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特開2023-105082CNS障害を処置するためのジュウテリウム化された21-[4-シアノ-ピラゾール-1-イル]-19-ノル-プレガン-3.α-オール-20-オン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105082
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】CNS障害を処置するためのジュウテリウム化された21-[4-シアノ-ピラゾール-1-イル]-19-ノル-プレガン-3.α-オール-20-オン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07J 43/00 20060101AFI20230721BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20230721BHJP
   C07J 7/00 20060101ALI20230721BHJP
   C07J 1/00 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C07J43/00 CSP
A61K31/58
A61P25/00
A61P25/20
A61P25/24
A61P25/18
A61P25/08
A61P25/28
A61P29/00
A61P9/10
A61P25/30
A61P27/16
C07J7/00
C07J1/00
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023093131
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2020531058の分割
【原出願日】2018-12-07
(31)【優先権主張番号】62/731,539
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/596,725
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514058913
【氏名又は名称】セージ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フランセスコ ジー. サリトゥロ
(72)【発明者】
【氏名】アルバート ジーン ロビチャウド
(57)【要約】
【課題】 疾患を処置する方法を提供すること
【解決手段】 式(I)
(式中、R3a、R、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、R、R、R16a、R16b、R7a、R7b、R12a、R12b、R11a、R11b、R2a、R2b、R19、R4a、およびR4bは、本明細書中に定義されている)のジュウテリウム化された化合物またはその薬学的に許容され得る塩を本明細書中に提供する。式(I)の化合物を含む薬学的組成物および、例えば、CNS関連障害の処置において前述の化合物を使用する方法も本明細書中に提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I-Cの化合物
【化24】
であって、以下の表:
【表3-1】
【表3-2】
(ここで、ジュウテリウムと記していないいずれの原子も、その天然の同位体存在度で存在している)で特定される化合物からなる群から選択される、化合物
【請求項2】
請求項1に記載の化合物の薬学的に許容され得る塩。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項4】
CNS関連障害の処置を必要とする被験体におけるCNS関連障害を処置するための組成物であって有効量の請求項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩含む、組成物
【請求項5】
前記CNS関連障害は、睡眠障害、気分障害、統合失調症スペクトラム障害、痙攣障害、記憶および/または認知の障害、運動障害、人格障害、自閉症スペクトラム障害、疼痛、外傷性脳損傷、脈管疾患、物質乱用障害および/または離脱症候群、耳鳴、あるいはてんかん発作重積状態である、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記CNS関連障害は、産後うつまたは大うつ病性障害である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
式A9の化合物:
【化25】
を調製するための方法であって、
式A8の化合物:
【化26】
を調製する工程であって、式A7の化合物:
【化27】
を、非重水素化溶媒の存在下で、重水素化系で重水素化することにより、前記式A8の化合物を提供する工程、および
酸の存在下で、式A8の化合物をBr と反応させて、前記式A9の化合物を提供する工程
を含む、方法。
【請求項8】
式A2の化合物:
【化28】
を調製するための方法であって、式A1の化合物:
【化29】
を、ルイス酸および有機溶媒の存在下で、重水素化ヨードメタンおよびマグネシウムと反応させて、前記式A2の化合物を提供する工程による、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、米国出願第62/596,725号(2017年12月8日出願)および米国出願第62/731,539号(2018年9月14日出願)(各々の内容全体が、本明細書中で参考として援用される)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
脳の興奮性は、昏睡状態から痙攣に及ぶ連続である動物の覚醒レベルと定義され、様々な神経伝達物質によって制御されている。一般に、神経伝達物質は、ニューロン膜を横断するイオンのコンダクタンスの制御に関与する。安静時、ニューロン膜は、およそ-70mVという電位(または膜電圧)を有し、細胞内部は、細胞外部に対して負である。電位(電圧)は、ニューロン半透膜を横断するイオン(K、Na、Cl、有機アニオン)バランスの結果である。神経伝達物質は、前シナプス小胞に貯蔵され、ニューロン性活動電位の影響下において放出される。シナプス間隙へ放出されると、アセチルコリンなどの興奮性の化学伝達物質は、膜の脱分極(-70mVから-50mVへの電位の変化)を引き起こす。この作用は、Naイオンに対する膜透過性を高めるアセチルコリンによって刺激されるシナプス後ニコチン性レセプターにより媒介される。低下した膜電位は、シナプス後活動電位の形でニューロンの興奮性を刺激する。
【0003】
GABAレセプター複合体(GRC)の場合、脳の興奮性に対する作用は、神経伝達物質であるγアミノ酪酸(GABA)によって媒介される。脳内の最大40%のニューロンが、GABAを神経伝達物質として利用するので、GABAは、脳全体の興奮性に対して著しい影響を及ぼす。GABAは、ニューロン膜を横断する塩素イオンのコンダクタンスを制御することによって個々のニューロンの興奮性を制御する。GABAは、GRC上の認識部位と相互作用することにより、塩素イオンがGRCの電気化学勾配の下方に向かって細胞内に流れるのを促進する。このアニオンのレベルの細胞内上昇は、膜内外電位の過分極を引き起こし、興奮性入力に対するニューロンの感受性を低下させる(すなわち、ニューロンの興奮性が低下する)。換言すれば、ニューロン内の塩素イオン濃度が高いほど、脳の興奮性および覚醒レベルは低下する。
【0004】
GRCは、不安、発作活動および鎮静の媒介に関与することが充分証明されている。従って、GABA、およびGABAのように作用するかまたはGABAの作用を増強する薬物(例えば、治療的に有用なバルビツレートおよびベンゾジアゼピン(BZ)、例えば、Valium(登録商標))は、GRC上の特異的な制御部位と相互作用することによってその治療的に有用な効果をもたらす。蓄積された証拠から、現在、GRCは、ベンゾジアゼピンおよびバルビツレート結合部位に加えて、神経刺激性ステロイドのための別個の部位を含むと示唆されている。例えば、Lan,N.C.ら,Neurochem.Res.(1991)16:347-356を参照のこと。
【0005】
神経刺激性ステロイドは、内因的に生じ得る。最も強力な内因性神経刺激性ステロイドは、3α-ヒドロキシ-5-還元型プレグナン-20-オンおよび3α-21-ジヒドロキシ-5-還元型プレグナン-20-オン(それぞれ、ホルモン性ステロイドであるプロゲステロンおよびデオキシコルチコステロンの代謝産物)である。これらのステロイド代謝産物が脳の興奮性を変化させる能力は、1986年に認識された(Majewska,M.D.ら,Science 232:1004-1007(1986);Harris
on,N.L.ら,J Pharmacol.Exp.Ther.241:346-353(1987))。
脳の興奮性に対する調節物質、ならびにCNS関連疾患の予防および処置のための薬剤として作用する新規および改善された化合物が必要とされている。本明細書中に記載される化合物、組成物および方法は、この目的に対するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Lan,N.C.ら,Neurochem.Res.(1991)16:347-356
【非特許文献2】Majewska,M.D.ら,Science 232:1004-1007(1986)
【非特許文献3】Harrison,N.L.ら,J Pharmacol.Exp.Ther.241:346-353(1987)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、GABA調節因子として作用するように設計された神経刺激性ステロイドを本明細書中に提供する。式(I)の化合物は、天然に存在するレベルを超えるジュウテリウムを含む化合物である。一部の実施形態では、かかる化合物は、CNS関連障害を処置するための治療剤として有用であることが想定される。
【0008】
1つの局面において、式(I)
【化1】
(式中、R3aは、1またはそれを超えるジュウテリウムまたはX-OXが独立して存在するように必要に応じて置換されたC~Cアルキルであり、ここで、XおよびXの各々は、独立して、もう1つのジュウテリウムが存在するように必要に応じて置換されたC~Cアルキレンであり;R、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、R、R、R16a、R16b、R7a、R7b、R12a、R12b、R11a、R11b、R2a、R2b、R19、R4a、およびR4bの各々は、独立して、水素およびジュウテリウムからなる群から選択され、ただし、 (a)R3aが、ジュウテリウムもX-OXも存在しないC~Cアルキルであり、ここで、XおよびXの各々は、独立して、ジュウテリウムが存在しないC~Cアルキレンである場合、R、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、R、およびR、R16a、R16b、R7a、R7b、R12a、R12b、R11a、R11b、R2a、R2b、R19、R4a、およびR4bの少なくとも1つはジュウテリウムであるか、あるいは (b)R、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、R、R、R16a、R16
、R7a、R7b、R12a、R12b、R11a、R11b、R2a、R2b、R19、R4a、およびR4bの全てが水素である場合、R3aは、1またはそれを超えるジュウテリウムまたはX-OXが独立して存在するように置換されたC~Cアルキルであり、ここで、XおよびXは、少なくとも1つのジュウテリウムが存在するように置換されなければならない)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩が本明細書中に提供される。
【0009】
一部の実施形態では、R3aは、0~7のジュウテリウムまたはX2a-OX3aが独立して存在するように置換されたC1~C3アルキルであり、ここで、X2aは、0~7のジュウテリウムが独立して存在するように置換されたC1~C3アルキレンであり、X3aは、0~7のジュウテリウムが独立して存在するように置換されたC1~C3アルキレンである。一部の実施形態では、R3aが-CH3である場合、R5、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、Rm、およびRnの少なくとも1つはジュウテリウムであるか、あるいは、R5、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、Rm、およびRnの全てが水素である場合、R3aは、1~3のジュウテリウムが独立して存在するように置換されたメチル基である。一部の実施形態では、R3aは、-CH3およびCD3からなる群から選択される。一部の実施形態では、R3aは-CH3である。一部の実施形態では、R3aは-CD3である。一部の実施形態では、R5、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、Rm、Rn、R16a、R16b、R7a、R7b、R12a、R12b、R11a、R11b、R2a、R2b、R19、R4a、およびR4bの少なくとも1つはジュウテリウムである。一部の実施形態では、R5、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、Rm、およびRnの少なくとも1つはジュウテリウムである。一部の実施形態では、R3aは-CH3であり、R5、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、Rm、Rn、R16a、R16b、R7a、R7b、R12a、R12b、R11a、R11b、R2a、R2b、R19、R4a、およびR4bの少なくとも1つはジュウテリウムである。一部の実施形態では、R3aは-CH3であり、R5、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、Rm、およびRnの少なくとも1つはジュウテリウムである。一部の実施形態では、R5およびR6aは水素である。一部の実施形態では、R5およびR6aはジュウテリウムである。一部の実施形態では、R17は水素である。一部の実施形態では、R17はジュウテリウムである。一部の実施形態では、R21aおよびR21bの各々は、独立して、水素およびジュウテリウムからなる群から選択される。一部の実施形態では、R21aおよびR21bは、水素である。一部の実施形態では、R21aおよびR21bは、ジュウテリウムである。一部の実施形態では、RmおよびRnは、水素である。一部の実施形態では、RmおよびRnは、ジュウテリウムである。一部の実施形態では、R21a、R21b、Rm、およびRnは、ジュウテリウムである。一部の実施形態では、R17およびR16aはジュウテリウムであり、R16bは水素である。一部の実施形態では、R19は水素である。
【0010】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-A)
【化2】
の化合物である。
【0011】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-B)
【化3】
の化合物である。
【0012】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-C)
【化4】
の化合物である。
【0013】
一部の実施形態では、式(I-C)の化合物は、以下の表1で特定される化合物からなる群から選択される:
【表1-1】
(ここで、ジュウテリウムと記していないいずれの原子も、その天然の同位体存在度で存在している)。
【0014】
1つの局面において、本明細書中に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)の薬学的に許容され得る塩を本明細書中に提供する。
【0015】
1つの局面において、本明細書中に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)またはその薬学的に許容され得る塩、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む薬学的組成物を本明細書中に提供する。ある特定の実施形態において、本発明の化合物は、薬学的組成物中に有効量で提供される。ある特定の実施形態において、本発明の化合物は、治療有効量で提供される。
【0016】
本明細書中に記載されるような本発明の化合物は、ある特定の実施形態において、例えば、GABAAレセプターに正または負の様式で作用する(effect)GABA調節因子として作用する。そのような化合物は、GABAAレセプターを調節する能力によって媒介されるような中枢神経系(CNS)の興奮性の調節因子として、CNS活性を有すると予想される。
【0017】
従って、別の局面において、CNS関連障害の処置を必要とする被験体において、CNS関連障害を処置する方法が提供され、この方法は、この被験体に、有効量の本発明の化合物を投与する工程を包含する。ある特定の実施形態において、CNS関連障害は、睡眠障害、気分障害、統合失調症スペクトラム障害、痙攣障害、記憶および/または認知の障害、運動障害、人格障害、自閉症スペクトラム障害、疼痛、外傷性脳損傷、脈管疾患、物質乱用障害および/または離脱症候群、耳鳴、あるいはてんかん発作重積状態である。ある特定の実施形態において、CNS関連障害は、うつである。ある特定の実施形態において、CNS関連障害は、産後うつである。ある特定の実施形態において、CNS関連障害は、大うつ病性障害である。ある特定の実施形態において、大うつ病性障害は、中程度の大うつ病性障害である。ある特定の実施形態において、大うつ病性障害は、重度の大うつ病性障害である。特定の実施形態において、この化合物は、経口投与、皮下投与、静脈内投与、または筋肉内投与される。特定の実施形態において、この化合物は、経口投与される。特定の実施形態において、この化合物は、長期投与される。特定の実施形態において、この化合物は、例えば、連続的な静脈内注入によって連続投与される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の特定の実施形態の詳細な説明
本明細書中に一般的に記載されるように、本発明は、例えば、GABA調節因子として作用するように設計されたジュウテリウム富化神経刺激性ステロイドを提供する。ある特定の実施形態において、かかる化合物は、CNS関連障害(例えば、本明細書中に記載の障害、例えば、産後うつまたは大うつ病性障害などのうつ)を処置するための治療剤として有用であることが想定される。
【0019】
定義
化学的定義
【0020】
特定の官能基および化学的用語の定義を下記で詳細に説明する。化学元素は、元素周期表(CASバージョン,Handbook of Chemistry and Physics,第75版,内表紙)に従って特定され、特定の官能基は、一般に、その中に記載されているとおりに定義される。さらに、有機化学の通則、ならびに特定の官能性部分および反応性は、Thomas Sorrell,Organic Chemistry,University Science Books,Sausalito,1999;SmithおよびMarch,March’s Advanced Organic Chemistry,第5版,John Wiley & Sons,Inc.,New
York,2001;Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers,Inc.,New York,1989;およびCarruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis,第3版,Cambridge University Press,Cambridge,1987に記載されている。
