(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105077
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】標的治療剤を含む併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20230721BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20230721BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230721BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20230721BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 13/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230721BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230721BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230721BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20230721BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A61K45/06
A61K31/4745
A61P1/00
A61P1/16
A61P1/18
A61P11/00
A61P13/00
A61P15/00
A61P19/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61P43/00 105
A61K45/00 101
A61K31/513
A61K31/519
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093078
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2019570040の分割
【原出願日】2018-06-19
(31)【優先権主張番号】62/522,323
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/679,224
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522330762
【氏名又は名称】ティーブイエイ (エイビーシー) エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】TVA(ABC),LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ウースター、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ウェイレン、ケリー
(72)【発明者】
【氏名】シムコックス、メアリー
(72)【発明者】
【氏名】アランド、レイラ
(72)【発明者】
【氏名】ビロドー、マーク ティ.
(72)【発明者】
【氏名】カディヤラ、スダカル
(72)【発明者】
【氏名】ペリーノ、サマンサ
(57)【要約】
【課題】本発明は、概して、少なくとも2つの異なる治療薬を投与することを含む、がんを治療するための併用療法に関する。併用療法の成分及び併用療法の使用方法が提供される。
【解決手段】がんを治療する方法は:(A)有効成分として、成分I、又はそのプロドラッグ、誘導体、又は薬学的に許容される塩を含む第1の成分;及び(B)有効成分として、成分II、又はそのプロドラッグ、誘導体、又は薬学的に許容される塩を含む第2の成分を投与することを含む。成分Iは、標的化部分に結合した有効成分又はそのプロドラッグを含むコンジュゲートであり、有効成分はチューブリン阻害剤又はそのプロドラッグを含む。成分IIは成分Iとは異なる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを治療する方法であって:(A)有効成分として、成分I、又はそのプロドラッグ、誘導体、又は薬学的に許容される塩を含む第1の成分;及び(B)有効成分として、成分II、又はそのプロドラッグ、誘導体、又は薬学的に許容される塩を含む第2の成分を投与することを含み、
成分Iは、標的化部分に結合した有効成分又はそのプロドラッグを含むコンジュゲートであり、前記有効成分はチューブリン阻害剤又はそのプロドラッグを含み、
成分IIは成分Iとは異なる、方法。
【請求項2】
成分Iの標的化部分は、ガネテスピブ又はその互変異性体、アナログ、又は誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分Iの有効成分は、SN-38又はそのアナログ又は誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
成分Iは、
【化1】
の構造を有するコンジュゲート1である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
成分IIはチェックポイント阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
成分IIはCTLA-4アンタゴニストを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
成分IIはPD-1及びPD-L1/2チェックポイント経路を遮断する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
成分IIはPD-1アンタゴニストを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
成分IIはPD-L1アンタゴニストを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
成分IIは5FU及び/又はロイコボリンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
成分Iはコンジュゲート1であり、成分IIはCTLA-4アンタゴニスト、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、EZH阻害剤、及び5FU及び/又はロイコボリンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
成分Iは成分IIの前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
成分IIは成分Iの前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
がんは、肺がん、乳がん、大腸がん、卵巣がん、膵臓がん、大腸がん、膀胱がん、前立腺がん、子宮頸がん、腎臓がん、白血病、中枢神経系がん、骨髄腫、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
がんは膵臓がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
がんは肺がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
がんは大腸がんである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、がんを治療するための併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学療法は非常に進歩しているが、現在利用可能な治療剤及び治療法は満足のいくものではなく、化学療法で治療された病気(がんなど)と診断された大多数の患者の予後は依然として不十分である。多くの場合、化学療法の適用可能性及び/又は有効性、ならびに潜在的に毒性のある部分(moieties)を利用する他の療法及び診断は、望ましくない副作用によって制限される。
【0003】
多くの病気や障害は、特定の種類の細胞に特定のタンパク質が高レベルで存在することを特徴としている。場合によっては、これらの高レベルのタンパク質の存在は過剰発現によって引き起こされる。歴史的に、これらのタンパク質のいくつかは、治療用分子の有用な標的であるか、病気の検出のためのバイオマーカーとして使用されてきた。有用な治療標的として認識されている過剰発現細胞内タンパク質の1つの分類は、熱ショックタンパク質として知られている。
【0004】
熱ショックタンパク質(HSP)は、温度上昇ならびに他の環境ストレス、例えば紫外線、栄養欠乏、及び酸素欠乏などに応答して上方制御されるタンパク質の一分類である。HSPには、他の細胞タンパク質(クライアントタンパク質と呼ばれる)に対するシャペロンとして機能し、適切なフォールディング及び修復を促進し、ミスフォールディングされたクライアントタンパク質のリフォールディングを助けるなど、多くの既知の機能がある。HSPにはいくつかの既知のファミリーがあり、それぞれが独自のクライアントタンパク質のセットを持っている。Hsp90は最も豊富なHSPファミリーの1つであり、ストレス下にない細胞のタンパク質の約1~2%を占め、ストレス下の細胞では約4~6%に増加する。
【0005】
Hsp90を阻害すると、ユビキチンプロテアソーム経路を介してそのクライアントタンパク質が分解される。他のシャペロンタンパク質とは異なり、Hsp90のクライアントタンパク質は、主にシグナル伝達に関与するタンパク質キナーゼ又は転写因子であり、そのクライアントタンパク質の多くはがんの進行に関与することが示されている。Hsp90は、正常な真核細胞の生存に必要であることが突然変異解析により示されている。しかし、Hsp90は多くの腫瘍タイプで過剰発現しており、これはがん細胞の生存に重要な役割を果たしている可能性があり、がん細胞は正常細胞よりもHsp90の阻害に対してより感受性が高い可能性があることを示している。例えば、がん細胞は通常、フォールディングがHsp90に依存する多数の変異及び過剰発現腫瘍性タンパク質を有する。さらに、低酸素、栄養欠乏、アシドーシスなどにより、腫瘍の環境は通常過酷であるため、腫瘍細胞は生存のために特にHsp90に依存している可能性がある。さらに、Hsp90の阻害は、多くの腫瘍性タンパク質ならびにホルモン受容体、転写因子の同時阻害を引き起こすため、抗がん剤の魅力的な標的である。上記の点から、Hsp90は、ガネテスピブ、AUY-922、及びIPI-504などのHsp90阻害剤(Hsp90i)化合物を含めて、医薬品開発の魅力的な標的となってきた。同時に、当初期待されていたこれらの化合物のうちのいくつか、例えばゲルダナマイシンなどは、それらの化合物の毒性プロファイルのために進捗が遅れてきた。これまでに開発されたHsp90i化合物は、抗がん剤として大いに期待されていると考えられるが、がん細胞におけるHsp90の遍在性を活用する他の方法は、これまで未開拓のままであった。したがって、特定の疾患又は障害に関連する細胞で過剰発現されるHsp90などのタンパク質を選択的に標的とする治療分子の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、がんなどの過剰増殖性疾患を有する患者を治療する方法に関し、その方法は患者に:(A)有効成分として、成分I、又はその薬学的に許容される塩を含む第1の成分;及び(B)有効成分として、成分II、又はその薬学的に許容される塩を含む第2の成分を投与することを含み、前記有効成分の量は、その組合せが前記過剰増殖性疾患の治療において治療上有効となるような量である。成分Iは、熱ショックタンパク質90(HSP90)を標的とするコンジュゲートを含んでもよい。
【0007】
本開示はさらに、以下を含む組成物に関する:(A)有効成分として、成分I、又はその薬学的に許容される塩を含む第1の成分;及び(B)有効成分として、成分I、又はその薬学的に許容される塩を含む第2の成分。
【0008】
本開示はまた、以下を含むキットに関する:(A)有効成分として、成分I、又はその薬学的に許容される塩を含む第1の成分;及び(B)有効成分として、成分II、又はその薬学的に許容される塩を含む第2の成分。
【0009】
さらに、本開示は、成分I、又はその薬学的に許容される塩、及び成分II、又はその薬学的に許容される塩の、過剰増殖性疾患を治療するための使用に関する。
本開示のさらなる態様は、過剰増殖性疾患の治療薬の調製のための、成分I、又はその薬学的に許容される塩、及び成分II、又はその薬学的に許容される塩の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例5に記載されるように、ビヒクル対照、コンジュゲート1単独、タラゾパリブ単独、及びタラゾパリブと組み合わせたコンジュゲート1での治療後の平均腫瘍体積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、がんなどの過剰増殖性疾患を治療するための少なくとも2つの異なる治療薬の併用療法に関する。異なる治療薬はそれぞれ、併用療法の「成分」と呼ばれる。本発明の併用療法は、様々な種類のがんの治療において非常に効果的であり、単独で投与される各成分の活性と比較して増強された効果を示す。本明細書で使用する「併用療法」又は「併用治療」又は「組み合わせて」という用語は、少なくとも2つの異なる治療薬による同時又は並行治療の任意の形態を指す。過剰増殖性疾患には、制御されない細胞増殖を特徴とする疾患又は病気が含まれる。
【0012】
併用療法の成分は、同時に、連続して、又は任意の順序で投与され得る。これらの成分は、異なる用量で、異なる投与頻度で、又は異なる経路を介して、適切なように投与することができる。
【0013】
本明細書で使用する「同時に投与される」という用語は具体的には限定されず、併用療法の成分が実質的に同時に、例えば、混合物として、又は直後の順番で投与されることを意味する。
【0014】
本明細書で使用する「連続投与」という用語は具体的には限定されず、併用療法の成分が同時にではなく、次々に、又は特定の時間間隔でグループに分けて投与されることを意味する。時間間隔は、併用療法の成分のそれぞれの投与間で同じでも異なっていてもよく、例えば、2分~96時間、1~7日、又は1、2又は3週間の範囲から選択することができる。一般に、投与間の時間間隔は、数分から数時間の範囲、例えば2分~72時間、30分~24時間、又は1~12時間の範囲であり得る。さらなる例には、24~96時間、12~36時間、8~24時間、及び6~12時間の範囲の時間間隔が含まれる。いくつかの実施形態では、成分Iは成分IIの前に投与される。いくつかの実施形態では、成分IIは成分Iの前に投与される。
【0015】
