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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105071
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】ポリオール薬液組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20230721BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20230721BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20230721BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20230721BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230721BHJP
【FI】
C08G18/00 H
C08G18/42 008
C08G18/48
C08G18/40 018
C08G18/00 J
C08G101:00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093047
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2019034015の分割
【原出願日】2019-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】関 浩之
(57)【要約】
【課題】高温の環境下においても、沸騰や突沸を惹起することなく、安全に保管することの出来るポリオール薬液組成物を提供する。
【解決手段】ポリイソシアネートとの反応によってポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であって、液状のポリオールと共に、発泡剤として、少なくとも、沸点が35℃未満の低沸点発泡剤を含み、且つ該低沸点発泡剤の含有量が該ポリオールに対する溶解度以下となるようにして、かかる低沸点発泡剤が、該ポリオール中に溶解せしめられているように構成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートとの反応によってポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であって、
液状のポリオールと共に、発泡剤として、少なくとも、沸点が35℃未満の低沸点発泡剤を含み、且つ該低沸点発泡剤の含有量が該ポリオールに対する溶解度以下となるようにして、かかる低沸点発泡剤が、該ポリオール中に溶解せしめられていることを特徴とするポリオール薬液組成物。
【請求項2】
前記低沸点発泡剤が、ハイドロカーボン、ハイドロフルオロカーボン及びハロゲン化アルケンからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載のポリオール薬液組成物。
【請求項3】
前記発泡剤として、前記低沸点発泡剤と共に、沸点が35℃以上の他の発泡剤が含有せしめられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリオール薬液組成物。
【請求項4】
前記発泡剤が、合計量において、前記ポリオールの100質量部に対して10~40質量部の割合となるように含有せしめられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のポリオール薬液組成物。
【請求項5】
前記ポリオールが、芳香族ポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のポリオール薬液組成物。
【請求項6】
前記ポリオールとして、芳香族ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとが併用されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のポリオール薬液組成物。
【請求項7】
非イオン性界面活性剤が、更に含有せしめられることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のポリオール薬液組成物。
【請求項8】
前記非イオン性界面活性剤が、前記ポリオールの100質量部に対して5~30質量部の割合において含有せしめられることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のポリオール薬液組成物。
【請求項9】
難燃剤が、更に含有せしめられることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載のポリオール薬液組成物。
【請求項10】
前記難燃剤が、固形物質であることを特徴とする請求項9に記載のポリオール薬液組成物。
【請求項11】
20℃における粘度が、80~600mPa・sであることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載のポリオール薬液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール薬液組成物に係り、特に、高温の環境下においても安全に保管することの出来るポリウレタンフォーム用ポリオール薬液組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリウレタンフォームは、その優れた断熱性や接着性、軽量性等の特性を利用して、主に断熱材料として、建築用内外壁材やパネル等の断熱、金属サイディングや電気冷蔵庫等の断熱、ビル・マンション・冷凍倉庫等の躯体壁面、天井、屋根等の断熱及び結露防止、輸液パイプ等の断熱に用いられ、更には、土木工事において発生する空隙を埋める裏込め材や、土木工事に際しての補強材等としても、実用されている。そして、そのようなポリウレタンフォームは、一般に、ポリオールに発泡剤、更に必要に応じて、触媒や整泡剤、難燃剤等の各種助剤を配合したポリオール配合液(プレミックス液)からなる組成物Aと、ポリイソシアネートを主体として含む組成物Bとを、混合装置により連続的に又は断続的に混合して、ポリウレタンフォーム用発泡性組成物とし、これを、スラブ発泡法、注入発泡法、スプレー発泡法、ラミネート連続発泡法、軽量盛土工法、注入裏込め工法等の方式により、発泡させて、硬化させることにより、製造されている。
