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特開2023-104999キシリレンジイソシアネート入り容器、キシリレンジイソシアネートの保管方法およびキシリレンジイソシアネートの輸送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104999
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】キシリレンジイソシアネート入り容器、キシリレンジイソシアネートの保管方法およびキシリレンジイソシアネートの輸送方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/14 20060101AFI20230721BHJP
   C07C 265/14 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B65D25/14 A
C07C265/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085292
(22)【出願日】2023-05-24
(62)【分割の表示】P 2022531796の分割
【原出願日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2020105488
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 勝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康明
(72)【発明者】
【氏名】白井 麻衣
(57)【要約】
【課題】低着色性に優れるキシリレンジイソシアネート入り容器、キシリレンジイソシアネートの保管方法およびキシリレンジイソシアネートの輸送方法を提供する。
【解決手段】
キシリレンジイソシアネートと、キシリレンジイソシアネートが収容された容器とを備えるキシリレンジイソシアネート入り容器1において、容器2の内面には、樹脂層4が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリレンジイソシアネートと、
前記キシリレンジイソシアネートが収容された容器と
を備え、
前記容器の内面には、樹脂層が設けられている
ことを特徴とする、キシリレンジイソシアネート入り容器。
【請求項2】
前記樹脂層は、エポキシ樹脂を含む
ことを特徴とする、請求項1に記載のキシリレンジイソシアネート入り容器。
【請求項3】
前記樹脂層は、エポキシフェノール樹脂を含む
ことを特徴とする、請求項2に記載のキシリレンジイソシアネート入り容器。
【請求項4】
酸分が15ppm未満のキシリレンジイソシアネートと、
前記キシリレンジイソシアネートが収容された容器と
を備え、
前記容器の内面には、リン酸亜鉛皮膜が設けられている
ことを特徴とする、キシリレンジイソシアネート入り容器。
【請求項5】
内面に樹脂層が設けられている容器内で、キシリレンジイソシアネートを保管することを特徴とする、キシリレンジイソシアネートの保管方法。
【請求項6】
前記樹脂層は、エポキシ樹脂を含む
ことを特徴とする、請求項5に記載のキシリレンジイソシアネートの保管方法。
【請求項7】
前記樹脂層は、エポキシフェノール樹脂を含む
ことを特徴とする、請求項6に記載のキシリレンジイソシアネートの保管方法。
【請求項8】
内面に樹脂層が設けられておらずリン酸亜鉛皮膜が設けられている第1の容器内で、酸分が15ppm未満のキシリレンジイソシアネートを保管することを特徴とする、キシリレンジイソシアネートの保管方法。
【請求項9】
キシリレンジイソシアネートの酸分を測定する工程と、
測定された酸分が15ppm以上である場合、前記キシリレンジイソシアネートを、内面に樹脂層が設けられている第2の容器に収容し、測定された酸分が15ppm未満である場合、前記第1の容器に収容する工程と
を含む、請求項8に記載のキシリレンジイソシアネートの保管方法。
【請求項10】
内面に樹脂層が設けられている容器内に、キシリレンジイソシアネートを保管して輸送することを特徴とする、キシリレンジイソシアネートの輸送方法。
【請求項11】
前記樹脂層は、エポキシ樹脂を含む
ことを特徴とする、請求項10に記載のキシリレンジイソシアネートの輸送方法。
【請求項12】
前記樹脂層は、エポキシフェノール樹脂を含む
ことを特徴とする、請求項11に記載のキシリレンジイソシアネートの輸送方法。
【請求項13】
内面に樹脂層が設けられておらずリン酸亜鉛皮膜が設けられている第1の容器内に、酸分が15ppm未満のキシリレンジイソシアネートを保管して輸送することを特徴とする、キシリレンジイソシアネートの輸送方法。
【請求項14】
キシリレンジイソシアネートの酸分を測定する工程と、
測定された酸分が15ppm以上である場合、前記キシリレンジイソシアネートを、内面に樹脂層が設けられている第2の容器に収容し、測定された酸分が15ppm未満である場合、前記キシリレンジイソシアネートを、前記第1の容器に収容する工程と
を含む、請求項13に記載のキシリレンジイソシアネートの輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キシリレンジイソシアネート入り容器、キシリレンジイソシアネートの保管方法およびキシリレンジイソシアネートの輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
優れた透明性が要求される光学レンズを、ポリ(チオ)ウレタン樹脂から形成することが検討されている。ポリ(チオ)ウレタン樹脂からなる光学レンズの原料として、キシリレンジイソシアネートを含むキシリレンジイソシアネート組成物が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/190290号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のキシリレンジイソシアネート組成物を金属製容器に収容して保存および輸送すると、とりわけ長期にわたる場合には、キシリレンジイソシアネート組成物が着色する場合がある。また、金属製容器に収容されたキシリレンジイソシアネート組成物を用いてポリ(チオ)ウレタン樹脂を製造すると、ポリ(チオ)ウレタン樹脂が着色する場合がある。