各成分のモル比は特に限定されない。例えば、2つの成分が組成物中で組み合わされる場合、2つの成分間のモル比は、1:500~500:1、又は1:100~100:1、又は1:50~50:1、又は1:20~20:1、又は1:5~5:1の範囲、又は1:1であり得る。組成物中に2つ以上の成分が組み合わされる場合、同様のモル比が適用される。各成分は、独立して、組成物の約1%~10%、又は約10%~約20%、又は約20%~約30%、又は約30%~40%、又は約40%~約50%、又は約50%~60%、又は約60%~70%、又は約70%~80%、又は約80%~90%、又は約90%~99%の所定のモル重量パーセントを含むことができる。
【0016】
I.併用療法の成分
本開示の一態様は、がんなどの過剰増殖性疾患を有する対象を治療する併用療法であって、患者に:(A)有効成分として、成分I(又は化合物I)、又はそのプロドラッグ、誘導体、又は薬学的に許容される塩を含む第1の成分;及び(B)有効成分として、成分II(又は化合物II)、又はそのプロドラッグ、誘導体、又は薬学的に許容される塩を含む第2の成分を投与することを含み、前記有効成分の量は、その組合せが前記過剰増殖性疾患の治療において治療上有効となるような量である併用療法を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態において、成分Iは、標的化部分に結合した有効成分又はそのプロドラッグを含む小分子コンジュゲートであり、標的化部分は熱ショックタンパク質90(HSP90)に結合する。
【0018】
成分IIは成分Iとは異なる。いくつかの実施形態において、成分IIは、がんを治療する治療薬、例えばチェックポイント阻害剤を含む。チェックポイント阻害剤は、本明細書で使用する場合、腫瘍微小環境における免疫抑制シグナルを遮断する有効成分を指す。いくつかの実施形態において、有効成分は、エフェクター免疫細胞に対する阻害シグナルに拮抗し又はそれを低減し得る共阻害チェックポイント分子(例えば、CTLA-4、PD1、PD-L1)に特異的な拮抗剤であってもよい。いくつかの実施形態において、有効成分は、免疫抑制酵素(例えば、ARG及びIDO)及びサイトカイン(例えばIL-10)、ケモカイン、及び腫瘍微小環境内の他の可溶性因子(例えば、TGF-β及びVEGF)の活性を阻害し低下させることができる阻害剤であり得る。
【0019】
本明細書で使用する「小分子」という用語は、分子量が2000g/mol未満、1500g/mol未満、1000g/mol未満、800g/mol未満、又は500g/mol未満の有機分子を指す。小分子は非ポリマー性及び/又は非オリゴマー性である。
【0020】
本明細書で使用する「標的化部分」という用語は、特定の場所に結合又は局在化する部分を指す。上記部分は、例えば、タンパク質、核酸、核酸アナログ、炭水化物、又は小分子であり得る。上記場所は、組織、特定の細胞種、又は細胞内区画であり得る。いくつかの実施形態では、標的化部分は、タンパク質などの選択された分子に特異的に結合することができる。
【0021】
いくつかの場合において、コンジュゲートは、約50,000Da未満、約40,000Da未満、約30,000Da未満、約20,000Da未満、約15,000Da未満、約10,000Da未満、約8,000Da、約5,000Da未満、又は約3,000Da未満の分子量を有し得る。いくつかの場合において、コンジュゲートは、約1,000Da~約50,000Da、約1,000Da~約40,000Da、いくつかの実施形態では約1,000Da~約30,000Da、いくつかの実施形態では約1,000Da~約50,000Da、約1,000Da~約20,000Da、いくつかの実施形態では約1,000~約15,000Da、一部の実施形態では約1,000Da~約10,000Da、いくつかの実施形態では約1,000Da~約8,000Da、いくつかの実施形態では約1,000Da~約5,000Da、及びいくつかの実施形態では約1,000Da~約3,000Daの分子量を有し得る。コンジュゲートの分子量は、コンジュゲートの式の各原子の原子量に各原子の数を乗じた合計として計算することができる。また、質量分析、NMR、クロマトグラフィー、光散乱、粘度、及び/又は当技術分野で知られている他の方法によって測定することもできる。分子量の単位は、g/mol、ダルトン(Da)、又は原子質量単位(amu)であってもよく、1g/mol=1Da=1amuであることは、当技術分野で知られている。
【0022】
成分I及び成分IIは、同時に、連続して、又は任意の順序で投与することができる。それらは、異なる用量で、異なる投与頻度で、又は異なる経路を介して、適切なように投与することができる。
【0023】
成分I
いくつかの実施形態において、成分Iは、標的化部分に結合した有効成分又はそのプロドラッグを含むコンジュゲートであり、標的化部分は、HSP90などの熱ショックタンパク質に結合する。標的化部分は、ガネテスピブ、ゲルダナマイシン(タネスピマイシン)、IPI-493、マクベシン、トリプテリン、タネスピマイシン、17-AAG(アルベスピマイシン)、KF-55823、ラジシコール、KF-58333、KF-58332、17-DMAG、IPI-504、BIIB-021、BIIB-028、PU-H64、PU-H71、PU-DZ8、PU-HZ151、SNX-2112、SNX-2321、SNX-5422、SNX-7081、SNX-8891、SNX-0723、SAR-567530、ABI-287、ABI-328、AT-13387、NSC-113497、PF-3823863、PF-4470296、EC-102、EC-154、ARQ-250-RP、BC-274、VER-50589、KW-2478、BHI-001、AUY-922、EMD-614684、EMD-683671、XL-888、VER-51047、KOS-2484、KOS-2539、CUDC-305、MPC-3100、CH-5164840、PU-DZ13、PU-HZ151、PU-DZ13、VER-82576、VER-82160、VER-82576、VER-82160、NXD-30001、NVP-HSP990、SST-0201CL1、SST-0115AA1、SST-0221AA1、SST-0223AA1、ノボビオシン、ヘルビンマイシンA、ラジシコール、CCT018059、PU-H71、セラストロール、又はそれらの互変異性体、アナログ、又は誘導体から選択され得る。
【0024】
いくつかの例では、成分Iは有効成分として、SN-38又はイリノテカン、レナリドミド、ボリノスタット、5-フルオロウラシル(5-FU)、アビラテロン、ベンダムスチン、クリゾチニブ、ドキソルビシン、ペメトレキセド、フルベストラント、トポテカン、血管破壊剤(VDA)、又はそれらのフラグメント、誘導体又はアナログを含む。
【0025】
いくつかの例では、成分Iは、2013年4月16日に出願されたPCT出願番号PCT/US13/36783(WO2013/158644)の任意のコンジュゲートであってもよく、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
一例では、成分Iは、ガネテスピブ又はその互変異性体を標的化部分として含み、SN-38を有効成分として含むコンジュゲートである。成分Iは、下記の構造を有するコンジュゲート1であってもよい:
【0027】
【0028】
((S)-4,11-ジエチル-4-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-9-イル4-(2-(5-(3-(2,4-ジヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-5-ヒドロキシ-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-1H-インドール-1-イル)エチル)ピペリジン-1-カルボキシレート)又はその互変異性体。
【0029】
コンジュゲート1は、市販のトポイソメラーゼI阻害剤であるイリノテカンの活性代謝物であるSN-38に切断可能なリンカーを介して結合させたガネテスピブで構成される、注射可能な合成小分子薬物コンジュゲートである。このコンジュゲートは、HSP90の増強された腫瘍標的化及び優先的な腫瘍貯留特性を活用してSN-38を送達し、広範な前臨床抗腫瘍活性をもたらす。
【0030】
成分II
いくつかの実施形態では、成分IIは、成分Iとは異なるがんを治療する治療薬を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、成分IIは化学療法剤であり得る。いくつかの実施形態において、成分IIは、前立腺がん、乳がん、非小細胞肺がん(大細胞肺がん)、小細胞肺がん、又は卵巣がんを治療するために使用される化学療法薬であり得る。
【0032】
いくつかの例では、成分IIはポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤であり得る。いくつかのがんはBRCA1レベルが高く、PARP阻害に反応しない。HSP90結合成分IはDNA損傷効果を有してもよく、細胞をPARP阻害に対して感受性にさせ得る。PARP阻害剤の非限定的な例には、タラゾパリブ(BMN-673)、オラパリブ(AZD-2281)、ニラパリブ(MK-4827)、イニパリブ(BSI201)、ベリパリブ(ABT-888)、ルカパリブ(AG014699、PF-01367338)、又はCEP9722が含まれる。
【0033】
【0034】
いくつかの実施形態では、成分IIは、がん患者に支持療法を提供し、及び/又は成分Iの副作用を軽減し得る。いくつかの実施形態では、成分IIはがん症状緩和薬である。上記症状緩和薬は、下痢や、化学療法又は放射線療法の副作用を軽減し得る。症状緩和薬の非限定的な例には、オクトレオチド又はランレオチド;インターフェロン、シポヘプタジン(cypoheptadine)又は他の抗ヒスタミン薬;及び/又は、カルチノイド症候群の症状緩和薬、例えばテロトリスタット又はテロトリスタットエチプレート(LX1032、Lexicon(商標))が含まれる。
【0035】
いくつかの実施形態において、成分IIは、5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン(フォリン酸)、イリノテカン、又はオキサリプラチン、又はそれらの誘導体又は任意の組合せであってもよい。
【0036】
いくつかの実施形態において、成分IIはチェックポイント阻害剤であり得る。腫瘍細胞は、それらが免疫監視から逃れるのを助ける免疫抑制微小環境を誘発することができる。腫瘍微小環境における免疫抑制は、内因性の免疫抑制メカニズムによって誘発されるか、腫瘍によって直接誘発される。併用療法の成分IIは、腫瘍微小環境におけるこのような免疫抑制シグナルを遮断するチェックポイント阻害剤を含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、成分IIは、エフェクター免疫細胞(例えば、細胞傷害性T細胞及びナチュラルキラー細胞)に対する阻害シグナルに拮抗し又はそれを低減することができる共阻害チェックポイント分子に特異的な拮抗剤であり得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、成分IIは、免疫抑制酵素(例えば、ARG及びIDO)及びサイトカイン(例えばIL-10)、ケモカイン及び腫瘍微小環境内の他の可溶性因子(例えば、TGF-β及びVEGF)の活性を阻害及び低下させることができる阻害剤であり得る。
【0039】
腫瘍微小環境
腫瘍細胞を排除するための適応免疫応答では、細胞傷害性T細胞の活性化には、特定の抗原からの一次シグナル(すなわち、最初のシグナル)及び1つ以上の共刺激シグナル(すなわち、二次シグナル)の両方が必要である。抗原提示細胞(APC、例えば樹状細胞(DC))は腫瘍関連抗原(TAA)を処理し、TAA(すなわちエピトープ)に由来する抗原性ペプチドをペプチド/MHC分子(クラスI/II)(p/MHC)複合体として細胞表面に提示し、T細胞は、p/MHC複合体を認識するT細胞受容体(TCR)を介してTAAを担持したAPCに結合する。このライゲーションは、がん特異的な細胞傷害性T細胞を活性化する一次シグナルである。さらに、二次共刺激シグナルが、T細胞上の共刺激受容体及びAPC上のそれらのリガンド(又は共受容体)によって提供される。共刺激受容体とそのリガンドとの間の相互作用は、T細胞の活性化を調節し、その活性を高めることができる。CD28、4-1BB(CD137)、及びOX40は、それぞれAPC上のB7-1/2(CD80/CD86)、4-1BB(CD137L)、及びOX-40Lに結合する、T細胞上のよく研究された共刺激受容体である。通常の状況では、過剰なT細胞の増殖を防ぎ、免疫のバランスをとるために、共抑制シグナル(CTLA-4など)が活性化T細胞によって誘導及び発現され、APC上のB7リガンドへの結合においてCD28と競合する。これにより、通常の状況でT細胞の反応を緩和できる。しかし、がんによっては、腫瘍細胞及び腫瘍微小環境に浸潤している制御性T細胞がCTLA-4を恒常的に発現し得る。この共阻害シグナルは、共刺激シグナルを抑制し、したがって、抗がん免疫応答を激減させる。腫瘍細胞によるこの免疫抑制メカニズムは、免疫チェックポイント又はチェックポイント経路と呼ばれる。
【0040】
CTLA-4シグナルに加えて、活性化T細胞に別の抑制性受容体PD-1(プログラムドデス1)を発現するように誘導することもできる。通常の状況では、免疫応答が進行すると、CD4+及びCD8+Tリンパ球はこれらの抑制性チェックポイント受容体(例えばPD-1)の発現を上方制御する。炎症症状はIFN放出を促し、これは末梢組織でPD-1リガンドであるPD-L1(B7-H1としても知られている)及びPD-L2(B7-DCとしても知られている)の発現を上方制御し、自己免疫を防ぐために免疫寛容を維持する。ヒトのがんの多くは、腫瘍微小環境でPD-L1を発現することが実証されている(例えば、Zou及びChen、inhibitory B7-family in the tumor microenvironment.2008,Nat Rev Immunol、8:467-477)。PD-1/PD-L1の相互作用は、腫瘍微小環境と非常に活発であり、T細胞の活性化を阻害する。
【0041】
腫瘍微小環境における他の同定された共抑制シグナルには、TIM-3、LAG-3、BTLA、CD160、CD200R、TIGIT、KLRG-1、KIR、CD244/2B4、VISTA及びAra2Rが含まれる。
【0042】
さらに、腫瘍微小環境は、制御性T細胞(Treg)、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)及び腫瘍随伴マクロファージ(TAM);可溶性因子、例えばインターロイキン6(IL-6)、IL-10、血管内皮成長因子(VEGF)、形質転換成長因子ベータ(TGF-β)などの抑制要素を含んでいる。IL-10、TGF-β、及びVEGFが抗がん免疫応答の発生を打ち消す重要なメカニズムは、樹状細胞(DC)の分化、成熟、トラフィキング、及び抗原提示の阻害によるものである(Gabrilovich D:Mechanisms and functional significance of tumour-induced dendritic-cell defects、Nat Rev Immunol、2004、4:941-952)。
