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  • 特開-卵代替物及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010509
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】卵代替物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20230113BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20230113BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230113BHJP
【FI】
A23L15/00 Z
A23L29/269
A23L5/00 M
A23L5/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021191624
(22)【出願日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】3,123,907
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(31)【優先権主張番号】17/369,930
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521423795
【氏名又は名称】ナバティ フード インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nabati Foods Inc.
【住所又は居所原語表記】14811 134 Ave NW, Edmonton, Alberta, T5L 4V5, Canada
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アーマッド ヤヒヤ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン キャリエール
(72)【発明者】
【氏名】リム ビゼイ
【テーマコード(参考)】
4B035
4B041
4B042
【Fターム(参考)】
4B035LC06
4B035LC16
4B035LG01
4B035LG02
4B035LG04
4B035LG12
4B035LG15
4B035LG16
4B035LG19
4B035LG27
4B035LG32
4B035LG33
4B035LG51
4B035LG57
4B035LK04
4B035LK12
4B035LK13
4B035LK19
4B035LP21
4B035LP41
4B035LP44
4B041LC10
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4B041LH16
4B041LK02
4B041LK03
4B041LK04
4B041LK07
4B041LK11
4B041LK14
4B041LK18
4B041LK19
4B041LK24
4B041LK42
4B041LK44
4B041LK50
4B041LP04
4B041LP17
4B041LP25
4B042AC04
4B042AC10
4B042AD40
4B042AE08
4B042AK01
4B042AK04
4B042AK06
4B042AK08
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK13
4B042AK16
4B042AK20
4B042AP14
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】液体卵類似体は、水、ルピンタンパク質、エンドウ豆タンパク質、油、高アシル及び低アシルゲランガム、ピロリン酸四ナトリウム、イソマルトオリゴ糖、酸味料、並びにマグネシウム及びカルシウムの二価カチオンを含む組成物を備える。
【解決手段】液体卵類似体を調製する方法は、水、ルピンタンパク質及びエンドウ豆タンパク質を組み合わせてタンパク質混合物を作製し、水及びゲランガムを組み合わせてゲル混合物を作製し、タンパク質混合物及びゲル混合物を残りの成分と組み合わせて混合物を作製する。次いで、混合した混合物を低温殺菌し、冷却し、瓶詰めすることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
分散剤;
乳化剤;
植物性タンパク質;
高アシルゲランガム;
低アシルゲランガム;
食感改良剤;及び
グルコース、フルクトース又はスクロース誘導体;
を含む、液体卵類似体。
【請求項2】
酸味料を含む、請求項1に記載の液体卵類似体。
【請求項3】
植物性タンパク質は、ルピンタンパク質を含む、請求項1又は2に記載の液体卵類似体。
【請求項4】
植物性タンパク質は、エンドウ豆タンパク質を含む、請求項1又は2に記載の液体卵類似体。
【請求項5】
グルコース、フルクトース又はスクロース誘導体は、イソマルトオリゴ糖を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体卵類似体。
【請求項6】
トランスグルタミナーゼを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の液体卵類似体。
【請求項7】
