(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105075
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】サテライト細胞および組成物ならびにそれらの生産方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20230721BHJP
A61K 35/34 20150101ALI20230721BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20230721BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C12N5/0775
A61K35/34
A61K35/545
A61P21/00
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023093069
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2019565174の分割
【原出願日】2018-05-24
(31)【優先権主張番号】62/510,617
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】リー エル. ルビン
(72)【発明者】
【氏名】フェオドル ディー. プライス
(57)【要約】
【課題】サテライト細胞および組成物ならびにそれらの生産方法の提供。
【解決手段】サテライト細胞を生成するための方法、およびサテライト細胞を含む組成物が本明細書に開示される。一局面では、天然に存在しないサテライト細胞が提供される。別の局面では、この天然に存在しないサテライト細胞は、内因性サテライト細胞の形態に似た形態を示す。別の局面では、この天然に存在しないサテライト細胞は、Pax7を発現する。別の局面では、この天然に存在しないサテライト細胞は、筋肉傷害に対する反応を示す。別の局面では、この天然に存在しないサテライト細胞は、移植後に筋肉再生を引き起こす。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年5月24日に出願された米国仮出願第62/510,617号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
骨格筋は、顕著な再生能力を有する。この再生能力は、サテライト細胞(骨格筋幹細胞)に起因する(Collinsら、2005;Kuangら、2007;Mauro,1961)。損傷に反応して、または疾患の状態では、サテライト細胞は静止状態を抜け出して増殖し、筋芽細胞と称される前駆体の移行増幅集団を生じさせる(Yinら、2013)。インビトロで培養すると、サテライト細胞は筋芽細胞になり、インビボ移植後に幹細胞ニッチを再配置する能力を喪失する(Montarrasら、2005)。これまで、インビトロで培養された筋芽細胞が脱分化してサテライト細胞に戻り得ることを実証する証拠は存在しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
他の使用の中でも特に、細胞療法およびスクリーニングに有用な十分量のサテライト細胞を生成するための方法またはプロトコールが必要である。本明細書に記載される3D培養系(例えば、骨格筋オルガノイド)は、インビトロで培養された筋芽細胞がサテライト細胞に脱分化するための適切なニッチを作り出す。このニッチの生成は、筋芽細胞が静止状態に戻り、サテライト細胞の転写シグネチャーを採用し、サテライト細胞ニッチにのみ存在する重要な糖タンパク質を発現し始めることを可能にする。
【0004】
いくつかの態様では、本開示は、天然に存在しない(すなわち、非ネイティブ)サテライト細胞を提供する。
【0005】
いくつかの実施形態では、天然に存在しないサテライト細胞は、内因性サテライト細胞または天然に存在するサテライト細胞の形態に似た形態を示す。いくつかの実施形態では、天然に存在しないサテライト細胞は、Pax7および/またはMyf5を発現し、いくつかの実施形態では、この発現は、内因性サテライト細胞または天然に存在するサテライト細胞における各遺伝子の発現レベルと一致するレベルである。いくつかの実施形態では、天然に存在しない細胞は、筋肉傷害に対する反応を示す。例えば、天然に存在しないサテライト細胞は、移植後に筋肉再生を開始させ得るかまたは促し得る。いくつかの実施形態では、天然に存在しないサテライト細胞は、少なくとも1つの静止関連遺伝子(quiescence-related gene)を発現する。静止関連遺伝子は、例えば、Spry1、Nm1、Nfia、FosおよびDusp1からなる群より選択され得る。いくつかの実施形態では、天然に存在しないサテライト細胞は、少なくとも1つのNotchシグナル伝達経路遺伝子を発現する。Notchシグナル伝達経路遺伝子は、Notch1、Notch2、Notch3、HeyL、Hey2およびHesからなる群より選択され得る。いくつかの実施形態では、天然に存在しないサテライト細胞は、Pax7、Myf5、少なくとも1つの静止関連遺伝子および少なくとも1つのNotchシグナル伝達経路遺伝子を発現する。いくつかの実施形態では、天然に存在しないサテライト細胞は、本明細書の
図8Aおよび
図8Cに特定されている遺伝子の少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つを発現する。いくつかの実施形態では、天然に存在しないサテライト細胞は、本明細書の
図8Cに特定されている少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つの遺伝子を発現する。天然に存在しないサテライト細胞は、MyoD(その発現が筋芽細胞に関連する遺伝子)を発現しない。
【0006】
いくつかの実施形態では、天然に存在しないサテライト細胞は、筋芽細胞からインビトロで脱分化する。天然に存在しないサテライト細胞は、脱分化した筋芽細胞に由来し得る。天然に存在しないサテライト細胞は、ヒトのものであり得る。いくつかの実施形態では、天然に存在しないサテライト細胞は遺伝子改変されていないが、他の実施形態では、それは遺伝子改変され得る。例えば、天然に存在しないサテライト細胞は、細胞のレシピエントに有益であり得る目的のタンパク質(例えば、インスリン)を発現するかまたは増加したレベルで発現するように改変され得る。天然に存在しないサテライト細胞は、サテライト細胞ニッチを再配置する能力を有し、および/または培養において拡大増殖可能(expandable)であり得る。
【0007】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載される天然に存在しないサテライト細胞を含む細胞株を提供する。
【0008】
いくつかの態様では、本開示は、天然に存在しないサテライト細胞を含む組成物であって、前記天然に存在しないサテライト細胞が、脱分化した筋芽細胞に由来し;前記天然に存在しないサテライト細胞が、培養において拡大増殖可能であり;前記天然に存在しないサテライト細胞が、サテライト細胞ニッチを再配置する能力を有し;および前記天然に存在しないサテライト細胞が、移植後に筋肉再生を促す、組成物を提供する。
【0009】
いくつかの態様では、本明細書に記載される研究は、筋芽細胞の集団から天然に存在しないサテライト細胞を生成する方法であって、スピン培養中の筋芽細胞を含む細胞集団を、少なくとも1種の培地と、天然に存在しないサテライト細胞への前記スピン培養中の少なくとも1つの筋芽細胞の脱分化を誘導するために十分な時間接触させることを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の培地は、筋芽細胞培地、スピン培地(spin medium)および/または分化培地である。
【0010】
いくつかの態様では、本開示は、筋芽細胞の集団から天然に存在しないサテライト細胞を生成する方法であって、筋芽細胞を含む細胞集団を筋芽細胞培地と接触させて、拡大増殖した筋芽細胞集団を形成すること;スピン培養中の拡大増殖した筋芽細胞集団をスピン培地と接触させて、分化した細胞および増殖性細胞を含む少なくとも1つの骨格筋オルガノイドを形成すること;スピン培養中の前記少なくとも1つの骨格筋オルガノイドを、分化培地と接触させて、天然に存在しないサテライト細胞への前記骨格筋オルガノイドの少なくとも1つの増殖性細胞の脱分化を誘導することを含む方法を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、細胞集団を、スピン培地の懸濁培養物中で、分化した細胞および増殖性細胞を含む少なくとも1つの骨格筋オルガノイドへの細胞集団中の筋芽細胞の少なくとも1つ(典型的には、少なくともいくつか)のインビトロ成熟を誘導するために十分な期間維持する。いくつかの実施形態では、期間は、少なくとも10日間、10日間~30日間または10日間~20日間を含む。いくつかの実施形態では、期間は20日間である。
【0012】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの骨格筋オルガノイドを、懸濁培養物中で、少なくとも1つの天然に存在しないサテライト細胞への骨格筋オルガノイドの増殖性細胞の少なくとも1つのインビトロ成熟を誘導するために十分な期間維持する。いくつかの実施形態では、期間は、少なくとも10日間、10日間~30日間または10日間~20日間を含む;いくつかの実施形態では、期間は10日間である。いくつかの実施形態では、細胞集団中の筋芽細胞の少なくとも1%は、天然に存在しないサテライト細胞に脱分化するように誘導される。したがって、本明細書に記載される天然に存在しないサテライト細胞は、脱分化した筋芽細胞に由来し得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、天然に存在しないサテライト細胞のインビトロ生成は、拡大縮小可能(scalable)である。天然に存在しないサテライト細胞は、培養において拡大増殖可能であり得る。いくつかの実施形態では、天然に存在しないサテライト細胞は、サテライト細胞ニッチを再配置する能力を有する。
【0014】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載される方法にしたがって生産された天然に存在しないサテライト細胞の単離された集団を提供する。
【0015】
いくつかの態様では、本開示は、その中に被包された本明細書に記載される天然に存在しないサテライト細胞の単離された集団を含むマイクロカプセルを提供する。
【0016】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載される方法にしたがって生産された天然に存在しないサテライト細胞の集団を含む組成物を提供する。
【0017】
いくつかの態様では、本開示は、少なくとも1つの天然に存在しないサテライト細胞への少なくとも1つの筋芽細胞の脱分化を促進する1つまたはそれを超える候補薬剤を同定するためのアッセイを提供する。
【0018】
いくつかの態様では、本開示は、処置を必要とする被験体を処置するための方法であって、被験体に、本明細書に記載される方法にしたがって生産された天然に存在しないサテライト細胞(例えば、天然に存在しないサテライト細胞の単離された集団)を含む組成物を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、サテライト細胞は、マイクロカプセル中に被包されている。天然に存在しないサテライト細胞は、天然に存在しないサテライト細胞を投与する同じ被験体から得られた筋芽細胞の集団から生産され得る。いくつかの実施形態では、被験体は、筋肉変性障害、筋肉外傷もしくは加齢に伴う筋力低下(例えば、サルコペニア)を有するか、またはそれらを発症する増加したリスクを有する。
【0019】
いくつかの態様では、本開示は、投与を必要とする被験体に投与するための、例えば本明細書に記載される方法により生産された天然に存在しないサテライト細胞の単離された集団の使用を提供する。天然に存在しないサテライト細胞の単離された集団は、マイクロカプセル中に被包されて被験体に投与され得る。いくつかの実施形態では、被験体は、筋肉変性障害、筋肉外傷もしくは加齢に伴う筋力低下(例えば、サルコペニア)を有するか、またはそれらを発症する増加したリスクを有する。
【0020】
特に指示がない限り、本発明の実施は、典型的には、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子組換え生物学、微生物学、組換え核酸(例えば、DNA)技術、免疫学およびRNA干渉(RNAi)の従来技術を用いるが、これらは当技術分野の技能の範囲内にある。特定のこれらの技術の非限定的な説明は、以下の刊行物:Ausubel,Fら、(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,Current Protocols in Immunology,Current Protocols in Protein Science,and Current Protocols in Cell Biology,all John
Wiley&Sons,N.Y.,edition as of December 2008;Sambrook,Russell,and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,2001;Harlow,E.and Lane,D.,Antibodies-A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring
Harbor,1988;Freshney,R.I.,“Culture of Animal Cells,A Manual of Basic Technique”,5th ed.,John Wiley&Sons,Hoboken,NJ,2005に見られる。治療剤およびヒト疾患に関する非限定的な情報は、Goodman and
Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,11th Ed.,McGraw Hill,2005,Katzung,B.(ed.)Basic and Clinical Pharmacology,McGraw-Hill/Appleton&Lange;10th ed.(2006)or 11th edition(July 2009)に見られる。遺伝子および遺伝子障害に関する非限定的な情報は、McKusick,V.A.:Mendelian Inheritance in Man.A Catalog of Human Genes and Genetic Disorders.Baltimore:Johns Hopkins University Press,1998(12th edition)またはより最新のオンラインデータベース:Online Mendelian Inheritance in Man,OMIM(商標).McKusick-Nathans Institute of Genetic Medicine,Johns Hopkins University(Baltimore,MD)and National Center for Biotechnology Information,National Library of Medicine(Bethesda,MD),as of May 1,2010,World Wide
Web URL:ncbi.nlm.nih.gov/omim/およびOnline
Mendelian Inheritance in Animals(OMIA),a database of genes,inherited disorders and traits in animal species(other than human and mouse),at omia.angis.org.au/contact.shtmlに見られる。本明細書で言及されるすべての特許、特許出願および他の刊行物(例えば、科学論文、本、ウェブサイトおよびデータベース)は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書と組み込まれる参考文献のいずれかとの間で矛盾がある場合には、本明細書(例えば、組み込まれる参考文献に基づくものであり得るその任意の補正を含む)が優先するものである。特に指示がない限り、本明細書では、用語の当技術分野で認められている標準的意味が使用される。本明細書では、様々な用語の標準的な略称が使用される。
【0021】
特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公報のコピーは、請求および必要な料金の支払いにより、官庁により提供されるであろう。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
天然に存在しないサテライト細胞。
(項目2)
内因性サテライト細胞の形態に似た形態を示す、項目1に記載の天然に存在しないサテライト細胞。
(項目3)
Pax7を発現する、項目1に記載の天然に存在しないサテライト細胞。
(項目4)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、筋肉傷害に対する反応を示す、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目5)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、移植後に筋肉再生を引き起こす、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目6)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、少なくとも1つの静止関連遺伝子を発現する、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目7)
前記静止関連遺伝子が、Spry1、Nm1、Nfia、FosおよびDusp1からなる群より選択される、項目6に記載の天然に存在しない細胞。
(項目8)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、少なくとも1つのNotchシグナル伝達経路遺伝子を発現する、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目9)
前記Notchシグナル伝達経路遺伝子が、Notch1、Notch2、Notch3、HeyL、Hey2およびHesからなる群より選択される、項目8に記載の天然に存在しない細胞。
(項目10)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、Myf5を発現する、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目11)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、Pax7、Myf5、少なくとも1つの静止関連遺伝子および少なくとも1つのNotchシグナル伝達経路遺伝子を発現する、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目12)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Aおよび/または
図8Cに特定されている少なくとも1つの遺伝子を発現する、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目13)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Aおよび/または
図8Cに特定されている少なくとも2つの遺伝子を発現する、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目14)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Aおよび/または
図8Cに特定されている少なくとも3つの遺伝子を発現する、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目15)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Cに特定されている少なくとも1つの遺伝子を発現する、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目16)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Cに特定されている少なくとも2つの遺伝子を発現する、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目17)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Cに特定されている少なくとも3つの遺伝子を発現する、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目18)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、MyoDを発現しない、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目19)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、筋芽細胞の集団からのインビトロ脱分化により生産される、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目20)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、脱分化した筋芽細胞に由来する、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目21)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、培養において拡大増殖可能である、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目22)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、サテライト細胞ニッチを再配置する能力を有する、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目23)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、ヒトのものである、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目24)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、遺伝子改変されていない、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目25)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、遺伝子改変されている、項目1に記載の天然に存在しない細胞。
(項目26)
項目1~25のいずれか一項に記載の細胞を含む、細胞株。
(項目27)
