IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中田 秀輝の特許一覧

<>
  • 特開-殺菌装置 図1
  • 特開-殺菌装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010497
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
A61L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021133692
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】517088218
【氏名又は名称】中田 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】中田 秀輝
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH05
4C180HH17
4C180HH19
4C180KK05
4C180LL11
4C180LL20
(57)【要約】
【課題】ウイルス、細菌、真菌、飛沫等を含んだ空気を圧縮してから紫外線を照射して殺菌することで、大量の空気を殺菌できる小型な殺菌装置を提供する。
【解決手段】空気を吸入する吸入口と、圧縮した空気を通風する圧縮通風筒と、圧縮通風筒内に配置され、ウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線を発光する発光体と、圧縮通風筒内を通過した空気を排出する排出口と、圧縮通風筒に送風するための圧縮送風手段と、圧縮通風筒と排出口との間に配置され圧縮通風筒の内部の圧縮空気の排出量を制限する排出量制御部を備え、圧縮通風筒内部の空気の気圧を上げた状態で、圧縮通風筒内の空気に紫外線を照射することで空気中のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する殺菌装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を吸入する吸入口と、圧縮した空気を通風する圧縮通風筒と、前記圧縮通風筒内に配置され、ウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線を発光する発光体と、前記圧縮通風筒内を通過した空気を排出する排出口と、前記圧縮通風筒に送風するための圧縮送風手段と、前記圧縮通風筒と前記排出口との間に配置され前記圧縮通風筒の内部の圧縮空気の排出量を制限する排出量制御部とを備え、前記圧縮通風筒内部の空気の気圧を上げた状態で、圧縮通風筒内の空気に紫外線を照射することを特徴とする、空気中のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する殺菌装置。
【請求項2】
空気を吸入する吸入口と、圧縮した空気を通風又は/及び保持する圧縮空気保持容器と、前記圧縮空気保持容器の一部に設けた紫外線を透過する透過部と、
前記透過部を透過して、前記圧縮空気保持容器内の空気にウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線を照射する紫外線照射手段と、前記圧縮空気保持容器内の空気を排出する排出口と、前記圧縮空気保持容器に送風するための圧縮送風手段と、前記圧縮空気保持容器と前記排出口との間に配置され前記圧縮空気保持容器の内部の圧縮空気の排出量を制限する排出量制御手段を備え、前記圧縮空気保持容器内部の空気の気圧を上げた状態で、圧縮空気保持容器内の空気に紫外線を照射することを特徴とする、空気中のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する殺菌装置。
【請求項3】
前記排出量制御手段は、前記排出口を密閉し前記圧縮通風筒又は圧縮空気保持容器の内部の前記圧縮空気の排出を停止、または前記排出口より前記圧縮空気を一定量排出させる構成としたことを特徴とする請求項1、2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記吸入口と前記圧縮送風手段との間に位置し、前記圧縮空気の漏れを防止する吸入部密閉手段とを有したことを特徴とする請求項1~3に記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記排出量制御手段又は/及び吸入部密閉手段は、あらかじめ定められた時間またはタイミングでそれぞれの流量を変化させることを特徴とする請求項3~4に記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記圧縮通風筒、前記圧縮空気保持容器の内部の気圧を計測する圧力センサを配設したことを特徴とする請求項1~5に記載の殺菌装置。