リン酸ナトリウム又はリン酸カリウムを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体卵類似体。
【請求項8】
リン酸ナトリウム又はリン酸カリウムは、四ナトリウムピロリン酸(TSPP)、リン酸二ナトリウム(DSP)、及びヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)からなる群から選択される、請求項7に記載の液体卵類似体。
【請求項9】
食感改良剤は、1つ以上の二価カチオン塩を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の液体卵類似体。
【請求項10】
1つ以上の二価のカチオン塩は、マグネシウム塩を含む、請求項9に記載の液体卵類似体。
【請求項11】
マグネシウム塩は、乳酸マグネシウムを含む、請求項10に記載の液体卵類似体。
【請求項12】
1つ以上の二価のカチオン塩は、カルシウム塩を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の液体卵類似体。
【請求項13】
以下の:
分散剤;
乳化剤;
ルピンタンパク質抽出物;
エンドウ豆タンパク質抽出物;
高アシルゲランガム;
低アシルゲランガム;
食感改良剤;及び
を含む、液体卵類似体。
【請求項14】
ルピンタンパク質抽出物及びエンドウ豆タンパク質抽出物は一緒に、液体卵類似体の総質量の10%~15%で含まれる、請求項13に記載の液体卵類似体。
【請求項15】
ルピンタンパク質抽出物及びエンドウ豆タンパク質抽出物は一緒に、液体卵類似体におけるタンパク質含有量の総質量の95%以上の量で含まれる、請求項13又は14に記載の液体卵類似体。
【請求項16】
ルピンタンパク質抽出物及びエンドウ豆タンパク質抽出物の合計質量に対する高アシルゲランガム及び低アシルゲランガムの合計質量の比が0.06~0.085である、請求項13~15のいずれか一項に記載の液体卵類似体。
【請求項17】
以下の:
植物性卵代替物:
乳化剤;
ルピンタンパク質抽出物;
エンドウ豆タンパク質抽出物;
高アシルゲランガム;
低アシルゲランガム
食感改良剤
を含む、液体卵類似体。
【請求項18】
液体卵類似体を調製する方法であって、以下の:
タンパク質、第一の食感改良剤及び乳化剤を分散剤に配合して、タンパク質混合物を形成する工程;
高アシルゲランガムと低アシルゲランガムを含むゲル組成物を分散剤に混合して、ゲル混合物を形成する工程;
前記ゲル混合物を前記タンパク質混合物と混合して複合混合物を形成する工程;かつ、
前記複合混合物を低温殺菌する工程;
を含む、方法。
【請求項19】
混合物を低剪断下で撹拌しながら、混合物を65℃以下の温度で10分未満の期間低温殺菌する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
タンパク質混合物を形成する工程、ゲル混合物を形成する工程、及び前記ゲル混合物を前記タンパク質混合物と混合して複合混合物を形成する工程のすべてが、55℃以下の温度で行われる、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
第一の食感改良剤は、二価のカチオン塩を含む、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
混合物中に油及び強化剤を投与する工程を含む、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
高アシルゲランガムと低アシルゲランガムを含むゲル組成物を分散剤に混合して、ゲル混合物を形成する工程は、グルコース、フルクトース又はスクロース誘導体を分散剤中に配合する工程を含む、請求項18~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
グルコース、フルクトース又はスクロース誘導体は、イソマルトオリゴ糖を含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵代替物及びその製造方法、特に植物性卵代替物に関する。
【背景技術】
【0002】
卵、特に鶏卵は世界中で広汎に摂取されている食物である。鶏等の産卵生物を世界中で飼育して、卵を生産する。鶏卵の大量生産は広汎に行われており、2017年の世界の鶏卵生産量は8,010万トンと推定される。卵は生食されることもあるが、多くの場合、調理されて様々な食事や食品に利用される。
【0003】
鶏卵は、その栄養成分及び調理特性が評価されている。調理では、卵は乳化剤及び増粘剤として用いられる場合が多い。ベーキングでは、卵はケーキやクッキーに構造をもたらし、膨張させる。
【0004】
鶏卵はまた、健康面でいくつかの否定的な懸念がある。卵は食事性コレステロールの重要な供給源であり、いくつかの研究では負の結果と関連する。また、卵はサルモネラ・エンテリティディス等の病原性細菌による汚染の問題にも直面する。世界的な需要を満たすために行われている養鶏方法には、多くの人々が倫理的な懸念を抱いている。ベジタリアンやビーガンの食生活の一環として卵を避ける人もいるだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鶏卵に類似する栄養的・調理的特性があり、かつ、動物由来の成分を実質的に含まない卵類似品に対する要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
