IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サントリーホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-食物繊維 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105128
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】食物繊維
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/21 20160101AFI20230721BHJP
   C12G 3/05 20190101ALN20230721BHJP
【FI】
A23L33/21
C12G3/05
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093640
(22)【出願日】2023-06-07
(62)【分割の表示】P 2021153730の分割
【原出願日】2014-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】影山 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】島本 啓子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健宏
(72)【発明者】
【氏名】山垣 亮
(57)【要約】
【課題】苦味や嫌な後味が抑制された食物繊維を提供する。
【解決手段】末端糖を有する食物繊維において、末端糖全体に対するアルドースの割合を10%以下とする。このような食物繊維は、例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロースなどであってもよい。また、前記食物繊維は、食品用添加剤(例えば、飲料用添加剤)として使用してもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端糖におけるアルドースの割合が大きく低減された食物繊維に関するものであり、特に、末端糖におけるアンヒドロ糖及び/又は糖アルコールの割合が高い特定の食物繊維及びその製造方法に関する。
また、本発明は、このような食物繊維を含む食物繊維素材及び食品に関する。
【背景技術】
【0002】
食生活が変化し、多様化した結果、繊維分の摂取量の低減が言われている。食物繊維の摂取を助けるために、刺激臭を有するなどのため食物繊維として考えてもみなかった焙焼デキストリンを改良することで、難消化性デキストリンが開発されてきた(特許文献1)。
【0003】
さらに、難消化部と食物繊維の含量を増加させることで、着色物質と刺激臭を低減した改良された難消化性デキストリンが知られている(特許文献2)。すなわち、焙焼デキストリンをα-アミラーゼおよびグルコアミラーゼで加水分解後、イオン交換樹脂クロマトグラフィー法によって消化性の区分を分離除去することにより、グルコース以外の成分中の難消化性成分の含量が90%以上、食物繊維の含量が20%以上とした着色物質や刺激臭が少ない新規な難消化性デキストリンである。
【0004】
一方、食物繊維には、難消化性デキストリンのほか、例えば、安全で、使い易い、低カロリー性の食品素材の開発を目標とした新食品素材開発プロジェクトとして開発されたポリデキストロースも知られている(非特許文献1)。ポリデキストロースは、例えば、約89%のデキストロース、10%のソルビトールおよび1%のクエン酸の混合物から製造されたポリグルコースである(特許文献3)。
ポリデキストロースは、わずかに苦い味を有しているため、その食品への使用が狭められていた。しかし、このようなポリデキストロースの苦みはアンヒドログルコースの存在に起因し、色およびアンヒドログルコース含量は溶媒および食品用に認められた漂白剤による処理によって低下できることが知られている(特許文献4)。
【0005】
なお、アンヒドログルコース(β1,6-アンヒドログルコース)は、レボグルコサンとも称され、ポリデキストロースなどの食品素材に広く分布している糖類の一種であり(非特許文献2)、例えば、一般的なポリデキストロースにおける存在量は、約4%未満であることが知られている(非特許文献1)。また、レボグルコサンは、デンプン質ゲルの硬化遅延に有効であることが知られている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平4-43624号公報
【特許文献2】特開平6-32802号公報
【特許文献3】米国特許3876794号公報
【特許文献4】米国特許4622233号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】繊維学会誌48巻4号184~189ページ(1992)