【0003】
また、かかるポリウレタンフォームの製造のために、ポリオール薬液組成物である、上述の如きポリオール配合液には、発泡剤として、各種の化合物が含有せしめられてきており、例えば、特開平7-97472号公報、特開2008-266569号公報、特開2018-70708号公報等には、その一例が示されている。そして、その中で、好適に使用される発泡剤としては、地球温暖化係数において比較的優位とされるHFC-134a、HFC-245fa、HFC-365mfc等のハイドロフルオロカーボン(HFC)系発泡剤が知られている。このハイドロフルオロカーボン系発泡剤は、オゾン層破壊の少ない又は生じない代替フロンとして認識されているものではあるが、近い将来、環境破壊の問題に対する強い要請により、そのような代替フロンの使用も制限されるとの推測から、それに代わり、化学的に不安定であるために、地球温暖化係数が低くなるハイドロフルオロオレフィン(HFO)やハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)と呼ばれるハロゲン化ハイドロオレフィン(ハロゲン化アルケン)系発泡剤、更には、ペンタンやシクロペンタンの如きハイドロカーボン(HC)等が、開発されてきている。
【0004】
ところで、上述のような発泡剤を配合してなるポリオール薬液組成物は、その製造後の保管に際して、一般に、ドラム缶の如き容器内に収容されて、屋外において保管されることとなるのであるが、かかる配合された発泡剤の沸点が35℃よりも低くなると、そのようなポリオール薬液組成物を収容した容器が、高温の環境下に曝された場合において、例えば、夏場において屋外で保管されたりした場合においては、外気温が35℃以上にもなり、そのために、収容容器内においてポリオール薬液組成物が沸騰することがあった。また、そのような容器を開口したときに、ポリオール薬液組成物が突沸する恐れや発泡剤が気化して、ポリオール薬液組成物が劣化したりする等の問題があり、更に、容器からのポリオール薬液組成物の漏洩による周辺土壌の汚染を惹起する等の問題も内在するものであった。特に、ポリオール薬液組成物には、ポリイソシアネートとの反応によって形成されるポリウレタンフォームの特性の改善のために、赤リン等の固形の物質乃至は材料が添加されることとなるが、その場合において、かかる固形物質が気泡点となって、容器内において、ポリオール薬液組成物がより一層沸騰し易くなるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-97472号公報
【特許文献2】特開2008-266569号公報
【特許文献3】特開2018-70708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、高温の環境下においても、沸騰や突沸を惹起することなく、安全に保管することの出来るポリオール薬液組成物を提供することにあり、また、夏場において、直射日光のあたる屋外でも、容器に収容されて、好適に保管され得るポリオール薬液組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合せにて、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載やそこに開示の発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0008】
(1) ポリイソシアネートとの反応によってポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であって、液状のポリオールと共に、発泡剤として、少なくとも、沸点が35℃未満の低沸点発泡剤を含み、且つ該低沸点発泡剤の含有量が該ポリオールに対する溶解度以下となるようにして、かかる低沸点発泡剤が、該ポリオール中に溶解せしめられていることを特徴とするポリオール薬液組成物。
(2) 前記低沸点発泡剤が、ハイドロカーボン、ハイドロフルオロカーボン及びハロゲン化アルケンからなる群より選択されることを特徴とする前記態様(1)に記載のポリオール薬液組成物。
(3) 前記発泡剤として、前記低沸点発泡剤と共に、沸点が35℃以上の他の発泡剤が含有せしめられることを特徴とする前記態様(1)又は前記態様(2)に記載のポリオール薬液組成物。
(4) 前記発泡剤が、合計量において、前記ポリオールの100質量部に対して10~40質量部の割合となるように含有せしめられていることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(3)の何れか1つに記載のポリオール薬液組成物。
(5) 前記ポリオールが、芳香族ポリエステルポリオールであることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(4)の何れか1つに記載のポリオール薬液組成物。
(6) 前記ポリオールとして、芳香族ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとが併用されることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(5)の何れか1つに記載のポリオール薬液組成物。
(7) 非イオン性界面活性剤が、更に含有せしめられることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(6)の何れか1つに記載のポリオール薬液組成物。
(8) 前記非イオン性界面活性剤が、前記ポリオールの100質量部に対して5~30質量部の割合において含有せしめられることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(7)の何れか1つに記載のポリオール薬液組成物。
(9) 難燃剤が、更に含有せしめられることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(8)の何れか1つに記載のポリオール薬液組成物。
(10) 前記難燃剤が、固形物質であることを特徴とする前記態様(9)に記載のポリオール薬液組成物。