分散剤、乳化剤、植物性タンパク質、高アシルゲランガム、低アシルゲランガム、食感改良剤及びグルコース、フルクトース又はスクロース誘導体を含む、液体卵類似体が提供される。
【0007】
様々な実施形態では、以下の:液体卵類似体は、酸味料を含み;植物性タンパク質は、ルピンタンパク質を含み;植物性タンパク質は、エンドウ豆タンパク質を含み;グルコース、フルクトース又はスクロース誘導体は、イソマルトオリゴ糖を含み;液体卵類似体は、トランスグルタミナーゼを含み;液体卵類似体は、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウムを含み;、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウムは、四ナトリウムピロリン酸(TSPP)、リン酸二ナトリウム(DSP)及び六リン酸ナトリウム(SHMP)からなる群から選択され;食感改良剤は、1以上の二価カチオン塩を含み;1以上の二価カチオン塩は、マグネシウム塩を含み;マグネシウム塩は、乳酸マグネシウムを含み;1以上の二価カチオン塩は、カルシウム塩を含む;特徴のうちの1以上を含んでよい。
【0008】
ある実施形態では、液体卵組成物は、組成物の全質量の1%までの量のリン酸ナトリウム又はリン酸カリウムを含んでよい。好ましい実施形態では、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウムは、組成物の全質量の約0.85%の量で配合される。
【0009】
分散剤、乳化剤、ルピンタンパク質抽出物、エンドウ豆タンパク質抽出物、高アシルゲランガム、低アシルゲランガム及び食感改良剤を含む液体卵類似体もまた提供される。
【0010】
様々な実施形態では、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる:ルピンタンパク質抽出物及びエンドウ豆タンパク質抽出物は一緒に液体卵類似体の総質量の10%~15%を構成し;高アシルゲランガム及び低アシルゲランガムの合計質量は、ルピンタンパク質抽出物及びエンドウ豆タンパク質抽出物の合計質量の6%~8.5%である。ルピンタンパク質抽出物及びエンドウ豆タンパク質抽出物は一緒に、液体卵類似体のタンパク質含有量の総質量の95%以上を構成することができる。他の実施形態では、ルピンタンパク質抽出物及びエンドウ豆タンパク質抽出物は、液体卵類似体におけるタンパク質の唯一の供給源であってよい。
【0011】
また、乳化剤、ルピンタンパク質抽出物、エンドウ豆タンパク質抽出物、高アシルゲランガム、低アシルゲランガム、及び食感改良剤を含む植物系の卵代替物も提供される。
【0012】
液体卵類似体を調製する方法であって、以下の:タンパク質、第一の食感改良剤及び乳化剤を分散剤に配合してタンパク質混合物を形成する工程;高アシルゲランガム及び低アシルゲランガムを含むゲル組成物を分散剤に混合してゲル混合物を形成する工程;ゲル混合物をタンパク質混合物と混合し、混合物を形成する工程;及び混合物を低温殺菌する工程;を含む方法が提供される。
【0013】
様々な実施形態では、本方法は、以下の:混合物を低剪断下で撹拌しながら65℃以下の温度で10分未満低温殺菌する工程;タンパク質混合物を形成する工程、ゲル混合物を形成する工程、及びゲル混合物をタンパク質混合物と混合する工程を、全て55℃以下の温度で行う;第1の食感改良剤は、二価カチオン塩を含む;混合物に油及び強化剤を投与する工程;高アシルゲランガム及び低アシルゲランガムを含むゲル組成物を分散剤に投与して、ゲル混合物を形成する工程は、分散剤にグルコース、フルクトース又はスクロース誘導体を投与する工程を含み;グルコース、フルクトース又はスクロース誘導体は、イソマルトオリゴ糖を含む;特徴のうちの1つ以上を含んでよい。
【0014】
組成物及び方法のこれら及び他の態様は、請求項に記載される。
【0015】
以下、図を参照して実施形態を説明するが、図中、同様の参照文字は、例示として、同様の要素を示す
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態の液体卵類似体の調製方法を示すフローチャートである。
【0017】
図2】別の実施形態に係る液体卵類似体の調製方法を示すフローチャートである。
【0018】
図3】さらに別の実施形態による液体卵類似体の調製方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に記載した実施形態に対して、特許請求の範囲に記載されているものから逸脱することなく、重要でない修正を行うことができる。
【0020】
液体卵類似体は、卵代替物と同等にいわれる場合があり、従来の卵製品に類似の性質を備える組成物である。本明細書の「乾燥質量」とは、添加水を導入する前の組成物の質量をいう。添加水が導入される前に、ある程度の量の水が成分中に天然に存在する可能性がある。
【0021】
組成物は一般に「液体卵類似体」というが、ある実施形態では、組成物は、乾燥物質、例えば粉末として製造及び提供されてよい。粉末卵類似体-同等に粉末卵代替物-は、水及び/又は油等の適当な分散剤で水和されてよい。
【0022】
ある実施形態は、植物系の液体卵類似体ということができる。本明細書において、植物系とは、その組成物中の成分の大部分又は全部が植物系の食品であり、動物由来ではないことを意味すると解される。これは、組成物中の成分には動物ではない非生物源(例えば、ある種の塩)又は生物源(例えば、植物、真菌、藻類など)があることを意味する。
【0023】
