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特開2023-105012接着ペースト、接着ペーストの使用方法及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105012
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】接着ペースト、接着ペーストの使用方法及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/04 20060101AFI20230721BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230721BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230721BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20230721BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C09J183/04
C09J11/04
C09J11/06
C09J5/00
H01L21/52 E
H01L21/52 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086048
(22)【出願日】2023-05-25
(62)【分割の表示】P 2022520675の分割
【原出願日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2021056736
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 学
(72)【発明者】
【氏名】三浦 迪
(57)【要約】
【課題】
半導体素子や該半導体素子を備える半導体装置の発熱に伴う光学部品やセンサチップ等の熱劣化を低減ないし防止することができ、かつ、ワイヤーボンディング工程において、半導体素子の剥がれを低減ないし防止できる接着ペースト等を提供する。
【解決手段】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)、及び、熱伝導性フィラー(T)を含有する接着ペーストであって、前記接着ペーストを120℃で4時間加熱硬化して得られる硬化物の熱伝導率が、0.5W/(m・K)以上であり、前記接着ペーストを170℃で2時間加熱硬化して得られる硬化物と、銀メッキ銅板との100℃における接着強度が、5N/mm□以上である接着ペースト等。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)、及び、熱伝導性フィラー(T)を含有する接着ペーストであって、
前記接着ペーストを120℃で4時間加熱硬化して得られる硬化物の熱伝導率が、0.5W/(m・K)以上であり、
前記接着ペーストを170℃で2時間加熱硬化して得られる硬化物と、銀メッキ銅板との100℃における接着強度が、5N/mm□以上である接着ペースト。
【請求項2】
前記硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)が、ポリシルセスキオキサン化合物である、請求項1に記載の接着ペースト。
【請求項3】
前記熱伝導性フィラー(T)が、熱伝導率が5W/(m・K)以上の無機フィラーである、請求項1又は2に記載の接着ペースト。
【請求項4】
前記熱伝導性フィラー(T)が、酸化チタン、アルミナ、及び窒化アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれかに記載の接着ペースト。
【請求項5】
熱伝導性フィラー(T)が、酸化チタンである、請求項1~3のいずれかに記載の接着ペースト。
【請求項6】
接着ペーストの固形分における熱伝導性フィラー(T)の体積充填率が、10vol%以上60vol%未満である、請求項1~5のいずれかに記載の接着ペースト。
【請求項7】
シランカップリング剤(B)を、接着ペーストの固形分100質量部に対して、1.5質量部以上20質量部未満含有する、請求項1~6のいずれに記載の接着ペースト。
【請求項8】
貴金属触媒を実質的に含有しない、請求項1~のいずれかに記載の接着ペースト。
【請求項9】
固形分濃度が、90質量%以上99質量%以下である、請求項1~8のいずれかに記載の接着ペースト。
【請求項10】
半導体素子固定材用接着剤である、請求項1~のいずれかに記載の接着ペースト。
【請求項11】
請求項1~のいずれかに記載の接着ペーストを、半導体素子固定材用接着剤として使用する方法。
【請求項12】
請求項1~のいずれかに記載の接着ペーストを、半導体素子固定材用接着剤として使用する半導体装置の製造方法であって、下記工程(BI)及び工程(BII)を有する半導体装置の製造方法。
工程(BI):半導体素子と支持基板の一方又は両方の接着面に前記接着ペーストを塗布し、圧着する工程
工程(BII):工程(BI)で得られた圧着物の前記接着ペーストを加熱硬化させ、前記半導体素子を前記支持基板に固定する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱硬化して得られる硬化物の熱伝導率が高く、かつ、高温で加熱して得られる硬化物が接着性に優れる接着ペースト、この接着ペーストを半導体素子固定材用接着剤として使用する方法、及びこの接着ペーストを半導体素子固定材用接着剤として使用する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着ペーストは用途に応じて様々な改良がなされ、光学部品や成形体の原料、接着剤、コーティング剤等として産業上広く利用されてきている。
また、接着ペーストは、半導体素子固定材用接着剤等の半導体素子固定材用ペーストとしても注目を浴びてきている。
【0003】
半導体素子には、レーザー、発光ダイオード(LED)等の発光素子や太陽電池等の受光素子等の光半導体素子、トランジスタ、温度センサや圧力センサ等のセンサ、集積回路等がある。
【0004】
近年においては、半導体素子の高輝度化や高出力化が飛躍的に進み、これに伴い、半導体素子の発熱量がさらに増大していく傾向にある。
【0005】
ところが、近年における半導体素子の高輝度化や高出力化に伴い、素子固定用に用いられる接着ペーストの硬化物が、より高いエネルギーの光や半導体素子から発生するより高温の熱に長時間さらされ、接着力が低下したり、劣化して剥離するという問題、又は半導体素子の性能が劣化するという問題が生じることがあった。
したがって、接着ペーストの硬化物の熱伝導率を向上させ、半導体素子から発せられる熱を効率よく排熱し、半導体素子の性能を高レベルで維持ないし向上させることが重要な課題となっている。
【0006】
他方、半導体素子を備える半導体装置の製造方法として、例えば、半導体素子を接着シートでリードフレームなどの被着体に固定する工程と、接着シートを硬化させる工程と、ワイヤーボンディング工程とを含む方法が知られている。
【0007】
ところが、近年における半導体素子の小型化に伴い、ワイヤーボンディング装置から発生する超音波により、小型の半導体素子が振動し易くなっているため、また、ボンディングされたワイヤーの張力が発生するため、ワイヤーボンディング工程においては、半導体素子の剥がれが生じるという問題もあった。
したがって、半導体素子の種類、接着ペーストの硬化温度等の様々なワイヤーボンディング条件に対応するべく、半導体素子の剥がれを防止することができる接着性に優れる接着ペーストも要望されている。
【0008】
本発明に関連して、例えば、特許文献1には、硬化物が接着性に優れる硬化性組成物が記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の硬化性組成物は、該硬化性組成物を加熱硬化して得られる硬化物の熱伝導率に着目されておらず、半導体素子の熱劣化に関する評価結果については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2020/067451号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、半導体素子や該半導体素子を備える半導体装置の発熱に伴う光学部品やセンサチップ等の熱劣化を低減ないし防止することができ、かつ、ワイヤーボンディング工程において、半導体素子の剥がれを低減ないし防止することができる接着ペースト、この接着ペーストを半導体素子固定材用接着剤として使用する方法、及びこの接着ペーストを半導体素子固定材用接着剤として使用する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
なお、本発明において、「高温」とは、「150℃~190℃」をいう。
また、「接着性に優れる」とは、「接着強度が高い」を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、
(i)硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有する接着ペーストを加熱硬化して得られる、熱伝導率が高い硬化物は、半導体素子や該半導体素子を備える半導体装置の発熱に伴う光学部品やセンサチップ等の熱劣化を低減ないし防止することができること、及び、
(ii)硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有する接着ペーストを高温で加熱して得られる、特定の接着強度を有する硬化物は、ワイヤーボンディング工程において、半導体素子の剥がれを低減ないし防止することができること、を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
かくして本発明によれば、下記〔1〕~〔10〕の接着ペースト、〔11〕の接着ペーストの使用方法、及び、〔12〕の接着ペーストを使用する半導体装置の製造方法が提供される。
【0013】
〔1〕硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)、及び、熱伝導性フィラー(T)を含有する接着ペーストであって、
前記接着ペーストを120℃で4時間加熱硬化して得られる硬化物の熱伝導率が、0.5W/(m・K)以上であり、
前記接着ペーストを170℃で2時間加熱硬化して得られる硬化物と、銀メッキ銅板との100℃における接着強度が、5N/mm□以上である接着ペースト。
〔2〕前記硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)が、ポリシルセスキオキサン化合物である、〔1〕に記載の接着ペースト。
〔3〕前記熱伝導性フィラー(T)が、熱伝導率が5W/(m・K)以上の無機フィラーである、〔1〕又は〔2〕に記載の接着ペースト。
〔4〕前記熱伝導性フィラー(T)が、酸化チタン、アルミナ、及び窒化アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の接着ペースト。
【0014】
〔5〕熱伝導性フィラー(T)が、酸化チタンである、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の接着ペースト。
〔6〕接着ペーストの固形分における熱伝導性フィラー(T)の体積充填率が、10vol%以上60vol%未満である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の接着ペースト。
〔7〕シランカップリング剤(B)を、接着ペーストの固形分100質量部に対して、1.5質量部以上20質量部未満含有する、〔1〕~〔6〕のいずれに記載の接着ペースト。
〔8〕貴金属触媒を実質的に含有しない、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の接着ペースト。
【0015】
〔9〕固形分濃度が、90質量%以上99質量%以下である、〔1〕~(8)のいずれかに記載の接着ペースト。
〔10〕半導体素子固定材用接着剤である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の接着ペースト。
〔11〕〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の接着ペーストを、半導体素子固定材用接着剤として使用する方法。