【0005】
本発明は、低着色性に優れるキシリレンジイソシアネート入り容器、キシリレンジイソシアネートの保管方法およびキシリレンジイソシアネートの輸送方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明[1]は、キシリレンジイソシアネートと、前記キシリレンジイソシアネートが収容された容器とを備え、前記容器の内面には、樹脂層が設けられている、キシリレンジイソシアネート入り容器を含む。
【0007】
本発明[2]は、前記樹脂層が、エポキシ樹脂を含む、上記[1]に記載のキシリレンジイソシアネート入り容器を含む。
【0008】
本発明[3]は、前記樹脂層は、エポキシフェノール樹脂を含む、上記[2]に記載のキシリレンジイソシアネート入り容器を含む。
本発明[4]は、酸分が15ppm未満のキシリレンジイソシアネートと、前記キシリレンジイソシアネートが収容された容器とを備え、前記容器の内面には、リン酸亜鉛皮膜が設けられている、キシリレンジイソシアネート入り容器を含む。
【0009】
本発明[5]は、内面に樹脂層が設けられている容器内で、キシリレンジイソシアネートを保管する、キシリレンジイソシアネートの保管方法を含む。
【0010】
本発明[6]は、前記樹脂層は、エポキシ樹脂を含む、上記[5]に記載のキシリレンジイソシアネートの保管方法を含む。
【0011】
本発明[7]は、前記樹脂層は、エポキシフェノール樹脂を含む、上記[6]に記載のキシリレンジイソシアネートの保管方法を含む。
本発明[8]は、内面にリン酸亜鉛皮膜が設けられている第1の容器内で、酸分が15ppm未満のキシリレンジイソシアネートを保管する、キシリレンジイソシアネートの保管方法を含む。
本発明[9]は、キシリレンジイソシアネートの酸分を測定する工程と、測定された酸分が15ppm以上である場合、前記キシリレンジイソシアネートを、内面に樹脂層が設けられている第2の容器に収容し、測定された酸分が15ppm未満である場合、前記第1の容器に収容する工程とを含む、上記[8]のキシリレンジイソシアネートの保管方法を含む。
【0012】
本発明[10]は、内面に樹脂層が設けられている容器内に、キシリレンジイソシアネートを保管して輸送する、キシリレンジイソシアネートの輸送方法を含む。
【0013】
本発明[11]は、前記樹脂層は、エポキシ樹脂を含む、上記[10]に記載のキシリレンジイソシアネートの輸送方法を含む。
【0014】
本発明[12]は、前記樹脂層は、エポキシフェノール樹脂を含む、上記[11]に記載のキシリレンジイソシアネートの輸送方法を含む。
本発明[13]は、内面にリン酸亜鉛皮膜が設けられている第1の容器内に、酸分が15ppm未満のキシリレンジイソシアネートを保管して輸送する、キシリレンジイソシアネートの輸送方法を含む。
本発明[14]は、キシリレンジイソシアネートの酸分を測定する工程と、測定された酸分が15ppm以上である場合、前記キシリレンジイソシアネートを、内面に樹脂層が設けられている第2の容器に収容し、測定された酸分が15ppm未満である場合、前記キシリレンジイソシアネートを、前記第1の容器に収容する工程とを含む、上記[13]のキシリレンジイソシアネートの輸送方法を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明のキシリレンジイソシアネート入り容器によれば、容器の内面に樹脂層が設けられているので、キシリレンジイソシアネートを容器に収容して、長期にわたって保存および搬送しても、キシリレンジイソシアネートが着色することを抑制できる。また、キシリレンジイソシアネートから製造されるポリ(チオ)ウレタン樹脂が着色することを抑制できる。
本発明のキシリレンジイソシアネート入り容器によれば、容器の内面にリン酸亜鉛皮膜が設けられているので、酸分が15ppm未満のキシリレンジイソシアネートを容器に収容して、長期にわたって保存および搬送しても、キシリレンジイソシアネートが着色することを抑制できる。また、キシリレンジイソシアネートから製造されるポリ(チオ)ウレタン樹脂が着色することを抑制できる。
【0016】
本発明のキシリレンジイソシアネートの保管方法によれば、上記した容器にキシリレンジイソシアネートを保管するので、キシリレンジイソシアネートが着色することを抑制できるとともに、ポリ(チオ)ウレタン樹脂が着色することを抑制できる。
【0017】
本発明のキシリレンジイソシアネートの輸送方法によれば、上記した容器にキシリレンジイソシアネートを保管して輸送するので、キシリレンジイソシアネートが着色することを抑制できるとともに、ポリ(チオ)ウレタン樹脂が着色することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明のキシリレンジイソシアネート入り容器の一実施形態を示す概略図である。
図2図2は、実施例1および比較例1における、キシリレンジイソシアネート組成物の保存期間と、キシリレンジイソシアネート組成物の色相(APHA)との相関を示すグラフである。
図3図3は、実施例1および比較例1における、キシリレンジイソシアネート組成物の保存期間と、キシリレンジイソシアネート組成物のイエローインデックス(Y.I.)との相関を示すグラフである。
図4図4は、実施例1および比較例1における、キシリレンジイソシアネート組成物の保存期間と、キシリレンジイソシアネート組成物のb*との相関を示すグラフである。
図5図5は、実施例1および比較例1における、キシリレンジイソシアネート組成物の保存期間と、キシリレンジイソシアネート組成物から製造される光学レンズのY.I.との相関を示すグラフである。
図6図6は、実施例3、4における、キシリレンジイソシアネート組成物の保存期間と、キシリレンジイソシアネート組成物から製造される光学レンズのY.I.との相関を示すグラフである。