例示的な液体卵類似体は、少なくとも分散剤、タンパク質、高アシルゲランガム、低アシルゲランガム、及び乳化剤を含む。様々な追加成分としては、例えば、追加の分散剤、追加のタンパク質、追加のハイドロコロイド、緩衝剤、保存剤、カチオン塩を含む食感改良剤、強化剤、追加の乳化剤、着色剤及び風味促進剤があげられる。個々の成分は複数のカテゴリーに当てはまる場合がある。例えば、食感改良剤(カチオン塩)及び強化剤として機能する炭酸カルシウムがあげられる。
【0024】
ほとんどの実施形態では、最大質量の分散剤は水である。ある実施形態では、pHがほぼ中性である他の流体は、水の代わりに、又は水と組み合わせて取り込まれてよい。ある好ましい実施形態では、油は、追加の分散剤として混合される。例示的な油は、ヒマワリ油であってもよいが、室温で液体である他の油を用いてよい。分散剤として用いられる油は、主としてモノ-及びポリ-不飽和脂肪酸を含んでよい。ある実施形態では、水は、液体卵類似体の総質量の70%~85%を占める。好ましい実施形態では、水は、液体卵類似体の全質量の約75%を占める。ある実施形態では、油は、液体卵類似体の全質量の5%~10%又は液体卵類似体の乾燥質量の約20%~40%を占める。ある実施形態では、ヒマワリ油等の油は、液体卵類似体の総質量の6.5%~7.0%を占める。好ましい実施形態では、ヒマワリ油は、液体卵類似体の全質量の約7.3%を構成する。
【0025】
液体卵類似体は、総質量の約12%のタンパク質を含むことができる。ほとんどの実施形態では、タンパク質は、穀類、豆類、及び豆類からの単離物等の植物性タンパク質を含む。好ましい実施形態では、タンパク質は、ルピナス及びエンドウ豆タンパク質単離物を含む。一実施形態では、ルピンタンパク質は、組成物の全質量の5%~15%を占める。好ましい実施形態では、ルピンタンパク質は、液体卵類似体の総質量の9.5%~11%の間、又は液体卵類似体の乾燥質量の38%~44%の間を占める。一実施形態では、エンドウ豆タンパク質は、液体卵類似体の総質量の0%~5%を占める。好ましい実施形態では、エンドウ豆タンパク質は、液体卵類似体の総質量の1.75%~2.75%又は液体卵類似体の乾燥質量の7%~11%を占める。ルピンタンパク質抽出物及びエンドウ豆タンパク質抽出物は一緒に液体卵類似体のタンパク質含有量の総質量の95%以上を構成することができる。他の実施形態では、ルピンタンパク質抽出物及びエンドウ豆タンパク質抽出物は、液体卵類似体におけるタンパク質の唯一の供給源であり得る。
【0026】
他の候補植物性タンパク質のいくつかの非限定的な例としては、野菜及びマメ類、例えばホウレンソウ、芽キャベツ、ガルバンゾ豆、空豆、ピント豆、金時豆、リマ豆、大豆、レンズ豆を含むマメ類;キアシード等の種子類;トウモロコシ、米、小麦、キノア、アマランス、ソバ、キビ等の穀類;ジャガイモ類及びサツマイモ類の塊茎及び根;トマト、クランベリー、カボチャ等の果物;麻、アーモンド、カシュー、ピスタチオ等のナッツ類;ならびにクロレラ、スピルリナなどの藻類、海藻類があげられる。一般に、液体卵類似体の総質量の約10~15%が、植物性タンパク質を含むタンパク質で構成されていてもよい。
【0027】
液体卵類似体では、様々な成分が相互作用して、食感を含む所望の特性が得られる。食感としては、製品の粘度、クリーミーさ、果肉感、全体的な口当たりがあげられる。製品の食感に寄与する成分としては、デンプン、ハイドロコロイド、乳化剤などがあげられる。液体卵類似体の多くの実施形態では、室温及び従来の冷蔵温度で保存可能な流動性があり、調理すると調理済み卵の一般的な構造及び特性に近似するゲル構造を形成する製品を製造することを目的とする。流れるような固さとは、適度な速度で注ぐことができるような粘度が十分に低い液体をいう。例えば、流れるような固さがある液体卵類似体の粘度は、250cP未満、好ましくは150cP未満であってよい。液体卵類似体のある実施形態では、これらの特性を提供し得る成分としては、植物性タンパク質、ハイドロコロイド、緩衝剤、多糖類及びオリゴ糖、乳化剤、カチオン塩、及びトランスグルタミナーゼ等の他の食感改良剤があげられる。
【0028】
TSPP及びクエン酸カリウム等の緩衝剤により、ほぼ中性(7.0)のpHが維持される。例示的な実施形態では、TSPP及びクエン酸カリウムは、組成物の乾燥質量の各々約3.50%及び0.62%、又は組成物の全質量のそれぞれ約0.85%及び0.15%の量で配合される。ある実施形態では、クエン酸カリウムは、組成物の総質量の0.5%までの量で配合される。TSPPのいくつかの代替物としては、リン酸二ナトリウム(DSP)及びヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)を含む他のリン酸ナトリウム又はリン酸カリウムがあげられる。ある実施形態では、液体卵組成物は、組成物の全質量の最大1%までの量のリン酸ナトリウム又はリン酸カリウムを含んでよい。好ましい実施形態では、TSPPは、組成物の全質量の約0.55%の量で配合される。クエン酸カリウムはカチオン塩としても機能する。クエン酸カリウムの代替物としては、他の一価又は二価のカチオン塩があげられる。
【0029】