【0043】
制御性T細胞(Treg):CD4+CD25+Treg細胞は、胸腺由来のリンパ球の特有の集団である。フォークヘッドボックス転写因子(Foxp3)でマークされたCD4+CD25+Treg細胞は、自己寛容の維持に重要な役割を果たし、自己免疫を抑制し、臓器移植及び腫瘍免疫における免疫応答を調節する。腫瘍の発達は、しばしばCD4+CD25+FoxP3+Treg細胞を腫瘍領域に引き付ける。腫瘍浸潤制御性T細胞は、IL-10やTGFβなどの抑制性サイトカインを分泌して、自己免疫及び慢性炎症反応を抑制し、腫瘍の免疫寛容を維持する(Unittら、Compromised lymphocytes infiltrate hepatocellular carcinoma:the T-regulatory cells.Hepatology.2005;41(4):722-730)。
【0044】
骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC):MDSCは不均質な細胞のグループであり、悪性腫瘍関連炎症の特徴として、及びがんにおけるT細胞抑制を誘導する主要なメディエーターとして見なすことができる。MDSCは多くの悪性領域に見られ、表現型によって顆粒球(G-MDSC)及び単球(Mo-MDSC)のサブグループに分類される。MDSCはT制御性細胞を誘導し、T細胞耐性を生成することができる。さらに、MDSCはTFG-β及びIL-10を分泌し、IFN-γ又は活性化T細胞の存在下で一酸化窒素(NO)を生成する。
【0045】
腫瘍関連マクロファージ(TAM):末梢血単球に由来するTAMは、腫瘍微小環境からの異なるシグナルに対して異なる機能を示す多機能細胞である。腫瘍微小環境に関連する細胞型の中で、腫瘍の進行に最も影響を与えるのはTAMである。腫瘍細胞外マトリックス、無酸素環境及び腫瘍細胞から分泌されるサイトカインなどの微小環境刺激に応答して、マクロファージはM1(古典的)又はM2(代替)活性化を受ける。ほとんどの悪性腫瘍において、TAMはM2マクロファージの表現型を有する。
【0046】
別の免疫抑制メカニズムは、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)酵素によるトリプトファンの異化に関連している。局所免疫抑制は、腫瘍微小環境内及びセンチネルリンパ節(SLN)内の悪性細胞によって誘発される能動的なプロセスである(Gajewskiら、Immune suppression in the tumor microenvironment.J Immunother、2006;29(3):233-240;及びZou W.、Immunosuppressive networks in the tumor environment and their therapeutic relevance、Nat Rev Cancer、2005;5(4):263-274)。研究は、局所的免疫抑制に関与する要素の一部として、腫瘍流入領域リンパ節内でT細胞受容体ゼータサブユニット(TCR)が下方制御され、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)が上方制御されることを示している。
【0047】
浸潤制御性免疫細胞により仲介される抑制効果に加えて、腫瘍細胞自体も細胞傷害性T細胞の活性化及び機能を積極的に阻害する多くの分子を分泌することができる。
一部の腫瘍では、CD28などのT細胞上の共刺激受容体の関与がない状況でのTCRライゲーションに起因するT細胞内因性のアネルギー及び枯渇が一般的である。
【0048】
本開示において、併用療法の成分IIは、1つ以上の免疫抑制機構を阻害し、腫瘍細胞を排除するためのがん特異的免疫応答を増強する。
チェックポイント阻害剤
いくつかの実施形態では、成分IIは、チェックポイント経路を遮断する活性剤などのチェックポイント阻害剤を含む。
【0049】
適応免疫応答中、細胞傷害性T細胞の活性化は、抗原提示細胞上の抗原ペプチド/MHC分子複合体とT細胞上のT細胞受容体(TCR)との間の一次シグナルによって媒介される。二次共刺激シグナルも、活性T細胞にとって重要である。二次シグナルの非存在下での抗原提示は、T細胞、例えばCD4+Tヘルパー細胞を活性化するのに十分ではない。よく知られている共刺激シグナルには、T細胞上の共刺激受容体CD28と、抗原提示細胞(APC)上のそのリガンドB7-1/CD80及びB7-2/CD86が関与する。B7-1/2とCD28との相互作用は、抗原特異的なT細胞増殖及びサイトカイン産生を増強する。免疫応答を厳密に制御するために、T細胞はCTLA-4(抗細胞傷害性Tリンパ球抗原4)も発現する。CTLA-4は、T細胞上の受容体CD28を介したCD80及びCD86媒介共刺激の共阻害競合物質であり、T細胞の活性化及び機能を効果的に阻害することができる。CD28がAPC表面のB7-1/2と相互作用すると、CTLA-4発現がしばしば誘導される。CTLA-4は、共刺激受容体CD28よりも共刺激リガンドB7-1/2(CD80/CD86)への結合親和性が高いため、CD28とB7-1/2との間の相互作用を活性化するT細胞から、CTLA-4とB7-1/2との間の阻害性シグナル伝達へとバランスを変化させることで、T細胞活性化の抑制をもたらす。CTLA-4の上方制御は、主にリンパ節でのT細胞の初期活性化中である。
【0050】
CTLA-4に特異的に結合する抗体は、この抑制チェックポイントを阻害するために使用されている。抗CTLA-4IgG1ヒト化抗体:イピリムマブはCTLA-4に結合し、CD28/B7刺激シグナル伝達の阻害を防ぐ。これらはリンパ器官でのT細胞の活性化の閾値を下げることができ、腫瘍微小環境内のT制御性細胞を枯渇させることもできる(Simpsonら、Fc-dependent depletion of tumor-infiltrating regulatory T cells co-defines the efficacy of anti-CTLA-4 therapy against melanoma.J Exp.Med.、2013、210:1695-1710)。イピリムマブは、最近、転移性黒色腫患者の治療薬として米国食品医薬品局によって承認された。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示の併用療法の成分IIは、CTLA-4と高い親和性で結合し、B7-1/2(CD80/86)とCTLA-4との相互作用を防ぐことができるCTLA-4に対する拮抗剤、例えば、抗体、抗体の機能的フラグメント、ポリペプチド、又はポリペプチドの機能的フラグメント、又はペプチドなどを含んでもよい。一例において、CTLA-4アンタゴニストは、アンタゴニスト抗体、又はその機能的フラグメントである。適切な抗CTLA-4アンタゴニスト抗体には、限定するものではないが、抗CTLA-4抗体、ヒト抗CTLA-4抗体、哺乳動物抗CTLA-4抗体、ヒト化抗CTLA-4抗体、モノクローナル抗CTLA-4抗体、ポリクローナル抗CTLA-4抗体、キメラ抗CTLA-4抗体、MDX-010(イピリムマブ)、トレメリムマブ(完全ヒト化)、抗CD28抗体、抗CTLA-4アドネクチン、抗CTLA-4ドメイン抗体、一本鎖抗CTLA-4抗体フラグメント、重鎖抗CTLA-4フラグメント、軽鎖抗CTLA-4フラグメント、及び米国特許第8,748,815;8,529,902;8,318,916;8,017,114;7,744,875;7,605,238;7,465,446;7,109,003;7,132,281;6,984,720;6,682,736;6,207,156;5,977,318号;及び欧州特許第EP1212422B1号;及び米国特許出願公開第US2002/0039581及びUS2002/086014号;及びHurwitzら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1998、95(17):10067-10071に開示されている抗体が含まれ、それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0052】
追加の抗CTLA-4拮抗剤には、限定するものではないが、CTLA-4がリガンドCD80/86に結合する能力を妨害することができる任意の阻害剤が含まれる。
抑制性チェックポイント受容体PD-1(プログラムドデス-1)は、活性化T細胞上に発現し、通常は上皮細胞、内皮細胞、及び免疫細胞(例えば、DC、マクロファージ及びB細胞)上に発現するプログラムドデスリガンド1及び2(PD-L1、B7-H1、CD274としても知られている)及びPD-L2(B7-DC、CD273としても知られている)によるライゲーションの後、T細胞の抑制及びアポトーシスを誘導することができる。PD-1は主に腫瘍組織を含む末梢組織のエフェクター期にT細胞機能を調節する。PD-1は、活性化T細胞に加え、B細胞及び骨髄細胞上に発現している。多くのヒト腫瘍細胞はPD-L1を発現し、この調節機能を乗っ取って細胞傷害性Tリンパ球による免疫認識と破壊を回避することができる。腫瘍関連PD-L1はエフェクターT細胞のアポトーシスを誘導することが示されており、がんによる免疫回避に寄与すると考えられている。
【0053】
PD-1/PD-L1免疫チェックポイントは、複数の腫瘍タイプ、例えば黒色腫に関与していると考えられる。PD-L1は、腫瘍細胞に免疫逃避を提供するだけでなく、活性化されたT細胞のアポトーシススイッチをオンにする。この相互作用をブロックする治療法の有望な臨床活性が、いくつかの腫瘍タイプで実証されている。
【0054】
成分IIは、アンタゴニストペプチド/抗体及び可溶性PD-L1/2リガンドを含むPD-1経路を遮断する活性剤を含む。そのような活性剤の非限定的な例を表1に挙げる。
【0055】
【0056】
本開示によれば、成分IIは、PD-1及びPD-L1/2阻害性チェックポイント経路に対する拮抗剤を含む。一実施形態では、拮抗剤は、高い親和性でPD-1又はPD-L1/L2に特異的に結合するアンタゴニスト抗体、又はその機能的フラグメントであり得る。PD-1抗体は、米国特許第:8,779,105;8,168,757;8,008,449;7,488,802;6,808,710号;及びPCT公開番号:WO2012/145493に教示されている抗体であってもよく、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。高い親和性でPD-L1に特異的に結合することができる抗体は、米国特許第:8,552,154;8,217,149;7,943,743;7,635,757号;米国特許出願公開第2009/0317368号、及びPCT公開番号WO2011/066389及びWO2012/145493に開示されているものであってもよく、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの例では、成分IIは、米国特許第8,008,449号に開示されている17D8、2D3、4H1、5C4(ニボルマブ又はBMS-936558としても知られている)、4A11、7D3及び5F4;AMP-224、ピジリズマブ(CT-011)、及びペムブロリズマブから選択される抗体を含む。他の例では、抗PD-1抗体は、ヒトモノクローナル抗PD-1抗体のバリアント、例えば、米国特許出願公開第2015/125463号に開示されているような、特定のVH/VLペアリングからのVH配列が構造的に類似したVH配列に置換されたか、又は特定のVH/VLペアリングからのVL配列が構造的に類似したVL配列に置換された「混合及び適合化」抗体バリアントであってもよく、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0057】
いくつかの実施形態において、成分IIは、高い親和性でPD-L1に結合し、PD-1/PD-L1/2間の相互作用を妨害する拮抗抗体を含む。そのような抗体には、限定するものではないが、米国特許第7,943、743号(その内容は、参照によりその全体が組み込まれる)に開示された3G10、12A4(BMS-936559とも呼ばれる)、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、及び13G4、MPDL3280A、MEDI4736、及びMSB0010718が含まれる。別の例では、抗PD-L1抗体は、ヒトモノクローナル抗PD-L1抗体のバリアント、例えば、米国特許出願公開第2015/125463号に開示されているような、特定のVH/VLペアリングからのVH配列が構造的に類似したVH配列に置換されたか、又は特定のVH/VLペアリングからのVL配列が構造的に類似したVL配列に置換された「混合及び適合化」抗体バリアントであってもよく、その内容は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0058】
いくつかの実施形態において、成分IIは、高い親和性でPD-L2に結合し、PD-1/PD-L1/2間の相互作用を妨害する拮抗抗体を含む。例示的な抗PD-L2抗体には、限定するものではないが、Rozaliらによって教示された抗体(Rozaliら、Programmed Death Ligand 2 in Cancer-Induced Immune Suppression、Clinical and Developmental Immunology、2012、第2012巻(2012年)、記事ID656340)、及び米国特許第8,552,154号(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているヒト抗PD-L2抗体が含まれ得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、成分IIは、PD-1、PD-L1及び/又はPD-L2により誘導される免疫抑制シグナルを阻害する化合物、例えば、Sasikumarら(Aurigene Discovery Tech.)の米国特許第9233940号、SasikumarらのWO2015033303に開示されている環状ペプチドミメティック化合物;SasikumarらのWO2015036927に開示されている免疫調節ペプチドミメティック化合物;GovindanらのUS2015007302に開示されている1,2,4-オキサジアゾール誘導体;SasikumarらのWO2015033301に開示されている1,3,4-オキサジアゾール及び1,3,4-チアジアゾール化合物;又は、SasikumarらのWO2015044900に開示されている式(I)のペプチド誘導体の治療的免疫調節化合物及び誘導体又は医薬用塩又は式(I)のペプチド誘導体の立体異性体を含み、その各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0060】