【非特許文献2】J.Appl.Glycosci.48巻3&4号327~333ページ(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のように、食物繊維を使用する場合の課題として、刺激臭や着色などがあげられており、懸命な改善がなされてきた。
しかし、現在の食物繊維においては、未だ独特の苦みや嫌な後味がある。したがって、食品の良好な味に悪影響を与えないような食物繊維の開発が望まれる。
【0009】
本発明は、このような課題を解決することを目的としてなされたものであり、食品の味への悪影響を抑えた改良された食物繊維及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、食物繊維を含んでいても、本来の良好な味を保持できる食品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、食物繊維を構成する多糖類の末端糖に着目し、末端糖と味との関係について試行錯誤を加えたところ、意外なことに、末端糖におけるアルデヒド基の量を低減することで、食物繊維の苦みや嫌な後味を抑えることができること、そして、このことにより食物繊維自身の味(香味)を向上させ、このような食物繊維を添加した食品において本来の良好な味(香味)を保持できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
一般にグルコースの重合において、その1位側末端(分子末端)のグルコースは還元性を保持しており、還元末端と呼ばれることが多いが、アルデヒド基を有さない糖は還元性を示さないことから、本明細書において、糖鎖の1位側の末端に存在する糖残基を単に「末端糖」、末端糖の1位の官能基を「末端官能基」と標記する。本発明の食物繊維において、その末端糖は、アルドース、アンヒドロ糖、糖アルコールなどの糖誘導体を含む。アルドースの場合、環状構造及び鎖状構造のいずれも含み、環状ヘミアセタール構造及び鎖状アルデヒド構造のいずれも形成し、それぞれが平衡状態となっている。
【0012】
すなわち、本発明の食物繊維は、末端基を有する食物繊維(又は末端糖を有する多糖類からなる食物繊維)であって、末端糖全体に対するアルドースの割合が10%以下(例えば、4%以下)の食物繊維である。
【0013】
本発明の食物繊維は、非アルデヒド性の末端糖として、特に、アンヒドロ糖や糖アルコールを有していてもよい。このような食物繊維は、例えば、下記値(A)が0.1以下(0~0.1)の食物繊維であってもよい。
【0014】
(A)=X/(X+Y+Z)

(式中、Xは末端糖がアルドースである糖鎖の数(又は末端糖全体に対するアルドースの数)、Yは末端糖がアンヒドロ糖である糖鎖の数(又は末端糖全体に対するアンヒドロ糖の数)、Zは末端糖が糖アルコールである糖鎖の数(又は末端糖全体に対する糖アルコールの数)を示す。)
【0015】
また、前記食物繊維は、下記値(B)が0.6~1及び/又は下記値(C)が0.6~1であってもよい。
【0016】
(B)=Y/(X+Y)

(C)=Z/(X+Z)

(式中、X、Y及びZは前記と同じ。)
【0017】
本発明の食物繊維は、難消化性デキストリン又はポリデキストース(換言すれば、難消化性デキストリン又はポリデキストロースを原料として得られる食物繊維)であってもよい。
このような難消化性デキストリンは、例えば、前記値(B)が0.8~1及び/又は前記値(C)が0.8~1である食物繊維であってもよく、特に、前記値(B)が0.9~1の食物繊維であってもよい。
代表的な難消化性デキストリンには、前記値(A)が0~0.04であり、前記値(B)が0.95~1であり、かつ前記値(C)が0.95~1である食物繊維が含まれる。
【0018】
また、ポリデキストロースは、例えば、前記値(B)が0.6~1(例えば、0.7~1)である食物繊維であってもよい。代表的なポリデキストロースには、前記値(A)が0~0.04であり、前記値(B)が0.75~1であり、かつ前記値(C)が0.9~1である食物繊維が含まれる。
【0019】
本発明には、上記のような食物繊維を含む食物繊維素材を含む。このような食物繊維素材は、食物繊維(食物繊維成分)として前記食物繊維を含んでいる。食物繊維素材は、例えば、前記食物繊維を、末端糖を有する食物繊維全体に対して90重量%以上(例えば、96重量%以上)含んでいてもよい。食物繊維素材において、食物繊維は、例えば、難消化性デキストリン及び/又はポリデキストロースであってもよく、特に難消化性デキストリンであってもよい。
【0020】
本発明の食物繊維は、苦みが抑制されており、食品に添加する食物繊維として有用である。そのため、本発明には、前記食物繊維(又は食物繊維素材)で構成された食品用添加剤[例えば、飲料用添加剤(アルコール飲料用添加剤など)]を含む。
【0021】