〔12〕〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の接着ペーストを、半導体素子固定材用接着剤として使用する半導体装置の製造方法であって、下記工程(BI)及び工程(BII)を有する半導体装置の製造方法。
工程(BI):半導体素子と支持基板の一方又は両方の接着面に前記接着ペーストを塗布し、圧着する工程
工程(BII):工程(BI)で得られた圧着物の前記接着ペーストを加熱硬化させ、前記半導体素子を前記支持基板に固定する工程
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体素子や該半導体素子を備える半導体装置の発熱に伴う光学部品やセンサチップ等の熱劣化を低減ないし防止することができ、かつ、ワイヤーボンディング工程において、半導体素子の剥がれを低減ないし防止することができる接着ペーストが提供される。
また、本発明によれば、この接着ペーストを半導体素子固定材用接着剤として使用する方法、及びこの接着ペーストを半導体素子固定材用接着剤として使用する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、1)接着ペースト、2)接着ペーストの使用方法、及び、接着ペーストを使用する半導体装置の製造方法、に項分けして詳細に説明する。
【0018】
1)接着ペースト
本発明の接着ペーストは、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)、及び、熱伝導性フィラー(T)を含有する接着ペーストであって、前記接着ペーストを120℃で4時間加熱硬化して得られる硬化物の熱伝導率が、0.5W/(m・K)以上であり、前記接着ペーストを170℃で2時間加熱硬化して得られる硬化物と、銀メッキ銅板との100℃における接着強度が、5N/mm□以上のものである。
【0019】
なお、本発明において、「接着ペースト」とは、「室温(23℃)において、粘稠な液体であって、流動性を有する状態のもの」をいう。
本発明の接着ペーストは、前記状態の性質を有しているため、塗布工程における作業性に優れる。
ここで、「塗布工程における作業性に優れる」とは、「塗布工程において、接着ペーストを吐出管から吐出し、次いで吐出管を引き上げる際、糸引き量が少ないか、又はすぐに途切れて、樹脂飛びしたり、塗布後に液滴が広がることにより、周囲を汚染したりすることがないこと」をいう。
【0020】
本発明の接着ペーストは、接着ペーストを120℃で4時間加熱硬化して得られる硬化物の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上、好ましくは0.7W/(m・K)以上、より好ましくは1.0W/(m・K)以上、さらに好ましくは1.5W/(m・K)以上、特に好ましくは2.0W/(m・K)以上のものである。
加熱硬化して得られる熱伝導率が上記下限値以上である硬化物は、半導体素子や該半導体素子を備える半導体装置の発熱に伴う光学部品やセンサチップ等の熱劣化を低減ないし防止することができるものとなる。
本発明の接着ペーストを加熱硬化して得られる硬化物の熱伝導率は、例えば、次のようにして測定及び算出することができる。すなわち、本発明の接着ペーストをテフロン(登録商標)枠へ流し込み、120℃で4時間加熱処理して硬化させて試験片を作製する。その後、熱拡散率測定装置を使用して、温度波法により、この試験片の熱拡散率を測定する。また、接着ペーストを加熱硬化して得られる硬化物を構成する成分のうち、熱伝導性フィラー(T)を除く成分の比熱を1J/(g・K)、密度を1.2g/cmと仮定し、下記式にて熱伝導率を算出する。
熱伝導率〔W/(m・K)〕=熱拡散率(m/s)×比熱〔J/(g・K)〕×密度(g/cm)×10
より具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0021】
本発明の接着ペーストは、接着ペーストを170℃で2時間加熱硬化して得られる硬化物と、銀メッキ銅板との100℃における接着強度が5N/mm□以上、好ましくは10N/mm□以上、より好ましくは13N/mm□以上のものである。
接着強度が上記下限値以上であることにより、高温で加熱硬化して得られる硬化物は、ワイヤーボンディング工程において、半導体素子の剥がれを低減ないし防止することができるものとなる。
本発明の接着ペーストを加熱硬化して得られる硬化物の接着強度は、例えば、次のようにして測定することができる。すなわち、一辺の長さが1mmの正方形(面積が1mm)のシリコンチップのミラー面に、本発明の接着ペーストを塗布し、塗布面を銀メッキ銅板の上に載せ圧着(圧着後の接着ペーストの厚さ:約3μm)し、170℃で2時間加熱処理して硬化させる。これを、100℃のボンドテスターの測定ステージ上に60秒間放置し、被着体から100μmの高さの位置より、スピード200μm/sで接着面に対し水平方向(せん断方向)に応力をかけ、試験片と被着体との接着強度(N/mm□)を測定する。
本明細書において、「1mm□」とは、「1mm square」、すなわち、「1mm×1mm(一辺の長さが1mmの正方形)」を意味する。
より具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0022】
〔硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)〕
本発明の接着ペーストは、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)(以下、「(A)成分」ということがある。)を含有する。
本発明の接着ペーストは、(A)成分を含有することにより、高温で加熱することにより接着性に優れる硬化物が得られ易くなる。
【0023】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)は、分子内に、炭素-ケイ素結合とシロキサン結合(-Si-O-Si-)を有する化合物である。
また、(A)成分は、熱硬化性の化合物であるため、加熱により、縮合反応が可能な官能基、及び加水分解を経て縮合反応が可能な官能基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有することが好ましい。
このような官能基としては、水酸基及びアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましく、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基がより好ましい。
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の主鎖構造に制限はなく、直鎖状、ラダー状、籠状のいずれであってもよい。
例えば、直鎖状の主鎖構造としては下記式(a-1)で表される構造が、ラダー状の主鎖構造としては下記式(a-2)で表される構造が、籠状の主鎖構造としては下記式(a-3)で表される構造が、それぞれ挙げられる。
【0024】
【化1】
【0025】
【化2】
【0026】
【化3】
【0027】
式(a-1)~(a-3)中、Rx、Ry、Rzは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表し、有機基としては、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基、又はアルキルシリル基が好ましい。式(a-1)の複数のRx、式(a-2)の複数のRy、及び式(a-3)の複数のRzは、それぞれ同一でも相異なっていてもよい。ただし、前記式(a-1)のRxが2つとも水素原子であることはない。
【0028】
前記無置換若しくは置換基を有するアルキル基のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等の炭素数1~10のアルキル基が挙げられる。
【0029】
無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基のシクロアルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基等の炭素数3~10のシクロアルキル基が挙げられる。
【0030】
無置換若しくは置換基を有するアルケニル基のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基等の炭素数2~10のアルケニル基が挙げられる。
【0031】
前記アルキル基、シクロアルキル基及びアルケニル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、4-クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。
【0032】
無置換又は置換基を有するアリール基のアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~10のアリール基が挙げられる。
【0033】
前記アリール基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、4-クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。
【0034】
アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリt-ブチルシリル基、メチルジエチルシリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、メチルシリル基、エチルシリル基等が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、Rx、Ry、Rzとしては、水素原子、無置換若しくは置換基を有する炭素数1~6のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、無置換若しくは置換基を有する炭素数1~6のアルキル基が特に好ましい。
【0036】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)は、例えば、加水分解性官能基(アルコキシ基、ハロゲン原子等)を有するシラン化合物を重縮合する、公知の製造方法により得ることができる。
【0037】
用いるシラン化合物は、目的とする熱硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の構造に応じて適宜選択すればよい。好ましい具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等の2官能シラン化合物;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルジエトキシメトキシシラン等の3官能シラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn-ブトキシシラン、テトラt-ブトキシシラン、テトラs-ブトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリメトキシエトキシシラン等の4官能シラン化合物;等が挙げられる。
【0038】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の質量平均分子量(Mw)は、通常、800以上30,000以下、好ましくは1,000以上20,000以下、より好ましくは1,200以上15,000以下、特に好ましくは3,000以上10,000以下である。質量平均分子量(Mw)が上記範囲内にある硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)を用いることにより、耐熱性及び接着性により優れる硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなる。
【0039】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の分子量分布(Mw/Mn)は特に制限されないが、通常1.0以上10.0以下、好ましくは1.1以上6.0以下である。分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内にある硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)を用いることにより、耐熱性及び接着性により優れる硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなる。
