(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105067
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】18F-BPAの製造方法及び中間体
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
C07F5/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092978
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2021507794の分割
【原出願日】2019-08-15
(31)【優先権主張番号】201810940708.3
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811478615.X
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811478614.5
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】515153495
【氏名又は名称】南京中硼▲聯▼康医▲療▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Neuboron Medtech Ltd.
【住所又は居所原語表記】3rd Floor, Block 6, NO. 568, Longmian Ave, Jiangning District, Nanjing, Jiangsu 211112 China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】李世紅
(72)【発明者】
【氏名】何静
(72)【発明者】
【氏名】蔡▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】▲閻▼恒
(57)【要約】
【課題】本発明は、高純度の
18F-BPAを得ることができ、
18F標識後の合成ステップを簡略化し、操作しやすく、効率が高い
18F-BPAの製造方法及び中間体を提供する。
【解決手段】中間体Iの式中、R
1、R
2はハロゲンであり、或いは、R
1、R
2はホウ酸基又はホウ酸基に加水分解可能な置換基であり、R
3、R
4は、それぞれ水素とアミノ基の保護基であるか、又はアミノ基と共にアミノ基を保護するイミノ基を形成し、R
5は、水素又はカルボキシル基の保護基である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有し、
【化1】
式中、R
1、R
2はハロゲンであり、或いは、R
1、R
2はホウ酸基又はホウ酸基に加水分解可能な置換基であり、
R
3、R
4は、それぞれ水素とアミノ基の保護基であるか、又はアミノ基と共にアミノ基を保護するイミノ基を形成し、
R
5は、水素又はカルボキシル基の保護基である、ことを特徴とする中間体I。
【請求項2】
中間体I-1及びI-2を含み、
前記中間体I-1は式I-1の構造を有し、
【化2】
前記中間体I-2は式I-2の構造を有し、
【化3】
式中、
X
1、X
2はハロゲンであり、
Bは、ホウ素を表し、好ましくは、ホウ素10であり、
R
10とR
20は、OHであるか、又はそれらが結合するホウ素原子と共にホウ酸基に加水分解可能な置換基を表し、
R
3とR
4は、それぞれ水素とアミノ基の保護基であるか、又はアミノ基と共にアミノ基を保護するイミノ基を形成し、
R
5は、水素又はカルボキシル基の保護基である、ことを特徴とする請求項1に記載の中間体I。
【請求項3】
前記ホウ酸基に加水分解可能な置換基は、
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
である、ことを特徴とする請求項1に記載の中間体I。
【請求項4】
前記ホウ酸基に加水分解可能な置換基は、ホウ酸エステル基であり、好ましくは、ボロン酸ピナコールエステル基であり、R3とR4は、アルコキシカルボニル保護基、アシル保護基、アルキル保護基を含み、R5は、置換又は非置換のC1~C20アルキル基を含み、好ましくは、t-ブチル基である、ことを特徴とする請求項1に記載の中間体I。
【請求項5】
式中、-BR10R20は、ボロン酸ピナコールエステル基である、ことを特徴とする請求項2に記載の中間体I。
【請求項6】