(11) 20℃における粘度が、80~600mPa・sであることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(10)の何れか1つに記載のポリオール薬液組成物。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明に従うポリオール薬液組成物にあっては、発泡剤として、沸点が35℃未満である低沸点発泡剤を用いて、これを、液状のポリオールに配合せしめても、かかる低沸点発泡剤は、ポリオールに対する溶解度以下となる割合において用いられて、低沸点発泡剤が、ポリオールに対して完全に溶解せしめられ得るようになっているところから、ポリオール薬液組成物全体としての沸点を上昇させることが可能となるのであり、これによって、そのようなポリオール薬液組成物をドラム缶等の容器に収容して、夏場の直射日光のあたる屋外で保管した際に、気温の上昇により、ポリオール薬液組成物中の低沸点発泡剤が沸騰することを効果的に防止することが出来るようになると共に、かかる容器を開口した際における圧力の変化によって、容器内に収容されたポリオール薬液組成物が突沸することを、有利に阻止することが可能となるのである。
【0010】
また、本発明に従うポリオール薬液組成物にあっては、発泡剤として用いられる低沸点発泡剤が、液状のポリオールに対して充分に溶解されてなる形態として存在せしめられることとなるところから、ポリオール薬液組成物に含有される低沸点発泡剤の沸点よりも高い環境温度下においても、かかるポリオール薬液組成物が沸騰するのを効果的に抑制することが出来ると共に、低沸点発泡剤のポリオールに対する溶解が不充分となることによる薬液組成物の濁りを、有利に防止乃至は抑制することが可能となるのであり、以て、ポリオール薬液組成物の長期保管性を効果的に向上せしめ得、また、ポリイソシアネートとの反応によって形成されるポリウレタンフォームの長期物性を有利に維持することが出来る特徴も、発揮することが可能となる。
【0011】
さらに、そのような本発明に従うポリオール薬液組成物において、ポリオール及び低沸点発泡剤と共に、非イオン性界面活性剤が更に含有せしめられることにより、低沸点発泡剤のポリオールに対する溶解度を効果的に向上せしめ得て、より一層均一なポリオール薬液組成物として調製することが可能となるのであり、以て、かかるポリオール薬液組成物が沸騰する温度を更に高めることが可能となる。
【0012】
加えて、本発明に従うポリオール薬液組成物にあっては、そこに、所定の固形物質が添加されていても、そのような固形物質が気泡点となり、収容容器内において、ポリオール薬液組成物が沸騰するのが効果的に抑制され得るという特徴も、発揮することとなるのである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従うポリオール薬液組成物の更に具体的な構成について、詳細に説明することとする。
【0014】
先ず、本発明に従うポリオール薬液組成物は、液状のポリオールを主体として構成されており、かかるポリオールと所定のポリイソシアネートとの反応と共に、沸点が35℃未満の低沸点発泡剤を少なくとも含む発泡剤による発泡にて、目的とするポリウレタンフォームを与えるものであるが、そこで用いられる液状のポリオールとしては、公知の各種の液状ポリオール化合物、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ポリマーポリオール等が、単独で又は適宜に組み合わされて、用いられることとなる。中でも、本発明においては、ポリエステルポリオールが好適に用いられることとなる。なお、ポリオール薬液組成物におけるポリオールの割合は、合計で、一般に50~90質量%程度、好ましくは60~85質量%程度である。
【0015】
また、上述の如きポリオールの中でも好適に用いられるポリエステルポリオールとしては、多価アルコール-多価カルボン酸縮合系のポリオールや、環状エステル開環重合体系のポリオール等の公知のものを挙げることが出来る。そこにおいて、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を用いることが出来る。また、多価カルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びそれらの無水物等が挙げられる。更に、環状エステルとしては、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0016】
本発明にあっては、上記したポリエステルポリオールの中でも、低沸点発泡剤との相溶性や形成されるポリウレタンフォームの難燃性等の特性を向上せしめ得る観点から、芳香族系のポリエステルポリオールを用いることが好ましく、具体的には、フタル酸系ポリエステルポリオールを用いることが好ましく、更に、そのようなポリエステルポリオールの2種類以上を組み合わせることも有効である。なお、フタル酸系ポリエステルポリオールとしては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びこれらの無水物等と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の二価アルコールとの縮合物からなるフタル酸系ポリエステルポリオールが、好ましく用いられることとなる。そして、かかる芳香族ポリエステルポリオールは、ポリオール中、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上の割合において、好適に用いられる。
【0017】
また、本発明では、ポリオールとして、ポリエーテルポリオールも好適に用いられ、特に、上記した芳香族ポリエステルポリオールとの併用が推奨される。このようなポリエーテルポリオールを用いることにより、ポリイソシアネートとの反応によって形成されるポリウレタンフォームの強度等の物性を有利に高めることが可能となる。なお、ここで用いられるポリエーテルポリオールは、多価アルコール、糖類、脂肪族アミン、芳香族アミン、フェノール類、マンニッヒ縮合物等の少なくとも1種の開始剤に、アルキレンオキシドを反応させて、得られるものである。なお、そこで、アルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、エチレンオキシド等を挙げることが出来る。また、開始剤としての多価アルコールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等があり、また糖類としては、シュクロース、デキストロース、ソルビトール等があり、更に脂肪族アミンとしては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンや、エチレンジアミン等のポリアミン等があり、そして芳香族アミンとしては、トリレンジアミンと総称されるフェニレンジアミンの各種のメチル置換体の他、そのアミノ基にメチル、エチル、アセチル、ベンゾイル等の置換基が導入されてなる誘導体や、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン等が挙げられ、更にまたフェノール類としては、ビスフェノールA、ノボラック型フェノール樹脂等を挙げることが出来る。また、マンニッヒ縮合物としては、フェノール類、アルデヒド類及びアルカノールアミン類をマンニッヒ縮合反応させて得られるマンニッヒ縮合物を挙げることが出来る。