【0021】
本明細書中に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物、例えば、式(I)の化合物)は、ジュウテリウム富化されている。
【0022】
ジュウテリウム(Dまたは2H)は、水素の安定な非放射性同位体であり、原子量は2.0144である。水素は、同位体1H(水素またはプロチウム)、D(2Hまたはジュウテリウム)、およびT(3Hまたはトリチウム)の混合物として天然に存在する。ジュウテリウムの天然存在度は0.015%である。当業者は、H原子を有する全ての化合物において、H原子が実際はHとDの混合物として存在し、約0.015%がDであることを認識している。したがって、その天然存在度0.015%を超えるレベルに富化されているジュウテリウムを有する化合物は、非天然であり、結果として、その非富化対応物に対して新規であると考えられるべきである。
【0023】
化合物の代謝特性に対するジュウテリウム修飾の効果は、ジュウテリウム原子が既知の代謝部位に組み込まれる場合でさえ、予想不可能である。ジュウテリウム化化合物を実際に調製して試験することによってのみ、代謝率がその非ジュウテリウム化対応物の代謝率と異なるかどうか、どのように異なるのかを判定することができる。例えば、Fukutoら(J.Med.Chem.1991,34,2871-76)を参照のこと。多数の化合物は、代謝可能な部位を複数有する。たとえあったとしても、代謝に対する効果を見出すためにジュウテリウム置換が必要とされる部位(複数可)および必要なジュウテリウム化の程度は、各化合物で異なる。
【0024】
別段述べられない限り、ある位置が「H」または「水素」と具体的に指定される場合、その位置は、その天然存在度の同位体組成で水素(すなわち、1H)を有すると理解される。また、別段述べられない限り、ある位置が「D」または「ジュウテリウム」と具体的に指定される場合、その位置は、0.015%であるジュウテリウムの天然存在度の少なくとも3000倍のジュウテリウム(すなわち、2H)を有すると理解される(すなわち
、用語「D」または「ジュウテリウム」は、少なくとも45%のジュウテリウムの組み込みを示す)。
【0025】
本明細書中で使用される用語「同位体富化係数」は、本発明の化合物中の特定の位置でのDの同位体存在度と天然に存在するその同位体の存在度との間の比を意味する。
【0026】
化合物(例えば、式(I)の化合物)中のジュウテリウムの存在量の増加を、「ジュウテリウム富化」と呼び、かかる化合物を「ジュウテリウム富化」化合物と呼ぶ。具体的に示さない場合、富化のパーセンテージは、化合物中に存在するジュウテリウムのパーセンテージを指す。
【0027】
他の実施形態において、本発明の化合物における化合物上の潜在的なジュウテリウム化部位に指定される部位に存在する各ジュウテリウムの同位体富化係数は、少なくとも3500(52.5.%ジュウテリウム取り込み)、少なくとも4000(60%ジュウテリウム取り込み)、少なくとも4500(67.5%ジュウテリウム取り込み)、少なくとも5000(75%ジュウテリウム取り込み)、少なくとも5500(82.5%ジュウテリウム取り込み)、少なくとも6000(90%ジュウテリウム取り込み)、少なくとも6466.7(97%ジュウテリウム取り込み)、少なくとも6633.3(99.5%ジュウテリウム取り込み)である。ジュウテリウム化部位として指定される部位に存在する各ジュウテリウムの同位体富化係数は、他のジュウテリウム化部位と独立していると理解される。例えば、化合物上に2つのジュウテリウム化部位が存在する場合、一方の部位が52.5%ジュウテリウム化され得る一方で、他方は75%ジュウテリウム化され得る。得られた化合物は、同位体富化係数が少なくとも3500(52.5%)である化合物と考えられる。
【0028】
ジュウテリウムの天然存在度が約0.015%である場合、本明細書中に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)中の6,667個の天然に存在する水素の位置につきおよそ1つに、ジュウテリウムが存在すると予想される。
【0029】
存在するジュウテリウムの量についての所与のパーセンテージは、モルパーセンテージである。
【0030】
実験室において実験室規模の量(例えば、ミリグラムまたはそれを超える)の化合物のいずれか1つの部位において100%ジュウテリウム化を達成するのは困難であり得る。100%ジュウテリウム化が記載されている場合、または、ジュウテリウム原子が構造中に具体的に示されている場合は、少量の水素が依然として存在し得ることが想定されている。プロトンをジュウテリウムと交換するか、または富化した出発物質を用いて分子を合成することによってジュウテリウムを富化することができる。
【0031】
式(I)のジュウテリウム富化化合物の単離または精製も本明細書中に記載する。単離または精製された式(I)のジュウテリウム富化化合物である。
【0032】
異性体(例えば、立体異性体)は、当業者に公知の方法(キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)ならびにキラル塩の形成および結晶化を含む)によって混合物から単離され得るか;または好ましい異性体が、不斉合成によって調製され得る。例えば、Jacquesら、Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley Interscience,New York,1981);Wilenら、Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel,Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw-Hill,NY,1962);およびWilen,Tables of Resolv
ing Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel編者,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972)を参照のこと。本発明はさらに、本明細書中に記載される化合物を、他の異性体を実質的に含まない個々の異性体として、およびあるいは様々な異性体の混合物として、含む。
【0033】
本明細書中で使用される場合、純粋なエナンチオマー化合物は、化合物の他のエナンチオマーまたは立体異性体を実質的に含まない(すなわち、エナンチオマー過剰)。換言すれば、「S」型の化合物は、「R」型の化合物を実質的に含まず、従って「R」型のエナンチオマー過剰である。用語「エナンチオマー的に純粋な」または「純粋なエナンチオマー」とは、化合物が、75重量%超、80重量%超、85重量%超、90重量%超、91重量%超、92重量%超、93重量%超、94重量%超、95重量%超、96重量%超、97重量%超、98重量%超、98.5重量%超、99重量%超、99.2重量%超、99.5重量%超、99.6重量%超、99.7重量%超、99.8重量%超または99.9重量%超のエナンチオマーを含むことを意味する。特定の実施形態において、重量は、化合物の全てのエナンチオマーまたは立体異性体の総重量に基づく。
【0034】
本明細書中で提供される組成物では、エナンチオマー的に純粋な化合物は、他の活性成分または不活性成分と共に存在し得る。例えば、エナンチオマー的に純粋なR-化合物を含む薬学的組成物は、例えば、約90%の賦形剤および約10%のエナンチオマー的に純粋なR-化合物を含み得る。特定の実施形態において、このような組成物中のエナンチオマー的に純粋なR-化合物は、例えば、化合物の総重量に対して少なくとも約95重量%のR-化合物および多くとも約5重量%のS-化合物を含み得る。例えば、エナンチオマー的に純粋なS-化合物を含む薬学的組成物は、例えば、約90%の賦形剤および約10%のエナンチオマー的に純粋なS-化合物を含み得る。特定の実施形態において、このような組成物中のエナンチオマー的に純粋なS-化合物は、例えば、化合物の総重量に対して少なくとも約95重量%のS-化合物および多くとも約5重量%のR-化合物を含み得る。特定の実施形態において、活性成分は、少量の賦形剤もしくはキャリアと共に製剤化され得るか、または賦形剤もしくはキャリアなしで製剤化され得る。
【0035】
用語「ジアステレオマー的に純粋な」は、化合物が75重量%を超える、80重量%を超える、85重量%を超える、90重量%を超える、91重量%を超える、92重量%を超える、93重量%を超える、94重量%を超える、95重量%を超える、96重量%を超える、97重量%を超える、98重量%を超える、98.5重量%を超える、99重量%を超える、99.2重量%を超える、99.5重量%を超える、99.6重量%を超える、99.7重量%を超える、99.8重量%を超える、または99.9重量%を超える単一のジアステレオマーを含むことを意味する。ジアステレオマー純度およびエナンチオマー純度の決定方法は、当該分野で周知である。ジアステレオマー純度は、化合物とそのジアステレオマーとを定量的に区別することができる任意の分析方法(高速液体クロマトグラフィー(HPLC)など)によって決定することができる。
【0036】
冠詞「a」および「an」は、その冠詞の文法上の目的語が1つまたはそれより多い(すなわち、少なくとも1つである)ことを指すために本明細書中で使用され得る。例として、「アナログ(an analogue)」は、1つのアナログまたは1つより多いアナログを意味する。
【0037】
ある範囲の値が列挙される場合、その範囲内の各値および部分範囲を包含することが意図される。例えば、「C1~6アルキル」は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C1~6、C1~5、C1~4、C1~3、C1~2、C2~6、C2~5、C2~4、C2~3、C3~6、C3~5、C3~4、C4~6、C4~5、およびC5~6のアルキ
ルを包含すると意図される。C2~5
【0038】
以下の用語は、それに関して以下に提示される意味を有することを意図され、そして本明細書および本発明の意図される範囲を理解する際に有用である。
【0039】
「アルキル」とは、1~4個の炭素原子を有する直鎖または分枝の飽和炭化水素基のラジカル(「C1~4アルキル」)のことを指す。一部の実施形態において、アルキル基は、1個~3個の炭素原子を有する(「C1~3アルキル」)。一部の実施形態において、アルキル基は、1個~2個の炭素原子を有する(「C1~2アルキル」)。一部の実施形態において、アルキル基は、1個の炭素原子を有する(「C1アルキル」)。別段特定されない限り、アルキル基の各存在は、独立して、必要に応じて置換され、すなわち、置換されない(「非置換アルキル」)か、または1つもしくはそれより多くの置換基;例えば、1~3個の置換基もしくは1個の置換基で置換される(「置換アルキル」)。ある特定の実施形態において、アルキル基は、非置換C1~4アルキル(例えば、-CH3)である。ある特定の実施形態において、アルキル基は、置換C1~4アルキルである。一般的なアルキルの略号としては、Me(-CH3)、Et(-CH2CH3)またはiPr(-CH(CH3)2)が挙げられる。
【0040】
「対イオン」または「アニオン性対イオン」は、電気的中性を維持するためにカチオン性の第4級アミノ基と会合する負に帯電した基である。例示的な対イオンとしては、ハロゲン化物イオン(例えば、F-、Cl-、Br-、I-)、NO3-、ClO4-、OH-、H2PO4-、HSO4-、スルホネートイオン(例えば、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、p-トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、10-カンファースルホネート、ナフタレン-2-スルホネート、ナフタレン-1-スルホン酸-5-スルホネート、エタン-1-スルホン酸-2-スルホネートなど)およびカルボキシレートイオン(例えば、アセテート、エタノエート、プロパノエート、ベンゾエート、グリセレート、ラクテート、タルトレート、グリコレートなど)が挙げられる。
【0041】
これらおよび他の例示的な置換基は、詳細な説明および特許請求の範囲において詳細に記載されている。本発明は、いかなる方法によっても上記の置換基の例示的な列挙によって限定されないと意図されている。
【0042】
他の定義
本明細書中で使用される場合、用語「調節」とは、GABAレセプター機能の阻害または相乗作用のことを指す。「調節因子」(例えば、調節因子化合物)は、例えば、GABAレセプターのアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト、または部分アンタゴニストであり得る。
【0043】
「薬学的に受容可能な」とは、連邦もしくは州政府の規制当局、または米国以外の国の対応する当局によって承認されているかまたは承認可能であること、あるいは米国薬局方または動物(より具体的には、ヒト)で使用するための他の一般に認められている薬局方に記載されていることを意味する。
【0044】
「薬学的に受容可能な塩」とは、薬学的に受容可能であり、そして親化合物の所望の薬理活性を有する、本発明の化合物の塩のことを指す。特に、このような塩は非毒性であり、無機酸付加塩または有機酸付加塩および無機塩基付加塩または有機塩基付加塩であり得る。具体的には、このような塩としては、(1)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などと形成される;もしくは有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒド
ロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などと形成される酸付加塩;あるいは(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンで置き換えられるか;または有機塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミンなどと配位する場合に形成される塩が挙げられる。塩としてはさらに、ほんの一例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなど;および化合物が塩基性官能基を含む場合には、非毒性有機酸または無機酸の塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩などが挙げられる。用語「薬学的に受容可能なカチオン」とは、酸性官能基の受容可能なカチオン性対イオンのことを指す。このようなカチオンは、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオン、アンモニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオンなどによって例示される。例えば、Bergeら、J.Pharm.Sci.(1977)66(1):1-79を参照のこと。
【0045】
用語「プロドラッグ」は、生理学的条件下で本発明の治療活性薬剤に変換される化合物を含むことが意図される。プロドラッグの共通の作製方法は、所望の分子が現れるように生理学的条件下で加水分解される選択部分を含めることである。他の実施形態において、プロドラッグは、被験体の酵素活性によって変換される。
【0046】
一部の実施形態では、式(I)の化合物はプロドラッグであり、ここで、プロドラッグは、式(I)に示される通りのC3ヒドロキシ上に切断可能な部分を含む。例示的なヒドロキシ含有プロドラッグには、例えば、エステルが含まれる。
【0047】
「溶媒和物」とは、通常は加溶媒分解反応によって、溶媒または水(「水和物」とも称される)と会合している化合物の形態を指す。この物理的会合は、水素結合を含む。従来の溶媒としては、水、エタノール、酢酸などが挙げられる。本発明の化合物は、例えば結晶形で調製され得、そして溶媒和または水和され得る。適切な溶媒和物としては、薬学的に受容可能な溶媒和物、例えば水和物が挙げられ、化学量論的溶媒和物および非化学量論的溶媒和物の両方がさらに挙げられる。特定の例では、溶媒和物は、例えば、1個またはそれより多くの溶媒分子が結晶固体の結晶格子に組み込まれる場合に単離することができるであろう。「溶媒和物」とは、溶液相および単離可能な溶媒和物の両方を包含する。代表的な溶媒和物としては、水和物、エタノラートおよびメタノラートが挙げられる。
【0048】
「立体異性体」:同じ分子式を有するが、原子の性質もしくは結合順序または空間における原子配置の点で異なる化合物は、「異性体」と称されることも理解されるべきである。空間における原子配置の点で異なる異性体は、「立体異性体」と称される。互いの鏡像ではない立体異性体は、「ジアステレオマー」と称され、そして互いに重ね合わせることができない鏡像であるものは、「エナンチオマー」と称される。例えば、化合物が不斉中心を有する場合、それは、4個の異なる基に結合しており、一組のエナンチオマーが可能である。エナンチオマーは、その非対称中心の絶対配置により特徴付けられ得、そしてカーンおよびプレローグのRおよびS順序付けルールによって表されるか、あるいは分子が偏光面を回転させる方法によって表され、そして右旋性または左旋性(すなわち、それぞれ(+)または(-)-異性体)と表記される。キラル化合物は、個々のエナンチオマーとして、またはそれらの混合物としてのいずれかで存在し得る。等しい割合のエナンチオ
マーを含む混合物は、「ラセミ混合物」と称される。
【0049】
「互変異性体」とは、交換可能な形態の特定の化合物構造の化合物であって、そして水素原子および電子の変位が変動する化合物のことを指す。従って、2つの構造は、π電子および原子(通常はH)の移動によって平衡状態にあり得る。例えば、エノールおよびケトンは、酸または塩基のいずれかによる処理によって迅速に相互変換されるので互変異性体である。互変異性の別の例は、酸または塩基による処理によって同様に形成されるフェニルニトロメタンの酸形態およびニトロ形態である。互変異性体は、目的の化合物の最適な化学的反応性および生物学的活性の獲得に関連し得る。
【0050】
投与が企図された「被験体」としては、ヒト(すなわち、任意の年齢群、例えば、小児被験体(例えば、乳児、小児、青年)または成人被験体(例えば、若年成人、中年成人または高齢成人)の男性または女性)および/または非ヒト動物、例えば、哺乳動物(例えば、霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、げっ歯類、ネコおよび/またはイヌ)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、被験体は、ヒトである。ある特定の実施形態において、被験体は、非ヒト動物である。
【0051】
疾患、障害、および状態は、本明細書中で交換可能に使用される。
【0052】
本明細書中で使用される場合、他に特定されない限り、用語「処置する(treat)」、「処置する(treating)」および「処置(treatment)」は、被験体が特定の疾患、障害または状態を罹患している間に行われ、その疾患、障害または状態の重篤度を低下させるか、あるいは疾患、障害または状態の進行を遅延させるかまたは遅くする行為を想定する。
【0053】
一般に、化合物の「有効量」とは、所望の生物学的応答を惹起するため、例えば、CNS関連障害を処置するために充分な量のことを指し、麻酔または鎮静を誘導するために充分である。当業者によって理解されるように、本発明の化合物の有効量は、所望の生物学的目標、化合物の薬物動態学、処置される疾患、投与様式、ならびに被験体の年齢、体重、健康状態、および状態などの要因に依存して、変わり得る。
【0054】