【請求項7】
前記吸入口から吸入される風量、又は/及び圧縮送風手段から送風される風量を計測する風量センサを配設したことを特徴とする請求項1~6に記載の殺菌装置。
【請求項8】
前記圧縮送風手段はファンもしくはコンプレッサーであることを特徴とする請求項1~7に記載の殺菌装置。
【請求項9】
前記発光体は波長が250~280nmの光を含む紫外線を発光する殺菌灯、冷陰極UVランプ、LEDのいずれかであることを特徴とする請求項1、3~8記載の殺菌装置。
【請求項10】
前記紫外線照射手段は、波長が250~280nmの光を含む紫外線を発光する殺菌灯、冷陰極UVランプ、LEDのいずれかの発光体から発せられた紫外線を照射することを特徴とする請求項2~8記載の殺菌装置。
【請求項11】
前記圧縮通風筒、圧縮空気保持容器の内壁に紫外線を反射する機能を備えたことを特徴とする請求項1~10記載の殺菌装置。
【請求項12】
前記圧縮通風筒、圧縮空気保持容器から空気は出入りするが紫外線を外部に漏らさない構造を有する通風遮光板と、を備えたことを特徴とする請求項1~11記載の殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間に飛び散った飛沫や、空間中に浮遊するウイルス、細菌、真菌などを含んだ空気を吸引し、これらを不活化や殺菌したのちに再び空間に放出することで空気を殺菌する殺菌装置に関するものである。また、空間中の空気を吸入し容器等に貯め、この容器中に貯められた空気を不活化や殺菌したのちに、一気に空間へ放出する殺菌装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
空気を介して感染するウイルス、細菌や真菌による感染症は、空気中に浮遊する、ウイルス、細菌や真菌を人が吸い込むことにより感染が広がる。ウイルス、細菌や真菌は、感染した人の体液が飛沫として放出することで、空気中を浮遊する。このようなウイルス、細菌や真菌を含んだ飛沫を除去するために、HEPAフィルターなどを搭載した空気清浄機が利用されている(特許文献1)。また、次亜塩素酸を含んだ除菌フィルターに空気を通過させウイルス、細菌や真菌を不活化や殺菌する技術もある(特許文献2)。さらに、吸い込んだ空気に紫外線を照射して、ウイルス、細菌や真菌を不活化や殺菌する空気清浄機もある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-124914
【特許文献2】特開2016-202191
【特許文献3】特開2014-100206
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HEPAフィルターなどを搭載した従来の空気清浄機では、HEPAフィルターで一旦捕集したウイルス、細菌や真菌を含む飛沫が粉砕して再飛散することもある。
【0005】
紫外線を用いた空気清浄機では、ウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌できるだけの紫外線の量を照射するために、紫外線の強度および、紫外線を照射する時間を調整している。紫外線を照射する時間を確保するために、空気清浄機内へ吸い込んだ空気の速度を制限している。特に、紫外線耐性が大きいウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌するには、長い照射時間を確保する必要が有り、空気の速度を低下させざるを得ず、風量が低下するので、空間の浄化に時間を要する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る殺菌装置は、空気を吸入する吸入口と、圧縮した空気を通風する圧縮通風筒と、圧縮通風筒内に配置され、ウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線を発光する発光体と、圧縮通風筒内を通過した空気を排出する排出口と、圧縮通風筒に送風するための圧縮送風手段と、圧縮通風筒と排出口との間に配置され圧縮通風筒の内部の圧縮空気の排出量を制限する排出量制御部とを備え、圧縮通風筒内部の空気の気圧を上げた状態で、圧縮通風筒内の空気に紫外線を照射することで空気中のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する殺菌装置である。