図7図7は、実施例5、6における、キシリレンジイソシアネート組成物の保存期間と、キシリレンジイソシアネート組成物から製造される光学レンズのY.I.との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、キシリレンジイソシアネート入り容器1は、キシリレンジイソシアネート(以下、XDIとする。)と、そのXDIが収容された容器2とを備えている。
【0020】
容器2に収容されるXDIとしては、例えば、1,2-XDI(o-XDI)、1,3-XDI(m-XDI)、1,4-XDI(p-XDI)などが挙げられる。
【0021】
これらXDIは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0022】
XDIのなかでは、好ましくは、1,3-XDI(m-XDI)が挙げられる。
【0023】
XDIは、例えば、市販品(例えば、三井化学社製MR-7Aなど)として入手することもでき、公知の方法により製造することもできる。公知の方法として、例えば、蒸発させたキシリレンジアミン(以下、XDAとする。)とホスゲンとを反応させる気相法、例えば、XDAの塩酸塩とホスゲンとを反応させる塩酸塩法、例えば、XDAとホスゲンとを一段で直接反応させる一段法、例えば、XDAとホスゲンとを低温で反応させた後、引き続いて高温で反応させる冷熱二段法などが挙げられる。
【0024】
また、XDIは、必要により、精留(蒸留)、抽出などの公知の方法によって精製される。
【0025】
XDIの純度は、例えば、95質量%以上、好ましくは、98質量%以上、より好ましくは、99質量%以上、さらに好ましくは、99.5質量%以上、とりわけ好ましくは、99.9質量%以上、例えば、100質量%以下である。XDIの純度は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる。
【0026】
XDIの純度が100質量%未満である場合、XDIには、他の成分が混入している。この場合、容器2は、XDIおよび他の成分を含むXDI組成物を収容する。
【0027】
他の成分として、例えば、クロロメチルベンジルイソシアネート、ジクロロメチルベンジルイソシアネート、加水分解性塩素(HC)などが挙げられる。
【0028】
容器2に収容される前のXDI組成物の総質量に対する、クロロメチルベンジルイソシアネートの含有割合は、例えば、0.2ppm以上、好ましくは、6ppm以上、より好ましくは、100ppm以上、例えば、5000ppm以下、好ましくは、4000ppm以下、より好ましくは、3000ppm以下、とりわけ好ましくは、1600ppm以下、特に好ましくは、1000ppm以下である。クロロメチルベンジルイソシアネートの含有割合は、特許第6373536号公報の[0377]段落に記載の方法に準拠して測定できる(以下同様)。
【0029】
容器2に収容される前のXDI組成物の総質量に対する、ジクロロメチルベンジルイソシアネートの含有割合は、例えば、0.1ppm以上、好ましくは、0.3ppm以上、より好ましくは、0.6ppm以上、より好ましくは、1.0ppm以上であり、例えば、60ppm以下、好ましくは、50ppm以下、より好ましくは、30ppm以下、より好ましくは、20ppm以下、より好ましくは、10ppm以下、より好ましくは、5ppm以下である。ジクロロメチルベンジルイソシアネートの含有割合は、特許第6373536号公報の[0375]および[0376]段落に記載の方法に準拠して測定できる(以下同様)。
【0030】
容器2に収容される前のXDI組成物の総質量に対する、加水分解性塩素の濃度(HC)は、例えば、10ppm以上、好ましくは、20ppm以上、より好ましくは、30ppm以上、例えば、1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは200ppm以下である。加水分解性塩素の濃度(HC)は、JIS K-1603-3(2007)に記載されている加水分解性塩素の求め方に準拠して測定される(以下同様)。
容器2に収容される前のXDI組成物の酸分は、例えば、3000ppm以下、好ましくは、2000ppm以下、より好ましくは、1000ppm以下、より好ましくは、100ppm以下、より好ましくは、50ppm以下、より好ましくは、30ppm以下、より好ましくは、15ppm未満である。
なお、容器2に収容される前のXDI組成物の酸分の下限値は、限定されない。容器2に収容される前のXDI組成物の酸分は、例えば、1ppm以上である。
酸分は、後述する実施例に記載の方法により測定される(以下同様)。
【0031】
XDI組成物は、他の成分のうち、1種のみを含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0032】
容器2として、例えば、一斗缶、ドラム缶、ペール缶、キャニスター缶などの種々の形状の容器が挙げられ、好ましくは、一斗缶、ドラム缶が挙げられる。図1には、ドラム缶状の容器2を示している。
【0033】
また、容器2の大きさは、特に制限されず、種々のサイズのものが用いられる。具体的には、容器2の容量は、例えば、0.5L以上、好ましくは、1L以上、より好ましくは、16L以上、例えば、20000L以下、好ましくは、250L以下である。
【0034】
このような容器2の材質は、通常、鉄および/または亜鉛を含有している。また、容器2の内面には、図1の拡大図に示されるように、樹脂層4が設けられている。言い換えれば、容器2は、容器本体3と、必要により、樹脂層4とを備えている。詳しくは、酸分が15ppm以上のXDI組成物が収容される容器2である場合、容器2は、樹脂層4を備える。酸分が15ppm未満のXDI組成物が収容される容器2である場合、容器2は、樹脂層4を備えていなくてもよいし、樹脂層4を備えていてもよい。
【0035】
容器本体3は、容器2の外形を形成する金属板3aを備えている。容器本体3は、必要により、金属板3aの一方面(容器2の内面)に積層される表面処理層3bを備えている。詳しくは、容器2が樹脂層4を備えていない場合、容器本体3は、表面処理層3bを備える。容器2が樹脂層4を備えている場合、容器本体3は、表面処理層3bを備えていなくてもよい。
