必ずしも料理領域ではない。
【0050】
物品は、また、追加的な1又は複数の機能要素(フレーム、1又は複数のコネクタ、1又は複数のケーブル、1又は複数の制御要素、など)を備えていてもよい(又は、これらに関連付けられていてよい)。
【0051】
添付の非制限的な図面は、本発明を説明する役割を有する。
【0052】
図1bは、本発明に係る物品、又は物品の部分であり、この物品は、ガラスセラミック基材1を有しており、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、及び亜鉛から選択される1又は複数の元素の窒化物及び/又は酸化物及び/又は炭化物及び/又は合金から選択される材料のナノリンクル層2でコーティングされている;交互のくぼみ3及び隆起4によって形成されているナノリンクル層は、5μm未満、より正確には2μm未満、特には1μm以下、好ましくは1μm未満、特には4nmと900nmとの間、好ましくは50nmと850nmの間の、振幅aを有しており、10nmと40000nmとの間、好ましくは100nmと10000nmとの間、特には500nmと8500nmとの間の周期pを有しており、かつ、約20nm~約200nmの(層の表面全体にわたって均一な)厚みeを有する。ナノリンクルは、コーティング層の厚みにおいて再現されており、かつ、ガラスセラミック基材の、リンクル(ひだ)の振幅に対応する一定の深さにわたって、再現されている;基材の、コーティングを保持している面1a、及び、コーティング層2が、互いに緊密に統合されており、そのようにして、同一のプロファイルを有する単一アセンブリを形成している。
【0053】
この基材は、選択された領域において層2´でコーティングされた母体ガラス基材1´(
図1a)のセラミック化によって、得られる。層2´は、例えばカソードスパッタリング、特にはマグネトロン支援スパッタリングによって堆積された、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、及び亜鉛のうちの1又は複数の元素の窒化物及び/又は酸化物及び/又は炭化物及び/又は合金の群から選択される材料の、平坦形状の層である。この層は、セラミック化の後に得られるナノリンクル層と同一の厚みを有する。
【0054】
(
図1bにおいて簡略化された断面で示されている)ナノリンクル層は、一般に、等方性であり、準周期的である。コーティング層の厚みを変更することによって本発明に従って形成された3つの異なる例示的な製品において得られたナノリンクル表面2a、2b、2cの光学顕微鏡像を、示す;厚みは、
図2aの場合には、50nmであり、
図2bの場合には、100nmであり、
図2cの場合には、200nmである。堆積された層は、ケイ素窒化物層であり、ガラスセラミック基材は、EurokeraによってKeraBlack+又はKeraVisionの名称で市販されている、半透明の黒色ガラスセラミックであり、このプレートは、平滑な上方面及び平滑な下方面、並びに4mmの厚みを有する。
【0055】
得られたナノリンクル表面は、大部分が、伸長された、多かれ少なかれ曲がりくねったひだ(リンクル)の形状であり、それぞれ、実質的に一定の幅を有しており、(複数の方向で)多方向性であり、かつ、実際上、等方性である。2つのひだの間の周期(準周期)は、それぞれ、50nm厚の層に関して2000nmであり、100nm厚の層に関して5000nmであり、かつ、200nm厚の層に関して8000nmである。振幅は、それぞれ、50nm厚の層に関して185nmであり、100nm厚の層に関して450nmであり、かつ、200nm厚の層に関して、800nmである。周期と振幅との間の比(周期対振幅)は、それぞれ、50nm厚の層に関して10.81であり、100nm厚の層に関して11.11であり、かつ、200nm厚の層に関して10である。厚みと振幅との間の比(厚み対振幅)は、それぞれ、50nm厚の層に関して0.27であり、100nm厚の層に関して0.22であり、200nm厚の層に関して0.25である。
【0056】
基材及び得られたナノリンクル層は、620℃の熱ショック後に剥離を示さず、かつ、580℃で100時間の後に、外観の劣化を示さなかった。
【0057】
基材及び得られたナノリンクル層は、また、200℃で20分間にわたって炭化されたトマトペーストをクリーニングする際の向上した容易性を示した。ナノリンクルを備えた基材の表面を完全に清浄化するために、水に浸された(擦り表面を有しない)慣用的な黄色のスポンジで5回未満の往復のふき取りが必要であった。
【0058】
コーティングは、クリーニングの間における傷の形成を低減することも見いだされた。テストの対象とした厚み(本例示における50、100、及び200nm)のコーティングでコーティングされた種々の基材に関して得られた光透過率は、約1%であり、光反射率は、8%と20%との間であり、光散乱度は、それぞれ、90%超であった。
【0059】