質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0040】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)は、3官能オルガノシラン化合物を重縮合して得られる、ポリシルセスキオキサン化合物であることが好ましい。
本発明の接着ペーストは、(A)成分として、ポリシルセスキオキサン化合物を含有することにより、高温で加熱して接着性に優れる硬化物が得られ易くなる。そのため、ワイヤーボンディング工程において、より効率良くチップを保持することができる。
【0041】
本発明のポリシルセスキオキサン化合物は、下記式(a-4)で示される繰り返し単位を有する化合物である。
本発明の接着ペーストは、(A)成分として、下記式(a-4)で示される繰り返し単位を有するポリシルセスキオキサン化合物を含有することにより、高温で加熱して接着性により優れる硬化物が得られ易くなる。
【0042】
【化4】
【0043】
式(a-4)中、(R-D)は有機基を表す。有機基である(R-D)のうち、Rは、無置換のアルキル基、又は、置換基を有するアルキル基が好ましく、無置換の炭素数1~10のアルキル基、又は、置換基を有する炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。Dは、RとSiとを結合する連結基(ただし、アルキレン基を除く)又は単結合を表す。
【0044】
「無置換の炭素数1~10のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
で表される「無置換の炭素数1~10のアルキル基」の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。
【0045】
で表される「置換基を有する炭素数1~10のアルキル基」の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。なお、この炭素数は、置換基を除いた部分(アルキル基の部分)の炭素数を意味するものである。したがって、Rが「置換基を有する炭素数1~10のアルキル基」である場合、Rの炭素数は10を超える場合もあり得る。
「置換基を有する炭素数1~10のアルキル基」のアルキル基としては、「無置換の炭素数1~10のアルキル基」として示したものと同様のものが挙げられる。
【0046】
「置換基を有する炭素数1~10のアルキル基」の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;シアノ基;式:OJで表される基;等が挙げられる。
「置換基を有する炭素数1~10のアルキル基」の置換基の原子の数(ただし水素原子の数を除く)は、通常1~30、好ましくは1~20である。
ここで、Jは水酸基の保護基を表す。水酸基の保護基としては、特に制約はなく、水酸基の保護基として知られている公知の保護基が挙げられる。例えば、アシル系;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基等のシリル系;メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、1-エトキシエチル基、テトラヒドロピラン-2-イル基、テトラヒドロフラン-2-イル基等のアセタール系;t-ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル系;メチル基、エチル基、t-ブチル基、オクチル基、アリル基、トリフェニルメチル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、フルオレニル基、トリチル基、ベンズヒドリル基等のエーテル系;等が挙げられる。
【0047】
これらの中でも、Rとしては、構造の安定したポリシルセスキオキサン化合物が得られ易く、接着ペーストとしての性能がより安定する観点から、無置換の炭素数1~10のアルキル基、又はフッ素原子を有する炭素数1~10のアルキル基が好ましく、フッ素原子を有する炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。
が、無置換の炭素数1~10のアルキル基であるポリシルセスキオキサン化合物を用いることにより、耐熱性及び接着性により優れる硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなる。
が、フッ素原子を有する炭素数1~10のアルキル基であるポリシルセスキオキサン化合物を用いることにより、屈折率が低い接着ペーストや硬化物が得られ易くなり、屈折率が低いことが要望される光半導体素子に好適に用いられ易くなる。また、半導体素子が光半導体素子である場合の、光半導体素子の光取り出し効率が向上し、発光効率の低下を抑制することができる。
【0048】
フッ素原子を有する炭素数1~10のアルキル基としては、組成式:C(2m-n+1)で表される基(mは1~10の整数、nは2以上、(2m+1)以下の整数である。)が挙げられる。なお、mは、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である。
【0049】
組成式:C(2m-n+1)で表されるフルオロアルキル基としては、CF、CFCF、CF(CF、CF(CF、CF(CF、CF(CF、CF(CF、CF(CF、CF(CF、CF(CF等のパーフルオロアルキル基;CFCHCH、CF(CFCHCH、CF(CFCHCH、CF(CFCHCH等のハイドロフルオロアルキル基;が挙げられる。これらの中でも、CFCHCH基が好ましい。
【0050】
式(a-4)中、Dは、RとSiとを結合する連結基(ただし、アルキレン基を除く)又は単結合を表し、単結合が好ましい。
Dの連結基としては、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,2-フェニレン基、1,5-ナフチレン基等の炭素数が6~20のアリーレン基が挙げられる。
【0051】
ポリシルセスキオキサン化合物は、一種の(R-D)を有するもの(単独重合体)であってもよく、二種以上の(R-D)を有するもの(共重合体)であってもよい。
【0052】
ポリシルセスキオキサン化合物が共重合体である場合、ポリシルセスキオキサン化合物は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体等のいずれであってもよいが、製造容易性等の観点からは、ランダム共重合体が好ましい。
また、ポリシルセスキオキサン化合物の構造は、ラダー型構造、ダブルデッカー型構造、籠型構造、部分開裂籠型構造、環状型構造、ランダム型構造のいずれの構造であってもよい。
【0053】
ポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(すなわち、後述のTサイト)の含有割合は、全繰り返し単位に対して、通常、50~100mol%であり、70~100mol%であることがより好ましく、90~100mol%であることがさらに好ましく、100mol%であることが特に好ましい。
前記式(a-4)で示される繰り返し単位(Tサイト)の含有割合が、上記割合であるポリシルセスキオキサン化合物を用いることで、耐熱性、接着性及び屈折率の性能を発現し易い接着ペーストを得ることができる。
【0054】
ポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位は、下記式(a-5)で示される繰り返し単位であってもよい。すなわち、前記式(a-4)中の(R-D)は、下記式(a-5)中のRであってもよい。
【0055】
【化5】
【0056】
式(a-5)中、Rは、無置換のシクロアルキル基、置換基を有するシクロアルキル基、無置換のアルケニル基、置換基を有するアルケニル基、無置換のアリール基、置換基を有するアリール基、及び、アルキルシリル基からなる群から選ばれる基を表す。これらの中でも、無置換の炭素数6~12のアリール基、及び、置換基を有する炭素数6~12のアリール基が好ましい。
【0057】
「無置換の炭素数6~12のアリール基」としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
で表される「無置換の炭素数6~12のアリール基」の炭素数は6が好ましい。
【0058】
で表される「置換基を有する炭素数6~12のアリール基」の炭素数は6が好ましい。なお、この炭素数は、置換基を除いた部分(アリール基の部分)の炭素数を意味するものである。したがって、Rが「置換基を有する炭素数6~12のアリール基」である場合、Rの炭素数は12を超える場合もあり得る。
「置換基を有する炭素数6~12のアリール基」のアリール基としては、「無置換の炭素数6~12のアリール基」として示したものと同様のものが挙げられる。
【0059】
「置換基を有する炭素数6~12のアリール基」の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられる。
「置換基を有する炭素数6~12のアリール基」の置換基の原子の数(ただし水素原子の数を除く)は、通常1~30、好ましくは1~20である。
【0060】
ポリシルセスキオキサン化合物が、式(a-5)で示される繰り返し単位を有するものである場合、ポリシルセスキオキサン化合物は、一種のRを有するものであってもよく、二種以上のRを有するものであってもよい。
【0061】
ポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(Tサイト)の含有割合は、例えば、NMRピークの帰属及び面積の積分が可能である場合には、29Si-NMR及びH-NMRを測定することにより求めることができる。
【0062】
ポリシルセスキオキサン化合物は、アセトン等のケトン系溶媒;ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルスルホキシド等の含硫黄系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;クロロホルム等の含ハロゲン系溶媒;及びこれらの二種以上からなる混合溶媒;等の各種有機溶媒に可溶である。そのため、これらの溶媒を用いて、ポリシルセスキオキサン化合物の溶液状態での29Si-NMRを測定することができる。
【0063】
前記式(a-4)で示される繰り返し単位は、下記式(a-6)で示されるものであることが好ましい。
【0064】
【化6】
【0065】
式(a-6)中、Gは、(R-D)を表し、R及びDは、前記式(a-4)におけるR及びDと同じ意味を表す。*は、Si原子、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表し、3つの*のうち少なくとも1つはSi原子である。*の炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。複数の*同士は、すべて同一であっても相異なっていてもよい。
【0066】
式(a-6)で示されるように、ポリシルセスキオキサン化合物は、一般にTサイトと総称される、ケイ素原子に酸素原子が3つ結合し、それ以外の基(Gで表される基)が1つ結合してなる部分構造を有する。
【0067】
また、ポリシルセスキオキサン化合物は、熱硬化性の化合物であり、加熱により、縮合反応及び/又は加水分解を経て縮合反応が可能な化合物である。そのため、ポリシルセスキオキサン化合物が有する複数の繰り返し単位(Tサイト)の前記式(a-6)中の*のうち、少なくとも1つは、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
なお、ポリシルセスキオキサン化合物が測定用の溶媒に可溶である場合には、29Si-NMRを測定することにより、前記式(a-6)中の*における水素原子又は炭素数1~10のアルキル基の存在や、前記式(a-6)中の3つの*が全てSi原子である繰り返し単位であるかを確認することができる。
さらに、29Si-NMRのピークの帰属及び面積の積分が可能である場合には、ポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(Tサイト)の総数に対する、前記式(a-6)中の3つの*が全てSi原子である繰り返し単位の総数を概算することができる。
このポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(Tサイト)で示される繰り返し単位(Tサイト)の総数に対する、前記式(a-6)中の3つの*が全てSi原子である繰り返し単位の総数は、耐熱性により優れる硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなる観点から、30~95mol%であることが好ましく、40~90mol%であることがより好ましい。