【0018】
そして、本発明に従うポリオール薬液組成物にあっては、上述の如き液状のポリオールと共に、発泡剤の少なくとも一つとして、沸点が35℃未満の低沸点発泡剤が含有せしめられることとなるのであるが、そのような低沸点発泡剤としては、公知の各種の非フロン系やフロン系の発泡剤のうち、沸点が35℃未満のものが適宜に選択されて、用いられることとなる。特に、本発明にあっては、ハイドロカーボン(HC)やハイドロフルオロカーボン(HFC)の他、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)等のハロゲン化アルケンに属する有機の低沸点発泡剤が、有利に用いられることとなる。
【0019】
具体的には、非フロン系発泡剤であるハイドロカーボン(HC)としては、イソペンタン等を挙げることが出来、また、フロン系発泡剤のハイドロフルオロカーボン(HFC)としては、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)等を挙げることが出来る。更に、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)としては、例えば、ペンタフルオロブテン異性体(HFO1354)類、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO1336mzz)等のヘキサフルオロブテン異性体(HFO1336)類、ヘプタフルオロペンテン異性体(HFO1447)類、オクタフルオロペンテン異性体(HFO1438)類等を挙げることが出来、加えてハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)としては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)、1-クロロ-2,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)等を挙げることが出来る。
【0020】
特に、上述せるような低沸点発泡剤の中でも、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)やハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)は、化学的に不安定であるために、地球温暖化係数が低く、そのために、環境に優しい発泡剤として、好適に用いられ得るものである。また、発泡剤としての取扱い性を高め、更に本発明の効果を有利に享受する上において、上述の如き低沸点発泡剤の沸点の下限は、一般に10℃程度であることが、望ましい。
【0021】
そして、かくの如き低沸点発泡剤は、それが添加、配合せしめられるポリオール薬液組成物を構成するポリオールに対する溶解度以下となるような割合において用いられ、これによって、かかる低沸点発泡剤が、ポリオール中に、完全に、溶解せしめられてなる形態の薬液組成物として構成されることにより、高温の環境下においても、沸騰や突沸等の問題を惹起することなく、安全に保管することが可能となるのである。ここで、そのような低沸点発泡剤の溶解度は、低沸点発泡剤の種類やポリオール薬液組成物を構成するポリオールの種類によって、種々変化することとなる。そのため、ここでは、使用されるポリオールに応じて、添加される低沸点発泡剤の溶解度が、25℃において求められ、その溶解度以下の割合において、ポリオール薬液組成物中に含有せしめられるのである。なお、複数種類のポリオールを用いて、ポリオール薬液組成物が調製される場合にあっては、その複数種類のポリオールの混合物に対する低沸点発泡剤の溶解度が採用され、そのような溶解度以下の割合において、低沸点発泡剤が含有せしめられることとなる。
【0022】
また、本発明にあっては、ポリオール薬液組成物に含有せしめられる発泡剤として、上述の如き低沸点発泡剤のみを用いる場合の他、そのような低沸点発泡剤とは異なる沸点、即ち35℃以上の沸点を有する他の発泡剤も、公知の各種のものの中から選択して、かかる低沸点発泡剤と共に使用することも可能であり、その場合において、他の発泡剤としては、高沸点(沸点が35℃以上)のハイドロカーボン(HC)、高沸点のハイドロフルオロカーボン(HFC)、高沸点のハイドロフルオロオレフィン(HFO)、高沸点のハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)等の有機の発泡剤が、具体的には、ノルマルペンタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)、イソプロピルクロリド等が有利に選択されることとなる。
【0023】
さらに、本発明にあっては、発泡剤としての水も、上記した低沸点発泡剤と共に、或はかかる低沸点発泡剤及び他の発泡剤と共に、有利に用いられることとなる。このように、水がポリオール薬液組成物中に存在せしめられることによって、かかるポリオール薬液組成物とポリイソシアネート(組成物)とが混合せしめられて、反応させられるときに、かかる水とポリイソシアネートとが反応して、二酸化炭素を生じる際に、反応熱が発生することとなるため、その熱によって、ウレタン化反応やイソシアヌレート化反応が、効果的に進行せしめられ得て、得られるポリウレタンフォームの圧縮強度が、更に高められ得るようになる。また、そのようなポリオール薬液組成物中の水の存在によって、ポリイソシアネートと反応させられる際に発生する二酸化炭素が、ポリウレタンの発泡に寄与することとなるのである。
【0024】
なお、かかる水の使用量としては、ポリオール薬液組成物中のポリオール全体の100質量部に対して、一般に0.5~8質量部、好ましくは1~5質量部の割合となるように選択されることとなる。この水の使用量が、ポリオール全体の100質量部に対して8質量部よりも多くなると、かえって生成するポリウレタンフォームの強度の低下を招くようになる。それは、水とポリイソシアネートとの反応によって生じる尿素結合が樹脂中に多くなること、またイソシアヌレート化反応に用いられるポリイソシアネートが水との反応で消費されてしまい、反応系のポリイソシアネートが少なくなるためである。一方、かかる水の使用量が0.5質量部よりも少なくなると、水を含有せしめたことによる発泡剤としての効果が充分に得られなくなる問題がある。
【0025】