本明細書中で使用される場合、他に特定されない限り、化合物の「治療有効量」とは、疾患、障害または状態の処置において治療上の利点を提供するか、あるいはその疾患、障害または状態に関連する1つまたはそれより多くの症状を遅延させるかまたは最小にするために充分な量である。化合物の治療有効量とは、その疾患、障害または状態の処置において治療上の利点を提供する、単独でかまたは他の治療と組み合わせての、治療剤の量を意味する。用語「治療有効量」は、治療全体を改善させる量、疾患または状態の症状または原因を減少させるかまたは回避する量、あるいは別の治療剤の治療効力を増強する量を包含し得る。
【0055】
代替の実施形態において、式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくは薬学的に許容され得る組成物を、「予防有効量」で投与することもできる。本明細書中で使用される場合、他に特定されない限り、化合物の「予防有効量」とは、疾患、障害もしくは状態、またはその疾患、障害もしくは状態に関連する1つもしくはそれより多くの症状を予防するため、あるいはその再発を予防するために充分な量である。化合物の予防有効量とは、その疾患、障害または状態の予防において予防上の利点を提供する、単独でかまたは他の剤と組み合わせての、治療剤の量を意味する。用語「予防有効量」は、予防全体を改善させる量、または別の予防剤の予防効力を増強する量を包含し得る。
化合物
【0056】
1つの局面において、式(I)
【化5】
(式中、R3aは、1またはそれを超えるジュウテリウムまたはX-OXが独立して存在するように必要に応じて置換されたC~Cアルキルであり、ここで、XおよびXの各々は、独立して、もう1つのジュウテリウムが存在するように必要に応じて置換されたC~Cアルキレンであり;R、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、R、R、R16a、R16b、R7a、R7b、R12a、R12b、R11a、R11b、R2a、R2b、R19、R4a、およびR4bの各々は、独立して、水素およびジュウテリウムからなる群から選択され、ただし、(a)R3aが、ジュウテリウムもX-OXも存在しないC~Cアルキルであり、ここで、XおよびXの各々は、独立して、ジュウテリウムが存在しないC~Cアルキレンである場合、R、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、R、およびR、R16a、R16b、R7a、R7b、R12a、R12b、R11a、R11b、R2a、R2b、R19、R4a、およびR4bの少なくとも1つはジュウテリウムであるか、あるいは(b)R、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、R、R、R16a、R16b、R7a、R7b、R12a、R12b、R11a、R11b、R2a、R2b、R19、R4a、およびR4bの全てが水素である場合、R3aは、1またはそれを超えるジュウテリウムまたはX-OXが独立して存在するように置換されたC~Cアルキルであり、ここで、XおよびXは、少なくとも1つのジュウテリウムが存在するように置換されなければならない)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩が本明細書中に提供される。
【0057】
一部の実施形態では、R3aは、0~7のジュウテリウムまたはX2a-OX3aが独立して存在するように置換されたC1~C3アルキルであり、ここで、X2aは、0~7のジュウテリウムが独立して存在するように置換されたC1~C3アルキレンであり、X3aは、0~7のジュウテリウムが独立して存在するように置換されたC1~C3アルキレンである。一部の実施形態では、R3aが-CH3である場合、R5、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、Rm、およびRnの少なくとも1つはジュウテリウムであるか、あるいは、R5、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、Rm、およびRnの全てが水素である場合、R3aは、1~3のジュウテリウムが独立して存在するように置換されたメチル基である。一部の実施形態では、R3aは、-CH3およびCD3からなる群から選択される。一部の実施形態では、R3aは-CH3である。一部の実施形態では、R3aは-CD3である。一部の実施形態では、R5、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、Rm、Rn、R16a、R16b、R7a、R7b、R12a、R12b、R11a、R11b、R2a、R2b、R19、R4a、およびR4bの少なくとも1つはジュウテリウムである。一部の実施形態では、R5、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、Rm、およびRnの少なくとも1つはジュウテリウムである
。一部の実施形態では、R3aは-CH3であり、R5、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、Rm、Rn、R16a、R16b、R7a、R7b、R12a、R12b、R11a、R11b、R2a、R2b、R19、R4a、およびR4bの少なくとも1つはジュウテリウムである。一部の実施形態では、R3aは-CH3であり、R5、R6a、R6b、R17、R21a、R21b、Rm、およびRnの少なくとも1つはジュウテリウムである。一部の実施形態では、R5およびR6aは水素である。一部の実施形態では、R5およびR6aはジュウテリウムである。一部の実施形態では、R17は水素である。一部の実施形態では、R17はジュウテリウムである。一部の実施形態では、R21aおよびR21bの各々は、独立して、水素およびジュウテリウムからなる群から選択される。一部の実施形態では、R21aおよびR21bは、水素である。一部の実施形態では、R21aおよびR21bは、ジュウテリウムである。一部の実施形態では、RmおよびRnは、水素である。一部の実施形態では、RmおよびRnは、ジュウテリウムである。一部の実施形態では、R21a、R21b、Rm、およびRnは、ジュウテリウムである。一部の実施形態では、R17およびR16aはジュウテリウムであり、R16bは水素である。一部の実施形態では、R19は水素である。
【0058】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-A)
【化6】
の化合物である。
【0059】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-B)
【化7】
の化合物である。
【0060】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-C)
【化8】
の化合物である。
【0061】
一部の実施形態では、式(I-C)の化合物は、以下の表1で特定される化合物からなる群から選択される:
【表1-2】
(ここで、ジュウテリウムと記していないいずれの原子も、その天然の同位体存在度で存在している)。
【0062】
例示的な本発明の化合物を、当業者に公知の方法または一定の参考文献(例えば、米国特許第9,512,165号(本明細書中で参考として援用される))を使用して、以下の公知の出発物質から合成することができる:
【化9】
【0063】
一部の実施形態では、出発物質を使用して、式(I)(式中、R3aは-CD3であり、R21a、R21b、Rm、およびRnの各々は、独立して、水素またはジュウテリウムである)の化合物を合成することができる。一部の実施形態では、出発物質を使用して、式(I)(式中、R3aは-CH3であり、R21a、R21b、Rm、およびRnの各々は、独立して、水素またはジュウテリウムである)の化合物を合成することができる。一部の実施形態では、出発物質を使用して、式(I)(式中、R3aは-CD3であり、R21a、R21bは水素であり、RmおよびRnはジュウテリウムである)の化合物を合成することができる。一部の実施形態では、出発物質を使用して、式(I)(式中、R3aはCH3であり、R21a、R21bは水素であり、RmおよびRnはジュウテリウムである)の化合物を合成することができる。一部の実施形態では、出発物質を使用して、式(I)(式中、R3aは-CD3であり、R21a、R21b、Rm、およびRnはジュウテリウムである)の化合物を合成することができる。一部の実施形態では、出発物質を使用して、式(I)(式中、R3aは-CH3であり、R21a、R21b、Rm、およびRnはジュウテリウムである)の化合物を合成することができる。
【0064】
1つの局面において、本明細書中に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)の薬学的に許容され得る塩を本明細書中に提供する。
【0065】
代替の実施形態
代替の実施形態において、本明細書中に記載される化合物はまた、1つまたはそれより多くの水素以外の原子の同位体置換を含み得る。例えば、炭素は、例えば、13Cまたは14Cであり得る;酸素は、例えば、18Oであり得る;窒素は、例えば、15Nであり得る、などである。他の実施形態において、特定の同位体(例えば、13C、14C、1
8Oまたは15N)は、化合物の特定部位を占める元素の全同位体存在度の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または少なくとも99.9%に相当し得る。
薬学的組成物
【0066】
1つの局面において、本明細書中に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)またはその薬学的に許容され得る塩、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む薬学的組成物を本明細書中に提供する。ある特定の実施形態において、本発明の化合物は、薬学的組成物中に有効量で提供される。ある特定の実施形態において、本発明の化合物は、治療有効量で提供される。
【0067】
特定の実施形態において、薬学的組成物は、有効量の有効成分を含む。特定の実施形態において、薬学的組成物は、治療有効量の有効成分を含む。
【0068】
本明細書中に提供される薬学的組成物は、種々の経路(経口(経腸)投与、非経口(注射による)投与、直腸投与、経皮投与、皮内投与、鞘内投与、皮下(SC)投与、静脈内(IV)投与、筋肉内(IM)投与、および鼻内投与が挙げられるが、これらに限定されない)によって投与され得る。
【0069】
一般的に、本明細書中に提供される化合物は、有効量で投与される。実際に投与される化合物の量は、典型的には、関連する状況(処置される症状、選択される投与経路、投与される実際の化合物、個々の患者の年齢、体重および応答、患者の症候の重症度などを含む)に照らして、医師によって決定される。
【0070】
CNS障害の発生を予防するために使用されるとき、本明細書中に提供される化合物は、典型的には、医師の助言によりおよび医師の監視下において、上に記載された投与量レベルで、その症状を発症する危険がある被験体に投与され得る。特定の症状を発症する危険がある被験体としては、一般に、その症状の家族歴を有する被験体、またはその症状の発症の影響を特に受けやすいと遺伝子検査もしくはスクリーニングによって特定された被験体が挙げられる。
【0071】
本明細書中に提供される薬学的組成物はまた、長期投与される(「長期投与」)。長期投与とは、長期間、例えば、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年、3年、5年などにわたるか、または例えば、被験体の寿命の残りの期間にわたって無期限に継続され得る、化合物またはその薬学的組成物の投与のことを指す。ある特定の実施形態において、長期投与は、長期間にわたって血中に一定レベルの、例えば、治療濃度域(therapeutic window)内の化合物を提供するように意図されている。
【0072】
本発明の薬学的組成物はさらに、種々の投薬方法を使用して送達され得る。例えば、特定の実施形態において、この薬学的組成物は、ボーラスとして、例えば、血液中でその化合物の濃度を有効レベルまで上昇させる目的で、与えられ得る。ボーラス用量の配置は、身体全体で望まれる活性成分の全身レベルに依存し、例えば、筋肉内または皮下のボーラス用量は、活性成分のゆっくりとした放出を可能にし、一方で、静脈に直接送達されるボーラス(例えば、IV滴注による)は、より速い送達を可能にし、これは、血液中の活性成分の濃度を有効レベルまで迅速に上昇させる。他の実施形態において、この薬学的組成物は、連続注入として、例えば、IV滴注によって投与されて、被験体の身体内での、活性成分の定常状態濃度の維持を提供し得る。さらに、なおさらに他の実施形態において、
この薬学的組成物は、最初にボーラス用量として投与され得、その後、連続注入が行われ得る。
【0073】
経口投与用の組成物は、バルクの液体の溶液もしくは懸濁液またはバルクの粉末の形態をとり得る。しかしながら、より一般的には、組成物は、正確な投薬を促進する単位剤形で提供される。用語「単位剤形」とは、ヒト被験体および他の哺乳動物に対する単位投与量として好適な物理的に不連続の単位のことを指し、各単位は、好適な薬学的賦形剤とともに所望の治療効果をもたらすと計算される所定量の活性な材料を含む。典型的な単位剤形としては、液体組成物の予め測定され予め充填されたアンプルもしくは注射器、または固体組成物の場合は丸剤、錠剤、カプセルなどが挙げられる。そのような組成物では、化合物は、通常、少量の成分(約0.1~約50重量%または好ましくは約1~約40重量%)であり、残りは、様々なビヒクルまたは賦形剤および所望の投薬形態を形成するのに役立つ加工助剤である。
【0074】
経口投与の場合、1日あたり1~5回、特に2~4回、典型的には3回の経口投与が、代表的なレジメンである。これらの投薬パターンを使用するとき、各用量は、約0.01~約20mg/kgの本明細書中に提供される化合物をもたらし、好ましい用量は、各々、約0.1~約10mg/kg、特に、約1~約5mg/kgをもたらす。
【0075】
経皮用量は一般に、注射用量を使用して達成されるレベルと類似であるかまたはより低い血液中レベルを提供するように選択され、一般に、約0.01重量%~約20重量%、好ましくは、約0.1重量%~約20重量%、好ましくは、約0.1重量%~約10重量%、そしてより好ましくは、約0.5重量%~約15重量%の範囲の量である。
【0076】
注射剤の用量レベルは、約0.1mg/kg/時~少なくとも20mg/kg/時の範囲であり、すべて約1~約120時間、特に、24~96時間にわたる。約0.1mg/kg~約10mg/kgまたはそれより多くの前負荷ボーラス(preloading bolus)も、適切な定常状態レベルを達成するために投与されてもよい。最大総用量は、40~80kgのヒト患者にとって約5g/日を越えると予想されない。
【0077】
経口投与に適した液体の形態は、緩衝剤、懸濁化剤および予製剤(dispensing agents)、着色剤、香料などを含む好適な水性または非水性のビヒクルを含み得る。固体の形態は、例えば、以下の成分または同様の性質の化合物のいずれかを含み得る:結合剤(例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトース)、崩壊剤(例えば、アルギン酸、Primogelまたはトウモロコシデンプン);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム);滑剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素);甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン);または香味料(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバー)。
【0078】
注射可能組成物は、典型的には、注射可能な滅菌された生理食塩水もしくはリン酸緩衝生理食塩水または当該分野で公知の他の注射可能な賦形剤に基づくものである。従来どおり、そのような組成物における活性な化合物は、典型的には、しばしば約0.05~10重量%である微量の成分であり、残りは、注射可能な賦形剤などである。
【0079】
経皮的組成物は、典型的には、活性成分(単数または複数)を含む局所的軟膏またはクリームとして製剤化される。軟膏として製剤化されるとき、活性成分は、典型的には、パラフィン軟膏基剤または水混和性軟膏基剤と混和される。あるいは、活性成分は、例えば、水中油型クリーム基剤を含む、クリームとして製剤化され得る。そのような経皮的製剤は、当該分野で周知であり、一般に、活性成分または製剤の皮膚浸透力または安定性を高
めるさらなる成分を含む。そのような公知の経皮的製剤および成分のすべてが、本明細書中に提供される範囲内に含まれる。
【0080】
本明細書中に提供される化合物は、経皮的デバイスによっても投与され得る。従って、経皮的投与は、レザバータイプもしくは多孔質膜タイプまたは固体マトリックス種類のパッチを用いて達成され得る。
【0081】
経口的に投与可能な、注射可能な、または局所的に投与可能な組成物について上に記載された構成要素は、単に代表的なものである。他の材料ならびに加工手法などは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第17版,1985,Mack Publishing Company,Easton,PennsylvaniaのPart8(参照により本明細書中に援用される)に示されている。
【0082】
本発明の化合物はまた、徐放形態でまたは徐放薬物送達系から投与され得る。代表的な徐放材料の説明は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに見出すことができる。
【0083】
本発明は、本発明の化合物の薬学的に受容可能な酸付加塩にも関する。薬学的に受容可能な塩を調製するために使用され得る酸は、無毒性の酸付加塩、すなわち、薬理学的に許容され得るアニオンを含む塩(例えば、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、安息香酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩など)を形成する酸である。
【0084】
別の局面において、本発明は、本発明の化合物および薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物(例えば、静脈内(IV)投与などの注射に適切な組成物)を提供する。
【0085】
薬学的に受容可能な賦形剤としては、所望の特定の剤形、例えば注射に適切な任意の全ての希釈剤または他の液体ビヒクル、分散助剤または懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、防腐剤、滑沢剤などが挙げられる。薬学的組成物の製剤化および/または製造における一般的な考察は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980),and Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第21版(Lippincott Williams&Wilkins,2005)に見出すことができる。
【0086】
例えば、注射用調製物、例えば滅菌注射用水性懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、公知の技術によって製剤化され得る。用いられ得る例示的な賦形剤としては、水、滅菌生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水、またはリンゲル液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