比較として、同一のテストを、ナノリンクルコーティングを有しない同一のガラスセラミックプレートで実行した。200℃で20分間にわたって炭化されたトマトペーストをクリーニングするテストでは、表面を完全に清浄化するために、上述の同一の水含侵スポンジで、30回超の往復のふき取りが必要であった。さらに、表面は、比較的多くの可視的な傷を有していた。さらに、約1%の光透過率、5%未満の光反射率、及び5%未満の光散乱度が、このプレートに関して得られた。
【0060】
比較として、同一のテストを、同一のガラスセラミックプレートで、ただしこの場合には200nm厚のケイ素窒化物層でコーティングし、かつセラミック化後に堆積して(したがってナノリンクル化せずに)、行った。200℃で20分間にわたって炭化されたトマト濃縮物を清浄化するテストでは、表面を完全に清浄化するために、上述の同一の水含侵スポンジで、30回超の往復のふき取りが必要であった。また、約1%の光透過率、約20%の光反射率、5%未満の光散乱度が、このプレートに関して得られた。
【0061】
本発明に係る物品、特にプレートは、特には、コンロ上面若しくはレンジのための新規の料理用ホブ、又は、新規の、作業テーブル、コンソール、サイドボード、セントラルアイランドなどを作製するために、有利に使用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
本発明に係る物品、特にプレートは、特には、コンロ上面若しくはレンジのための新規の料理用ホブ、又は、新規の、作業テーブル、コンソール、サイドボード、セントラルアイランドなどを作製するために、有利に使用することができる。
本開示に係る発明は、下記の態様を含む:
<態様1>
特には少なくとも1つの光源及び/又は少なくとも1つの加熱要素とともに使用されることが意図されている、ガラスセラミック物品であり、
前記物品が、少なくとも1つの、ガラスセラミックでできている、基材、例えばプレート、を有しており、
前記基材が、少なくとも部分的に、少なくとも1つのナノリンクル層を備えており、特には、少なくとも1つのナノリンクル層でコーティングされている、
ガラスセラミック物品。
<態様2>
前記ナノリンクル層が、周期と振幅との間の比が4と20との間、好ましくは5と15との間、特には8と14との間になるような、周期及び振幅を有している、態様1に記載のガラスセラミック物品。
<態様3>
前記ナノリンクル層が、10nmと40000nmとの間、好ましくは100nmと10000nmとの間、特には500nmと8500nmとの間の周期を有していることを特徴とする、態様1又は2に記載のガラスセラミック物品。
<態様4>
前記ナノリンクル層が、5μm未満、より正確には2μm未満、特には1μm以下、好ましくは1μm未満、特には4nmと900nmとの間、好ましくは50nmと850nmとの間の振幅を有することを特徴とする、態様1~3のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
<態様5>
前記ナノリンクル層が、等方性であることを特徴とする、態様1~4のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
<態様6>
前記ナノリンクル層が、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、及び亜鉛のうちの1又は複数の元素の窒化物及び/又は酸化物及び/又は炭化物及び/又は合金の群から選択される材料のコーティング層であることを特徴とする、態様1~5のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
<態様7>
前記ナノリンクルコーティングの厚みが、20nmと2000nmとの間、好ましくは、50nm以上であり、かつ300nm以下、特には200nm以下であることを特徴とする、態様1~6のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
<態様8>
前記ナノリンクル層が、前記ガラスセラミック基材を形成するためのガラス基材のセラミック化の前に堆積された層であり、この層が、前記ガラス基材の前記ガラスセラミック基材へのセラミック化の間にリンクル化をもたらしたことを特徴とする、態様1~7のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
<態様9>
前記ナノリンクル層の厚みと前記層の振幅との間の比が、0.15と0.30との間、好ましくは0.20と0.28との間、特には0.21と0.27との間であることを特徴とする、態様8に記載のガラスセラミック物品。
<態様10>
前記ナノリンクル層が、前記ガラスセラミック基材それ自体の表面層であることを特徴とする、態様1~9のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
<態様11>