式中、R3又はR4は、アミノ基の保護基として、ベンジルオキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、トリメチルシリルエトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フタロイル基、p-トルエンスルホニル基、トリフルオロアセチル基、o-ニトロベンゼンスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基、ピパロイル基、ベンゾイル基、トリフェニルメチル基、2,4-ジメトキシベンジル基、p-メトキシベンジル基、ベンジル基からなる群から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の中間体I。
【請求項7】
式中、-NR
3R
4は
【化11】
である、ことを特徴とする請求項1に記載の中間体I。
【請求項8】
式中、R5は、C1~C10アルキル基、フェニル基、又は、ベンジル基である、ことを特徴とする請求項1に記載の中間体I。
【請求項9】
式中、R5は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、ジフェニルメチル基、ベンジル基、p-ニトロベンジル基、p-メトキシベンジル基、4-ベンジルピリジン基、トリクロロエチル基、メチルチオエチル基、p-トルエンスルホニルエチル基、p-ニトロベンジルチオキソエチル基、フェニル基、又は、ベンジル基である、ことを特徴とする請求項1に記載の中間体I。
【請求項10】
以下の化合物から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の中間体I。
【化12】
【請求項11】
以下の構造を有する
18F-BPAの製造に用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の中間体Iの用途。
【化13】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、化学合成の分野に関し、具体的には、18F-BPAの製造方法及び中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
悪性腫瘍は、人間の健康と生命に深刻な危害を及ぼす重大な疾患であり、現在、悪性腫瘍に対する治療は、主に放射線療法又は化学療法で行われる。ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy、BNCT)は、腫瘍細胞内で発生する核反応により癌細胞を破壊することである。ホウ素(10B)含有薬剤が熱中性子に対して高い捕獲断面積を有する特性を利用して、10B(n、α)7Li中性子捕捉及び核分裂反応により、2つの重荷電粒子、4Heと7Liが発生される。2つの荷電粒子の平均エネルギーは約2.33MeVであり、高い線エネルギー付与(Linear Energy Transfer、LET)、短い放射距離の特性を有し、α粒子の線エネルギー付与と放射距離は、それぞれ150keV/μm、8μmであり、7Li重荷電粒子については、175keV/μm、5μmであり、2つの粒子の総放射距離は、約1つの細胞の大きさに相当するため、生物に与える放射線損傷は細胞レベルに限定することができ、ホウ素含有薬剤が腫瘍細胞中で選択的に集まると、適切な中性子源と合わせ、正常な組織にあまりにも大きな損傷を与えない前提で、腫瘍細胞を局所的に殺す目的を達成することができる。ホウ素中性子捕捉療法の効果は、腫瘍細胞の位置でのホウ素含有薬剤の濃度と熱中性子数によって決まるので、バイナリ放射線癌治療(binary cancer therapy)とも呼ばれ、これにより、中性子源の開発に加えて、ホウ素含有薬剤の開発は、ホウ素中性子捕捉療法の研究において重要な役割を果たす。(10B)ボロノ-L-フェニルアラニン(4-(10B)borono-L-phenylalanine、L-10BPA)は、BNCTによる癌治療に用いられるホウ素含有薬剤であり、多形膠芽細胞腫(glioblastoma multiforme)、黒色腫(melanoma)などの様々なの悪性腫瘍の疾患に対して高い治療効果を持つ。BNCT治療計画の策定は、18F-BPA(2-フルオロ-4-ボロノ-L-フェニルアラニン)の腫瘍標的化結果によって指導され、ポジトロン放射性核種18Fで標識されたBPAを用いてポジトロン断層撮像法(PET)と組み合わせて脳腫瘍及び他のタイプの充実性腫瘍を診断する必要がある。
【0003】