特定の実施形態において、薬学的組成物は、シクロデキストリン誘導体をさらに含む。最も一般的なシクロデキストリンは、結合される糖部分上に必要に応じて1個またはそれより多くの置換基(それらとしては、置換または非置換のメチル化、ヒドロキシアルキル化、アシル化およびスルホアルキルエーテル置換が挙げられるが、これらに限定されない)を含む、それぞれ6個、7個および8個のα-1,4-結合グルコース単位からなるα-、β-およびγ-シクロデキストリンである。特定の実施形態において、シクロデキストリンは、スルホアルキルエーテルβ-シクロデキストリン、例えば、CAPTISOL(登録商標)としても公知のスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンである。例えば、米国特許第5,376,645号を参照のこと。特定の実施形態において、組成物は
、ヘキサプロピル-β-シクロデキストリンを含む。より具体的な実施形態において、組成物は、ヘキサプロピル-β-シクロデキストリン(水中10~50%)を含む。
【0088】
注射用組成物は、例えば、細菌保持フィルターによる濾過によって、または使用前に滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体に溶解もしくは分散され得る滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって滅菌され得る。
【0089】
一般に、本明細書中で提供される化合物は、有効量で投与される。実際に投与される化合物の量は、典型的には、関連する状況(処置される症状、選択される投与経路、投与される実際の化合物、個々の患者の年齢、体重、応答、患者の症候の重症度などを含む)に照らして、医師によって決定される。
【0090】
組成物は、正確な投薬を容易にする単位剤形で提供される。用語「単位剤形」とは、ヒト被験体および他の哺乳動物に対する単位投与量として適切な物理的に不連続な単位のことを指し、各単位は、適切な薬学的賦形剤とともに、所望の治療効果をもたらすと計算される所定量の活性な材料を含む。典型的な単位剤形としては、液体組成物の予め測定され予め充填されたアンプルもしくは注射器が挙げられる。このような組成物では、化合物は、通常、少量の成分(約0.1~約50重量%または好ましくは約1~約40重量%)であり、残りは、様々なビヒクルまたはキャリアおよび所望の投薬形態を形成するのに役立つ加工助剤である。
【0091】
本明細書中で提供される化合物は、単一の活性剤として投与され得るか、または他の活性剤と組み合わせて投与され得る。1つの局面において、本発明は、本発明の化合物と、別の薬理学的に活性な薬剤との組み合わせ物を提供する。組み合わせでの投与は、当業者に明らかである任意の技術(例えば、別々の投与、逐次投与、同時投与、および交互投与が挙げられる)によって進行し得る。
【0092】
本明細書中で提供される薬学的組成物の説明は、ヒトへの投与に適切な薬学的組成物を主に対象とするが、このような組成物は、一般に、全ての種類の動物への投与に適切であることを当業者は理解するであろう。ヒトへの投与に適切な薬学的組成物を様々な動物への投与に適切な組成物とするための改変は充分に理解されており、そして通常の知識を有する獣医薬理学者は、通常の実験でこのような改変を設計および/または実施し得る。薬学的組成物の製剤化および/または製造における一般的な考察は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy
第21版,Lippincott Williams&Wilkins,2005に見出すことができる。
【0093】
1つの局面において、式(I)の化合物を含む組成物(例えば、固体組成物)を含むキットを提供する。
【0094】
使用および処置の方法
ある局面において、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)は、必要とする被験体(例えば、レット症候群、脆弱X症候群、またはアンジェルマン症候群を有する被験体)においてCNS関連障害(例えば、睡眠障害、気分障害(例えば、うつ病)、統合失調症スペクトラム障害、痙攣障害、てんかん発生、記憶および/または認知の障害、運動障害、人格障害、自閉症スペクトラム障害、疼痛、外傷性脳損傷、脈管疾患、物質乱用障害および/または離脱症候群、あるいは耳鳴)を処置するための治療剤として有用であることが想定される。GABA調節に関連する例示的なCNS状態としては、睡眠障害[例えば、不眠症]、気分障害[例えば、うつ病、気分変調性障害(例えば、軽症うつ病)、双極性障害(例えば、I型および/またはII型)、不安障害(例えば、全般性不
安障害(GAD)、社会的不安障害)、ストレス、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、強迫障害(例えば、強迫性障害(OCD))]、統合失調症スペクトラム障害[例えば、統合失調症、統合失調感情障害]、痙攣障害[例えば、てんかん(例えば、てんかん発作重積状態(SE))、発作]、記憶および/または認知の障害[例えば、注意障害(例えば、注意欠陥過活動性障害(ADHD))、痴呆(例えば、アルツハイマー型痴呆、ルイス体型痴呆(Lewis body type dementia)、脳血管型痴呆]、運動障害[例えば、ハンティングトン病、パーキンソン病]、人格障害[例えば、反社会性人格障害、強迫性人格障害]、自閉症スペクトラム障害(ASD)[例えば、自閉症、シナプス変性症(synaptophathy)などの自閉症の一宿主性原因(例えば、レット症候群、脆弱X症候群、アンジェルマン症候群]、疼痛[例えば、ニューロパシー性疼痛、損傷関連疼痛症候群、急性疼痛、慢性疼痛]、外傷性脳損傷(TBI)、脈管疾患[例えば、脳卒中、虚血、血管奇形]、物質乱用障害および/または離脱症候群[例えば、アヘン製剤、コカイン、および/またはアルコールの嗜癖(addition)]、ならびに耳鳴が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
ある特定の実施形態において、CNS関連障害は、睡眠障害、気分障害、統合失調症スペクトラム障害、痙攣障害、記憶および/または認知の障害、運動障害、人格障害、自閉症スペクトラム障害、疼痛、外傷性脳損傷、脈管疾患、物質乱用障害および/または離脱症候群、耳鳴、あるいはてんかん発作重積状態である。ある特定の実施形態において、CNS関連障害は、うつである。ある特定の実施形態において、CNS関連障害は、産後うつである。ある特定の実施形態において、CNS関連障害は、大うつ病性障害である。ある特定の実施形態において、大うつ病性障害は、中程度の大うつ病性障害である。ある特定の実施形態において、大うつ病性障害は、重度の大うつ病性障害である。
【0096】
1つの局面において、被験体において発作活動を軽減または予防する方法が提供され、この方法は、このような処置を必要とする被験体に、有効量の本発明の化合物を投与する工程を包含する。一部の実施形態において、本方法は、てんかん発生を軽減または予防する。
【0097】
なお別の局面において、本発明の化合物と別の薬理学的に活性な剤との組み合わせ物が提供される。本明細書中に提供される化合物は、単一の活性剤として投与され得るか、または他の剤と組み合わせて投与され得る。組み合わせでの投与は、当業者に明らかである任意の技術(例えば、別々の投与、逐次投与、同時投与、および交互投与が挙げられる)によって進行し得る。
【0098】
別の局面において、脳の興奮に関連する状態に罹りやすいかまたは苦しんでいる被験体において、脳の興奮を処置または予防する方法が提供され、この方法は、この被験体に、有効量の本発明の化合物をこの被験体に投与する工程を包含する。
【0099】
なお別の局面において、被験体においてストレスまたは不安を処置または予防する方法が提供され、この方法は、このような処置を必要とする被験体に、有効量の本発明の化合物またはその組成物を投与する工程を包含する。
【0100】
なお別の局面において、被験体において不眠症を軽減または予防する方法が提供され、この方法は、このような処置を必要とする被験体に、有効量の本発明の化合物またはその組成物を投与する工程を包含する。
【0101】
なお別の局面において、睡眠を誘導し、正常な睡眠において見られるREM睡眠のレベルを実質的に維持する方法であって、実質的な反跳不眠症が誘導されない方法が提供され、この方法は、有効量の本発明の化合物を投与する工程を包含する。
【0102】
なお別の局面において、被験体においてPMSまたはPNDを軽減または予防する方法が提供され、この方法は、このような処置を必要とする被験体に、有効量の本発明の化合物を投与する工程を包含する。
【0103】
なお別の局面において、被験体において気分障害を処置または予防する方法であって、このような処置を必要とする被験体に有効量の本発明の化合物を投与する工程を含む方法が提供される。特定の実施形態において、気分障害は、うつ病である。
【0104】
なお別の局面において、被験体に治療有効量の本発明の化合物を投与することによる、認知増強または記憶障害の処置の方法が提供される。特定の実施形態において、この障害はアルツハイマー病である。特定の実施形態において、この障害はレット症候群である。
【0105】
なお別の局面において、被験体に治療有効量の本発明の化合物を投与することによって、注意障害を処置する方法が提供される。特定の実施形態において、この注意障害はADHDである。
【0106】
特定の実施形態において、この化合物は、被験体に長期投与される。特定の実施形態において、この化合物は、被験体に経口投与、皮下投与、筋肉内投与、または静脈内投与される。
【0107】
神経内分泌障害および機能不全
神経内分泌障害および機能不全を処置するために使用され得る方法が、本明細書中に提供される。本明細書中で使用される場合、「神経内分泌障害」または「神経内分泌機能不全」とは、脳に直接関連する身体のホルモン産生の不均衡によって引き起こされる種々の状態のことを指す。神経内分泌障害には、神経系と内分泌系との間の相互作用が関わる。視床下部および脳下垂体は、ホルモンの産生を制御する脳の2つの領域であるので、例えば外傷性脳損傷による、視床下部または脳下垂体への損傷は、ホルモンの産生および脳の他の神経内分泌機能に影響し得る。一部の実施形態において、神経内分泌障害または機能不全は、女性の健康障害または状態(例えば、本明細書中に記載される女性の健康障害または状態)と関連する。一部の実施形態において、女性の健康障害または状態と関連する神経内分泌障害または機能不全は、多嚢胞性卵巣症候群である。
【0108】
神経内分泌障害の症状としては、行動性、情動性および睡眠関連の症状、生殖機能に関連する症状、ならびに身体症状が挙げられるが、これらに限定されず、それらの症状としては、疲労、記憶不良、不安、うつ、体重増加または減少、情動不安定、集中力欠如、注意困難、性欲減退(loss of lipido)、不妊、無月経、筋肉量の低下、腹部体脂肪の増加、低血圧、低心拍数、脱毛、貧血、便秘、寒冷不耐性および皮膚乾燥が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
神経変性疾患および障害
神経変性疾患および障害を処置するために使用され得る方法が、本明細書中に提供される。用語「神経変性疾患」は、ニューロンの構造もしくは機能の進行性の喪失、またはニューロンの死に関連する、疾患および障害を包含する。神経変性疾患および障害としては、アルツハイマー病(軽症、中等度または重篤な認知機能障害の関連する症状を包含する);筋萎縮性側索硬化症(ALS);無酸素性および虚血性の損傷;運動失調および痙攣(処置および予防のため、ならびに統合失調感情障害によって、または統合失調症を処置するために使用される薬物によって引き起こされる発作の予防のためを包含する);良性健忘;脳水腫;小脳性運動失調(マクラウド神経有棘赤血球症症候群(MLS)が挙げられる);閉鎖性頭部外傷;昏睡;挫傷による損傷(例えば、脊椎損傷および頭部損傷);
痴呆(多発脳梗塞性痴呆および老年痴呆が挙げられる);意識の障害;ダウン症候群;薬物により誘導されるかまたは薬剤により誘導される振顫麻痺(例えば、精神遮断薬により誘導される急性静座不能、急性失調症、振顫麻痺もしくは遅発性ジスキネジー、神経弛緩薬性悪性症候群、または薬剤により誘導される姿勢振顫);てんかん;脆弱X症候群;ジル・ド・ラ・ツレット症候群;頭部外傷;聴覚障害および聴覚損失;ハンティングトン病;レノックス症候群;レボドパにより誘導されるジスキネジー;精神遅滞;運動不能症および無動(硬直)症候群を含む運動障害(脳幹神経石灰化、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、振顫麻痺-ALS痴呆複合症、パーキンソン病、脳炎後振顫麻痺および進行性核上性麻痺が挙げられる);筋肉の痙縮および筋肉の痙性または虚弱に関連する障害(舞踏病(例えば、良性遺伝性舞踏病、薬物により誘導される舞踏病、片側バリスム、ハンティングトン病、神経有棘赤血球症、シドナム舞踏病および症候性舞踏病)、ジスキネジー(複合チック、単純チックおよび症候性チックなどのチックが挙げられる)、ミオクローヌス(全身性ミオクローヌスおよび限局性シロクローヌス(focal cyloclonus)が挙げられる)、振顫(例えば、安静時振顫、姿勢振顫および企図振顫)ならびに失調症(軸性失調症、ジストニー性書痙、片麻痺性失調症、発作性失調症および限局性失調症(例えば、眼瞼痙攣、口顎ジストニア(oromandibular dystonia)、ならびに痙攣性発声障害および斜頚)が挙げられる)が挙げられる);ニューロン損傷(眼の損傷、眼の網膜症または黄斑変性が挙げられる);脳卒中、血栓塞栓性脳卒中、出血性卒中、脳虚血、脳血管痙攣、低血糖症、健忘症、低酸素症、無酸素症、周産期仮死および心拍停止の後の神経毒性障害;パーキンソン病;発作;てんかん発作重積状態;脳卒中;耳鳴;尿細管硬化症、ならびにウイルス感染により誘導される神経変性(例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS)および脳障害により引き起こされるもの)が挙げられるが、これらに限定されない。神経変性疾患としてはまた、脳卒中、血栓塞栓性脳卒中、出血性卒中、脳虚血、脳血管痙攣、低血糖症、健忘症、低酸素症、無酸素症、周産期仮死および心拍停止の後の神経毒性障害が挙げられるが、これらに限定されない。神経変性疾患を処置または予防する方法はまた、神経変性障害に特徴的であるニューロン機能の喪失を処置または予防することを包含する。
【0110】
気分障害
気分障害、例えば臨床的うつ病、産後うつ病もしくは産後うつ、周産期うつ病、非定型うつ病、メランコリー型うつ病、心因性大うつ病、緊張性うつ病、季節性情動障害、気分変調、二重抑うつ症、抑うつ性格障害、再発性短期うつ病、小うつ病性障害、双極性障害もしくは躁うつ病性障害、慢性病状によって引き起こされるうつ病、処置抵抗性うつ病、難治性うつ病、自殺、自殺念慮または自殺行動を処置するための方法もまた、本明細書中に提供される。一部の実施形態において、本明細書中に記載の方法は、うつ病(例えば、中程度または重度のうつ病)に罹患している被験体に対して治療効果を提供する。一部の実施形態において、気分障害は、本明細書中に記載の疾患または障害(例えば、神経内分泌疾患および障害、神経変性疾患および障害(例えば、てんかん)、運動障害、振顫(例えば、パーキンソン病)、女性の健康障害または健康状態)に関連する。
【0111】
臨床的うつ病は、大うつ病、大うつ病性障害(MDD)、単極性うつ病、単極性障害および反復性うつ病としても知られ、低い自尊心および通常は楽しめる活動への興味または喜びの喪失を伴う広汎性および持続性の落ち込んだ気分により特徴付けられる精神障害のことを指す。臨床的うつ病を有する一部の人は、睡眠が難しく、やせて、概して動揺を感じ、被刺激性になる。臨床的うつ病は、個体がどのように感じるか、考えるかおよび振る舞うかに影響し、種々の情動的および肉体的な問題に至り得る。臨床的うつ病を有する個体は、日々の活動を行うのに苦労することがあり、生きていく価値がないかのように感じることがある。
【0112】
周産期うつ病は、妊娠中のうつ病を指す。症状には、被刺激性、号泣、焦燥感、睡眠困
難、極度の疲労(情動的および/または肉体的)、食欲の変化、集中困難、不安および/または心配の増加、乳児および/または胎児から離れたいという感情、ならびに以前楽しかった活動への興味喪失が含まれる。
【0113】
産後うつ病(PND)は、産後うつ(PPD)とも称され、出産後の女性が罹る臨床的うつ病の一種のことを指す。症状としては、悲哀、疲労、睡眠および食習慣の変化、性的願望の低下、号泣エピソード、不安ならびに被刺激性が挙げられ得る。一部の実施形態において、PNDは、処置抵抗性うつ病(例えば、本明細書中に記載される処置抵抗性うつ病)である。一部の実施形態において、PNDは、難治性うつ病(例えば、本明細書中に記載される難治性うつ病)である。
【0114】
一部の実施形態において、PNDを有する被験体はまた、妊娠中にうつ病またはうつ病の症候を経験している。このうつ病は、本明細書中では周産期うつ病と称される。ある実施形態において、周産期うつ病を経験している被験体は、PNDを経験するリスクが高い。
【0115】
非定型うつ病(AD)は、気分反応性(例えば、逆説的快感消失(paradoxical anhedonia))および積極性、著しい体重増加または食欲亢進により特徴付けられる。ADに罹患している患者は、過剰な睡眠または傾眠(睡眠過剰)、四肢重感、および認知される対人拒絶への過敏性の結果としての著しい社会的障害も有し得る。
【0116】
メランコリーうつ病は、ほとんどまたは全ての活動に対する喜びの喪失(快感消失)、楽しい刺激に反応しないこと、悲嘆もしくは喪失の気分よりも明白な抑うつ気分、過剰な体重減少、または過度の罪悪感により特徴付けられる。
【0117】
精神病性大うつ病(PMD)または精神病性うつ病とは、個体が妄想および幻覚などの精神病性の症状を経験する、大うつ病エピソード、特に、メランコリー性質の大うつ病エピソードのことを指す。
【0118】
緊張性うつ病とは、運動行動の障害および他の症状を伴う大うつ病のことを指す。個体は、口がきけなくなり、昏迷状態(stuporose)になることがあり、動けなくなるか、または目的のない運動もしくは奇異な運動を示す。
【0119】
季節性感情障害(SAD)とは、個体が秋または冬に生じ始める季節性のパターンのうつ病エピソードを有する季節性うつ病の一種のことを指す。
【0120】
気分変調とは、単極性うつ病に関連する状態のことを指し、同じ身体的および認知的な問題が、明らかである。それらは、それほど重篤ではなく、長く(例えば、少なくとも2年)続く傾向がある。
【0121】
二重うつ病とは、少なくとも2年続き、大うつ病の期間によって時々中断する、かなり抑うつの気分(気分変調)のことを指す。
【0122】
抑うつ性人格障害(DPD)とは、うつ病性の特徴を有する人格障害のことを指す。
【0123】
反復性短期うつ病(Recurrent Brief Depression)(RBD)とは、個体が1ヶ月に約1回、うつ病エピソードを有する状態のことを指し、その各エピソードは、2週間またはより短期間、典型的には、2~3日未満続く。
【0124】
小うつ病性障害または小うつ病とは、少なくとも2つの症状が2週間存在するうつ病の
ことを指す。
【0125】