他の実施形態において、成分IIは、PD-L1及びPD-L2リガンドの両方に結合親和性を有する抗体、例えば、PCT公開番号WO2014/022758に開示されている抗PD-L1及びPD-L2抗体の単剤を含み、その内容は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0061】
いくつかの実施形態において、成分IIは、抗PD-1抗体、PD-L1抗体及びPD-L2抗体から選択される2つ以上の抗体を含む。一例において、抗PD-L1抗体及び抗PD-L2抗体は、リンカーを介して単一のコンジュゲートに含まれてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、成分IIは、PD-1及びPD-L1/2媒介性の負のシグナル伝達を同時に遮断することができる調節剤を含む。この調節剤は非抗体剤であってもよい。いくつかの態様では、非抗体剤は、PD-L1タンパク質、可溶性PD-L1フラグメント、バリアント、及びそれらの融合タンパク質であってもよい。非抗体剤は、PD-L2タンパク質、可溶性PD-L2フラグメント、バリアント、及びそれらの融合タンパク質であってもよい。PD-L1及びPD-L2ポリペプチド、融合タンパク質、及び可溶性フラグメントは、T細胞においてPD-1を通して生じる阻害性シグナル伝達を、PD-1の内因性リガンド(すなわち、内因性PD-L1及びPD-L2)がPD-1と相互作用するのを防止することにより阻害又は低減することができる。加えて、非抗体剤は、可溶性PD-1フラグメントであってもよく、PD-1のリガンドに結合してT細胞上の内因性PD-1受容体への結合を妨げるPD-1融合タンパク質であってもよい。一例では、PD-L2融合タンパク質はB7-DC-Igであり、PD-1融合タンパク質はPD-1-Igである。別の例において、PD-L1、PD-L2可溶性フラグメントは、それぞれPD-L1及びPD-L2の細胞外ドメインである。一実施形態において、成分IIは、米国特許出願公開第2013/017199号に開示されている非抗体剤を含み、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0063】
CTLA-4及びPD-1に加えて、他の既知の免疫抑制チェックポイントには、TIM-3(T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有分子3)、LAG-3(リンパ球活性化遺伝子-3、CD223としても知られている)、BTLA(B及びTリンパ球アテニュエーター)、CD200R、KRLG-1、2B4(CD244)、CD160、KIR(キラー免疫グロブリン受容体)、TIGIT(免疫グロブリン及びITIMドメインを持つT細胞免疫受容体)、VISTA(T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリン抑制因子)及びA2aR(A2aアデノシン受容体)が含まれる(Ngiowら、Prospects for TIM3 targeted antitumor immunotherapy、Cancer Res.、2011、71(21):6567-6571;Liuら、Immune-checkpoint protein VISTA and PD-1 nonredundantly regulate murine T-cell responses、PNAS、2015、112(21):6682-6687;及びBaitschら、Extended Co-Expression of Inhibitory Receptors by Human CD8 T-Cells Depending on Differentiation、Antigen-Specificity and Anatomical Localization.2012、Plos One、7(2):e30852)。T細胞活性化を同様に調節するこれらの分子は、がん免疫療法の標的として評価されている。
【0064】
TIM-3は、IFN-γ分泌Tヘルパー1(Th1/Tc1)細胞に恒常的に発現する膜貫通タンパク質であり(Monneyら、Th1-specific cell surface protein Tim-3 regulates macrophage activation and severity of an autoimmune disease.Nature.2002、415:536-541)、同様に、DC、単球、CD8+T細胞、及びその他のリンパ球サブセットでも発現している。TIM-3は、エフェクターTh1/Tc1細胞応答を下方制御し、そのリガンドガレクチン-9に結合することでTh1細胞の細胞死を誘導し、末梢性寛容も誘導する阻害分子である(Fourcadeら、Upregulation of Tim-3 and PD-1 expression is associated with tumor antigen-specificCD8+T cell dysfunction in melanoma patients.J experimental medicine.2010;207:2175-2186)。TIM-3をブロックすると、がんワクチンの有効性を高めることができる(Leeら、The inhibition of the T cell immunoglobulin and mucin domain 3(Tim-3)pathway enhances the efficacy of tumor vaccine.Biochem.Biophys.Res Commun、2010、402:88-93)。
【0065】
腫瘍微小環境の低酸素から生成された細胞外アデノシンは、様々な免疫細胞及び内皮細胞に発現するA2a受容体に結合することが示されている。免疫細胞でのA2aRの活性化は、免疫抑制性サイトカイン(例えば、TGF-β、IL-10)の産生の増加、代替免疫チェックポイント経路受容体(例えば、PD-1、LAG-3)の上方制御、制御性T細胞表現型に至らせるCD4+T細胞でのFOXP3発現の増加、及びエフェクターT細胞アネルギーの誘起を誘導する。Beavisらは、A2aR遮断がエフェクターT細胞機能を改善し、転移を抑制することを実証した(Beavisら、Blockade of A2A receptors potently suppresses the metastasis of CD73+ tumors.Proc Natl Acad Sci USA、2013、110:14711-14716)。A2aR阻害シグナルを遮断するために、SCH58261、SYN115、ZM241365及びFSPTPを含むがこれらに限定されないいくつかのA2aR阻害剤が使用される(Leoneら、A2aR antagonists:Next generation checkpoint blockade for cancer immunotherapy、Comput Struct Biotechnol.J2015、13:265-272)。
【0066】
LAG-3は、活性化CD4+及びCD8+T細胞、γδT細胞のサブセット、NK細胞及び制御性T細胞(Treg)に発現するI型膜貫通タンパク質であり、免疫応答を負に調節できる(Jhaら、Lymphocyte Activation Gene-3(LAG-3)Negatively Regulates Environmentally-Induced Autoimmunity、PLos One、2014、9(8):el04484)。LAG-3は、T細胞受容体誘発性カルシウムフラックスを阻害することにより、T細胞の増殖を負に制御することで、メモリーT細胞プールのサイズを制御する。LAG-3シグナル伝達は自己免疫応答のCD4+制御性T細胞抑制に重要であり、LAG-3はCD8+T細胞への直接的な影響を介して自己及び腫瘍抗原に対する寛容を維持する。最近の研究は、PD-1及びLAG-3の両方の遮断が自己免疫のマウスモデルで免疫細胞の活性化を引き起こす可能性があることを示し、これは、LAG-3がチェックポイント遮断のもう1つの重要な潜在的標的となり得ることを支持している。
【0067】
IgスーパーファミリーのメンバーであるBTLAは、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーであるHVEM(ヘルペスウイルス侵入メディエーター、TNFRSF14又はCD270としても知られている)に結合する(Watanabeら、BTLA is a lymphocyte inhibitory receptor with similarities to CTLA-4 and PD-1 Nat Immunol、2003、4670-679。HVEMはT細胞上に発現している(例えばCD8+T細胞)。HVEM-BTLA経路は、T細胞の増殖の制御に抑制的役割を果たす(Wangら、The role of herpesvirus entry mediator as a negative regulator of T cell-mediated responses、J Clin Invest.、2005、115:74-77)。CD160は、HVEMのもう1つのリガンドである。CD160/HVEMの共阻害シグナルは、CD4+ヘルパーT細胞の活性化を阻害できる(Caiら、CD160 inhibits activation of human CD4+T cells through interaction with herpesvirus entry mediator.Nat Immunol.2008;9:176-185)。
【0068】
CD200Rは、骨髄細胞に発現するCD200の受容体である。CD200(OX2)は、多くの細胞で高度に発現される膜糖タンパク質である。研究により、CD200とCD200Rの相互作用が、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の数を増加させ得ることが示された(Holmannovaら、CD200/CD200R paired potent inhibitory molecules regulating immune and inflammatory responses;PartI:CD200/CD200R structure,activation,and function.Acta Medica(Hradec Kralove)2012、55(1):12-17;及びGorczynski、CD200 and its receptors as targets of immunoregulation、Curr Opin Investig Drug、2005、6(5):483-488)。
【0069】
TIGITは、腫瘍浸潤T細胞に高度に発現する共阻害受容体である。腫瘍微小環境では、TIGITはシス型のT細胞上の共刺激分子であるCD226と相互作用するため、CD226の二量体化を妨害する。この阻害効果は、抗腫瘍応用及び他のCD8+T細胞依存性応答を決定的に制限する可能性がある(Johnstoneら、The immunoreceptor TIGIT regulates antitumor and antiviral CD8(+)T cell effecter function、Cancer cell、2014、26(6):923-937)。
【0070】
KIRは、ナチュラルキラー細胞(NK)上に発現する細胞表面タンパク質のファミリーである。それらは、あらゆる細胞タイプで発現されるMHCクラスI分子と相互作用することにより、これらの細胞の殺傷機能を調節し、ウイルス感染細胞又は腫瘍細胞の検出を可能にする。ほとんどのKIRは抑制性であり、これはこれらによるMHC分子の認識がNK細胞の細胞傷害活性を抑制することを意味する(Ivarssonら、Activating killer cell Ig-like receptor in health and disease、Frontier in Immu.2014、5:1-9)。
【0071】
T細胞の活性化に影響を与える追加の共阻害シグナルには、限定するものではないが、KLRG-1、2B4(CD244とも呼ばれる)、及びVISTAが含まれる(Linesら、VISTA is a novel broad-spectrum negative checkpoint regulator for cancer immunotherapy、Cancer Immunol Res.、2014、2(6):510-517)。
【0072】
本開示によれば、成分IIは、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、LAG-3(CD223)、BTLA、CD160、CD200R、TIGIT、KRLG-1、KIR、2B4(CD244)、VISTA、A2aR、及びその他の免疫チェックポイントから選択される共阻害分子のアンタゴニスト又は阻害剤を含む。いくつかの態様において、アンタゴニスト剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、LAG-3(CD223)、BTLA、CD160、CD200R、TIGIT、KRLG-1、KIR、2B4(CD244)、VISTA及びA2aRから選択される共阻害チェックポイント分子に対するアンタゴニスト抗体又はその機能的フラグメントであってもよい。
【0073】
いくつかの実施形態において、成分IIは、LAG-3(CD223)に特異的な拮抗抗体及び/又はその機能的フラグメントを含む。このような拮抗抗体は、LAG-3(CD223)に特異的に結合し、腫瘍における制御性T細胞を阻害する。一例において、それは、米国特許第9,005,629及び8,551,481号に開示されている拮抗性抗LAG-3(CD223)抗体であってもよい。成分IIはまた、米国特許第9,005,629及び8,551,481号(それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示された方法を用いて同定された、CD223の機能に不可欠なLAG-3(CD223)細胞質ドメインのアミノ酸モチーフKIEELEに結合する任意の阻害剤を含んでもよい。LAG-3(CD223)に特異的な他の拮抗抗体には、米国特許出願公開第20130052642号に開示されている抗体が含まれてもよく、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0074】