CN105916836Aには、2-フルオロ-4-ボロノ-L-フェニルアラニンの製造方法及び2-フルオロ-4-ボロノ-L-フェニルアラニンの前駆体が開示されている。該特許において、18Fイオンでベンゼン環の脱離基を置換して、18Fで標識されたハロゲン置換フェニルアラニン化合物を得た後、カップリング反応により18F-BPAを得る。CN105348309Bにおいて、ベンゼン環に18Fを標識した後、ベンゼン環のアルデヒド基とベンゾオキサゾリノンが反応することにより、18F-BPAを得る。CN102887913Bにおいて、18Fイオンでベンゼン環のニトロ基を置換して、18Fで標識されたヨウ素置換フェニルアラニン化合物を得た後、カップリング反応により18F-BPAを得る。上記方法は、いずれも18Fで標識した後に、ホウ酸エステルの置換反応を行うため、反応ステップが多く、製造時間が長い。
【0004】
18Fの半減期が約110minであるため、18Fで標識した後に、どのように製造ステップを簡略化して、製造時間を短縮するかは、極めて有意義かつ挑戦的な研究であり、その合成の放射化学収率と用途の制限に関連している。したがって、臨床上の要求を満たし、簡単で効率が高く、反応条件が穏やかで、収率が高い製造方法の開発は、18F-BPAの応用に非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、2-フルオロ-4-ボロノフェニル-L-フェニルアラニン(18F-BPA、FBPA)の製造方法及び中間体を提供することを目的とする。前記18F-BPAの合成方法は、18Fによる標識後の合成ステップを簡略化したものであり、簡単で効率が高く、収率が高く、産物の純度が高く、その合成の放射化学収率を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る、以下の構造を有する
18F-BPAの製造方法は、
【化1】
式Iの構造を有する中間体Iを使用することを含み、
【化2】
式中、R
1、R
2はハロゲンであり、或いは、R
1、R
2はホウ酸基又はホウ酸基に加水分解可能な置換基であり、R
3、R
4は、それぞれ水素とアミノ基の保護基であるか、又はアミノ基と共にアミノ基を保護するイミノ基を形成し、R
5は、水素又はカルボキシル基の保護基である。
【0007】
別の好ましい例では、前記中間体Iは、中間体I-1及びI-2を含み、
前記中間体I-1は式I-1の構造を有し、
【化3】
前記中間体I-2は式I-2の構造を有し、
【化4】
式中、X
1、X
2はハロゲンであり、好ましくは、前記X
1、X
2は塩素、臭素又はヨウ素であり、R
10とR
20は、OHであるか、又はそれらが結合するホウ素原子と共にホウ酸基に加水分解可能な置換基を表し、R
3とR
4は、それぞれ水素とアミノ基の保護基であるか、又はアミノ基と共にアミノ基を保護するイミノ基を形成し、R
5は、水素又はカルボキシル基の保護基である。
【0008】
別の好ましい例では、前記R3とR4は、アミノ基の保護基として、アルコキシカルボニル保護基、アシル保護基、アルキル保護基を含む。好ましくは、R3とR4は、アミノ基の保護基として、ベンジルオキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、トリメチルシリルエトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基又はエトキシカルボニル基、フタロイル基、p-トルエンスルホニル基、トリフルオロアセチル基、オルト(パラ)ニトロベンゼンスルホニル基、ピパロイル基、ベンゾイル基、トリフェニルメチル基、2,4-ジメトキシベンジル基、p-メトキシベンジル基、ベンジル基からなる群から選択される置換基をさらに含む。
【0009】
別の好ましい例では、R
3とR
4は、アミノ基の保護基として、Nと共にC=N結合を形成し、好ましくは、-NR
3R
4は
【化5】
である。
【0010】
別の好ましい例では、前記ホウ酸基に加水分解可能な置換基は、ホウ酸エステル基である。より好ましくは、前記-BR10とR20は、ボロン酸ピナコールエステル基である。本願におけるホウ素は、好ましくは、ホウ素10である。
【0011】