本発明の食物繊維又は食物繊維素材は、例えば、還元末端を有する食物繊維又は食物繊維素材を原料として製造できる。このような本発明の食物繊維又は食物繊維素材の製造方法は、代表的には、末端糖としてアルドースを有する食物繊維又は食物繊維素材(難消化性デキストリン、ポリデキストロースなど)に対して、還元処理、加熱処理及び酸処理から選択された少なくとも1つの処理を行う製造方法であってもよい。
【0022】
本発明には、さらに、前記食物繊維又は食物繊維素材を含む食品も含まれる。このような食品は、前記食物繊維又は食物繊維素材を1重量%以上(例えば、2重量%以上)含んでいてもよい。
【0023】
前記食品は、飲料であってもよい。飲料は、アルコール飲料(例えば、アルコール度数1%以上の飲料)であってもよく、炭酸を含有する飲料(炭酸飲料)であってもよい。
特に、飲料は、麦芽発酵飲料(ビールなど)であってもよい。また、飲料は、ウィスキー(例えば、バーボンウィスキー)であってもよく、特にハイボール(ウイスキー含有炭酸飲料)であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、末端糖におけるアルドース含量を小さくすることにより、食品の味への悪影響(例えば、嫌な苦みなどの後味)を抑えた改良された食物繊維及びその製造方法を提供できる。
また、このような食物繊維を用いることで、食物繊維を含んでいても、本来の良好な味を保持できる食品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、対照品DのMSスペクトルのm/z 970~1050の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[食物繊維]
本発明で利用できる食物繊維は、グルコース重合型食物繊維である。例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、β-グルカン、マンナン、ペクチンなどが挙げられる。なお、βーグルコースが重合してなるセルロースやヘミセルロースを含む。
【0027】
これらの中でも、難消化性デキストリン及びポリデキストロースが、特に好ましい。
【0028】
なお、一般的に、食物繊維の定義はいまだ統一されるに至っておらず、従って、厳密な意味での食物繊維定量法は存在していない。
【0029】
本発明における食物繊維は、日本の「栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号)」に記載される、高速液体クロマトグラフ(HPLC)法又はプロスキー法によって定量できる。
【0030】
食物繊維は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0031】
本発明の食物繊維(多糖類)は、前記のように、末端糖におけるアルドースの割合が少ない。例えば、本発明の食物繊維において、末端糖全体に対するアルドースの割合は、20%以下(例えば、15%以下)程度の範囲から選択でき、通常、10%以下(例えば、7%以下)、好ましくは5%以下、さらに好ましくは4%以下であってもよく、特に3%以下(例えば、2%以下、好ましくは1%以下)であってもよい。
【0032】
本発明の食物繊維の末端糖は、上記のようにアルドースが少ないものであるが、このようなアルドースは、化学修飾等により、異なる構造(又は末端糖)に変換されている。このような異なる構造としては、アルドースでない限り、特に限定されるものではないが、特に、アンヒドロ糖(例えば、1,6-アンヒドロ糖)(構造)、糖アルコール(又はアルコール)(構造)が好ましい。
なお、アンヒドロ糖は、2つのヒドロキシル基(例えば、糖を構成するヘミアセタール性ヒドロキシル基とその他のヒドロキシル基と)が脱水してエーテル結合を形成した糖である。例えば、グルコースの場合には、その立体配置から1位のヒドロキシル基と6位のヒドロキシル基が空間的に近しいため、分子内脱水縮合によってβ-1,6-アンヒドロ糖(レボグルコサン)となることが知られている。このようなアンヒドロ糖は、後述するように、加熱処理、酸処理などにより、形成させることが可能である。
【0033】
また、糖アルコールは、例えば、末端のアルデヒド基を還元することにより形成できる。末端糖がグルコースである場合には、還元によりソルビトールが形成される。
【0034】
そのため、食物繊維の末端糖は、主として、アルドース、アンヒドロ糖、糖アルコールを含んでいてもよい。
【0035】
具体的には、本発明の食物繊維は、末端糖におけるアルドースの割合の指標となる下記値(A)が、例えば、0~0.2(例えば、0~0.15)、好ましくは0~0.1(例えば、0~0.07)、さらに好ましくは0~0.05、特に0~0.04、特に好ましくは0~0.03(例えば、0~0.02、好ましくは0~0.01)であってもよい。
【0036】
(A)=X/(X+Y+Z)

(式中、Xは末端糖がアルドースである糖鎖の数、Yは末端糖がアンヒドロ糖である糖鎖の数、Zは末端糖が糖アルコールである糖鎖の数を示す。)