双極性障害または躁うつ病性障害は、ハイ(high)の情動(躁病または軽躁病)およびロー(low)の情動(うつ)を含む極端な気分変動を引き起こす。躁病の期間中、個体は、異常に幸福、エネルギッシュまたは被刺激性に感じるかまたは行動することがある。それらの個体は、結果(consequnces)をほとんど無視して思慮に欠けた決断をすることが多い。通常、睡眠欲求が減少する。うつ病の期間中、号泣することがあり、他者とあまり視線を合わないことがあり、人生に対して後ろ向きの見方をすることがある。この障害を有する者の自殺のリスクは、20年間で6%超と高く、30~40%が自傷(self harm)を起こす。不安障害および物質使用障害などの他の精神衛生上の問題は、一般に双極性障害に合併する。
【0126】
慢性病状によって引き起こされるうつ病とは、がんまたは慢性疼痛、化学療法、慢性ストレスなどの慢性病状によって引き起こされるうつ病のことを指す。
【0127】
処置抵抗性うつ病とは、個体がうつ病の処置を受けているが症状が改善しない状態のことを指す。例えば、抗うつ薬または心理学的(physchological)カウンセリング(精神療法)は、処置抵抗性うつ病を有する個体のうつ症状を和らげない。いくつかの症例では、処置抵抗性うつ病を有する個体は、症状を改善するが、戻ってしまう。難治性うつ病は、三環系抗うつ薬、MAOI、SSRIならびに二重および三重取り込み阻害薬、ならびに/または抗不安薬を含む標準的な薬理学的処置、ならびに非薬理学的処置(例えば、精神療法、電気ショック治療、迷走神経刺激および/または経頭蓋磁気刺激)に抵抗性のうつ病に罹患している患者において生じる。
【0128】
術後うつ病は、(例えば、死への直面の結果としての)外科的処置に続くうつ状態を指す。例えば、個体は、持続的な悲しみもしくは空虚感、普段楽しんでいた趣味および活動への喜びまたは興味の喪失、または持続的な無価値感もしくは絶望感を感じ得る。
【0129】
女性の健康状態または健康障害に関連する気分障害は、女性の健康状態または健康障害(例えば、本明細書中に記載のもの)に関連する(例えば、起因する)気分障害(例えば、うつ病)を指す。
【0130】
自殺傾向、希死念慮、自殺行動とは、個体が自殺を犯す傾向のことを指す。希死念慮は、自殺に関する考えまたは自殺への異常な執着に関係する。希死念慮の範囲は、例えば、瞬間的な考えから広範な考え、詳細な計画、ロールプレイング、不完全な試みまで、大きく異なる。症状としては、自殺について話すこと、自殺を犯す手段を入手すること、社会的接触を断つこと、死のことばかり考えていること、身動きが取れないまたはある状況について望みがないと感じること、アルコールまたは薬物の使用が増えること、危険なまたは自滅的なことを行うこと、二度と会えないかのように人々に別れを告げることが挙げられる。
【0131】
うつ病の症状としては、持続的な不安なまたは悲しい感情、無力な感情、無希望、悲観主義、無価値、低エネルギー、焦燥感、睡眠困難、不眠、被刺激性、疲労、運動の問題(motor challenges)、愉快な活動または趣味への興味喪失、集中力の低下、エネルギーの低下、低い自尊心、前向きな考えまたは計画が無いこと、過剰な睡眠、過食、食欲の喪失、不眠症、自傷、自殺の考えおよび自殺の試みが挙げられる。症状の存在、重症度、頻度および持続時間は、場合によって異なり得る。うつ病の症状およびその緩和は、医師または心理学者(例えば、精神状態の検査)によって確かめられ得る。
【0132】
一部の実施形態において、その方法は、公知のうつ病尺度、例えば、ハミルトンうつ病
(HAM-D)尺度、臨床全般印象改善尺度(CGI)およびモントゴメリー-アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)を用いて被験体をモニターする工程を含む。一部の実施形態において、治療効果は、被験体が示すハミルトンうつ病(HAM-D)総スコアの低下によって測定され得る。そのHAM-D総スコアの低下は、4、3、2もしくは1日以内;または96、84、72、60、48、24、20、16、12、10、8時間以内もしくはそれ未満以内に生じ得る。治療効果は、特定の処置期間にわたって評価され得る。例えば、治療効果は、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)を投与した後(例えば、投与の12、24もしくは48時間後;または24、48、72もしくは96時間後またはそれを超えた後;または1日、2日、14日、21日もしくは28日;または1週間、2週間、3週間もしくは4週間;または1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月または10ヶ月;または1年、2年もしくは生涯にわたって)、ベースラインからのHAM-D総スコアの低下によって測定され得る。
【0133】
一部の実施形態において、被験体は、軽度のうつ病性障害、例えば、軽度の大うつ病性障害を有する。一部の実施形態において、被験体は、中程度のうつ病性障害、例えば、中程度の大うつ病性障害を有する。一部の実施形態において、被験体は、重度のうつ病性障害、例えば、重度の大うつ病性障害を有する。一部の実施形態において、被験体は、非常に重度のうつ病性障害、例えば、非常に重度の大うつ病性障害を有する。一部の実施形態において、被験体のベースラインHAM-D総スコア(すなわち、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)による処置の前)は、少なくとも24である。一部の実施形態において、被験体のベースラインHAM-D総スコアは、少なくとも18である。一部の実施形態において、被験体のベースラインHAM-D総スコアは、14および18を含む14と18との間である。一部の実施形態において、被験体のベースラインHAM-D総スコアは、19および22を含む19と22との間である。一部の実施形態において、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)で処置する前の被験体のHAM-D総スコアは、23を超えるかまたは23と等しい。一部の実施形態において、ベースラインスコアは、少なくとも10、15または20である。一部の実施形態において、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)で処置した後の被験体のHAM-D総スコアは、約0~10(例えば、10未満;0~10、0~6、0~4、0~3、0~2または1.8)である。一部の実施形態において、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)で処置した後のHAM-D総スコアは、10、7、5または3未満である。一部の実施形態において、HAM-D総スコアの低下は、約20~30(例えば、22~28、23~27、24~27、25~27、26~27)のベースラインスコアから、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)で処置した後の約0~10(例えば、10未満;0~10、0~6、0~4、0~3、0~2または1.8)のHAM-D総スコアへの低下である。一部の実施形態において、ベースラインHAM-D総スコアから、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)で処置した後のHAM-D総スコアへの低下は、少なくとも1、2、3、4、5、7、10、25、40、50または100倍)である。一部の実施形態において、ベースラインHAM-D総スコアから、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)で処置した後のHAM-D総スコアへの減少率は、少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%または90%)である。一部の実施形態において、治療効果は、ベースラインHAM-D総スコアと比較した、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)で処置した後(例えば、投与の12、24、48時間後;または24、48、72、96時間後もしくはそれを超えた後;または1日、2日、14日後もしくはそれを超えた後)のHAM-D総スコアの減少として測定され、少なくとも10、15または20ポイントである。
【0134】
一部の実施形態において、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害を処置する方法は、14、10、4、3、2もしくは1日以内または24、20、16、12、10もしくは8時間以内またはそれ未満以内に治療効果(例えば、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM
-D)の低下によって測定した場合)を提供する。一部の実施形態において、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害を処置する方法は、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)での処置の1日または2日目以内に治療効果(例えば、HAM-D総スコアの統計学的に有意な減少によって判定した場合)を提供する。一部の実施形態において、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害を処置する方法は、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)での処置の開始から14日未満または14日と等しい期間以内に治療効果(例えば、HAM-D総スコアの統計学的に有意な減少によって判定した場合)を提供する。一部の実施形態において、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害を処置する方法は、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)での処置の開始から21日未満または21日と等しい期間以内に治療効果(例えば、HAM-D総スコアの統計学的に有意な減少によって判定した場合)を提供する。一部の実施形態において、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害を処置する方法は、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)での処置の開始から28日未満または28日と等しい期間以内に治療効果(例えば、HAM-D総スコアの統計学的に有意な減少によって判定した場合)を提供する。一部の実施形態において、治療効果は、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)による処置(例えば、14日間にわたる1日1回の化合物1による処置)の後の、HAM-D総スコアのベースラインからの減少である。一部の実施形態において、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)で処置する前の被験体のHAM-D総スコアは、少なくとも24である。一部の実施形態において、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)で処置する前の被験体のHAM-D総スコアは、少なくとも18である。一部の実施形態において、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)で処置する前の被験体のHAM-D総スコアは、14および18を含む14と18との間である。一部の実施形態において、ベースラインHAM-D総スコアと比較して、被験体を本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)で処置した後のHAM-D総スコアの低下は、少なくとも10である。一部の実施形態において、ベースラインHAM-D総スコアと比較して、被験体を本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)で処置した後のHAM-D総スコアの低下は、少なくとも15(例えば、少なくとも17)である。一部の実施形態において、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)による被験体の処置に関連するHAM-D総スコアは、6~8の範囲の数値以下である。一部の実施形態において、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)による被験体の処置に関連するHAM-D総スコアは、7以下である。
【0135】
一部の実施形態において、本方法は、14、10、4、3、2もしくは1日以内または24、20、16、12、10もしくは8時間以内またはそれ未満以内に治療効果(例えば、臨床全般印象改善尺度(CGI)の低下によって測定した場合)を提供する。一部の実施形態において、CNS障害は、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害である。一部の実施形態において、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害を処置する方法は、処置期間の2日目以内に治療効果を提供する。一部の実施形態において、治療効果は、処置期間終了時点(例えば、投与の14日後)における、ベースラインからのCGIスコアの低下である。
【0136】
一部の実施形態において、本方法は、14、10、4、3、2もしくは1日以内または24、20、16、12、10もしくは8時間以内またはそれ未満以内に治療効果(例えば、モントゴメリー-アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)の低下によって測定した場合)を提供する。一部の実施形態において、CNS障害は、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害である。一部の実施形態において、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害を処置する方法は、処置期間の2日目以内に治療効果を提供する。一部の実施形態において、治療効果は、処置期間終了時点(例えば、投与の14日後)における、ベースラインからのMADRSスコアの低下である。
【0137】
大うつ病性障害に対する治療効果は、被験体が示すモントゴメリー-アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)スコアの低下によって判定され得る。例えば、MADRSスコアは、4、3、2もしくは1日以内;または96、84、72、60、48、24、20、16、12、10、8時間以内もしくはそれ未満以内に低下し得る。モントゴメリー-アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)は、気分障害を有する患者におけるうつ病エピソードの重症度を測定するために精神科医が使用する10項目の診断質問表(外見に表出される悲しみ、言葉で表現された悲しみ、内的緊張、睡眠減少、食欲減退、集中困難、倦怠、感情を持てないこと、悲観的思考、および自殺思考に関する)である。
【0138】
一部の実施形態において、本方法は、4日以内、3日以内、2日以内、1日以内;24時間、20時間、16時間、12時間、10時間、8時間またはそれ未満に治療効果(例えば、エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)の低下によって測定した場合)を提供する。一部の実施形態において、治療効果は、EPDSによって測定された改善である。
【0139】
一部の実施形態において、本方法は、4日以内、3日以内、2日以内、1日以内;24時間、20時間、16時間、12時間、10時間、8時間またはそれ未満に治療効果(例えば、全般性不安障害7項目尺度(GAD-7)の低下によって測定した場合)を提供する。
【0140】
不安障害
不安障害(例えば、全般性不安障害、パニック障害、強迫性障害、恐怖症、心的外傷後ストレス障害)を処置する方法が本明細書中に提供される。不安障害とは、数種の異なる形態の、異常なおよび病理学的な恐怖および不安を網羅する、総括的な用語である。現在の精神医学的診断基準は、広範な種々の不安障害を認識している。
【0141】
全般性不安障害とは、いずれの1つの対象にも状況にも焦点を合わせられない、長期にわたる不安によって特徴付けられる、一般的な慢性障害である。全般性不安に苦しむ人々は、非特異的な持続性の恐怖および心配を経験し、そして平凡な事態を過剰に心配するようになる。全般性不安障害は、高齢の成人に影響を与える最も一般的な不安障害である。
【0142】
パニック障害において、ヒトは、強い恐怖および気がかりの短時間の発作に苦しみ、しばしば、振顫、震え、錯乱、眩暈感、悪心、呼吸困難により特徴付けられる。これらのパニック発作(APAにより、不意に起こり、10分未満でピークに達する恐怖または不快と定義される)は、数時間持続し得、そしてストレス、恐怖、または運動によってさえも誘発され得るが、特定の原因が常に明らかであるわけではない。再発性の予測できないパニック発作に加えて、恐怖性障害の診断はまた、その発作が慢性的な結果(その発作の潜在的な意味に対する心配、将来の発作に対する持続的な恐怖、またはその発作に関する行動の有意な変化のいずれか)を有することを必要とする。従って、恐怖性障害の患者は、特定のパニックエピソードの範囲外でさえも、症状を経験する。しばしば、心拍動の通常の変化が、パニックに苦しむ人により気付かれ、心臓がどこか具合が悪い、または別のパニック発作に罹っているところであると考えさせる。いくつかの症例において、身体機能の高まった知覚(過剰覚醒(hypervigilance))が、パニック発作中に起こり、この場合、何らかの知覚される生理学的変化が、生命を脅かす可能な疾病と解釈される(すなわち、過度の心気症)。
【0143】
強迫性障害とは、不安障害の1つの型であり、反復的な強迫観念(窮迫した、持続性の、侵害的な思考または心像)および脅迫行為(特定の動作または儀式を行う衝動)により主として特徴付けられる。OCDの思考パターンは、そのヒトが現実には存在していない原因的関係を信じることを包含する限り、迷信に結び付けられ得る。しばしば、そのプロ
セスは完全に非論理的である。例えば、特定のパターンでの歩行という強迫行為は、切迫した危険の強迫観念を軽減するために使用され得る。そして多くの症例において、この強迫行為は完全に説明不可能ではなく、単に、神経質により誘発される儀式を完遂することの衝動である。症例のうちの少数において、OCDの患者は、明白な強迫行為なしに強迫観念を経験するのみであり得、より少数の患者は、強迫行為のみを経験する。
【0144】
不安障害の1つの最も大きいカテゴリーは、恐怖症のものであり、これは、恐怖および不安が特定の刺激または状況によって誘発される、全ての症例を包含する。患者は代表的に、自分の恐怖の対象(これは、動物、場所、体液に及ぶ何かであり得る)に遭遇することからの恐ろしい結果を予期する。
【0145】
心的外傷後ストレス障害またはPTSDとは、外傷性の経験から生じる不安障害である。外傷後ストレスは、極端な状況(例えば、戦争、強姦、人質の状況、または重大な災難でさえも)から生じ得る。これはまた、重篤なストレッサーへの長期間の(慢性的な)曝露から生じ得る(例えば、個々の戦闘には耐えるが連続的な戦争にはうまく対処できない兵士)。一般的な症状としては、フラッシュバック、回避行動、およびうつ病が挙げられる。
【0146】
女性の健康障害
女性の健康に関連する状態または障害を処置する方法が本明細書中に提供される。女性の健康に関連する状態または障害としては、婦人科系の健康および障害(例えば、月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD))、妊娠に関する問題(例えば、流産、中絶)、不妊および関連障害(例えば、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS))、他の障害および状態、ならびに女性の全体的な健康および健全に関連する問題(例えば、閉経)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0147】