別の好ましい例では、前記カルボキシル基の保護基は、置換又は非置換のC1~C20アルキル基である。前記置換基は、フェニル基、ハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシ基、メトキシ基を含み、好ましくは、前記カルボキシル基の保護基は、C1~C10アルキル基、フェニル基、ベンジル基である。好ましくは、前記カルボキシル基の保護基は、置換又は非置換のC1~C20アルキル基を含み、前記置換基は、フェニル基、ハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシ基、メトキシ基を含み、好ましくは、C1~C10アルキル基、フェニル基、ベンジル基である。好ましくは、前記カルボキシル基の保護基は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、ジフェニルメチル基、ベンジル基、p-ニトロベンジル基、p-メトキシベンジル基、4-ベンジルピリジン基、トリクロロエチル基、メチルチオエチル基、p-トルエンスルホニルエチル基、p-ニトロベンジルチオキソエチル基、フェニル基、ベンジル基をさらに含む。
【0012】
別の好ましい例では、前記中間体Iは、以下の化合物から選択される。
【化6】
【0013】
別の好ましい例では、前記方法は、中間体I-2と
18Fイオンを反応させて
18Fで置換された化合物を得ることを含み、
【化7】
式中、R
10とR
20は、OHであるか、又はそれらが結合するホウ素原子と共にホウ酸基に加水分解可能な置換基を表し、R
3とR
4は、それぞれ水素とアミノ基の保護基であるか、又はアミノ基と共にアミノ基を保護するイミノ基を形成し、R
5は、水素又はカルボキシル基の保護基である。
【0014】
別の好ましい例では、前記方法は、前記
18Fで置換された化合物中の保護基を脱保護して、前記
18F-BPAを得ることをさらに含む。
【化8】
【0015】
別の好ましい例では、前記中間体I-2と18Fイオンの反応は、銅触媒の使用をさらに含み、好ましくは、銅触媒がCu(OTf)2Py4又はCu(OTf)2を含む。
【0016】
別の好ましい例では、前記中間体I-2と18Fイオンの反応温度は20~150℃であり、好ましくは100~130℃である。
【0017】
別の好ましい例では、前記中間体I-2と18Fイオンの反応に用いられる溶媒は、水、メタノール、DMF、DMA、DMSO、アセトニトリル、n-ブタノール、エタノール、ジクロロメタンなど、又はそれらの任意の混合溶媒を含む。
【0018】
別の好ましい例では、中間体I-1とホウ酸又はホウ酸エステルを反応させて中間体I-2を得て、
【化9】
式中、X
1、X
2はハロゲンであり、好ましくは、前記X
1、X
2は塩素、臭素又はヨウ素であり、R
10とR
20は、OHであるか、又はそれらが結合するホウ素原子と共にホウ酸基に加水分解可能な置換基を表し、R
3とR
4は、それぞれ水素とアミノ基の保護基であるか、又はアミノ基と共にアミノ基を保護するイミノ基を形成し、R
5は、水素又はカルボキシル基の保護基である。
【0019】
別の好ましい例では、前記中間体I-1とホウ酸又はホウ酸エステルは、窒素雰囲気で反応する。
【0020】
別の好ましい例では、前記中間体I-1とホウ酸又はホウ酸エステルは、20~100℃の条件で反応し、好ましくは50~100℃である。
【0021】
前記パラジウム触媒に対して、特に限定しない。好ましくは、前記パラジウム触媒は、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4)、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、トリフェニルホスフィンパラジウムアセテート、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]二塩化パラジウム、ビス(トリ-o-トリルホスフィン)二塩化パラジウム、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンパラジウムジクロリド又はそれらの組成物からなる群から選択される。
【0022】
前記ホウ酸エステルに対して、特に限定しない。好ましくは、前記ホウ酸エステルは、ビス(ピナコラト)ジボロン、ビス(カテコラト)ジボロン、ビス(3,3-ジメチル-2,4-ペンタンジオール)ボロン酸エステル、トリエタノールアミンボロン酸エステル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチル、ビス(ネオペンチルグリコラト)ジボロン、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0023】
別の好ましい例では、前記方法は、中間体I-1をキラル分離してL型の化合物I-1aとD型の化合物I-1bを得た後に、それぞれホウ酸又はホウ酸エステルと反応させることをさらに含む。
