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特開2023-105018金属コーティングを有するターボ機械部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105018
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】金属コーティングを有するターボ機械部品
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/52 20060101AFI20230721BHJP
   C23C 18/31 20060101ALI20230721BHJP
   C23C 18/32 20060101ALI20230721BHJP
   F04D 29/02 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C23C18/52 A
C23C18/31 A
C23C18/32
F04D29/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086603
(22)【出願日】2023-05-26
(62)【分割の表示】P 2021552845の分割
【原出願日】2020-03-06
(31)【優先権主張番号】102019000003463
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルチ、ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】マーラ、フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ジェノヴァ、ヴィルジーリオ
(72)【発明者】
【氏名】パーリア、ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】プランツェッティ、アリス
(72)【発明者】
【氏名】ロマネッリ、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ディ ピエトロ、ドメニコ
(72)【発明者】
【氏名】カプッチーニ、フィリッポ
(57)【要約】
【課題】本発明は、防汚性と侵食及び腐食への高い耐性とを有するターボ機械用の部品を提供する。
【解決手段】ニッケルと、1マイクロメートル未満の平均サイズを有する粒子(P)と、ホウ素とリンのうちの少なくとも1つと、の混合物を含む組成物(C)の、無電解ニッケルめっき(ENP)を介して堆積された少なくとも1つの層で少なくとも部分的にコーティングされた基材を備え、組成物(C)の層が、50マイクロメートルを超えて100マイクロメートルまでの厚さを有し、粒子(P)が、セラミック材料、グラファイト系材料、又はフルオロポリマーを含む、又はこれらから成り、組成物(C)が、(C)の総重量に対して、15~20重量%の粒子(P)を含み、組成物(C)の厚さ変動が≦5μmである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械の部品であって、ニッケルと、1マイクロメートル未満の平均サイズを有する粒子(P)と、ホウ素とリンのうちの少なくとも1つと、の混合物を含む組成物(C)の、無電解ニッケルめっき(ENP)を介して堆積された少なくとも1つの層で少なくとも部分的にコーティングされた基材を備え、前記組成物(C)の層が、50マイクロメートルを超えて100マイクロメートルまでの厚さを有し、前記粒子(P)が、セラミック材料、グラファイト系材料、又はフルオロポリマーを含む、又はこれらから成り、
前記組成物(C)が、(C)の総重量に対して、15~20重量%の前記粒子(P)を含み、前記組成物(C)の厚さ変動が≦5μmである、部品。
【請求項2】
前記組成物(C)が、セラミック材料の粒子とフルオロポリマーの粒子とを含む、請求項1に記載の部品。
【請求項3】
前記セラミック材料が、窒化ケイ素、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、炭化タングステン、炭化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化チタン(Tic)、酸化チタン(TiO2)、ハフニウム炭化物(HfC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化タンタル(TaC)、ハフニウム/タンタル炭化物(TaxHfy-xCy)、ほう化ジルコニウムZrB2、酸化マグネシウムMgO、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化バナジウム(VO2)、イットリア部分安定化酸化ジルコニウム(YSZ)、及びこれらの混合物のうちの1つであり、前記グラファイト系材料が、MWCNT(マルチウォールカーボンナノチューブ)、GNP(グラファイトナノプレレート)、グラフェン、グラファイトオキシド、及びこれらの混合物のうちの1つであり、前記フルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、及びこれらの混合物のうちの1つである、請求項1又は2のいずれか一項に記載の部品。