天然に存在しないサテライト細胞を含む組成物であって、
a.前記天然に存在しないサテライト細胞が脱分化した筋芽細胞に由来し;
b.前記天然に存在しないサテライト細胞が培養において拡大増殖可能であり;
c.前記天然に存在しないサテライト細胞がサテライト細胞ニッチを再配置する能力を有し;または
d.前記天然に存在しないサテライト細胞が移植後に筋肉再生を引き起こす、組成物。
(項目28)
前記天然に存在しないサテライト細胞が少なくとも1つの静止関連遺伝子を発現する、項目27に記載の組成物。
(項目29)
前記静止関連遺伝子が、Spry1、Nm1、Nfia、FosおよびDusp1からなる群より選択される、項目28に記載の組成物。
(項目30)
前記天然に存在しないサテライト細胞が少なくとも1つのNotchシグナル伝達経路遺伝子を発現する、項目27に記載の組成物。
(項目31)
前記Notchシグナル伝達経路遺伝子が、Notch1、Notch2、Notch3、HeyL、Hey2およびHesからなる群より選択される、項目30に記載の組成物。
(項目32)
前記天然に存在しないサテライト細胞がMyf5を発現する、項目27に記載の組成物。
(項目33)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Aおよび/または
図8Cに特定されている少なくとも1つの遺伝子を発現する、項目27に記載の組成物。
(項目34)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Aおよび/または
図8Cに特定されている少なくとも2つの遺伝子を発現する、項目27に記載の組成物。
(項目35)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Aおよび/または
図8Cに特定されている少なくとも3つの遺伝子を発現する、項目27に記載の組成物。
(項目36)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Cに特定されている少なくとも1つの遺伝子を発現する、項目27に記載の組成物。
(項目37)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Cに特定されている少なくとも2つの遺伝子を発現する、項目27に記載の組成物。
(項目38)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Cに特定されている少なくとも3つの遺伝子を発現する、項目27に記載の組成物。
(項目39)
前記天然に存在しないサテライト細胞がMyoDを発現しない、項目27に記載の組成物。
(項目40)
前記天然に存在しない細胞がPax7を発現する、項目27に記載の組成物。
(項目41)
筋芽細胞の集団から天然に存在しないサテライト細胞を生成する方法であって、スピン培養中の筋芽細胞を含む細胞集団を、少なくとも1種の培地と、天然に存在しないサテライト細胞への前記スピン培養中の少なくとも1つの筋芽細胞の脱分化を誘導するために十分な時間接触させることを含む、方法。
(項目42)
前記少なくとも1種の培地が筋芽細胞培地である、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記少なくとも1種の培地がスピン培地である、項目41に記載の方法。
(項目44)
前記少なくとも1種の培地が分化培地である、項目41に記載の方法。
(項目45)
筋芽細胞から天然に存在しないサテライト細胞を生成する方法であって、
筋芽細胞を含む細胞集団を筋芽細胞培地と接触させて、拡大増殖した筋芽細胞集団を形成すること;
スピン培養中の拡大増殖した筋芽細胞集団をスピン培地と接触させて、分化した細胞および増殖性細胞を含む少なくとも1つの骨格筋オルガノイドを形成すること;
スピン培養中の前記少なくとも1つの骨格筋オルガノイドを、分化培地と、天然に存在しないサテライト細胞への前記骨格筋オルガノイドの少なくとも1つの増殖性細胞の脱分化を誘導するために十分な時間接触させること
を含む、方法。
(項目46)
前記細胞集団を、スピン培地の懸濁培養物中で、分化した細胞および増殖性細胞を含む骨格筋オルガノイドへの前記細胞集団中の前記筋芽細胞のインビトロ変換を誘導するために十分な期間維持する、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記期間が少なくとも10日間を含む、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記期間が10日間~30日間を含む、項目46に記載の方法。
(項目49)
前記期間が10~20日間を含む、項目46に記載の方法。
(項目50)
前記期間が20日間を含む、項目46に記載の方法。
(項目51)
前記少なくとも1つの骨格筋オルガノイドを、懸濁培養物中で、少なくとも1つの天然に存在しないサテライト細胞への前記骨格筋オルガノイドの前記増殖性細胞の少なくとも1つのインビトロ脱分化を誘導するために十分な期間維持する、項目45に記載の方法。
(項目52)
前記期間が少なくとも10日間を含む、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記期間が10日間~30日間を含む、項目51に記載の方法。
(項目54)
前記期間が10~20日間を含む、項目51に記載の方法。
(項目55)
前記期間が10日間を含む、項目51に記載の方法。
(項目56)
前記細胞集団中の前記筋芽細胞の少なくとも1%が、天然に存在しないサテライト細胞に脱分化するように誘導される、項目45に記載の方法。
(項目57)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、Pax7、Myf5、少なくとも1つの静止関連遺伝子および少なくとも1つのNotchシグナル伝達経路遺伝子を発現する、項目45に記載の方法。
(項目58)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Aおよび/または
図8Cに特定されている少なくとも1つの遺伝子を発現する、項目45に記載の方法。
(項目59)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Aおよび/または
図8Cに特定されている少なくとも2つの遺伝子を発現する、項目45に記載の方法。
(項目60)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Aおよび/または
図8Cに特定されている少なくとも3つの遺伝子を発現する、項目45に記載の方法。
(項目61)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Cに特定されている少なくとも1つの遺伝子を発現する、項目45に記載の方法。
(項目62)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Cに特定されている少なくとも2つの遺伝子を発現する、項目45に記載の方法。
(項目63)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、
図8Cに特定されている少なくとも3つの遺伝子を発現する、項目45に記載の方法。
(項目64)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、筋肉傷害に対する反応を示す、項目45に記載の方法。
(項目65)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、移植後に筋肉再生を促す、項目45に記載の方法。
(項目66)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、脱分化した筋芽細胞に由来する、項目45に記載の方法。
(項目67)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、サテライト細胞ニッチを再配置する能力を有する、項目45に記載の方法。
(項目68)
前記天然に存在しないサテライト細胞がヒト細胞を含む、項目45に記載の方法。
(項目69)
天然に存在しないサテライト細胞のインビトロ生成が拡大縮小可能である、項目45に記載の方法。
(項目70)
前記天然に存在しないサテライト細胞が培養において拡大増殖可能である、項目45に記載の方法。
(項目71)
項目45~70のいずれか一項に記載の方法にしたがって生産された、天然に存在しないサテライト細胞の単離された集団。
(項目72)
被包された項目71に記載の天然に存在しないサテライト細胞の単離された集団を含む、マイクロカプセル。
(項目73)
項目45~70のいずれか一項に記載の方法にしたがって生産された天然に存在しないサテライト細胞の集団を含む、組成物。
(項目74)
項目45~70のいずれか一項に記載の方法にしたがって生産された天然に存在しないサテライト細胞の単離された集団を含む、アッセイ。
(項目75)
少なくとも1つの天然に存在しないサテライト細胞への少なくとも1つの筋芽細胞の脱分化を促進する1つまたはそれを超える候補薬剤の同定において使用するための、項目74に記載のアッセイ。
(項目76)
処置を必要とする被験体を処置するための方法であって、被験体に、項目45~70のいずれか一項に記載の方法にしたがって生産されたサテライト細胞の単離された集団を含む組成物を投与することを含む、方法。
(項目77)
前記サテライト細胞がマイクロカプセル中に被包されている、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記天然に存在しないサテライト細胞が、前記天然に存在しないサテライト細胞を投与する同じ被験体から得られた筋芽細胞の集団から生産される、項目76に記載の方法。
(項目79)
前記被験体が筋肉変性障害を有するか、または筋肉変性障害を発症する増加したリスクを有する、項目76に記載の方法。
(項目80)
前記被験体が筋肉外傷を有するか、または筋肉外傷を発症する増加したリスクを有する、項目76に記載の方法。
(項目81)
前記被験体がサルコペニアを有するか、またはサルコペニアを発症する増加したリスクを有する、項目76に記載の方法。
(項目82)
投与を必要とする被験体に投与するための、項目45~70のいずれかに記載の方法により生産された天然に存在しないサテライト細胞の単離された集団の使用。
(項目83)
前記天然に存在しないサテライト細胞の単離された集団が、マイクロカプセル中に被包されて前記被験体に投与される、項目82に記載の使用。
(項目84)
前記被験体が筋肉変性障害を有するか、または筋肉変性障害を発症する増加したリスクを有する、項目82に記載の使用。
(項目85)
前記被験体が筋肉外傷を有するか、または筋肉外傷を発症する増加したリスクを有する、項目82に記載の使用。
(項目86)
前記被験体が筋肉外傷を有するか、または筋肉外傷を発症する増加したリスクを有する、項目82に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A-B】
図1A~1Dは、三次元骨格筋オルガノイドの培養を示す。
図1Aは、筋芽細胞の単離、ならびに三次元骨格筋オルガノイドを形成するためのスピンフラスコ中の拡大増殖および培養の概要を示す概略図を示す。
図1Bは、スピンフラスコに播種した10、20および30日後のマウス三次元骨格筋オルガノイドを示す。Pax7(緑色)およびMyHC(赤色)に対する抗体による免疫蛍光イメージング。核はヘキストで対比染色されている。スケールバーは100μmを示す。
図1Cは、スフェロイドプレートに播種した10日後のヒト三次元骨格筋オルガノイドを示す。オービタルシェーカー上でさらに8日間培養するために、2日目に、骨格筋オルガノイドをスフェロイドプレートから低付着10cmプレートに移した。
図1Dは、スフェロイドプレートに播種した10日後のヒト三次元骨格筋オルガノイドを示す。Pax7(緑色)およびMyHC(赤色)に対する抗体による免疫蛍光イメージング。核はヘキストで対比染色されている。スケールバーは100μmを示す。
【
図1C-D】
図1A~1Dは、三次元骨格筋オルガノイドの培養を示す。
図1Aは、筋芽細胞の単離、ならびに三次元骨格筋オルガノイドを形成するためのスピンフラスコ中の拡大増殖および培養の概要を示す概略図を示す。
図1Bは、スピンフラスコに播種した10、20および30日後のマウス三次元骨格筋オルガノイドを示す。Pax7(緑色)およびMyHC(赤色)に対する抗体による免疫蛍光イメージング。核はヘキストで対比染色されている。スケールバーは100μmを示す。
図1Cは、スフェロイドプレートに播種した10日後のヒト三次元骨格筋オルガノイドを示す。オービタルシェーカー上でさらに8日間培養するために、2日目に、骨格筋オルガノイドをスフェロイドプレートから低付着10cmプレートに移した。
図1Dは、スフェロイドプレートに播種した10日後のヒト三次元骨格筋オルガノイドを示す。Pax7(緑色)およびMyHC(赤色)に対する抗体による免疫蛍光イメージング。核はヘキストで対比染色されている。スケールバーは100μmを示す。
【
図2A】
図2A~2Bは、骨格筋オルガノイド由来サテライト様細胞の転写プロファイリングを示す。
図2Aは、サテライト細胞および培養筋芽細胞の遺伝子プロファイルを示すヒートマップを提供する。赤色は、アップレギュレートされている遺伝子を示し、青色は、筋芽細胞とサテライト細胞との間でダウンレギュレートされている遺伝子を示す。
図2Bは、3D培養30日後の骨格筋オルガノイド由来nGFP
+細胞からのqPCR検証を示す。個々のPax7nGFPマウスに由来する別個の筋芽細胞株を使用して、生物学的3回反復(n=3)で行った実験。結果は、増殖筋芽細胞に対する対数変化倍率として表示されている。
【
図2B】
図2A~2Bは、骨格筋オルガノイド由来サテライト様細胞の転写プロファイリングを示す。
図2Aは、サテライト細胞および培養筋芽細胞の遺伝子プロファイルを示すヒートマップを提供する。赤色は、アップレギュレートされている遺伝子を示し、青色は、筋芽細胞とサテライト細胞との間でダウンレギュレートされている遺伝子を示す。
図2Bは、3D培養30日後の骨格筋オルガノイド由来nGFP
+細胞からのqPCR検証を示す。個々のPax7nGFPマウスに由来する別個の筋芽細胞株を使用して、生物学的3回反復(n=3)で行った実験。結果は、増殖筋芽細胞に対する対数変化倍率として表示されている。
【
図3A-B】
図3A~3Dは、骨格筋オルガノイド由来サテライト様細胞が、サテライト細胞ニッチにユニークなプロテオグリカンを発現することを実証する。
図3Aは、培養筋芽細胞上の発現と比べた、サテライト細胞特異的プロテオグリカン遺伝子のサブセットを示すヒートマップを提供する。赤色は、アップレギュレートされている遺伝子を示し、青色は、筋芽細胞とサテライト細胞との間でダウンレギュレートされている遺伝子を示す。
図3Bは、3D培養30日後の骨格筋オルガノイド由来nGFP
+細胞からのプロテオグリカン遺伝子のqPCR検証を示す。個々のPax7nGFPマウスに由来する別個の筋芽細胞株を使用して、生物学的3回反復(n=3)で行った実験。結果は、増殖筋芽細胞に対する対数変化倍率として表示されている。
図3Cは、プロテオグリカンを検出するための骨格筋オルガノイド培養および分化の概略図を提供する。
図3Dは、20日目または10日目分化の凍結切片骨格筋オルガノイドを示す。Pax7(緑色)およびBgn(赤色上)またはTgfbr3(赤色下)に対する抗体による免疫蛍光イメージング。核はヘキストで対比染色されている。スケールバーは100μmを示す。
【
図3C-D】
図3A~3Dは、骨格筋オルガノイド由来サテライト様細胞が、サテライト細胞ニッチにユニークなプロテオグリカンを発現することを実証する。
図3Aは、培養筋芽細胞上の発現と比べた、サテライト細胞特異的プロテオグリカン遺伝子のサブセットを示すヒートマップを提供する。赤色は、アップレギュレートされている遺伝子を示し、青色は、筋芽細胞とサテライト細胞との間でダウンレギュレートされている遺伝子を示す。
図3Bは、3D培養30日後の骨格筋オルガノイド由来nGFP
+細胞からのプロテオグリカン遺伝子のqPCR検証を示す。個々のPax7nGFPマウスに由来する別個の筋芽細胞株を使用して、生物学的3回反復(n=3)で行った実験。結果は、増殖筋芽細胞に対する対数変化倍率として表示されている。
図3Cは、プロテオグリカンを検出するための骨格筋オルガノイド培養および分化の概略図を提供する。
図3Dは、20日目または10日目分化の凍結切片骨格筋オルガノイドを示す。Pax7(緑色)およびBgn(赤色上)またはTgfbr3(赤色下)に対する抗体による免疫蛍光イメージング。核はヘキストで対比染色されている。スケールバーは100μmを示す。
【
図4A】
図4A~4Eは、骨格筋オルガノイドを生成するための方法を示す。
図4Aは、骨格筋オルガノイド(SkMO)細胞の形成を概説する概略図を提供する。SkMO細胞は、一般に、SkMO 30D成長細胞およびSkMO 30D Diff細胞を包含する。SkMO 30D成長細胞は、スピン培養培地で30日間成長させた骨格筋オルガノイド細胞である。SkMO 30D Diff細胞は、スピン培養培地で20日間成長させ、分化培地で10日間成長させた骨格筋オルガノイド細胞である(本明細書では、天然に存在しないサテライト細胞とも称される)。
図4Bは、SkMO 30D成長細胞およびSkMO 30D Diff細胞を示す。
図4Cは、SkMO細胞がPax7(内因性サテライト細胞の重要な転写因子)を発現することを示す。RNAseqにより、SkMOの転写プロファイルを検査し、
図4Dに示されている多次元スケーリングプロットを使用して、状態空間でクラスタ化するそれらの能力を評価する。SkMO GFP+細胞(緑色および青色)は、転写シグネチャーの点で内因性サテライト細胞(赤色)に近似する。SkMO D30成長細胞(青色)は、SkMO D30 Diff細胞(緑色)よりも増殖的であることが示されており、SkMO D30 Diff細胞は、内因性サテライト細胞(赤色)の近くにクラスタ化している。
図4Eは、
図4Dで提供されているデータをさらに裏付けるグローバルヒートマップおよびデンドログラムを提供する。
【
図4B-C】
図4A~4Eは、骨格筋オルガノイドを生成するための方法を示す。
図4Aは、骨格筋オルガノイド(SkMO)細胞の形成を概説する概略図を提供する。SkMO細胞は、一般に、SkMO 30D成長細胞およびSkMO 30D Diff細胞を包含する。SkMO 30D成長細胞は、スピン培養培地で30日間成長させた骨格筋オルガノイド細胞である。SkMO 30D Diff細胞は、スピン培養培地で20日間成長させ、分化培地で10日間成長させた骨格筋オルガノイド細胞である(本明細書では、天然に存在しないサテライト細胞とも称される)。
図4Bは、SkMO 30D成長細胞およびSkMO 30D Diff細胞を示す。
図4Cは、SkMO細胞がPax7(内因性サテライト細胞の重要な転写因子)を発現することを示す。RNAseqにより、SkMOの転写プロファイルを検査し、
図4Dに示されている多次元スケーリングプロットを使用して、状態空間でクラスタ化するそれらの能力を評価する。SkMO GFP+細胞(緑色および青色)は、転写シグネチャーの点で内因性サテライト細胞(赤色)に近似する。SkMO D30成長細胞(青色)は、SkMO D30 Diff細胞(緑色)よりも増殖的であることが示されており、SkMO D30 Diff細胞は、内因性サテライト細胞(赤色)の近くにクラスタ化している。
図4Eは、
図4Dで提供されているデータをさらに裏付けるグローバルヒートマップおよびデンドログラムを提供する。
【
図4D】
図4A~4Eは、骨格筋オルガノイドを生成するための方法を示す。
図4Aは、骨格筋オルガノイド(SkMO)細胞の形成を概説する概略図を提供する。SkMO細胞は、一般に、SkMO 30D成長細胞およびSkMO 30D Diff細胞を包含する。SkMO 30D成長細胞は、スピン培養培地で30日間成長させた骨格筋オルガノイド細胞である。SkMO 30D Diff細胞は、スピン培養培地で20日間成長させ、分化培地で10日間成長させた骨格筋オルガノイド細胞である(本明細書では、天然に存在しないサテライト細胞とも称される)。
図4Bは、SkMO 30D成長細胞およびSkMO 30D Diff細胞を示す。
図4Cは、SkMO細胞がPax7(内因性サテライト細胞の重要な転写因子)を発現することを示す。RNAseqにより、SkMOの転写プロファイルを検査し、
図4Dに示されている多次元スケーリングプロットを使用して、状態空間でクラスタ化するそれらの能力を評価する。SkMO GFP+細胞(緑色および青色)は、転写シグネチャーの点で内因性サテライト細胞(赤色)に近似する。SkMO D30成長細胞(青色)は、SkMO D30 Diff細胞(緑色)よりも増殖的であることが示されており、SkMO D30 Diff細胞は、内因性サテライト細胞(赤色)の近くにクラスタ化している。
図4Eは、
図4Dで提供されているデータをさらに裏付けるグローバルヒートマップおよびデンドログラムを提供する。
【
図4E】
図4A~4Eは、骨格筋オルガノイドを生成するための方法を示す。
図4Aは、骨格筋オルガノイド(SkMO)細胞の形成を概説する概略図を提供する。SkMO細胞は、一般に、SkMO 30D成長細胞およびSkMO 30D Diff細胞を包含する。SkMO 30D成長細胞は、スピン培養培地で30日間成長させた骨格筋オルガノイド細胞である。SkMO 30D Diff細胞は、スピン培養培地で20日間成長させ、分化培地で10日間成長させた骨格筋オルガノイド細胞である(本明細書では、天然に存在しないサテライト細胞とも称される)。
図4Bは、SkMO 30D成長細胞およびSkMO 30D Diff細胞を示す。
図4Cは、SkMO細胞がPax7(内因性サテライト細胞の重要な転写因子)を発現することを示す。RNAseqにより、SkMOの転写プロファイルを検査し、
図4Dに示されている多次元スケーリングプロットを使用して、状態空間でクラスタ化するそれらの能力を評価する。SkMO GFP+細胞(緑色および青色)は、転写シグネチャーの点で内因性サテライト細胞(赤色)に近似する。SkMO D30成長細胞(青色)は、SkMO D30 Diff細胞(緑色)よりも増殖的であることが示されており、SkMO D30 Diff細胞は、内因性サテライト細胞(赤色)の近くにクラスタ化している。
図4Eは、
図4Dで提供されているデータをさらに裏付けるグローバルヒートマップおよびデンドログラムを提供する。
【
図5A-B】
図5A~5Dは、骨格筋オルガノイド(SkMO)由来細胞が内因性サテライト細胞に類似することを示すバイオマーカーおよび表現型データを提供する。
図5Aは、筋芽細胞は分裂してEdUを取り込むが、内因性サテライト細胞はそうではないことを示すEdU取り込みアッセイ(48時間処理)の結果を提供する。SkMO由来細胞は、筋芽細胞よりもかなり静止状態であり、内因性サテライト細胞(紫色)に非常に類似する(SkMO D30 Diff条件(赤色))(
図5B)。
図5Cは、サテライト細胞機能を予測するインビトロアッセイを提供する。懸濁96ウェルプレートで単一細胞として培養したサテライト細胞はクローンを形成するのに対して、筋芽細胞はそうではない。これは、成体幹細胞の古典的なクローンアッセイに似ている。
図5Dは、所定の細胞型に由来する各クローンのサイズを示す。SkMO由来細胞は、内因性サテライト細胞により類似する。
【
図5C-D】
図5A~5Dは、骨格筋オルガノイド(SkMO)由来細胞が内因性サテライト細胞に類似することを示すバイオマーカーおよび表現型データを提供する。