いくつかの実施形態において、成分IIは、TIM-3に特異的な拮抗抗体及び/又はその機能的フラグメントを含む。そのような拮抗抗体は、TIM-3に特異的に結合し、腫瘍細胞などのTIM-3発現細胞内に内在化して、腫瘍細胞を殺す。他の態様において、TIM-3の細胞外ドメインに特異的に結合するTIM-3特異的抗体は、例えば抗体の非存在下での増殖と比較して、結合時にTIM-3発現細胞の増殖を阻害し、T細胞活性化、エフェクター機能、又は腫瘍部位へのトラフィキングを促進することができる。一例では、拮抗性抗TIM-3抗体は、米国特許第8,841,418;8,709,412;8,697,069;8,647,623;8,586,038;及び8,552,156号に開示されている任意の抗体から選択することができ、これらのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0075】
加えて、拮抗性のTIM-3特異的抗体は、米国特許第8,697,069;8,101,176;及び7,470,428号に開示されているようなモノクローナル抗体8B.2C12、25F.1D6であってもよく、これらのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0076】
他の実施形態において、成分IIは、ガレクチン-9に特異的に結合してTIM-3へのその結合を中和することができる作用剤を含み、その作用剤には、PCT公開番号2015/013389(その内容は、参照によりその全体が組み込まれる)に開示された中和抗体が含まれる。
【0077】
いくつかの実施形態において、成分IIは、米国特許第8,247,537;8,580,259号に開示されている抗体及び抗体の抗原結合部分、米国特許第8,563,694号の完全ヒトモノクローナル抗体、及び米国特許第8,188,232号のBTLAブロッキング抗体を含むがこれらに限定されない、BTLAに特異的な拮抗抗体、及び/又はその機能的フラグメントを含み、これらのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0078】
BTLA及びその受容体HVEMを阻害できる他のさらなる拮抗剤には、PCT公開番号:2014/184360;2014/183885;2010/006071及び2007/010692に開示された作用剤が含まれ、これらのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0079】
特定の実施形態において、成分IIは、KIRに特異的な拮抗抗体、及び/又はその機能的フラグメント、例えば、Bensonら(A phase I trial of the anti-KIR antibody IPH2101 and lenalidomide in patients with relapsed/refractory multiple myeloma,Clin Cancer Res.,2015年5月21日、pii:clincanres.0304.2015)によって教示されたIPH2101を含み、その内容は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0080】
他の実施形態では、アンタゴニスト剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、LAG-3(CD223)、BTLA、CD160、CD200R、TIGIT、KRLG-1、KIR、2B4(CD244)、VISTA及びA2aRから選択される共阻害チェックポイント分子の阻害機能を阻害できる任意の化合物であり得る。
【0081】
いくつかの例では、アンタゴニスト剤は、LAG-3-Ig融合タンパク質(IMP321)などの非抗体阻害剤(Romanoら、J transl.Medicine、2014、12:97)、及びBTLA)/CD160-HVEM)経路のアンタゴニストである単純ヘルペスウイルス(HSV)-1糖タンパク質D(gD)(Lasaroら、Mol Ther.2011;19(9):1727-1736)であってもよい。
【0082】
いくつかの実施形態において、成分IIは、二重特異性又は多重特異性の作用剤を含む。本明細書で使用する「二重特異性作用剤」及び「多重特異性作用剤」という用語は、2つの標的又は複数の標的に同時に結合できる任意の作用剤を指す。いくつかの態様において、二重特異性作用剤は、第1の標的に結合する第1のペプチド配列及び第2の異なる標的に結合する第2のペプチド配列を有する二重特異性ペプチド剤であり得る。2つの異なる標的は、CTLA-4、PD-1 PD-L1、PD-L2、TIM-3、LAG-3(CD223)、BTLA、CD160、CD200R、TIGIT、KRLG-1、KIR、2B4(CD244)、VISTA及びA2aRから選択される2つの異なる抑制チェックポイント分子であってもよい。二重特異性ペプチド剤の非限定的な例は、二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメントである。同様に、多重特異性作用剤は、2つ以上の標的に結合するための2つ以上の特異的結合配列ドメインを有する多重ペプチド特異性作用剤であってもよい。例えば、多重特異性ポリペプチドは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、又はそれ以上の標的に結合することができる。多重特異性ペプチド剤の非限定的な例は、多重特異性抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0083】
一例では、そのような二重特異性作用剤は、米国特許出願公開第2013/0156774号に開示されているようなTIM-3及びPD-1を標的とする二重特異性ポリペプチド抗体バリアントであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0084】
いくつかの実施形態において、成分IIは、1つのコンジュゲート中のリンカーを介して連結された1つ、2つ又は複数のチェックポイントアンタゴニスト/阻害剤を有するコンジュゲートを含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、成分IIは、チェックポイント受容体に結合してそれを阻害する任意の作用剤を含む。チェックポイント受容体は、CTLA-4、PD-1、CD28、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、CD137、OX40、CD27、CD40L、T細胞膜タンパク質3(TIM3)、及びアデノシンA2a受容体(A2aR)からなる群から選択される。
【0086】
一例では、成分IIはCTLA-4アンタゴニストを含む。
別の例では、成分IIはPD-1アンタゴニストを含む。
さらに別の例では、成分IIはPD-L1アンタゴニストを含む。
【0087】
Zesteホモログエンハンサー(EZH)阻害剤
Schlafenファミリーメンバー11(SLFN11)はDNA修復欠損に関与するタンパク質であり、DNA修復タンパク質と相互作用することが示されている。前臨床データに基づくと、これは、イリノテカンを含むDNA損傷剤に対する感受性の潜在的なマーカーである。SLFN11の喪失は、エピジェネティックなサイレンシングを介して発生する可能性があり、このサイレンシングは、DNA損傷を引き起こす化学療法に対する耐性を引き起こす可能性がある。カルボプラチン/シスプラチンに耐性の卵巣がん、非小細胞肺がん(NSCLC)及び乳がん細胞株では、SLFN11遺伝子座はメチル化によってサイレンシングされる。また、このタンパク質を発現する細胞でSLFN11がノックダウンされると、以前は白金製剤に感受性であった細胞の耐性が増加することが分かっている。臨床の場では、白金製剤での生存率が低いNSCLC及び卵巣がん患者の一部は、SLFN11遺伝子座のサイレンシングを示した。化学療法抵抗性のがん患者のSLFN11発現を増加及び/又は回復させることが望ましい。
【0088】
Zesteホモログエンハンサー(EZH)タンパク質はSLFN11サイレンシングに関与することが示されている。EZHはヒストンメチラーゼであり、遺伝子の転写を抑制しており、がん細胞で過剰発現及び/又は過剰に活性化する可能性がある。シスプラチン/エトポシドに耐性であるように開発されたSCLC前臨床モデルは、感受性モデルと比較してSLFN11の下方制御を示し、化学療法抵抗性細胞株におけるEZH阻害剤による治療は、in vitro及びin vivoで感受性を回復させることができる。EZH阻害剤と組み合わせた化学療法薬は、がん細胞の化学療法抵抗性を防ぐ可能性がある。
【0089】
いくつかの実施形態において、併用療法の成分Iはコンジュゲート1であり、併用療法の成分IIはEZH阻害剤である。任意のEZH阻害剤、例えばEZH1及び2阻害剤ならびにデュアルインヒビターを、成分IIとして使用することができる。EZH阻害剤の非限定的な例には、EPZ011989(遊離塩基CAS番号1598383-40-4)、EPZ005687(CAS番号1396772-26-1)、GSK126(CAS番号1346574-57-9)、GSK343(CAS番号1346704-33-3)、GSK503(CAS番号1346572-63-1)、タゼメトスタット(EPZ-6438、CAS番号1403254-99-8)、3-デアザネプラノシンA(DZNeP、HCl塩CAS番号120964-45-6)、EIl(CAS番号1418308-27-6)、CPI-360(CAS番号1802175-06-9)、CPI-169(CAS番号1450655-76-1)、JQ-EZ-05(JQEZ5、CAS番号1913252-04-6)、PF-06726304(CAS番号1616287-82-1)、UNC1999(CAS番号1431612-23-5)、及びUNC2400(CAS番号1433200-49-7)が含まれる。
【0090】
製剤及び投与
本開示の併用療法における各成分は、以下のために1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を使用して製剤化することができる:(1)安定性を向上させる;(2)持続放出又は遅延放出を許容する(例えば、モノマレイミドのデポ製剤から);(3)生体内分布を変更する(例えば、モノマレイミド化合物を特定の組織又は細胞タイプに向ける);(4)in vivoでモノマレイミド化合物の放出プロファイルを変更する。成分I及び成分IIは、それぞれ異なる組成物で投与することができる。
【0091】
賦形剤の非限定的な例には、ありとあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、及び防腐剤が含まれる。賦形剤には、限定するものではないが、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コアシェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣物及びそれらの組合せも含まれる。したがって、各成分の製剤は、それぞれが有効成分の安定性を一緒に増加させる量の1つ又は複数の賦形剤を含むことができる。
【0092】
RemingtonのThe Scienceand Practice of Pharmacy、第21版、A.R.Gennaro(Lippincott,Williams&Wilkins,Baltimore,MD,2006;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)には、医薬組成物の製剤化に使用される様々な賦形剤及びその調製のための既知の技術が開示されている。望ましくない生物学的効果を生じるか、他の態様で医薬組成物の他の成分と有害な様式で相互作用するなどして、従来の賦形剤媒体が物質又はその誘導体と適合しない場合を除き、その使用は本開示の範囲内にあると考えられる。
【0093】
本発明による医薬組成物中の有効成分、薬学的に許容される賦形剤、及び/又は任意の追加成分の相対量は、治療される対象の固有性、大きさ、及び/又は状態、さらには組成物が投与される経路に応じて変動し得る。例として、組成物は、0.1%~100%、例えば0.5~50%、1~30%、5~80%、少なくとも80%(w/w)の有効成分を含むことができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%純粋である。いくつかの実施形態において、賦形剤は、ヒトでの使用及び獣医学的使用について承認されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は米国食品医薬品局によって承認されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は医薬品グレードである。いくつかの実施形態において、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、及び/又は国際薬局方の基準を満たす。
【0095】
いくつかの実施形態において、コンジュゲート1は医薬組成物として患者に投与され、医薬組成物は約4.0~約5.0のpHを有する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、約4.0~約4.8のpHを有する酢酸緩衝液(酢酸ナトリウム及び酢酸)を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、マンニトール及びヒドロキシステアリン酸ポリオキシル15をさらに含む。
【0096】
一実施形態において、コンジュゲート1を投与するための注射用溶液の組成物が提供される。溶液は、コンジュゲート1、マンニトール、ヒドロキシステアリン酸ポリオキシル15、及び酢酸緩衝水溶液を含む。組成物は静脈内(IV)注入されてもよい。
【0097】
粒子
いくつかの実施形態において、併用療法の少なくとも1つの成分は、ポリマー粒子、脂質粒子、無機粒子、又はそれらの組合せ(例えば、脂質安定化ポリマー粒子)などの粒子に製剤化される。いくつかの実施形態において、粒子は固体ポリマー子粒子であるか、ポリマーマトリックスを含む。粒子は、本明細書に記載のポリマー又はその誘導体もしくはコポリマーのいずれを含んでもよい。粒子は一般に1つ以上の生体適合性ポリマーを含む。ポリマーは生分解性ポリマーであり得る。ポリマーは、疎水性ポリマー、親水性ポリマー、又は両親媒性ポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、粒子は、追加の標的化部分が結合した1つ又は複数のポリマーを含む。
【0098】
併用療法の成分は、2013年12月30日に出願されたBilodeauらの国際公開第2014/106208号に開示された任意の粒子を用いて製剤化することができ、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0099】
粒子のサイズは、目的の用途に合わせて調節することができる。粒子はナノ粒子でもマイクロ粒子でもよい。粒子は、約10nm~約10ミクロン、約10nm~約1ミクロン、約10nm~約500nm、約20nm~約500nm、又は約25nm~約250nmの直径を有することができる。いくつかの実施形態において、粒子は、約25nm~約250nmの直径を有するナノ粒子である。複数の粒子はある範囲にわたるサイズを有することが当業者によって理解され、直径は粒度分布のメジアン径であると理解される。