【請求項4】
前記粒子(P)が、50~500ナノメートルの平均粒径を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の部品。
【請求項5】
化学ニッケルめっきによって堆積され、前記組成物(C)の組成と異なる組成を有する少なくとも1つのコーティング層を、前記基材と、化学ニッケルめっきによって堆積された組成物(C)の層との間に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の部品。
【請求項6】
遠心圧縮機、往復圧縮機、ガスタービン、遠心ポンプ、海底部品、蒸気タービン、又はターボマシン補助システムの部品であり、好ましくは、流圧部品、伝熱部品、並びに評
価設備、掘削設備、補完設備、井戸掘削設備、海底設備の一部である、請求項1~5のいずれか一項に記載の部品。
【請求項7】
好ましくは、遠心圧縮機、往復圧縮機、ガスタービン、遠心ポンプ、海底部品、又は蒸気タービン、並びに評価設備、掘削設備、補完設備、井戸掘削設備、海底設備の一部である、請求項1~6のいずれか一項に記載の部品を備えるターボ機械。
【請求項8】
ターボ機械の表面上の摩耗又は付着を防ぐための、ニッケルと、1マイクロメートル未満の平均寸法を有する粒子(P)と、ホウ素とリンのうちの少なくとも1つと、を含む混合物を含む組成物(C)の少なくとも1つの層を備えるコーティングの使用であって、前記組成物(C)の層が50マイクロメートルを超えて100マイクロメートルまでの厚さを有し、前記粒子(P)が、セラミック材料、グラファイト系材料、又はフルオロポリマーを含む、又はこれらから成り、前記使用が、摩耗及び/又は汚損する可能性のあるターボ機械の表面の少なくとも一部への、前記組成物(C)の化学ニッケルめっき(ENP)を介した適用を含み、
前記組成物(C)が、(C)の総重量に対して、15~20重量%の前記粒子(P)を含み、前記組成物(C)の厚さ変動が≦5μmである、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題は、ニッケルと、ホウ素とリンのうちの少なくとも1つと、セラミック材料、グラファイト系材料、又はフルオロポリマーを含む粒子(P)と、の混合物を含む組成物(C)の、化学ニッケルめっき(ENP)を介して堆積された少なくとも1つの層で少なくとも部分的にコーティングされた基材を備えるターボ機械用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機、ポンプ、タービン、熱交換器などのターボ機械設備及びターボマシン補助システムの汚損は、経時的なターボ機械性能の劣化をもたらす主な欠点である。汚損は、金属基材への様々な有機及び無機材料の不所望な付着によって引き起こされる。煙、オイルミスト、炭素質残渣、及び海塩は、そのような材料の一般的な例である。
【0003】
材料の付着及び堆積はまた、高温及び圧力と組み合わされたオイル又は水ミストからも影響を受け、炭化水素重合(即ち、分解ガス圧縮)及び/又は(熱交換器、タービン上の)鉱物材料の成長/堆積を促進する。その結果、こうした材料の蓄積は、伝熱装置の熱効率損失、大きな流体圧力低下、粗さの増大による空力性能の損失、及び最終的には、予定されていないプラント操業停止による製造損失を伴う設備破損など、多数の様々な悪影響を引き起こす。
【0004】
汚損は、ターボ機械装置に入るガスの適切な濾過システムによって部分的に防止することができ、洗浄剤を用いて部品を「稼働中に」洗浄することで、少なくとも部分的には除去することができる。しかしながら、稼働中の洗浄は有効ではなく、より徹底的な除去が必要とされ、これは、ランニングコストの増大と生産性の低下とを伴うプラントの操業停止を要する。
【0005】
洗浄に頼ることなくこの欠点を防止しようとする1つの方法は、汚損付着物に晒される表面上に、汚染物質を金属基材へ付着させない材料の層を堆積させることである。そのような材料の例としては、有機/無機、フッ化及び非フッ化ポリマーが挙げられるが、いくつかの重大な欠点を有する。実際に、ポリマー材料は有機汚損に対して有効であるが、ターボ機械部品及びターボマシン補助システムによって処理される流体流中に無機粒子も存在するときには、ポリマー材料は急速に消滅する。ポリマーコーティングが固体粒子浸食(SPE)によって除去されると、汚損が未コーティング基材上に最終的に形成される。更に、ポリマーコーティングの適用は、他の全ての噴霧プロセスと同様に、コーティングされる表面への見通し線を必要とする。この適用技術の主な欠点は、小径の穴の内面や他の制限されたアクセス面へのコーティングが困難であることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固体粒子浸食に加えて、ターボ機械部品上のポリマー材料の堆積物は、水/溶媒注入の存在による液滴浸食(LDE)の影響も受け、これが、従来のコーティングの除去及びその結果生じる基材の浸食を引き起こすことによって、効率低下及び耐用年数の早期終了につながる。(固体粒子又は液体浸食による)ポリマーコーティングの除去は、流体流中に存在する汚染物質への曝露により、最終的に部品基材の腐食を引き起こす可能性がある。