【0036】
金属板3aは、特に制限されないが、例えば、鉄および/または亜鉛を含有する金属板であり、具体的には、鋼板(スチール板)が挙げられ、より具体的には、炭素鋼板などが挙げられ、さらに具体的には、冷間圧延鋼板、熱間圧延鋼板などが挙げられる。
【0037】
金属板3aの厚みは、例えば、0.5mm以上、好ましくは、1.0mm以上、例えば、2.0mm以下、好ましくは、1.6mm以下である。
【0038】
表面処理層3bは、例えば、公知の化成処理により形成される化成皮膜が挙げられる。
【0039】
化成皮膜としては、特に制限されず、鉄メッキ皮膜、亜鉛メッキ皮膜、錫メッキ皮膜、クロムメッキ皮膜、アルミニウムメッキ皮膜、ニッケルメッキ皮膜、鉄-亜鉛メッキ皮膜、アルミニウム-亜鉛メッキ皮膜、ニッケル-亜鉛メッキ皮膜、リン酸鉄メッキ皮膜、リン酸亜鉛メッキ皮膜などが挙げられる。化成皮膜は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0040】
表面処理層3bとして、通常、鉄および/または亜鉛を含有する皮膜が挙げられ、具体的には、鉄メッキ皮膜、亜鉛メッキ皮膜、リン酸鉄皮膜、リン酸亜鉛メッキ皮膜が挙げられ、より具体的には、リン酸鉄皮膜、リン酸亜鉛メッキ皮膜が挙げられ、さらに具体的には、リン酸亜鉛皮膜が挙げられる。
【0041】
表面処理層3bの厚みは、例えば、2μm以上、好ましくは、5μm以上であり、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下である。
【0042】
なお、必要に応じて、例えば、金属板3aの一方面(容器2の内面)、金属板3aの他方面(容器2の外面)、表面処理層3bの一方面(容器2の内面)、金属板3aと表面処理層3bとの界面などに、例えば、塗装層、プライマー層などが形成されていてもよい。
【0043】
樹脂層4は、容器本体3の内面に設けられる。樹脂層4は、容器本体3の内面に積層される。図1では、樹脂層4は、表面処理層3bにおける金属板3aと反対側の面に設けられている。樹脂層4は、容器本体3の内面に、樹脂を積層することによって形成される。
【0044】
樹脂として、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂など)、AS(アクリロニトリルスチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂など)、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、エポキシ樹脂(例えば、エポキシフェノール樹脂、エポキシアミン樹脂など)、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂(例えば、各種ナイロン、ポリアミドイミド樹脂など)、ポリ(チオ)ウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
なお、ポリ(チオ)ウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂とポリチオウレタン樹脂とを含む。ポリウレタン樹脂は、イソシアネートとポリオールとの反応生成物である。ポリチオウレタン樹脂は、イソシアネートとポリチオールとの反応生成物である。
【0045】
これら樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0046】
樹脂として、好ましくは、エポキシ樹脂が挙げられ、より好ましくは、エポキシフェノール樹脂、エポキシアミン樹脂が挙げられ、さらに好ましくは、エポキシフェノール樹脂が挙げられる。言い換えれば、樹脂層4は、好ましくは、エポキシ樹脂を含み、より好ましくは、エポキシフェノール樹脂および/またはエポキシアミン樹脂を含み、さらに好ましくは、エポキシフェノール樹脂を含み、とりわけ好ましくは、エポキシフェノール樹脂からなる。
【0047】
樹脂層4がエポキシ樹脂を含むと、容器2に収容されるXDI組成物が着色することを安定して抑制できる。とりわけ、樹脂層4がエポキシフェノール樹脂を含むと、容器2に収容されたXDI組成物から製造されるポリ(チオ)ウレタン樹脂が着色することを安定して抑制できる。
【0048】
樹脂層4の形成方法としては、特に制限されず、公知の方法が採用される。
【0049】
例えば、樹脂層4は、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、静電塗装法、パウダーコーティング法(粉体塗装法)などの公知の樹脂コーティング法により、上記の樹脂が容器本体3の内面にコーティングされることにより形成される。
【0050】
また、樹脂層4は、例えば、ドライラミネート、ホットメルトラミネートなどの公知の樹脂ラミネート法により、上記の樹脂のフィルム(単層フィルム、複層フィルム)が、容器本体3の内面にラミネートされることによっても形成される。
【0051】
樹脂層4の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0052】
このような容器2として、具体的には、エポキシコート缶などが挙げられ、好ましくは、エポキシフェノールコート缶、エポキシアミンコート缶が挙げられ、より好ましくは、エポキシフェノールコート缶が挙げられえる。
【0053】
なお、図示しないが、容器2に無機酸化物などを蒸着させることにより、ガスバリア性および水バリア性を向上させることもできる。
【0054】
そして、このような容器2に、XDI組成物(XDI)を収容して保存することにより、低着色性に優れたXDI入り容器1が得られる。
【0055】
また、酸分が15ppm以上のXDI組成物(XDI)を、樹脂層4を有していない容器で保存すると容器本体3に含まれる鉄および/または亜鉛がXDI組成物に溶出して、XDI組成物が、鉄および/または亜鉛を含有する場合がある。そのため、樹脂層4を有していない容器2は、酸分が15ppm以上のXDI組成物を収容することは好ましくない。