【0068】
本発明において、ポリシルセスキオキサン化合物は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
ポリシルセスキオキサン化合物の製造方法は特に限定されない。例えば、下記式(a-7)
【0070】
【化7】
【0071】
(式中、R及びDは、前記式(a-4)におけるR及びDと同じ意味を表す。Rは炭素数1~10のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、pは0~3の整数を表す。複数のR、及び複数のXは、それぞれ、互いに同一であっても、相異なっていてもよい。)
で示されるシラン化合物(1)の少なくとも一種を重縮合させることにより、ポリシルセスキオキサン化合物を製造することができる。
の炭素数1~10のアルキル基としては、前記式(a-6)中の*の炭素数1~10のアルキル基として示したものと同様のものが挙げられる。
のハロゲン原子としては、塩素原子、及び臭素原子等が挙げられる。
【0072】
シラン化合物(1)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリブトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-ペンチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン化合物類;
【0073】
メチルクロロジメトキシシラン、メチルクロロジエトキシシラン、メチルジクロロメトキシシラン、メチルブロモジメトキシシラン、エチルクロロジメトキシシラン、エチルクロロジエトキシシラン、エチルジクロロメトキシシラン、エチルブロモジメトキシシラン、n-プロピルクロロジメトキシシラン、n-プロピルジクロロメトキシシラン、n-ブチルクロロジメトキシシラン、n-ブチルジクロロメトキシシラン等のアルキルハロゲノアルコキシシラン化合物類;
【0074】
メチルトリクロロシラン、メチルトリブロモシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリブロモシラン、n-プロピルトリクロロシラン、n-プロピルトリブロモシラン、n-ブチルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、n-ペンチルトリクロロシラン、n-ヘキシルトリクロロシラン、イソオクチルトリクロロシラン等のアルキルトリハロゲノシラン化合物類;
【0075】
CFSi(OCH、CFCFSi(OCH、CFCFCFSi(OCH、CFCFCFCFSi(OCH、CFCHCHSi(OCH、CFCFCFCFCHCHSi(OCH、CFCFCFCFCFCFCHCHSi(OCH、CFCFCFCFCFCFCFCFCHCHSi(OCH、CF(C)Si(OCH、CFSi(OCHCH、CFCFSi(OCHCH、CFCFCFSi(OCHCH、CFCFCFCFSi(OCHCH、CFCHCHSi(OCHCH、CFCFCFCFCHCHSi(OCHCH、CFCFCFCFCFCFCHCHSi(OCHCH、CFCFCFCFCFCFCFCFCHCHSi(OCHCH、CF(C)Si(OCHCH等のフルオロアルキルトリアルコキシシラン化合物類;
【0076】
CFSiCl(OCH、CFCFSiCl(OCH、CFCFCFSiCl(OCH、CFSiBr(OCH、CFCFSiBr(OCH、CFCFCFSiBr(OCH
CFCFCFCFSiCl(OCH、CFCHCHSiCl(OCH、CFCFCFCFCHCHSiCl(OCH、CFCFCFCFCFCFCHCHSiCl(OCH、CFCFCFCFCFCFCFCFCHCHSiCl(OCH、CF(C)SiCl(OCH、CFSiCl(OCHCH、CFCFSiCl(OCHCH、CFCFCFSiCl(OCHCH、CFCFCFCFSiCl(OCHCH、CFCHCHSiCl(OCHCH、CFCFCFCFCHCHSiCl(OCHCH、CFCFCFCFCFCFCHCHSiCl(OCHCH、CFCFCFCFCFCFCFCFCHCHSiCl(OCHCH、CF(C)SiCl(OCHCH等のフルオロアルキルハロゲノジアルコキシシラン化合物類;
【0077】
CFSiCl(OCH)、CFCFSiCl(OCH)、CFCFCFSiCl(OCH)、CFCFCFCFSiCl(OCH)、CFCHCHSiCl(OCH)、CFCFCFCFCHCHSiCl(OCH)、CFCFCFCFCFCFCHCHSiCl(OCH)、CFCFCFCFCFCFCFCFCHCHSiCl(OCH)、CF(C)SiCl(OCH)、CFSiCl(OCHCH)、CFCFSiCl(OCHCH)、CFCFCFSiCl(OCHCH)、CFCFCFCFSiCl(OCHCH)、CFCHCHSiCl(OCHCH)、CFCFCFCFCHCHSiCl(OCHCH)、CFCFCFCFCFCFCHCHSiCl(OCHCH、CFCFCFCFCFCFCFCFCHCHSiCl(OCHCH)、CF(C)SiCl(OCHCH)等のフルオロアルキルジハロゲノアルコキシシラン化合物類;
【0078】
CFSiCl、CFCFSiCl、CFSiBr、CFCFSiBr、CFCFCFSiCl、CFCFCFCFSiCl、CFCHCHSiCl、CFCFCFCFCHCHSiCl、CFCFCFCFCFCFCHCHSiCl、CFCFCFCFCFCFCFCFCHCHSiCl、CF(C)SiCl等のフルオロアルキルトリハロゲノシラン化合物類;
【0079】
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルジエトキシメトキシシラン、フェニルエトキシジメトキシシラン等のフェニルトリアルコキシシラン化合物類;
クロロジメトキシフェニルシラン、クロロジエトキシフェニルシラン等のフェニルハロゲノアルコキシシラン化合物類;
フェニルトリクロロシラン、フェニルトリブロモシラン等のフェニルトリハロゲノシラン化合物類;が挙げられる。
これらのシラン化合物(1)は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
前記シラン化合物(1)を重縮合させる方法は特に限定されない。例えば、溶媒中、又は無溶媒で、シラン化合物(1)に、所定量の重縮合触媒を添加し、所定温度で撹拌する方法が挙げられる。より具体的には、(a)シラン化合物(1)に、所定量の酸触媒を添加し、所定温度で撹拌する方法、(b)シラン化合物(1)に、所定量の塩基触媒を添加し、所定温度で撹拌する方法、(c)シラン化合物(1)に、所定量の酸触媒を添加し、所定温度で撹拌した後、過剰量の塩基触媒を添加して、反応系を塩基性とし、所定温度で撹拌する方法等が挙げられる。これらの中でも、効率よく目的とするポリシルセスキオキサン化合物を得ることができることから、(a)又は(c)の方法が好ましい。
【0081】
用いる重縮合触媒は、酸触媒及び塩基触媒のいずれであってもよい。また、2以上の重縮合触媒を組み合わせて用いてもよいが、少なくとも酸触媒を用いることが好ましい。
酸触媒としては、リン酸、塩酸、ホウ酸、硫酸、硝酸等の無機酸;クエン酸、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸;等が挙げられる。これらの中でも、リン酸、塩酸、ホウ酸、硫酸、クエン酸、酢酸、及びメタンスルホン酸から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0082】
塩基触媒としては、アンモニア水;トリメチルアミン、トリエチルアミン、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、アニリン、ピコリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、イミダゾール等の有機塩基;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の有機塩水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド等の金属アルコキシド;水素化ナトリウム、水素化カルシウム等の金属水素化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩;等が挙げられる。
【0083】
重縮合触媒の使用量は、シラン化合物(1)の総mol量に対して、通常、0.05~10mol%、好ましくは0.1~5mol%の範囲である。
【0084】
重縮合時に溶媒を用いる場合、用いる溶媒は、シラン化合物(1)の種類等に応じて、適宜選択することができる。例えば、水;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコール類;等が挙げられる。これらの溶媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記(c)の方法を採用する場合、酸触媒の存在下、水系で重縮合反応を行った後、反応液に、有機溶媒と過剰量の塩基触媒(アンモニア水など)を添加し、塩基性条件下で、更に重縮合反応を行うようにしてもよい。
【0085】
溶媒の使用量は、シラン化合物(1)の総mol量1mol当たり、通常、0.001リットル以上10リットル以下、好ましくは0.01リットル以上0.9リットル以下である。
【0086】
シラン化合物(1)を重縮合させるときの温度は、通常0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは20℃以上100℃以下の範囲である。反応温度があまりに低いと重縮合反応の進行が不十分となる場合がある。一方、反応温度が高くなりすぎるとゲル化抑制が困難となる。反応は、通常30分から30時間で完結する。
【0087】
なお、用いるモノマーの種類によっては、高分子量化が困難な場合がある。例えば、Rがフッ素原子を有するアルキル基であるモノマーは、Rが通常のアルキル基であるモノマーよりも反応性に劣る傾向がある。このような場合、触媒量を減らし、かつ、穏やかな条件で長時間反応を行うことにより、目的の分子量のポリシルセスキオキサン化合物が得られ易くなる。
【0088】
反応終了後は、酸触媒を用いた場合は、反応溶液に炭酸水素ナトリウム等のアルカリ水溶液を添加することにより、塩基触媒を用いた場合は、反応溶液に塩酸等の酸を添加することにより中和を行い、その際に生じる塩をろ別又は水洗等により除去し、目的とするポリシルセスキオキサン化合物を得ることができる。
【0089】
上記方法により、ポリシルセスキオキサン化合物を製造する際、シラン化合物(1)のOR又はXのうち、加水分解およびその後の縮合反応等が起こらなかった部分は、ポリシルセスキオキサン化合物中に残存する。
【0090】
(A)成分が、例えば、シラン化合物(1)の重縮合反応により得られたポリシルセスキオキサン化合物である場合、後述のシランカップリング剤との反応を含め、硬化は縮合反応で進行するため、本発明の接着ペーストは、白金触媒等の貴金属触媒の存在下で付加反応が進行して硬化する一般的な加熱硬化型シリコーン接着剤とは異なるものである。
したがって、本発明のポリシルセスキオキサン化合物を含有する接着ペーストは、貴金属触媒を実質的に含有しない、又は貴金属触媒の含有量が少ないものである。
ここで、「貴金属触媒を実質的に含有しない、又は貴金属触媒の含有量が少ない」とは、「貴金属触媒と解釈され得る成分が意図的に添加されていないことのほか、接着ペースト中の有効成分の量に対して、貴金属触媒の含有量が触媒金属元素の質量換算で、例えば、1質量ppm未満であること」を意味する。
なお、ここで、「有効成分」とは、「接着ペースト中に含まれる溶媒(S)を除いた成分」をいう。
接着ペーストは、調合ばらつき等を考慮した安定的な製造の観点、貯蔵安定性の観点、貴金属触媒が高価なものである観点等から、貴金属触媒を実質的に含有しない、又は貴金属触媒の含有量が少ないものであることが好ましい。
【0091】
〔熱伝導性フィラー(T)〕
本発明の接着ペーストを構成する熱伝導性フィラー(T)(以下、「(T)成分」ということがある。)は、高い熱伝導率を有するフィラーである。
熱伝導性フィラー(T)の熱伝導率は、25℃において、好ましくは5W/(m・K)以上、より好ましくは8W/(m・K)以上300W/(m・K)未満、特に好ましくは10W/(m・K)以上100W/(m・K)未満である。
熱伝導率が上記下限値以上の熱伝導性フィラー(T)を用いることにより、熱伝導率が0.5W/(m・K)以上である硬化物が得られ易くなる。