【0007】
更に、ターボ機械の回転部品の金属材料は、特に、高速回転及び熱勾配を受けたときに、補修中に変形する傾向がある。表面コーティングを維持するために、コーティング材料は、下にある基材の変形に追従するべきである。ポリマー材料は、特に高速かつ高いひずみ速度下で、脆性破壊を起こすことが多い。更に、ポリマー材料は、基材に対する接着性が制限され、表面調製(グリットブラスト)によってのみ保証される。しかしながら、この処理は、基材(即ち、超仕上げ又は機械加工された表面)上で常に実行できるとは限らない。その結果、最初にコーティングされた部品は、コーティング層を完全に又は部分的に失い、経時的に汚損、浸食、及び腐食に侵される可能性がある。
【0008】
ターボ機械用の既知のコーティングは、汚損を防止できないと同時に、腐食及び浸食にも耐えることができない。
【0009】
一態様では、本明細書に開示される主題は、防汚特性並びに侵食及び腐食に対する高い耐性を有するターボ機械用部品に関する。本明細書に開示される部品は、汚損除去/洗浄に必要とされる不所望な停止の数を低減しつつ、ターボ機械及びターボ機械補助装置の効率及び耐用年数を向上させることができる。
【0010】
別の態様では、本明細書に開示される主題は、上記の部品を備えるターボ機械に関する。非限定的な例として、当該部品は、遠心圧縮機、往復圧縮機、ガスタービン、遠心ポンプ、海底部品、蒸気タービン、又はターボマシン補助システム(これらに限定されるものではなく、流圧部品、伝熱部品、評価設備、掘削設備、補完設備、井戸掘削設備、海底設備が挙げられる)の一部であってもよい。
【0011】
別の態様では、本明細書に開示される主題は、ターボ機械の表面上の腐食、侵食、及び汚損を防ぐための、ニッケルと、ホウ素及びリンのうちの少なくとも1つと、1マイクロメートルより小さいサイズの粒子と、を含む混合物を含む組成物(C)の少なくとも1つの層を備えるコーティングの使用に関し、当該使用が、腐食及び/又は侵食及び/又は汚損の可能性のあるターボ機械部品の表面の少なくとも一部への当該組成物(C)の化学ニッケルめっき(ENP)の適用を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示の開示された実施形態、及びその付随する利点の多くのより完全な理解は、添付図面と関連して考慮されるときに、以下の詳細な説明を参照することによって、より良く理解されるように、容易に得られるであろう。
図1図1は、セラミック粒子、PTFE粒子、及びセラミックとPTFE粒子の混合物をそれぞれ含む、本明細書に開示されるENP組成物でコーティングされた基材の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
図2図2は、充填材を含有しないENPコーティングと、本明細書に開示される粒子を含有するENPコーティングとの硬度値を示すグラフである。
図3図3は、ENP+フルオロポリマー粒子、ENP+無機粒子、及びENP+フルオロポリマー+無機粒子のEDS(エネルギー分散X線分光法)分析を示すグラフである。
図4図4は、ENP+フルオロポリマー粒子、ENP+無機粒子、及びENP+フルオロポリマー+無機粒子のEDS(エネルギー分散X線分光法)分析を示すグラフである。
図5図5は、ENP+フルオロポリマー粒子、ENP+無機粒子、及びENP+フルオロポリマー+無機粒子のEDS(エネルギー分散X線分光法)分析を示すグラフである。
図6図6は、フルオロポリマー粒子又は無機粒子を含有する、本明細書に開示される2つのENPコーティング上で実施される接着試験の結果を示すグラフである。
図7図7は、10バール(図7a)又は50バール(図7b)又はCO2(10バール)と硫化水素(H2S)(10バール)の混合物(図7c)において、塩化物(100000ppmCl-)及び二酸化炭素(CO2)のみで汚染された湿潤ガス中に90日間曝露した後のサンプルのSEM断面図である。
図8図8は、いくつかの部分圧力における、CO2及びH2Sで飽和した溶液中の、65℃及び100000ppmの塩化物下での厚さ損失の観点から腐食結果を示すグラフである。99.7信頼度レベルを参照して、AVG値は厚さ損失平均に相当し、3sは3σ間隔に相当する。