前記物品又は前記基材が、料理用ホブ又は作業台であることを特徴とする、態様1~10のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
<態様12>
ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、及び亜鉛のうちの1又は複数の元素の窒化物及び/又は酸化物及び/又は炭化物及び/又は合金の群から選択される材料の少なくとも1つの層を、ガラス基材の少なくとも一部に適用し、そして、
このようにしてコーティングされた前記ガラス基材をセラミック化する、
態様1~11のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品を製造する方法。
<態様13>
前記層を、後に、例えば化学エッチング又はレーザー除去によって、除去することを特徴とする、態様12に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの光源及び/又は少なくとも1つの加熱要素とともに使用されることが意図されている、ガラスセラミック物品であり、
前記物品が、少なくとも1つの、ガラスセラミックでできている、基材、例えばプレート、を有しており、
前記基材が、少なくとも部分的に、少なくとも1つのナノリンクル層を備えており、
前記ナノリンクル層が、周期と振幅との間の比が8と14との間になるような、周期及び振幅を有しており、
前記ナノリンクル層が、10nmと40000nmとの間の周期を有しており、
前記ナノリンクル層が、4nmと900nmとの間の振幅を有しており、
前記ナノリンクル層の厚みと前記層の振幅との間の比が、0.15と0.30との間である、
ガラスセラミック物品。
【請求項2】
前記ナノリンクル層が、500nmと8500nmとの間の周期を有していることを特徴とする、請求項1に記載のガラスセラミック物品。
【請求項3】
前記ナノリンクル層が、50nmと850nmとの間の振幅を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のガラスセラミック物品。
【請求項4】
前記ナノリンクル層が、等方性であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項5】
前記ナノリンクル層が、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、及び亜鉛のうちの1又は複数の元素の窒化物及び/又は酸化物及び/又は炭化物及び/又は合金の群から選択される材料のコーティング層であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項6】
前記ナノリンクル層が、コーティング層であり、前記ナノリンクルコーティングの厚みが、20nmと2000nmとの間、好ましくは、50nm以上であり、かつ300nm以下、特には200nm以下であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項7】
前記ナノリンクル層が、前記ガラスセラミック基材それ自体の表面層であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項8】
前記物品又は前記基材が、料理用ホブ又は作業台であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項9】
ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、及び亜鉛のうちの1又は複数の元素の窒化物及び/又は酸化物及び/又は炭化物及び/又は合金の群から選択される材料の少なくとも1つの層を、ガラス基材の少なくとも一部に適用し、そして、
このようにしてコーティングされた前記ガラス基材をセラミック化する、
請求項1~8のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品を製造する方法。
【請求項10】
前記層を、後に、例えば化学エッチング又はレーザー除去によって、除去することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~6及び8のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品の製造方法であって、前記ナノリンクル層が、コーティング層であり、前記ガラスセラミック基材を形成するためのガラス基材のセラミック化の前に層を堆積し、この層が、前記ガラス基材の前記ガラスセラミック基材へのセラミック化の間にリンクル化をもたらすことを特徴とする、
方法。
【請求項12】
前記ナノリンクル層の厚みと前記層の振幅との間の比が、0.15と0.30との間、好ましくは0.20と0.28との間、特には0.21と0.27との間であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【外国語明細書】