また、本発明に従うポリオール薬液組成物中における、前記低沸点発泡剤を含む発泡剤の合計含有量は、かかる低沸点発泡剤の溶解度を考慮して、適宜に決定されることとなるが、一般に、ポリオール薬液組成物中のポリオール全体の100質量部に対して10~40質量部、好ましくは15~35質量部であることが望ましい。なお、発泡剤が、その合計量において、少なくなり過ぎると、発泡特性が悪化して、例えば、吹付発泡において充分な発泡が得られない等の問題があり、また多くなり過ぎると、ポリオール薬液組成物が高温環境下において沸騰し易くなる等の問題を惹起するようになる。
【0026】
加えて、本発明に従うポリオール薬液組成物には、上記したポリオールや発泡剤としての低沸点発泡剤と共に、更に、非イオン性界面活性剤が、好適に含有せしめられることとなる。この非イオン性界面活性剤は、ポリオールと低沸点発泡剤との相溶化剤として機能するものであるところから、そのような非イオン性界面活性剤を含有させることにより、ポリオールへの低沸点発泡剤の溶解度が更に向上され得て、かかる低沸点発泡剤を、ポリオールに、容易に且つ完全に溶解せしめ得ることとなり、以て、ポリオール薬液組成物の沸騰温度を高めることが出来る利点を発揮する。
【0027】
ところで、ここで用いられる非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル等のエーテル型;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸(ラウリル)メチルエステル、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエステルエーテル型;ポリオキシエチレンアルキルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のエステル型;オクチルグルコシド等のアルキルグリコシド;ポリオキシエチレンオレイン酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド等のアルカノールアミド型;ドデシルジメチルアミンオキサイド、テトラデシルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキシド;ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルアミン等のアルキルアミン型;セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等を挙げることが出来る。それらの中でも、本発明にあっては、凝固点が低くて、親和性がよいことから、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが特に好ましく用いられることとなる。
【0028】
また、かかる非イオン性界面活性剤の使用量は、ポリオールや低沸点発泡剤の種類や低沸点発泡剤の使用量等に応じて、適宜に決定されることとなるが、一般に、ポリオール薬液組成物中のポリオール全体の100質量部に対して5~30質量部、好ましくは8~25質量部の割合となるように用いられることとなる。この非イオン性界面活性剤の使用量が5質量部未満となると、相溶性の向上効果が充分に発揮され得なくなるからであり、また30質量部を超えるようになると、ポリイソシアネートとの反応によって形成されるポリウレタンフォームの発泡体物性が低下するようになるからである。
【0029】
さらに、本発明に従うポリオール薬液組成物には、ポリイソシアネートとの反応によって形成されるポリウレタンフォームに要求される難燃性を付与すべく、公知の各種の難燃剤が添加、配合せしめられることとなる。ここで用いられる難燃剤は、特に限定されるものではなく、また、液状のものであっても、固形のものであっても、何等差支えないが、本発明の特徴は、固形の難燃剤を用いる場合において、有利に発揮されることとなる。難燃剤が、粉体や粒状物等の固形物質である場合において、そのような固形物質が、沸石の役割を果たすことによって、ポリオール薬液組成物が沸騰し易く、また突沸し易くなって、結果的に沸点の低下を招くようになるのであるが、本発明に従って、低沸点発泡剤を、ポリオールに対する溶解度以下の割合において、ポリオールに溶解せしめることにより、特に、非イオン性界面活性剤が併存させられていることにより、そのような固形物質である難燃剤を含有させても、沸点を低下させることなく、高い沸点を維持することが出来ると同時に、難燃性をより向上させることが出来る特徴を発揮させることが出来る。
【0030】
なお、かかる固形物質である難燃剤としては、赤リン、リン酸塩含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、スズ酸金属塩含有難燃剤、金属水酸化物等の、公知のものを挙げることが出来る。また、このような難燃剤は、ポリオール薬液組成物中のポリオール全体の100質量部に対して、一般に5~60質量部、好ましくは10~40質量部の範囲で配合されることとなる。
【0031】
ところで、本発明に従うポリオール薬液組成物には、上記した配合成分乃至は含有成分に加えて、更に必要に応じて、公知の触媒や、整泡剤も添加、配合されることとなる。ここで、触媒は、ポリオール薬液組成物中のポリオールとポリイソシアネートとの反応を進行せしめるためのものであって、公知の各種の触媒の中から、適宜に選択して使用することが出来る。例えば、よく知られているアミン系触媒やイミダゾール系触媒が、単独で、或は組み合わせて用いられ、またそのような触媒と共に、更に必要に応じて、樹脂化触媒としてのウレタン化触媒やイソシアヌレート化触媒も、好適に併用されることとなる。ここで、ウレタン化触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸ビスマス(2-エチルヘキシル酸ビスマス)、ネオデカン酸ビスマス、ネオドデカン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等の脂肪酸ビスマス塩、ナフテン酸鉛、オクチル酸鉛(2-エチルヘキシル酸鉛)等を挙げることが出来、またイソシアヌレート化触媒としては、第四級アンモニウム塩;オクチル酸カリウム、酢酸ナトリウム等の脂肪酸アルカリ金属塩;トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン等を挙げることが出来る。そして、これらの各種の触媒は、それぞれ、ポリオール薬液組成物中のポリオール全体の100質量部に対して、一般に0.1~7質量部の範囲内において、好ましくは0.5~5質量部の範囲内において、用いられることとなる。