図9図9は、表面の疎水性閾値を表す、90度の接触角の場合の湿潤性包絡曲線に関する結果を示すグラフである。
図10図10は、本発明によるコーティングされた基材の防汚性を試験するための社内開発システムのスキームを示す図である。
図11図11は、固体浸食試験の結果を示すグラフである。
図12a図12aは、液滴浸食試験の結果を示すグラフである(12bは図12aのグラフの下領域の拡大図)。
図12b図12bは、液滴浸食試験の結果を示すグラフである(12bは図12aのグラフの下領域の拡大図)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一態様によれば、本主題は、有効に汚染を防止すると共に侵食及び腐食に抵抗することができるターボ機械用のコーティング部品に関する。本明細書に開示されるコーティング部品を備えるターボ機械及びターボ機械補助装置は、既知のコーティング部品と比較して、効率が高く、耐用年数が長く、機械装置からの汚損の除去/洗浄に必要とされる不所望な停止の数が著しく低減される。
【0014】
一態様によれば、本明細書に開示される主題は、ターボ機械の部品であって、ニッケルと、1マイクロメートル未満の平均サイズを有する粒子(P)と、ホウ素とリンのうちの少なくとも1つと、の混合物を含む組成物(C)の、無電解ニッケルめっき(ENP)を介して堆積された少なくとも1つの層で少なくとも部分的にコーティングされた基材を備え、当該組成物層(C)が、10~250マイクロメートル、好ましくは20~200マイクロメートル、より好ましくは50~100マイクロメートルの厚さを有し、当該粒子(P)が、セラミック材料、グラファイト系材料、又はフルオロポリマーを含む、又はこれらから成る、部品を提供する。
【0015】
本明細書に開示されるターボ機械部品の利点は多数あり、組成物(C)を含むコーティング層が、腐食、液体衝突、及び固体浸食に対する耐性が高いと共に、部品の汚染を最小限に抑える、又は完全に回避する事実を含む。また、組成物(C)を含むコーティング層は、基材への優れた接着性と、動作中の基材の弾性又は熱ひずみに適応する能力とを有し、その結果、防汚コーティングによる被覆が、部品の耐用年数全体にわたって保持される。
【0016】
好適な実施形態では、本明細書に開示される部品では、組成物(C)が、セラミック材料の粒子及びフルオロポリマーの粒子を含む。
【0017】
ナノ粒子の濃度の調節と共にナノ粒子の単層又は共堆積により、腐食及び浸食に耐えることができると共に、汚染を防止することができる多機能コーティングの合成を可能にする。更に、ENPは見通し線コーティングではないため、実質的に任意の形状及びサイズのターボ機械の固定部品及び回転部品により容易に適用することができ、超仕上げ表面を含む元の表面仕上げを変更することなく、欠陥のないコーティング及び最適に保護された表面を得ることができる。本明細書に開示される部品の汚損からの保護、及び腐食及び侵食への耐性は、現状技術よりも向上し、最終的には、ターボ機械性能の拡張、ダウンタイムの回避、コーティング被覆率の問題回避、作業の全体コストの低減をもたらす。
【0018】
好適な実施形態では、本明細書に開示される部品では、組成物(C)の粒子において、セラミック材料が、窒化ケイ素、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、炭化タングステン、炭化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化チタン(Tic)、酸化チタン(TiO2)、ハフニウム炭化物(HfC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化タンタル(TaC)、ハフニウム/タンタル炭化物(TaxHfy-xCy)、ほう化ジルコニウムZrB2、酸化マグネシウムMgO、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化バナジウム(VO2)、イットリア部分安定化酸化ジルコニウム(YSZ)、及びこれらの混合物のうちの1つであり、グラファイト系材料が、MWCNT(マルチウォールカーボンナノチューブ)、GNP(グラファイトナノプレレート)、グラフェン、グラファイトオキシド、及びこれらの混合物のうちの1つであり、フルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、及びこれらの混合物のうちの1つである。
【0019】
好適な実施形態では、本明細書に開示される部品では、組成物(C)が、組成物(C)の総重量に対して、5~35%、好ましくは10~30%、より好ましくは15~20%の粒子(P)を含む。
【0020】
好適な実施形態では、本明細書に開示される部品では、組成物(C)中の粒子(P)が、1マイクロメートル未満、好ましくは50~500ナノメートル、より好ましくは100~350ナノメートル、又は150~250ナノメートルの平均粒径を有する。