【0037】
なお、上記Xは、末端糖全体に対するアルドースの数ということもできる。また、同様に、上記Yは末端糖全体に対するアンヒドロ糖の数、上記Zは末端糖全体に対する糖アルコールの数ということもできる。
【0038】
なお、本発明の食物繊維は、末端糖におけるアンヒドロ糖及び/又は糖アルコールの割合の指標となる下記値(A’)が、例えば、0.8~1(例えば、0.85~1)、好ましくは0.9~1(例えば、0.93~1)、さらに好ましくは0.95~1、特に0.96~1、特に好ましくは0.97~1(例えば、0.98~1、好ましくは0.99~1)であってもよい。
【0039】
(A’)=(Y+Z)/(X+Y+Z)

(式中、X、Y及びZは前記と同じ。)
【0040】
また、本発明の食物繊維は、末端糖において、アルドースに対するアンヒドロ糖の割合の指標となる下記値(B)が、例えば、0.5~1、好ましくは0.6~1(例えば、0.65~1)、さらに好ましくは0.7~1、特に0.8~1であってもよい。
【0041】
(B)=Y/(X+Y)

(式中、X、Y及びZは前記と同じ。)
【0042】
なお、食物繊維の種類に応じて、上記値(B)を好適な値に調整してもよい。例えば、難消化性デキストリンにおいて、値(B)は、0.8~1、好ましくは0.9~1、さらに好ましくは0.95~1であってもよい。
【0043】
また、ポリデキストースにおいて、値(B)は、特に0.6~1(例えば、0.65~0.99)、好ましくは0.7~1(例えば、0.7~0.95)、さらに好ましくは0.75~1(例えば、0.75~0.9)であってもよい。
【0044】
また、本発明の食物繊維は、末端糖において、アルドースに対する糖アルコールの割合の指標となる下記値(C)が、例えば、0.5~1、好ましくは0.6~1(例えば、0.65~1)、さらに好ましくは0.7~1、特に0.8~1であってもよい。
【0045】
(C)=Z/(X+Z)

(式中、X、Y及びZは前記と同じ。)
【0046】
なお、食物繊維の種類に応じて、上記値(C)を好適な値に調整してもよい。例えば、難消化性デキストリン又はポリデキストースにおいて、値(B)は、0.8~1、好ましくは0.9~1、さらに好ましくは0.95~1であってもよい。
【0047】
[食物繊維素材]
本発明には、前記食物繊維を含む食物繊維素材も含まれる。
【0048】
食物繊維素材は、前記食物繊維を含んでいる限り特に限定されないが、例えば、水以外の固形分重量に対して、食物繊維(又は難消化部)を70重量%以上含有するものが好ましい。食物繊維素材において、食物繊維の含量は多いほど好ましく、例えば、75重量%以上が好ましく、さらに好ましくは80重量%以上である。
【0049】
なお、食物繊維素材における食物繊維の含量に関する記述は、水以外の固形分重量に対する、食物繊維の重量%を用いて表現し、水分含量に関しては特に考慮しない。すなわち、例えば、水分含量10重量%の食物繊維素材(粉末)の食物繊維含量が90重量%の場合、実際の素材の重量あたりの食物繊維は81重量%となるが、食物繊維含量90重量%として表記する。
【0050】
食物繊維素材を構成する食物繊維は、末端糖を有する食物繊維を含んでいる限り、その他の食物繊維[例えば、非多糖類の食物繊維(リグニンなど)]などを含んでいてもよい。
【0051】
食物繊維素材において、末端糖を有する食物繊維全体に対する前記食物繊維(末端糖におけるアルドースの割合が少ない食物繊維)の割合は、75重量%以上(例えば、80重量%以上程度の範囲から選択でき、通常、85重量%以上(例えば、90重量%以上)、さらに好ましくは95重量%以上(例えば、96重量%以上)、特に97重量%以上(例えば、98重量%以上)であってもよく、100重量%であってもよい。
【0052】
食物繊維素材は、固体状、液体状などの形状に左右されないが、計量や分注のしやすさ、水への溶解性、保管安定性の観点から、粉末状が望ましい。この場合の水分含量としては保管安定性の観点から、15重量%以下が望ましく、さらに望ましくは10重量%以下である。ただし、長期保管の予定がないなど、とくに保管安定性を気にする必要のない場合には、液体状にても特に問題なく好適に用いられる。この場合の水分含量は特に制限されないが、例えば、20~40重量%が望ましい。
【0053】
[食物繊維の製造方法]
本発明の食物繊維の製造方法は、還元末端のアルデヒド基を低減できれば特に限定されない。
【0054】
糖質から食物繊維を製造する工程において、アルデヒド基を消失又は変換(変化)できる処理を行うことにより、本発明の食物繊維を得てもよいし、末端糖としてアルドースを有する食物繊維に対して、アルデヒド基を消失又は変換(変化)できる処理を行うことにより、本発明の食物繊維を得てもよい。
【0055】
例えば、食物繊維の製造における加熱処理条件や酸処理条件により、還元末端をアンヒドロ糖化することができる。すなわち、加熱処理や酸処理によって、2つのヒドロキシル基から脱水を伴って、エーテル化し、アンヒドロ糖が形成される。