【0032】
また、整泡剤は、ポリウレタンフォームのセル構造を均一に整えるために用いられるものであって、ここでは、公知のものの中から、適宜に選択されて用いられることとなる。具体例としては、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物等を挙げることが出来、これらのうちの、1種が単独で、或は2種以上が組み合わされて、用いられる。なお、この整泡剤の配合量は、所期のフォーム特性や、使用する整泡剤の種類等に応じて、適宜に決定されるところであるが、ポリオール薬液組成物中のポリオール全体の100質量部に対して、一般に0.1~10質量部、好ましくは1~8質量部の範囲内において選択されることとなる。
【0033】
その他、本発明に従うポリオール薬液組成物には、更に必要に応じて、例えば、尿素、メラミン等のホルムアルデヒド捕捉剤や、気泡微細化剤、可塑剤、補強基材等の、従来から知られている各種添加剤を、適宜に選択して配合することも、出来る。
【0034】
一方、本発明に従うポリオール薬液組成物に対して反応せしめられるポリイソシアネートは、ポリオール薬液組成物中のポリオールと反応して、ポリウレタン(樹脂)を生成するものであって、分子中に2つ以上のイソシアネート基(NCO基)を有する有機イソシアネート化合物であり、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリトリレントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートの他、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等を挙げることが出来る。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用しても何等差支えない。一般的には、反応性や経済性、取扱い性等の観点から、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)が、好適に用いられることとなる。なお、このようなポリイソシアネートには、必要に応じて、従来から知られている各種の助剤が適宜に配合されてなる組成物の形態において、用いることも可能である。
【0035】
ところで、かくの如き本発明に従う、所定の成分を含有するポリオール薬液組成物は、従来から公知の各種の手法によって、製造することが可能であるが、一般に、ポリオールに所定の低沸点発泡剤を含む発泡剤を混合せしめ、更に必要に応じて、非イオン性界面活性剤、触媒、整泡剤、その他の添加剤等を配合して、均一に混合させてなる組成物として調製され、これが、プレミックス液として用いられて、ポリイソシアネートと反応せしめられることとなる。なお、そこで、非イオン性界面活性剤を含有させる場合にあっては、先に、非イオン性界面活性剤をポリオールに混合せしめた後、低沸点発泡剤を含む発泡剤や他の配合成分を混合する手法が、有利に採用されることとなる。非イオン性界面活性剤とポリオールとを、先に混合することで、後から配合される低沸点発泡剤を含む発泡剤とポリオールとが、かかる界面活性剤を介することによって、混ざり易くなるからである。このように、非イオン性界面活性剤の存在下において、低沸点発泡剤を含む発泡剤が、ポリオールに添加、混合せしめられるようにすることによって、それらポリオールと発泡剤との相溶性が効果的に高められ得るのである。
【0036】
また、このようにして調製されるポリオール薬液組成物は、その20℃における粘度が80~600mPa・s、好ましくは100~550mPa・s、より好ましくは150~500mPa・sであることが望ましい。なお、この粘度が80mPa・sよりも低くなると、薬液組成物が沸騰し易くなる等の問題を惹起することとなり、また、かかる粘度が600mPa・sよりも高くなると、薬液組成物の突沸が惹起され易くなる等の問題を生じる。
【0037】
そして、上述の如くして得られる本発明に従うポリオール薬液組成物は、ポリイソシアネートと混合せしめられて、発泡・硬化させられることにより、目的とするポリウレタンフォームを製造するに際して、公知の各種のポリウレタンフォームの製造手法が採用され、例えば、それらポリオール薬液組成物とポリイソシアネートとの混合物を面材上に塗布して、板状に発泡・硬化を行なうラミネート連続発泡法、電気冷蔵庫等の断熱性の要求される空間部内や軽量・高強度ボードのハニカム構造内に注入、充填して、発泡・硬化を行なう注入発泡法、または現場発泡機のスプレーガンヘッドから所定の被着体(構造体)へ吹き付けて発泡・硬化させるスプレー発泡法によって、本発明に従う発泡性組成物は発泡・硬化せしめられ、目的とするポリウレタンフォームが形成されることとなる。
【0038】
特に、本発明に従う上記の如きポリオール薬液組成物は、高温の環境下においても、沸騰や突沸等の問題を惹起することなく、安全に保管することが出来るものであるところから、上記した各用途における使用に先立って、ドラム缶等の容器に収容されて、例えば、夏場において、直射日光のあたる屋外等に配置されても、発泡剤が沸騰することが有利に抑制乃至は阻止され得て、ドラム缶等の容器を開けたときの気圧の変化によって、薬液が突沸する等の問題が有利に回避され得ることとなると共に、ポリオール薬液組成物の長期保管や形成されるポリウレタンフォームの長期物性を有利に維持することも、可能となるのである。
【実施例0039】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、比較例と対比することにより、本発明の特徴を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下に示す百分率(%)及び部は、特に断りのない限り、何れも、質量基準にて示されるものである。
【0040】
また、以下の実施例及び比較例において得られたポリオール薬液組成物の粘度や泡立ち性、沸騰性、及び濁り性の評価は、それぞれ、以下の如くして実施した。
【0041】
(1)粘度の測定
JIS-K-7117-1(1999)に従い、測定温度:20℃の条件の下、ブルックフィールド形回転粘度計のB形を用いて測定する。
【0042】
(2)泡立ち性の評価
以下の実施例及び比較例において調製されたポリオール薬液組成物を、供試液として用いて、それを、密閉可能な透明ガラス瓶に充填して、密閉した後、湯煎にて、それぞれ、30℃、35℃、38℃、又は40℃の温度で、30分間の加熱処理を行ない、その後、湯煎から取り出して、ガラス瓶の蓋を開けた際における供試液の泡立ち状態について、目視観察を行なう。そして、それぞれの供試液の泡立ち性は、以下の基準によって評価し、それら評価のうち「○」以上を合格とする。