【0021】
好適な実施形態では、本明細書に開示される部品では、基材が最初に、第1の金属材料層で、好ましくは無電解ニッケルめっき又は電着を介してコーティングされ、組成物(C)を含む層が当該第1の層上に堆積される、又は基材がコーティング組成物(C)で直接コーティングされる。
【0022】
好適な実施形態では、本明細書に開示される部品では、基材と、化学ニッケルめっきを介して堆積された組成物(C)の層との間に、(C)の組成とは異なる組成を有する化学ニッケルめっきを介して堆積される少なくとも1つの他のコーティング層が存在する。
【0023】
好適な実施形態では、本開示は、遠心圧縮機、往復圧縮機、ガスタービン、遠心ポンプ、海底部品、蒸気タービン、又はターボマシン補助システムの部品、好ましくは、流圧部品、伝熱部品、並びに評価設備、掘削設備、補完設備、井戸掘削設備、海底設備の一部に関する。
【0024】
一実施形態において、本開示は、好ましくは、遠心圧縮機、往復圧縮機、ガスタービン、遠心ポンプ、海底部品、又は蒸気タービン、並びに評価設備、掘削設備、補完設備、井戸掘削設備、海底設備の一部である、上述したような部品を備えるターボ機械に関する。
【0025】
本開示の一実施形態は、ターボ機械の表面上の侵食及び汚損を防ぐための、ニッケルと、1マイクロメートル未満の平均寸法を有する粒子(P)と、ホウ素とリンのうちの少なくとも1つと、を含む混合物を含む組成物(C)の少なくとも1つの層を備えるコーティングの使用であって、当該組成物層(C)が10~250マイクロメートル、好ましくは20~200マイクロメートル、より好ましくは50~100マイクロメートルの厚さを有し、当該粒子(P)が、セラミック材料、グラファイト系材料、又はフルオロポリマーを含む、又はこれらから成り、当該使用が、汚損及び/又は侵食する可能性のあるターボ機械の表面の少なくとも一部への、当該組成物(C)の化学ニッケルめっき(ENP)を介した適用を含む、使用に関する。
【0026】
次に、本開示の実施形態を詳述し、その実施例を以下報告する。各実施例は、本開示の説明として提供する。以下の説明及び実施例は、本開示を限定することを意図するものではない。実際に、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、本開示において様々な変更及び変形が行われることができることが、当業者にとって明らかであろう。
【0027】
本明細書全体を通して「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な場所における「一実施形態では」又は「実施形態では」という語句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指すものではない。更に、特定の特徴、構造又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な様式で組み合わされてもよい。
【0028】
別途記載のない限り、本開示の文脈において、混合物中の成分の割合量は、混合物の総重量に対するこの成分の重量を指すものとする。
【0029】
別途記載のない限り、本開示の文脈において、組成物が「1つ以上の成分又は物質を含む」という指示は、他の成分又は物質が、具体的に示されるものに加えて存在し得ることを意味する。
【0030】
別途記載のない限り、本開示の範囲内では、ある量、例えば成分の重量含有量について示される値の範囲は、下限及び範囲の上限を含む。例えば、成分Aの重量又は体積含有量が「XからY」と称される場合、X及びYは数値であり、AはX又はY又はその中間のいずれかであり得る。
【0031】
本開示の文脈において、用語「無電解ニッケルめっき」(ENP)は、電流を使用せずに、水溶液から基板上にニッケル合金を堆積させるための自己触媒プロセスを示す。電気めっきとは異なり、ENPは、電解質中のニッケルイオンを基板上のニッケル金属に還元するために外部の直流源に依存しない。ENPは化学プロセスであり、溶液中のニッケルイオンは、化学還元によってニッケル金属に還元される。使用される最も一般的な還元剤は、次亜リン酸ナトリウム又は水素化ホウ素ナトリウムである。ニッケル-ホウ素又はニッケル-リン(Ni-P)合金の均一な層が通常得られる。Ni-P合金の冶金学上の特性は、2~5%(低リン)から11~14%(高リン)の範囲であり得るリンの割合に依存する。基材上に直接、又は電気めっきによって適用される第1のニッケル層上へのENP及びその堆積プロセスの非限定的な例は、国際公開第2013/153020(A2)号に開示されている。
【0032】
本開示の文脈において、用語「基材」は、金属材料又は非金属材料を、ターボ機械部品のバルクとして示す。非限定的な例として、当該材料は、任意で、例えば、電気めっき又は無電解めっきを介して堆積されるニッケルリン層などの他の材料の1つ以上の層で任意にコーティングされた、炭素鋼、低合金鋼、ステンレス鋼などの鋼、ニッケル系合金、鋳鉄、アルミニウム、バビット材料、グラフェン、雲母、カーボンナノチューブ、シリコンウェハ、チタン、銅及びカーボンファイバであってもよい。材料の非限定例は、国際公開第2013/153020(A2)号及び同第2015/173311(A1)号に開示されている。