【化10】
【0024】
別の好ましい例では、前記方法は、i)中間体IIと中間体IIIを反応させて中間体I-1を得ることを含み、
【化11】
式中、X
1、X
2、X
3は、それぞれハロゲンであり、好ましくは、前記X
1、X
2、X
3は塩素、臭素又はヨウ素であり、R
3とR
4は、それぞれ独立して水素とアミノ基の保護基であるか、又はアミノ基と共にアミノ基を保護するイミノ基を形成し、R
5は、水素又はカルボキシル基の保護基である。
【0025】
別の好ましい例では、前記中間体IIIは、
【化12】
であり、前記中間体I-1は
【化13】
であり、式中、X
1、X
2はハロゲンであり、好ましくは、前記X
1、X
2は塩素、臭素又はヨウ素であり、R
5は、水素又はカルボキシル基の保護基である。
【0026】
別の好ましい例では、前記方法は、酸性条件の下で加水分解して前記中間体I-1中のアミノ基を脱保護し、Boc
2Oと塩基性条件の下で反応させ、Bocで中間体I-1中のアミノ基を保護して化合物
【化14】
を得た後、ホウ酸又はホウ酸エステルと反応させることをさらに含み、前記反応は、好ましくは、室温で行われ、好ましいR
5はC1~C10のアルキル基である。
【0027】
本発明の第2の態様に係る中間体Iは、以下の構造を有し、
【化15】
式中、R
1、R
2はハロゲンであり、或いは、R
1、R
2はホウ酸基又はホウ酸基に加水分解可能な置換基であり、
R
3、R
4は、それぞれ水素とアミノ基の保護基であるか、又はアミノ基と共にアミノ基を保護するイミノ基を形成し、
R
5は、水素又はカルボキシル基の保護基である。
【0028】
別の好ましい例では、前記中間体Iは、中間体I-1及びI-2を含み、前記中間体I-1は式I-1の構造を有し、
【化16】
前記中間体I-2は式I-2の構造を有し、
【化17】
式中、X
1、X
2は、ハロゲンであり、Bは、ホウ素を表し、好ましくは、ホウ素10であり、R
10とR
20は、OHであるか、又はそれらが結合するホウ素原子と共にホウ酸基に加水分解可能な置換基を表し、R
3とR
4は、それぞれ水素とアミノ基の保護基であるか、又はアミノ基と共にアミノ基を保護するイミノ基を形成し、R
5は、水素又はカルボキシル基の保護基である。
【0029】
別の好ましい例では、前記ホウ酸基に加水分解可能な置換基は、ホウ酸エステル基であり、好ましくは、ボロン酸ピナコールエステル基であり、R3とR4は、アルコキシカルボニル保護基、アシル保護基、アルキル保護基を含み、R5は、置換又は非置換のC1~C20アルキル基を含み、好ましくは、t-ブチル基である。
【0030】
別の好ましい例では、前記中間体Iは、以下の化合物から選択される。
【化18】
【0031】
本発明の第3の態様に係る、第2の態様に記載の中間体Iの用途は、前記中間体Iが
18F-BPAを製造することであり、前記
18F-BPAは、
【化19】
構造を有する。
【0032】
本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術的特徴と以下(例えば、実施例)に具体的に記載される各技術的特徴を互いに組み合わせて、新しい、又は好ましい技術方案を構成できることを理解されたい。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施例6で製造されるN,N-ジ(tert-ブトキシカルボニル)-2,4-ジ(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-フェニルアラニンtert-ブチルエステルのプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【
図2】本発明の前記
18F-BPA放射性HPLCスペクトルである。
【
図3】標準品
19F-BPAと混合された後の本発明の前記
18F-BPAの放射性HPLCスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、18F-BPAの製造に使用できる中間体を製造し、上記中間体は、ジボロン酸ピナコールエステル基で置換されたフェニルアラニン中間体を含み、アラニン基のオルト位にあるボロン酸ピナコールエステル基を18Fに置換することにより、18F-BPAを得ることができる。上記方法は、18Fによる標識後の18F-BPAの製造ステップを簡略化したものであり、簡単で効率が高く、収率が高く、産物の純度が高く、その合成の放射化学収率を向上させる。その上で、本発明を完成するに至った。
【0035】
(用語)