【0007】
また、本開示の別の一態様に係る殺菌装置は、空気を吸入する吸入口と、圧縮した空気を通風又は/及び保持する圧縮空気保持容器と、圧縮空気保持容器の一部に設けた紫外線を透過する透過部と、透過部を透過して、圧縮空気保持容器内の空気にウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線を照射する紫外線照射手段と、圧縮空気保持容器内の空気を排出する排出口と、圧縮空気保持容器に送風するための圧縮送風手段と、圧縮空気保持容器と排出口との間に配置され圧縮空気保持容器の内部の圧縮空気の排出量を制限する排出量制御手段を備え、圧縮空気保持容器内部の空気の気圧を上げた状態で、圧縮空気保持容器内の空気に紫外線を照射する空気中のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する殺菌装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ウイルス、細菌、真菌、飛沫等を含んだ空気を圧縮してから紫外線を照射して殺菌することで、大量の空気を高速に殺菌できる小型な殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る殺菌装置の模式図である。
図2】実施形態2に係る殺菌装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
(本開示の概要)
【00010】
本開示の一態様に係る殺菌装置は、吸入した空気を圧縮し、その空気中のウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌する紫外線を照射することで、空気を殺菌する殺菌装置である。ウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌する紫外線としては、例えば波長が250~280nmの光を含む紫外線が好適である。
【00011】
上記の様な本開示用いる波長250~280nmの紫外線は、殺菌線とも呼ばれ、核酸に吸収される。この結果、核酸は変質し、ウイルス、細菌や真菌が不活性化、殺菌される。特に、波長が253.7nmの紫外線は殺菌線と呼ばれ、強い殺菌効果を持つ。
【00012】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は対応する構成部材には同一の参照符号を付して、その説明については省略する。また、紫外線を発光する深紫外線LED、殺菌ランプ、オゾンランプ、キセノンエキシマランプ、ファン、圧力センサへ電力を供給するためのコネクターや配線は図示しない。
【00013】
(実施形態1)
図1を参照して実施の形態1に係る殺菌装置について説明する。図1は、実施の形態1に係る殺菌装置の構成の一例を示した模式図である。
【00014】
1は空間の空気を吸入する吸入口、2は圧縮した空気を流す圧縮通風筒、3は発光体である。4は圧縮通風筒3を通過した空気を排出する排出口、5および6は圧縮通風筒から空気は出入りするが紫外線を外部に漏らさない構造を有する通風遮光板、7は吸入口1から吸入した空気を圧縮通風筒2に送風するためのファンやコンプレッサー等の圧縮送風手段、8は圧縮通風筒2と排出口4との間に配置され圧縮通風筒2の内部の圧縮された空気の排出量を制限する排出量制御部である。この排出量制御部8は、例えば図1に示した様に、排出口4と連結する側へ向けて内径を絞り、通風する断面積を制限して送風抵抗を増加させ排出量を制限する構成で実現する。
【00015】
なお、図1では、圧縮送風手段7と圧縮通風筒2が直接連結されているが、必ずしもその必要は無く、パイプやチューブを介して連結しても良い。また、図1では下方から吸入するように配置されているが、下方以外の方向、例えば側方から吸入しても良い。さらに、図1での矢印は空気の流れる方向を示す。
【00016】
次に、実施の形態1に係る殺菌装置の動作について説明する。
圧縮送風手段7が作動を開始すると、空間中の空気が、吸入口1を介して圧縮通風筒2へ送風され、排出口4から空間へ排出される。排出量が制限されず、圧縮送風手段7が送風する風量即ち吸入口1より吸入される風量と、排出口4から排出する風量が等しいままだと、圧縮通風筒2内の空気圧との空間の空気圧と差は発生しない。ここで、排出量制御部8の作用で送風抵抗を増加させると排出量が低下し、排出口4から排出される風量が、圧縮送風手段7が送風する風量を下回る。この結果、次第に圧縮通風筒2内の圧力が上昇し、圧縮通風筒2の内外の空気圧の差が発生する。この差は時間と共に上昇する。