【0100】
いくつかの実施形態において、粒子中の併用療法の成分の重量パーセントは、少なくとも約0.05%、0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%であり、粒子の成分の重量パーセントの合計は100%である。いくつかの実施形態において、粒子中の成分の重量パーセントは、約0.5%~約10%、又は約10%~約20%、又は約20%~約30%、又は約30%~約40%、又は約40%~約50%、又は約50%~約60%、又は約60%~約70%、又は約70%~約80%、又は約80%~約90%、又は約90%~約99%であり、粒子の全ての成分の重量パーセントの合計は100%である。
【0101】
投与
併用療法の成分は、治療的に有効な結果をもたらす任意の経路で投与することができる。これらには、限定するものではないが、経腸、胃腸、硬膜外、経口、経皮、硬膜外(epidural,peridural)、脳内(大脳内へ)、脳室内(大脳室内へ)、皮膚上(皮膚への塗布)、皮内、(皮膚自体の中へ)、皮下(皮膚の下)、経鼻投与(鼻を通して)、静脈内(静脈の中へ)、動脈内(動脈の中へ)、筋肉内(筋肉の中へ)、心臓内(心臓の中へ)、骨内注入(骨髄の中へ)、髄腔内(脊柱管内へ)、腹腔内、(腹膜内への注入又は注射)、膀胱内注入、硝子体内、(眼を通して)、海綿体内注射、(陰茎の基部へ)、膣内投与、子宮内、羊膜外投与、経皮(全身分布のための無傷の皮膚を介した拡散)、経粘膜(粘膜を介した拡散)、インサフレーション(スノーティング)、舌下、陰唇下、浣腸、点眼(結膜の上)、又は点耳が含まれる。特定の実施形態において、組成物は、それらが血液脳関門、血管関門、又は他の上皮関門を通過することを可能にする方法で投与され得る。
【0102】
本明細書に記載の製剤は、それを必要とする患者への投与に適した医薬担体中に有効量の成分を含む。製剤は、非経口的に(例えば、注射又は注入により)投与されてもよい。製剤又はその変更物は、経腸的、局所的(例えば、眼へ)、又は肺投与を含む任意の方法で投与されてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は局所投与される。
【0103】
投与量
各成分について患者が必要とする正確な量は、対象の種、年齢、及び全身状態、疾患の重症度、個々の組成物、その投与様式、その作用様式等に応じて、対象ごとに異なる。
【0104】
併用療法の成分は、典型的には、投与の容易さ及び投与量の均一性のために投与単位形態で製剤化される。しかしながら、本発明の組成物の総1日使用量は、主治医により妥当な医学的判断の範囲内で決定され得ることが理解されるであろう。特定の患者に対する特定の治療的に有効な、予防的に有効な、又は適切な用量レベルは、治療中の疾患及び疾患の重症度を含む様々な要因;使用される特定の化合物の活性;採用された特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び食事;投与時間、投与経路、及び使用される特定の化合物の排泄速度;治療期間の長さ;使用される特定の化合物と組み合わせて又は同時に使用される薬物;及び医学分野で周知の類似の要因に依存する。
【0105】
いくつかの実施形態では、本開示による併用療法の成分は、所望の治療効果、診断効果、予防効果、又は画像化効果を得るために、1日に対象の体重当たり約0.0001mg/kg~約100mg/kg、約0.001mg/kg~約0.05mg/kg、約0.005mg/kg~約0.05mg/kg、約0.001mg/kg~約0.005mg/kg、約0.05mg/kg~約0.5mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.1mg/kg~約40mg/kg、約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、又は約1mg/kg~約25mg/kgを送達するのに十分な用量レベルで、1日に1回以上投与されてもよい。
【0106】
所望の用量は、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、3日ごと、毎週、2週間ごと、3週間ごと、又は4週間ごとに送達され得る。いくつかの実施形態において、所望の用量は、複数回の投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又はそれ以上の回数の投与)を使用して送達され得る。複数回の投与が採用される場合、本明細書に記載のような分割投与レジメンが使用され得る。
【0107】
成分の濃度は、医薬組成物中、約0.01mg/mL~約50mg/mL、約0.1mg/mL~約25mg/mL、約0.5mg/mL~約10mg/mL、又は約1mg/mL~約5mg/mLであってもよい。
【0108】
本明細書で使用する「分割用量」は、単一単位用量又は総1日用量を2回以上の用量に分割すること、例えば、単一単位用量の2回以上の投与である。本明細書で使用する場合、「単一単位用量」は、1用量/一回/単一経路/単一接触点、すなわち単一投与事象で投与される任意の治療薬の用量である。本明細書で使用する場合、「総1日用量」は、24時間の期間に与えられる又は処方される量である。単回投与として投与してもよい。一実施形態では、本発明のモノマレイミド化合物は、分割用量で対象に投与される。モノマレイミド化合物は、緩衝液のみ又は本明細書に記載の製剤で製剤化されてもよい。
【0109】
対象は、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、7ヵ月、8ヵ月、9ヵ月、10ヵ月、11ヵ月、1年、又は所定の節目(例えば、90%、95%、又は99%を超えるTGI%)に到達するまでなどの任意の適切な長さで併用療法を受けることができる。
【0110】
II.併用療法の使用方法
本開示の一態様は、がんなどの過剰増殖性疾患を有する対象を治療する方法を提供し、この方法は、少なくとも2つの別個の治療薬の併用療法を含む。いくつかの実施形態において、この方法は、患者に:(A)有効成分として、成分I、又はそのプロドラッグ、誘導体、又は薬学的に許容される塩を含む第1の成分;及び(B)有効成分として、成分II、又はそのプロドラッグ、誘導体、又は薬学的に許容される塩を含む第2の成分を投与することを含む。
【0111】
本開示によれば、がんは、腫瘍、例えば固形腫瘍又は任意の新生物によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、がんは固形腫瘍である。大きな薬物分子は、固形腫瘍への浸透が制限されている。大きな薬物分子の浸透は遅い。一方、小分子コンジュゲートなどの小分子は、固形腫瘍に迅速かつより深く浸透することができる。薬物の浸透深度に関して、大きい分子は薬物動態においてより長続きするが、浸透は浅くなる。
【0112】
いくつかの実施形態において、併用療法はがん及び/又は腫瘍の成長を阻害する。併用療法はまた、細胞増殖、侵襲性、及び/又は転移を含めて減少させる可能性があり、それによってそれらをがんの治療に有用にする。
【0113】
いくつかの実施形態では、併用療法は、腫瘍又はがんの成長を防止するために、及び/又は腫瘍又はがんの転移を防止するために使用され得る。いくつかの実施形態において、併用療法は、がんを縮小又は破壊するために使用され得る。
【0114】
いくつかの実施形態において、併用療法は、がん細胞の増殖を阻害するのに有用である。いくつかの実施形態において、併用療法は、細胞増殖の阻害、例えば、細胞増殖の速度の阻害、細胞増殖の防止、及び/又は細胞死の誘導に有用である。一般に、併用療法は、がん細胞の細胞増殖を阻害するか、又はがん細胞の増殖を阻害及び/又は細胞死を誘導することができる。いくつかの実施形態において、細胞増殖は、本開示の併用療法での治療後、治療なしの細胞と比較して少なくとも約25%、約50%、約75%、又は約90%減少する。いくつかの実施形態では、細胞周期停止マーカーであるリン酸化ヒストンH3(PH3又はPHH3)は、治療なしの細胞と比較して、併用療法での治療後に少なくとも約50%、約75%、約100%、約200%、約400%又は約600%増加する。いくつかの実施形態では、細胞アポトーシスマーカーである切断カスパーゼ-3(CC3)は、治療なしの細胞と比較して、併用療法での治療後に少なくとも50%、約75%、約100%、約200%、約400%又は約600%増加する。
【0115】
さらに、いくつかの実施形態において、併用療法は、複数種の腫瘍において腫瘍増殖の阻害に有効であり、これはサイズの正味値(重量、表面積又は体積)として測定するか、経時的な増殖率として測定するかを問わない。
【0116】
いくつかの実施形態において、併用療法による治療後、腫瘍のサイズは約60%以上減少する。いくつかの実施形態では、腫瘍のサイズは、重量、及び/又は面積及び/又は体積の測定で少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%減少する。
【0117】
いくつかの実施形態において、併用療法を受ける対象の腫瘍成長阻害(TGI)は、少なくとも約80%、85%、90%、95%、又は99%であり得る。
本開示の併用療法により治療可能ながんは、一般に哺乳動物で発生する。哺乳動物には、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、フェレット、モルモット、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、及びウシが含まれる。様々な実施形態において、がんは、肺がん、乳がん、例えば、突然変異体BRCA1及び/又は突然変異型BRCA2乳がん、非BRCA関連乳がん、大腸がん、卵巣がん、膵臓がん、大腸がん、膀胱がん、前立腺がん、子宮頸がん、腎臓がん、白血病、中枢神経系がん、骨髄腫、及び黒色腫である。
【0118】
いくつかの実施形態では、がんは、神経内分泌がん、例えば、限定するものではないが、小細胞肺がん(SCLC)、副腎髄質腫瘍(例えば、褐色細胞腫、神経芽細胞腫、神経節腫、又は傍神経節腫)、膵・消化管神経内分泌腫瘍(例えば、カルチノイド、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、血管作動性腸管ポリペプチド分泌腫瘍、膵ポリペプチド分泌腫瘍、非機能性胃腸膵腫瘍)、甲状腺髄様癌、皮膚のメルケル細胞腫瘍、下垂体腺腫、及び膵臓がんである。いくつかの実施形態では、神経内分泌がんは、原発性神経内分泌がんである。いくつかの実施形態では、神経内分泌がんは神経内分泌転移である。神経内分泌転移は、対象の肝臓、肺、骨、又は脳にある場合がある。特定の実施形態では、がんは、脳がん、ヒト肺がん、卵巣がん、膵臓がん又は大腸がんである。
【0119】
一実施形態において、本開示の併用療法は、小細胞肺がんを治療するために使用される。肺がんの患者の約12%~15%は小細胞肺がんを有する。転移性小細胞肺がんの生存率は低い。生存率は診断後5年で5%未満である。米国の小細胞肺がんの発生率は約26K~30Kである。これらの患者のうち、約40%~80%がSSTR2陽性である。
【0120】
一実施形態において、本開示の併用療法は、組織学的に証明された局所進行性又は転移性の高グレード神経内分泌がん(NEC)を有する患者を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、患者は、未知の原発部位又は任意の肺外部位の小細胞及び大細胞の神経内分泌がんを有していてもよい。いくつかの実施形態では、Ki-67>30%の場合、患者は十分に分化したG3神経内分泌腫瘍を有する場合がある。いくつかの実施形態において、小細胞又は大細胞組織学の場合、患者は前立腺の神経内分泌前立腺がん(デノボ又は治療下で発現)を有し得る。いくつかの実施形態において、患者は、グレードの高い(小細胞又は大細胞)NEC成分が元のサンプル又はその後の生検の50%を超える場合、混合腫瘍、例えば、複合型腺神経内分泌癌(MANEC)又は混合扁平上皮又は腺房細胞NECを有し得る。いくつかの実施形態において、患者は去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)を有してもよい。
【0121】
併用療法の成分の特徴は、生物に対する毒性が比較的低くありながら、阻害の効力、例えば、腫瘍の成長を遅らせ又は止める効力を維持している点である。本明細書で使用する「毒性」とは、物質又は組成物が細胞、組織生物又は細胞環境に対して有害又は有毒となる能力を指す。低毒性とは、物質又は組成物が細胞、組織生物、又は細胞環境に対して有害又は有毒となる能力が低いことを指す。そのような低下した又は低い毒性は、標準的な尺度と、治療と、又は治療の欠如と比較したものであり得る。例えば、有効成分としてSN-38を含むコンジュゲート1は、単独で投与されたSN-38よりも毒性が低い。
【0122】
毒性が、体重の15%を超える、20%を超える、又は30%を超える体重減少として示される場合、毒性は対象の体重減少と比較してさらに測定することができる。嗜眠や全身倦怠感を含む患者の症状の測定基準など、他の毒性の測定基準でも測定できる。好中球減少、血小板減少、白血球(WBC)数、完全血球(CBC)数も毒性の指標となる場合がある。毒性の薬理学的指標には、アミノトランスフェラーゼ(AST/ALT)レベルの上昇、神経毒性、腎障害、GI障害などが含まれる。一実施形態では、本開示の併用療法は、対象の体重の大きな変化を引き起こさない。対象の体重減少は、本開示の併用療法による治療後、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、又は約5%未満である。別の実施形態において、本開示の併用療法は、対象のAST/ALTレベルの大きな増加を引き起こさない。対象のAST又はALTレベルは、本開示の併用療法による治療後、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、又は約5%未満増加する。さらに別の実施形態では、本開示の併用療法は、本開示の併用療法による治療後、対象のCBC又はWBCカウントの大きな変化を引き起こさない。対象のCBC又はWBCレベルは、本開示の併用療法による治療後、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、又は約5%未満減少する。
【0123】
III.キット及びデバイス
本開示の一態様は、本発明の方法を好都合に及び/又は効果的に実施するための様々なキット及びデバイスを提供する。通常、キットは、ユーザが対象の複数の治療を実行できるように、及び/又は複数の実験を実行できるようにするのに十分な量及び/又は数の成分を含む。
【0124】