◎:供試液は泡立っていない。
○:供試液に若干の泡が確認される。
△:供試液はガラス瓶から溢れないが、かなり泡立っている。
×:供試液は泡立っており、ガラス瓶から溢れ出す。
【0043】
(3)沸騰性の評価
各供試液を、それぞれビーカーに収容した後、湯煎にて、35℃で30分間の加熱処理を行なうことにより、ビーカー内の供試液の沸騰の有無について、目視観察を行なう。そして、ビーカー内の供試液が、沸騰していなければ「○」、沸騰しかけている場合にあっては「△」、更に沸騰している場合には「×」、として評価する。そして、それら評価のうち、「〇」を合格とする。
【0044】
(4)濁り性の評価
各供試液を全量が100mlとなるよう計量して、25℃の雰囲気下において、10分間静置した後、その計量された供試液の濁りを、目視にて評価する。なお、かかる目視による評価は、10名のパネラーにより、下記の評価基準にて実施し、その得られた評価レベルの平均値を取って、優劣を評価する。
◎:供試液に濁りが全く認められない。
○:供試液には、ほぼ濁りは認められない。
△:供試液には、若干の濁りが認められる。
×:供試液が濁っていることが認められる。
【0045】
先ず、以下の実施例及び比較例において用いられる成分として、以下の各種原料を準備した。なお、発泡剤の溶解度は、何れも、25℃において求められたものである。
ポリイソシアネート:ポリメリックMDI(万華化学ジャパン株式会社製Wannat e PM-130)
ポリオール:テレフタル酸系ポリエステルポリオール(川崎化成工業株式会社製RFK 505)
(HCFO-1233zd溶解度:35g/100g-ポリオール
HFO-1336mzz溶解度:5g/100g-ポリオール
HFC245fa溶解度:20g/100g-ポリオール
HFC365mfc溶解度:10g/100g-ポリオール
水溶解度:20g/100g-ポリオール)
ポリオール:イソフタル酸系ポリエステルポリオール(川崎化成工業株式会社製RDK 142)
(HCFO-1233zd溶解度:25g/100g-ポリオール
HFO-1336mzz溶解度:15g/100g-ポリオール
水溶解度:55g/100g-ポリオール)
ポリオール:ポリプロピレングリコール(三洋化成工業株式会社株式会社製GP100 0)
(HCFO-1233zd溶解度:40g以上/100g-ポリオール
水溶解度:100g以上/100g-ポリオール)
整泡剤:シリコーン系整泡剤(東レ・ダウコーニング株式会社製SH-193)
触媒:カルボン酸アルカリ金属塩触媒(日本化学産業株式会社製プキャット15G、オ クチル酸カリウム)
触媒:イミダゾール触媒(花王株式会社製カオーライザーNo.390、1,2-ジメ チルイミダゾール:ジプロピレングリコール=70:30[質量比])
非イオン性界面活性剤:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(花王株式会社製エマ ルゲンLS106)
非イオン性界面活性剤:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(花王株式会社製エマ ルゲンLS110)
非イオン性界面活性剤:ノニルフェノールポリエチレングリコールエーテル(The Dow Chemicl Company製Tergitol NP-9)
難燃剤:赤リン(燐化学工業株式会社製ノーバエクセル140、粉末)
難燃剤:リン酸塩(富士フイルム和光純薬株式会社製、リン酸二水素アンモニウム、粉 末)
難燃剤:リン酸エステル[大八化学工業株式会社製、TMCPP:トリス(1-クロロ -2-プロピル)ホスフェート、液体]
発泡剤:HCFO-1233zd(Honeywell社製、1-クロロ-3,3,3 -トリフルオロプロペン、沸点18.3℃)
発泡剤:HFO-1336mzz(Chemours社製、1,1,1,4,4,4- ヘキサフルオロ-2-ブテン、沸点33.4℃)
発泡剤:HFC245fa(セントラル硝子株式会社製、1,1,1,3,3-ペンタ フルオロプロパン、沸点15.3℃)
発泡剤:HFC365mfc(SOLVAY株式会社製、1,1,1,3,3-ペンタ フルオロブタン、沸点40.2℃)
発泡剤:水
【0046】
上記で準備した各種の原料、即ち、ポリオール、発泡剤、整泡剤、触媒、非イオン性界面活性剤及び難燃剤を、下記表1~表3に示される各種の組み合わせ及び配合割合において、均一に混合せしめて、実施例1~14及び比較例1~6に係る各種のポリオール薬液組成物を、それぞれ、調製した。なお、非イオン性界面活性剤を配合せしめる場合にあっては、先ず、ポリオールに非イオン性界面活性剤を配合して、均一に混合せしめた後、発泡剤等の他の添加成分を配合せしめる手法を採用した。
【0047】
そして、かくして得られた各種のポリオール薬液組成物を、供試液として用いて、その泡立ち性、沸騰性及び濁り性について、それぞれ評価し、それら得られた結果を、それぞれ、下記表1乃至表3にまとめて示した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
かかる表1及び表2の結果から明らかなように、本発明に従う実施例1~14において調製されたポリオール薬液組成物にあっては、何れも、耐泡立ち性、耐沸騰性及び耐濁り性において優れたものであることが認められた。特に、非イオン性界面活性剤を更に含有せしめてなる実施例8~11に係るポリオール薬液組成物にあっては、耐泡立ち性や耐濁り性において、より優れていることが認められるのである。そして、それらの結果より、実施例1~14において調製されたポリオール薬液組成物は、ドラム缶等の容器に収容されて、高温環境下に曝されても、例えば、夏場において直射日光のあたる屋外で保管されても、容器内で液が沸騰したり、容器を開口した際に液が突沸する等の問題を惹起することが抑制され、更には、発泡剤の気化により、薬液組成物としての特性が劣化したりする恐れも、有利に回避され得るものと考えられる。
【0052】
これに対して、表3に示される結果から明らかな如く、比較例1~6において調製されたポリオール薬液組成物にあっては、何れも、発泡剤の使用量が、ポリオール薬液組成物を構成するポリオールに対する溶解度よりも大なる割合となるものであるところから、高温下において、泡立ち易く、また沸騰性及び濁り性においても充分でないことが認められる。従って、それら比較例のポリオール薬液組成物は、高温環境下において、沸騰や突沸等の問題を惹起する恐れがあり、安全に保管することが困難であるものと考えられるのである。
【0053】
-難燃性の評価-