【0056】
これに対して、内面に樹脂層4が設けられている容器2では、酸分が15ppm以上のXDI組成物(XDI)を容器2に収容して保存しても、鉄および/または亜鉛がXDI組成物に溶出することを抑制できる。そのため、内面に樹脂層4が設けられている容器2は、酸分が15ppm以上のXDI組成物(XDI)を収容できる。なお、内面に樹脂層4が設けられている容器2は、酸分が15ppm未満のXDI組成物(XDI)も、収容できる。
なお、酸分が15ppm未満のXDI組成物が、内面に樹脂層4が設けられておらず表面処理層3bが設けられている容器2に保存された場合、表面処理層3bにより、XDI組成物中への鉄および/または亜鉛の溶出が、抑制される。そのため、内面に樹脂層4が設けられておらず表面処理層3bが設けられている容器2は、酸分が15ppm以上のXDI組成物を収容することは好ましくないが、酸分が15ppm未満のXDI組成物を収容できる。
【0057】
容器2に収容された保存時のXDI組成物における鉄含有量は、例えば、1ppb以上、例えば、1000ppb以下、好ましくは、500ppb以下である。
【0058】
容器2に収容された保存時のXDI組成物における亜鉛含有量は、例えば、1ppb以上、例えば、1000ppb以下、好ましくは、500ppb以下である。
【0059】
また、容器2に収容された保存時のXDI組成物の総質量に対する、クロロメチルベンジルイソシアネートの含有割合は、例えば、0.2ppm以上、好ましくは、6ppm以上、より好ましくは、100ppm以上、例えば、5000ppm以下、好ましくは、4000ppm以下、より好ましくは、3000ppm以下、とりわけ好ましくは、1600ppm以下、特に好ましくは、1000ppm以下である。
【0060】
容器2に収容された保存時のXDI組成物の総質量に対する、ジクロロメチルベンジルイソシアネートの含有割合は、例えば、0.1ppm以上、好ましくは、0.3ppm以上、より好ましくは、0.6ppm以上、より好ましくは、1.0ppm以上であり、例えば、60ppm以下、好ましくは、50ppm以下、より好ましくは、30ppm以下、より好ましくは、20ppm以下、より好ましくは、10ppm以下、より好ましくは、5ppm以下である。
【0061】
容器2に収容された保存時のXDI組成物の総質量に対する、加水分解性塩素の濃度(HC)は、例えば、10ppm以上、好ましくは、20ppm以上、より好ましくは、30ppm以上、例えば、1000ppm以下、好ましくは、500ppm以下、より好ましくは、200ppm以下である。
【0062】
また、XDI入り容器1は、必要に応じて、窒素ガスなどの不活性ガスでシールされていてもよい。
【0063】
このようなXDI入り容器1において、XDI組成物(XDI)は、上記の容器2に収容された状態で保存される。言い換えれば、内面に樹脂層4が設けられている容器2内で、酸分が15ppm以上のXDI組成物(XDI)を保管する。また、内面に樹脂層4が設けられておらずリン酸亜鉛皮膜が設けられている容器2内で、酸分が15ppm未満のXDI組成物(XDI)を保管する。なお、内面に樹脂層4が設けられている容器2内で、酸分が15ppm未満のXDI組成物(XDI)を保管してもよい。
詳しくは、キシリレンジイソシアネートの酸分を測定し、測定された酸分が15ppm以上である場合、キシリレンジイソシアネートを、内面に樹脂層が設けられている容器2に収容し、測定された酸分が15ppm未満である場合、キシリレンジイソシアネートを、内面に樹脂層4が設けられておらずリン酸亜鉛皮膜が設けられている容器2に収容する。
【0064】
保存条件としては、保存温度が、例えば、-5℃以上、好ましくは、0℃以上、例えば、50℃以下、好ましくは、40℃以下、より好ましくは、30℃以下、さらに好ましくは、25℃以下である。また、低温保存時には、保存温度が、例えば、5℃以下、好ましくは、1℃以下である。
【0065】
保存温度が上記上限以下であると、XDI組成物が着色することを安定して抑制できる。
【0066】
また、保存期間は、例えば、1日以上、好ましくは、10日以上、より好ましくは、1ヵ月以上、さらに好ましくは、3ヵ月以上、とりわけ好ましくは、6ヵ月以上、例えば、3年以下、好ましくは、1年以下である。
【0067】
また、必要に応じて、XDI組成物(XDI)は、上記の容器2に収容された状態で輸送される。言い換えれば、内面に樹脂層4が設けられている容器2内で、酸分が15ppm以上のXDI組成物(XDI)を保管して輸送する。また、内面に樹脂層4が設けられておらずリン酸亜鉛皮膜が設けられている容器2内で、酸分が15ppm未満のXDI組成物(XDI)を保管して輸送する。なお、内面に樹脂層4が設けられている容器2内で、酸分が15ppm未満のXDI組成物(XDI)を保管して輸送してもよい。なお、輸送時の温度としては、上記した保存温度を適用できる。
【0068】
このようなXDI入り容器1中のXDIは、ポリ(チオ)ウレタン樹脂の原料として広く用いることができ、例えば、光学レンズ、コーティングの製造において好適に用いられる。
【0069】
光学レンズは、例えば、XDIとポリチオールとの反応により製造される。光学レンズの製造では、例えば、注型法を採用することができる。
【0070】
光学レンズとして、例えば、透明レンズ、サングラスレンズ、偏光レンズ、眼鏡レンズ、カメラレンズ、ピックアップレンズ、コンタクトレンズなどが挙げられる。
【0071】
コーティングは、例えば、硬化剤としてのA剤と、主剤としてのB剤とを含む二液硬化型コーティング原料から製造される。XDIは、A剤およびB剤のいずれにも利用できる。
【0072】
XDIをA剤に利用する場合、A剤は、例えば、XDIから変性されるXDI変性体(例えば、イソシアヌレート変性体、ウレタン変性体など)、および/または、XDIとポリオールとの反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマーを含有する。
【0073】
XDIをB剤に利用する場合、B剤は、例えば、XDIとポリオールとの反応生成物であるポリウレタンポリオールを含有する。