熱伝導性フィラー(T)の熱伝導率は、例えば、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(例えば、NETZSCH-GeratebauGmbH社製、LFA477 Nanoflash等)を使用したレーザーフラッシュ法等により測定することができる。
【0092】
熱伝導性フィラー(T)の構成成分としては、熱伝導性を向上させるものであれば特に限定されないが、例えば、金属;金属酸化物;炭化物;窒化物;等が挙げられる。
【0093】
金属とは、周期表における、1族(Hを除く)、2~11族、12族(Hgを除く)、13族(Bを除く)、14族(C及びSiを除く)、15族(N、P、As及びSbを除く)、又は16族(O、S、Se、Te及びPoを除く)に属する元素をいう。
【0094】
金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、ベーマイト、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、及びこれらの複合酸化物等が挙げられる。
【0095】
炭化物としては、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素、炭酸カルシウム等が、窒化物としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
【0096】
熱伝導性フィラー(T)は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、本発明においては、(A)成分と良好に混合し易く、かつ、加熱硬化して得られる硬化物の熱伝導率が高く、接着性に優れる接着ペーストが得られ易いことから、酸化チタン、アルミナ、窒化アルミニウムが好ましく、アルミナがより好ましい。
【0097】
熱伝導性フィラー(T)の形状は、球状、鎖状、針状、板状、片状、棒状、繊維状等のいずれであってもよいが、球状であるのが好ましい。ここで、「球状」とは、「真球状の他、回転楕円体、卵形、金平糖状、まゆ状等球体に近似できる多面体形状を含む略球状」を意味する。
【0098】
熱伝導性フィラー(T)の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上5μm未満、より好ましくは0.2μm以上4μm未満、さらに好ましくは0.4μm以上3.5μm未満、特に好ましくは0.8μm以上3μm未満である。
(T)成分の平均粒径が上記範囲内であることにより、(A)成分と良好に混合し易く、接着ペーストとして混合が比較的容易であり、かつ、加熱硬化して得られる硬化物の熱伝導率が高く、接着性に優れる接着ペーストが得られ易くなる。
また、接着ペーストの塗膜の厚みは、通常0.5μm以上10μm以下程度であり、塗布された接着ペースト上に、半導体素子を水平にマウントすることができる観点からも、平均粒径は、上記上限値未満であることが好ましい。
さらに、本発明の接着ペーストを加熱硬化して得られる硬化物が高い接着強度を発現するためには、熱伝導性フィラー(T)同士の接触ではなく、(T)成分と(A)成分とが可能な限り多く接触している必要がある。すなわち、個々の熱伝導性フィラー(T)において、可能な限り、全表面が(A)成分で被覆されていることが好ましい。このような観点から、平均粒径が上記下限値未満になると、熱伝導性フィラー(T)の凝集力が高まり、(A)成分が被覆することができない熱伝導性フィラー(T)同士の接触部分が多くなるため、高い接着強度を発現しないおそれがあるが、平均粒径が上記下限値以上であることで、(A)成分が被覆することができる熱伝導性フィラー(T)の面積が大きくなるため、そのおそれを低減することができる。
熱伝導性フィラー(T)の平均粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡観察・画像解析による一次粒子径測定と粒度分布測定装置(セディグラフ)を使用したX線透過沈降法により算出することができる。
【0099】
接着ペーストの固形分における熱伝導性フィラー(T)の体積充填率は、好ましくは10vol%以上80vol%未満、より好ましくは20vol%以上70vol%未満、特に好ましくは30vol%以上60vol%未満である。
体積充填率が上記範囲内となるように(T)成分を含有させることにより、熱伝導性が向上するため、熱伝導率が高い硬化物が得られ易くなる。
体積充填率は、例えば、次のようにして測定及び算出することができる。すなわち、(T)成分の質量及び密度から、(T)成分の体積を算出し、さらに、接着ペーストの固形分のうち(T)成分を除く成分の質量及び密度から、接着ペーストの固形分のうち(T)成分を除く成分の体積を算出して、下記式にて算出することができる。
体積充填率(vol%)=〔(T)成分の体積(cm)/[(T)成分の体積(cm)+接着ペーストの固形分のうち(T)成分を除く成分の体積(cm)]〕×100
より具体的には、実施例に記載の方法により測定及び算出することができる。
【0100】
(T)成分の含有量は特に限定されないが、その量は、接着ペーストの固形分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上90質量部未満、より好ましくは35質量部以上85質量部未満、さらに好ましくは40質量部以上80質量部未満となる量である。
(T)成分を上記範囲で用いることにより、熱伝導率が高く、かつ、高温で加熱することにより接着性に優れる硬化物が得られ易くなる。
【0101】
また、(T)成分の含有量は特に限定されないが、その量は、(A)成分の固形分100質量部に対して、好ましくは40質量部以上1000質量部未満、より好ましくは60質量部以上900質量部未満、さらに好ましくは80質量部以上800質量部未満、特に好ましくは100質量部以上600質量部未満となる量である。
(T)成分を上記範囲で用いることにより、熱伝導率が高く、かつ、高温で加熱することにより接着性に優れる硬化物が得られ易くなる。
【0102】
〔その他の成分〕
本発明の接着ペーストは、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)及び熱伝導性フィラー(T)を含有するものであるが、以下に示す成分を含有していてもよい。
【0103】
(1)溶媒(S)
本発明の接着ペーストは、溶媒(S)を含有していてもよい。溶媒(S)は、本発明の接着ペーストの成分を溶解又は分散し得るものであれば特に限定されない。
溶媒(S)としては、254℃以上の沸点を有する有機溶媒(以下、「有機溶媒(SH)」と記載することがある。)を含むものであることが好ましい。
ここで、「沸点」は、「1013hPaにおける沸点」をいう(本明細書において同じ。)。
有機溶媒(SH)の沸点は、254℃以上であることが好ましく、254℃以上300℃以下であることがより好ましい。
【0104】
有機溶媒(SH)としては、具体的には、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点274℃)、1,6-へキサンジオールジアクリレート(沸点260℃)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(沸点256℃)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点261℃)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点264~294℃)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(沸点275℃)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点290~310℃)等が挙げられる。
これらの中でも、有機溶媒(SH)としては、本発明の効果がより得られやすい観点から、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートが好ましい。
有機溶媒(SH)は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
本発明の接着ペーストは、有機溶媒(SH)以外の溶媒を含有してもよい。
有機溶媒(SH)以外の溶媒としては、沸点が100℃以上254℃未満の溶媒(以下、「有機溶媒(SL)」と記載することがある。)が好ましい。
有機溶媒(SL)としては、沸点が100℃以上254℃未満であり、かつ、本発明の接着ペーストの成分を溶解又は分散し得るものであれば特に制限されない。
有機溶媒(SH)と有機溶媒(SH)以外の溶媒を併用することにより、接着ペーストを加熱して硬化物を得る温度範囲をより精密に調節することができるため、熱による影響を受けやすい光学部品やセンサチップに対する加熱の影響を小さくすることができる。
【0106】
有機溶媒(SL)の具体例としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点247℃)、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点229℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点209℃)、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点212℃)、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル(沸点212℃)、トリプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点215℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点216℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点218℃)、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点230℃)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(沸点245℃)、
トリプロピレングリコールメチルエーテル(沸点242℃)、プロピレングリコールフェニルエーテル(沸点243℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点249℃)、ベンジルアルコール(沸点204.9℃)、フェネチルアルコール(沸点219~221℃)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点192℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点134.8℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点124.5℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)、シクロペンタノン(沸点130℃)、シクロヘキサノン(沸点157℃)、シクロヘプタノン(沸点180℃)、シクロオクタノン(沸点195~197℃)、シクロヘキサノール(沸点161℃)、シクロヘキサジエノン(沸点104~104.5℃)等が挙げられる。
これらの中でも、有機溶媒(SL)としては、有効成分を良好に混合し易い観点から、グリコール系溶媒が好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートがより好ましい。
【0107】
有機溶媒(SH)と有機溶媒(SL)を併用する場合、具体的には、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(溶媒(SH))とジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(溶媒(SL))の組み合わせ、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(溶媒(SH))と、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(溶媒(SL))の組み合わせ、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(溶媒(SH))とジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(溶媒(SL))の組み合わせ、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(溶媒(SH))とジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(溶媒(SL))の組み合わせが好ましい。