カチオン塩、例えばクエン酸カリウム、塩、乳酸マグネシウム、及び炭酸カルシウムは、タンパク質及びハイドロコロイドを含む他の成分と相互作用してゲル構造を形成する。カチオン塩がハイドロコロイドや、より程度の低いタンパク質と相互作用することで、ゲル構造が形成され、組成物に望ましい食感がもたらされる。Ca2+やMg2+等の二価のカチオン塩は、強力なゲル構造をつくるためにハイドロコロイドと強く反応する傾向がある。ある実施形態では、二価カチオン塩及び/又は一価カチオン塩を他の成分と混合することで、二価カチオン塩、及び、場合によっては一価のカチオン塩のハイドロコロイドとの初期反応性を制限することができる。これらの工程には、システム中の緩衝剤でカチオンを隔離すること、ハイドロコロイドを他の成分と反応させること、及びカチオンをタンパク質等の他の成分と反応させることが含まれる。ある実施形態では、乳酸マグネシウム及びコーシャ塩は、組成物の総質量の0.5%までの量で配合される。ある実施形態では、炭酸カルシウムは、組成物の全質量の最大0.2%の量で配合される。ある実施形態では、乳酸マグネシウムは、組成物の全質量の0.08%~0.12%の量で配合される。ある実施形態では、炭酸カルシウムは、組成物の全質量の0.05%~0.08%の量で配合される。ある実施形態では、コーシャ塩又は海塩等の塩は、組成物の全質量の0.1%~0.2%の量で配合される。例示的な実施形態では、乳酸マグネシウム、炭酸カルシウム及びコーシャ塩は、組成物の乾燥質量の各々約0.41%、0.25%及び0.58%、又は組成物の全質量の各々約0.10%、0.06%及び0.14%の量で配合される。
【0030】
乳酸マグネシウムは、酸性度調節剤及び強化剤としても機能し、マグネシウムを供給する。炭酸カルシウムはまた、カルシウムを供給する強化剤としても機能する。
【0031】
ある実施形態では、他の一価又は二価のカチオン塩は、クエン酸カリウム、コーシャ塩、乳酸マグネシウム及び炭酸カルシウムの代わりに、又はそれらと組み合わせて用いることができる。例えば、ある実施形態では、乳酸カルシウムは、炭酸カルシウムの代わりに、又は炭酸カルシウムと組み合わせて含まれてよい。
【0032】
その他の成分及び環境は、ゲル構造の機能及び発達に影響を及ぼしうる。熱は、システム内の活性化速度を増加させる傾向がある。特定の成分はまた、ゲル構造が形成される温度を変化させる場合がある。
【0033】
多糖類とオリゴ糖はゲル化温度に影響を与える。特に、グルコース、フルクトース及びショ糖誘導体は、ゲル化温度を上昇させることができる。グルコース又はスクロース誘導体を組み込むことで、ゲランガムのゲル化温度を上昇させ、架橋がより強固になる前に組成物が到達し得る最高温度を上昇させる。例示的実施形態では、イソマルトオリゴ糖は、ゲル化温度を上昇させるための食感改良剤として提供される。イソマルトオリゴ糖は、タピオカ、エンドウ豆、トウモロコシ又は他の澱粉状炭水化物から誘導されるシロップとして供給されてよい。イソマルトオリゴ糖は、官能的に不活性なプロファイルを提供するという利点もある-イソマルトオリゴ糖は、甘味を感じさせないのである。さらに、製造方法に部分的に依存して、いくつかのイソマルトオリゴ糖分子には、グリセミック指数がより低く、かつ、カロリー寄与が制限される等の他の利点がありうる。
【0034】
ある実施形態では、イソマルトオリゴ糖は、組成物の全質量の0.5%~1%の量で配合される。ある好ましい実施形態では、イソマルトオリゴ糖は、液体卵類似体の総質量の0.6%から0.85%の量で配合される。
【0035】
他の実施形態では、還元糖の鎖でできたデンプン又はシロップ形態の他のポリ及びオリゴ糖分子を、単独で、又はイソマルトオリゴ糖と組み合わせて用いて、ゲルゴムのゲル化温度を改変することができる。
【0036】
ポリ及び/又は-オリゴ糖分子の取り込みは、ボトルの沈降を延ばし、液体卵類似体の賞味期限を改善することができる。従来、単純なショ糖又はグルコースは、液体混合物中の全固形物を増加させるために用いられることができ、より強いゲルの形成に寄与する傾向がある。ポリ及び/又は-オリゴ糖分子を用いることにより、得られた液体卵類似体は、調理時に適当なゲル構造を未だ発達させつつ、液体特性がより良好でありうる。
【0037】
液体卵類似体の実施形態では、高アシルゲランガム及び低アシルゲランガムを含むゲランガムは、ハイドロコロイドとして組成物中に配合される。ある実施形態では、デンプン、ガム及び海藻誘導体を含む他のハイドロコロイドを、ゲランガムに加えて取り込むことができる。ゲランガムは、総乾燥質量の2%までの量で処方に個別に加えてもよい。ある実施形態では、ゲランガムは、総質量の1%までの量で、処方全体に個別に添加されてもよい。
【0038】
低アシルゲランガムは、全処方の0.01%~1%の量で添加することができる。従来の食品科学では、高アシルゲランガムは全組成の0.12%程度に制限されることが推奨されているが、ほとんどの実施形態では、高アシルゲランガムは全処方の約0.30%~0.55%の量で添加される。ある実施形態では、高アシルゲランガムは、全処方の最大1%の量で添加されてよい。ある例示的な実施形態では、高アシルゲランガム及び低アシルゲランガムは、それぞれ組成物の総質量の0.45%~0.5%及び0.35%~0.4%の量で混入される。好ましい実施形態では、高アシル及び低アシルゲランガムは、それぞれ全処方の約0.48%及び0.39%の量で添加される。ある実施形態では、高アシル対低アシルゲランガムの比は、1:1~1.4:1の間であってよい。高アシルゲランガム対低アシルゲランガムの比が約1.2:1の場合、ある好ましい実施形態において望ましい特性をもたらすことが見出されている。
【0039】
ほとんどの実施形態では、タンパク質に対して6~8.5%の範囲のガムが用いられる。この結果を大きく下回ったり上回ったりすると、卵類似体への類似性が失われる可能性がある。
【0040】