女性に影響を及ぼす婦人科系の健康および障害には、月経および月経不順;尿路の健康(尿失禁および骨盤底障害が挙げられる);ならびに細菌性腟症、膣炎、子宮類線維、および外陰痛などの障害が挙げられる。
【0148】
月経前症候群(PMS)は、生理の1~2週間前に生じる身体症状および情動性症状を指す。症状は多様であるが、出血、気分動揺、乳房の圧痛、大食症、疲労、被刺激性、ざ瘡、およびうつ病が挙げられ得る。
【0149】
月経前不快気分障害(PMDD)は、重症型のPMSである。PMDDの症状はPMSに類似しているが、より重篤であり、労働、社会活動、および関係性を妨げ得る。PMDDの症状としては、気分動揺、抑うつ気分(dpressed mood)または絶望感、著しい怒り、対人葛藤の増加、緊張および不安、被刺激性、通常の活動に対する興味の減退、集中困難、疲労、食欲の変化、制御不能感または困惑、睡眠の問題、身体的な問題(例えば、鼓脹、乳房圧痛、腫脹、頭痛、関節痛または筋肉痛)が挙げられる。
【0150】
妊娠に関する問題としては、受胎前ケアおよび産前ケア、妊娠損失(流産および死産)、早期分娩および早産、乳児突然死症候群(SIDS)、母乳栄養、および出生時欠損が挙げられる。
【0151】
流産は、妊娠20週以内の自発的な妊娠の終了を指す。
【0152】
中絶は、妊娠28週までに行うことができる妊娠の意図的な終了を指す。
【0153】
不妊および関連障害としては、子宮類線維、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症、および
原発性卵巣機能不全が挙げられる。
【0154】
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、生殖可能年齢の女性における内分泌系障害を指す。PCOSは、女性における男性ホルモンの上昇に起因する一連の症状である。PCOSを有する多くの女性は、その卵巣上に多数の小嚢胞が発達する。PCOSの症状としては、月経不順または無月経、重い生理、過剰な体毛および顔の毛、ざ瘡、骨盤痛、妊娠困難、および肥厚した暗色の滑らかな皮膚の斑点が挙げられる。PCOSは、2型糖尿病、肥満、閉塞性睡眠時無呼吸、心疾患、気分障害、および子宮内膜がんが挙げられる状態に関連し得る。
【0155】
女性のみに影響を及ぼす他の障害および状態としては、ターナー症候群、レット症候群、ならびに卵巣がんおよび子宮頸がんが挙げられる。
【0156】
女性の全体的な健康および健全に関連する問題としては、女性に対する暴力、身体障害および固有の課題を有する女性、骨粗鬆症および骨の健康、ならびに閉経が挙げられる。
【0157】
閉経は、女性の最後の月経期から12ヶ月後を指し、月経周期の終了を示す。閉経は、代表的には、40代または50代の女性で起こる。閉経ののぼせおよび情動性症状などの身体症状は、睡眠を妨げ得るか、エネルギーを低下させ得るか、不安または悲しみまたは喪失感を引き起こし得る。閉経としては、自然閉経および外科的閉経(手術(例えば、子宮摘出術、卵巣摘出術;がん)などの事象に起因する誘導型閉経である)が挙げられる。閉経は、例えば、放射線、化学療法、または他の薬物療法によって卵巣が大きな損傷を受けた場合に誘導される。
【0158】
てんかん
式(I)の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、またはその薬学的に受容可能な組成物は、本明細書中に記載される方法、例えば本明細書中に記載される障害、例えばてんかん、てんかん重積症、または発作の処置に使用され得る。
【0159】
てんかんは、長期に亘って繰り返される発作によって特徴付けられる脳障害である。てんかんのタイプには、これらに限定されないが、全般性てんかん、例えば、小児欠神てんかん、若年性のミオクローヌス(nyoclonic)てんかん、覚醒時大発作の発作を伴うてんかん、ウエスト症候群、レノックス-ガストー症候群、部分てんかん、例えば、側頭葉てんかん、前頭葉てんかん、小児期の良性の焦点性てんかんが含まれることができる。
【0160】
てんかん発生
本明細書中に記載の化合物および方法を、てんかん発生を処置または予防するために使用することができる。てんかん発生は、正常な脳がてんかん(発作が起こる慢性症状)を発症する段階的プロセスである。てんかん発生は、初期傷害によって引き起こされる神経損傷から生じる(例えば、てんかん重積持続状態)。
【0161】
てんかん発作重積状態(SE)
てんかん発作重積状態(SE)には、例えば、痙攣性てんかん発作重積状態、例えば、早期てんかん発作重積状態、確立したてんかん発作重積状態、難治性てんかん発作重積状態、超難治性てんかん発作重積状態;非痙攣性てんかん発作重積状態、例えば、全般性てんかん発作重積状態、複雑性部分てんかん発作重積状態;全般性周期性てんかん型放電;および周期性一側性てんかん型放電を含むことができる。痙攣性てんかん発作重積状態は、痙攣性てんかん重積発作の存在によって特徴付けられ、早期てんかん発作重積状態、確立したてんかん発作重積状態、難治性てんかん発作重積状態、超難治性てんかん発作重積
状態を含むことができる。早期てんかん発作重積状態は、第一選択治療で処置される。確立したてんかん発作重積状態は、第一選択治療による処置にも関わらず持続するてんかん重積発作によって特徴付けられ、第二選択治療が行われる。難治性てんかん発作重積状態は、第一選択治療および第二選択治療による処置にも関わらず持続するてんかん重積発作によって特徴付けられ、全身麻酔剤が一般に投与される。超難治性てんかん発作重積状態は、第一選択治療、第二選択治療および24時間またはそれを超える全身麻酔剤による処置にも関わらず持続するてんかん重積発作によって特徴付けられる。
【0162】
非痙攣性てんかん発作重積状態は、例えば、焦点性非痙攣性てんかん発作重積状態、例えば、複雑性部分非痙攣性てんかん発作重積状態、単純部分非痙攣性てんかん発作重積状態、微細非痙攣性てんかん発作重積状態;全般性非痙攣性てんかん発作重積状態、例えば、晩期発症型欠神非痙攣性てんかん発作重積状態、非定型欠神非痙攣性てんかん発作重積状態、または定型欠神非痙攣性てんかん発作重積状態を含むことができる。
【0163】
発作
発作とは、脳内の異常な電気活性のエピソードの後に起こる、行動の身体的知見または変化である。用語「発作」はしばしば、「痙攣」と交換可能に使用される。痙攣は、ヒトの身体が急速に制御不可能に震える場合である。痙攣中に、そのヒトの筋肉は、収縮と弛緩とを繰り返す。
【0164】
行動および脳の活性の型に基づいて、発作は、2つの広いカテゴリー、すなわち、全身および部分(局所または限局性とも呼ばれる)に分けられる。発作の型を分類することは、患者がてんかんを有するか否かを医師が診断することを補助する。
【0165】
全身発作は、脳全体からの電気インパルスにより発生し、一方で、部分発作は、脳の比較的小さい部分の電気インパルスによって(少なくとも最初は)発生する。発作を発生させる脳の部分は時々、病巣と呼ばれる。
【0166】
全身発作には、6つの型が存在する。最も一般的かつ劇的であり、従って最も周知であるものは、全身痙攣(大発作とも呼ばれる)である。この型の発作において、患者は意識を失い、そして通常、虚脱する。この意識消失の後に、全身の身体硬直(発作の「緊張」段階と呼ばれる)が30~60秒間起こり、次いで激しい攣縮(「間代」段階)が30~60秒間起こり、その後、この患者は深い睡眠に落ちる(「発作後(postictal)」または発作後(after-seizure)段階)。大発作中に、障害および事故(例えば、舌を噛むことおよび尿失禁)が起こり得る。
【0167】
アブサンス発作は、症状がほとんどまたは全くない、短時間(ほんの数秒間)の意識消失を引き起こす。患者(最も頻繁には小児である)は代表的に、活動を中断し、そしてぼんやりと見つめる。これらの発作は、不意に開始して終了し、1日に数回起こり得る。患者は通常、「時間を失うこと」に気付き得る場合を除いて、自分が発作を有するとは気付かない。
【0168】
ミオクローヌス発作は、通常は身体の両側での、散発性攣縮からなる。患者は時々、これらの攣縮を、短い電気ショックと説明する。激しい場合、これらの発作は、物体を落とすこと、または不随意に投げることをもたらし得る。
【0169】
間代発作は、同時に身体の両側が関与する、反復性の律動性攣縮である。
【0170】
強直発作は、筋肉の硬直により特徴付けられる。
【0171】
無緊張発作は、突然の全身(特に、腕および脚)の筋緊張の低下からなり、しばしば、転倒をもたらす。
【0172】
本明細書に記載される発作は、てんかん発作;急性反復性発作;群発性発作;連続発作;間断のない発作;持続性発作;再発性発作;てんかん重積発作、例えば、難治性痙攣性てんかん発作重積状態、非痙攣性てんかん重積発作;難治性発作;ミオクローヌス発作;強直発作;強直間代発作;単純性部分発作;複雑性部分発作;二次性全般性発作;非定型欠神発作;欠神発作;無緊張発作;良性のローランド発作;熱性発作;情動発作;焦点性発作;笑い発作;全般性発症発作;点頭痙攣;ジャックソン発作;汎発性両側性ミオクローヌス発作;多焦点性発作;新生児期発症発作;夜間発作;後頭葉発作;外傷後発作;微細発作;シルヴァン発作(Sylvan seizures);視覚性反射発作;または離脱発作を含むことができる。一部の実施形態において、発作は、ドラベ症候群、レノックス-ガストー症候群、複合結節性硬化症、レット症候群またはPCDH19女児てんかんと関連する全身発作である。
【0173】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくは薬学的に許容され得る組成物を、CNS障害(例えば、外傷性脳損傷、てんかん発作重積状態、例えば、痙攣性てんかん発作重積状態、例えば、早期てんかん発作重積状態、確立したてんかん発作重積状態、難治性てんかん発作重積状態、超難治性てんかん発作重積状態;非痙攣性てんかん発作重積状態、例えば、全般性てんかん発作重積状態、複雑性部分てんかん発作重積状態;全般性周期性てんかん型放電;および周期性一側性てんかん型放電)を有する被験体に発作発生前に予防薬として投与することもできる。
【0174】
運動障害
運動障害を処置するための方法もまた、本明細書中に記載される。本明細書中で使用される場合、「運動障害」とは、運動過剰障害および関係する筋肉制御の異常に関連する種々の疾患および障害のことを指す。例示的な運動障害としては、パーキンソン病および振顫麻痺(特に運動緩徐によって定義される)、ジストニー、舞踏病およびハンティングトン病、運動失調、振顫(例えば、本態性振顫)、ミオクローヌスおよび驚愕、チックおよびトゥーレット症候群、下肢静止不能症候群、スティッフパーソン症候群ならびに歩行障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
振顫
本明細書中に記載される方法は、振顫を処置するために使用され得、例えば、式(I)の化合物は、例えば、小脳性振顫または企図振顫、ジストニー性振顫、本態性振顫、起立性振顫、パーキンソン振顫、生理的振顫、心因性振顫または赤核振顫(rubral tremor)を処置するために使用され得る。振顫には、遺伝性、変性および特発性の障害、例えば、それぞれウィルソン病、パーキンソン病および本態性振顫;代謝疾患(例えば、甲状腺(thyoid)-副甲状腺疾患、肝疾患および低血糖症);末梢神経障害(シャルコー・マリー・トゥース病、ルシー・レヴィ病、真性糖尿病、複合性局所性疼痛症候群に関連する);毒素(ニコチン、水銀、鉛、CO、マンガン、ヒ素、トルエン)により誘導される障害;薬物(睡眠薬、三環系抗うつ薬(tricyclics)、リチウム、コカイン、アルコール、アドレナリン、気管支拡張薬、テオフィリン、カフェイン、ステロイド、バルプロエート、アミオダロン、甲状腺ホルモン、ビンクリスチン)により誘導される障害;ならびに心因性障害が含まれる。臨床上の振顫は、生理的振顫、疲労誘発性生理的振顫(enhanced physiologic tremor)、本態性振顫症候群(古典的本態性振顫、原発性起立性振顫ならびにタスク特異的および体位特異的振顫を包含する)、ジストニー性振顫、パーキンソン振顫、小脳性振顫、ホームズ振顫(すなわち、赤核振顫)、口蓋振顫、神経障害性振顫、中毒性または薬剤性振顫および心因性振顫に分類され得る。
【0176】
振顫は、1つまたはそれを超える身体部分(例えば、手、腕、眼、顔面、頭部、声帯ヒダ、体幹、脚)の振動または攣縮を伴い得る、不随意の、時にリズミカルな、筋肉の収縮および弛緩である。
【0177】
小脳性振顫または企図振顫は、意図的動作の後に起きる四肢のゆっくりとした広範な振顫である。小脳性振顫は、例えば、腫瘍、脳卒中、疾患(例えば、多発性硬化症、遺伝性変性障害)に起因する、小脳における病変または小脳への損傷によって引き起こされる。
【0178】
ジストニー性振顫は、持続性の不随意筋収縮がねじりおよび反復の運動ならびに/または有痛性の異常な姿勢もしくは体位を引き起こす運動障害であるジストニーを患っている個体において生じる。ジストニー性振顫は、身体の任意の筋肉に影響し得る。ジストニー性振顫は、不規則に起こり、しばしば絶対安静によって緩和し得る。
【0179】
本態性振顫または良性本態性振顫は、最も一般的なタイプの振顫である。本態性振顫は、一部では軽症かつ非進行性である場合もあり、身体の片側から始まるが3年以内に両側が影響を受けるゆっくりとした進行性である場合もある。最も頻繁に影響を受けるのは手であるが、頭部、声、舌、脚および体幹も関与し得る。振顫の頻度は、歳を取るにつれて減少し得るが、重症度は高まり得る。感情の高ぶり、ストレス、発熱、肉体疲労または低血糖が、振顫を引き起こし得、かつ/またはその重症度を高め得る。症状は、一般に、長期に亘って発展していき、発症後に目に見えるようになり、かつ持続し得る。
【0180】
起立性振顫は、起立直後の脚および体幹に起きる速い(例えば、12Hz超の)リズミカルな筋収縮により特徴付けられる。痙攣は、大腿および脚に感じ、患者は、一点で起立するように求められた場合に抑え切れずに震えることがある。起立性振顫は、本態性振顫を有する患者に起こることがある。
【0181】
パーキンソン振顫は、運動を制御する脳内の構造に対する損傷によって引き起こされる。パーキンソン振顫は、パーキンソン病の前兆であることが多く、典型的には、手の「丸薬丸め」運動として見られ、おとがい、口唇、脚および体幹にも影響し得る。パーキンソン振顫の発症は、典型的には、60歳以降に開始する。運動は、片肢または身体の片側で始まり、進行して、もう片側にも及び得る。
【0182】
生理的振顫は、正常な個体に生じ得、臨床的有意性を有しない。生理的振顫は、全ての随意筋群に見られ得る。生理的振顫は、特定の薬物、アルコール離脱(alcohol withdrawl)、または甲状腺機能亢進および低血糖症を含む病状によって引き起こされ得る。この振顫は、古典的に約10Hzの周波数を有する。
【0183】
心因性振顫またはヒステリー性振顫は、安静時または姿勢運動中もしくは活動的運動中に生じ得る。心因性振顫を有する患者は、転換性障害または別の精神医学的疾患を有し得る。
【0184】
赤核振顫は、安静時、姿勢時および意図したときに顕れ得るゆっくりとした粗大振顫により特徴付けられる。この振顫は、中脳の古典的な珍しい脳卒中において赤核に影響する状態に関連し得る。
【0185】
パーキンソン病は、ドーパミンを産生する脳の神経細胞に影響する。症状としては、筋硬直、振顫ならびに発語および歩行の変化が挙げられる。振顫麻痺は、振顫、運動緩徐、硬直および体位不安定により特徴付けられる。振顫麻痺は、パーキンソン病に見られる症状(symptons)を共有するが、進行性の神経変性疾患ではなく症状群である。
【0186】
ジストニーは、異常であってしばしば反復性の運動または姿勢を引き起こす持続的または断続的な筋収縮により特徴付けられる運動障害である。ジストニー運動は、パターン化し得、ねじりであり得、振顫性であり得る。ジストニーは、随意運動によって惹起または悪化することが多く、筋肉の活性化のオーバーフローに関連することが多い。
【0187】
舞踏病は、典型的には肩、臀部および顔面に影響する律動性不随意運動により特徴付けられる神経障害である。ハンティングトン病は、脳の神経細胞を衰弱させる遺伝性疾患である。症状としては、制御不可能な運動、不器用および平衡障害が挙げられる。ハンティングトン病は、歩行、談話および嚥下を妨げ得る。
【0188】
運動失調とは、身体運動の完全制御の喪失のことを指し、指、手、腕、脚、身体、言語および眼球運動に影響し得る。
【0189】
ミオクローヌス(Myloclonus)および驚愕は、聴覚性、触覚性、視覚性または前庭性であり得る突然かつ予想外の刺激に対する反応である。
【0190】
チックは、通常突然に発症し、短い反復性であるがリズミカルでない、典型的には、正常な行動を模倣し、正常な活動のバックグラウンドの範囲外で生じることが多い、不随意運動である。チックは、運動チックまたは音声チックに分類され得、運動チックは運動に関連し、音声チックは音に関連する。チックは、単純型または複合型として特徴付けられ得る。例えば、単純型運動チックは、特定の身体部分に限定されたいくつかの筋肉だけが関わっている。トゥーレット症候群は、小児期に発症する遺伝性の神経精神障害であり、複数の運動チックおよび少なくとも1つの音声チックにより特徴付けられる。
【0191】
下肢静止不能症候群は、安静時に脚を動かそうとする抗しがたい衝動により特徴付けられる神経性の感覚運動障害である。
【0192】
スティッフパーソン症候群は、通常、腰および脚が関与する、不随意の有痛性攣縮および筋肉の硬直により特徴付けられる進行性の運動障害である。典型的には、腰部の過度の脊柱前弯過度を伴う強直性歩行が生じる。典型的には、傍脊椎の体軸筋の連続的な運動単位活動のEMG記録における特徴的な異常が認められる。異型としては、限局性硬直をもたらす、典型的には脚の遠位部および足に影響する、「四肢硬直(stiff-limb)症候群」が挙げられる。
【0193】
歩行障害とは、神経筋の、関節炎の、または他の身体の変化に起因する、歩行の様式またはスタイルにおける異常(abnormalitiy)のことを指す。歩行は、異常な歩行運動に関する体系に従って分類され、歩行には、片麻痺歩行、両麻痺歩行(diplegic gait)、神経障害性歩行、筋障害性歩行、パーキンソン病様歩行、舞踏病様歩行、失調性歩行および感覚性歩行が含まれる。
【0194】
麻酔/鎮静
麻酔とは、健忘症、痛覚脱失、反応性の喪失、骨格筋反射の喪失、低下したストレス応答、またはこれらすべての同時の、薬理学的に誘導される可逆的状態である。これらの影響は、影響の正しい組み合わせを単独で提供する1個の薬物から得られ得るか、または時々、結果の非常に特殊な組み合わせを達成するために、薬物(例えば、催眠薬、鎮静薬、麻痺薬、鎮痛薬)の組み合わせを用いて得られ得る。麻酔は、患者が外科手術および他の手順を、麻酔を受けなければ経験するであろう困難および疼痛を経験せずに、行うことを可能にする。
【0195】
鎮静とは、一般的には医学手順または診断手順を容易にするための、薬理学的剤の投与による、神経過敏または動揺の減少である。
【0196】
鎮静および痛覚脱失は、最小の鎮静(不安緩解)から全身麻酔までに及ぶ、連続した意識の状態を包含する。
【0197】
最小の鎮静は、不安緩解としても公知である。最小の鎮静とは、患者が言語命令に正常に応答する、薬物により誘導される状態である。認知機能および協調が損なわれ得る。換気および心臓血管機能は代表的に、影響を受けない。
【0198】
中程度の鎮静/痛覚脱失(意識のある鎮静)とは、患者が単独でかまたは軽い触覚刺激を伴ってかのいずれかで、言語命令に意図的に応答する、薬物により誘導される意識の低下である。通常、患者の気道を維持するための介入は、必要とされない。自発的換気は代表的に、充分である。心臓血管機能は通常、維持される。