【00017】
この圧縮通風筒2の内外の空気圧の差が上昇するのに伴って、排出口4からのから排出する風量が増加する。これと同時、圧縮送風手段7の風量-静圧特性(P-Qカーブ)に従い吸入口1から吸入する風量が低下する。そして、いずれ排出口4からのから排出する風量と吸入口1から吸入する風量が釣り合う。なお、上記した排出口4から排出する風量及び、圧縮送風手段7が送風する風量は、周囲の空間の気圧での風量である。即ち、周囲の空間の気圧が1気圧の場合、1気圧の体積の空気が時間当たりに流れる風量である。
上記した排出口4からのから排出する風量と吸入口1から吸入する風量が釣り合った状態を以下の式1で表す
【00018】
Q=s×v×((P+ΔP)/P)(式1)
【00019】
式1において、Qは排出口4から排出する風量(m/s)、sは圧縮通風筒2の通風部分の断面積(m)、vは圧縮通風筒2内の風速((m/s)、Pは空間の空気の圧力(atm)、ΔPは圧縮通風筒2内の空気圧との空間の空気圧と差(atm)である。ここで、Qは吸入口1から吸入する風量でもある。また、Qは気圧がPの際の風量であり、吸入口1に入る手前での風量であり、また、排出口4から出た直後の風量である。
なお、sは圧縮通風筒2の断面積から発光体3の断面積を引いた通風可能な面積で圧縮通風筒2内においては実質的に一様であり、vも圧縮通風筒2内においては実質的に一様である。
【00020】
s、Pを固定して、Q、v、ΔPの関係を式1に基づき説明する。
圧縮通風筒2の内外の圧力差が無くΔP=0の際は、Q=s×vとなる。
一方、圧縮通風筒2内の圧力が上昇し、例えばΔP=Pの場合は、Q=s×v×2となる。ここで、ΔP=0の時とΔP=Pの時においてもvを一定に維持した場合には、ΔP=Pの時のQは、ΔP=0の時のvの2倍になる。また、ΔP=0の時とΔP=Pの時においてもQを一定に維持した場合には、ΔP=Pの時のvは、ΔP=0の時のvの1/2になる。
【00021】
式1から明らかなように、Qはvに比例するが、その比例係数はΔPによって変化する。言い換えると、ΔPを制御することで、Qとvの比例係数を制御できる。このため、Qを一定にしてvを変化させたり、vを一定にしてQを変化させることができる
【00022】
圧縮通風筒2の内部には、波長が250~280nmの光を含む紫外線を発光する発光体3が設置されている。特に、殺菌線と呼ばれる強い殺菌効果を持つ253.7nmの紫外線を含むことが望ましい。例えば、深紫外線LED、または殺菌ランプとも呼ばれる低圧水銀ランプを発光体3として用いることが好適である。
この殺菌線のウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌する殺菌力は、殺菌線量(J)で表される。この殺菌線量(J)は殺菌線照度(W/m)と照射時間(s)の積になり、この関係を以下の式2にて表す
【00023】
D=E×t (式2)
【00024】
式2において、Dは殺菌線量(J)、Eは殺菌線照度(W/m)、tは照射時間(s)である。従って殺菌線照度が半分でも、照射時間を倍にすれば同じ殺菌線量(J)になるので、同じ殺菌効果が得られる。なお、ウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌するために必要な殺菌線量は、ウイルス、細菌や真菌の種類によって異なる。この必要な殺菌線量を確保できる様に、適切な殺菌線照度E及び照射時間tを設定する。
【00025】
図1においては、空気中に浮遊するウイルス、細菌や真菌は、吸入口1より吸入され、発光体3からの紫外線を照射される。この照射時間tは次の式3で表される。
【00026】
t=L/v (式3)
【00027】
式3において、tは式2のt、vは式1のvと同じで、Lはウイルス、細菌や真菌が空気の流れに乗って紫外線を照射されながら移動する長さで、圧縮通風筒2の通風区間の長さである。式3から明かな様に、照射時間tを大きくするには、Lを大きくするかvを小さくする必要がある。
【00028】
通常は、装置のサイズ、コストからの観点から、断面積s、殺菌線照度E、圧縮通風筒2の通風区間の長さであるLには、制約がある。これらを一定として、必要な紫外線量Dを実現するためには、風量vにも制約が生じる。風速vに制約ができると式1より殺菌できる風量Qにも制約ができるが、ΔPを大きくすることで、風量Qの制約を緩和することができる。言い換えると、装置のサイズ、コストが同様であっても、より大きな風量Qを実現できる。例えば、同じサイズの圧縮通風筒2即ちs、Lが同じ、及び同一の発光体3即ちEが同じ場合であっても、圧縮通風筒2内の圧力をΔP=Pになるまで上昇させると、同じ殺菌効果を得つつ、風量Qを2倍にできる。