【0056】
なお、製造プロセスにおいて、末端糖におけるアルドースの割合が少ない食物繊維(すなわち、本発明の食物繊維)を一部に含む食物繊維を得ることができる場合には、このような末端糖におけるアルドースの割合が少ない食物繊維を加工して、本発明の食物繊維として用いることもできる。
【0057】
このような加工処理としては、例えば、分離処理(分取、分離分画)、還元処理、加熱処理、酸処理などが挙げられる。これらの処理は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0058】
分離処理としては、末端糖におけるアルドースと、その他の末端糖(糖アルコール、アンヒドロ糖など)との化学種の違いに応じて適宜選択できる。例えば、イオン交換樹脂(イオン交換体)を用いることで、本発明の食物繊維を含む混合物(食物繊維混合物)から、本発明の食物繊維を分離してもよい。
【0059】
なお、イオン交換樹脂には、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が含まれる。陽イオン交換樹脂としては、例えば、Dowex 50WX8 (ダウケミカル社製)、ダイヤイオンUBK8、UBK10、UBK12(三菱化学社製)などが挙げられる。また、陰イオン交換樹脂でとしては、例えば、ダイヤイオンUBA120 (三菱化学社製)、Dowex 1X8、Dowex22、Dowex66(ダウケミカル社製)などが挙げられる。
【0060】
また、還元処理により、アルデヒド基をアルコール(アルドースを糖アルコール)に変換することができる。具体的な還元処理としては、NaBHやLiAlHなどの還元剤を用いる方法、水素を還元剤として、ニッケル、ルテニウム、パラジウム、白金などを触媒として用いる方法などが当業者に公知であり、いずれの方法を用いてもよい。
【0061】
また、食物繊維の加熱処理や酸処理により、還元末端をアンヒドロ糖化することもできる。
【0062】
[食物繊維の末端糖の定量方法]
食物繊維の末端糖を定量する方法としては、特に限定されないが、例えば、質量分析計などの検出器を用いて好適に定量することができる。質量分析計は、食物繊維を好適にイオン化でき、そのイオンを検出できるものであれば、特に限定されない。なお、本発明において、質量分析計のことをMS検出器という場合がある。
【0063】
例えば、食物繊維の末端糖が糖アルコールである場合は、食物繊維の末端糖がアルドースである場合に比べて、分子量が水素2原子分(すなわち、2)ほど大きくなる。また、食物繊維の末端糖がアンヒドロ糖である場合は、食物繊維の末端糖がアルドースである場合に比べて、分子量が水1分子分(すなわち、18)ほど小さくなる。
【0064】
そのため、MS検出器を用いれば、この分子量の差異を測定することができる。すなわち、末端糖にアルドースを有する食物繊維のピークの高さまたは面積に対して、末端糖が糖アルコールやアンヒドロ糖である食物繊維のピークの高さまたは面積をそれぞれ計算することで、その分子数比を算出することができる。食物繊維は、その分子量によってイオン化しやすさの度合いが、若干ではあるが変化するので、同じ重合度におけるピークをとることが好ましい。
【0065】
なお、末端糖の定量は、食物繊維全体に対して行ってもよく、食物繊維の一部に対して行ってもよい。食物繊維の一部を定量する場合、特に限定されないが、例えば、MSにおける検出しやすさ等を指標として、定量に供する食物繊維を好適に選択してもよい。
【0066】
[食物繊維の用途]
本発明の食物繊維は、限定されないが、特に食品に添加する成分として好適に利用できる。本発明の食物繊維は、苦みが抑制されており、食品に添加すると、食品の味を損なうことなく、食品に添加することができる。そのため、本発明の食物繊維は、特に、食品用添加剤として用いてもよい。
【0067】
なお、本発明の効果は、食物繊維の苦味、嫌な後味、ひっかかり感、ある種の刺激や好ましくない香味を低減することである。食物繊維の香味については、刺激臭や好ましくない香味を有する(特許文献1)、わずかに苦い味を有している(特許文献3)などの複数の表現が用いられている。これらの表現の相違は、その食品における濃度によることも考えられ、例えば、食物繊維のわずかな苦い味が、嫌な後味として認知され、もしくはひっかかり感などを想起させ、その結果として好ましくない香味と表現されることは容易に想像できる。本発明において、食物繊維の有するこれらの苦味や、嫌な後味、ひっかかり感、好ましくない香味などの表現を含めて、苦味と表現してもよい。すなわち、本発明の効果は、食物繊維の苦味を低減することであると表現できる。
【0068】
また、本発明には、前記食物繊維を含む組成物も含まれる。このような組成物の用途としては、例えば、食品(飲食品)、医薬、医薬部外品などが挙げられる。
【0069】