【0033】
本開示の文脈において、用語「フルオロポリマー」は、有機ポリマー材料を示し、少なくとも1つのフッ素原子が存在する。このようなポリマーの非限定的な例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、及びこれらの混合物である。
【0034】
本開示の文脈において、粒子(P)のサイズは、当業者に既知の任意の好適な方法によって決定される。非限定的な例として、粒子(P)のサイズは、撮像分析(例えば、顕微鏡検査及びマイクロ分析2012、18(S2)、1244を参照)、レーザ光回折、走査電子顕微鏡分析、透過電子顕微鏡法、原子力顕微鏡法、電界放出走査型走査電子顕微鏡法(FE/STEM)、及び「Nanotrust-Possible Health Effects of Manufactured Nanomaterials、ウィーン、2009年9月24日」に提示されている、イスプラ、健康消費者保護研究所、H.Stammによる「Overview of the Methods and Techniques of Measurement of Nanoparticles」にリストアップされた方法などの同等の方法を介して決定することができる。粒径は、DIN ISO13321に従って動的光散乱(DLS)によって決定することができるが、これに限定されない。
【0035】
本明細書全体を通して「一実施形態」又は「実施形態」又は「いくつかの実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じて様々な場所における「一実施形態では」又は「実施形態では」又は「いくつかの実施形態では」という語句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指すものではない。更に、特定の特徴、構造又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な様式で組み合わされてもよい。
【0036】
様々な実施形態の要素を提示する際、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「s
aid」は、要素のうちの1つ以上があることを意味することを意図している。「備える
(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、
非排他的であり、挙げられた要素以外に更に要素があってもよいと意味することを意図し
ている。
【0037】
非限定的な例として、コーティングされたサンプルは、最初に炭素鋼、低合金鋼、及びステンレス鋼を基材として、以下のコーティング組成物(1000mlのめっき浴に対して、全ての重量はグラムである)を用いて得られる。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に報告される成分に加えて、少なくとも1つの界面活性剤及び1つの阻害剤が溶液中に存在してもよい。
【0040】
図1の走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、セラミック粒子、PTFE粒子、並びにセラミック及びPTFE粒子の混合物をそれぞれ含む、本明細書に開示されるENP組成物でコーティングされた基材の典型的なプロファイルを示す。
【0041】
粒子が充填されたENPコーティング(表1)が、厚さの均一性に関する特徴が記載され(ISO2178に準拠して、厚さ計を用いて厚さ測定が行われた)、厚さ変動が≦5μmであることを示している。間隙が存在しないことが、フェロキシル試験を実施することによって確定された(ASTM A380/A380M)。濾紙上で青色のスポットが観察されず、コーティングされた基材を塩水噴霧(ASTM B117)に3000時間曝露し、錆が検出されなかった。
【0042】
ENPマトリックス中の粒子の存在が硬度に及ぼす影響が、コーティング熱処理(HT、250℃超下での1時間超の熱処理)の有無で検討され、図2で報告した(ASTM E92)。
【0043】
コーティングの化学組成は、EDS分析による特徴を記載した(図3、ENP+フルオロポリマー粒子のEDS;図4、ENP+無機粒子のEDS;図5、ENP+フルオロポリマー+無機粒子のEDS)。
【0044】
機械的衝撃に対するコーティングの抵抗は、ASTM B571に従って試験され、倍率10xで観察されるコーティングクラックが存在しないことが実証された。
【0045】
基材へのコーティングの接着性は、引張試験システムを使用して、ASTM C633による接着試験を実施することによって評価した。これらの結果を図6に報告する。接着結果は、接着剤の剥離に関連し、コーティング剥離は観察されなかった。