図5Aは、筋芽細胞は分裂してEdUを取り込むが、内因性サテライト細胞はそうではないことを示すEdU取り込みアッセイ(48時間処理)の結果を提供する。SkMO由来細胞は、筋芽細胞よりもかなり静止状態であり、内因性サテライト細胞(紫色)に非常に類似する(SkMO D30 Diff条件(赤色))(
図5B)。
図5Cは、サテライト細胞機能を予測するインビトロアッセイを提供する。懸濁96ウェルプレートで単一細胞として培養したサテライト細胞はクローンを形成するのに対して、筋芽細胞はそうではない。これは、成体幹細胞の古典的なクローンアッセイに似ている。
図5Dは、所定の細胞型に由来する各クローンのサイズを示す。SkMO由来細胞は、内因性サテライト細胞により類似する。
【
図6A】
図6A~6Fは、損傷骨格筋への移植後に、骨格筋オルガノイド(SkMO)細胞が生着および再配置することを実証するインビボデータを提供する。
図6Aは、移植後にSkMO細胞を生着および再配置するための方法を示す概略図を提供する。
図6B~6Cは、生物発光(BLI)シグナルがSkMO処置脚に由来するのに対して、筋芽細胞処置脚では、細胞は十分なBLIシグナルを提供しない(
図6B)ことを示す。21日間の時間経過(D2、D7、D14およびD21)でこれを定量し、統計が含まれている(
図6C)。
図6Dは、筋芽細胞およびドナー由来SkMO D30 Diff細胞に由来する線維を示す。
図6Eは、
図6Dに示されている生着の定量を提供する。
図6Fは、筋芽細胞と比較した、SkMO由来細胞の移植後の細胞によるサテライト細胞ニッチの再配置を示す。
図6Gは、再配置アッセイの定量を提供する(*注:現在、SkMO細胞は有意ではない)。
【
図6B-C】
図6A~6Fは、損傷骨格筋への移植後に、骨格筋オルガノイド(SkMO)細胞が生着および再配置することを実証するインビボデータを提供する。
図6Aは、移植後にSkMO細胞を生着および再配置するための方法を示す概略図を提供する。
図6B~6Cは、生物発光(BLI)シグナルがSkMO処置脚に由来するのに対して、筋芽細胞処置脚では、細胞は十分なBLIシグナルを提供しない(
図6B)ことを示す。21日間の時間経過(D2、D7、D14およびD21)でこれを定量し、統計が含まれている(
図6C)。
図6Dは、筋芽細胞およびドナー由来SkMO D30 Diff細胞に由来する線維を示す。
図6Eは、
図6Dに示されている生着の定量を提供する。
図6Fは、筋芽細胞と比較した、SkMO由来細胞の移植後の細胞によるサテライト細胞ニッチの再配置を示す。
図6Gは、再配置アッセイの定量を提供する(*注:現在、SkMO細胞は有意ではない)。
【
図6D-G】
図6A~6Fは、損傷骨格筋への移植後に、骨格筋オルガノイド(SkMO)細胞が生着および再配置することを実証するインビボデータを提供する。
図6Aは、移植後にSkMO細胞を生着および再配置するための方法を示す概略図を提供する。
図6B~6Cは、生物発光(BLI)シグナルがSkMO処置脚に由来するのに対して、筋芽細胞処置脚では、細胞は十分なBLIシグナルを提供しない(
図6B)ことを示す。21日間の時間経過(D2、D7、D14およびD21)でこれを定量し、統計が含まれている(
図6C)。
図6Dは、筋芽細胞およびドナー由来SkMO D30 Diff細胞に由来する線維を示す。
図6Eは、
図6Dに示されている生着の定量を提供する。
図6Fは、筋芽細胞と比較した、SkMO由来細胞の移植後の細胞によるサテライト細胞ニッチの再配置を示す。
図6Gは、再配置アッセイの定量を提供する(*注:現在、SkMO細胞は有意ではない)。
【
図7A-B】
図7A~7Cは、ヒト筋芽細胞がSkMO細胞を形成することを実証するヒトデータを提供する。ヒト筋芽細胞から形成されたSkMO細胞はPax7陽性である(
図7A)。
図7Bは、ヒト筋芽細胞からSkMO細胞を生成してそれらの細胞を移植するための方法を示す概略図を提供する。
図7Cは、ヒト筋芽細胞のBLI定量を提供する。
【
図7C】
図7A~7Cは、ヒト筋芽細胞がSkMO細胞を形成することを実証するヒトデータを提供する。ヒト筋芽細胞から形成されたSkMO細胞はPax7陽性である(
図7A)。
図7Bは、ヒト筋芽細胞からSkMO細胞を生成してそれらの細胞を移植するための方法を示す概略図を提供する。
図7Cは、ヒト筋芽細胞のBLI定量を提供する。
【
図8A】
図8A~8Eは、内因性サテライト細胞およびSkMO細胞においてアップレギュレートおよびダウンレギュレートされている遺伝子を同定する。細胞のマルチプレックスRNAシーケンシングを実施して、筋芽細胞と比較して、内因性サテライト細胞およびSkMO細胞においてアップレギュレートおよびダウンレギュレートされている遺伝子を同定した。筋芽細胞と比べて、内因性サテライト細胞、SkMO D30成長細胞およびSkMO D30 Diff細胞において>2倍アップレギュレート(
図8A)およびダウンレギュレート(
図8B)されている多くの遺伝子が同定されている。これらの遺伝子は、内因性サテライト細胞を広く定義するために使用され得る。標準経路に関与する遺伝子は緑色で強調表示され、p53経路に関与する遺伝子は黄色で強調表示されている。(注
*Pax7およびTgfbr3は、マルチプレックスRNAシーケンシングにより同定されなかったので、赤色で同定されているが、以前に取得したデータに基づいて、サテライト細胞およびSkMO細胞に存在することが公知である)。加えて、筋芽細胞と比べて、SkMO D30成長細胞およびSkMO D30 Diff細胞において>2倍アップレギュレート(
図8C)およびダウンレギュレート(
図8D)されているが、内因性サテライト細胞に存在しない多くの遺伝子が同定されている。これらの遺伝子は、SkMO細胞を内因性サテライト細胞と区別するために使用され得る。内因性サテライト細胞と比較して、SkMO細胞にユニークな遺伝子は、Wntシグナル伝達の阻害(赤色で強調表示)および/またはプロテアソーム活性化(紫色で強調表示)を含む様々な経路に関与する可能性がある。
図8Eは、内因性サテライト細胞、SkMO D30成長細胞およびSkMO D30 Diff細胞においてアップレギュレートおよびダウンレギュレートされている遺伝子の重複を実証するベン図を提供する。関与する経路(Notch活性化、Wnt阻害、プロテアソーム活性化)がさらに同定されている。
【
図8B】
図8A~8Eは、内因性サテライト細胞およびSkMO細胞においてアップレギュレートおよびダウンレギュレートされている遺伝子を同定する。細胞のマルチプレックスRNAシーケンシングを実施して、筋芽細胞と比較して、内因性サテライト細胞およびSkMO細胞においてアップレギュレートおよびダウンレギュレートされている遺伝子を同定した。筋芽細胞と比べて、内因性サテライト細胞、SkMO D30成長細胞およびSkMO D30 Diff細胞において>2倍アップレギュレート(
図8A)およびダウンレギュレート(
図8B)されている多くの遺伝子が同定されている。これらの遺伝子は、内因性サテライト細胞を広く定義するために使用され得る。標準経路に関与する遺伝子は緑色で強調表示され、p53経路に関与する遺伝子は黄色で強調表示されている。(注
*Pax7およびTgfbr3は、マルチプレックスRNAシーケンシングにより同定されなかったので、赤色で同定されているが、以前に取得したデータに基づいて、サテライト細胞およびSkMO細胞に存在することが公知である)。加えて、筋芽細胞と比べて、SkMO D30成長細胞およびSkMO D30 Diff細胞において>2倍アップレギュレート(
図8C)およびダウンレギュレート(
図8D)されているが、内因性サテライト細胞に存在しない多くの遺伝子が同定されている。これらの遺伝子は、SkMO細胞を内因性サテライト細胞と区別するために使用され得る。内因性サテライト細胞と比較して、SkMO細胞にユニークな遺伝子は、Wntシグナル伝達の阻害(赤色で強調表示)および/またはプロテアソーム活性化(紫色で強調表示)を含む様々な経路に関与する可能性がある。
図8Eは、内因性サテライト細胞、SkMO D30成長細胞およびSkMO D30 Diff細胞においてアップレギュレートおよびダウンレギュレートされている遺伝子の重複を実証するベン図を提供する。関与する経路(Notch活性化、Wnt阻害、プロテアソーム活性化)がさらに同定されている。
【
図8C】
図8A~8Eは、内因性サテライト細胞およびSkMO細胞においてアップレギュレートおよびダウンレギュレートされている遺伝子を同定する。細胞のマルチプレックスRNAシーケンシングを実施して、筋芽細胞と比較して、内因性サテライト細胞およびSkMO細胞においてアップレギュレートおよびダウンレギュレートされている遺伝子を同定した。筋芽細胞と比べて、内因性サテライト細胞、SkMO D30成長細胞およびSkMO D30 Diff細胞において>2倍アップレギュレート(
図8A)およびダウンレギュレート(
図8B)されている多くの遺伝子が同定されている。これらの遺伝子は、内因性サテライト細胞を広く定義するために使用され得る。標準経路に関与する遺伝子は緑色で強調表示され、p53経路に関与する遺伝子は黄色で強調表示されている。(注
*Pax7およびTgfbr3は、マルチプレックスRNAシーケンシングにより同定されなかったので、赤色で同定されているが、以前に取得したデータに基づいて、サテライト細胞およびSkMO細胞に存在することが公知である)。加えて、筋芽細胞と比べて、SkMO D30成長細胞およびSkMO D30 Diff細胞において>2倍アップレギュレート(
図8C)およびダウンレギュレート(
図8D)されているが、内因性サテライト細胞に存在しない多くの遺伝子が同定されている。これらの遺伝子は、SkMO細胞を内因性サテライト細胞と区別するために使用され得る。内因性サテライト細胞と比較して、SkMO細胞にユニークな遺伝子は、Wntシグナル伝達の阻害(赤色で強調表示)および/またはプロテアソーム活性化(紫色で強調表示)を含む様々な経路に関与する可能性がある。
図8Eは、内因性サテライト細胞、SkMO D30成長細胞およびSkMO D30 Diff細胞においてアップレギュレートおよびダウンレギュレートされている遺伝子の重複を実証するベン図を提供する。関与する経路(Notch活性化、Wnt阻害、プロテアソーム活性化)がさらに同定されている。
【
図8D】
図8A~8Eは、内因性サテライト細胞およびSkMO細胞においてアップレギュレートおよびダウンレギュレートされている遺伝子を同定する。細胞のマルチプレックスRNAシーケンシングを実施して、筋芽細胞と比較して、内因性サテライト細胞およびSkMO細胞においてアップレギュレートおよびダウンレギュレートされている遺伝子を同定した。筋芽細胞と比べて、内因性サテライト細胞、SkMO D30成長細胞およびSkMO D30 Diff細胞において>2倍アップレギュレート(
図8A)およびダウンレギュレート(
図8B)されている多くの遺伝子が同定されている。これらの遺伝子は、内因性サテライト細胞を広く定義するために使用され得る。標準経路に関与する遺伝子は緑色で強調表示され、p53経路に関与する遺伝子は黄色で強調表示されている。(注
*Pax7およびTgfbr3は、マルチプレックスRNAシーケンシングにより同定されなかったので、赤色で同定されているが、以前に取得したデータに基づいて、サテライト細胞およびSkMO細胞に存在することが公知である)。加えて、筋芽細胞と比べて、SkMO D30成長細胞およびSkMO D30 Diff細胞において>2倍アップレギュレート(
図8C)およびダウンレギュレート(
図8D)されているが、内因性サテライト細胞に存在しない多くの遺伝子が同定されている。これらの遺伝子は、SkMO細胞を内因性サテライト細胞と区別するために使用され得る。内因性サテライト細胞と比較して、SkMO細胞にユニークな遺伝子は、Wntシグナル伝達の阻害(赤色で強調表示)および/またはプロテアソーム活性化(紫色で強調表示)を含む様々な経路に関与する可能性がある。
図8Eは、内因性サテライト細胞、SkMO D30成長細胞およびSkMO D30 Diff細胞においてアップレギュレートおよびダウンレギュレートされている遺伝子の重複を実証するベン図を提供する。関与する経路(Notch活性化、Wnt阻害、プロテアソーム活性化)がさらに同定されている。
【
図8E】
図8A~8Eは、内因性サテライト細胞およびSkMO細胞においてアップレギュレートおよびダウンレギュレートされている遺伝子を同定する。細胞のマルチプレックスRNAシーケンシングを実施して、筋芽細胞と比較して、内因性サテライト細胞およびSkMO細胞においてアップレギュレートおよびダウンレギュレートされている遺伝子を同定した。筋芽細胞と比べて、内因性サテライト細胞、SkMO D30成長細胞およびSkMO D30 Diff細胞において>2倍アップレギュレート(
図8A)およびダウンレギュレート(
図8B)されている多くの遺伝子が同定されている。これらの遺伝子は、内因性サテライト細胞を広く定義するために使用され得る。標準経路に関与する遺伝子は緑色で強調表示され、p53経路に関与する遺伝子は黄色で強調表示されている。(注
*Pax7およびTgfbr3は、マルチプレックスRNAシーケンシングにより同定されなかったので、赤色で同定されているが、以前に取得したデータに基づいて、サテライト細胞およびSkMO細胞に存在することが公知である)。加えて、筋芽細胞と比べて、SkMO D30成長細胞およびSkMO D30 Diff細胞において>2倍アップレギュレート(
図8C)およびダウンレギュレート(
図8D)されているが、内因性サテライト細胞に存在しない多くの遺伝子が同定されている。これらの遺伝子は、SkMO細胞を内因性サテライト細胞と区別するために使用され得る。内因性サテライト細胞と比較して、SkMO細胞にユニークな遺伝子は、Wntシグナル伝達の阻害(赤色で強調表示)および/またはプロテアソーム活性化(紫色で強調表示)を含む様々な経路に関与する可能性がある。
図8Eは、内因性サテライト細胞、SkMO D30成長細胞およびSkMO D30 Diff細胞においてアップレギュレートおよびダウンレギュレートされている遺伝子の重複を実証するベン図を提供する。関与する経路(Notch活性化、Wnt阻害、プロテアソーム活性化)がさらに同定されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本開示の態様は、少なくとも1つの筋芽細胞からサテライト細胞(本明細書では、天然に存在しないサテライト細胞または非ネイティブサテライト細胞と称される)を生成するための組成物、方法、キットおよび薬剤、ならびに細胞療法、アッセイおよび様々な処置方法において使用するための、前記組成物、方法、キットおよび薬剤により生成されたサテライト細胞に関する。
【0024】
本明細書に記載される方法にしたがって生成されたインビボ生産サテライト細胞は、多くの利点を示す;例えば、それらは、サテライト細胞ニッチを再配置して筋肉再生を増強する能力を有する。加えて、生成されたサテライト細胞は、細胞療法(例えば、追加的および/または機能的サテライト細胞を必要とする被験体への移植)および研究のための新たなプラットフォームを提供し得る。
【0025】
定義
便宜上、ここで、すなわち本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語は、本明細書でまとめられる。特に定義がない限り、本明細書で使用される技術的および科学的用語はすべて、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「体細胞」という用語は、生殖系列細胞とは対照的に、生物の体を形成する任意の細胞を指す。哺乳動物では、生殖系列細胞(「配偶子」としても公知)は、受精中に融合して接合子(これから、哺乳動物胚全体が発生する)と称される細胞を生産する精子および卵子である。哺乳動物の体内のあらゆる他の細胞型(精子および卵子、それらが作られる細胞(生殖母細胞)ならびに未分化幹細胞を除く)は、体細胞型である;内臓、皮膚、骨、血液および結合組織はすべて、体細胞から構成される。いくつかの実施形態では、体細胞は「非胚性体細胞」であり、これは、胚に存在しないかまたは胚から得られない体細胞であって、インビトロでこのような細胞の増殖から生じない体細胞を意味する。いくつかの実施形態では、体細胞は「成体体細胞」であり、これは、胚以外の生物もしくは胎児に存在するかもしくは胚以外の生物もしくは胎児から得られるか、またはインビトロでこのような細胞の増殖から生じる細胞を意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「成体細胞」という用語は、胚発生後に体全体に見られる細胞を指す。
【0028】
「前駆体」または「前駆」細胞という用語は本明細書では互換的に使用され、分化により生じ得る細胞と比べて原始的である(すなわち、完全に分化した細胞よりも発生経路または進行の初期段階にある)細胞表現型を有する細胞を指す。多くの場合、前駆細胞はまた、有意なまたは非常に高い増殖能力を有する。前駆細胞は、発生経路と、細胞が発生および分化する環境とに応じて、複数の異なる分化した細胞型または単一の分化した細胞型を生じさせ得る。
【0029】
「表現型」という用語は、実際の遺伝子型にかかわらず、特定の組の環境条件および因子の下で細胞または生物を規定する1つまたは多くの全生物学的特徴を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「多能性」という用語は、1つを超える分化した細胞型に分化し、好ましくは3つすべての生殖細胞層に特徴的な細胞型に分化する能力を有する細胞を指す。多能性細胞は、例えば、ヌードマウステラトーマ形成アッセイを使用して、1つを超える細胞型、好ましくは3つすべての胚葉に分化する能力を主に特徴とする。多能性はまた、胚性幹(ES)細胞マーカーの発現により証明されるが、好ましい多能性試験は、3つの各胚葉の細胞に分化する能力の実証である。このような細胞を単に培養しても、自然にそれらが多能性になるわけではないことに留意すべきである。再プログラム化多能性細胞(例えば、本明細書でその用語が定義されるiPS細胞)はもまた、一般に培養においてごく限られた回数の分裂能力を有する初代細胞の親と比べて、成長能力を喪失せずに、長期継代能力の特徴を有する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「幹細胞」という用語は、増殖することができる未分化細胞であって、多数の母細胞を生成する能力を有するより多くの前駆細胞を生じさせ、そして、分化した娘細胞または分化可能な娘細胞を生じさせることができる未分化細胞を指す。娘細胞それ自体は、親発生能力を有する1つまたはそれを超える細胞も保持しながら、誘導されて増殖し、1つまたはそれを超える成熟細胞型にその後分化する子孫を生産し得る。「幹細胞」という用語は、特定の環境下において、より特殊化または分化した表現型に分化する能力または可能性を有する前駆体のサブセットであって、特定の環境下において、実質的に分化せずに増殖する能力を保持する前駆体のサブセットを指す。一実施形態では、幹細胞という用語は、一般に、その子孫細胞(子孫)が、胚性細胞および組織の進行的多様化において生じる際に、分化により、例えば完全に個別の特徴を獲得することにより、多くの場合に異なる方向で特殊化する天然に存在する母細胞を指す。細胞分化は、多くの細胞分裂を介して典型的に起こる複雑なプロセスである。分化した細胞は、それ自体が多分化能細胞に由来する多分化能細胞に由来し得る、など。これらの各多分化能細胞は幹細胞であると考えられ得るが、細胞型の範囲はそれぞれかなり変動し得る。いくつかの分化した細胞はまた、より高い発生能力の細胞を生じさせる能力を有する。このような能力は天然であり得るか、または様々な因子による処理により人工的に誘導され得る。多くの生物学的事例では、幹細胞は、1つを超える異なる細胞型の子孫を生産し得るので、それらもまた「多分化能(multipotent)」であるが、これは「幹性」を必要としない。自己複製は、幹細胞定義の他の古典的な部分であり、本明細書で使用される場合、それは必須である。理論的には、自己複製は、2つの主要機構のいずれかにより起こり得る。幹細胞は非対称に分裂し得、一方の娘は幹状態を保持し、他方の娘は、いくつかの異なる他の特異的機能および表現型を発現する。あるいは、集団中の幹細胞のいくつかは2つの幹に対称的に分裂するので、全体として集団中のいくつかの幹細胞を維持し得るが、集団中の他の細胞は、分化した子孫のみを生じさせる。形式的には、幹細胞として開始する細胞は、分化した表現型に進行し得るが、幹細胞表現型に「戻り」、幹細胞表現型を再発現する(当業者により「脱分化」または「再プログラミング」または「逆分化(retrodifferentiation)」と称されることが多い用語)ことが可能である。本明細書で使用される場合、「多能性幹細胞」という用語は、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、胎盤幹細胞などを含む。
【0032】
「内因性ミオサテライト細胞」または「内因性サテライト細胞」という用語は、本明細書では、成熟筋肉では実質的に細胞質が見られない小さな単核前駆細胞を指すために使用される。それらは、個々の筋線維の基底膜と筋線維膜(細胞膜)との間に挟まれて見られ、線維の筋線維膜下核と区別困難であり得る。内因性サテライト細胞は、分化および融合して既存の筋線維を増強し、新たな線維を形成することができる。これらの細胞は、最も古くから公知の成体幹細胞ニッチに相当し、筋肉の正常成長、および傷害または疾患後の再生に関与する。非損傷筋肉では、内因性サテライト細胞の大部分は静止状態である;それらは分化せず、細胞分裂も受けない。機械的歪みに応じて、内因性サテライト細胞は活性化される。活性化した内因性サテライト細胞は、最初に、筋原性分化を受ける前に骨格筋芽細胞として増殖する。内因性サテライト細胞は、本明細書に記載される特徴の多くにより、本発明の天然に存在しないサテライト細胞と区別可能である。
【0033】
本明細書で使用される場合、「サテライト細胞」、「天然に存在しないサテライト細胞」、「非ネイティブサテライト細胞」および「SkMO 30D Diff細胞」はすべて、筋芽細胞の脱分化により生成されるサテライト細胞を指す。サテライト細胞は、限定されないが、サテライト細胞ニッチを再配置する能力、筋肉再生を促して遺伝子マーカーの適切な発現を示す能力、糖タンパク質の適切な発現、および培養における拡大増殖可能性を含む、内因性サテライト細胞と共有し得る1つまたはそれを超える特徴を示し得る。しかしながら、天然に存在しないサテライト細胞は、本明細書に記載される内因性サテライト細胞と同一ではなく区別可能である(遺伝子発現に基づく区別を含む)。
【0034】
本明細書で使用される場合、「増殖」という用語は、細胞の成長および分裂を意味する。いくつかの実施形態では、細胞に関して本明細書で使用される場合、「増殖」という用語は、一定期間にわたって数が増加し得る細胞群を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、サテライト細胞増殖の「誘導」、「増強」または「増加」は、サテライト細胞がより速い速度でおよび/またはより頻繁に複製することを意味する。本明細書に記載されるこの態様および他の態様のいくつかの実施形態では、サテライト細胞増殖は、未処理対照と比べて少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、1.1倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、50倍、100倍またはそれを超えて増加される。サテライト細胞増殖の%または増加倍率は、サテライト細胞が化合物と接触していない対照と比較べて、本明細書に記載される化合物との接触中の複製サテライト細胞の数を測定することにより決定され得る。増殖の増加はまた、各処理対照および未処理対照における細胞の総数に対する複製細胞の比に基づくものであり得る。いくつかの実施形態では、処理対照および未処理対照における細胞の総数は、増殖を決定するために使用される。サテライト細胞増殖は、米国特許出願公開第2009/0136481号(この内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているBrdU組み込み方法を使用して決定され得る。