食品(飲食品)としては、例えば、食品、飲料、調味料、機能食品(機能性食品)、健康食品、栄養補助食品、特定保健用食品、サプリメントなどが挙げられる。
【0070】
食品は、冷凍食品、チルド食品、レトルト食品、インスタント食品などであってもよい。また、用時調製用食品(例えば、コーヒー、紅茶、ジュース、ヨーグルト、スープなどに溶解させる粉末、料理に混ぜて用いる粉末など)であってもよい。
【0071】
また、飲料は、乳飲料、アルコール飲料、炭酸飲料などであってもよい。
【0072】
具体的な食品としては、例えば、米飯類、麺類(生麺、乾麺、即席麺など)、パン、その他の小麦粉製品、カレー、シチューのルウ、乳製品(アイスクリームなど)、乳加工製品、牛乳、清涼飲料、炭酸飲料、お茶、紅茶、ウーロン茶、コーヒー、ココア、清酒、ビール、発泡酒、合成清酒、みりん、ワイン、焼酎、ウイスキー、野菜ジュース、調味料(味噌、醤油、酢、うま味調味料、ドレッシング、ソース、マヨネーズなど)、水産加工食品(魚肉練り製品、魚肉ハム、ソーセージ、鰹節、佃煮など)、コロッケ、ハンバーグ、シュウマイ、餃子、グラタン、インスタントスープ、インスタントカレー、インスタント味噌汁、インスタントコーヒー、菓子(和菓子、生菓子、半生菓子、洋菓子、洋生菓子、洋半生菓子、キャンデー、チョコレート、チューインガム、ゼリー、ビスケット、米菓子、スナック菓子、油菓子、雑菓子など)などが挙げられる。
【0073】
本発明の食物繊維は、アルコールや炭酸によっても影響を受けないため、特に、アルコール飲料(アルコール含有飲料)や炭酸飲料(炭酸含有飲料)に添加してもよい。なお、アルコール飲料は、炭酸を含むものであってもよい。以下、アルコール飲料について、詳述する。
【0074】
(アルコール飲料)
本明細書において、特に断りがない限り、アルコールとはエチルアルコール(エタノール)のことをいう。また、アルコール度数とは、アルコール水溶液中のアルコールの容量%のことをいう。
【0075】
本発明において使用できるアルコールは特に限定されない。例えば、醸造アルコール、スピリッツ類(例えば、ジン、ウォッカ、ラム、テキーラ、ニュースピリッツ等のスピリッツ、及び原料用アルコールなど)、リキュール類、ウイスキー類(例えば、バーボンウイスキー、スコッチウイスキー、ハイボール(ウィスキーハイボール)など)、ブランデー類、焼酎(連続式蒸留焼酎、いわゆる甲類焼酎及び単式蒸留焼酎、いわゆる乙類焼酎)等、さらには、醸造酒[清酒、ワイン、麦芽発酵飲料(ビールなど)、マッコリ等]を使用することができる。
【0076】
アルコール飲料において、アルコールの濃度は特に制限されない。本発明によって、食物繊維の苦味を低減することで、食物繊維を手軽に摂取できるため、いわゆる低アルコール飲料において本発明の優位性が高く、好ましい。アルコール度数の範囲としては、10v/v%以下で本発明の効果を高めることができ好ましく、8v/v%以下であるとより好ましく、5v/v%以下であるとさらに好ましい。アルコール度数が10v/v%を超えても発明の効果として特に問題は生じないが、手軽に食物繊維を摂取する飲料として好ましくない可能性がある。また、アルコール度数の下限は特に制限されないが、好ましい態様のひとつとして1v/v%以上である。
【0077】
また、本発明におけるアルコール含有飲料は、炭酸ガス(炭酸)を含有することができる。本発明の炭酸ガス含有飲料における炭酸ガスの圧力は、炭酸ガスに由来する爽快感が感じられる程度の圧力であることが好ましく、当業者に通常知られている炭酸ガス圧測定方法で0.5~3.0kgf/cm、より好ましくは1.5~3.0kgf/cmが好適である。
【0078】
組成物(食品など)において、本発明の食物繊維の添加割合は、食品本来の良好な味を保持できる範囲であればよく、特に限定されないが、例えば、食品本来からくる味の薄い食品においては、0.1重量%以上においても効果が得られ、例えば、0.5重量%以上が好ましく、さらに好ましくは1重量%以上(例えば、1.5~50重量%)、もっとも好ましくは2重量%以上(例えば、2~30重量%以上)であってもよい。食物繊維の添加割合が多くなるほど食品本来の良好な味への影響が大きくなるため、本発明の効果が高くなる。特に、飲料(アルコール飲料など)などにおいて、本発明の食物繊維の割合は、0.1重量%以上にても効果が得られるが、例えば、1重量%以上(例えば、1.5~20重量%)、好ましくは2重量%以上(例えば、2~10重量%)程度であってもよい。
【実施例0079】
以下に本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
<製造例1>末端糖が糖アルコールである難消化性デキストリンの製造