【0074】
コーティングとして、例えば、塗料、接着剤などが挙げられる。
【0075】
上記したXDI入り容器1では、図1に示すように、容器2の内面に樹脂層4が設けられている。そのため、XDIを容器2に収容して、長期にわたって保存および搬送しても、XDI(XDI組成物)が着色することを抑制できる。また、XDI(XDI組成物)から製造されるポリ(チオ)ウレタン樹脂が着色することを抑制できる。
【0076】
とりわけ、樹脂層4がエポキシフェノール樹脂を含有すると、XDI(XDI組成物)が着色することをより一層確実に抑制できる。
【実施例0077】
以下に実施例、比較例および参考例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0078】
また、以下において記載される各種物性の測定法を下記する。
【0079】
<m-XDI組成物中のm-XDIの純度>
純度99mol%のm-XDIを標準物質として、内部標準法により、下記の条件でガスクロマトグラフィーにて分析して、得られたガスクロマトグラムの面積値から検量線を作成した。
【0080】
次いで、精留で得られたm-XDI組成物を下記の条件でガスクロマトグラフィーにて分析して、m-XDIのモル数を得た。これを質量に換算して、m-XDI組成物中のm-XDIの含有割合(純度)を算出した。なお、内部標準物質のリテンションタイムは、8.8分であり、m-XDIのリテンションタイムは、13.8分であった。
装置;SHIMADZU GC-2014(島津製作所社製)
カラム;DB-1(膜厚1.5μm、内径0.53mm×長さ60m)(島津製作所社製)、
オーブン温度;130℃から220℃まで3℃/minで昇温、220℃到達後300℃まで10℃/minで昇温、
スプリット比;パルスドスプリットレス法、
注入口温度;280℃、
検出器温度;300℃、
キャリアガス;N2 158kPa(定圧制御)、
内部標準物質;1,2,4,5-テトラクロロベンゼン100mg、
溶媒;クロロホルム、
サンプル濃度:2.0質量%クロロホルム溶液、
注入量;2μL、
検出方法;FID。
【0081】
<2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物(以下、NBDIとする)を含むNBDI組成物中のNBDI純度>
純度99mol%のNBDIを標準物質として、内部標準法により、下記の条件でガスクロマトグラフィーにて分析して、得られたガスクロマトグラムの面積値から検量線を作成した。
【0082】
次いで、精留で得られたNBDI組成物を下記の条件でガスクロマトグラフィーにて分析して、NBDIのモル数を得た。これを質量に換算して、NBDI組成物中のNBDIの含有割合(純度)を算出した。なお、内部標準物質のリテンションタイムは、8.8分であり、NBDIのリテンションタイムは、13.0であった。
装置;SHIMADZU GC-2014(島津製作所社製)、
カラム;DB-1(膜厚1.5μm、内径0.53mm×長さ60m)(島津製作所社製)、
オーブン温度;130℃から220℃まで5℃/minで昇温、220℃到達後300℃まで20℃/minで昇温、
スプリット比;パルスドスプリットレス法、
注入口温度;280℃、
検出器温度;300℃、
キャリアガス;N2 95.4kPa(定圧制御)、
内部標準物質;1,2,4,5-テトラクロロベンゼン100mg、
溶媒;クロロホルム、
サンプル濃度:2.0質量%クロロホルム溶液、
注入量;2μL、
検出方法;FID。
【0083】
<XDI組成物、NBDI組成物の色相(APHA)>
JIS K 0071(1998年)に準拠した方法により測定した。具体的には、APHAは、白金およびコバルトの試薬を溶解して調製した標準液を用い、試料の色と同等の濃さの標準液希釈液を比較により求めた。その「度数」を測定値とした。この度数は小さいほど色相が良好である。
【0084】
<XDI組成物のイエローインデックス(Y.I.)およびb*
MINOLTA製色彩色差計CT-210を用いて測定した。まず光路長20mmのセルCT-A20に蒸留水を入れて、Y=100.00、x=0.3101、y=0.3162として白色校正を行った。その後、同じセルに試料を入れて、色度座標x、yおよびb*を測定した。測定結果であるxとyの値をもとに下記式(1)によりY.I.を算出した。
Y.I.=(234×x+106×y+106)/y (1)
このY.I.をXDI組成物の色相の数値とし、数値が高いほど、着色度合いが大きいことを表す。
【0085】
液体であるXDI組成物を測定する場合は、厚さ10mmのセルに入れ、測定を行った。
【0086】
<光学レンズ(樹脂)のイエローインデックスの値(Y.I.値)の算出>
樹脂を、それぞれ、厚さ9mm、直径75mmの円形平板プラスチックレンズとして作成し、MINOLTA社製色彩色差計CT-210を用いて色度座標x、yを測定した。測定結果であるxとyの値をもとに上記式(1)によりY.I.を算出した。
【0087】
なお、Y.I.値は小さいほどプラスチックレンズの色相が良く、Y.I.が大きいほど色相が不良となる相関がある。
【0088】
調製例1:第1のm-XDI組成物(酸分:15ppm以上)の調製
還流冷却管、撹拌翼、温度計、塩化水素ガス導入管、ホスゲン導入管、原料槽、原料装入ポンプを備えた、圧力調節器付きのオートクレーブ(内容積は2m3)を反応器として用いた。この反応器内に、不活性溶媒としてオルトジクロロベンゼン846kgを仕込み、原料槽にm-キシリレンジアミン136.2kg(1.0kモル)、および、オルトジクロロベンゼン621kgを仕込んだ(全アミン濃度8.5質量%)。
【0089】
次に、反応器内の温度を120℃に昇温後、内圧を大気圧よりも0.01MPa高圧に調節した。そして、塩化水素ガス導入管より塩化水素ガスを43.8kg/hrの速度で反応器内に装入を開始し、同時に原料槽から不活性溶媒で希釈したm-キシリレンジアミンを、原料装入ポンプにて379kg/hrの速度で装入を開始し、2時間掛けて全量を装入した。その後、さらに塩化水素ガスを20kg/hrで装入しながら、1時間熟成した。