【0108】
本発明の接着ペーストは、固形分濃度が、好ましくは50質量%以上99質量%以下、より好ましくは70質量%以上97質量%以下になる量の溶媒(S)を含有することが好ましい。
固形分濃度がこの範囲内であることで、有効成分を良好に混合し易く、接着ペーストをシリンジに充填する工程や塗布工程における作業性に優れる。
ここで、「接着ペーストをシリンジに充填する工程における作業性に優れる」とは、「適量を気泡なくシリンジ内に充填できること」をいう。
また、ダイボンディングを行なう際、接着ペーストとその接着対象である基板等との間に生じる空隙部(ボイド)の発生を抑制することができ、パッケージの信頼性が高くなる。
【0109】
(2)シランカップリング剤(B)
本発明の接着ペーストは、(B)成分として、シランカップリング剤を含有していてもよい。
シランカップリング剤としては、分子内に窒素原子を有するシランカップリング剤(B1)(以下、「シランカップリング剤(B1)」ということがある。)及び分子内に酸無水物構造を有するシランカップリング剤(B2)(以下、「シランカップリング剤(B2)」ということがある。)が挙げられる。
【0110】
シランカップリング剤(B1)を含有する接着ペーストは、塗布工程における作業性に優れ、かつ、加熱時に、(A)成分と共に縮合反応することによる硬化性に優れ、高温で加熱した場合の接着性、耐熱性及び硬化物の割れ抑制性により優れる硬化物を与える。
ここで、「硬化物の割れ抑制性により優れる」とは、「接着ペーストを加熱して硬化物を得る際に、温度変化に伴う硬化物の割れが発生しないこと」をいう。
【0111】
シランカップリング剤(B1)としては、分子内に窒素原子を有するシランカップリング剤であれば特に制限はない。例えば、下記式(b-1)で表されるトリアルコキシシラン化合物、式(b-2)で表されるジアルコキシアルキルシラン化合物又はジアルコキシアリールシラン化合物等が挙げられる。
【0112】
【化8】
【0113】
上記式中、Rは、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基を表す。複数のR同士は同一であっても相異なっていてもよい。
は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等の炭素数1~6のアルキル基;又は、フェニル基、4-クロロフェニル基、4-メチルフェニル基、1-ナフチル基等の、置換基を有する、又は置換基を有さないアリール基;を表す。
【0114】
は、窒素原子を有する、炭素数1~10の有機基を表す。また、Rは、さらに他のケイ素原子を含む基と結合していてもよい。
の炭素数1~10の有機基の具体例としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル基、3-アミノプロピル基、N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)アミノプロピル基、3-ウレイドプロピル基、N-フェニル-アミノプロピル基等が挙げられる。
【0115】
上記式(b-1)又は(b-2)で表される化合物のうち、Rが、他のケイ素原子を含む基と結合した有機基である場合の化合物としては、イソシアヌレート骨格を介して他のケイ素原子と結合してイソシアヌレート系シランカップリング剤を構成するものや、ウレア骨格を介して他のケイ素原子と結合してウレア系シランカップリング剤を構成するものが挙げられる。
【0116】
これらの中でも、シランカップリング剤(B1)としては、接着強度がより高い硬化物が得られ易いことから、イソシアヌレート系シランカップリング剤、及びウレア系シランカップリング剤が好ましく、さらに、分子内に、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4以上有するものが好ましい。
ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4以上有するとは、同一のケイ素原子に結合したアルコキシ基と、異なるケイ素原子に結合したアルコキシ基との総合計数が4以上という意味である。
【0117】
ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4以上有するイソシアヌレート系シランカップリング剤としては、下記式(b-3)で表される化合物が、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4以上有するウレア系シランカップリング剤としては、下記式(b-4)で表される化合物が挙げられる。
【0118】
【化9】
【0119】
式中、Rは、前記式(b-1)及び(b-2)におけるRと同じ意味を表す。t1~t5はそれぞれ独立して、1~10の整数を表し、1~6の整数が好ましく、3が特に好ましい。
【0120】
式(b-3)で表される化合物の具体例としては、1,3,5-N-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-トリi-プロポキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-トリブトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等の1,3,5-N-トリス〔(トリ(炭素数1~6)アルコキシ)シリル(炭素数1~10)アルキル〕イソシアヌレート;
1,3,5-N-トリス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジメトキシエチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジメトキシi-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジメトキシn-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジメトキシフェニルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジエトキシi-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジエトキシn-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジエトキシフェニルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジi-プロポキシメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジi-プロポキシエチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジi-プロポキシi-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジi-プロポキシn-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジi-プロポキシフェニルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジブトキシメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジブトキシエチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジブトキシi-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジブトキシn-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジブトキシフェニルシリルプロピル)イソシアヌレート等の1,3,5-N-トリス〔(ジ(炭素数1~6)アルコキシ)シリル(炭素数1~10)アルキル〕イソシアヌレート;等が挙げられる。
【0121】
式(b-4)で表される化合物の具体例としては、N,N’-ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-トリプロポキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-トリブトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ウレア等のN,N’-ビス〔(トリ(炭素数1~6)アルコキシシリル)(炭素数1~10)アルキル〕ウレア;
N,N’-ビス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-ジメトキシエチルシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)ウレア等のN,N’-ビス〔(ジ(炭素数1~6)アルコキシ(炭素数1~6)アルキルシリル(炭素数1~10)アルキル)ウレア;
N,N’-ビス(3-ジメトキシフェニルシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-ジエトキシフェニルシリルプロピル)ウレア等のN,N’-ビス〔(ジ(炭素数1~6)アルコキシ(炭素数6~20)アリールシリル(炭素数1~10)アルキル)ウレア;等が挙げられる。
シランカップリング剤(B1)は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0122】
これらの中でも、シランカップリング剤(B1)としては、1,3,5-N-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(以下、前記2つを「イソシアヌレート化合物」という。)、N,N’-ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア(以下、前記2つを「ウレア化合物」という。)、及び、上記イソシアヌレート化合物とウレア化合物との組み合わせを用いるのが好ましく、イソシアヌレート化合物を用いるのがより好ましい。
【0123】
上記イソシアヌレート化合物とウレア化合物とを組み合わせて用いる場合、両者の使用割合は、(イソシアヌレート化合物)と(ウレア化合物)の質量比で、100:1~100:200であるのが好ましく、100:10~100:110がより好ましい。このような割合で、イソシアヌレート化合物とウレア化合物とを組み合わせて用いることにより、接着強度がより高く、耐熱性により優れる硬化物を与える接着ペーストを得ることができる。
【0124】
本発明の接着ペーストがシランカップリング剤(B1)〔(B1)成分〕を含有する場合、(B1)成分の含有量は特に限定されないが、その量は、接着ペーストの固形分100質量部に対して、好ましくは0.7質量部以上15質量部未満、より好ましくは1質量部以上13質量部未満、さらに好ましくは1.3質量部以上11質量部未満、特に好ましくは1.5質量部以上9質量部未満となる量である。
(B1)成分を上記範囲で用いることにより、(B1)成分を加える効果をより発現することができ、かつ、熱伝導率が0.5W/(m・K)以上である硬化物が得られ易くなる。
【0125】
シランカップリング剤(B2)を含有する接着ペーストは、塗布工程における作業性に優れ、かつ、高温で加熱した場合の接着性及び耐熱性により優れる硬化物を与える。
【0126】
シランカップリング剤(B2)としては、2-(トリメトキシシリル)エチル無水コハク酸、2-(トリエトキシシリル)エチル無水コハク酸、3-(トリメトキシシリル)プロピル無水コハク酸、3-(トリエトキシシリル)プロピル無水コハク酸等の、トリ(炭素数1~6)アルコキシシリル(炭素数2~8)アルキル無水コハク酸;
2-(ジメトキシメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、ジ(炭素数1~6)アルコキシメチルシリル(炭素数2~8)アルキル無水コハク酸;
2-(メトキシジメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、(炭素数1~6)アルコキシジメチルシリル(炭素数2~8)アルキル無水コハク酸;