市販の難消化性デキストリン(ロケット社製ニュートリオースFM:Prosky法による食物繊維含量は91%)を20gとり、200mlのMilli-Q水に溶解し、10gのNaBHを加えて室温で16時間放置した。酢酸を、発泡が止まり、pH=2程度となるまで適量添加し、イオン交換樹脂を用いて生成したホウ酸および酢酸ナトリウムを除去した。このとき、陰イオン交換樹脂として、Amberlite IRA-400(OH form)(ダウ・ケミカル社製)、陽イオン交換樹脂として、Amberlite IR-120(H form)(ダウ・ケミカル社製)を用いた。具体的には、まずpH=2にて、陽イオン交換樹脂を通した後、Milli-Q水で溶出した。食物繊維を含む画分をさらに陰イオン交換樹脂を通し、Milli-Q水で溶出した。その後、エバポレーターおよび凍結乾燥機を用いて濃縮・乾燥して約12gの食物繊維素材粉末を得た(試料A)。
【0081】
試料Aをさらにイオン交換樹脂を用いて精製した試料Bを作成した。すなわち、試料Aの作成手順によって得た濃縮・乾燥手前の水溶液を、陽イオン交換樹脂を通してMilli-Q水で溶出する操作と陰イオン交換樹脂に通してMilli-Q水で溶出する操作を、溶出液が中性(pH=7)になるまで繰り返した。その後、エバポレーターおよび凍結乾燥機を用いて濃縮・乾燥して約11gの食物繊維素材粉末を得た(試料B)。
【0082】
<製造例2>末端糖がアンヒドロ糖である難消化性デキストリンの製造
市販の難消化性デキストリン(ロケット社製ニュートリオースFM:Prosky法による食物繊維含量は91%)を20gとり、200mlのMilli-Q水に溶解し、陰イオン交換樹脂を通しMilli-Q水で溶出した。食物繊維を含む画分をさらに陰イオン交換樹脂に通しMilli-Q水で溶出した。その後、陽イオン交換樹脂を通した後、エバポレーターおよび凍結乾燥機を用いて濃縮・乾燥して約7.5gの食物繊維素材粉末を得た(試料C)。
【0083】
<製造例3>末端糖がアンヒドロ糖であるポリデキストロースの製造
ポリデキストロース(デュポン社製ライテスII:Prosky法による食物繊維含量は82%)を20gとり、200mlのMilli-Q水に溶解し、陰イオン交換樹脂に付してMilli-Q水で溶出し、溶出前半部分と溶出後半部分をそれぞれ分取した。この溶出前半部分を陽イオン交換樹脂に通した後、エバポレーターおよび凍結乾燥機を用いて濃縮・乾燥して約7.6gの食物繊維素材粉末を得た(試料D)。
【0084】
一方、溶出後半部分はそのままエバポレーターおよび凍結乾燥機を用いて濃縮・乾燥して約4.6gの食物繊維素材粉末を得た(試料E)。
【0085】
<食物繊維素材に含まれる食物繊維の末端糖の同定>
製造例1~3で得られた食物繊維素材(試料A~E)及び市販の食物繊維素材(対照品A~E)のそれぞれについて、食物繊維を分析し、末端糖におけるアルドース、アンヒドロ糖、及び糖アルコールを定量した。
なお、対照品A~Eは、以下の通りである。
【0086】
対照品A:難消化性デキストリン(ロケット社製ニュートリオースFB:Prosky法による食物繊維含量は91%)
【0087】
対照品B:難消化性デキストリン(ロケット社製ニュートリオースFM:Prosky法による食物繊維含量は91%、製造例1及び2で使用した原料)
【0088】
対照品C:難消化性デキストリン(松谷化学社製E-ファイバー:Prosky法による食物繊維含量は92%)
【0089】
対照品D:ポリデキストロース(デュポン社製ライテスII:Prosky法による食物繊維含量は82%、製造例3で使用したもの)
【0090】
対照品E:ポリデキストロース(上海博程社製WINWAY ACME:Prosky法による食物繊維含量は88%)
【0091】
対照品Dについて、次のようにして、末端糖の定量を行った。
糖重合体などの食物繊維を、良好に分析可能なマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)にて質量分析を行った。
食物繊維試料を10mgとり、0.2mLのMilli-Q水に溶解し、さらに検出されるイオン種をナトリウム付加イオン体とするためイオン化助剤量1mg程度のトリフルオロ酢酸ナトリウムを添加してサンプル溶液を作成した。マトリックス溶液は食物繊維素材を良好にイオン化補助できる2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)30mgを1mLのMilli-Q水/アセトニトリル(1/1 v/v)に溶解させた。
【0092】
測定サンプルの混合結晶は、MALDI測定用のステンレスプレート上でサンプル溶液とマトリックス溶液、各1μLを液滴状態で混合し、その後真空乾燥器内で乾燥することで作成した。MSスペクトルの取得は、Ultraflex III MALDI-TOF/TOF MS(Bruker社製)で行い、レーザーショットごとのスペクトル積算を2000回以上とした。照射レーザーのフルエンスは、マススペクトルが良好なシグナル/ノイズ比が50以上、分解能は5000以上が得られるように適宜調整した。
【0093】
その結果、m/z=995、1013、1015にそれぞれピークが検出され、対照品Dはグルコース重合型食物繊維であることから、m/z=1013のスペクトルは、末端糖のグルコースを除いた重合度が5の場合の[M+Na]+イオンと同定され、アルデヒド基を有する食物繊維のピークと考えられた。