特に定義されない限り、本明細書の全ての科学技術用語の意味は、特許請求の範囲の主題が属する分野の当業者に一般的に理解される意味と同じである。特に明記しない限り、本明細書の全文に引用された全ての特許、特許出願、開示材料は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0036】
上記概要説明及び後文の詳細な説明は、例示的なものであり、かつ解釈するためのものに過ぎず、本発明の主題に何ら制限もないことを理解されたい。本明細書において、特に明記しない限り、単数形は複数形も含む。本明細書において、別段の明確な記載がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される単数形は、言及されるものの複数形を含むことに留意されたい。特に明記しない限り、用語「又は」、「或いは」は、「及び/又は」を意味することにも留意されたい。また、用語「含む」及びその他の形、例えば「包含」、「含み」、「含有」は、限定するものではない。
【0037】
左から右に書かれた一般的な化学式により置換基を説明する場合、該置換基は、構造式を右から左に書いた場合に得られる化学的に同等な置換基も含む。例えば、-CH2O-は-OCH2-と同等である。
【0038】
本明細書で用いられる節の表題は、ただ文章を組み立てる目的で用いられ、上記主題を制限するものとして解釈されるべきではない。本願に引用される全ての文献又は文献の一部は、特許、特許出願、文章、本、マニュアル、及び論文を含むが、これらに限定されず、いずれも参照にその全体が本明細書に組み込まれる。
【0039】
前記以外には、本願の明細書及び特許請求の範囲に用いられる際に、特に明記しない限り、下記の用語は、以下のとおりの意味を有する。
【0040】
本願において、用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。「F」はフッ素を指し、放射性を有するフッ素と非放射性を有するフッ素を含み、例えば、18F、19Fであり、好ましくは、18Fである。「B」は、ホウ素を指し、放射性を有するホウ素と非放射性を有するホウ素を含み、好ましくは、10Bである。「N」は窒素である。「ニトロ基」は、-NO2基を指す。「アミノ基」とは、-NH2基を指す。「ボロン酸基」は、-B(OH)2基を指す。
【0041】
本願において、基又は他の基の一部(例えば、ハロゲン置換アルキル基などの基)として、用語「アルキル基」は、炭素原子と水素原子のみからなり、不飽和結合を含まず、1~10個の炭素原子を有し、かつ単結合により分子の残部に結合した直鎖又は分枝鎖の炭化水素鎖基を指す。アルキル基の例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基などを含むが、これらに限定されない。用語「C1~C10アルキル基」は、1~10個の炭素原子を有するアルキル基を指し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基である。
【0042】
好ましくは、前記不活性溶媒は、トルエン、ベンゼン、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランジクロロメタン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジオキサン、又はそれらの組成物からなる群から選択される。より好ましくは、前記不活性溶媒は、ベンゼンと水の混合溶媒である。
【0043】
用語「ホウ酸基に加水分解可能な置換基」は、該置換基が加水分解後にホウ酸基(-B(OH)
2)、例えば、ホウ酸エステル基を生成することを表し、該置換基は、
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
を含むが、これらに限定されず、好ましくは、ボロン酸ピナコールエステル基である。
【0044】
本発明において、R
3とR
4は、アミノ基の保護基として、それぞれ保護基であってもよく、アルコキシカルボニル保護基、アシル保護基、アルキル保護基を含むが、これらに限定されず、R
3とR
4は、Nとイミド(C=N)を形成してアミノ基を保護するものであってもよく、例えば、
【化27】