【0199】
深い鎮静/痛覚脱失とは、患者が容易には目覚めることができないが、繰り返しの刺激または有痛刺激の後に意図的に(有痛刺激からの反射的な撤退ではなく)応答する、薬物により誘導される意識の低下である。独立した換気機能が損なわれ得るので、この患者は、患者の気道を維持するための補助を必要とし得る。自発的換気が不充分であり得る。心臓血管機能は通常、維持される。
【0200】
全身麻酔とは、患者が有痛刺激に対してさえ覚醒不可能である、薬物により誘導される意識消失である。独立した換気機能を維持する能力がしばしば損なわれるので、患者の気道を維持するための補助がしばしば必要とされる。低下した自発的換気または薬物により誘導される神経筋機能の低下に起因して、正圧換気が、必要とされ得る。心臓血管機能が損なわれ得る。
【0201】
集中治療室(ICU)における鎮静は、患者の環境に対する意識の低下、および外部刺激に対する応答の減少を可能にする。これは、危篤状態の疾病である患者の治療において役割を果たし得、そして患者の疾病の経過全体にわたって患者ごとに、そして個体ごとに変わる、広い範囲の症状制御を包含する。集中治療における重い鎮静は、気管内チューブの許容性および人工呼吸器の同期化(しばしば、神経筋遮断薬を伴う)を容易にするために、使用されている。
【0202】
一部の実施形態において、鎮静(例えば、長期鎮静、持続的鎮静)は、ICUにおいて誘導され、そして延長された期間(例えば、1日、2日、3日、5日、1週間、2週間、3週間、1か月、2か月)にわたって維持される。長期鎮静剤は、長い作用持続時間を有し得る。ICUにおける鎮静剤は、短い排泄半減期を有し得る。
【0203】
処置時の鎮静および痛覚脱失(意識のある鎮静ともまた称される)とは、被験体が心肺機能を維持しながら、快適でない処置に耐えることを可能にするために、鎮痛薬を伴ってかまたは伴わずに、鎮静薬または解離剤を投与する技術である。
【実施例0204】
本明細書中に記載される本発明がより充分に理解され得る目的で、以下の実施例を示す。本願に記載される合成および生物学の実施例は、本明細書中に提供される化合物、薬学的組成物および方法を例証するために提供されるものであって、決してその範囲を限定すると解釈されるべきでない。
【0205】
材料および方法
本明細書中に提供される化合物は、以下の一般的な方法および手順を使用して、容易に入手可能な出発物質から調製され得る。典型的なまたは好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応体のモル比、溶媒、圧力など)が与えられる場合、別段述べられない限り、他のプロセス条件も使用することができることが理解される。最適反応条件は、使用される特定の反応体または溶媒によって変動し得るが、そのような条件は、慣用的な最適化によって当業者によって決定され得る。
【0206】
さらに、当業者には明らかであり得るように、従来の保護基は、ある特定の官能基が望まれない反応を起こすことを防ぐために必要であり得る。特定の官能基に対する好適な保護基の選択ならびに保護および脱保護に適した条件は、当該分野で周知である。例えば、数多くの保護基ならびにそれらの導入および除去は、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,第2版,Wiley,New York,1991およびその中で引用されている参考文献に記載されている。
【0207】
本明細書中に提供される化合物は、公知の標準的な手順によって単離され得、精製され得る。そのような手順としては、再結晶、カラムクロマトグラフィー、HPLC、または超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)が挙げられる(がこれらに限定されない)。以下のスキームは、本明細書中に列挙される代表的なオキシステロールの調製に関して詳細に提示される。本明細書中に提供される化合物は、有機合成分野の当業者によって、公知のまたは商業的に入手可能な出発物質および試薬から調製され得る。本明細書中に提供されるエナンチオマー/ジアステレオマーの分離/精製において使用するために利用可能な例示的なキラルカラムとしては、CHIRALPAK(登録商標)AD-10、CHIRALCEL(登録商標)OB、CHIRALCEL(登録商標)OB-H、CHIRALCEL(登録商標)OD、CHIRALCEL(登録商標)OD-H、CHIRALCEL(登録商標)OF、CHIRALCEL(登録商標)OG、CHIRALCEL(登録商標)OJおよびCHIRALCEL(登録商標)OKが挙げられるが、これらに限定されない。
【0208】
本明細書中で報告した1H-NMR(例えば、約0.5~約4ppmのδ(ppm)の間の領域について)は、化合物のNMRスペクトルの例示的な解釈(例えば、例示的なピーク積分)であると理解される。
【0209】
分取HPLCのための例示的な一般方法:カラム:Waters RBridge prep 10μm C18、19×250mm。移動相:アセトニトリル、水(NH4HCO3)(30L水、24g NH4HCO3、30mL NH3.H2O)。流速:25mL/分。
【0210】
分析HPLCのための例示的な一般方法:移動相:A:水(10mMのNH4HCO3)、B:アセトニトリル、勾配:5%~95%のBを1.6分間または2分間 流量:1.8または2mL/分;カラム:XBridge C18、4.6×50mm、3.5μm、45℃。
【0211】
LC-ELSD/MS移動相:1.5mL/4L TFAを含む水(溶媒A)および0.75mL/4L TFAを含むアセトニトリル(溶媒B)、流速1.2mL/分で溶出勾配30%~90%(溶媒B)を0.9分間および90%で0.6分間保持を使用;カラム:Xtimate C18 2.1×30mm、3μm;カラム温度:50℃;PDA波長:UV 220nm;MSイオン化:ESIおよびELSD。
【0212】
SFCのための例示的な一般方法:カラム:CHIRALPAK(登録商標)AD C
SP(250mm×30mm、10μm)、勾配:45%B、A=NH3H2O、B=MeOH、流速:60mL/分。例えば、AD_3_EtOH_DEA_5_40_25MLは、以下を示す:「カラム:Chiralpak AD-3 150×4.6mm I.D.、3um 移動相:A:CO2 B:エタノール(0.05% DEA)勾配:5分間で5%から40%までのBおよび40%で2.5分間保持、次いで、5%のBを2.5分間。流速:2.5mL/分。カラム温度:35℃」。
【0213】
HRMS装置:Agilent G230B LCMS-TOF。移動相:0.1%FAを含む水(溶媒A)およびACN(溶媒B);溶出勾配:流速1mL/分で3分間で5%~95%(溶媒B)、および95%で1分間保持;カラム:Xbridge Shield RP 18 5μm、2.1×50mm;イオン源:AJS ESI供給源;イオンモード:陽性;ネブライズガス:窒素;乾燥ガス(N2)流:8L/分;ネブライズ圧力:35psig;ガス温度:325℃;シースガス温度:350℃;シースガス流:11L/分;キャピラリー電圧:3.5KV;フラグメンター電圧:175V。
【0214】
略語:PE:石油エーテル;TLC:薄層クロマトグラフィ;石油エーテル;EtOAc:酢酸エチル;THF:テトラヒドロフラン;PCC:クロロクロム酸ピリジニウム;t-BuOK:カリウムtert-ブトキシド;9-BBN:9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン;Pd(t-Bu3P)2:ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0);AcCl:塩化アセチル;i-PrMgCl:イソプロピルマグネシウムクロリド;TBSCl:tert-ブチル(クロロ)ジメチルシラン;(i-PrO)4Ti:チタンテトライソプロポキシド;BHT:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド;Me:メチル;i-Pr:イソ-プロピル;t-Bu:tert-ブチル;Ph:フェニル;Et:エチル;Bz:ベンゾイル;BzCl:塩化ベンゾイル;CsF:フッ化セシウム;DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド;DCM:ジクロロメタン;DMAP:4-ジメチルアミノピリジン;DMP:デス・マーチン・ペルヨージナン;EtMgBr:エチルマグネシウムブロミド;TEA:トリエチルアミン;AlaOH:アラニン;Boc:t-ブトキシカルボニル。Py:ピリジン;TBAF:フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム;THF:テトラヒドロフラン;TBS:t-ブチルジメチルシリル;TMS:トリメチルシリル;TMSCF3:(トリフルオロメチル)トリメチルシラン;Ts:p-トルエンスルホニル;Bu:ブチル;Ti(OiPr)4:テトライソプロポキシチタン;LAH:水素化アルミニウムリチウム;LDA:リチウムジイソプロピルアミド;LiOH.H2O:水酸化リチウム水和物;MAD:メチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド);NBS:N-ブロモスクシンイミド;Na2SO4:硫酸ナトリウム;Na2S2O3:チオ硫酸ナトリウム;MeCN:アセトニトリル;MeOH:メタノール;Boc:t-ブトキシカルボニル;MTBE:メチルtert-ブチルエーテル;K-セレクトリド:カリウムトリ(s-ブチル)ボロヒドリド。
【0215】
実施例1:1-(2-((3R,5R,8R,9R,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-13-メチル-3-(メチル-d3)ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)-2-オキソエチル)-1H-ピラゾール-4-カルボニトリル(化合物1)の合成。
【化10】
【0216】
A2の合成
【化11】
Mg(660mg、27.3mmol)を含むエーテル(10mL)の懸濁液に、CDI(4g、27.3mmol)を含む無水エーテル(2.5mL)溶液をN下にて25℃で滴下によって添加し、内部温度を35℃に上昇させた。次いで、混合物を25℃で3時間撹拌して、CDMgIを得た。これを直接使用することができる。
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(12g、54.6mmol)を含むトルエン(20mL)の溶液に、AlMe(13.7mL、2Mトルエン溶液、27.3mmol)を10℃で滴下により添加した。次いで、混合物を25℃で1時間撹拌した。混合物に、A1(2.5g、9.1mmol)(米国特許第9,512,165号に記載)を含むトルエン(7.5mL)の懸濁液をN下での滴下によって-70℃で添加した。混合物を-70℃で1時間撹拌し、次いで、CDMgIのエーテル溶液を-70℃で15分間にわたって滴下によって添加した。添加後、混合物を-70℃でさらに3時間撹拌後、-70℃での飽和NHCl(100mL)水溶液の添加によってクエンチした。次いで、混合物を25℃に加温し、濾過した。濾過ケーキをEtOAc(200mL)で洗浄し、濾液を合わせた。有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮し、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=10:1から2:1で溶出)によって精製して、A2(1.1g、39%)を固体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 2.49-2.35 (m,
1H), 2.14-1.98 (m, 1H), 1.95-1.70 (m, 7H), 1.70-1.00 (m, 15H), 0.86 (s, 3H).
【0217】
A3の合成
【化12】
EtPPhBr(6.33g、17.05mmol)を含む10mL THFの溶液に、t-BuOK(1.91g、17.05mmol)を含むTHF(15mL)の溶液を添加した。反応混合物を60℃で1時間撹拌し、次いで、混合物にA2(1g、3.41mmol)を含むTHF(10mL)の溶液を添加し、混合物を60℃でさらに15時間撹拌した。TLCが出発物質(staring material)が消費されたことを示したとき、反応混合物を水(10mL)でクエンチし、150mLのEtOAcで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮して、粗生成物を得た。残渣を、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=200:1~10:1で溶出)によって精製して、A3(1g、95.89%)を固体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 5.14-5.08 (m,
1H), 2.38-2.30 (m, 1H), 2.25-2.21 (m, 2H), 1.81-1.64 (m, 10H), 1.40-1.07 (m, 14H), 0.87 (s, 3H).
【0218】
A4の合成
【化13】
A3(1g、3.72mmol)を含む乾燥THF(10mL)の溶液に、BH.MeS(3.27mL、10当量)を0℃で添加した。20℃で2時間の撹拌後、反応混合物を氷浴中で冷却し、3MのNaOH(30mL)水溶液の添加およびその後の30%のH水溶液(20mL)の添加によってゆっくりクエンチした。20℃で1時間の撹拌後、混合物を濾過し、濾液をEtOAc(50mL×2)で抽出した。合わせた有機層を、Na水溶液(30mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮して、A4(1.2g、粗製)を得た。粗生成物を、さらに精製せずに次の工程で使用した。
【0219】
A5の合成
【化14】
A4(1.2g、粗製)を含む15mL CHClの溶液に、シリカゲル(1.1g)およびPCC(0.96g、4.46mmol)を20℃で添加し、反応物を20℃で2時間撹拌した。TLCが出発物質の消費を示した後、混合物を濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフ(PE:EtOAc=20:1~15:1~10:1~8:1~6:1で溶出)によって精製して、A5(0.8g、83.6%)を固体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 2.56-2.51 (m,
1H), 2.14-2.11 (m, 4H), 2.05-1.95 (m, 1H) , 1.81-1.64 (m, 7H) , 1.44-1.05 (m, 15H) , 0.61 (s, 3H).
【0220】
A6の合成
【化15】
A5(0.8g、2.49mmol)を含む50mL MeOHの溶液に、HBr(3滴)およびBr(0.14mL、2.74mmol)を25℃で添加した。反応物を25℃で1.5時間撹拌した。TLCが出発物質の消費を示したとき、反応混合物をNaHCO水溶液(30mL)の添加によってクエンチし、濃縮した。混合物を500mL EtOAcで抽出し、ブライン(100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮して、A6(1g、粗製)を固体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 3.92-3.91 (m,
2H), 2.85-2.75 (m, 1H), 2.20-2.10 (m, 1H) , 1.93-1.71 (m, 11H) , 1.44-1.09 (m, 12H) , 0.63 (s, 3H).
【0221】
化合物1の合成
【化16】
A6(0.15g、0.37mmol)を含む10mLアセトンの溶液に、KCO(0.15g、1.11mmol、3当量)および1H-ピラゾール-4-カルボニトリル(50mg、0.55mmol、1.5当量)を添加した。反応混合物を、23℃で2時間撹拌した。出発物質が完全に消費されたことをTLCが示した後、反応物を、CHCl(20mL)を用いて濾過し、濃縮した。残渣を、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=10:1~8:1~6:1~5:1~4:1~2:1)によって精製して、化合物1(54mg、収率35.14%)を固体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 7.86-7.81 (m,
2H), 5.04-4.88 (m, 2H), 2.61-2.59 (m, 1H) , 2.25-2.15 (m, 1H) , 2.06-2.03 (m, 1H) , 1.81-1.74 (m, 6H) , 1.49-1.27 (m, 12H) , 1.11-1.09 (m, 3H), 0.67 (s, 3H).C25H32D3N3O2[M+H]+のMS ESI計算値412.58、実測値395。
【0222】
実施例2:1-(2-((3R,5R,8R,9R,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル-17-d)-2-オキソエチル)-1H-ピラゾール-4-カルボニトリル(A10)の合成
【化17】
【0223】
A8の合成
【化18】
A7(1g、3.1mmol、特許「WO2014/169833号、2014年、A1」に報告)を含むTHF(20mL)の溶液に、DO(10mL)、CDOD(5mL)、およびNaOD(96.2mg、40%のDO溶液、0.94mmol)を添加した。混合物を、60℃で16時間撹拌した。反応混合物を、冷却後にAcOD(0.1MのDO溶液)でpH7に調整した。混合物に、NaCl(3g)およびPE(20
mL)を添加した。混合物を5分間撹拌し、有機層を分離し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧中で濃縮して、油状物質を得た。分析によって完全なジュウテリウム化が示されたので、この反応条件を繰り返した。前述の油状物質を含むTHF(20mL)の溶液に、DO(10mL)、CDOD(5mL)、およびNaOD(96.2mg、40%のDO溶液、0.94mmol)を添加した。混合物を、60℃で16時間撹拌した。反応混合物を、冷却後にAcOD(0.1MのDO溶液)でpH7に調整した。混合物に、NaCl(3g)およびPE(20mL)を添加した。混合物を5分間撹拌し、有機層を分離し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧中で濃縮して、A8(900mg、90%)を油状物質として得た。
H NMR (400 MHz, CDOD) δ 2.25-1.95 (m,
3H), 1.85-1.55 (m, 10H), 1.50-0.80 (m, 14H), 0.60 (s, 3H).
【0224】
A9の合成
【化19】
A8(0.3g、0.93mmol)を含むMeOH(3mL)の溶液に、HBr(37.5mg、40%、0.18mmol)およびBr(148mg、0.93mmol)を添加した。混合物を、15℃で3時間撹拌した。混合物を、NaHCO(20mL、飽和)によってクエンチし、EtOAc(20mL)で抽出した。有機層を分離し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧中で濃縮して、A9(0.35g、94%)を油状物質として得た。
H NMR (400 MHz, CDOD) δ 2.25-2.10 (m,
1H), 1.85-1.55 (m, 11H), 1.50-0.80 (m, 15H), 0.63 (s, 3H).