一実施形態では、本発明は、少なくとも2つの異なる治療薬を含む、in vitro又はin vivoで腫瘍細胞増殖を阻害するためのキットを提供する。いくつかの実施形態において、腫瘍細胞増殖を阻害するためのキットは:(A)有効成分として、成分I、又はそのプロドラッグ、誘導体、又は薬学的に許容される塩を含む第1の成分;及び(B)有効成分として、成分II、又はそのプロドラッグ、誘導体、又は薬学的に許容される塩を含む第2の成分を含む。
【0125】
キットは、製剤組成物を形成するための包装及び説明書及び/又は送達剤をさらに含んでもよい。送達剤は、生理食塩水、緩衝液、又は本明細書に開示の任意の送達剤を含んでもよい。各作用剤の量は、一貫性があり再現可能な高濃度生理食塩水又は単純な緩衝液製剤を可能にするために変更されてもよい。作用剤はまた、ある期間にわたって及び/又は様々な条件下で併用療法の成分の安定性を高めるために変更することができる。
【0126】
本開示は、併用療法の成分を組み込むことができるデバイスを提供する。これらのデバイスは、ヒト患者など、それを必要とする対象に即座に送達するために利用可能な安定した製剤を含む。いくつかの実施形態において、対象はがんを有する。
【0127】
デバイスの非限定的な例には、ポンプ、カテーテル、針、経皮パッチ、加圧式嗅覚器官送達(pressurized olfactory delivery)デバイス、イオン導入デバイス、多層マイクロ流体デバイスが含まれる。デバイスは、単一、複数、又は分割投与レジメンに従って併用療法の成分を送達するために使用されてもよい。デバイスは、生体組織全体、皮内、皮下、又は筋肉内に併用療法の成分を送達するために使用されてもよい。
【0128】
IV.定義
本明細書で使用する「化合物」という用語は、描かれた構造のすべての立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び同位体を含むことを意味する。本願において、化合物はコンジュゲートと互換可能に使用される。したがって、本明細書で使用されるコンジュゲートも、描かれた構造のすべての立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び同位体を含むことを意味する。
【0129】
本明細書に記載される化合物は、非対称であり得る(例えば、1つ以上のキラル中心を有する)。エナンチオマー及びジアステレオマーなどのすべての立体異性体は、特に明記しない限り意図されている。非対称的に置換された炭素原子を含む本開示の化合物は、光学的に活性な形態又はラセミ形態で単離することができる。光学活性出発物質から光学活性体を調製する方法は、ラセミ混合物の分割や立体選択的合成などによることが、当技術分野で知られている。オレフィン、C=N二重結合などの多くの幾何異性体も本明細書に記載の化合物に存在する可能性があり、そのような安定な異性体はすべて本開示で考慮される。本開示の化合物のシス及びトランス幾何異性体が記載されており、異性体の混合物として、又は分離された異性体として単離され得る。
【0130】
本開示の化合物は、互変異性形態も含む。互変異性体は、単結合と隣接する二重結合との交換と、それに伴うプロトンの移動により生じる。互変異性体には、同じ実験式と総電荷を持つ異性体のプロトン化状態であるプロトトロピック互変異性体が含まれる。プロトトロピック互変異性体の例には、ケトン-エノールペア、アミド-イミド酸ペア、ラクタム-ラクチムペア、アミド-イミド酸ペア、エナミン-イミンペア、及びプロトンが複素環系の2つ以上の位置を占めることができる環状型、例えば、1H-及び3H-イミダゾール、1H-、2H-及び4H-1,2,4-トリアゾール、1H-及び2H-イソインドール、及び1H-及び2H-ピラゾールが含まれる。互変異性型は平衡状態にあるか、適切な置換により立体的に1つの型に固定される。
【0131】
本開示の化合物は、中間化合物又は最終化合物に生じる原子の同位体もすべて含む。「同位体」とは、原子番号は同じであるが、原子核内の中性子の数が異なるために質量数が異なる原子を指す。例えば、水素の同位体にはトリチウム及びデューテリウムが含まれる。
【0132】
本開示の化合物及び塩は、通常の方法により、溶媒和物及び水和物を形成するために溶媒又は水分子と組み合わせて調製することができる。
本明細書で使用する「対象」又は「患者」という用語は、例えば、実験、治療、診断、及び/又は予防目的で併用療法を投与することができる任意の生物を指す。典型的な対象には、動物が含まれる(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、ハムスター、ラマ、非ヒト霊長類、及びヒトなどの哺乳類)。
【0133】
本明細書で使用する「治療」又は「予防」という用語は、疾患、障害、及び/又は状態になる要素を持っているが、まだその疾患、障害、及び/又は状態を有するとは診断されていない動物に疾患、障害、又は状態が発生するのを予防すること;疾患、障害又は状態を阻止すること、例えばその進行を妨げること;及び疾患、障害、又は状態を緩和すること、例えば、疾患、障害、及び/又は状態の退行を引き起こすことを含み得る。疾患、障害、又は状態の治療には、根底にある病態生理が影響を受けない場合でも、特定の疾患、障害、又は状態の少なくとも1つの症状を改善すること(例えば、鎮痛剤の投与により、そのような薬剤は痛みの原因を治療しなくとも、対象の痛みに対処すること)が含まれ得る。
【0134】
本明細書で使用する「標的」は、標的化構築物が結合する部位を意味する。標的は、in vivo又はin vitroのいずれかであり得る。特定の実施形態において、標的は、白血病又は腫瘍(例えば、脳、肺(小細胞及び非小細胞)、卵巣、前立腺、乳房及び結腸、ならびに他のがん腫及び肉腫の腫瘍)に見られるがん細胞であり得る。さらに他の実施形態において、標的は、ハプテン、エピトープ、受容体、dsDNAフラグメント、炭水化物又は酵素などの、標的化部分又はリガンドが結合する分子構造を指し得る。標的は、組織の一種、例えば、神経組織、腸組織、膵臓組織、肝臓、腎臓、前立腺、卵巣、肺、骨髄、又は乳房組織であり得る。
【0135】
併用療法の標的として役立ち得る「標的細胞」は、一般に動物細胞、例えば哺乳動物細胞である。本方法は、in vitroすなわち細胞培養における細胞、又はin vivoの、動物組織の一部を形成するか又は動物組織に存在する生細胞の細胞機能を改変するために使用され得る。したがって、標的細胞には、例えば、血液、リンパ組織、口腔及び咽頭粘膜などの消化管の内側を覆う細胞、小腸の絨毛を形成する細胞、大腸の内側を覆う細胞、動物の呼吸器系(鼻腔/肺)の内側を覆う細胞(本発明の吸入により接触し得る)、真皮/表皮細胞、膣及び直腸の細胞、胎盤の細胞を含む内臓の細胞、及びいわゆる血液/脳関門などが含まれ得る。一般に、標的細胞は少なくとも1種類のSSTRを発現する。いくつかの実施形態において、標的細胞は、SSTRを発現し、本明細書に記載のコンジュゲートにより標的化され、コンジュゲートの有効成分の放出により影響を受ける細胞の近くにある細胞であり得る。例えば、腫瘍の近くにあるSSTRを発現する血管が標的であり、その部位で放出される有効成分が腫瘍に影響を及ぼしてもよい。
【0136】
「治療効果」という用語は当技術分野で認識されており、動物、特に哺乳動物、より具体的にはヒトにおける、薬理活性物質によって引き起こされる局所的又は全身的効果を指す。したがって、この用語は、動物、例えばヒトの望ましい身体的又は精神的発達及び状態の強化における疾患、障害又は状態の診断、治療、緩和、治療又は予防での使用を意図した任意の物質を意味する。
【0137】
「調節」という用語は、当技術分野で認識されており、応答の上方制御(すなわち、活性化又は刺激)、下方制御(すなわち、阻害又は抑制)、あるいはこれら2つを組み合わせて又は別々に指す。調節は、通常、治療された対象の内的又は外的ベースライン又は基準と比較される。
【0138】
本明細書で互換的に使用される「十分な」及び「有効な」という用語は、1つ又は複数の所望の結果を達成するのに必要な量(例えば、質量、体積、用量、濃度、及び/又は期間)を指す。「治療有効量」は、少なくとも1つの症状又は特定の状態又は障害の測定可能な改善又は予防に影響を与えるか、平均余命の測定可能な向上をもたらすか、又は患者の生活の質を全般的に改善するのに必要な少なくとも最低濃度である。したがって、治療有効量は、特定の生物活性分子及び治療される特定の状態又は障害に依存する。抗体などの多くの有効成分の治療有効量は、当技術分野で知られている。例えば、特定の障害を治療するための、本明細書に記載の化合物及び組成物の治療有効量は、医師などの熟練した当業者の技能の範囲内の技術によって決定され得る。
【0139】
本明細書で互換的に使用される「生物活性剤」及び「有効成分」という用語は、体内で局所的又は全身的に作用する生理学的又は薬理学的に活性な物質を含むが、これらに限定されない。生物活性剤は、疾患または病気の治療(例えば治療薬)、予防(例えば予防薬)、診断(例えば診断薬)、治癒又は緩和に使用される物質であるか、身体の構造又は機能に影響を与える物質であるか、あるいは、所定の生理学的環境に置かれた後に生物学的に活性になるか、より活性になるプロドラッグである。
【0140】
「プロドラッグ」という用語は、in vitro及び/又はin vivoで生物学的に活性な形態に変換される有機小分子、ペプチド、核酸又はタンパク質を含む作用剤を指す。プロドラッグは、状況によっては親化合物(活性化合物)よりも投与しやすいため、有用である。例えば、親化合物はそうではないのに対し、プロドラッグは経口投与によって生物学的に利用可能になる場合がある。プロドラッグはまた、親薬物と比較して医薬組成物への改善された溶解性を有し得る。プロドラッグは親よりも毒性が低い場合もある。プロドラッグは、酵素プロセスや代謝加水分解などの様々なメカニズムによって親薬物に変換され得る。Harper,N.J.(1962)Drug Latentiation in Jucker,ed.Progress in Drug Research,4:221-294;Morozowichら(1977)Application of Physical Organic Principles to Prodrug Design in E.B.Roche ed.Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs,APhA; Acad.Pharm.Sci.;E.B.Roche,ed.(1977)Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design,Theory and Application,APhA;H.Bundgaard,ed.(1985)Design of Prodrugs,Elsevier;Wangら(1999)Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drug,Curr.Pharm.Design.5(4):265-287;Paulettiら(1997)Improvement in peptide bioavailability:Peptidomimetics and Prodrug Strategies,Adv.Drug.Delivery Rev.27:235-256;Mizenら(1998).The Use of Esters as Prodrugs for Oral Delivery of β-Lactam antibiotics,Pharm.Biotech.11:345-365;Gaignaultら(1996)Designing Prodrugs and Bioprecursors I.Carrier Prodrugs,Pract.Med.Chem.671-696;M.Asgharnejad(2000).Improving Oral Drug Transport Via Prodrugs,in G.L.Amidon,P.I.Lee and E.M.Topp,Eds.,Transport Processes in Pharmaceutical Systems,Marcell Dekker,p.185-218;Balantら(1990)Prodrugs for the improvement of drug absorption via different routes of administration,Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.,15(2):143-53;Balimane and Sinko(1999).Involvement of multiple transporters in the oral absorption of nucleoside analogues,Adv.Drug Delivery Rev.,39(1-3):183-209;Browne(1997).Fosphenytoin(Cerebyx),Clin.Neuropharmacol.20(1):1-12;Bundgaard(1979).Bioreversible derivatization of drugs--principle and applicability to improve the therapeutic effects of drugs,Arch.Pharm.Chemi.86(1):1-39;H.Bundgaard,ed.(1985)Design of Prodrugs,New York:Elsevier;Fleisherら(1996)Improved oral drug delivery:solubility limitations overcome by the use of prodrugs,Adv.Drug Delivery Rev.19(2):115-130;Fleisherら(1985)Design of prodrugs for improved gastrointestinal absorption by intestinal enzyme targeting,Methods Enzymol.112:360-81;Farquhar Dら(1983)Biologically Reversible Phosphate-Protective Groups,J.Pharm.Sci.,72(3):324-325;Han,H.K.ら(2000)Targeted prodrug design to optimize drug delivery,AAPS PharmSci.,2(1):E6;Sadzuka Y.(2000)Effective prodrug liposome and conversion to active metabolite,Curr.Drug Metab.,1(1):31-48;D.M.Lambert(2000)Rationale and applications of lipids as prodrug carriers,Eur.J.Pharm.Sci.,11 Suppl.2:S15-27;Wang,W.ら(1999)Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drugs.Curr.Pharm.Des.,5(4):265-87.