である。以上の2種類の保護基は、いずれも本発明の前記「アミノ基の保護基」の範囲内にあるべきである。前記アルコキシカルボニル保護基は、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、トリメチルシリルエトキシカルボニル基(Teoc)、メトキシカルボニル基又はエトキシカルボニル基を含むが、これらに限定されない。前記アシル保護基は、フタロイル基(Pht)、p-トルエンスルホニル基(Tos)、トリフルオロアセチル基(Tfa)、オルト(パラ)ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)、ピパロイル基、ベンゾイル基を含むが、これらに限定されない。前記アルキル保護基は、トリフェニルメチル基(Trt)、2,4-ジメトキシベンジル基(Dmb)、p-メトキシベンジル基(PMB)、ベンジル基(Bn)を含むが、これらに限定されない。
【0045】
用語「カルボキシル基の保護基」は、カルボキシル基とエステル基、アミド又はヒドラジドを形成する保護基を指し、アルキル基、フェニル基、アルキルで置換されたアミノ基を含むが、これらに限定されない。「アルキル基」は、好ましくは、1~20個の炭素原子を有する置換基で置換又は非置換された直鎖又は分枝鎖含有のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、ジフェニルメチル基、ベンジル基、p-ニトロベンジル基、p-メトキシベンジル基、4-ベンジルピリジン基、トリクロロエチル基、メチルチオエチル基、p-トルエンスルホニルエチル基、p-ニトロベンジルチオキソエチル基である。
【0046】
本願において、「任意」又は「任意に」は、後述するイベントや状況が発生する可能性と発生しない可能性の両方があることを意味し、かつ該記述は、該イベントや状況が発生する場合と発生しない場合を同時に含む。例えば、「任意に置換されたアリール基」は、アリール基が置換されたか又は置換されていないことを意味し、かつ該記述は、置換されたアリール基と置換されていないアリール基を同時に含む。
【0047】
本発明は、様々な立体異性体及びその混合物をカバーし、「立体異性体」は、同じ原子からなり、同じ結合で結合しているが、異なる三次元構造を有する化合物を指す。本発明の化合物の全ての互変異性形態も本発明の範囲に含まれ、「互変異性体」とは、プロトンが分子の1つの原子から同一分子の別の原子に移行して形成された異性体を指す。
【0048】
本発明の前記中間体化合物は、キラル炭素原子を含むため、鏡像異性体、非鏡像異性体及び他の立体異性体を生成することができる。各キラル炭素原子は、立体化学に基づいて(R)-又は(S)-と定義することができる。本発明は、全ての可能な異性体、それらのラセミ体及び光学的に純粋な形態を含むことを意図している。本発明の化合物の製造において、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体を原料又は中間体として選択することができる。光学的に活性な異性体は、キラルシントン又はキラル試薬を用いて製造されてもよく、結晶化やキラルクロマトグラフィーなどの従来の技術を用いて分割されてもよい。
本発明の前記「中間体」は、L型フェニルアラニン構造とD型フェニルアラニン構造の2種類の構造を有し、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【0049】
18F-BPAの製造方法
本発明に記載の18F-BPAの新規な製造方法は、例えば、以下の例により実現することができるが、例示的な方法に限定されない。以下の反応式に用いられるアミノ基及びカルボキシル基の保護基とホウ酸エステル基とは、適切に変更することができ、例示的な方法に限定されない。
【0050】
前記方法は、中間体I-2と
18Fイオンを反応させて
18Fで置換された化合物を得ることと、
【化28】
前記
18Fで置換された化合物中の保護基を脱保護し、例えば、アミノ基及びカルボキシル基の保護基とホウ酸エステル基を加水分解して、前記
18F-BPAを得ることとを含む。
【化29】
【0051】
各ステップの反応について、反応温度は、溶媒、出発原料、試薬等により適宜選択することができ、反応時間は、反応温度、溶媒、出発原料、試薬等により適宜選択することができる。各ステップの反応終了後、目的化合物に対して、濾過、抽出、再結晶、洗浄、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の従来の方法に従って、反応系から分離、精製等のステップを行うことができる。次の反応に影響を与えない場合に、目的化合物は、分離、精製を行わずに、そのまま次の反応に入ることもできる。
【0052】
中間体Iで18F-BPAの合成ステップでは、使用される18Fイオン([18F]F-は、陽子ビームでH2