【0036】
細胞個体発生の文脈では、「分化した」または「分化している」という形容詞は、「分化した細胞」が、それが比較される細胞よりもさらに進んで発生経路を進行している細胞であることを意味する相対的な用語である。したがって、幹細胞は、系統制限前駆細胞(例えば、外胚葉幹細胞)に分化し得、そしてこれは、経路をさらに進んで他の種類の前駆細胞(例えば、神経外胚葉細胞)に分化し、次いで、最終段階の分化した細胞(これは、特定の組織型において特徴的な役割を果たし、さらに増殖する能力を保持していてもよいしまたは保持していなくてもよい)に分化し得る。
【0037】
「分化した細胞」という用語は、その用語が本明細書で定義されるように、そのネイティブ形態では多能性ではない任意の初代細胞を含むことを意味する。別の言い方をすれば、「分化した細胞」という用語は、細胞分化プロセスにおけるあまり特殊化してない細胞型の細胞(例えば、幹細胞、例えば人工多能性幹細胞)に由来するより特殊化した細胞型の細胞を指す。
【0038】
対照的に、「脱分化した」または「脱分化」という形容詞は、「脱分化した細胞」が、発生経路の以前のバージョンの細胞に戻った細胞であることを意味する相対的な用語である。「脱分化した細胞」という用語は、より特殊化した細胞型に由来するあまり特殊化していない細胞型である任意の細胞を含むことを意味する。例えば、筋芽細胞は、サテライト細胞に脱分化し得る。
【0039】
本明細書で言及される「細胞培養培地」(本明細書では「培養培地」または「培地」とも称される)という用語は、細胞を培養するための培地であって、細胞生存性を維持して増殖を支援する栄養素を含有する培地である。細胞培養培地は、適切な組み合わせで以下のいずれかを含有し得る:塩、緩衝液、アミノ酸、グルコースまたは他の糖、抗生物質、血清または血清代替物および他の成分、例えばペプチド成長因子など。特定の細胞型に通常使用される細胞培養培地は、当業者に公知である。
【0040】
「栄養培地」という用語は、増殖を促進する栄養素を含有する細胞を培養するための培地を指す。栄養培地は、適切な組み合わせで以下のいずれかを含有し得る:等張性食塩水、緩衝液、アミノ酸、抗生物質、血清または血清代替物および外因的添加因子。「馴化培地」は、培地で第1の細胞集団を培養し、次いで、培地を回収することにより調製される。次いで、(細胞により培地に分泌されたものと一緒に)馴化培地を使用して、第2の細胞集団の成長を支援し得る。
【0041】
本明細書で言及される様々な培地としては、筋芽細胞培地、スピン培地および分化培地が挙げられる。「分化培地」という用語は、細胞の分化および脱分化の両方のための培地を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「薬剤」という用語は、任意の化合物または物質、例えば限定されないが、小分子、核酸、ポリペプチド、ペプチド、薬物、イオンなどを意味する。「薬剤」は、任意の化学物質、実体または部分、例えば限定されないが、合成および天然に存在するタンパク質性および非タンパク質性実体であり得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、核酸、核酸類似物、タンパク質、抗体、ペプチド、アプタマー、核酸のオリゴマー、アミノ酸または炭水化物、例えば限定されないが、タンパク質、オリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAザイム、糖タンパク質、siRNA、リポタンパク質、アプタマーならびにそれらの改変および組み合わせである。特定の実施形態では、薬剤は、化学部分を有する小分子である。例えば、化学部分は、置換または非置換アルキル、芳香族またはヘテロシクリル部分、例えばマクロライド、レプトマイシンおよび関連天然産物またはその類似体を含む。化合物は、所望の活性および/もしくは特性を有することが公知であり得るか、または様々な化合物のライブラリから選択され得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「接触」という用語(すなわち、少なくとも1つの胚様体またはその前駆体と分化培地または薬剤との接触)は、分化培地および/または薬剤ならびに細胞をインビトロで一緒にインキュベートする(例えば、分化培地または薬剤を培養中の細胞に添加する)ことを含むことを意図する。いくつかの実施形態では、「接触」という用語は、被験体において天然に存在し得る本明細書に開示される化合物への細胞のインビボ曝露(すなわち、天然の生理学的プロセスの結果として起こり得る曝露)を含むことを意図しない。サテライト細胞の生産に関する実施形態のように、少なくとも1つの筋芽細胞またはその前駆体を分化培地または薬剤と接触させる工程は、任意の適切な方法で行われ得る。例えば、細胞は、付着培養または懸濁培養で処理され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、骨格筋オルガノイド(本明細書ではミオスフェアとも称される)の形成を促進する条件で処理される。本開示は、骨格筋オルガノイドの形成を促進する任意の条件を企図する。骨格筋オルガノイドの形成を促進する条件の例としては、限定されないが、低付着組織培養プレート、スピナーフラスコ、アグリウェルプレート(aggrewell plate)中の懸濁培養が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明者らは、20%血清(例えば、熱不活化ウシ胎仔血清)を含有する培地で、骨格筋オルガノイドが依然として安定であることを観察した。
【0044】
また、分化培地および/または薬剤と接触させた細胞を別の薬剤、例えば他の分化薬剤または環境と同時にまたはその後接触させて、細胞を安定化し得るかまたは細胞をさらに分化させ得ると理解される。
【0045】
「外因性」という用語は、その天然供給源以外の細胞または生物に存在する物質を指す。例えば、「外因性核酸」または「外因性タンパク質」という用語は、人の手を伴うプロセスにより、それが通常は見られないかまたはより少量で見られる生物系(例えば、細胞または生物)に導入されている核酸またはタンパク質を指す。物質が細胞、または物質を受け継ぐ細胞祖先に導入される場合、それは外因性であるとみなされるであろう。対照的に、「内因性」という用語は、生物系にネイティブである物質を指す。
【0046】
「発現」という用語は、RNAおよびタンパク質を産生すること、および必要に応じてタンパク質を分泌することを伴う細胞プロセス、例えば該当する場合には、限定されないが、転写、翻訳、フォールディング、改変およびプロセッシングを指す。「発現産物」は、遺伝子から転写されたRNAと、遺伝子から転写されたmRNAの翻訳により得られたポリペプチドとを含む。
【0047】
本明細書で使用される場合、「単離された」または「部分的に精製された」という用語は、核酸またはポリヌクレオチドの場合には、その天然供給源に見られる核酸もしくはポリヌクレオチドと共に存在し、および/または分泌ポリペプチドの場合には、細胞により発現されるかもしくは分泌されると核酸もしくはポリヌクレオチドと共に存在するであろう少なくとも1つの他の成分(例えば、核酸またはポリヌクレオチド)から分離された核酸またはポリヌクレオチドを指す。化学合成核酸もしくはポリヌクレオチド、またはインビトロ転写/翻訳を使用して合成されたものは、「単離された」とみなされる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「単離された細胞」という用語は、それが本来見られる生物から取り出されている細胞またはこのような細胞の子孫を指す。必要に応じて、細胞は、インビトロで、例えば他の細胞の存在下で培養されている。必要に応じて、その後、細胞は、第2の生物に導入されるか、またはそれ(またはそれに由来する細胞)が単離された生物に再導入される。
【0049】
本明細書で使用される場合、細胞の単離された集団に関する「単離された集団」という用語は、細胞の混合または不均質集団から取り出されて分離されている細胞の集団を指す。いくつかの実施形態では、単離された集団は、細胞が単離または濃縮された不均質集団と比較して実質的に純粋な細胞集団である。
【0050】
「濃縮する」または「濃縮された」という用語は本明細書では互換的に使用され、1種類の細胞の収率(割合)が、開始培養物または調製物中のその種類の細胞の割合よりも少なくとも10%増加していることを意味する。
【0051】
「モジュレートする」という用語は、当技術分野におけるその使用と一致して使用され、すなわち、目的のプロセス、経路または現象の定性的または定量的な変更、変化または改変を引き起こすかまたは促進することを意味する。限定されないが、このような変更は、プロセス、経路または現象の異なる成分または分岐の相対的な強度または活性の増加、減少または変更であり得る。「モジュレーター」は、目的のプロセス、経路または現象の定性的または定量的な変更、変化または改変を引き起こすかまたは促進する薬剤である。
【0052】
本明細書で使用される場合、「DNA」という用語は、デオキシリボ核酸として定義される。
【0053】
本明細書で使用される場合、「マーカー」は、細胞の特徴および/または表現型を説明するために使用される。マーカーは、目的の特徴を含む細胞の選択に使用され得る。マーカーは、特定の細胞により変動するであろう。特定の細胞型の細胞の形態学的、機能的もしくは生化学的(酵素的)特徴または細胞型により発現される分子にかかわらず、マーカーは特徴的である。好ましくは、このようなマーカーはタンパク質であり、より好ましくは、抗体または当技術分野で利用可能な他の結合分子に対するエピトープを有する。しかしながら、マーカーは、細胞に見られる任意の分子、例えば限定されないが、タンパク質(ペプチドおよびポリペプチド)、脂質、多糖類、核酸およびステロイドからなり得る。形態学的特徴または形質の例としては、限定されないが、形状、サイズおよび核対細胞質比が挙げられる。機能的特徴または形質の例としては、限定されないが、特定の基材への付着能力、特定の色素の取り込み能力または排出能力、特定の条件下における遊走能力および特定の系統に沿った分化能力または脱分化能力が挙げられる。マーカーは、当業者に利用可能な任意の方法により検出され得る。マーカーはまた、形態学的特徴の非存在、またはタンパク質、脂質などの非存在であり得る。マーカーは、ポリペプチドおよび他の形態学的特徴の存在および非存在のユニークな特徴のパネルの組み合わせであり得る。
【0054】
「選択マーカー」という用語は、発現されると、選択的表現型、例えば、細胞傷害剤もしくは細胞増殖抑制剤に対する耐性(例えば、抗生物質耐性)、栄養原栄養性、またはタンパク質を発現する細胞と発現しない細胞とを区別する根拠として使用され得る特定のタンパク質の発現を細胞に付与する遺伝子、RNAまたはタンパク質を指す。発現が容易に検出され得るタンパク質、例えば蛍光もしくは発光タンパク質、または基質に作用して発色、蛍光もしくは発光物質を生産する酵素(「検出可能なマーカー」)は、選択マーカーのサブセットを構成する。多能性細胞において選択的または排他的に通常発現される遺伝子にネイティブな発現制御エレメントに連結された選択マーカーの存在は、多能性状態に再プログラム化されている体細胞を同定および選択することを可能にする。様々な選択マーカー遺伝子、例えばネオマイシン耐性遺伝子(neo)、ピューロマイシン耐性遺伝子(puro)、グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、アデノシンジアミナーゼ(ada)、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ(PAC)、ヒグロマイシン耐性遺伝子(hyg)、多剤耐性遺伝子(mdr)、チミジンキナーゼ(TK)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)およびhisD遺伝子が使用され得る。検出可能なマーカーとしては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色、サファイア色、黄色、赤色、オレンジ色およびシアン色蛍光タンパク質ならびにこれらのいずれかの改変体が挙げられる。発光タンパク質、例えばルシフェラーゼ(例えば、ホタルまたはウミシイタケのルシフェラーゼ)も有用である。当業者には明らかであるように、本明細書で使用される場合、「選択マーカー」という用語は、遺伝子または遺伝子の発現産物、例えばコードされたタンパク質を指し得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、選択マーカーは、それを発現しないかまたは有意に低いレベルでそれを発現する細胞と比べて、それを発現する細胞に増殖および/または生存の利点を付与する。このような増殖および/または生存の利点は、典型的には、特定の条件、すなわち「選択的条件」下で細胞が維持される場合に生じる。有効な選択を保証するために、細胞の集団は、マーカーを発現しない細胞が増殖および/もしくは生存せず、集団から排除されるか、またはその数が集団のごくわずかまで減少するような条件下および十分な期間維持され得る。マーカーを発現しない細胞をほとんどまたは完全に排除するための選択条件下で細胞の集団を維持することにより、増殖および/または生存上の利点を付与するマーカーを発現する細胞を選択するプロセスは、本明細書では「陽性選択」と称され、マーカーは、「陽性選択に有用」であるといわれる。陰性選択および陰性選択に有用なマーカーもまた、本明細書に記載される特定の方法の関心対象である。このようなマーカーの発現は、それを発現しないかまたは有意に低いレベルでそれを発現する細胞と比べて、マーカーを発現する細胞に増殖および/または生存上の不利益を付与する(または、言い換えればマーカーを発現しない細胞は、マーカーを発現する細胞と比べて、増殖および/または生存上の利点を有すると考えられる)。したがって、マーカーを発現する細胞は、選択条件で十分な期間維持されると、細胞の集団からほとんどまたは完全に排除される。
【0056】
「被験体」および「個体」という用語は本明細書では互換的に使用され、細胞を得ることができ、および/または本明細書に記載される細胞による処置(予防的処置を含む)が提供される動物、例えばヒトを指す。特定の動物、例えばヒト被験体に特異的な感染、状態または疾患状態の処置では、被験体という用語は、その特定の動物を指す。本明細書で互換的に使用される場合、「非ヒト動物」および「非ヒト哺乳動物」は、哺乳動物、例えばラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタおよび非ヒト霊長類を含む。「被験体」という用語はまた、任意の脊椎動物、例えば限定されないが、哺乳動物、爬虫類、両生類および魚類を包含する。しかしながら、有利には、被験体は、哺乳動物、例えばヒトまたは他の哺乳動物、例えば飼育哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ウマなどまたは生産哺乳動物、例えばウシ、ヒツジ、ブタなどである。
【0057】
単離された細胞に適用される場合、「処置する」、「処置すること」、「処置」などの用語は、細胞を任意の種類のプロセスもしくは条件に供すること、または細胞に対して任意の種類の操作もしくは手順を実施することを含む。被験体に適用される場合、「処置する」、「処置すること」、「処置」などの用語は、医療的または外科的注意、ケアまたは管理を個体に提供することを指す。通常、個体は病気もしくは負傷状態であるか、または集団の平均的なメンバーと比べて増加した病気リスクがあり、このような注意、ケアまたは管理を必要とする。それは、被験体が疾患の少なくとも1つの症状の低減または疾患の改善、例えば有益なまたは所望の臨床的結果を示すように、有効量の組成物を被験体に投与することを含み得る。本発明の目的では、有益または所望の臨床的結果としては、限定されないが、検出可能または検出不可能にかかわらず、1つまたはそれを超える症状の緩和、疾患の程度の減弱、疾患状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患進行の遅延もしくは減速、疾患状態の改善もしくは軽減および寛解(部分的または完全にかかわらず)が挙げられる。処置は、処置を受けない場合に予想される生存と比較して生存を延長することを指し得る。したがって、当業者は、処置が疾患状態を改善し得るが、疾患の完治ではない可能性があることを理解する。「処置」という用語は、予防を含む。処置を必要とする者としては、状態(例えば、筋肉障害または疾患)と既に診断された者、および遺伝的感受性または他の要因により状態を発症する可能性が高い者が挙げられる。
【0058】
「組織」という用語は、特定の特殊機能を共に実行する特殊化した細胞の群または層を指す。「組織特異的」という用語は、特定の組織に由来する細胞の供給源を指す。
【0059】
「減少する」、「低下した」、「低下」、「減少」または「阻害する」という用語はすべて、本明細書では一般に、統計学的に有意な量の減少を意味するために使用される。しかしながら、誤解を避けるために、「低下した」、「低下」、「減少する」または「阻害する」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%または少なくとも約30%または少なくとも約40%または少なくとも約50%または少なくとも60%または少なくとも約70%または少なくとも約80%または少なくとも約90%の減少または100%までの減少(すなわち、参照サンプルと比較して非存在レベル)または10~100%の任意の減少を意味する。
【0060】
「増加した」、「増加する」もしくは「増強する」または「活性化する」という用語はすべて、本明細書では一般に、統計学的に有意な量の増加を意味するために使用される;いかなる誤解も避けるために、「増加した」、「増加する」もしくは「増強する」または「活性化する」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%もしくは少なくとも約30%もしくは少なくとも約40%もしくは少なくとも約50%もしくは少なくとも約60%もしくは少なくとも約70%もしくは少なくとも約80%もしくは少なくとも約90%の増加もしくは100%までの増加もしくは10~100%の任意の増加、または参照レベルと比較して少なくとも約2倍もしくは少なくとも約3倍もしくは少なくとも約4倍もしくは少なくとも約5倍もしくは少なくとも約10倍の増加もしくは2倍~10倍もしくはそれを超える任意の増加を意味する。
【0061】
「統計学的に有意」または「有意に」という用語は、統計学的有意性を指し、一般に、マーカーの通常の濃度よりも2標準偏差(2SD)低いまたはそれよりも低いことを意味する。前記用語は、差があることの統計的証拠を指す。それは、帰無仮説が実際に真である場合、帰無仮説を拒絶する決定を行う確率として定義される。決定は、多くの場合、p値を使用して行われる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「含むこと」または「含む」という用語は、本発明に必須の組成物、方法およびその各成分に関して使用されるが、必須か否かにかかわらず、不特定要素の包含を含む。
【0063】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、所定の実施形態に必要とされる要素を指す。前記用語は、本発明のその実施形態の基本的かつ新規または機能的な特徴に実質的に影響を及ぼさないさらなる要素の存在を許容する。
【0064】
「からなる」という用語は、本明細書に記載される組成物、方法およびその各成分を指し、実施形態のその説明に列挙されていないいかなる要素に対しても排他的である。
【0065】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「a」、「an」および「the」という単数形は、文脈上明確な表示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「方法」への言及は、本明細書に記載される種類の1つまたはそれを超える方法および/もしくは工程を含み、ならびに/またはこれは、本開示などを読むことにより当業者には明らかであろう。
【0066】
クローニングおよび細胞培養
本明細書に記載される技術に使用され得る分子遺伝学および遺伝子工学の例示的な方法は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(Sambrookら、Cold Spring Harbor);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(Miller&Calos eds.);およびCurrent Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら、eds.,Wiley&Sons)の最新版に見られ得る。細胞生物学、タンパク質化学および抗体技術は、例えば、Current Protocols in Protein Science(J.E.Colliganら、eds.,Wiley&Sons);Current Protocols in Cell Biology(J.S.Bonifacinoら、Wiley&Sons)およびCurrent protocols in Immunology(J.E.Colliganら、eds.,Wiley&Sons.)に見られ得る。遺伝子操作のための例示的な試薬、クローニングベクターおよびキットは、例えば、BioRad,Stratagene、Invitrogen、ClonTechおよびSigma-Aldrich Co.から商業的に入手され得る。
【0067】
適切な細胞培養方法は、例えば、Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique(R.I.Freshney
ed.,Wiley&Sons);General Techniques of Cell Culture(M.A.Harrison&I.F.Rae,Cambridge Univ.Press)およびEmbryonic Stem Cells:Methods and Protocols(K.Turksen ed.,Humana
Press)の最新版に見られ得る。適切な組織培養供給品および試薬は、例えば、Gibco/BRL、Nalgene-Nunc International、Sigma Chemical Co.およびICN Biomedicalsから市販されている。
【0068】