【0127】
2-(トリクロロシリル)エチル無水コハク酸、2-(トリブロモシリル)エチル無水コハク酸等の、トリハロゲノシリル(炭素数2~8)アルキル無水コハク酸;
2-(ジクロロメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、ジハロゲノメチルシリル(炭素数2~8)アルキル無水コハク酸;
2-(クロロジメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、ハロゲノジメチルシリル(炭素数2~8)アルキル無水コハク酸;等が挙げられる。
シランカップリング剤(B2)は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0128】
これらの中でも、シランカップリング剤(B2)としては、トリ(炭素数1~6)アルコキシシリル(炭素数2~8)アルキル無水コハク酸が好ましく、3-(トリメトキシシリル)プロピル無水コハク酸又は3-(トリエトキシシリル)プロピル無水コハク酸が特に好ましい。
【0129】
本発明の接着ペーストがシランカップリング剤(B2)〔(B2)成分〕を含有する場合、(B2)成分の含有量は特に限定されないが、その量は、接着ペーストの固形分100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上5質量部未満、より好ましくは0.1質量部以上3質量部未満、さらに好ましくは0.2質量部以上2質量部未満、特に好ましくは0.3質量部以上1.5質量部未満となる量である。
(B2)成分を上記範囲で用いることにより、(B2)成分を加える効果をより発現することができ、かつ、熱伝導率が0.5W/(m・K)以上である硬化物が得られ易くなる。
【0130】
また、本発明の接着ペーストが(B)成分を含有する場合、(B)成分の含有量は特に限定されないが、その量は、接着ペーストの固形分100質量部に対して、好ましくは0.7質量部以上20質量部未満、より好ましくは1質量部以上15質量部未満、さらに好ましくは1.3質量部以上12質量部未満、特に好ましくは1.5質量部以上9質量部未満となる量である。
(B)成分を上記範囲で用いることにより、(B)成分を加える効果をより発現することができ、かつ、熱伝導率が0.5W/(m・K)以上である硬化物が得られ易くなる。
【0131】
(3)その他の添加成分
本発明の接着ペーストは、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記(A)、(T)及び(B)成分以外の他の成分〔(C)成分〕を含有してもよい。
(C)成分としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
【0132】
酸化防止剤は、加熱時の酸化劣化を防止するために添加される。酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
【0133】
リン系酸化防止剤としては、ホスファイト類、オキサホスファフェナントレンオキサイド類等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、モノフェノール類、ビスフェノール類、高分子型フェノール類等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0134】
これらの酸化防止剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の使用量は、(A)成分に対して、通常、10質量%以下である。
【0135】
紫外線吸収剤は、得られる接着ペーストの耐光性を向上させる目的で添加される。
紫外線吸収剤としては、サリチル酸類、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類等が挙げられる。
これらの紫外線吸収剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
紫外線吸収剤の使用量は、(A)成分に対して、通常、10質量%以下である。
【0136】
光安定剤は、得られる接着ペーストの耐光性を向上させる目的で添加される。
光安定剤としては、例えば、ポリ[{6-(1,1,3,3,-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)イミノ}]等のヒンダードアミン類等が挙げられる。
これらの光安定剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
(C)成分の総使用量は、(A)成分に対して、通常、20質量%以下である。
【0137】
本発明の接着ペーストは、例えば、下記工程(AI)及び工程(AII)を有する製造方法により製造することができる。
工程(AI):上記式(a-7)で示される化合物の少なくとも一種を、重縮合触媒の存在下に重縮合させて、ポリシルセスキオキサン化合物を得る工程
工程(AII):工程(AI)で得られたポリシルセスキオキサン化合物を、溶媒(S)に溶解させ、得られたポリシルセスキオキサン化合物を含有する溶液に、熱伝導性フィラー(T)を添加する工程
【0138】
工程(AI)の上記式(a-7)で示される化合物の少なくとも一種を、重縮合触媒の存在下に重縮合させて、ポリシルセスキオキサン化合物を得る方法としては、1)接着ペーストの項で例示したものと同様の方法が挙げられる。また、工程(AII)で用いる溶媒(S)、熱伝導性フィラー(T)は、1)接着ペーストの項で溶媒(S)、熱伝導性フィラー(T)として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0139】
工程(AII)において、ポリシルセスキオキサン化合物を溶媒(S)に溶解する方法としては、例えば、ポリシルセスキオキサン化合物と熱伝導性フィラー(T)、及び、所望により前記(B)成分や(C)成分を、溶媒(S)と混合、脱泡し、溶解する方法が挙げられる。
混合方法、脱泡方法は特に限定されず、公知の方法を利用することができる。
混合する順番は特に限定されない。
上記工程(AI)及び工程(AII)を有する製造方法によれば、本発明の接着ペーストを、効率よく簡便に製造することができる。
【0140】
本発明は、接着ペーストを加熱して溶媒(S)を揮発させ、硬化することにより、硬化物を得ることができる。
硬化させるときの加熱温度は、通常100~190℃であり、好ましくは120~190℃である。また、硬化させるときの加熱時間は、通常30分から10時間、好ましくは30分から5時間、より好ましくは30分から3時間である。
【0141】
本発明の接着ペーストは、上述した特性を有することから、半導体素子固定材用接着剤として好適に使用することができる。
【0142】
2)接着ペーストの使用方法、及び、接着ペーストを使用する半導体装置の製造方法
本発明の接着ペーストを半導体素子固定材用接着剤として使用する半導体装置を製造する方法は、下記工程(BI)及び工程(BII)を有する方法である。
工程(BI):半導体素子と支持基板の一方又は両方の接着面に接着ペーストを塗布し、圧着する工程
工程(BII):工程(BI)で得られた圧着物の前記接着ペーストを加熱硬化させ、前記半導体素子を前記支持基板に固定する工程
【0143】
半導体素子としては、レーザー、発光ダイオード(LED)等の発光素子や太陽電池等の受光素子等の光半導体素子、トランジスタ、温度センサや圧力センサ等のセンサ、集積回路等が挙げられる。これらの中でも、本発明の接着ペーストを用いることによる効果がより好適に発揮され易い観点から、光半導体素子が好ましい。
【0144】
半導体素子を接着するための支持基板の材料としては、ソーダライムガラス、耐熱性硬質ガラス等のガラス類;セラミックス;サファイア;鉄、銅、アルミニウム、金、銀、白金、クロム、チタン及びこれらの金属の合金、ステンレス(SUS302、SUS304、SUS304L、SUS309等)等の金属類;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、アクリル樹脂、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ガラスエポキシ樹脂等の合成樹脂;等が挙げられる。
【0145】
本発明の接着ペーストは、シリンジに充填されていることが好ましい。
接着ペーストがシリンジに充填されていることにより、塗布工程における作業性に優れる。
シリンジの材料は、合成樹脂、金属、ガラスのいずれであってもよいが、合成樹脂であるのが好ましい。
シリンジの容量としては、特に制限はなく、充填する又は塗布する接着ペーストの量に合わせ、適宜決定すればよい。
また、シリンジとしては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、SS-01Tシリーズ(TERUMO社製)、PSYシリーズ(武蔵エンジニアリング社製)等が挙げられる。
【0146】
本発明の半導体装置の製造方法においては、接着ペーストが充填されたシリンジが垂直に下降して支持基板に近づき、シリンジの先端部から所定量の接着ペーストを吐出した後、シリンジが上昇して支持基板から離れるとともに、支持基板が横に移動する。そして、この操作を繰り返すことで、連続的に接着ペーストが支持基板に塗布される。その後、塗布された接着ペースト上に、半導体素子をマウントし、支持基板に圧着される。
【0147】
接着ペーストの塗布量は、特に限定されず、硬化させることにより、接着の対象とする半導体素子と支持基板を強固に接着することができる量であればよい。通常、接着ペーストの塗膜の厚みが0.5μm以上5μm以下、好ましくは1μm以上3μm以下となる量である。
【0148】
次いで、得られた圧着物の接着ペーストを加熱硬化させることにより、半導体素子は支持基板に固定される。
加熱温度及び加熱時間は、1)接着ペーストの項で説明した通りである。
【0149】
本発明の半導体装置の製造方法により得られる半導体装置は、半導体素子が接着ペースト上に良好にマウントされ、かつワイヤーボンディング工程において、高い接着強度で固定されたものであり、また、熱劣化が低減ないし防止されたものとなる。
【実施例0150】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
各例中の部及び%は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0151】
〔平均分子量測定〕
製造例で得た硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、標準ポリスチレン換算値とし、以下の装置及び条件にて測定した。
装置名:HLC-8220GPC、東ソー株式会社製
カラム:TSKgelGMHXL、TSKgelGMHXL、及び、TSKgel2000HXLを順次連結したもの
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:80μl
測定温度:40℃
流速:1ml/分
検出器:示差屈折計
【0152】
〔IRスペクトルの測定〕
製造例で得た硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)のIRスペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計(パーキンエルマー社製、Spectrum100)を使用して測定した。
【0153】
(製造例1)
300mlのナス型フラスコに、メチルトリエトキシシラン(信越化学工業社製)71.37g(400mmol)を仕込んだ後、蒸留水21.6mlに35%塩酸0.10g(シラン化合物の合計量に対して0.25mol%)を溶解した水溶液を撹拌しながら加え、全容を30℃にて2時間、次いで70℃に昇温して5時間撹拌したのち、反応液を室温(23℃)まで戻し、酢酸プロピルを140g加えた。
ここに、28%アンモニア水0.12g(シラン化合物の合計量に対して0.5mol%)を、全容を撹拌しながら加え、70℃に昇温して3時間さらに撹拌した。
反応液に精製水を加え、分液し、水層のpHが7.0になるまでこの操作を繰り返した。
有機層をエバポレーターで濃縮し、濃縮物を真空乾燥することにより、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A1)を55.7g得た。
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A1)の質量平均分子量(Mw)は7,800、分子量分布(Mw/Mn)は4.52であった。