【0090】
次に、反応器内において反応液(塩酸塩スラリー)を160℃に昇温後、ホスゲン導入管より、ホスゲンを100kg/hr(1.0kモル/hr)で導入し、温度を保ちながら8時間反応させた。反応終了後、反応器内に窒素をパージすることにより、未反応ホスゲンおよび塩化水素ガスを除去した。そして、反応液を濾過して、未反応塩酸塩0.8kg(乾燥重量)を取り除いた。得られた濾液を脱溶媒して、m-XDI純度98.10%のm-XDI組成物188.6kgを得た。
【0091】
次いで、得られたm-XDI組成物を精留して、m-XDI純度99.99質量%のm-XDI組成物を得た。得られたm-XDI組成物に塩酸ガスを吹き込んで、酸分が20ppmのm-XDI組成物を調製した。なお、酸分は、以下の方法により、測定された。
<酸分の測定方法>
攪拌子を入れた200mlビーカーに試料20gを正確に量りこみ、溶剤(アセトンとエタノールを1:1(容量比)の比率で混合したもの)100mlを加え、ホットプレート上にのせ、加熱して試料を溶解させた後、室温で10~20分間かきまぜながら反応させる。
次に、自動滴定装置(平沼 COM-500)を用いて、N/100メタノール性水酸化カリウム溶液(JIS K4101に準拠、メタノールを用いて調整、標定した0.1mol/Lメタノール性水酸化カリウムを正確に10倍希釈して調製する)で滴定し、得られた滴定曲線の変局点を終点とする。またこの試験には同一条件で空試験を行う。滴定の結果から、下式にしたがい酸分(%)を算出する。
式:酸分=[0.0365×(A-B)×f]/S
上記式中、Aは、試料の滴定に要したN/100メタノール性水酸化カリウム溶液の使用量(ml)であり、Bは、空試験に要したN/100メタノール性水酸化カリウム溶液の使用量(ml)であり、fは、N/100メタノール性水酸化カリウム溶液のファクターであり、Sは、試料の重量(g)である。
調整例2:第2のm-XDI組成物(酸分:15ppm未満)の調製
調製例1と同様にして、m-XDI純度99.99質量%のm-XDI組成物を得た。得られたm-XDI組成物に塩酸ガスを吹き込んで、酸分が2ppmのm-XDI組成物を調製した。
【0092】
調製例3:NBDI組成物の調製
調製例1と同じ反応器を用いた。反応器内に、反応溶媒としてオルソジクロロベンゼン958gを仕込み、原料槽に2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物154.2g(1.0モル)およびオルソジクロロベンゼン702gを仕込んだ(全アミン濃度8.5質量%)。
【0093】
次に、反応器内の温度を120℃に昇温後、オートクレーブ内を大気圧よりも0.01MPa高圧に調節した。そして、塩化水素ガス導入管より塩化水素ガスを43.8g/hrの速度で反応機内に装入を開始し、同時に、原料槽より溶媒で希釈した2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物を、原料装入ポンプにて428.1g/hrの速度で装入を開始し、2時間かけて全量を装入した。さらに塩化水素ガスを20g/hrで装入しながら、1時間熟成した。
【0094】
次に、反応機内において塩酸塩スラリーを160℃に昇温後、ホスゲン導入管より、ホスゲンを100g/hr(1.0モル/hr)で吹き込み、温度を保ちながら8時間反応させた。反応終了後、系内に窒素をパージすることにより未反応ホスゲンおよび塩化水素ガスを除去した。そして、反応液を濾過して、未反応塩酸塩0.5g(乾燥質量)を取り除いた。得られた濾液を脱溶媒して、NBDI純度98.5質量%のNBDI組成物206.9gを得た。
【0095】
次いで、得られたNBDI組成物を精留して、NBDI純度99.99質量%のNBDI組成物を得た。
【0096】
実施例1、2および比較例1
第1のm-XDI組成物または第2のm-XDI組成物を、下記表1に示す容器に装入し、十分に窒素ガスでシールした後、密閉した。
【0097】
その後、20℃の環境で、製造(0ヵ月)から12ヵ月間、静置した。
【0098】
また、表1に示すタイミングで、各容器を開放してサンプルを採取した。そして、各サンプル(m-XDI組成物)のAPHA、Y.Iおよびb*を測定した。その結果を表1および図2~4に示す。
【0099】
また、表1に示すタイミングで採取したサンプル(m-XDI組成物)と、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン(活性水素化合物)とを反応させて、光学レンズ(ポリチオウレタン樹脂)を調製した。具体的には、十分に乾燥させたフラスコに、m-XDI組成物36.4g、ジブチル錫ジクロライド0.001g、ゼレックUN(商品名、酸性リン酸エステル、内部離型剤、Stepan社製)0.07g、バイオソーブ583(商品名、紫外線吸収剤、堺化学工業社製)0.05gを秤量し、25℃で1時間攪拌して混合溶解させた。その後、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン33.6gを装入混合して混合液(重合性組成物)を調製した。
【0100】
この混合液を600Paにて1時間脱泡した後、3μmPTFEフィルターにて濾過した。その後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、10℃から120℃まで徐々に昇温して、18時間重合させた。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して樹脂を得た。得られた樹脂をさらに130℃で4時間アニールした。得られた樹脂の光学レンズのY.Iを測定した。その結果を表1および図5に示す。
【0101】
容器がエポキシフェノールコート缶である実施例1は、比較例1(酸分が15ppm以上であり、かつ、容器がリン酸亜鉛処理ドラム缶である態様)と比較して、m-XDI組成物のAPHA、Y.Iおよびb*を低減でき、光学レンズのY.Iを低減できることが確認された。また、酸分が15ppm未満であり、かつ、容器がリン酸亜鉛処理ドラム缶である実施例2は、比較例1と比較して、m-XDI組成物のAPHAを低減できることが確認された。