多能性幹細胞は、当業者により、分化を促進せずに増殖を促進する培養条件を使用して、培養で連続的に増殖され得る。例示的な血清含有ES培地は、80%DMEM(例えば、Knock-Out DMEM,Gibco)、20%の規定の牛胎仔血清(FBS、Hyclone)または血清代替物(国際公開第98/30679号)のいずれか、1%非必須アミノ酸、1mM L-グルタミンおよび0.1mM β-メルカプトエタノールで構成される。使用直前に、ヒトbFGFは4ng/mLに添加される(国際公開第99/20741号、Geron Corp.)。伝統的には、ES細胞は、フィーダ細胞、典型的には胚組織または胎児組織に由来する線維芽細胞の層上で培養される。
【0069】
あるいは、多能性SCは、フィーダ細胞を用いずに、未分化状態で維持され得る。フィーダフリー培養の環境は、適切な細胞基材、特に、細胞外マトリクス、例えばMATRIGEL(登録商標)(ゼラチン状タンパク質混合物)またはラミニンを含む。典型的には、細胞が完全に分散する前(コラゲナーゼIVで約5分)に、酵素消化を停止する。次いで、約10個~2,000個の細胞の塊を、さらに分散させずに基材上に直接プレーティングする。
【0070】
サテライト細胞の生成
本開示の態様は、サテライト細胞(例えば、骨格筋細胞など)の生成に関する。一般に、本明細書に開示される方法にしたがって生産されたサテライト細胞は、限定されないが、サテライト細胞ニッチを再配置する能力、筋肉再生を促す能力、遺伝子マーカーの適切な発現を示す能力を含む機能的サテライト細胞のいくつかの特徴を示し、培養において拡大増殖可能である。
【0071】
サテライト細胞は、筋芽細胞を所望の脱分化段階に脱分化させるための任意の適切な培養プロトコールまたは一連の培養プロトコールにしたがって生産され得る。いくつかの実施形態では、サテライト細胞は、少なくとも1つの筋芽細胞がサテライト細胞に脱分化するために適切な条件下で、少なくとも1つの筋芽細胞を一定期間培養することにより生産される。いくつかの実施形態では、サテライト細胞は、サテライト細胞の実質的に純粋な集団である。
【0072】
特定の実施形態では、筋芽細胞は、筋芽細胞培地で培養される。筋芽細胞は、培地中のマイクロプレート(例えば、コラーゲンコーティングディッシュ)上で培養され得る。いくつかの実施形態では、筋芽細胞培地は、栄養培地(例えば、ハムF10)、ウシ胎仔血清(例えば、20%熱不活性化ウシ胎仔血清)、線維芽細胞成長因子塩基性、非必須アミノ酸およびglutamaxを含む。筋芽細胞は、マイクロプレートで1~30日間、1~15日間、1~10日間、1~5日間または約4日間培養され得る。いくつかの態様では、筋芽細胞は、50~100コンフルエンス、75~90コンフルエンスまたは約80コンフルエンスに達するまで、マイクロプレート上で培養される。
【0073】
いくつかの実施形態では、筋芽細胞は、被験体の骨格筋から単離される。例えば、筋芽細胞は、ヒトまたは非ヒト動物、例えばラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタおよび非ヒト霊長類の骨格筋から単離され得る。あるいは、筋芽細胞は、胚由来筋肉細胞であり得る。
【0074】
特定の実施形態では、筋芽細胞は、約80コンフルエンスに達するまで筋芽細胞培地で培養され、次いで、スピナーフラスコ、スフェロイドプレートなどに播種される。いくつかの態様では、スピナーフラスコは、細胞約500,000個/ml~細胞約150万個/ml、または細胞約750,000個/ml~細胞約125万個/ml、または細胞約100万個/mlの密度で播種される。筋芽細胞は、スピン培地中のスピナーフラスコで培養される。いくつかの実施形態では、スピン培地は、基礎培地(例えば、DMEM:F12)、ウシ胎仔血清(例えば、20%熱不活性化ウシ胎仔血清)、線維芽細胞成長因子塩基性、非必須アミノ酸およびglutamaxを含む。筋芽細胞は、スピナーフラスコで少なくとも10日間、少なくとも20日間、少なくとも30日間、10~30日間、10~20日間またはいくつかの態様では20日間培養され得る。得られる骨格筋オルガノイドまたはミオスフェアは、Pax7+およびMyHC+細胞の組み合わせから構成される。
【0075】
スピン培地中のスピナーフラスコで培養された筋芽細胞は、三次元スフェア(例えば、ミオスフェアまたは骨格筋オルガノイド)を形成する。いくつかの態様では、骨格筋オルガノイドは、分化した骨格筋細胞および増殖性筋原細胞を含む。骨格筋オルガノイドが形成されたら、培地を分化培地に変更し得る。いくつかの態様では、分化培地は無血清培地である。分化培地は、栄養培地(例えば、DMEM)、非必須アミノ酸およびglutamaxを含み得る。いくつかの態様では、骨格筋オルガノイドは、分化培地で少なくとも1日間、少なくとも5日間、少なくとも10日間、1~10日間、1~30日間、10~30日間、10~20日間またはいくつかの実施形態では10日間培養される。分化培地による培養中、骨格筋オルガノイドに存在する増殖性筋原細胞は静止し、サテライト細胞状態に戻る。次いで、サテライト細胞を培地から単離し得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、サテライト細胞は、培養において拡大増殖可能である。いくつかの実施形態では、生成されたサテライト細胞を化合物と接触させて、サテライト細胞増殖を増加させる。サテライト細胞増殖を誘導し、増強しまたは増加させる方法は、サテライト細胞を、キナーゼ阻害剤、Gタンパク質共役受容体(GPCR)モジュレーター、エピジェネティック改変因子、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)モジュレーター、ヘッジホッグシグナル伝達経路モジュレーター、神経ペプチド、ドーパミン受容体モジュレーター、セロトニン受容体モジュレーター、ヒスタミン受容体モジュレーター、アデノシン受容体アゴニスト、イオノフォア、イオンチャネルモジュレーター、ガンマセクレターゼモジュレーター、コルチコステロイドおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される化合物と接触させることを含む。増殖増強剤の例としては、限定されないが、国際特許出願第PCT/US2017/016099号(これは、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものが挙げられる。
【0077】
サテライト細胞
いくつかの実施形態では、本開示は、機能的サテライト細胞を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、限定されないが、サテライト細胞ニッチを再配置する能力、筋肉再生を促す能力を含む1つまたはそれを超える特徴を示し、遺伝子マーカーの適切な発現、糖タンパク質の適切な発現を示し、培養において拡大増殖可能であるサテライト細胞の生成を可能にする。
【0078】
いくつかの実施形態では、当業者に一般的な任意の手段を使用して、少なくとも1つの分化培地への曝露による筋芽細胞の脱分化により生産されたサテライト細胞の存在を確認し得る。いくつかの実施形態では、このようなサテライト細胞は、選択的遺伝子発現マーカーにより同定され得る。いくつかの実施形態では、前記方法は、サテライト細胞のマーカーの陽性発現(例えば、存在)を検出することを含み得る。いくつかの実施形態では、マーカーは、試薬を使用して検出され得る。マーカーのための試薬は、例えば、マーカーに対する抗体であり得るか、またはRT-PCRもしくはPCR反応、例えば半定量的もしくは定量的RT-PCRもしくはPCR反応のためのプライマーであり得る。このようなマーカーは、サテライト細胞が生産されたか否かを評価するために使用され得る。抗体または他の検出試薬は、検出において使用するための標識、例えば放射性標識、蛍光(例えば、GFP)標識または比色標識に連結され得る。検出試薬がプライマーである場合、それは、乾燥調製物、例えば凍結乾燥調製物または溶液で供給され得る。
【0079】
サテライト細胞への少なくとも1つの筋芽細胞またはその前駆体の進行は、サテライト細胞に特徴的なマーカーの発現を決定することによりモニタリングされ得る。いくつかのプロセスでは、特定のマーカーの発現は、マーカーの存在または非存在を検出することにより決定される。あるいは、特定のマーカーの発現は、マーカーが細胞培養物または細胞集団中の細胞に存在するレベルを測定することにより決定され得る。特定のプロセスでは、サテライト細胞に特徴的なマーカーの発現、ならびに筋芽細胞またはその前駆体に特徴的なマーカーの有意な発現の欠如が決定される。
【0080】
筋芽細胞からのサテライト細胞の生産のモニタリングに関して記載されるように、定性的または半定量的技術、例えばブロット転写法および免疫細胞化学は、当業者に一般的に公知の方法を使用してマーカー発現を測定するために使用され得る。あるいは、マーカー発現は、当技術分野で通常公知の方法による定量的PCRなどの技術の使用により正確に定量され得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、生成されたサテライト細胞は、コア筋原性遺伝子Pax7およびMyf5から選択される1つまたはそれを超える遺伝子発現マーカーを発現する。あるいはまたは加えて、生成されたサテライト細胞は、骨格筋MyoDのマスター転写因子を発現しない。
【0082】
いくつかの実施形態では、あるいはまたは加えて、サテライト細胞は、静止関連遺伝子Spry1、Nm1、Nfia、Fos、Dusp1またはそれらの任意の組み合わせから選択される1つまたはそれを超えるマーカーを発現することを特徴とし得る。いくつかの実施形態では、骨格筋オルガノイド培養物のサテライト細胞は、Notchシグナル伝達経路Notch1、Notch2、Notch3、HeyL、Hey2、Hesまたはそれらの任意の組み合わせから選択される1つまたはそれを超えるマーカーを発現することを特徴とし得る。サテライト細胞は、Pax7、Myf5、少なくとも1つの静止関連遺伝子および少なくとも1つのNotchシグナル伝達経路遺伝子を発現し得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、サテライト細胞は、糖タンパク質を発現する(例えば、糖タンパク質は、典型的には、サテライト細胞ニッチにのみ存在する)。サテライト細胞により発現される糖タンパク質マーカーとしては、Bgn、TgfbrIII、Dag1、DcnおよびGpc3が挙げられ得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、サテライト細胞は、以下の遺伝子の少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個または少なくとも30個を発現する:Dcn、Dpt、Heyl、Nr4a1、Col4a1、Pax7、Tgfbr3、Fos、Egr1、Dag1、Apoe、Spry1、Kat2b、Cav1、Cd82、Igfbp4、Thbs2、Igfbp7、Serping1、Fosb、Zfp36、Nrep、Sepp1、Junb、Ier2、Col15a1、Adh1、Cp、Ramp2、Sparcl1、P2ry14、Pmp22、Igf1、S1pr3、Klf9、Col6a1、Txnip、Glul、Col6a2、Ncald、Cc2d2a、Gpm6b、Timp3、Prkcdbp、Nfia、Gpr124、Psmb11、Ccdc80、Malat1、Zfp36l1、Gsn、Sdpr、Slc16a2、Olfml3、1810026B05Rik、Adamts1、Olfml2b、Gng11、Cd200、Fcgrt、Nav1、Lamc1、Atp2b4、Tagln、Mkl2、Col4a2、Htra3、Fxyd1、Ogn、Tgfb3、Tcp11l2、Spats2l、Capn6、Fgfr1、Mt2、Cdkn2c、Tln2、Ndrg2、Bhlhe40、Fstl1、Tcf4、Igsf3、Tmem123、Col3a1、Emp2、Itm2a、Xbp1、Crip1、Sparc、Cd9、Itgb5、Sdc1、Vcan、Bgn、Igfbp5、Col5a1、Zcchc24、Lum、Postn、Sfrp4、Spon2、Col8a1、Wisp2、Adamts2、Colec12、Dnm3os、Plat、2310010J17Rik、Ctsa、Ank、Dkk2、Fap、Mmp3、Dmp1、Col6a3、Pdgfrb、Col1a1、Mgp、Tmem100、Ctsc、Nr2f1、Cfh、Pdgfra、Dio2、Htra1、Dkk3、Islr、Foxs1、Tgfb2、Tgm2、Thbd、Uba7、Agtr2、Cyp1b1、Tspan15、Osr2、Fam129a、Plekha6、Mmp2、Arrdc3、Matn2、Mab21l1、Pvrl2、Adamtsl4、Cd248、Gulp1、Mfap2、Idua、Cspg4、Spock1、Mfap4、Hexb、Cilp、Pold4、Crebrf、Col14a1、Tmem42、Nedd9、Rcn3、Sept8、Pcolce、Edil3、Nupr1、Phf17、Plin3、Aebp1、Hmgcs1、P4ha1、Lama2、Csrp2、Rnf167、H1f0、Fn1、Mmp14、Cpq、Mrc2、Ifngr1、St3gal5、Fbn1、Sdc2、Adcy7、Ckm、Hexa、Capg、Klhl13、Loxl1、Fdft1、Ifi27l1、Rbp1、Nr2f2、Cst3、Pxdn、Ecm1、Mybpc1、Igf2r、Serpinh1、Mt1、Lpar1、Atraid、Scd2、Dap、Ppic、App、Lamp2、Col5a2、Gpc1、Hspa5、Pmepa1、Laptm4aおよびLrp1。いくつかの態様では、発現された遺伝子は、筋芽細胞と比較して少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍または少なくとも3倍アップレギュレートされている。
【0085】
いくつかの実施形態では、サテライト細胞は、以下の遺伝子の少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個または少なくとも30個を発現する:Dcn、Dpt、Heyl、Nr4a1、Col4a1、Pax7、Tgfbr3、Fos、Egr1、Dag1、Apoe、Spry1、Kat2b、Cav1、Cd82、Igfbp4、Thbs2、Igfbp7、Serping1、Fosb、Zfp36、Nrep、Sepp1、Junb、Ier2、Col15a1、Adh1、Cp、Ramp2、Sparcl1、P2ry14、Pmp22、Igf1、S1pr3、Klf9、Col6a1、Txnip、Glul、Col6a2、Ncald、Cc2d2a、Gpm6b、Timp3、Prkcdbp、Nfia、Gpr124、Psmb11、Ccdc80、Malat1、Zfp36l1、Gsn、Sdpr、Slc16a2、Olfml3、1810026B05Rik、Adamts1、Olfml2b、Gng11、Cd200、Fcgrt、Nav1、Lamc1、Atp2b4、Tagln、Mkl2、Col4a2、Htra3、Fxyd1、Ogn、Tgfb3、Tcp11l2、Spats2l、Capn6、Fgfr1、Mt2、Cdkn2c、Tln2、Ndrg2、Bhlhe40、Fstl1、Tcf4、Igsf3、Tmem123、Col3a1、Emp2、Itm2a、Xbp1、Crip1、SparcおよびCd9。いくつかの態様では、発現された遺伝子は、筋芽細胞と比較して少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍または少なくとも3倍アップレギュレートされている。
【0086】
いくつかの実施形態では、サテライト細胞は、以下の遺伝子の少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個または少なくとも30個を発現する:Itgb5、Sdc1、Vcan、Bgn、Igfbp5、Col5a1、Zcchc24、Lum、Postn、Sfrp4、Spon2、Col8a1、Wisp2、Adamts2、Colec12、Dnm3os、Plat、2310010J17Rik、Ctsa、Ank、Dkk2、Fap、Mmp3、Dmp1、Col6a3、Pdgfrb、Col1a1、Mgp、Tmem100、Ctsc、Nr2f1、Cfh、Pdgfra、Dio2、Htra1、Dkk3、Islr、Foxs1、Tgfb2、Tgm2、Thbd、Uba7、Agtr2、Cyp1b1、Tspan15、Osr2、Fam129a、Plekha6、Mmp2、Arrdc3、Matn2、Mab21l1、Pvrl2、Adamtsl4、Cd248、Gulp1、Mfap2、Idua、Cspg4、Spock1、Mfap4、Hexb、Cilp、Pold4、Crebrf、Col14a1、Tmem42、Nedd9、Rcn3、Sept8、Pcolce、Edil3、Nupr1、Phf17、Plin3、Aebp1、Hmgcs1、P4ha1、Lama2、Csrp2、Rnf167、H1f0、Fn1、Mmp14、Cpq、Mrc2、Ifngr1、St3gal5、Fbn1、Sdc2、Adcy7、Ckm、Hexa、Capg、Klhl13、Loxl1、Fdft1、Ifi27l1、Rbp1、Nr2f2、Cst3、Pxdn、Ecm1、Mybpc1、Igf2r、Serpinh1、Mt1、Lpar1、Atraid、Scd2、Dap、Ppic、App、Lamp2、Col5a2、Gpc1、Hspa5、Pmepa1、Laptm4aおよびLrp1。いくつかの態様では、発現された遺伝子は、筋芽細胞と比較して少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍または少なくとも3倍アップレギュレートされている。
【0087】
いくつかの実施形態では、サテライト細胞は、Pax7、Tgfbr3、Fos、Spry1、Cav1およびCd82の少なくとも1つを発現する。発現された遺伝子は、筋芽細胞と比較して少なくとも2倍アップレギュレートされている。
【0088】
いくつかの実施形態では、サテライト細胞は、Wnt経路阻害に関与する1つまたはそれを超える遺伝子を発現する。いくつかの態様では、Wnt経路阻害に関与する遺伝子は、Sfrp4、Wisp2、Dkk2およびDkk3からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、サテライト細胞は、プロテアソーム活性化に関与する1つまたはそれを超える遺伝子を発現する。いくつかの態様では、プロテアソーム活性化に関与する遺伝子は、Ctsa、Ctsc、Idua、Hexb、Hexa、Igf2r、Lamp2およびLaptm4aからなる群より選択される。
【0089】
いくつかの実施形態では、サテライト細胞は、以下の遺伝子の少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個または少なくとも30個の発現をダウンレギュレートする:Tspan9、Sema3e、Hspd1、Tipin、Rasa1、Sct、Mdm2、Csf1、Mstn、Alox5、Ckap2、Camk1g、Mcpt8、Ccng1、Tuba1c、Rps27l、Hmga2、Ccnb1、Itga6、Nasp、Dynap、Myof、Epha2、Gtse1、Lce1g、Cd24a、Lgals3、Steap1、Ankrd1、Hes6、Cox6b2、Gm15772、S100a6、Col18a1、Steap2、Smyd4、Tmem171、Cttn、Car3、Rrm2、Asns、Chrna1、Ugcg、Cdh2、Myod1、Tpm1、Pa2g4、Fabp5、Mcm4、Rrm1、Ftl1、Aaas、Tmsb10、Lrrn1、Ddx21、Odc1、Tmem55a、Prdx6、Sox11、Cited2、Ddx39、Slc44a2、Bax、Gal、Rbmxl1、Mak16、Nap1l1、Dctpp1、Nme1、Ccnd1、Cks1b、Myl9、Prrc2c、Set、Hnrnpf、Ppp1r14b、Ran、Tuba1b、Rbm3、Hsp90aa1、Nme2、Hspe1、Snrpg、Npm1、Reln、Msln、Sema6d、Itgb4、Ldhb、Nop58、Dkc1、Rpl12、Gchfr、Mgmt、Milr1、Fnbp1l、Anxa3、Tek、2010204K13Rik、Selp、Efnb2、Cirh1a、Fgf21、Stmn2、Gpatch4、Peg3、Snhg8、Fbl、Ahcy、Ebna1bp2、Nop56およびPcna。いくつかの態様では、発現は、筋芽細胞と比較して多くとも1/1.5、多くとも1/2、多くとも1/2.5または多くとも1/3にダウンレギュレートされている。
【0090】
いくつかの実施形態では、サテライト細胞は、以下の遺伝子の少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個または少なくとも30個の発現をダウンレギュレートする:Tspan9、Sema3e、Hspd1、Tipin、Rasa1、Sct、Mdm2、Csf1、Mstn、Alox5、Ckap2、Camk1g、Mcpt8、Ccng1、Tuba1c、Rps27l、Hmga2、Ccnb1、Itga6、Nasp、Dynap、Myof、Epha2、Gtse1、Lce1g、Cd24a、Lgals3、Steap1、Ankrd1、Hes6、Cox6b2、Gm15772、S100a6、Col18a1、Steap2、Smyd4、Tmem171、Cttn、Car3、Rrm2、Asns、Chrna1、Ugcg、Cdh2、Myod1、Tpm1、Pa2g4、Fabp5、Mcm4、Rrm1、Ftl1、Aaas、Tmsb10、Lrrn1、Ddx21、Odc1、Tmem55a、Prdx6、Sox11、Cited2、Ddx39、Slc44a2、Bax、Gal、Rbmxl1、Mak16、Nap1l1、Dctpp1、Nme1、Ccnd1、Cks1b、Myl9、Prrc2c、Set、Hnrnpf、Ppp1r14b、Ran、Tuba1b、Rbm3、Hsp90aa1、Nme2、Hspe1、SnrpgおよびNpm1。いくつかの態様では、発現は、筋芽細胞と比較して多くとも1/1.5、多くとも1/2、多くとも1/2.5または多くとも1/3にダウンレギュレートされている。
【0091】
いくつかの実施形態では、サテライト細胞は、以下の遺伝子の少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個または少なくとも25個の発現をダウンレギュレートする:Reln、Msln、Sema6d、Itgb4、Ldhb、Nop58、Dkc1、Rpl12、Gchfr、Mgmt、Milr1、Fnbp1l、Anxa3、Tek、2010204K13Rik、Selp、Efnb2、Cirh1a、Fgf21、Stmn2、Gpatch4、Peg3、Snhg8、Fbl、Ahcy、Ebna1bp2、Nop56およびPcna。いくつかの態様では、発現は、筋芽細胞と比較して多くとも1/1.5、多くとも1/2、多くとも1/2.5または多くとも1/3にダウンレギュレートされている。
【0092】
本発明は、サテライト細胞マーカーとして本明細書に列挙されるマーカーに限定されず、本発明はまた、マーカー、例えば細胞表面マーカー、抗原、ならびにEST、RNA(マイクロRNAおよびアンチセンスRNAを含む)、DNA(遺伝子およびcDNAを含む)およびそれらの一部を含む他の遺伝子産物を包含すると理解される。
【0093】
サテライト細胞に特徴的なマーカーとしては、細胞表面タンパク質またはコード遺伝子の発現、細胞内タンパク質またはコード遺伝子の発現、細胞形態学的特徴などが挙げられる。当業者は、公知の免疫蛍光、免疫化学、ポリメラーゼ連鎖反応、インサイチューハイブリダイゼーション、ノーザンブロット分析、化学的または放射化学的または生物学的方法がサテライト細胞特異的特徴の存在または非存在を容易に確認し得ることを認識するであろう。
【0094】