【00029】
上記効果の発現理由は、以下の様にも説明できる。
殺菌線照度Eは、発光体3からの距離が大きくなると、低下するので、圧縮通風筒2の断面サイズを拡大して風量を増加させようとすると、発光体3から離れた領域を流れる空気に照射される殺菌線照度Eが不足する。一方、圧縮通風筒2の断面サイズをそのままにして、圧縮通風筒2の送風する空気を圧縮すれば発光体3からの距離は変わらないので、殺菌線照度Eが維持できる。この結果、殺菌効果を維持したまま風量を増加させることができる。
【00030】
また、同じサイズの圧縮通風筒2即ちs、Lが同じ、及び同一の発光体3即ちEが同じ場合であっても、圧縮通風筒2内の圧力をΔP=Pになるまで上昇させると、風量Qが同じなら風速vを1/2にできるので、2倍の殺菌効果を発揮することができる。
【00031】
以上の様に、本実施の形態1によれば、圧縮通風筒2内の空気を圧縮することで、より大きな風量やより大きな殺菌効果を発揮する殺菌装置を提供することができる。
【00032】
(実施形態2)
図2を参照して実施の形態2に係る殺菌装置について説明する。図2は、実施の形態2に係る殺菌装置の構成の一例を示した模式図である。
9は空気を吸入する吸入口、10は圧縮した空気を通風又は/及び保持する圧縮空気保持容器、11は圧縮空気保持容器10の一部に設けた紫外線を透過する石英等の材料からなる透過部、12は透過部11を透過して、圧縮空気保持容器10内の空気にウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線を照射する紫外線照射手段で、深紫外線LED等とレンズ等を組合わせて構成されている。
【00033】
13は圧縮空気保持容器10内の空気を排出する排出口、14は圧縮空気保持容器10に送風するためのコンプレッサー等からなる圧縮送風手段、15は圧縮空気保持容器10と排出口13との間に配置され圧縮空気保持容器10の内部の圧縮空気の排出量を制限する電磁バルブ等の排出量制御手段、16は圧縮空気保持容器10と圧縮送風手段14との間に位置し、圧縮空気保持容器10の内部の圧縮空気の漏れを防止する逆止弁等の吸入部密閉手段、17は圧縮空気保持容器10の内部の圧縮空気の気圧を計測する圧力センサである。
【00034】
圧縮空気保持容器10の内壁は、紫外線を反射する反射面からなり、紫外線照射手段12から照射された紫外線を圧縮空気保持容器10の内部で多重反射させることで、圧縮空気へ照射する殺菌線量を増強している。紫外線照射手段12は、波長が250~280nmの光を含む紫外線を、透過部11を介して圧縮空気保持容器10の内部へできるだけ多くの紫外線を照射できる様にレンズ等からなる光学系を設定している。
【00035】
次に、実施の形態2に係る殺菌装置の動作について説明する。
圧縮送風手段14が作動を開始すると、空間中の空気が、吸入口9を介して圧縮空気保持容器10へ送風される。ここで、排出口13から空間へ排出される排出量が制限されない状態では、圧縮送風手段14が送風する風量と、排出口13から排出する風量が等しく、圧縮空気保持容器10内の空気圧との空間の空気圧と差は発生しない。しかし、排出量制限手段15により、排出量が制限されると、実施の形態1と同様に圧縮空気保持容器10の内外に空気圧と差が発生する。この空気圧の差が有る状態で、実施の形態1と同様に吸入口9から吸入される風量と排出口14から排出される風量が釣り合った状態を生成することができ、実施の形態1と同様の効果が得ることもできる。
【00036】
上記の様な実施の形態1と同様な動作に加え、次の様に動作させることもできる。圧縮送風手段14が作動している状態で、排出量制限手段15により、排出を完全に停止させる。こうすると、圧縮空気保持容器10内の圧力が上昇し、この圧力の上昇に伴い圧縮送風手段14の風量-静圧特性(P-Qカーブ)に従い吸入口9から吸入する風量が低下する。そいて、いずれ吸入する風量がゼロになる。この状態での圧縮空気保持容器10内に保持されている空気量を次の式4で示す。
【00037】
Va=((P+ΔP)/P)×Vc (式4)
【00038】
式4において、Pは空間の空気の圧力(atm)、ΔPは圧縮空気保持容器10内の空気圧との空間の空気圧との差(atm)である。Vaは圧縮空気保持容器10内に保持されている空気が、空間の空気の圧力であるPになった際の体積(m)である。Vcは圧縮空気保持容器10の内部体積(m)である。例えば、ΔP=9×Pの場合は、Va=10×Vcとなり、圧縮空気保持容器10は、その内部体積の10倍の空気量を保持できる。