【0102】
<保存容器>
・樹脂層を備える容器
実施例1:エポキシフェノールコート缶(容器の内面にエポキシフェノール樹脂層を備えるドラム缶)、
・樹脂層を備えない容器
実施例2、比較例1:リン酸亜鉛処理ドラム缶(リン酸亜鉛処理鋼板製ドラム缶(JFEコンテナー社製)
参考例1
m-XDI組成物をNBDI組成物に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、NBDI組成物を静置してサンプルを採取した。そして、各サンプル(NBDI組成物)のAPHAを、上記と同様にして測定した。その結果を表1に示す。参考例1では、容器がエポキシフェノール缶であると、NBDI組成物のAPHAが悪化しないことが確認された。
【0103】
参考例2
m-XDI組成物をNBDI組成物に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、NBDI組成物を静置してサンプルを採取した。そして、各サンプル(NBDI組成物)のAPHAを、上記と同様にして測定した。その結果を表1に示す。容器がリン酸亜鉛処理ドラム缶であっても、NBDI組成物のAPHAが悪化しないことが確認された。
【0104】
【表1】
実施例3、4
実施例1、2および比較例1で使用したm-XDI組成物とは別の製造ロットのm-XDI組成物を、下記の容器のそれぞれに装入し、十分に窒素ガスでシールした後、密閉した。
【0105】
その後、20℃の環境で、製造(0ヵ月)から6ヵ月間、静置した。
【0106】
また、表2に示すタイミングで、各容器を開放してサンプルを採取した。そして、各サンプル(m-XDI組成物)のAPHAを測定した。その結果を表2に示す。
【0107】
また、表2に示すタイミングで採取したサンプル(m-XDI組成物)と、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート(活性水素化合物)とを反応させて、光学レンズ(ポリチオウレタン樹脂)を調製した。具体的には、十分に乾燥させたフラスコに、m-XDI組成物43.5g、ジブチル錫ジクロライド0.008g、ゼレックUN(商品名、酸性リン酸エステル、内部離型剤、Stepan社製)0.10g、バイオソーブ583(商品名、紫外線吸収剤、堺化学工業社製)0.05gを秤量し、25℃で1時間攪拌して混合溶解させた。その後、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート56.5gを装入混合して混合液(重合性組成物)を調製した。
【0108】
この混合液を600Paにて1時間脱泡した後、3μmPTFEフィルターにて濾過した。その後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、20℃から120℃まで徐々に昇温して、22時間重合させた。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して樹脂を得た。得られた樹脂をさらに120℃で2時間アニールした。得られた樹脂のY.Iを測定した。その結果を表2および図6に示す。
【0109】
実施例3では、容器がエポキシフェノールコート缶であると、実施例4(容器がエポキシアミンコート缶である態様)よりも、光学レンズ(樹脂)のY.I.を低減できることが確認された。
【0110】
実施例5、6
実施例3および4で使用したm-XDI組成物と同じ製造ロットのm-XDI組成物を、下記の容器のそれぞれに装入し、十分に窒素ガスでシールした後、密閉した。
【0111】
その後、20℃の環境で、製造(0ヵ月)から6ヵ月間、静置した。
【0112】
また、表2に示すタイミングで、各容器を開放してサンプルを採取した。そして、各サンプル(m-XDI組成物)のAPHAを測定した。その結果を表2に示す。
【0113】
また、表2に示すタイミングで採取したサンプル(m-XDI組成物)と、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン(活性水素化合物)とを反応させて、光学レンズ(ポリチオウレタン樹脂)を調製した。具体的には、十分に乾燥させたフラスコに、m-XDI組成物36.4g、ジブチル錫ジクロライド0.001g、ゼレックUN(商品名、酸性リン酸エステル、内部離型剤、Stepan社製)0.07g、バイオソーブ583(商品名、紫外線吸収剤、堺化学工業社製)0.05gを秤量し、25℃で1時間攪拌して混合溶解させた。その後、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン33.6gを装入混合して混合液(重合性組成物)を調製した。
【0114】
この混合液を600Paにて1時間脱泡した後、3μmPTFEフィルターにて濾過した。その後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、10℃から120℃まで徐々に昇温して、18時間重合させた。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して樹脂を得た。得られた樹脂をさらに130℃で4時間アニールした。得られた樹脂のY.Iを測定した。その結果を表2および図7に示す。
【0115】
実施例5では、容器がエポキシフェノールコート缶であると、実施例6(容器がエポキシアミンコート缶である態様)よりも、光学レンズ(樹脂)のY.I.を低減できることが確認された。
【0116】
<保存容器>
・樹脂層を備える容器
実施例3および5:エポキシフェノールコート缶(容器の内面にエポキシフェノール樹脂層を備えるドラム缶)、
実施例4および6:エポキシアミンコート缶(容器の内面にエポキシアミン樹脂層を備えるドラム缶)。
【0117】
【表2】
【符号の説明】
【0118】
1 キシリレンジイソシアネート入り容器
2 容器
3 容器本体
4 樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7