本開示の態様は、本明細書に記載される方法にしたがって生産されたサテライト細胞の単離された集団に関する。サテライト細胞の単離された集団は、集団中の少なくともいくつかの筋芽細胞をサテライト細胞に脱分化させることにより得られ得る。
【0095】
本開示の態様は、本明細書に記載される細胞(例えば、サテライト細胞)の単離された集団を含むマイクロカプセルを含む。マイクロカプセルは、当技術分野で周知である。マイクロカプセルの適切な例は、文献に記載されている(例えば、Oriveら、“Application of cell encapsulation for controlled delivery of biological therapeutics”,Advanced Drug Delivery Reviews(2013),dx.doi.org/10.1016/j.addr.2013.07.009;Hernandezら、“Microcapsules and microcarriers for in situ cell delivery”,Advanced Drug Delivery Reviews 2010;62:711-730;Muruaら、“Cell microencapsulation technology:Towards clinical application”,Journal of Controlled Release 2008;132:76-83;およびZaninら、“The development of encapsulated cell technologies as therapies for neurological and sensory diseases”,Journal of Controlled Release 2012;160:3-13)。マイクロカプセルは、様々な方法で製剤化され得る。例示的なマイクロカプセルは、アルギネート外膜により覆われたポリカチオン層により取り囲まれたアルギネートコアを含む。ポリカチオン膜は、安定性および生体適合性を与える半透膜を形成する。ポリカチオンの例としては、限定されないが、ポリ-L-リジン、ポリ-L-オルニチン、キトサン、ラクトース改変キトサンおよび光重合生体材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、アルギネートコアは、例えば、RGD配列(アルギニン、グリシン、アスパラギン酸)を有する共有結合的にコンジュゲートされたオリゴペプチドを有するアルギネートコアを含む足場を生産するように改変される。いくつかの実施形態では、アルギネートコアは、例えば、増強した安定性の化学酵素的に操作されたアルギネートを有する共有結合的に強化されたマイクロカプセルを生産するように改変される。いくつかの実施形態では、アルギネートコアは、例えば、アクリレート官能化リン脂質のインサイチュー重合により集合した膜模倣フィルムを生産するように改変される。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルは、エピメラーゼを使用して酵素的に改変されたアルギネートから構成される。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルは、マイクロカプセル膜の隣接層間に共有結合的連結を含む。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルは、フェノール部分とカップリングされたアルギネートを含むサブシーブサイズカプセルを含む。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルは、アルギネート-アガロースを含む足場を含む。いくつかの実施形態では、サテライト細胞は、アルギネート内に被包される前にPEGで改変される。いくつかの実施形態では、細胞、例えばサテライト細胞の単離された集団は、光反応性リポソームおよびアルギネート中に被包される。マイクロカプセルにおいて用いられるアルギネートは、限定されないが、PEG、キトサン、PES中空線維、コラーゲン、ヒアルロン酸、RGDを有するデキストラン、EHDおよびPEGDA、PMBVおよびPVA、PGSAS、アガロース、ゼラチンを有するアガロース、PLGA、ならびにこれらの多層実施形態を含む他の適切な生体材料で置き換えられ得ることを認識すべきである。
【0096】
サテライト細胞の存在および同定の確認
当業者に一般的な任意の手段を使用して、サテライト細胞、例えば本明細書に記載される筋芽細胞の脱分化により生産された天然に存在しないサテライト細胞の存在を確認し得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、サテライト細胞マーカー、例えば化学的に誘導されたサテライト細胞の存在は、内因性サテライト細胞を示す1つまたはそれを超えるマーカーの存在または非存在を検出することにより行われ得る。いくつかの実施形態では、前記方法は、サテライト細胞のマーカーの陽性発現(例えば、存在)を検出することを含み得る。いくつかの実施形態では、マーカーは、例えば、Pax7およびMyf5の検出のための試薬を使用して検出され得る。検出すべきさらなるマーカーとしては、Notchシグナル伝達経路マーカーNotch1、Notch2、Notch3、HeyL、Hey2およびHes1、ならびに静止関連遺伝子またはマーカーNm1、Nfia、Fos、Spry1およびDusp1が挙げられる。検出すべきさらに他のマーカーは、Dcn、Dpt、Heyl、Nr4a1、Col4a1、Pax7、Tgfbr3、Fos、Egr1、Dag1、Apoe、Spry1、Kat2b、Cav1、Cd82、Igfbp4、Thbs2、Igfbp7、Serping1、Fosb、Zfp36、Nrep、Sepp1、Junb、Ier2、Col15a1、Adh1、Cp、Ramp2、Sparcl1、P2ry14、Pmp22、Igf1、S1pr3、Klf9、Col6a1、Txnip、Glul、Col6a2、Ncald、Cc2d2a、Gpm6b、Timp3、Prkcdbp、Nfia、Gpr124、Psmb11、Ccdc80、Malat1、Zfp36l1、Gsn、Sdpr、Slc16a2、Olfml3、1810026B05Rik、Adamts1、Olfml2b、Gng11、Cd200、Fcgrt、Nav1、Lamc1、Atp2b4、Tagln、Mkl2、Col4a2、Htra3、Fxyd1、Ogn、Tgfb3、Tcp11l2、Spats2l、Capn6、Fgfr1、Mt2、Cdkn2c、Tln2、Ndrg2、Bhlhe40、Fstl1、Tcf4、Igsf3、Tmem123、Col3a1、Emp2、Itm2a、Xbp1、Crip1、Sparc、Cd9、Itgb5、Sdc1、Vcan、Bgn、Igfbp5、Col5a1、Zcchc24、Lum、Postn、Sfrp4、Spon2、Col8a1、Wisp2、Adamts2、Colec12、Dnm3os、Plat、2310010J17Rik、Ctsa、Ank、Dkk2、Fap、Mmp3、Dmp1、Col6a3、Pdgfrb、Col1a1、Mgp、Tmem100、Ctsc、Nr2f1、Cfh、Pdgfra、Dio2、Htra1、Dkk3、Islr、Foxs1、Tgfb2、Tgm2、Thbd、Uba7、Agtr2、Cyp1b1、Tspan15、Osr2、Fam129a、Plekha6、Mmp2、Arrdc3、Matn2、Mab21l1、Pvrl2、Adamtsl4、Cd248、Gulp1、Mfap2、Idua、Cspg4、Spock1、Mfap4、Hexb、Cilp、Pold4、Crebrf、Col14a1、Tmem42、Nedd9、Rcn3、Sept8、Pcolce、Edil3、Nupr1、Phf17、Plin3、Aebp1、Hmgcs1、P4ha1、Lama2、Csrp2、Rnf167、H1f0、Fn1、Mmp14、Cpq、Mrc2、Ifngr1、St3gal5、Fbn1、Sdc2、Adcy7、Ckm、Hexa、Capg、Klhl13、Loxl1、Fdft1、Ifi27l1、Rbp1、Nr2f2、Cst3、Pxdn、Ecm1、Mybpc1、Igf2r、Serpinh1、Mt1、Lpar1、Atraid、Scd2、Dap、Ppic、App、Lamp2、Col5a2、Gpc1、Hspa5、Pmepa1、Laptm4aおよびLrp1からなる群より選択され得る。
【0098】
マーカーのための試薬は、例えば、マーカーに対する抗体であり得るか、またはRT-PCRもしくはPCR反応、例えば半定量的もしくは定量的RT-PCRもしくはPCR反応のためのプライマーであり得る。このようなマーカーは、サテライト細胞が生産されたか否かを評価するために使用され得る。抗体または他の検出試薬は、検出において使用するための標識、例えば放射性標識、蛍光(例えば、GFP)標識または比色標識に連結され得る。検出試薬がプライマーである場合、それは、乾燥調製物、例えば凍結乾燥調製物または溶液で供給され得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、サテライト細胞マーカーの存在は、サテライト細胞を示す1つまたはそれを超えるマーカーの存在または非存在を検出することにより行われ得る。例えば、サテライト細胞は、内因性サテライト細胞から同定され得る。いくつかの実施形態では、前記方法は、サテライト細胞のマーカーの陽性発現(例えば、存在)を検出することを含み得る。マーカーは、Itgb5、Sdc1、Vcan、Bgn、Igfbp5、Col5a1、Zcchc24、Lum、Postn、Sfrp4、Spon2、Col8a1、Wisp2、Adamts2、Colec12、Dnm3os、Plat、2310010J17Rik、Ctsa、Ank、Dkk2、Fap、Mmp3、Dmp1、Col6a3、Pdgfrb、Col1a1、Mgp、Tmem100、Ctsc、Nr2f1、Cfh、Pdgfra、Dio2、Htra1、Dkk3、Islr、Foxs1、Tgfb2、Tgm2、Thbd、Uba7、Agtr2、Cyp1b1、Tspan15、Osr2、Fam129a、Plekha6、Mmp2、Arrdc3、Matn2、Mab21l1、Pvrl2、Adamtsl4、Cd248、Gulp1、Mfap2、Idua、Cspg4、Spock1、Mfap4、Hexb、Cilp、Pold4、Crebrf、Col14a1、Tmem42、Nedd9、Rcn3、Sept8、Pcolce、Edil3、Nupr1、Phf17、Plin3、Aebp1、Hmgcs1、P4ha1、Lama2、Csrp2、Rnf167、H1f0、Fn1、Mmp14、Cpq、Mrc2、Ifngr1、St3gal5、Fbn1、Sdc2、Adcy7、Ckm、Hexa、Capg、Klhl13、Loxl1、Fdft1、Ifi27l1、Rbp1、Nr2f2、Cst3、Pxdn、Ecm1、Mybpc1、Igf2r、Serpinh1、Mt1、Lpar1、Atraid、Scd2、Dap、Ppic、App、Lamp2、Col5a2、Gpc1、Hspa5、Pmepa1、Laptm4aおよびLrp1からなる群より選択され得る。
【0100】
サテライト細胞への少なくとも1つの筋芽細胞またはその前駆体の進行は、サテライト細胞に特徴的なマーカーの発現を決定することによりモニタリングされ得る。いくつかのプロセスでは、特定のマーカーの発現は、マーカーの存在または非存在を検出することにより決定される。あるいは、特定のマーカーの発現は、マーカーが細胞培養物または細胞集団の細胞に存在するレベルを測定することにより決定され得る。特定のプロセスでは、サテライト細胞に特徴的なマーカーの発現、および、それが由来する筋芽細胞またはその前駆体に特徴的なマーカーの有意な発現の欠如が決定される。
【0101】
筋芽細胞からのサテライト細胞の生産をモニタリングすることに関して記載されたように、定量または半定量技術、例えば、ブロット転写法および免疫細胞化学法は、当業者に一般に公知の方法を使用して、マーカー発現を測定するために使用され得る。あるいは、マーカー発現は、当技術分野で通常公知の方法による定量PCRなどの技術の使用により、正確に定量され得る。このようなものとして、細胞外マーカー含量を測定するための技術、例えば、ELISAが使用され得る。
【0102】
本発明は、本明細書でサテライト細胞マーカーとして列記されたそれらのマーカーに限定されず、本発明はまた、細胞表面マーカー(例えば、CD56、EGFR、およびβ1-インテグリン)、抗原および他の遺伝子産物、例えば、EST、RNA(例えば、マイクロRNAおよびアンチセンスRNA)、DNA(例えば、遺伝子およびcDNA)ならびにそれらの一部などのマーカーを包含することを理解すべきである。
【0103】
サテライト細胞の濃縮、単離および精製
本発明の別の態様は、細胞の不均質集団、例えばサテライト細胞、筋芽細胞、分化した骨格筋細胞および増殖性筋原細胞を含む細胞の混合集団からのサテライト細胞の集団の単離に関する。上記プロセスのいずれかにより生産されたサテライト細胞の集団は、サテライト細胞が得られる筋芽細胞またはその前駆体に存在せず、サテライト細胞に存在する任意の細胞表面マーカーを使用することにより、濃縮、単離および/または精製され得る。このような細胞表面マーカーは、サテライト細胞に特異的なアフィニティタグとも称される。サテライト細胞に特異的なアフィニティタグの例は、サテライト細胞の細胞表面に存在するが、他の細胞型(例えば、筋芽細胞)に実質的に存在しないマーカー分子、例えば、ポリペプチドに特異的な、抗体、リガンドまたは他の結合剤である。いくつかのプロセスでは、サテライト細胞上の細胞表面抗原に結合する抗体が、本明細書に記載される方法により生産された、(例えば、本明細書に記載される少なくとも1つの分化培地と接触させることにより)化学的に誘導されたサテライト細胞の濃縮、単離または精製のためのアフィニティタグとして使用される。このような抗体は公知であり、市販されている。
【0104】
当業者は、サテライト細胞の濃縮、単離および/または精製のための抗体を使用するためのプロセスを容易に理解するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、抗体などの試薬を、サテライト細胞を含む細胞集団であって、細胞間および基材接着を減少させるように処理されている細胞集団と共にインキュベートする。次いで、細胞集団を洗浄し、遠心分離し、再懸濁する。いくつかの実施形態では、抗体が標識で既に標識されていない場合、細胞懸濁物を、一次抗体に結合することができる二次抗体、例えばFITCコンジュゲート抗体と共にインキュベートする。次いで、サテライト細胞を洗浄し、遠心分離し、緩衝液に再懸濁する。次いで、蛍光活性化細胞選別器(FACS)を使用して、サテライト細胞の懸濁物を分析および選別する。抗体結合蛍光再プログラム化細胞を未結合非蛍光細胞とは別個に収集し、それにより、細胞懸濁物中に存在する他の細胞、例えば筋芽細胞、分化した骨格筋細胞または増殖性筋原細胞からサテライト細胞が単離される。
【0105】
本明細書に記載されるプロセスの別の実施形態では、サテライト細胞を含む単離された細胞組成物は、別の親和性ベースの方法を使用することにより、またはサテライト細胞に特異的な同じもしくは異なるマーカーを使用したさらなる選別ラウンドによりさらに精製され得る。例えば、いくつかの実施形態では、FACS選別を使用して、単独で、またはPax7発現と共に、あるいは本明細書に開示されるサテライト細胞マーカーと共にMyf5を発現するサテライト細胞を、細胞集団中のマーカーの1つを発現しない細胞(例えば、陰性細胞)から最初に単離する。第2のFAC選別、例えば、第1の選別とは異なるマーカーについて陽性の細胞を単離するためのFACSを再び使用した陽性細胞の選別は、再プログラム化細胞について細胞集団を濃縮する。
【0106】
代替的な実施形態では、FACS選別は、ほとんどの筋芽細胞に存在するがサテライト細胞に存在しないマーカーの陰性選別により、細胞を分離するために使用される。
【0107】
本明細書に記載されるプロセスのいくつかの実施形態では、抗体を使用せずにサテライト細胞を蛍光標識し、次いで、蛍光活性化細胞選別器(FACS)を使用することにより、非標識細胞から単離する。このような実施形態では、GFP、YFPをコードする核酸、または発現可能な蛍光マーカー遺伝子、例えばルシフェラーゼをコードする遺伝子をコードする別の核酸は、上記方法を使用して再プログラム化細胞を標識するために使用される。
【0108】
前述のアプローチに加えて、化学的に誘導されたサテライト細胞はまた、細胞単離のための他の技術により単離され得る。加えて、サテライト細胞はまた、サテライト細胞の選択的生存または選択的拡大増殖を促進する成長条件で連続継代培養方法により濃縮または単離され得る。このような方法は当業者に公知である。
【0109】
いくつかの実施形態では、単離されたサテライト細胞は、培養において拡大増殖可能である。いくつかの実施形態では、単離されたサテライト細胞を化合物と接触させて、サテライト細胞増殖を増加させる。サテライト細胞増殖を誘導し、増強しまたは増加させる方法は、サテライト細胞を、キナーゼ阻害剤、Gタンパク質共役受容体(GPCR)モジュレーター、エピジェニック改変因子、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)モジュレーター、ヘッジホッグシグナル伝達経路モジュレーター、神経ペプチド、ドーパミン受容体モジュレーター、セロトニン受容体モジュレーター、ヒスタミン受容体モジュレーター、アデノシン受容体アゴニスト、イオノフォア、イオンチャネルモジュレーター、ガンマセクレターゼモジュレーター、コルチコステロイドおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される化合物と接触させることを含む。増殖増強剤の例としては、限定されないが、国際特許出願第PCT/US2017/016099号(これは、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものが挙げられる。化合物は、サテライト細胞増殖を、未処理サテライト細胞と比べて少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、50%、70%、80%、90%、1倍、1.1倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、50倍、100倍またはそれを超えて誘導し、増強しまたは増加させ得る。
【0110】
サテライト細胞を含む組成物
本発明のいくつかの実施形態は、サテライト細胞を含む細胞組成物(例えば、細胞培養物または細胞集団)であって、前記サテライト細胞が少なくとも1つの筋芽細胞に由来する細胞組成物に関する。いくつかの実施形態では、細胞組成物は、筋芽細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞組成物は、分化した骨格筋細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞組成物は、増殖性筋原細胞を含む。
【0111】
特定の実施形態によれば、化学的に誘導されたサテライト細胞は哺乳動物細胞であり、好ましい実施形態では、このようなサテライト細胞はヒトサテライト細胞である。いくつかの実施形態では、筋芽細胞は、胚筋細胞に由来する。他の実施形態では、筋芽細胞は、被験体の骨格筋から単離されている。
【0112】
本発明の他の実施形態は、本明細書に開示される方法により生産されたサテライト細胞を含む組成物(例えば、単離された細胞集団または細胞培養物)に関する。このような実施形態では、サテライト細胞は、サテライト細胞集団中の総細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満または約1%未満を構成する。いくつかの実施形態では、組成物は、細胞集団中の総細胞の約90%超を構成するサテライト細胞の集団を含み、例えば、細胞集団中の総細胞の約少なくとも95%または少なくとも96%または少なくとも97%または少なくとも98%または少なくとも約99%または約少なくとも100%はサテライト細胞である。
【0113】
組成物およびキット
本明細書に開示される方法を実施するための、および本明細書に開示されるサテライト細胞を作製するためのキットが本明細書に記載される。筋肉傷害を処置するためのキットも本明細書に記載される。一態様では、キットは、本明細書に記載される少なくとも1つの筋芽細胞および少なくとも1種の培地を含み、必要に応じて、キットは、本明細書に記載される方法を使用して少なくとも1つの筋芽細胞をサテライト細胞の集団に変換するための指示をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも2つの培地を含む。いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも3つの培地を含む。いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも1つの補助剤(supplemental agent)を含む。いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも2つの補助剤を含む。いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも3つの補助剤を含む。いくつかの実施形態では、キットは、筋芽細胞をサテライト細胞に脱分化させるための培地および/または補助剤を含む。いくつかの実施形態では、キットは、例えば、筋芽細胞をサテライト細胞に脱分化させるための培地および/または補助剤の任意の組み合わせを含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも1つの筋芽細胞培地を含む。いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも1つのスピン培地を含む。いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも1つの分化培地を含む。いくつかの実施形態では、キットは、筋芽細胞培地、スピン培地および分化培地を含む。いくつかの実施形態では、キットは、キナーゼ阻害剤、Gタンパク質共役受容体(GPCR)モジュレーター、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)モジュレーター、ヘッジホッグシグナル伝達経路モジュレーター、神経ペプチド、ドーパミン受容体モジュレーター、セロトニン受容体モジュレーター、ヒスタミン受容体モジュレーター、イオノフォア、イオンチャネルモジュレーター、ガンマセクレターゼモジュレーターおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される化合物を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、キット中の化合物は、いくつかの実施形態ではキットの他の成分を実質的に含まない防水性または気密性容器で提供され得る。化合物は、1つを超える容器で供給され得る(例えば、それは、筋芽細胞をサテライト細胞に誘導するための所定数の反応、例えば1つ、2つ、3つまたはそれを超える数の別個の反応のための十分な試薬を有する容器に供給され得る)。培地および/または補助剤は、任意の形態、例えば、液体、乾燥または凍結乾燥形態で提供され得る。本明細書に記載される化合物(例えば、培地または薬剤)は実質的に純粋であり、および/または無菌であるのが好ましい。本明細書に記載される化合物が溶液で提供される場合、溶液は、好ましくは水溶液であり、無菌水溶液が好ましい。本明細書に記載される化合物が乾燥形態で提供される場合、一般には、再構成は、適切な溶媒の添加による。溶媒、例えば滅菌水または緩衝液は、必要に応じて、キットで提供され得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、キットは、資料をさらに必要に応じて含む。資料は、本明細書に記載される方法および/または本明細書に記載される方法についての本明細書に記載される化合物の使用に関する説明資料、指示資料、マーケティング資料および他の資料であり得る。