また、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A1)のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si-CH:1272cm-1,1409cm-1,Si-O:1132cm-1
【0154】
実施例及び比較例で用いた化合物を以下に示す。
〔(A)成分〕
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A1):製造例1で得られたオルガノポリシロキサン化合物
【0155】
〔(T)成分〕
熱伝導性フィラー(T1):酸化チタン(石原産業社製、製品名「CR-90-2」、平均粒径:0.25μm、熱伝導率:8W/(m・K))
熱伝導性フィラー(T2):アルミナ(住友化学社製、製品名「AA-03F」、平均粒径:0.25μm、熱伝導率:30W/(m・K))
熱伝導性フィラー(T3):アルミナ(住友化学社製、製品名「AA-04」、平均粒径:0.50μm、熱伝導率:30W/(m・K))
熱伝導性フィラー(T4):アルミナ(住友化学社製、製品名「AA-2」、平均粒径:2.1μm、熱伝導率:30W/(m・K))
熱伝導性フィラー(T5):炭酸マグネシウム(神島化学工業社製、製品名「MS-S」、平均粒径:1.2μm、熱伝導率:15W/(m・K))
熱伝導性フィラー(T6):窒化アルミニウム(昭和電工社製、製品名「AlN0201」、平均粒径:2.0μm、熱伝導率:285W/(m・K))
【0156】
〔溶媒(S)〕
ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BDGAC)(SL)(東京化成工業社製、沸点:247℃)とトリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(TPnB)(SH)(ダウ・ケミカル社製、沸点:274℃)との混合溶媒〔BDGAC:TPnB=40:60(質量比)〕
〔(B)成分〕
シランカップリング剤(B1):1,3,5-N-トリス〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕イソシアヌレート(信越化学工業社製、製品名「KBM-9659」)
シランカップリング剤(B2):3-(トリメトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(信越化学工業社製、製品名「X-12-967C」)
【0157】
(実施例1)
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A1)100部に、溶媒(S)73部、熱伝導性フィラー(T1)160部、シランカップリング剤(B1)30部、シランカップリング剤(B2)3部を加えて、全容を十分に混合、脱泡することにより、固形分濃度80%の接着ペースト1を得た。
【0158】
(実施例2~8、比較例1~4)
化合物(各成分)の種類及び配合割合を、下記表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして接着ペースト2~8及び1r~4rを得た。
【0159】
実施例及び比較例で得られた接着ペースト1~8及び1r~4rを用いて、それぞれ以下の試験を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0160】
〔体積充填率算出〕
(T)成分の質量及び密度から、(T)成分の体積を算出し、さらに、接着ペーストの固形分のうち(T)成分を除く成分の質量及び密度から、接着ペーストの固形分のうち(T)成分を除く成分の体積を算出して、下記式にて、接着ペーストの固形分における(T)成分の体積充填率を算出した。
体積充填率(vol%)=〔(T)成分の体積(cm)/[(T)成分の体積(cm)+接着ペーストの固形分のうち(T)成分を除く成分の体積(cm)]〕×100
なお、接着ペーストの固形分のうち(T)成分を除く成分の密度として1.2g/cmを用い、(T)成分の密度は、化学大辞典(東京化学同人、第1版、1989年10月20日発行)に基づき、酸化チタン((T1)成分)の密度4.17g/cm、アルミナ((T2)成分、(T3)成分及び(T4)成分)の密度4.0g/cm、炭酸マグネシウム((T5)成分)の密度3.04g/cm、窒化アルミニウム((T6)成分)の密度3.05g/cmを用いた。
【0161】
〔熱伝導率測定〕
実施例及び比較例で得た接着ペーストを縦10mm×横10mm×高さ0.2mmのテフロン(登録商標)枠へ流し込み、120℃で4時間加熱処理して硬化させて、表面が平滑な試験片を得た。その後、熱拡散率測定装置(アイフェイズ社製、ai-Phase Mobile 1)を使用して、温度波法により、この試験片の熱拡散率を測定した。また、接着ペーストを加熱硬化して得られる硬化物を構成する成分のうち、熱伝導性フィラー(T)を除く成分の比熱として1J/(g・K)、密度として1.2g/cmを用い、下記式にて熱伝導率を算出した。
熱伝導率〔W/(m・K)〕=熱拡散率(m/s)×比熱〔J/(g・K)〕×密度(g/cm)×10
【0162】
〔接着強度評価〕
一辺の長さが1mmの正方形(面積が1mm)のシリコンチップのミラー面に、実施例及び比較例で得た接着ペーストを塗布し、標準環境下(温度:23℃±1℃、相対湿度:50±5%)に静置した。5分後、塗布面を被着体〔無電解銀メッキ銅板(銀メッキ表面の平均粗さRa:0.025μm)〕の上に載せ、圧着後の接着ペーストの厚さが約3μmになるように圧着した。その後、170℃で2時間加熱処理して硬化させて試験片付被着体を得た。この試験片付被着体を、100℃のボンドテスター(デイジ社製、シリーズ4000)の測定ステージ上に60秒間放置し、被着体から100μmの高さの位置より、スピード200μm/sで接着面に対し水平方向(せん断方向)に応力をかけ、100℃における、試験片と被着体との接着強度(N/mm□)を測定した。
【0163】
〔半導体素子の熱劣化評価〕
光素子固定用基板(エノモト社製;OP-04)に、実施例及び比較例で得た接着ペーストをそれぞれ塗布し、圧着後の接着ペーストの厚さが約3μmになるように光半導体素子(Genelite社製、B2020BCI0)を圧着した。その後、170℃で2時間加熱処理して硬化させた。その後、光半導体素子と光素子固定用基板間を2本のワイヤーでボンディングして電気的に導通させて熱劣化評価用の試験片を得た。その後、熱劣化評価用の試験片における光半導体素子を電流値250mAで発光させ、初期の光束と通電時間1000時間後の光束とを、測定装置(MentorGraphics社製、T3Ster/TeraLED)を用いて測定した。
測定した光束より、光束の維持率(%)〔[通電時間1000時間後の光束(lm)/初期の光束(lm)]×100〕を算出し、以下の基準で半導体素子の熱劣化を評価した。
優:光束の維持率が97%以上であった。
良:光束の維持率が95%以上97%未満であった。
可:光束の維持率が93%以上95%未満であった。
不可:光束の維持率が93%未満であった。
【0164】
〔ワイヤーボンディング評価〕
一辺の長さが1mmの正方形(面積が1mm)のシリコンチップ(#2000研削、200μm厚)のミラー面に、実施例及び比較例で得た接着ペーストを、それぞれ塗布し、塗布面を被着体〔無電解銀メッキ銅板(銀メッキ表面の平均粗さRa:0.025μm)〕の上に圧着後の接着ペーストの厚さが約3μmになるように圧着した。その後、170℃で2時間加熱処理して硬化させて試験片付被着体を得た。その後、ワイヤーボンダ〔新川社製;UTC-2000Super(φ25μm、Au線ワイヤー、K&S社製)〕を用いて170℃、0.01秒間、荷重25gf、超音波出力30PLSでシリコンチップと銅板間を4本のワイヤーでボンディングし、「無電解銀メッキ銅板からの試験片(接着ペーストの硬化物)の剥がれの有無」を観察した。同評価及び観察を、実施例及び比較例で得た接着ペースト各々に対して、繰り返しチップ20個に対して行い、以下の基準で評価した。
良:チップ20個のうち、剥がれ又は位置ずれが発生したチップが0個であった。
可:チップ20個のうち、剥がれ又は位置ずれが発生したチップが1~3個であった。
不可:チップ20個のうち、剥がれ又は位置ずれが発生したチップが4個以上であった。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
【0167】
表1及び2から以下のことが分かる。
実施例1~8の接着ペースト1~8は、加熱硬化して得られる硬化物の熱伝導率が高く、かつ、高温で加熱して得られる硬化物が接着性に優れるものである。そのため、接着ペースト1~8を加熱して得られる硬化物を用いた場合には、半導体素子の熱劣化を低減することができ、かつ、ワイヤーボンディング工程において、半導体素子の剥がれを低減ないし防止することができる。
酸化チタンよりもアルミナの方が、熱伝導率が高いため、(T)成分として、アルミナ(T2)を含有させた接着ペースト2は、酸化チタン(T1)を含有させた接着ペースト1と比較して、熱伝導率がより高い硬化物を得ることができる。そのため、接着ペースト2を加熱硬化して得られた硬化物を用いた場合、半導体素子の熱劣化をより低減ないし防止することができる。他方、アルミナよりも酸化チタンの方が、製造例1で作製した(A)成分に対してより良好に混合し易く、(A)成分を被覆することができる熱伝導性フィラー(T)の面積がより大きくなるため、接着ペースト1は、接着ペースト2と比較して、高温で加熱して得られる硬化物がより接着性に優れるものとなる(実施例1及び2)。
すなわち、熱伝導性フィラー(T)の種類の選択により、半導体素子の種類や接着ペーストを硬化させる温度等を勘案し、最適な接着ペーストを得ることができる。
【0168】
平均粒径の大きい熱伝導性フィラー(T)を含有する接着ペーストの方が、熱伝導率がより高い硬化物を得ることができ、かつ、高温で加熱して得られる硬化物の接着強度に優れる。そのため、平均粒径の大きい熱伝導性フィラー(T)を含有する接着ペーストを加熱硬化して得られる硬化物を用いた場合、ワイヤーボンディング工程において、半導体素子の剥がれをより低減ないし防止することができる(実施例2~4)。
また、接着ペーストの固形分100質量部に対する(T)成分の含有量が多い接着ペースト5及び6は、(T)成分の含有量が少ない接着ペースト4と比較して、熱伝導率がより高い硬化物を得ることができる。そのため、接着ペースト5及び6を加熱硬化して得られた硬化物を用いた場合、半導体素子の熱劣化をより低減ないし防止することができる。他方、接着ペースト6は、(T)成分の含有量が多い反面、接着ペーストの固形分100質量部に対する(B)成分及び(B1)成分の含有量は少なくなるため、高温で加熱して得られる硬化物の接着性は若干低下する(実施例4~6)。
平均粒径の小さい熱伝導性フィラー(T2)を含有する接着ペーストであっても、その含有量が多い接着ペースト7及び4rは、熱伝導率が高い硬化物を得ることができる。さらに、接着ペースト7は、接着ペーストの固形分100質量部に対する(B)成分及び(B1)成分の含有割合が比較的多いため、接着ペーストを高温で加熱して得られる硬化物がより接着性に優れるものとなる。(実施例7及び比較例4)。
(T)成分として、窒化アルミニウム(T6)を含有させた接着ペースト8であっても、アルミナ(T4)を含有させた接着ペースト4と同様に、熱伝導率が高い硬化物を得ることができ、高温で加熱して得られる硬化物は接着性に優れる(実施例4及び8)。
すなわち、熱伝導性フィラー(T)の含有量の選択により、半導体素子の種類や接着ペーストを硬化させる温度等を勘案し、最適な接着ペーストを得ることができる。
【0169】
一方、比較例1の接着ペースト1rは、熱伝導性フィラー(T)を含有しない接着ペーストであるため、加熱硬化して得られる硬化物の熱伝導率が低い。そのため、この硬化物を用いた場合、半導体素子の熱劣化が見られた。
比較例2の接着ペースト2rは、接着ペーストの固形分100質量部に対する(T)成分の含有量が少ないため、加熱硬化して得られる硬化物の熱伝導率が低い。そのため、この硬化物を用いた場合、半導体素子の熱劣化が見られた。
比較例3の接着ペースト3rは、熱伝導性フィラー(T)として、炭酸マグネシウムを含有させたものであり、製造例1で作製した(A)成分に対しては比較的混合し難く、(A)成分を被覆することができる熱伝導性フィラー(T)の面積が小さくなるため、接着ペーストを高温で加熱して得られる硬化物は、十分な接着強度を発現しない。そのため、この硬化物を用いた場合、ワイヤーボンディング工程において、半導体素子の剥がれが見られた。