実施例12~14において調製された難燃剤が配合せしめられてなるポリオール薬液組成物を用いて、それと、先に準備されたポリイソシアネートとを、発泡機(グラコ社製A-25)を使用して、910mm×910mmのフレキシブルボードに対して、5mm以下の下吹きの後、30mm以下の厚みで積層を行ない、総厚みが60mm程度の発泡体を作製した。なお、この吹付発泡において、ポリオール薬液組成物とポリイソシアネートとは、体積比で1:1の割合で、混合せしめられるようにした。
【0054】
かくして得られた発泡体について、JIS-A-9511(2017)に規定される燃焼試験の試験方法Bに準じて、難燃性の評価を行なった。具体的には、各発泡体から50mm×150mm×13mmの試験片切り出し、この試験片の一端を、魚尾灯を備えたブンゼンバーナーで60秒間燃焼させた後、消炎までの時間及び燃焼距離の測定を行ない、以下の基準で評価して、その結果を、下記表4に示した。
◎:燃焼距離が30mm未満、且つ燃焼時間が60秒未満。
○:燃焼距離が60mm未満、且つ燃焼時間が120秒未満。
△:燃焼距離が60mm以上又は燃焼時間が120秒以上。
×:燃焼距離が60mm以上、且つ燃焼時間が120秒以上。
【0055】
【表4】
【0056】
かかる表4の結果から明らかなように、何れのポリオール薬液組成物から得られたポリウレタンフォームにあっても、優れた難燃性を有していることが認められた。特に、実施例12及び13においては、それぞれ、粉末状の難燃剤である赤リン及びリン酸塩が用いられているのであるが、そのような粉末状(固体物質)の難燃剤が配合せしめられていても、ポリオール薬液組成物としての特性の劣化が何等惹起されていないことを、認めることが出来る。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートとの反応によってポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であって、
液状のポリオールと共に、発泡剤として、少なくとも、沸点が35℃未満の低沸点発泡剤と水とを含み、且つ該低沸点発泡剤の含有量が該ポリオールに対する溶解度以下となるようにして、かかる低沸点発泡剤が、該ポリオール中に溶解せしめられている一方、前記水が、該ポリオールの100質量部に対して1~8質量部の割合で含有せしめられ、更に、それら低沸点発泡剤及び水を含む発泡剤の合計含有量が、該ポリオールの100質量部に対して10~40質量部となる割合であり、そして前記低沸点発泡剤が、ハロゲン化アルケンであることを特徴とするポリオール薬液組成物。
【請求項2】
前記発泡剤として、前記低沸点発泡剤及び水と共に、沸点が35℃以上の他の発泡剤が含有せしめられることを特徴とする請求項1に記載のポリオール薬液組成物。
【請求項3】
前記ポリオールが、芳香族ポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリオール薬液組成物。
【請求項4】
前記ポリオールとして、芳香族ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとが併用されることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載のポリオール薬液組成物。
【請求項5】
非イオン性界面活性剤が、更に含有せしめられることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載のポリオール薬液組成物。
【請求項6】
前記非イオン性界面活性剤が、前記ポリオールの100質量部に対して5~30質量部の割合において含有せしめられることを特徴とする請求項5に記載のポリオール薬液組成物。
【請求項7】
難燃剤が、更に含有せしめられることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載のポリオール薬液組成物。
【請求項8】
前記難燃剤が、固形物質であることを特徴とする請求項に記載のポリオール薬液組成物。
【請求項9】
20℃における粘度が、80~600mPa・sであることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載のポリオール薬液組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
(1) ポリイソシアネートとの反応によってポリウレタンフォームを形成するポリオー ル組成物であって、液状のポリオールと共に、発泡剤として、少なくとも、沸点が 35℃未満の低沸点発泡剤と水とを含み、且つ該低沸点発泡剤の含有量が該ポリオ ールに対する溶解度以下となるようにして、かかる低沸点発泡剤が、該ポリオール 中に溶解せしめられている一方、前記水が、該ポリオールの100質量部に対して 1~8質量部の割合で含有せしめられ、更に、それら低沸点発泡剤及び水を含む発 泡剤の合計含有量が、該ポリオールの100質量部に対して10~40質量部とな る割合であり、そして前記低沸点発泡剤が、ハロゲン化アルケンであることを特徴 とするポリオール薬液組成物。
) 前記発泡剤として、前記低沸点発泡剤及び水と共に、沸点が35℃以上の他の発 泡剤が含有せしめられることを特徴とする前記態様(1)に記載のポリオール薬液 組成物。
) 前記ポリオールが、芳香族ポリエステルポリオールであることを特徴とする前記 態様(1)又は前記態様(2)に記載のポリオール薬液組成物。
) 前記ポリオールとして、芳香族ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオー ルとが併用されることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様()の何れか1 つに記載のポリオール薬液組成物。
) 非イオン性界面活性剤が、更に含有せしめられることを特徴とする前記態様(1 )乃至前記態様()の何れか1つに記載のポリオール薬液組成物。
) 前記非イオン性界面活性剤が、前記ポリオールの100質量部に対して5~30 質量部の割合において含有せしめられることを特徴とする前記態様(5)に記載の ポリオール薬液組成物。
) 難燃剤が、更に含有せしめられることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様 ()の何れか1つに記載のポリオール薬液組成物。
) 前記難燃剤が、固形物質であることを特徴とする前記態様()に記載のポリオ ール薬液組成物。
) 20℃における粘度が、80~600mPa・sであることを特徴とする前記態 様(1)乃至前記態様()の何れか1つに記載のポリオール薬液組成物。