【0117】
キットの資料は、その指示または有益資料に限定されない。一実施形態では、資料は、化合物の製造、化合物の分子量、濃度、有効期限、バッチまたは製造場所の情報などについての情報を含み得る。一実施形態では、資料は、化合物の投与方法に関する。加えて、キットの資料は、その形式に限定されない。多くの場合、資料、例えば、指示は、印刷物、例えば、印刷文書、図および/または写真、例えば、ラベルまたは印刷されたシートで提供される。しかしながら、資料はまた、他の形式、点字、コンピュータ読み取り可能な材料、ビデオ記録またはオーディオ記録で提供され得る。別の実施形態では、キットの資料は、コンタクト情報、例えば、物理的な住所、eメールアドレス、ウェブサイトまたは電話番号であり、キットのユーザは、本明細書に記載される化合物、および/または、本明細書に記載される方法におけるその使用についての重要な情報を得ることができる。当然のことながら、資料は、任意の組み合わせの形式で提供され得る。
【0118】
一実施形態では、資料は、本明細書に記載される化合物(例えば、培地および/または補助剤)を、本明細書に記載される方法を行うのに適切な方法、例えば、適切な投与量、投与形態または投与方式(例えば、本明細書に記載される投与量、投与形態または投与方式)で、(インビトロにおける細胞またはインビボにおける細胞に)投与するための指示を含み得る。別の実施形態では、資料は、本明細書に記載される化合物を、適切な被験体、例えばヒト、例えば、本明細書に記載される障害を有するかもしくはそのリスクがあるヒトに投与するか、またはインビトロで細胞に投与するための指示を含み得る。
【0119】
本明細書に記載される化合物に加えて、キットの組成物は、他の成分、例えば、溶媒または緩衝液、安定剤、保存剤、矯味矯臭剤(例えば、苦味アンタゴニストまたは甘味料)、芳香剤または化粧成分、および/または本明細書に記載される状態もしくは障害を処置するためのさらなる薬剤を含み得る。あるいは、他の成分は、キットに含まれるが、本明細書に記載される化合物とは異なる組成物または容器に存在し得る。このような実施形態では、キットは、本明細書に記載される化合物と、他の成分とを混合するための、または、本明細書に記載される化合物を、他の成分と共に使用するための指示、例えば、投与前に2つの薬剤を組み合わせることについての指示を含み得る。
【0120】
キットは、本明細書に記載される少なくとも1種の培地および/または補助剤を含有する組成物のための1つまたはそれを超える容器を含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、組成物および資料のための、別個の容器(例えば、2つの薬剤のための2つの別個の容器)、仕切りまたは区画を含む。例えば、組成物は、ボトル、バイアルまたはシリンジに含まれ得、資料は、プラスチック製のスリーブまたはパケットに含まれ得る。他の実施形態では、キットの別個の要素は、分割していない1つの容器内に含まれる。例えば、組成物は、資料がラベルの形式で付着されている、ボトル、バイアルまたはシリンジに含まれる。いくつかの実施形態では、キットは、複数(例えば、パック)の個々の容器を含み、それぞれが、本明細書に記載される化合物の1つまたはそれを超える単位投与形態(例えば、本明細書に記載される投与形態)を含有する。例えば、キットは、複数のシリンジ、アンプル、ホイルパケットまたはブリスターパックを含み、それぞれが、本明細書に記載される化合物の単回単位投与量を含有する。キットの容器は、気密性、防水性(例えば、湿気の変化または蒸発に対して不透過性)および/または遮光性であり得る。
【0121】
キットは、組成物の投与に適切なデバイス、例えば、シリンジ、吸入器、ピペット、鉗子、計量スプーン、点滴注入器(例えば、点眼器)、スワブ(例えば、コットンスワブまたは木製スワブ)または任意のこのような送達デバイスを必要に応じて含む。好ましい実施形態では、デバイスは、医療用埋め込みデバイスであり、例えば、外科的挿入用にパッケージされている。
【0122】
キットはまた、サテライト細胞のためのマーカー、例えば、本明細書に記載されるマーカーの検出用成分、例えば、サテライト細胞の検出のための試薬を含み得る。または、いくつかの実施形態では、キットはまた、サテライト細胞の陰性選択の目的のためのサテライト細胞の陰性マーカーの検出用、または、これらの陰性マーカーを発現しない細胞(例えば、サテライト細胞)の同定のための試薬を含み得る。試薬は、例えば、マーカーに対する抗体であり得るか、またはRT-PCRもしくはPCR反応、例えば半定量的もしくは定量的RT-PCRもしくはPCR反応のためのプライマーであり得る。このようなマーカーは、iPS細胞が生産されたか否かを評価するために使用され得る。検出試薬が抗体である場合、それは、乾燥調製物、例えば凍結乾燥調製物または溶液で供給され得る。抗体または他の検出試薬は、検出において使用するための標識、例えば放射性標識、蛍光(例えば、GFP)標識または比色標識に連結され得る。検出試薬がプライマーである場合、それは、乾燥調製物、例えば凍結乾燥調製物または溶液で供給され得る。
【0123】
キットは、例えば陽性細胞型対照として使用するために、サテライト細胞、例えば同じ種類の筋芽細胞に由来するサテライト細胞を含み得る。
【0124】
細胞を投与する方法
一実施形態では、本明細書に記載される細胞、例えばサテライト細胞の集団は移植可能であり、例えば、サテライト細胞の集団は被験体に投与され得る。いくつかの実施形態では、サテライト細胞の集団を投与される被験体は、(例えば、自己細胞療法のために)サテライト細胞に脱分化させるために使用される筋芽細胞が得られた同じ被験体である。いくつかの実施形態では、被験体は、異なる被験体である。いくつかの実施形態では、被験体は筋肉損傷を患っているか、または正常被験体である。例えば、移植のための細胞(例えば、サテライト細胞の集団を含む組成物)は、移植に適切な形態であり得る。
【0125】
前記方法は、細胞を、それを必要とする被験体、例えば、哺乳動物の被験体、例えば、ヒトの被験体に投与することをさらに含み得る。細胞の供給源は、哺乳動物、好ましくは、ヒトであり得る。細胞の供給源またはレシピエントはまた、非ヒトの被験体、例えば、動物モデルであり得る。「哺乳動物」という用語は、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、ヤギ、ウマ、サル、イヌ、ネコ、および好ましくは、ヒトを含む生物を含む。同様に、移植可能な細胞は、これらの生物、例えば、非ヒトのトランスジェニック生物のいずれかから得ることができる。一実施形態では、移植可能な細胞は、遺伝子操作されており、例えば、細胞は、外因性の遺伝子を含むか、または内因性遺伝子を不活性化もしくは変化させるように遺伝子操作されている。
【0126】
サテライト細胞の集団を含む組成物は、埋め込み可能なデバイスを使用して、被験体に投与され得る。埋め込み可能なデバイスおよび関連技術は当技術分野で公知であり、送達システムとして有用であり、本明細書に示される化合物または組成物の連続放出送達または時限放出送達が望ましい。加えて、埋め込み可能なデバイスの送達システムは、化合物または組成物の送達の特異的な点(例えば、局所部位または臓器)の標的化に有用である。Negrinら、Biomaterials,22(6):563(2001)。代替的な送達方法を伴う時限放出技術もまた、本発明に使用され得る。例えば、ポリマー技術、持続放出技術および被包技術に基づく時限放出製剤(例えば、ポリマー、リポソーム)もまた、本明細書に示される化合物および組成物の送達に使用され得る。
【0127】
薬学的組成物
被験体への投与のために、本明細書に開示される方法により生産された細胞集団、例えば、(少なくとも1つの筋芽細胞を少なくとも1種の培地(例えば、本明細書に記載される筋芽細胞培地、スピン培地および/または分化培地)と接触させることにより生産された)サテライト細胞の集団は、例えば、薬学的に許容され得る組成物で被験体に投与され得る。これらの薬学的に許容され得る組成物は、1つまたはそれを超える薬学的に許容され得る担体(添加剤)および/または希釈剤と共に製剤化された治療有効量の上記サテライト細胞の集団を含む。
【0128】
以下に詳細に記載されるように、本発明の薬学的組成物は、固体または液体形態、例えば以下のために適合されたものを含め、投与のために特別に製剤化され得る:(1)経口投与、例えば、水薬(水溶液もしくは非水性溶液または懸濁物)、ロゼンジ、糖衣錠、カプセル、丸剤、錠剤(例えば、頬、舌下および全身での吸収を目的としたもの)ボーラス、粉末、顆粒、舌への塗布のためのペースト;(2)非経口投与、例えば、無菌の溶液もしくは懸濁物または持続放出製剤としての、例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射による;(3)局所塗布、例えば、クリーム、軟膏または制御放出パッチまたは皮膚に適用されるスプレー;(4)膣内または直腸内、例えば、ペッサリー、クリームまたは泡;(5)舌下;(6)眼;(7)経皮;(8)経粘膜;または(9)経鼻。加えて、化合物は、患者に埋め込まれ得るか、または薬剤送達システムを使用して注射され得る。例えば、Urquhart,ら、Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.24:199-236(1984);Lewis,ed.“Controlled Release of Pesticides and Pharmaceuticals”(Plenum Press,New York,1981);米国特許第3,773,919号;および米国特許第35 3,270,960号を参照のこと。
【0129】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る」という用語は、健全な医療的判断の範囲内にあり、合理的な利益/リスク比に相応の、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答または他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するために適切な化合物、材料、組成物および/または投与形態を指す。
【0130】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る担体」という用語は、1つの臓器または身体の一部から別の臓器または身体の部分に、目的の化合物を運搬または輸送することに関与する、薬学的に許容され得る材料、組成物またはビヒクル、例えば、液体または固体の充填剤(filler)、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、滑沢剤、タルクマグネシウム、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛またはステアリン酸)または溶媒被包材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、患者に対して傷害性でないという意味で、「許容され得る」べきである。薬学的に許容され得る担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、(1)糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;(2)デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;(3)セルロースおよびその誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロースおよび酢酸セルロース;(4)粉末状のトラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルク;(8)賦形剤、例えば、ココアバターおよび坐剤ワックス;(9)油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油;(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール(PEG);(12)エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリル酸エチル;(13)アガー;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張性食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝化溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ酸無水物;(22)増量剤(bulking agent)、例えば、ポリペプチドおよびアミノ酸;(23)血清成分、例えば、血清アルブミン、HDLおよびLDL;(22)C2-C12アルコール、例えば、エタノール;ならびに(23)薬学的製剤に使用される他の非毒性の適合性物質が挙げられる。湿潤剤、着色剤、放出剤(release agent)、コーティング剤、甘味料、矯味矯臭剤、芳香剤、保存剤および抗酸化剤もまた、製剤に存在し得る。前記用語、例えば「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容され得る担体」などは、本明細書では互換的に使用される。
【0131】
細胞集団に関して本明細書で使用される場合、「治療有効量」という語句は、細胞集団中の関連細胞、例えばサテライト細胞、または本発明のサテライト細胞を含む組成物の量であって、任意の医療的処置に適用可能な合理的な利益/リスク比で、動物中の細胞の少なくとも部分集団においていくらかの所望の治療効果を生じさせるために有効な量を意味する。例えば、筋肉傷害の少なくとも1つの症状の統計学的に有意な測定可能な変化、例えば筋肉修復または筋肉再生を生じさせるために十分な量のサテライト細胞の集団が、被験体に投与される。治療有効量の決定は、十分に当業者の能力内である。一般に、治療有効量は、被験体の既往歴、年齢、状態、性別ならびに被験体における医学的状態の重症度および種類、ならびに、他の薬学的に活性な薬剤の投与により変動し得る。
【0132】
本明細書で使用される場合、「修復」という用語は、筋肉組織の損傷が緩和されるかまたは完全に排除されるプロセスを指す。いくつかの実施形態では、筋肉組織損傷の少なくとも1つの症状は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%緩和される。
【0133】
疾患または障害の「処置」、「予防」または「改善」は、このような疾患または障害の発症の遅延または予防、このような疾患または障害に関連する状態の進行、悪化または増悪、進行または重症度の逆転、緩和、改善、阻害、減速または停止を意味する。一実施形態では、疾患または障害の症状は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%緩和される。
【0134】
本明細書で使用される場合、「投与する」という用語は、所望の効果が生じるように、所望の部位における組成物の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路による被験体への組成物の配置を指す。本発明の方法に適切な投与経路は、局所投与および全身投与の両方を含む。一般に、局所投与は、被験体の全身と比較して多くの、投与されたサテライト細胞(または増殖増強剤処置サテライト細胞)が特定の場所に送達されるのに対して、全身投与は、本質的には被験体の全身へのサテライトの送達をもたらす。局所投与の1つの方法は、筋肉内注射によるものである。
【0135】
化合物処置細胞を投与する文脈では、「投与する」という用語はまた、被験体へのこのような細胞の移植を含む。本明細書で使用される場合、「移植」という用語は、少なくとも1つの細胞を被験体に埋め込むかまたは移入するプロセスを指す。「移植」という用語は、例えば、自己移植(患者のある場所から細胞を取り出して、同じ患者の同じまたは別の場所に移す)、同種移植(同じ種のメンバー間の移植)および異種移植(異なる種のメンバー間の移植)を含む。当業者は、筋肉修復および筋肉再生のために細胞を埋め込むかまたは移植するための方法であって、本発明に適した方法を十分に把握している。例えば、米国特許第7,592,174号および米国特許出願公開第2005/0249731号(これらの内容は両方とも、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0136】
サテライト細胞またはそれを含む組成物は、当技術分野で公知の任意の適切な経路、例えば限定されないが、経口または非経口の経路、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、肺、鼻、直腸および局所(例えば、頬および舌下)の投与により投与され得る。
【0137】
例示的な投与様式としては、限定されないが、注射、注入、点滴注入、吸入または経口摂取が挙げられる。「注射」は、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、心室内(intraventricular)、包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内および胸骨内(intrasternal)の注射および注入を含む。好ましい実施形態では、組成物は、静脈内注入または注射により投与される。
【0138】
本明細書で使用される場合、「被験体」は、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、脊椎動物、例えば霊長類、齧歯類、家畜または狩猟動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザルおよびマカク、例えばアカゲザルが挙げられる。齧歯類としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギおよびハムスターが挙げられる。家畜および狩猟動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ種、例えばイエネコ、イヌ種、例えばイヌ、キツネ、オオカミ、鳥類、例えばニワトリ、エミュー、ダチョウおよび魚、例えばマス、ナマズおよびサケが挙げられる。患者または被験体としては、前述の任意のサブセット、例えば上記のすべてが挙げられるが、1つまたはそれを超える群または種、例えばヒト、霊長類または齧歯類を除外する。本明細書に記載される態様の特定の実施形態では、被験体は、哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。「患者」および「被験体」という用語は、本明細書では互換的に使用される。「患者」および「被験体」という用語は、本明細書では互換的に使用される。被験体は、雄または雌であり得る。
【0139】
好ましくは、被験体は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、自己免疫疾患または炎症に関連する障害の動物モデルに相当する被験体として有利に使用され得る。加えて、本明細書に記載される方法および組成物は、家畜および/またはペットを処置するために使用され得る。
【0140】
被験体は、筋肉損傷または筋肉萎縮/消耗を特徴とする障害と以前に診断されているか、またはそれを患っているもしくは有すると特定されている者であり得る。被験体は、筋肉変性障害と以前に診断されているか、またはそれを有すると特定されている者であり得る。
【0141】
本明細書に記載される態様のいくつかの実施形態では、前記方法は、筋肉修復または筋肉再生のために被験体を処置する前に、筋肉損傷または筋肉萎縮/消耗について被験体を診断および/または選択することをさらに含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、損傷筋肉組織は、サルコペニアに起因する。本明細書で使用される場合、「サルコペニア」という用語は、加齢と共に必然的に生じる筋肉量および筋肉機能の喪失を指す。サルコペニアは身体活動レベルの低下の原因であり、そして、体脂肪の増加および筋肉のさらなる喪失をもたらし得る。筋肉量の喪失は、筋肉タンパク質合成と筋肉タンパク質分解との間の負の正味バランスに起因する。骨格筋量および機能のこの喪失の病因は明らかではないと考えられる。身体活動レベルの低下、中枢神経系の変化に続発する運動単位の喪失、および不十分なタンパク質取り込みのすべてが関係している。
【0143】
いくつかの実施形態では、損傷筋肉組織は、物理的傷害または外傷に起因する。損傷筋肉は、骨格筋であり得る。いくつかの実施形態では、被験体は、筋肉の傷害、傷、外傷もしくは疾患を有するか、または他の方法でそれらの影響を受ける。
【0144】
いくつかの実施形態では、損傷筋肉組織をもたらす疾患はミオパシーである。限定されないが、ミオパシーは、先天性ミオパシーまたは後天性ミオパシーであり得る。例示的なミオパシーとしては、限定されないが、ジストロフィー、ミオトニー(神経筋緊張症(neuromytonia))、先天性ミオパシー(例えば、ネマリンミオパシー、マルチ/ミニコアミオパシー、中心核ミオパシー(または筋細管ミオパシー))、ミトコンドリアミオパシー、家族性周期性麻痺、炎症性ミオパシー、代謝性ミオパシー(例えば、糖原貯蔵症および脂質貯蔵障害)、皮膚筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、骨化性筋炎、横紋筋融解症およびミオグロビン尿症が挙げられる。
【0145】
本明細書に記載されるこの態様および他の態様のいくつかの実施形態では、ミオパシーは、筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー筋ジストロフィー、反射性交感神経性ジストロフィー、網膜ジストロフィー、コナルジストロフィー(Conal dystrophy)、筋緊張性ジストロフィー、角膜ジストロフィーおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるジストロフィーである。
【0146】
先天性ミオパシーは、出生時に存在し得る数百の異なる神経筋肉障害に適用されることがある用語であるが、それは、通常、出生時または新生児期において筋緊張低下および衰弱を引き起こし、いくつかの場合では小児期においてその後の運動発達遅延を引き起こす一群の珍しい遺伝性原発性筋肉障害のために留保される。患者は、軽度(小児期後期発症および成人期を通して歩行能力)から重度(呼吸不全(respitatory insufficiency)および生後1年以内に死亡)の範囲の衰弱を患う。
【0147】
最も一般的なタイプの先天性ミオパシーは、ネマリンミオパシー、筋細管ミオパシー、中心核ミオパシー、先天性線維型不均衡およびマルチコアミオパシーである。それらは、それらの組織学的特徴、症状および予後により主に区別される。診断は特徴的な臨床所見により示され、筋肉生検により確認される。
【0148】