【00039】
圧縮空気保持容器10内の空気には、紫外線照射手段12により、波長が250~280nmの光を含む紫外線が照射されている。この殺菌線のウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌する殺菌力は、殺菌線量(J)は、式2で表される。即ち、殺菌力は殺菌線照度(W/m)と照射時間tの積になる。
圧縮空気保持容器10内に入射する殺菌線パワー(W)が一定の場合、圧縮空気保持容器10の内部体積が小さくなると、殺菌線照度(W/m)は、大きくなる。
【00040】
従って、同じ紫外線照射手段12を用いた場合、圧縮空気保持容器10の内部体積が小さい程、強い殺菌効果が得られる。または、より短時間で同じ殺菌効果が得られる。ただし、圧縮空気保持容器10の内部体積を小さくすると、殺菌できる空気量も小さくなる。
【00041】
そこで、本実施の形態では、圧縮空気保持容器10内の圧力を上げて殺菌できる空気量も拡大している。この効果は、圧縮空気保持容器10内の圧力を上げても、殺菌線照度(W/m)は変わらないが、圧縮空気保持容器10が保持できる空気量は増加する特性を利用して実現している。
【00042】
殺菌された空気を利用する一例を以下に示す。排出量制御手段15の作用により排出口13からの排出を停止した状態で圧縮送風手段14を作動すると同時に、紫外線照射手段12を作動させ、紫外線を照射する。そして、圧縮空気保持容器10内の圧力上昇が止まった時点で圧縮送風手段14の作動を停止する。ここで、圧力上昇が止まったことは、圧力センサ17で検知する。更に、殺菌に必要な時間が経過した時点で紫外線照射手段12の作動を停止する。この状態でも、逆止弁である吸入部密閉手段16の作用で圧縮空気保持容器10内の殺菌及び圧縮された空気は漏れない。
【00043】
利用者が殺菌済みの空気を、人体等の乾燥や、呼吸に利用する際には、排出量制御手段15を作動させて排出口13より、殺菌済みの空気を排出して利用する。利用が終了すると、再度排出量制御手段15の作用により排出口13からの排出を停止した状態で圧縮送風手段14を作動すると同時に、紫外線照射手段12を作動させ、圧縮空気保持容器10内に殺菌及び圧縮された空気を保持した状態で、次の利用に備える。
【00044】
なお、圧縮空気保持容器10は高い圧力に耐えられる形状例えば球状を有していると、より高いΔPを実現できるので、効果的である。また、本実施の形態では、圧縮空気保持容器10の外部に紫外線照射手段12を配置しているので、紫外線照射手段12の耐圧を高くする必要がなく、実現が容易である。
【00045】
また、本実施の形態2では、圧力センサ17を利用して圧力上昇が停止することを検知して、圧縮送風手段14の作動を停止させる例について記載したが、必ずしもこの方法に限定されない。例えば、予め設定した圧力に到達した時点で停止しても良いし、圧縮送風手段14の作動の開始から予め設定した時間が経過した時点で停止しても良い。吸入口9より吸入される風量または圧縮送風手段14より送風される風量を計測できる位置に風量センサを配置し、圧縮空気保持容器10へ送風される風量がゼロになることを検知して、圧縮送風手段14の作動を停止させても良い。
【00046】
以上の様に、本実施の形態2によれば、圧縮空気保持容器10内の空気を圧縮することで、殺菌できる空気量を拡大できる。この拡大効果によって、より小型の圧縮空気保持容器10で、十分な空気量を殺菌できる殺菌装置を提供できる。特に本実施の形態2では、圧縮空気保持容器10内に圧縮及び殺菌された十分な空気量を保持して上で、利用する際に一気に排出することで、人体等の乾燥に利用すると効果的である。
さらに、本実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に圧縮空気保持容器10内の空気を圧縮することで、より大きな風量やより大きな殺菌効果を発揮する殺菌装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【00047】
本開示は、空間に飛び散った飛沫や、空間に浮遊する、ウイルス、細菌、真菌などを含んだ空気を吸引し、これらを不活化や殺菌したのちに再び空間に放出することで空間を殺菌する殺菌装置に関するものである。
【符号の説明】
【00048】
1 吸入口
2 圧縮通風筒
3 発光体
4 排出口
5 遮光通風板
6 遮光通風板
7 圧縮送風手段
8 排出量制限手段
9 吸入口
10 圧縮空気保持容器
11 透過部
12 紫外線照射手段
13 排出口
14 圧縮送風手段
15 排出量制限手段
16 吸入部密閉手段
図1
図2