いくつかの先行技術の組成物では、高温及び低温ゲル化のために異なる挙動を有するゲル化剤の組み合わせが用いられてきた。対照的に、ある実施形態では、高アシルゲランガム及び低アシルゲランガムは、さらなる低温ゲル化剤又は高温ゲル化剤を添加せずに、実質的にすべてのゲル化剤を構成してもよい。
【0041】
適当な量のグルコース、フルクトース又はスクロース誘導体(例えば、上記の量のイソマルトオリゴ糖)と、液体卵類似体中の一次ハイドロコロイドとしてのゲランガムと組み合わると、ゲランガムの活性化温度を、液体卵代替物の調製及び低温殺菌に有用又は必要な温度以上に高くすることができる。したがって、この組み合わせにより、ハイドロコロイドの過剰な活性化を開始することなく、低温殺菌を可能にしつつ、ユーザによる調理温度(例えば、約70℃を超える温度)に達した場合でも、所望の活性化及び架橋を生成することができる。
【0042】
水中の油の乳化を維持するために、乳化剤を用いることができる。ある実施形態では、ヒマワリレシチンは、組成物の全質量の1.0%までの量で乳化剤として配合される。ある実施形態では、ヒマワリレシチンは、組成物の乾燥質量の1.6%~1.7%、又は組成物の全質量の約0.4%の量で用いられる。好ましい実施形態では、ヒマワリレシチンを乳化剤として、組成物の乾燥質量の約1.56%又は組成物の全質量の0.38%の量で用いる。ヒマワリレシチンの代わりに、又はヒマワリレシチンと組み合わせて他の水中油型乳化剤を用いることができる。
【0043】
トランスグルタミナーゼは、食感改良剤として添加されてよい。ある実施形態では、トランスグルタミナーゼは、全組成物の0.5%までの量で配合される。ある例示的実施形態では、トランスグルタミナーゼは、組成物の全質量の0.4%~0.45%の量で配合される。例示的な実施形態では、トランスグルタミナーゼは、組成物の乾燥質量の約0.42%又は組成物の全質量の0.1%の量で配合される。同様の機能を提供しうる他の添加剤としては、タンパク質系で脱アミノ化して食感を構築する酵素のクラスがあげられる。
【0044】
その他の添加剤としては、保存剤、強化剤、着色剤及び風味促進剤があげられる。保存剤には、ナイシン、植物抽出物、酢又は酸味料が含まれてよい。ある実施形態では、天然の保存剤は、組成物の総質量の2%までの量で配合される。あるさらなる実施形態では、天然の保存剤は、組成物の全質量の1%~2%の量で配合される。ある実施形態では、乾燥酢は、組成物の全質量の0.7%~1.1%の量の天然保存剤として配合される。好ましい実施形態では、乾燥酢は、組成物の乾燥質量の約4.66%又は組成物の全質量の約1.1%の量で混合される。保存剤は、得られる製品の保存性向上剤として機能する。
【0045】
酸性度調節剤又は酸味料の配合は、組成物に対するpH制御の尺度を提供することができる。組成物のpHの調節は、タンパク質の水和及びゲル化に利点を与えうる。ある実施形態では、組成物のpHを4.0~7.0の間に維持するために酸味料及び酸調節剤が用いられる。ある好ましい実施形態では、pHは、標的の5.4~6.0の間に維持される。酢は、酸味料と天然保存剤の両方として用いられ、組成物のpHをタンパク質の等電点に近く(例えば、5.4~6.0pHの範囲)に維持することができる。酢は、タンパク質水和段階で取り込まれて、後続の段階でタンパク質の受容性及び反応性を改善することができる。そのような実施形態では、本発明者らは、調理前のパフォーマンス(流動性の維持)と調理プロセス自体でのパフォーマンス(より速く、よりハリのあるふわふわした卵状の製品)の両方が改善されることを見出した。
【0046】
上記の強化剤には、乳酸マグネシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム等が含まれる。他の強化剤は、国や州の規制に従って配合することができる。好ましい実施形態では、カナダ保健省の規則で規定されたビタミンブレンドが液体卵類似体に配合される。ある実施形態では、ビタミンブレンドは、組成物の全質量の0.5%~1%を含んでよい。
【0047】
着色剤は、通常、スクランブルエッグの「卵黄」色をつけるために配合される。いくつかの適当な着色剤としては、ベータカロチン、ウコン、カロチン、パプリカ、ビート、ニンジン、コショウ及びリコピンがあげられる。例示的な実施形態では、着色剤は、組成物の総質量の最大0.2%の量で配合される。好ましい実施形態では、ベータカロチンは、組成物の全質量の0.02%の量で配合される。
【0048】
風味促進剤は、得られる液体卵類似体の味のプロファイルに寄与する風味を付与する成分である。少量の脱水されたタマネギで、得られた液体卵類似体に有意な風味をもたらすことができる。他の適当な香料増強剤としては、塩、アリウム成分、及びその他の天然又は人工の香料があげられ、これらは、香ばしい風味またはうま味をもたらす。ある実施形態では、風味促進剤は、組成物の総質量の最大0.2%の量で配合される。好ましい実施形態では、脱水タマネギは、組成物の全質量の約0.05%の量で配合される。
【0049】
ある好ましい実施形態では、液体卵類似体は、デンプン及び/又は小麦粉を添加せずに調製される。植物性タンパク質は、タンパク質単離物として提供することができ、炭水化物/デンプン含有量を軽減させるか又は無視できる程度にすることができる。タンパク質単離物を用いて調製され、有意なデンプン及び/又は小麦粉を用いずに調製された組成物は、調理された製品において所望の質感を含む特性を改良することができる。
【0050】