さらに、m/z=995のピークは、末端糖を除いた重合度が5の場合の[M-HO+Na]+イオンと同定され、末端糖の残基がアンヒドロ糖である食物繊維のピークと考えられた。
さらに、m/z=1015のピークは、末端糖を除いた重合度が5の場合の[M+2H+Na]+イオンと同定され、末端糖の残基が糖アルコールである食物繊維のピークと考えられた。このときのMSスペクトルを図1に示す。
【0094】
質量範囲(m/z値範囲)990~1550で、末端糖を除いた重合度5(m/z=995、1013、1015)、重合度6(m/z=1157、1175、1177)、重合度7(m/z=1319、1337、1339)、重合度8(m/z=1481、1499、1501)に相当する繰り返しピーク群が検出された。末端糖がアルドースおよびアンヒドロ糖、糖アルコールの食物繊維の各重合度でのモノアイソトープピークの高さを算出し、それぞれの末端糖に相当する割合の平均を定量値とした。
【0095】
そして、上記と同様にして、試料A~E及びその他の対照品について、末端糖を定量した。
得られた結果を下記表に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
<実施例1>
試料A~E及び対照品A~Eの香味を水溶液の官能評価によって評価した。官能評価は、本発明における課題である食物繊維の苦味および後味の悪さの評価に特化して実施した。
【0098】
試料A~E、対照品A~Eそれぞれの粉末を200mg秤量し、10mlのMilli-Q水に溶解した。この2%水溶液を官能評価に供した。なお、官能評価は、以下の基準により、訓練されたパネラー5名で次の4段階で評価した。
【0099】
(評価項目:苦味、後味の悪さ)
4 苦味、後味の悪さが感じられない
3 苦味、後味の悪さがあまり感じられない
2 苦味、後味の悪さを感じる
1 苦味、後味の悪さを非常に強く感じる
【0100】
パネラー5名の評価結果を集計し、その平均値が1以上2未満の場合を×、2以上3未満の場合を△、3以上4以下の場合を○と表現し、3段階評価にして最終評価とした。
【0101】
得られた評価は以下の通りである。
【0102】
【表2】
【0103】
上記結果を、さらに、末端糖の分析値(パラメータ)ごとに評価する。
【0104】
[パラメータ(A)及び(A’)]
パラメータ(A)[すなわち、X/(X+Y+Z)]及びパラメータ(A’)[すなわち、(Y+Z)/(X+Y+Z)]と官能評価との関係は前記表の通りである。
パラメータ(A)の値が小さい(概ね0.1以下の)試料A~Dでは、いずれも官能評価が〇である一方、大きい(概ね0.1超の)試料E及び対照品A~Eではいずれも官能評価が×(すなわち、苦み・後味の悪さを感じる)という結果であった。
【0105】
また、パラメータ(A)と表裏一体の関係にあるパラメータ(A’)の値は、この結果と逆の結果(すなわち、値が大きいものが苦み・後味の悪さを感じるという結果)を示した。
【0106】
[パラメータ(B)及び(C)]
パラメータ(B)[すなわち、Y/(X+Y)]及びパラメータ(C)[すなわち、Z/(X+Z)]と官能評価との関係は前記表の通りである。
パラメータ(B)及びパラメータ(C)の少なくともいずれか一方の値が大きいものに、官能評価が〇となる傾向があることがわかる。
【0107】
以上のように、パラメータ(A)(又は(A’)や、パラメータ(B)及び/又はパラメータ(C)は、各種食物繊維の苦み・後味の悪さに関与していることが分かる。
【0108】
<実施例2>
次に、ウイスキーハイボールを模したモデル炭酸飲料(アルコール濃度約8%)を試作して官能評価した例を示す。官能評価は、実施例1と同様に、本発明における課題である食物繊維の苦味および後味の悪さの評価に特化して実施した。
【0109】
試料A~E、対照品A~Eそれぞれの粉末を5.0g秤量し、50mlの市販のウイスキー(角瓶、サントリー社製)、および150mlの市販の炭酸水(サントリー社製)を予め混合した溶液に良く溶解し、炭酸水を用いて250mlにメスアップした。この2%モデル炭酸飲料を官能評価に供した。なお、官能評価は、実施例1に記載の方法で実施した。
【0110】
得られた評価は以下の通りである。
【0111】
【表3】
【0112】
上記結果から明らかなように、ウイスキーハイボールを模したモデル炭酸飲料においても、実施例1の水における結果と同様の結果を示した。
このことから、種々の添加対象においても、食物繊維の末端糖と苦み・後味の悪さとの関係は、同様の傾向を示すことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の食物繊維(食物繊維素材)は、苦みが抑制又は低減されており、食品に添加する食物繊維(食品用添加剤)などとして有用である。
図1