【0225】
A10の合成
【化20】
A9(0.35g、0.87mmol)を含むアセトン(3mL)の溶液に、4-シアノ-ピラゾール(323mg、3.5mmol)およびKCO(487mg、3.5mmol)を添加した。混合物を、15℃で1時間撹拌した。混合物を、NHCl(20mL、飽和)によってクエンチし、EtOAc(20mL)で抽出した。有機層を分離し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧中で濃縮し、フラッシュカラム(20~60%EtOAcを含むPE)によって精製して、A10(0.23g、64%、12% 2
1-Dが残存した)を固体として得た。
A10(0.23g、12% 21-Dが残存、0.56mmol)を含むTHF(5mL)の溶液に、MeOH(10mL)およびNaHCO(47mg、0.56mmol)を含む水(5mL)を添加した。混合物を、20℃で16時間撹拌した。混合物をEtOAc(50mL)で希釈し、水(2×50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧中で濃縮し、60℃のヘキサン(30mL)中ですりつぶして、A10(162mg、70%、D比:97.89%)を固体として得た。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 7.86 (s, 1H),
7.81 (s, 1H), 5.10-4.80 (m, 2H), 2.25-2.15 (m, 1H), 2.10-2.00 (m, 1H), 1.90-1.65 (m, 7H), 1.45-1.30 (m, 9H), 1.30-1.20 (m, 6H), 1.30-1.00 (m, 3H), 0.67 (s, 3H); LC-ELSD/MS純度100%、C25H35DN3O2 [M+H]+のMS
ESI計算値411、実測値411; C25H35DN3O2 [M+H]+のHRMS計算値411.2865、実測値411.2815。
【0226】
実施例3。生物学的データ
【0227】
TBPS結合のステロイド阻害
【0228】
5mM GABAの存在下においてラット脳皮質膜を使用する[35S]-t-ブチルビシクロホスホロチオネート(TBPS)結合アッセイが報告されている(Geeら、J.Pharmacol.Exp.Ther.1987,241,346-353;Hawkinsonら、Mol.Pharmacol.1994,46,977-985;Lewin, A.Hら, Mol.Pharmacol.1989, 35, 189-194)。
【0229】
簡潔には、二酸化炭素で麻酔されたSprague-Dawleyラット(200~250g)の断頭術後、速やかに皮質を取り出す。その皮質を、ガラス/テフロン(登録商標)ホモジナイザーを使用して10体積の氷冷0.32Mスクロース中でホモジナイズし、4℃、1500×gにおいて10分間遠心分離する。得られた上清を4℃、10,000×gにおいて20分間遠心分離して、P2ペレットを得る。そのP2ペレットを、200mM NaCl/50mMリン酸Na-K pH7.4緩衝液に再懸濁し、4℃、10,000×gにおいて10分間遠心分離する。この洗浄手順を2回繰り返し、ペレットを10体積の緩衝液に再懸濁する。膜懸濁液のアリコート(100mL)を、3nM[35S]-TBPS、および5mM GABAの存在下のジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解された試験薬物(最終0.5%)の5mLのアリコートとともにインキュベートする。このインキュベーションによって、緩衝液を含む1.0mLという最終体積が生じる。非特異的結合が、2mM非標識TBPSの存在下において測定され、それは、15~25%の範囲である。室温での90分間のインキュベーションの後、細胞回収器(Brandel)を使用するガラスファイバーフィルター(Schleicher and Schuell No.32)での濾過によってアッセイを終了させ、氷冷緩衝液で3回すすぐ。フィルターに結合した放射能を液体シンチレーションスペクトロメトリーによって測定する。各濃度について平均された各薬物に対するデータ全体の非線形カーブフィッティングを、Prism(GraphPad)を使用して行う。F検定によって平方和が有意に低い場合、完全阻害モデルの代わりに部分阻害モデルにデータを当てはめる。同様に、F検定によって平方和が有意に低い場合、1成分阻害モデルの代わりに2成分阻害モデルにデータを当てはめる。特異的結合の50%阻害をもたらす試験化合物の濃度(IC50)および阻害の最大程度(Imax)を、データ全体に対して使用された同じモデルを用いて個々の実験について測定し、次いで、その個々の実験の平均値±SEMを計算する。
ピクロトキシンは、これらの研究のためのポジティブコントロールとして働く。なぜなら、TBPS結合を強く阻害することが実証されているからである。
【0230】
様々な化合物を、インビトロにおける[35S]-TBPS結合の調節因子としての潜在能力を測定するためにスクリーニングするまたはスクリーニングし得る。これらのアッセイは、上で論じられた手順に従って行われるまたは行われ得る。
【0231】
以下の表2では、Aは0.01μM未満のTBPS IC50(μM)を示し、Bは0.01μMから0.1μM未満のTBPS IC50(μM)を示し、Cは0.1μMから1.0μM未満のTBPS IC50(μM)を示し、Dは1.0μMから10μM未満のTBPS IC50(μM)を示し、Eは10μM以上を意味する。
【表2】
【0232】
実施例4.化合物の代謝安定性の評価--ヒトCYP3A4 SUPERSOMES(商標)。
【0233】
SUPERSOMES(商標)アッセイ-本明細書中に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)の代謝安定性を評価するために、以下のアッセイを利用することができる。このアッセイは、例示のみを目的として提供し、本明細書中に記載の化合物の代謝安定性を評価するための非限定的な方法である。
【0234】
7.5mMの本明細書中に記載の化合物の保存液を、DMSO中で調製することができる。7.5mM保存液を、アセトニトリル(ACN)で50mMに希釈することができる。ヒトCYP3A4 SUPERSOMES(商標)(1000pmol/mL、BD Gentest.TM.Products and Servicesから購入)を、3mM MgCl2を含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)で62.5pmol/mLに希釈することができる。希釈したsupersomesを96ウェルポリプロピレンプレートのウェルに3連で添加することができる。10mLアリコートの50mM試験化合物を、SUPERSOMES(商標)に添加することができ、混合物を10分間予熱することができる。予熱したNADPH溶液の添加によって反応を開始することがで
きる。反応物の最終体積は0.5mLであり得、50pmol/mL CYP3A4 SUPERSOMES(商標)、1.0mM試験化合物、および2mM NADPHを含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)、および3mM MgCl2を含み得る。反応混合物を37℃でインキュベートすることができ、50mLアリコートを0、5、10、20、および30分後に取り出し、反応停止のための内部標準を含む50mLの氷冷ACNを含み得る96ウェルプレートに添加することができる。プレートを4℃で20分間保存することができ、その後に、100mLの水をプレートのウェルに添加後に遠心分離して沈殿したタンパク質をペレット化した。上清を別の96ウェルプレートに移し、親物質の残存量を、Applied Bio-systems API 4000質量分析計を使用したLC-MS/MSによって分析した。
【0235】
データ解析:
試験化合物のin vitro半減期(t1/2値)を、LN(親物質の残存%)対インキュベーション時間の関係の線形回帰の傾きから計算することができる:in vitro t1/2=0.693/k(式中、k=-[親物質の残存%(ln)対インキュベーション時間の線形回帰の傾き])。
【0236】
実施例5.ラットにおける化合物の薬物動態の評価
【0237】
本明細書中に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)の薬物動態を評価するために、以下のアッセイを利用することができる。このアッセイは、例示のみを目的として提供し、本明細書中に記載の化合物の薬物動態を評価するための非限定的な方法である。
【0238】
本明細書中に記載の化合物を、経口胃管栄養(PO)によってラットに個別に服薬させることができる。各化合物を、10mg/kgの用量で3匹のラットに投与することができる(N=3ラット/化合物;研究において合計9ラット)。各化合物を、100%PEG400中に濃度2mg/mLで製剤化することができる。血液試料を、服薬から15分後および30分後、ならびに1、2、4、6、8、12、24、48、および72時間後に各ラットから採取することができる。血液試料を遠心分離して血漿を得ることができる。血漿試料を、LC-MS/MSを使用して、各時点の化合物の服薬濃度について解析することができる。各化合物の定量限界は、1ng/mLであった。
【0239】
ラットt1/2値を、WinNonlinソフトウェアを使用したノンコンパートメント解析によって決定することができる。
【0240】
等価物および範囲
請求項において、冠詞(例えば、「a」、「an」および「the」)は、反対のことが示されていないかまたは別段文脈から明らかでない限り、1つまたはそれより多いことを意味し得る。反対のことが示されていないかまたは別段文脈から明らかでない限り、ある群の1つ以上のメンバー間に「または」を含む請求項または説明は、1つの、1つより多いまたはすべての群メンバーが、所与の生成物またはプロセスに存在するか、使用されているか、または別途関連していることを満たすと考えられる。本発明は、その群の厳密に1つのメンバーが、所与の生成物またはプロセスに存在するか、使用されているか、または別途関連している実施形態を含む。本発明は、1つより多いまたはすべての群メンバーが、所与の生成物またはプロセスに存在するか、使用されているか、または別途関連している実施形態を含む。
【0241】
さらに、本発明は、列挙される請求項の1つ以上からの1つ以上の制限、エレメント、節および記述用語が別の請求項に導入されているすべてのバリエーション、組み合わせおよび順列を包含する。例えば、別の請求項に従属している任意の請求項は、同じ基本請求
項に従属している他の任意の請求項に見られる1つ以上の制限を含むように改変され得る。エレメントが、例えば、マーカッシュ群の形式でリストとして提示される場合、そのエレメントの各部分群もまた開示され、任意のエレメントが、その群から除去され得る。一般に、本発明または本発明の局面が、特定のエレメントおよび/または特徴を含むと言及される場合、本発明または本発明の局面のある特定の実施形態は、そのようなエレメントおよび/もしくは特徴からなるかまたはそれらから本質的になると理解されるべきである。単純にする目的で、それらの実施形態は、この通りの言葉で本明細書中に明確に示されていない。用語「含む(comprising)」および「含む(containing)」は、オープンであるように意図されており、さらなるエレメントまたは工程を含むことを許容することも注意されたい。範囲が与えられている場合、終点は含まれる。さらに、別段示されないかまたは別段文脈および当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表現された値は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、本発明の種々の実施形態において述べられた範囲内の任意の特定の値または部分範囲をその範囲の下限の単位の10分の1まで想定し得る。
【0242】
本願は、様々な発行済特許、公開特許出願、学術論文、および他の刊行物(これらのすべてが、参照により本明細書中に援用される)について言及する。援用される任意の参考文献と本明細書との間に矛盾が存在する場合、本明細書が支配するものとする。さらに、従来技術の範囲内に含まれる本発明の任意の特定の実施形態は、請求項の任意の1つ以上から明白に除外され得る。そのような実施形態は、当業者に公知であると見なされるので、それらは、その除外が本明細書中に明示的に示されなかったとしても、除外され得る。本発明の任意の特定の実施形態は、従来技術の存在に関係しているか否かを問わず、任意の請求項から、任意の理由で除外され得る。
【0243】
当業者は、単なる慣用的な実験法を使用して、本明細書中に記載される特定の実施形態に対する多くの等価物を認識し得るかまたは確かめることができるだろう。本明細書中に記載される本実施形態の範囲は、上記の説明に限定されると意図されておらず、それは、添付の特許請求の範囲に示されるとおりである。当業者は、以下の特許請求の範囲に定義されるような本発明の精神または範囲から逸脱することなく、この説明に対する様々な変更および改変が行われ得ることを認識するだろう。
【0244】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
式(I)
【化21】

(式中、
3a は、1またはそれを超えるジュウテリウムまたはX -OX が独立して存在するように必要に応じて置換されたC ~C アルキルであり、ここで、X およびX の各々は、独立して、もう1つのジュウテリウムが存在するように必要に応じて置換されたC ~C アルキレンであり;
、R 6a 、R 6b 、R 17 、R 21a 、R 21b 、R 、R 、R 16a 、R 16b 、R 7a 、R 7b 、R 12a 、R 12b 、R 11a 、R 11b 、R 2a 、R 2b 、R 19 、R 4a 、およびR 4b の各々は、独立して、水素およびジュウテリウムからなる群から選択され、
ただし、
(a)R 3a が、ジュウテリウムもX -OX も存在しないC ~C アルキルであり、ここで、X およびX の各々は、独立して、ジュウテリウムが存在しないC ~C アルキレンである場合、R 、R 6a 、R 6b 、R 17 、R 21a 、R 21b 、R 、およびR 、R 16a 、R 16b 、R 7a 、R 7b 、R 12a 、R 12b 、R 11a 、R 11b 、R 2a 、R 2b 、R 19 、R 4a 、およびR 4b の少なくとも1つはジュウテリウムであるか、あるいは
(b)R 、R 6a 、R 6b 、R 17 、R 21a 、R 21b 、R 、R 、R 16a 、R 16b 、R 7a 、R 7b 、R 12a 、R 12b 、R 11a 、R 11b 、R 2a 、R 2b 、R 19 、R 4a 、およびR 4b の全てが水素である場合、R 3a は、1またはそれを超えるジュウテリウムまたはX -OX が独立して存在するように置換されたC ~C アルキルであり、ここで、X およびX は、少なくとも1つのジュウテリウムが存在するように置換されなければならない)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
(項2)
3a は、0~7のジュウテリウムまたはX 2a -OX 3a が独立して存在するように置換されたC ~C アルキルであり、ここで、X 2a は、0~7のジュウテリウムが独立して存在するように置換されたC ~C アルキレンであり、X 3a は、0~7のジュウテリウムが独立して存在するように置換されたC ~C アルキレンである、上記項1に記載の化合物。
(項3)
3a が-CH である場合、R 、R 6a 、R 6b 、R 17 、R 21a 、R 21b 、R 、およびR の少なくとも1つはジュウテリウムであるか、あるいは、R 、R 6a 、R 6b 、R 17 、R 21a 、R 21b 、R 、およびR の全てが水素である場合、R 3a は、1~3のジュウテリウムが独立して存在するように置換されたメチル基である、上記項1または2に記載の化合物。
(項4)
3a は、-CH およびCD からなる群から選択される、上記項1に記載の化合物。
(項5)
3a は-CH である、上記項1または2に記載の化合物。
(項6)
3a は-CD である、上記項1または2に記載の化合物。
(項7)
、R 6a 、R 6b 、R 17 、R 21a 、R 21b 、R 、R 、R 16a 、R 16b 、R 7a 、R 7b 、R 12a 、R 12b 、R 11a 、R 11b 、R 2a 、R 2b 、R 19 、R 4a 、およびR 4b の少なくとも1つはジュウテリウムである、上記項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
(項8)
、R 6a 、R 6b 、R 17 、R 21a 、R 21b 、R 、およびR の少なくとも1つはジュウテリウムである、上記項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
(項9)
3a は-CH であり、R 、R 6a 、R 6b 、R 17 、R 21a 、R 21b 、R 、R 、R 16a 、R 16b 、R 7a 、R 7b 、R 12a 、R 12b 、R 11a 、R 11b 、R 2a 、R 2b 、R 19 、R 4a 、およびR 4b の少なくとも1つはジュウテリウムである、上記項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
(項10)
3a は-CH であり、R 、R 6a 、R 6b 、R 17 、R 21a 、R 21b 、R 、およびR の少なくとも1つはジュウテリウムである、上記項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
(項11)
およびR 6a は水素である、上記項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
(項12)
およびR 6a はジュウテリウムである、上記項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
(項13)
17 は水素である、上記項1~12のいずれか1項に記載の化合物。
(項14)
17 はジュウテリウムである、上記項1~12のいずれか1項に記載の化合物。
(項15)
21a およびR 21b の各々は、独立して、水素およびジュウテリウムからなる群から選択される、上記項1~14のいずれか1項に記載の化合物。
(項16)
21a およびR 21b は水素である、上記項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
(項17)
21a およびR 21b はジュウテリウムである、上記項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
(項18)
およびR は水素である、上記項1~17のいずれか1項に記載の化合物。
(項19)
およびR はジュウテリウムである、上記項1~17のいずれか1項に記載の化合物。
(項20)
21a 、R 21b 、R 、およびR はジュウテリウムである、上記項1~13のいずれか1項に記載の化合物。
(項21)
17 およびR 16a はジュウテリウムであり、R 16b は水素である、上記項1~10
のいずれか1項に記載の化合物。
(項22)
19 は水素である、上記項1~21のいずれか1項に記載の化合物。
(項23)
前記式(I)の化合物は、式(I-A)
【化22】

の化合物である、上記項1~23のいずれか1項に記載の化合物。
(項24)
前記式(I)の化合物は、式(I-B)
【化23】

の化合物である、上記項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
(項25)
前記式(I)の化合物は、式(I-C)
【化24】

の化合物である、上記項1に記載の化合物。
(項26)
前記式(I-C)の化合物は、以下の表:
【表3-1】

【表3-2】

(ここで、ジュウテリウムと記していないいずれの原子も、その天然の同位体存在度で存在している)で特定される化合物からなる群から選択される、上記項23に記載の化合物。
(項27)
前出の上記項のいずれか1項に記載の化合物の薬学的に許容され得る塩。
(項28)
上記項1~24のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む薬学的組成物。
(項29)
CNS関連障害の処置を必要とする被験体におけるCNS関連障害を処置する方法であって、有効量の上記項1~24のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を前記被験体に投与する工程を含む、方法。
(項30)
前記CNS関連障害は、睡眠障害、気分障害、統合失調症スペクトラム障害、痙攣障害、記憶および/または認知の障害、運動障害、人格障害、自閉症スペクトラム障害、疼痛、外傷性脳損傷、脈管疾患、物質乱用障害および/または離脱症候群、耳鳴、あるいはてんかん発作重積状態である、上記項29に記載の方法。
(項31)
前記CNS関連障害は、うつである、上記項29に記載の方法。
(項32)
前記CNS関連障害は、産後うつである、上記項29に記載の方法。
(項33)
前記CNS関連障害は、大うつ病性障害である、上記項29に記載の方法。
(項34)
前記大うつ病性障害は、中程度の大うつ病性障害である、上記項31に記載の方法。
(項35)
前記大うつ病性障害は、重度の大うつ病性障害である、上記項31に記載の方法。
【外国語明細書】