18Oを衝撃して、18O(p,n)反応により得ることができるか、又は本分野で知られている方法で得ることができる。18Fイオンをイオン交換カラムに捕捉し、K2.2.2/K2CO3混合溶液で溶出し、脱水乾燥した後に標識反応に用いる。中間体I-2と18Fイオンを反応させ、混合溶液をカチオンカラムにより精製した後、乾燥し、加水分解し、アミノ基及びカルボキシル基の保護基を除去して前記18F-BPAを得る。使用される試薬は、フッ化水素、フッ化カリウムを含む。使用される溶媒は、水、メタノール、DMF、DMA、DMSO、アセトニトリル、n-ブタノール、エタノール、ジクロロメタンなど、又はそれらの任意の混合溶媒を含む。反応温度は、好ましくは、20~150℃であり、より好ましくは、100~130℃である。反応時間は、好ましくは、5分~1時間であり、より好ましくは、10~30分である。前記脱水乾燥は、乾燥有機溶媒を添加し共沸して水を除去することであってよく、使用可能な有機溶媒は、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、又はそれらの任意の組み合わせ溶媒を含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、中間体Iと18Fイオンの反応において、銅触媒を添加してよく、使用可能な銅触媒は、Cu(OTf)2Py4又はCu(OTf)2、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0053】
なお、本発明の前記中間体Iと18F-BPAは、いずれも、L型フェニルアラニン構造を有する異性体とD型フェニルアラニン構造を有する異性体とを含むそれらの全ての光学異性体を含む。例えば、18F-BPAは、L型フェニルアラニン構造を有する18F-L-BPA又はD型フェニルアラニン構造を有する18F-D-BPAを含む。本発明の前記製造方法において、中間体Iをキラル分離して単一型の化合物を得て反応させてもよく、キラル分離せずに直接反応させて、18F-BPAを得てもよい。
【0054】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明する。以下の説明は、本発明の最も好ましい実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲の制限と見なされるべきではないことを理解されたい。本発明を十分に理解したうえで、以下の実施例において具体的な条件を明示していない実験方法は、通常、一般的な条件に従って、又は製造業者が提案した条件に従って行われ、当業者は、本発明の技術手段に対して本質的でない変更を行うことができ、このような変更が本発明の保護範囲に含まれると見なされるべきである。特に明記しない限り、百分率及び部数は、重量百分率及び重量部数である。
【実施例0055】
N-ジフェニルメチレン-2,4-ジブロモフェニルアラニンtert-ブチルエステルの製造
N-ジフェニルメチレン-グリシンtert-ブチルエステル(40g、135.42mmol、1 eq)、1,4-ジブロモベンジルブロミド(44.53g、135.42mmol、1 eq)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB、436.55mg、1.35mmol、0.01 eq)を300mLのトルエンに溶解させ、80mLの水酸化カリウム(100.00g、1.78mol、13.16 eq)水溶液を添加する。25℃で反応が終了するまで12時間撹拌する。反応混合物を100mLの酢酸エチルで希釈し、400mL(200mL×2)の酢酸エチルで抽出し、有機相を混合すると共に、600mL(300mL×2)の飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過して固形物を得る。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=100:1-20:1)により分離して、15gの産物を得る。
【0056】
LCMS:MS(M+H
+)=544.0
1H NMR:400MHz、CDCl
3
δ7.56-7.46(m,3H)、7.35-7.16(m,7H)、7.01(d,J=8.2Hz,1H)、6.59(br d,J=6.8 Hz,2H)、4.23(dd,J=4.2,9.5 Hz,1H)、3.31(dd,J=4.0,13.4 Hz,1H)、3.11(dd,J=9.6,13.5 Hz,1H)、1.41-1.28(m,9H)。
【化30】