【0046】
腐食試験では、ごくわずかな腐食が見られ、コーティング表面は全体的な厚さが維持された。図7は、10バール(図7a)又は50バール(図7b)又はCO2(10バール)と硫化水素(H2S)(10バール)の混合物(図7c)において、塩化物(100000ppmCl-)及び二酸化炭素(CO2)のみで汚染された湿潤ガス中に90日間曝露した後のサンプルのSEM断面図である。H2Sに曝露されたサンプルのみが、ENPと環境との反応を示し、いくらかの局所的な腐食をもたらした。写真は、サンプルに記録された最悪の領域(6~7マイクロメートルの腐食浸透)を示す。CO2及び塩化物を含む環境では、サンプルは腐食のいかなる痕跡も残していない。この結果は、塩と、塩及び酸との存在下での優れた耐食性を示す。
【0047】
いくつかの部分圧力における、CO2及びH2Sで飽和した溶液中の65℃及び100000ppmの塩化物下での厚さ損失に関する腐食結果を図8に示す(AVG=平均、3s=3σ間隔、99.7信頼レベルに相当)。腐食速度は、時間に対して放物線の傾向を示した。この傾向に基づいて、20年の曝露後、最大35マイクロメートルのコーティング厚さ損失(機械耐用年数を表す)が予測された。
【0048】
湿潤特性は、炭素鋼上の様々なタイプのコーティングを使用して、液滴法を使用して判定した。湿潤特性は、サンプリングされた表面上の液体の接触角を測定する工程と、固体表面の表面自由エネルギーの極性成分及び分散成分並びに湿潤性包絡曲線を計算する工程と、を含む方法を介して判定した。
【0049】
以下の材料を試験した。
【表2】
接触角は、以下の液体:水、ジヨードメタン、エチレングリコール及びグリセロールを用いて、サンプル毎に判定した。測定誤差を最小化するために、各サンプルについて少なくとも30回の測定を実施した。湿潤特性試験では、ENP及びフルオロポリマーの粒子の混合物を含むコーティングは、試験されたコーティングの中で最良の性能を示した。具体的には、120度もの水接触角が観察されている。様々な材料及び液体の接触角を以下に示す。
【表3】
Gly=グリセロール;Et-Gly=エチレン-グリコール;dimeth=ジヨードメタン、H2O=水
更に、90度の接触角についてOwens Wendtモデルを解くことによって「湿潤包絡線」を描くことで、ENP及びフルオロポリマーの粒子の混合物を含むコーティングが、最良の撥液性能を示した。
したがって、表面の疎水性閾値を表す、90度の湿潤性包絡曲線に対する結果を、図9で報告する。面積が小さいほど、固体表面と液体との相互作用が低い。
【0050】
防汚性は、社内開発試験を用いて特徴付けた。ENP+フルオロポリマーでコーティングされたサンプルを、高速回転ホルダ上に搭載し、機械の遠心作用に供する一方、試験チャンバ内に汚染媒体を注入し、サンプル表面に高速で衝突させた。マシンのスキームを図10に示す。汚染組成物は、アスファルト(35%v/v)と潤滑剤(合成又は鉱物、例えば、Mobil600W)オイル(65%v/v)との混合物である。汚染媒体は加熱板を通じて加熱され、蠕動ポンプによって試験チャンバ内に注入される。サンプルは、試験の前後に重量を測定される。汚損試験結果は、同じ試験条件で試験した基準サンプル(コーティング無し)に対するサンプルの質量増加率で示される。未処理表面を有するサンプルの重量増を0と考えると、サンドブラストされた表面は+43%の質量増加を有し、即ち、著しく多量の汚染物が形成され、ENPコーティング表面は+3.2%重量増であり(即ち、ENP処理表面には、基本的に未コーティングサンプルと同量の汚染物が堆積された)、本開示によるフルオロポリマー粒子を含む層でコーティングされたサンプルは、未処理のサンプルに対して、汚染の有意な低減(-37%の重量増)を示した。
【0051】
全てのサンプルは、優れた液滴浸食(LDE)及び固体粒子浸食(SPE)への耐性を示した。前者の試験は、400μmの直径の水滴での500万回の高速衝撃(250m/s)にサンプルを晒すことによって実行された。後者の試験では、200+10kPaのグラベロメータ空気圧を用い、290+1mmの衝撃距離、54+1の衝撃角度、23℃、50+5%の相対湿度、2回の10秒ショットで、サンプルを粒径4~5mmのグリットでグリットブラストした。固体粒子浸食試験の結果を図11で報告し、液滴浸食試験の結果を図12a及び12bに示す。両試験とも、本開示による組成物(C)でコーティングされたサンプルの耐衝撃性は、ポリマーコーティング(PTFE又はシリコン、図12a)されたサンプルの耐衝撃性よりも優れている。更に、両方の試験において、耐衝撃性は、充填剤粒子を含有しないENPコーティングの耐衝撃性と同等である(図11図12bは図12aのグラフの下部領域の拡大図である)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b