具体的なミオパシーの例としては、限定されないが、国際特許出願第PCT/US2017/016099号(これは、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものが挙げられる。
【0149】
本明細書に記載されるサテライト細胞組成物は、本明細書に記載される増殖増強剤および/または薬学的に活性な薬剤と組み合わせて被験体に同時投与され得る。例示的な薬学的に活性な化合物としては、限定されないが、Harrison’s Principles of Internal Medicine,13thEdition,Eds.T.R.Harrisonら、McGraw-Hill N.Y.,NY;Physicians’Desk Reference,50thEdition,1997,Oradell New Jersey,Medical Economics Co.;Pharmacological Basis of Therapeutics,8thEdition,Goodman and Gilman,1990;United States Pharmacopeia,The National Formulary,USP XII NF XVII,1990;Goodman and Oilman’s The Pharmacological Basis of Therapeuticsの最新版;およびThe Merck Indexの最新版(これらの全内容はすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見られるものが挙げられる。
【0150】
本明細書に記載される態様のいくつかの実施形態では、薬学的に活性な薬剤は成長因子である。例示的な成長因子としては、限定されないが、塩基性上皮成長因子(bEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、FGF-1、FGF-2(bFGF)、FGF-4、サイモシン、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、形質転換成長因子(TGF)、TGF-アルファ、TGF-ベータ、軟骨誘導因子-Aおよび-B、類骨誘導因子、オステオゲニン、骨形成タンパク質および他の骨成長因子、コラーゲン成長因子、ヘパリン結合成長因子-1または-2ならびにそれらの生物学的に活性な誘導体が挙げられる。
【0151】
サテライト細胞組成物、増殖増強剤および/または薬学的に活性な薬剤は、(同時にまたは異なる時間に)同じ薬学的組成物または異なる薬学的組成物で被験体に投与され得る。異なる時間に投与される場合、サテライト細胞組成物、増殖増強剤および/または薬学的に活性な薬剤は、他方の投与の5分、10分、20分、60分、2時間、3時間、4時間、8時間、12時間、24時間以内に投与され得る。サテライト細胞組成物、増殖増強剤および/または薬学的に活性な薬剤が異なる薬学的組成物で投与される場合、投与経路は異なり得る。
【0152】
サテライト細胞の集団を含む組成物の投与の毒性および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な投与量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な投与量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順により決定され得る。大きな治療指数を示すサテライト細胞の集団を含む組成物が好ましい。
【0153】
サテライト細胞の集団を含む組成物の量は、複数の十分確立された動物モデルを使用して試験され得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトにおいて使用するための投与量の範囲を処方するために使用され得る。このような化合物の投与量は、好ましくは、ほとんど毒性を有しないか、または、毒性を有しないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用される投与形態および採用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。
【0155】
治療有効投与量の、サテライト細胞の集団を含む組成物は、細胞培養アッセイから最初に推定され得る。あるいは、任意の特定の投与量の効果が、適切なバイオアッセイによりモニタリングされ得る。
【0156】
処置の持続期間および頻度に関して、処置が治療的利益を提供している時を決定し、投与量を増加または減少させるか、投与頻度を増加または減少させるか、処置を中断するか、処置を再開するか、または、処置レジメンに他の変更を加えるかを決定するために、被験体をモニタリングするのは、技量を有する臨床医にとって典型的なことである。投与スケジュールは、数多くの臨床的要因に応じて、1週間1回から毎日に変動し得る。所望の投与量は一度に投与され得るか、または部分投与量、例えば2~4つの部分投与量に分割され、一定期間にわたって、例えば、日を通しての適切な間隔または他の適切なスケジュールで投与され得る。このような部分投与量は、単位投与形態として投与され得る。いくつかの実施形態では、投与は、長期、例えば、数週間または数か月の期間にわたって、毎日1回またはそれを超える投与量である。投与スケジュールの例は、1週間、2週間、3週間、4週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月または6カ月またはそれを超えて、毎日、1日2回、1日3回、1日4回またはそれより頻繁な投与である。
【0157】
本発明の別の態様では、前記方法は、本明細書に開示されるサテライト細胞の単離された集団の使用を提供する。本発明の一実施形態では、本明細書に開示されるサテライト細胞の単離された集団は、処置を必要とする被験体、例えば、筋肉疾患または筋肉障害(例えば、筋肉変性障害)を有するかまたはそれを発症するリスクがある被験体への移植において使用するための薬学的組成物の生産に使用され得る。例としては、筋肉萎縮または筋肉損傷を有する被験体が挙げられる。一実施形態では、サテライト細胞の単離された集団は遺伝子改変され得る。別の態様では、被験体は、筋肉損傷または筋肉萎縮を有し得るかまたはそのリスクがあり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなサテライト細胞の単離された集団は、自己および/または同種のものであり得る。いくつかの実施形態では、被験体は哺乳動物であり、他の実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0158】
本発明の一実施形態は、被験体における筋肉傷害または筋肉疾患を処置する方法であって、本明細書に開示されるサテライト細胞の集団を含む有効量の組成物を、筋肉傷害または筋肉疾患を有する被験体に投与することを含む方法に関する。他の実施形態は、被験体における筋肉変性障害を処置する方法であって、本明細書に開示されるサテライト細胞の集団を含む有効量の組成物を、筋肉変性障害を有する被験体に投与することを含む方法に関する。さらなる実施形態では、本発明は、筋肉疾患を処置するための方法であって、本明細書に開示されるサテライト細胞の集団を含む組成物を、筋肉疾患を有するかまたはそれを発症する増加したリスクを有する被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0159】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるサテライト細胞の集団は、任意の生理学的に許容され得る賦形剤で投与され得、サテライト細胞は、複製、増殖および/または生着に適切な部位を見出し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるサテライト細胞の集団は、注射、カテーテルなどにより導入され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるサテライト細胞の集団は、液体窒素の温度で凍結されることができ、長期間保存されることができ、解凍時に使用可能である。凍結される場合、サテライト細胞の集団は、通常、10%DMSO、50%FCS、40%RPMI1640培地に保存されるであろう。解凍されると、細胞は、本明細書に開示されるサテライト細胞の培養に関連する成長因子および/またはフィーダ細胞の使用により拡大増殖され得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるサテライト細胞の集団は、ヒトへの投与用に十分無菌条件下で調製された等張性賦形剤を含む薬学的組成物の形態で供給され得る。医療製剤の一般原則について、読み手は、Cell Therapy:Stem Cell Transplantation,Gene Therapy,and Cellular Immunotherapy,by G.Morstyn&W.Sheridan eds,Cambridge University Press,1996;およびHematopoietic Stem Cell Therapy,E.D.Ball,J.Lister&P.Law,Churchill Livingstone,2000に言及される。本明細書に開示されるサテライト細胞の集団を含む組成物における細胞賦形剤および任意の付随的要素の選択は、投与に使用される経路およびデバイスに基づいて採用されるであろう。いくつかの実施形態では、サテライト細胞の集団を含む組成物はまた、サテライト細胞の生着または機能的な動員を容易にする、1つまたはそれを超える他の成分を含み得るか、またはそれを伴い得る。適切な成分としては、サテライト細胞または補完的細胞型の付着を支持または促進するマトリクスタンパク質が挙げられる。別の実施形態では、組成物は、吸収性または生分解性のマトリクス足場を含み得る。
【0161】
遺伝子治療は、遺伝子産物を置き換え、組織の再生を促進し、疾患を処置し、または、被験体への埋め込み後の細胞の生存を改善する(すなわち、拒絶を防止する)ためのいずれかで、細胞を改変するために使用され得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、サテライト細胞の集団は、個々の患者の臨床状態、投与の部位および方法、投与スケジュール、患者の年齢、性別、体重ならびに医療従事者に公知の他の要因を考慮して、医療の品質管理に関する基準に基づいて投与および投薬され得る。したがって、本明細書の目的のための薬学的に「有効な量」は、当技術分野で公知なように、このような考慮により決定される。量は、改善、例えば限定されないが、改善した生存率、より急速な回復、または、当業者による適切な尺度として選択された場合、症状および他の指標の改善もしくは排除を達成するために有効でなければならない。サテライト細胞の集団は、以下の場所:診療所、病院、救急部門、病棟、集中治療室、手術室、カテーテル法室(catheterization suite)、放射線室(radiologic suite)で、被験体に投与され得る。
【0163】
他の実施形態では、サテライト細胞の集団は、後の埋め込み/注入のために保存される。サテライト細胞の集団の一部が後の適用のために保持され、一部が被験体に即時に適用されるように、サテライト細胞の集団は、1つを超えるアリコートまたは単位に分割され得る。米国特許出願公開第2003/0054331号および国際公開第03/024215号(これらは、その全体が参照により組み込まれる)に開示されているように、細胞バンクにおける全部または一部の細胞の中程度から長期間の保存もまた、本発明の範囲内である。処理の終了時に、濃縮細胞は、当業者に公知の任意の手段によりレシピエント内に配置するための送達デバイス、例えばシリンジ内に充填され得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、サテライト細胞の集団は単独で、または他の細胞、組織、組織断片、成長因子、例えば、VEGFおよび他の公知の血管新生もしくは血管原性の成長因子、生物学的に活性もしくは不活性な化合物、吸収性プラスチック足場または、集団の送達、有効性、耐容性もしくは機能を増強させることを意図した他の添加剤との組み合わせで適用され得る。いくつかの実施形態では、サテライト細胞の集団は、構造的または治療的目的を引き出すために、細胞の機能を変化、増強または追加するように、DNAの挿入または細胞培養中での配置により改変され得る。例えば、幹細胞についての遺伝子移入技術は、(Morizonoら、2003;Moscaら、2000)に開示されているように、当業者に公知であり、ウイルストランスフェクション技術、およびより具体的には、(Walther and Stein,2000)および(Athanasopoulosら、2000)に開示されているアデノ関連ウイルス遺伝子移入技術が挙げられ得る。非ウイルス系技術もまた、(Murarnatsuら、1998)に開示されているように実施され得る。
【0165】
別の態様では、いくつかの実施形態では、サテライト細胞の集団は、血管新生促進性成長因子をコードする遺伝子と組み合わせられ得る。抗アポトーシス因子または薬剤をコードする遺伝子も適用され得る。遺伝子(または、遺伝子の組み合わせ)の追加は、当技術分野で公知の任意の技術、例えば限定されないが、アデノウイルス形質導入である、「遺伝子銃」、リポソーム媒介性形質導入およびレトロウイルスまたはレンチウイルス媒介性形質導入、プラスミドアデノ関連ウイルスによるものであり得る。細胞は、形質導入が継続または開始し得るように、経時的に細胞に対して遺伝子を放出および/または提示することができる遺伝子送達ビヒクルを有する担体材料と共に埋め込まれ得る。特に、細胞および/または細胞を含む組織が、細胞および/または組織が得られた患者以外の患者に投与される場合、1つまたはそれを超える免疫抑制剤が、細胞および/または組織を受けている患者に投与されて、移植片の拒絶を減少させ、好ましくは、防止し得る。本明細書で使用される場合、「免疫抑制薬または免疫抑制剤」という用語は、正常な免疫機能を阻害または妨害する、医薬品を含むことを意図する。本明細書に開示される方法に適切な免疫抑制剤の例としては、T細胞/B細胞の同時刺激経路を阻害する薬剤、例えば、米国特許出願公開第2002/0182211号(これは、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているCTLA4およびB7経路を介したT細胞とB細胞とのカップリングを妨害する薬剤が挙げられる。一実施形態では、免疫抑制剤は、シクロスポリンAである。他の例としては、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシンおよび抗-胸腺細胞グロブリンが挙げられる。一実施形態では、免疫抑制薬は、少なくとも1つの他の治療剤と共に投与される。免疫抑制薬は、投与経路に適合した製剤で投与され、目的の治療効果を達成するために十分な投与量で被験体に投与される。別の実施形態では、免疫抑制薬は、本発明のサテライト細胞に対する寛容を誘導するために十分な期間にわたって一時的に投与される。
【0166】
有効量のサテライト細胞の集団を含む薬学的組成物もまた、本発明により企図される。これらの組成物は、薬学的に許容され得る担体、添加剤または賦形剤と必要に応じて組み合わせて、有効数のサテライト細胞を含む。特定の適応症では、被験体へのサテライト細胞の集団の全身投与が好ましい場合があるのに対して、他の適応症では、罹患組織および/または損傷組織の部位またはその近傍への直接投与が好ましい場合がある。
【0167】
いくつかの実施形態では、サテライト細胞の集団は、必要に応じて、所望の目的、例えば、被験体への投与前のサテライト細胞の集団の再構成または解凍(凍結されている場合)に関する書面での指示と共に、適切な容器でパッケージングされ得る。
【実施例0168】
実施例1-3Dスピン環境で培養した筋芽細胞は、分化した骨格筋および増殖性筋原性集団から構成される骨格筋オルガノイドに自己集合する
WT(C57bl/6)、MyoDCre ROSATdtomato、Pax7
nGFPおよびPax7Cre ROSATdtomatoから単離した筋芽細胞は、3Dスピン条件で培養すると、3Dスフィアに自己集合する(
図1A)。骨格筋オルガノイド内に存在する細胞の分化状態を決定するために、本発明者らは、3D条件における成長の10日目、20日目および30日目にスフィアを収集した。各時点において、収集したスフィアをOCT:スクロース中で凍結し、10μmで切片化した。筋芽細胞またはサテライト細胞を同定するためのPax7(DSHB)(Sealeら、2000)、およびミオシン重鎖(MyHC、MF20-DSHB)(骨格筋の最終分化のマーカー)を認識する抗体(Baderら、1982)で切片を染色した。3つの各時点における骨格筋オルガノイドは、Pax7
+およびMyHC+細胞の組み合わせから構成されており、Pax7
+細胞の割合は時間と共に減少する。
【0169】
この知見がヒト細胞に当てはまるかどうかを決定するために、本発明者らは、より高濃度のbFGF(10ng/ml)を含む筋芽細胞培地で、WTヒト骨格筋芽細胞(Life Technologies #A12555)を増殖させた。ヒト筋芽細胞をスフェロイド96ウェルマイクロプレート(Corning-4515)に4日間播種してから、オービタルシェーカー上で維持された10cm低接着プレートに移した。10日間の培養後、ヒト骨格筋オルガノイドが形成された(
図1B)。Pax7およびMyHCで染色したヒト骨格筋オルガノイドの凍結切片は、MyHC陽性である細胞の大部分を示す。興味深いことに、通常の培養中では、ヒト筋芽細胞は転写因子Pax7を発現しないので、骨格筋オルガノイド内に存在するPax7陽性ヒト細胞の存在に留意することが重要である(
図1C)。本発明者らのデータは、スフェロイドプレートに播種すると、ヒト筋芽細胞が3Dスフィアに自己集合することができることを示唆している。スフィア形成後、Pax7
+ヒト筋原細胞の出現は、脱分化または再プログラミングが起こって、筋芽細胞が、サテライト細胞状態に似た細胞に戻ったことを示唆している。
【0170】
次に、本発明者らは、RNAseq分析を行って、サテライト細胞状態の転写フィンガープリントを同定した(
図2A)。サテライト細胞(Pax7、Myf5)では、複数のコア筋原性遺伝子が高度に発現されているが、骨格筋MyoDのマスター転写因子は、筋芽細胞では優先的に発現されており、サテライト細胞では存在しない。これらの筋原性マーカーは、静止関連遺伝子のパネル(Spry1、Nm1、Nfia、Fos、Dusp1)およびNotchシグナル伝達経路のメンバー(Notch1、2、3、HeyL、Hey2、Hes)と組み合わせて、サテライト細胞を特定する転写フィンガープリントとして機能する。骨格筋オルガノイドに存在するPax7陽性細胞がサテライト細胞と同様の転写プロファイルを共有するかどうかを決定するために、本発明者らは、蛍光活性化細胞選別(FACS)により、30日間培養した骨格筋オルガノイドから精製したnGFP細胞から全RNAを単離した(
図2B)。qPCR分析後、本発明者らは、MyoD(約1/50)の有意な減少と一緒に、Pax7(約4.5倍)およびMyf5(約18倍)の増加を決定した。さらに、nGFP
+30日目骨格筋オルガノイド由来細胞では、Notchシグナル伝達経路マーカーNotch1(約2.5倍)、Notch2(約4倍)、Notch3(約35倍)、HeyL(約580倍)、Hey2(約37倍)およびHes1(約11倍)が増加していた。30日目骨格筋オルガノイド由来nGFP
+細胞集団では、Nm1(約5倍)、Nfia(5倍)、Fos(約480倍)、Spry1(約34倍)およびDusp1(約20倍)を含む活性化の静止関連遺伝子またはマーカーが増強されていた(
図2B)。このデータは、骨格筋オルガノイドから単離したnGFP+細胞が、サテライト細胞のものに似た転写プロファイルを有することを示唆している。
【0171】
骨格筋オルガノイドがどのようにして、筋原細胞がサテライト細胞状態に戻ることを可能にするかを機構的に取り組むために、本発明者らは、標準的な2D培養と3D培養との間の環境の差を検討した。成体幹細胞は非対称に分裂する能力を有するので、前駆体集団を生じさせると同時に、自己再生して幹細胞プールを維持する(Kuangら、2007)。これが起こるためには、幹細胞ニッチ内の因子が重要である。本発明者らは、2Dおよび3D培養で筋芽細胞に提示されるニッチのこれらの差を説明し得る細胞外分子に関する本発明者らのRNAseqデータセットを評価した。分析後、筋芽細胞と比較して、サテライト細胞について濃縮されたプロテオグリカンのコアグループが出現した(
図3A)。3D培養後、これらのプロテオグリカンマーカーについて、nGFP+細胞は高度に濃縮されている(
図3B)。タンパク質レベルでこれらのプロテオグリカンの存在をさらに確認するために、本発明者らは、スピン培地で20日間培養したかまたはスピン培地で10日間培養し、続いて無血清分化培地で10日間培養した骨格筋オルガノイドを切片化および染色した(
図3C)。無血清培地における分化後、本発明者らは、BgnおよびTgfbrIIIの存在の増加を観察した(
図3D)。本発明者らのデータは、3D培養がインビボにおけるサテライト細胞ニッチにより正確に似ているので、転写プロファイルでサテライト細胞に似た細胞を生じさせ、サテライト細胞ニッチの確立に重要なプロテオグリカンを分泌することを示唆している。
【0172】
材料および方法
培地
筋芽細胞培地-ハムF10(Wisent)、20%熱不活化ウシ胎仔血清、5ng/ml bFGF(Millipore)、1×非必須アミノ酸(Life Technologies)、1×Glutamax(Life Technologies)。
【0173】
スピン培地-DMEM:F12(Life Technologies)、20%熱不活化ウシ胎仔血清、10ng/ml bFGF(Millipore)、1×非必須アミノ酸(Life Technologies)、1×Glutamax(Life Technologies)。
【0174】
分化培地-DMEM(Life Technologies)、1×非必須アミノ酸(Life Technologies)、1×Glutamax(Life Technologies。
【0175】
細胞株
複数のマウス系統およびヒト株(Bl/6、MyoDiCre、Pax7nGFP、Pax7CreROSATdt、Pax7CreROSALucを含む)ならびにGibcoおよびCookのヒト株を使用して、サテライト細胞を生成するための方法を行った。
【0176】
筋芽細胞の拡大増殖
複数のマウス系統由来の筋芽細胞を後肢骨格筋から単離し、筋芽細胞培地中のコラーゲンコーティングディッシュ上で培養した。トリプシン(Life Technologies)を用いて、筋芽細胞株を継代した。10cm培養ディッシュ上で筋芽細胞株を拡大増殖して、10個のプレートを得た。続いて、細胞を継代し、10個の15cmプレートに播種し、それらが約80コンフルエンスに達するまで培養してから、スピナーフラスコに播種した。
【0177】
3Dスフィア形成条件
筋芽細胞を、細胞100万個/mlの密度で125mlスピナーフラスコ(Corning)に播種する。フラスコの回転速度を55rpmに設定する。培地の半分を除去し、それを新鮮培地と交換することにより、培養を2日ごとに供給する。
【0178】
分化条件
スピン培養(スピン培地)中の筋芽細胞は、分化した細胞および増殖性細胞から構成されるミオスフィアまたは骨格筋オルガノイドを形成した。無血清条件(分化培地)における培養後、増殖性筋原細胞は静止し、サテライト細胞状態に戻る。骨格筋オルガノイドをスピン培地で20日間成長させる。分化を10日間行う。
【0179】