液体卵代替物の調製方法も提供される。本明細書に記載の方法は、複数の剪断レベル及び/又は速度、例えば、低、中/中、及び高剪断を備える市販の混合機を参照して説明される。以下に記載する実施形態のいくつかは、従来の混合タンクで120kgのバッチで試験された。サイズ及びタイプの混合タンクが異なると、剪断において所与の速度に対する出力及び大きさが異なる場合がある。例えば、大きな羽根車を備えた大きなタンクは、相対RPMが低い場合でもタンクの縁部に向けて高い剪断力を発生させることができる。バッチサイズ、タンク仕様に合わせて調整する必要がある。
【0051】
図1に調製工程を示す。工程10では、タンパク質、第一の食感改良剤及び乳化剤を分散剤に配合して、タンパク質混合物を形成する。工程20では、油をタンパク質混合物に配合して油-タンパク質混合物を形成する。工程30では、高アシルゲランガムと低アシルゲランガムを含むゲル組成物を分散剤と混合してゲル混合物を形成する。工程40では、ゲル混合物及び油-タンパク質混合物を混合して、複合混合物を形成する。工程50で、混合された混合物を低温殺菌する。
【0052】
図2に液体卵代替物を調製する方法のさらなる例示的な表現を示す。工程10では、タンパク質を乳化剤及び食感改良剤と共に混合して、タンパク質混合物を製造する。分散剤、通常は水をゆっくりと撹拌しながら徐々にタンパク質混合物に配合し、凝集体が確実に分散されるようにする。例示的な実施形態では、水分の約半分は、ルピンタンパク質、エンドウ豆タンパク質、乳化剤(ヒマワリレシチン)、TSPP、乳酸マグネシウム及びコーシャ塩と混合される。
【0053】
工程20では、油及び食感改良剤等の他の添加剤を湿潤タンパク質混合物に配合する。次いで、混合した油-タンパク質混合物を工程22で混合する。混合油-タンパク質混合物の混合は、中速で行ってもよい。実施形態では、油-タンパク質混合物の混合は、約10分間、約40℃の温度で中程度に剪断されるように行われる。クエン酸カリウム等のカチオン塩は、湿潤タンパク質混合物又は油とタンパク質混合物のいずれかに混合させると、Kとタンパク質構造との間で反応が起こる。タンパク質構造との反応は、イオンを隔離し、ゲル構造が強固なハイドロコロイドを添加する前にKの利用可能性を低下させて、保存可能な液体組成物を維持するのに役立つ可能性がある。例示的な実施形態では、湿潤タンパク質混合物に添加される油及び他の添加剤は、ビタミンブレンド、天然着色剤、炭酸カルシウム及びヒマワリ油の組み合わせを含む。
【0054】
工程30では、油-タンパク質混合物とは別にゲル混合物が形成される。水をゲル化剤及び選択された添加剤と組み合わせてゲル混合物を製造する。例示的な実施形態では、ゲル化剤及び選択された添加剤は、低アシル及び高アシルゲランガム、クエン酸カリウム、トランスグルタミナーゼ及び脱水タマネギを含む。水は、40℃に予熱し、最初に別の混合容器に導入されてよい。添加剤は、ゲル化剤を導入する前に水に添加してよい。好ましい実施形態では、ゲル化剤の前に水に導入される添加剤は、イソマルトオリゴ糖シロップである。ゲル化剤は、多数の可能なゲル化剤のいずれかを含んでもよい。好ましい実施形態では、ゲル化剤は、低アシルゲランガムと高アシルゲランガムの混合物を含む。ゲル化剤はまた、クエン酸カリウム、トランスグルタミナーゼ、又は最小カチオン塩等の他の添加剤と共に配合してよい。
【0055】
工程32では、ゲル化剤と水の混合物を高剪断で混合することができる。高剪断混合は、粉体が沈降し、粉体が水から持ち上げられるのを防止するための時間を与えるように遅延されることがある。高い剪断混合は、60~120秒の間で行われる。混合中の温度は、40℃付近に維持することができる。
【0056】
工程40では、油-タンパク質混合物及びゲル混合物を組み合わせて混合する。実施形態では、ゲル混合物は、ゆっくりと撹拌、すなわち、低剪断で、油-タンパク質混合物に配合される。混合物は撹拌中に50℃に加熱してもよい。ある実施形態では、この段階で、強化剤、ビタミン、着色剤、風味剤、保存剤、及び塩などの他の添加剤を添加することができる。工程42では、剪断を約10分間中高剪断レベルまで高めて、ゲル構造を破壊し、粘度を調節するために剪断薄化プロセスを適用することができる。工程42は、油-タンパク質及びゲル混合物の組み合わせが50℃に達した後に開始してよい。
【0057】
一般に、低温殺菌工程は、保存及び食品安全性の目的のために必要である。低温殺菌工程では、様々な温度及び持続時間を利用することができる。好ましい実施形態では、低温殺菌工程は、まず、工程44として複合混合物を65℃に上げることによって実施される。次いで、工程50で、混合物を、65℃の維持温度で5分間、低剪断レベルで混合することにより、低温殺菌する。
【0058】
液体卵類似体を製造するプロセスを通して、組成物は、65℃における5分間の短期間の低温殺菌工程及び低温殺菌温度までの上昇及び下降期間を除き、55℃又は55℃以下で維持することができる。従来の食品科学は、高アシルゲル化ガムのゲル化温度が70℃と推奨されていたが、調製温度を制限し、ゲル化温度を高めるために適当なポリ又はオリゴ糖を配合することで、得られた液体卵類似体の賞味期限を改善することができる。
【0059】
低温殺菌工程の完了後、工程52で混合物を冷却することができる。混合物が60℃に達すると、瓶詰めするのに十分な温度に冷却される。ある実施形態では、混合物は、瓶詰めの前に30℃に冷却することができる。冷却工程中及び瓶詰め前に、混合物を穏やかに(低剪断)又は高速(高剪断)に混合して、生成物の移動を維持し、ゲル構造の発生を抑制することができる。