本明細書で使用する「生体適合性」という用語は、一般にレシピエントに無毒であり、レシピエントに重大な悪影響を引き起こさない物質をその代謝産物又は分解生成物とともに指す。一般的には、生体適合性物質は、患者に投与された場合に大きな炎症反応又は免疫反応を誘発しない物質である。
【0141】
本明細書で使用する「生分解性」という用語は、一般に、生理学的条件下で対象によって代謝、排除、又は排泄されることが可能な、より小さい単位又は化学種に分解又は侵食される物質を指す。分解時間は、組成及び形態に依存する。分解時間は数時間から数週間になる場合がある。
【0142】
本明細書で使用する「薬学的に許容される」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応、又は合理的な利益/リスク比に見合う他の問題又は合併症を伴わず、米国食品医薬品局などの機関のガイドラインに従って、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに適した化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」は、in vivoでの組成物の送達を促進する医薬製剤のすべての成分を指す。薬学的に許容される担体には、限定するものではないが、希釈剤、防腐剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、膨張剤、充填剤、安定剤、及びそれらの組合せが含まれる。
【0143】
本明細書で使用する「分子量」という用語は、一般に、物質の質量又は平均質量を指す。ポリマー又はオリゴマーの場合、分子量はバルクポリマーの相対平均鎖長又は相対鎖質量を指す。実際には、ポリマー及びオリゴマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)又はキャピラリー粘度測定などの様々な方法で推定又は特性評価することができる。GPC分子量は、数平均分子量(Mn)に対して重量平均分子量(Mw)として報告される。キャピラリー粘度計は、濃度、温度、及び溶媒条件の特定のセットを使用して希釈ポリマー溶液から決定される固有粘度として分子量の推定値を提供する。
【0144】
本明細書で使用する「小分子」という用語は、一般に、分子量が2000g/mol未満、1500g/mol未満、1000g/mol未満、800g/mol未満、又は500g/mol未満の有機分子を指す。小分子は非ポリマー性及び/又は非オリゴマー性である。
【0145】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、一般にアミノ酸残基のポリマーを指す。本明細書で使用する場合、この用語は、1つ又は複数のアミノ酸が化学的類似体又は対応する天然アミノ酸の修飾された誘導体であるか、又は非天然アミノ酸であるアミノ酸ポリマーにも適用される。本明細書で一般的に使用する「タンパク質」という用語は、ペプチド結合によって互いに連結されたアミノ酸のポリマーであって、その鎖長が三次及び/又は四次構造を生成するのに十分なポリペプチドを形成するポリマーを指す。「タンパク質」という用語は、定義により小さなペプチドを除外し、その小さなペプチドとは、タンパク質と見なされるために必要な高次構造を欠くものである。
【0146】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、及び「オリゴヌクレオチド」は、直鎖又は環状形態の、ならびに一本鎖又は二本鎖のいずれかの形のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマーを指すために互換可能に使用される。これらの用語は、ポリマーの長さに関して制限するものとして解釈されるべきではない。これらの用語は、天然ヌクレオチドの既知のアナログ、ならびに塩基、糖及び/又はリン酸部分で修飾されたヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート骨格)を包含することができる。一般に、特に明記しない限り、特定のヌクレオチドのアナログは同じ塩基対合特異性を有する。すなわち、AのアナログはTと塩基対を形成する。用語「核酸」は、少なくとも2つの塩基-糖-リン酸モノマー単位のストリングを指す技術用語である。ヌクレオチドは、核酸ポリマーのモノマー単位である。この用語には、メッセンジャーRNA、アンチセンス、プラスミドDNA、プラスミドDNAの一部、又はウイルス由来の遺伝物質の形のデオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)が含まれる。アンチセンス核酸は、DNA及び/又はRNA配列の発現に干渉するポリヌクレオチドである。核酸という用語は、少なくとも2つの塩基-糖-リン酸の組合せのストリングを指す。天然の核酸はリン酸骨格を有する。人工核酸は、他の種類の骨格を含む場合があるが、天然の核酸と同じ塩基を含む。この用語には、PNA(ペプチド核酸)、ホスホロチオエート、及び天然核酸のリン酸骨格の他のバリアントも含まれる。
【0147】
本明細書で使用する「リンカー」という用語は、ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、硫黄など)を含んでもよい炭素鎖を指し、長さは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50原子長であり得る。リンカーは、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環、芳香族複素環、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、チオエーテル、アルキルチオエーテル、チオール、及びウレイド基を含むがこれらに限定されない様々な置換基で置換されてもよい。当業者は、これらの基のそれぞれもまた置換され得ることを認識するであろう。リンカーの例には、限定するものではないが、pH感受性リンカー、プロテアーゼ切断性ペプチドリンカー、ヌクレアーゼ感受性核酸リンカー、リパーゼ感受性脂質リンカー、グリコシダーゼ感受性炭水化物リンカー、低酸素感受性リンカー、光切断性リンカー、熱不安定性リンカー、酵素切断性リンカー(例えば、エステラーゼ切断性リンカー)、超音波感受性リンカー、及びX線切断性リンカーが含まれる。
【0148】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本組成物で使用される化合物に存在し得る酸性又は塩基性基の塩を指す。本組成物に含まれる本質的に塩基性の化合物は、様々な無機酸及び有機酸と様々な塩を形成することができる。そのような塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を調製するために使用可能な酸は、非毒性の酸付加塩、すなわち、硫酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカレート、ホルメート、ベンゾエート、グルタメート、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p-トルエンスルホネート及びパモエート(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))塩を含むがこれらに限定されない薬理学的に許容される陰イオンを含む塩を形成するものである。アミノ部分を含む本組成物に含まれる化合物は、上記の酸に加えて、様々なアミノ酸と薬学的に許容される塩を形成し得る。本組成物に含まれる本質的に酸性の化合物は、様々な薬理学的に許容可能なカチオンと塩基性塩を形成することができる。そのような塩の例には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、及び特にカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、及び鉄の塩が含まれる。
【0149】
本明細書に記載の化合物が酸付加塩として得られる場合、遊離塩基は酸性塩の溶液を塩基性にすることにより得ることができる。反対に、生成物が遊離塩基である場合、塩基性化合物から酸付加塩を調製するための従来の手順に従って、適切な有機溶媒に遊離塩基を溶解し、溶液を酸で処理することにより、付加塩、特に薬学的に許容される付加塩を生成することができる。当業者は、非毒性の薬学的に許容される付加塩を調製するために使用できる様々な合成方法論を認識するであろう。
【0150】
薬学的に許容される塩は、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタル酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸、ショウノウ-10-スルホン酸、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、サイクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、チオシアン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸から選択される酸に由来し得る。
【0151】
「生物学的に利用可能」という用語は、当技術分野で認識されており、それが投与された対象又は患者がそれを吸収し、取り込み、又は他の態様で生理学的に利用できるようにする、本発明の形態又は投与量の一部を指す。
【0152】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図するものであり、限定することを意図するものではないことが理解されよう。本開示を読めば、当業者には、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、前述の説明及び例の様々な他の例及び変更例が明らかであり、そのようなすべての例又は変更例は添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。本明細書で参照されるすべての刊行物及び特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0153】
実施例
実施例1:コンジュゲート1の合成及びHPLC分析
いくつかの実施形態において、成分Iは、標的化部分に結合した有効成分又はそのプロドラッグを含むコンジュゲートであり、標的化部分はHSP90に結合する。HSP90標的化コンジュゲートの合成及びHPLC分析は、2013年4月16日に出願されたPCT出願番号PCT/US13/36783(WO2013/158644)の実施例1、6、8、1-29に開示された方法で実施することができ、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。特に、コンジュゲート1又はその薬学的に許容される塩は、PCT/US13/36783の実施例6に従って調製することができる。
【0154】
実施例2:コンジュゲート1での治療後の免疫細胞集団の評価
Pan02同所性マウスモデル(膵臓がんシンジェニックマウスモデル)における免疫細胞の変化の評価が行われる。この研究では、マウスの免疫細胞の変化を広くプロファイリングすることにより、免疫細胞の変化の幅広い調査を行う。例えば、免疫細胞の数がカウントされる。
【0155】
コンジュゲート1での治療後に生検が行われる。がん細胞間の間質に分散した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)が、2人の訓練された組織病理学者によって独立に評価される。
T細胞上の免疫チェックポイント受容体及び腫瘍随伴マクロファージ(TAM)上の同族リガンドの発現を分析する。例えば、コンジュゲート1処理時のCD4+及びCD8+T細胞上のCTLA-4発現、PD-1発現を分析する。
【0156】
処理されたマウスのケモカイン及びサイトカインも測定される。
実施例3:チェックポイント阻害剤と組み合わせたコンジュゲート1の抗腫瘍効果
このin vivo試験の目的は、膵臓がんのPan02同所性マウスモデルにおけるチェックポイント阻害剤と組み合わせたコンジュゲート1の抗腫瘍効果を評価することであった。
【0157】
マウスは以下のグループに分けられる:1.ビヒクルでの処理;2.コンジュゲート1での処理;3.PD-1ブロッキング抗体での処理;4.PD-L1抗体での処理;5.コンジュゲート1及びPD-1ブロッキング抗体での処理;及び6.コンジュゲート1及びPD-L1ブロッキング抗体での処理。マウスの体重(BW)及び健康状態をモニタリングする。腫瘍体積を測定し、腫瘍成長阻害を決定する。
【0158】
実施例4:5FU及びロイコボリンと組み合わせたコンジュゲート1の抗腫瘍効果
このin vivo試験の目的は、HT-29大腸がん(CRC)モデル及び/又は他のCRCモデルにおける5FU及びロイコボリン(LV)と組み合わせたコンジュゲート1の抗腫瘍効果を評価することであった。
【0159】
マウスは以下のグループに分けられる:
1)ビヒクルでの処理;
2)コンジュゲート1での処理;
3)5FU及びLVでの処理;及び
4)5FU及びLVと組み合わせたコンジュゲート1での処理。
【0160】
陽性対照には以下が含まれる:
5)5FU及びLVと組み合わせたイリノテカンでの処理;及び
6)イリノテカン単独での処理。
【0161】
マウスの体重(BW)及び健康状態をモニタリングする。腫瘍体積を測定し、腫瘍成長阻害を決定する。
実施例5:タラゾパリブと組み合わせたコンジュゲート1の抗腫瘍効果
NCI-H69(小細胞肺がん)腫瘍を有するマウスを以下で処理した。
【0162】
1)ビヒクル対象;
2)12.5mpk(mg/kg)のコンジュゲート1を静脈内投与(IV)で週に1度;
3)0.33mpkのタラゾパリブを経口投与(PO)で4日間毎日投薬/3日間の休薬;
4)12.5mpkのコンジュゲート1をIVで週に1度、及びコンジュゲート1投与の24時間後に、0.33mpkのタラゾパリブを4日間毎日投薬/3日間の休薬を開始。
【0163】
腫瘍体積を、治療後3日目、8日目、10日目、13日目、及び16日目に測定した。
図1及び下の表に示すように、コンジュゲート1処理単独及びタラゾパリブ処理単独と比較して、併用療法では統計的に有意な有効性の改善が観察された。
【0164】
【0165】
同様の研究では、コンジュゲート1及びタラゾパリブの併用治療は、HT-29大腸がん(CRC)モデル及びその他のCRCモデルを保有するマウスで研究される。
別の同様の研究では、コンジュゲート1及びベリパリブの併用治療がマウスモデルで評価される。
【0166】
本発明の範囲は、上記の説明に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載されたものである。
特許請求の範囲において、「1つ」、「その」などの冠詞は、反対の指示がない限り、又は文脈から明白でない限り、1つ又は複数を意味する場合がある。グループのうちの1つ又は複数のメンバー間に「又は」を含む請求項又は説明は、提示された製品又は方法にそのグループメンバーの1つ、2つ以上、又はすべてが存在し、採用され、又は他の態様で関係する場合、反対の指示がない限り、又は文脈から明白でない限り、充足すると見なされる。本発明は、提示された製品又は方法に、グループの厳密に1つのメンバーが存在し、採用され、又は他の態様で関係する実施形態を含む。本発明は、提示された製品又は方法に、グループメンバーのうちの2つ以上又はすべてが存在し、採用され、又は他の態様で関係する実施形態を含む。
【0167】
さらに留意点として、「含む」という用語はオープンであることを意図しており、追加の要素又はステップを含めることを許容するが必須とはしない。「含む」という用語が本明細書で使用される場合、「からなる」という用語も結果として包含され、開示される。
【0168】
範囲が提示されている場合、端点が含まれる。さらに、別様に指定されているか、文脈上及び当業者の理解からそうでないことが明白でない限り、範囲として表される値は、文脈が別段の定めをしない限り、本明細書の異なる実施形態において述べられた範囲内の、その範囲の下限の単位の10分の1までの任意の特定の値又は下位範囲をとることができることを理解されたい。
【0169】
加えて、先行技術に含まれる本発明の特定の実施形態は、請求項のいずれか1つ以上から明示的に除外され得ることを理解されたい。そのような実施形態は、当業者に知られているとみなされるため、本明細書で明示的に除外が示されていなくても、除外することができる。本発明の組成物の特定の実施形態は、先行技術の存在に関係するか否かにかかわらず、任意の理由で、1つ以上の請求項から除外することができる。
【0170】
引用に明示的に記載されていない場合でも、引用されたすべての情報源、例えば、参考文献、出版物、データベース、データベースエントリ、及びここに引用された技術は、参照により本願に組み込まれる。引用された情報源と本願の記述が矛盾する場合、本願の記述が優先するものとする。
【0171】
セクション及び表の見出しは、限定することを意図したものではない。