【0060】
本明細書で記載される温度、速度、持続時間、及び剪断の大きさは例示的なものであり、これらの数値に若干の変更を加えることができる。例えば、ある実施形態では、速度、持続時間、及び剪断の大きさは、記載された数及び度合とは異なる場合がある。例えば、持続時間は、5%、10%又はそれ以上変化してよい。温度、剪断の大きさ、速度も同様に変化する。ある実施形態では、混合物の温度は、調製プロセスの間、常に70℃未満に保たれる。
【0061】
二価のイオンの大部分をゲランガムから遠ざけることで、クエン酸カリウム(K)がハイドロコロイド系の反応を開始させることができる。二価のカチオンの一部は、カナダ保健省によって処方された強化剤である。理論的にも伝統的にも、二価のカチオンはより反応性が高く、ハイドロコロイドと強く相互作用する。二価のカチオンを反応の最初と最後に配置することで、最初にタンパク質と反応することができる。このことは、Ca2+/ビタミンブレンドを添加する前に、ゲランガムがKとより緩やかに架橋することを意味する。提案された方法で成分を添加することで、ハイドロコロイドはすでに反応している可能性があり、二価イオンがシステム内の残りの緩衝剤によって封じ込められうる。
【0062】
熱は系内の活性化速度を高めるので、この方法ではハイドロコロイドの推奨活性化温度以下で組成物を維持する。さらに、剪断は粘性構築要素を破壊することが知られており、従って、剪断は「望ましい」ゲル構造と考えられるものを破壊するために用いられる。
【0063】
マグネシウムカチオンとカルシウムカチオンの両方を組み合わせると、調理後の卵類似体の食感を改善することができる。乳酸マグネシウム用いず、かつ他の二価の(乳酸カルシウム)カチオンを用いた試験では、調理前の製品の流動性について、粘性が高すぎるため、消費者に受容されないことが判明した。乳酸マグネシウムを完全に除去するか、一価のカチオン(K+、Na+)で置換すると、卵類似体の調理された食感は柔らかすぎ、調理された卵のようなまとまりやハリはない。二価カチオンを記載された場所、つまりタンパク質混合物中に置くことにより、システム中のタンパク質と架橋又は架橋を形成することができ、処理の後半の段階でシステム中のハイドロコロイドに干渉しないようにすることができる。
【0064】
得られた製品は、冷蔵又は非冷蔵状態での数日から数ヶ月を含む製造後の全ての段階で流動性があり、かつ、注入可能であることを意味する液体である。経時的にわずかな肥厚が生じる場合もあるが、製品は85℃より高温で調理されるまで、その賞味期限を通して注入可能でポンプで送り出すことができる。
【0065】
図3は、液体卵代替物を調製する別の例示的な方法の表現である。工程110では、乳化剤、酸味料、及び食感改良剤と共に混合して、タンパク質混合物を生成する。工程112では、分散剤、通常では水を、約40℃の温度で、中~高剪断下でタンパク質混合物に投与して、凝集体(塊)が確実に分散されるようにする。
【0066】
工程114では、ゲル化剤を約40℃の水と組み合わせてゲル混合物を形成する。工程116では、ゲル混合物をタンパク質混合物に添加して、タンパク質-ゲル混合物を形成する。工程118では、タンパク質-ゲル混合物を、約50℃で約10分間、高剪断下で混合する。
【0067】
工程120では、油、及び、食感改良剤、強化剤、ビタミン、色及び塩等の他の添加剤を、約40℃の水と混合する。工程122では、油及び他の添加剤をタンパク質-ゲル混合物に添加して、複合混合物を生成する。
【0068】
工程124で低温殺菌プロセスが開始される。この塊(複合混合物)を、中程度の剪断下で約65℃に加熱する。次いで、工程126では、塊は、約5分間、低剪断で65℃に保持される。工程128では、次いで、塊は、高剪断下で30℃に冷却される。工程130では、塊が30℃に冷却されると、それは瓶詰め工程に送ることができる。
【0069】
2つの例示的な組成物を以下に記載し、成分、その機能、及びそれらが液体卵類似体に配合される比率を列挙する。
【実施例0070】
表1:第1の例示的な液体卵類似体処方:
【表1】
【表2】
【0071】
表2:第2の例示的な液体卵類似体処方:
【表3】
【表4】
【0072】
上記で論じたように、組成物の各成分の乾燥質量の比率及び総質量は、味、食感、又は乳化もしくは増粘特性を含む組成物の特性に有意に影響せずに、わずかに変化させることができる。ある実施形態では、これらの各成分の乾燥質量又は総質量の比率は各々、その成分が処方に与える影響に応じた範囲で変化させることができる。成分によっては、望ましい結果をもたらす適度に厳しい制約がある。例えば、高アシルゲランガム、低アシルゲランガム及び四ナトリウムピロリン酸塩は、最良の結果を得るためには、組成物の全質量の1%未満の割合で維持するのが最適であろう。表1には、潜在的な範囲のセットが括弧内に組み込まれている。これらの範囲は、例示的組成物における成分の変動の可能性のある範囲を示す。
【0073】
特許請求の範囲における用語「含む」は、包括的な用いられ、存在する他の要素を除外するものではない。クレームの特徴の前の不明確な前置詞「a」及び「an」(原文)は、存在する特徴の複数を除外しない。本明細書に記載された個々の特徴の各々は、1つ以上の実施形態で用いることができ、本明細書に記載されていることのみの理由により、特許請求の範囲によって定義されるすべての実施形態に必須であると解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
【外国語明細書】