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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105129
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】歯ブラシの管理指導システム
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/22 20060101AFI20230721BHJP
   A46B 15/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A61C17/22 B
A46B15/00 K
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093644
(22)【出願日】2023-06-07
(62)【分割の表示】P 2020508350の分割
【原出願日】2018-08-10
(31)【優先権主張番号】1713034.5
(32)【優先日】2017-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】518054892
【氏名又は名称】プレイブラッシュ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】オグンシナ, トールロープ
(72)【発明者】
【氏名】グラジェコウスキ, ウィクスター
(72)【発明者】
【氏名】イットナー, マテーウス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルガ, ポール
(72)【発明者】
【氏名】ディエム, パトリック
(57)【要約】
【課題】ユーザのブラッシング技術に関し、データ接続の提供に頼らないフィードバックと、改善方法に関するリアルタイムの管理指導とを提供する。
【解決手段】歯ブラシのブラッシング活動の指示を提供する装置であって、加速度データを受け取り、加速度データから重力成分と直線加速度成分を抽出し、直線加速度成分の大きさの平均値を算出することによりブラッシング動特性の推定値を作成し、重力成分およびブラッシング動特性をn次元空間内に投射してクラスタリング・プロセスを実行することにより、複数のクラスタを含むクラスタリング結果を作成し、n次元空間内に投射される次の重力成分およびブラッシング動特性の、特定のクラスタに対する割当てに基づいて、ブラッシング範囲を判定する、ように構成されたプロセッサー14と、加速度計18と、フィードバック・モジュール19と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯ブラシのブラッシング活動の指示を提供する装置であって、
前記装置は、前記歯ブラシの動作から加速度データを作成するように構成された加速度計と、プロセッサーとを備え、
前記プロセッサ―は、
前記加速度データを受け取り、
前記加速度データの低減フィルタリングを行って重力成分を作成することにより、前記加速度データから前記重力成分を抽出し、ここで、当該重力成分とは前記歯ブラシがどのような向きに配置されているかの指標を提供するものであり、
前記加速度データのフィルタリングを行って直線加速度成分を作成することにより、前記加速度データから前記直線加速度成分を抽出し、
前記直線加速度成分の大きさの平均値を算出することにより、ブラッシング動特性の推定値を作成し、ここで当該ブラッシング動特性とはユーザが自身の歯にブラシをかける強さの程度と速さの程度の少なくとも1つに関する指標を提供するものであり、
前記重力成分および前記ブラッシング動特性をn次元(n=2又は3)空間内に投射し、ここで、当該n次元空間における角度方向の座標は前記重力成分から算出され、当該n次元空間における半径方向の座標は前記ブラッシング動特性から算出されるものであり、
前記重力成分および前記ブラッシング動特性を前記n次元空間内へ投射してクラスタリング・プロセスを実行することにより、それぞれがブラッシング範囲を表す複数のクラスタを含むクラスタリング結果を作成し、
前記n次元空間内に投射される次の重力成分およびブラッシング動特性の、特定のクラスタに対する割当てに基づいて、前記ブラッシング範囲を判定する、
ように構成されており、
前記装置はさらに、ブラッシング活動の指標を提供するために、前記ブラッシング範囲の判定に基づいて、前記ユーザにフィードバックを提供するように構成されたフィードバック・モジュールを備える、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記直線加速度成分は、前記加速度データを高域フィルタによってフィルタリングすることにより作成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記クラスタリング・プロセスは、コサイン距離を用いて前記クラスタリング結果を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記クラスタリング・プロセスは、コサイン距離を用いて、前記加速度データがどのクラスタに属しているかを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記クラスタリング・プロセスの閾値は、前記クラスタリング結果のユーザ履歴に基づいて更新される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記特定のクラスタと結び付けられた口腔内の部位は、前記装置上に初めて使用されるときより前に格納されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記特定のクラスタと結び付けられた口腔内の部位は、前記クラスタリング結果のユーザ履歴に基づいて更新される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記クラスタリング結果は、少なくとも4個のクラスタを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも4個のクラスタは、ユーザの口腔の少なくとも以下の範囲:内側の上部、内側の底部、外側の左部および外側の右部を表す、
ことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
直前の前記クラスタリング結果を用いて、直後の前記クラスタリング結果を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記クラスタリング・プロセスは、2つのクラスタから等距離のデータを受信すると、前記2つのクラスタのうち、直前の加速度データが割り当てられた方のクラスタを優先させてブラッシング範囲を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、前記クラスタリング・プロセスを実行する前に、前記加速度データがブラッシングに関連している動作に対応するかどうかを判定する手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記加速度データが動作の閾値を超えた場合に、該加速度データがブラッシングに関連している動作に対応することを判定する、
ことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記フィードバック・モジュールは、前記ユーザが自身の歯にブラシをかけているときに、該ユーザにフィードバックをリアルタイムで提供するように構成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記フィードバック・モジュールは、視覚フィードバック・デバイス、音声フィードバック・デバイスおよび振動デバイスの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記フィードバック・モジュールは、前記ユーザがブラッシングを最大限の速さを超える速さで行っていた場合に、該ユーザに警報を発するように構成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記フィードバック・モジュールは、前記ユーザがブラッシングを自身の口腔の特定の範囲に対する最長の時間よりも長い時間で行っていた場合に、該ユーザに警報を発するように構成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記フフィードバック・モジュールは、前記ユーザがブラッシングを自身の口腔の特定の範囲に対して最短の時間よりも短い時間で行っていた場合に、該ユーザに警報を発するように構成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記フィードバック・モジュールは、前記ユーザがブラッシングをブラッシング・セッション全体に対する最長の合計時間よりも長い合計ブラッシング時間で行っていた場合に、該ユーザに警報を発するように構成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記フィードバック・モジュールは、前記ユーザがブラッシングを行っている自身の口腔の範囲に対する指標を提供するように構成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記加速度データの時刻を刻印するように構成した時計をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項22】
前記クラスタリング結果と前記ブラッシング範囲の判定の少なくとも1つを外部装置に通信する手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記加速度計は、3つの直交する方向の加速度データを作成するように構成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記歯ブラシに取り付けられ、または、前記歯ブラシと一体化される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラッシング活動の指示を提供するための歯ブラシ使用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザが良好な口腔の健康状態を保持するために、歯にブラシを適正にかけることは重要である。一般的には、子供に歯ブラシの使い方を示して、歯にブラシをかける必要があることを理解させる。しかし、歯に対するブラシのかけ方について、積極的に教えることはほとんどない。従って、ユーザは何年にも亘って、悪しきブラッシング習癖をつけてしまうかもしれない。典型的な不適切習癖としては、歯にブラシをかける時間が十分でないこと、および、すべての歯、特に奥歯に対してブラシを確実にかけていないことがある。多様な口腔の病気を防止するのに役立つ。このような悪しき習癖が幼い時期につき、矯正されない場合には、ユーザの口腔の健康状態が病んでしまうかもしれない。
【0003】
ユーザが歯にブラシをかけることを支援するために、ユーザが歯にブラシをどのようにかけているかを監視し、この情報をユーザに中継転送して戻す試みが行われている。この着想は、ユーザがその時に歯にブラシをどのようにかけているかを観察できるなら、自身で矯正できるかもしれないということである。
【0004】
ブラッシング技術を監視する以前の試みでは、動作センサーを歯ブラシに取り付けて、ユーザが歯にブラシをどのようにかけているかを監視することを含んでいた。多くの場合、その動作センサーからのデータは、アプリケーション(アプリ)またはコンピュータ・プログラムに転送され、例えば、携帯電話または他の携帯式デバイスなどの外部装置上で作動される。次に、当該アプリまたはプログラムによって、ユーザが歯にブラシをどのようにかけたかに関して、そのユーザにフィードバックが提供される。一般に、上記アプリまたはプログラムによって、リアルタイムのフィードバックを提供するために、このような歯ブラシに何らかの形態の無線データ接続を備えることにより、上述のような外部装置と通信し、データを上記動作センサーから当該アプリにリアルタイムで送信しなければならない。そのようなデータ接続は典型例として、Bluetooth(登録商標)による接続、あるいはWi-Fi(登録商標)による接続のどちらかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、ユーザにフィードバックを提供する現在のシステムは、利用可能な無線データ接続の提供に頼っている。接続がなければ、記アプリまたはプログラムによって、上記動作センサーからブラッシング・データを受信できないので、ユーザにフィードバックを提供できないことになる。
【0006】
ユーザが上記アプリを作動させることができる利用可能な移動式デバイスを所有していない場合に、もしくは、ユーザがオンラインのデータ接続が利用できる区域に所在しない場合に、そのユーザは自身のブラッシング技術に関するフィードバックを受信できないことになる。このような状況は、ユーザが旅行しているとき、もしくは、自身の住居から離れた場所にいるときに起こり得る。
【0007】
さらに、ユーザに提供されるフィードバックは制限を受けるかもしれない。フィードバックによって、歯にブラシを適正にかけていないことをユーザに警報を発し得るが、その欠点の矯正方法に関する情報をユーザに提供しないかもしれない。そういうものとして多くの場合、ブラッシング技術の改善方法を試行して解決することは、ユーザに委ねられる。その結果として、ユーザがどんな矯正を適用すべきか確信していない場合に、異なる欠点が生じてしまう。
【0008】
さらに、ブラッシング活動に関するフィードバックをユーザに提供する周知のシステムでは、多様な異なるセンサーが設けられているために高価になりがちであり、もしくは、構成部品の個数を減らし、および/または、低コストの構成部品を使用した場合には精度が低下してしまう。
【0009】
その結果、ユーザに対して、そのユーザのブラッシング技術に関し、データ接続の提供に頼らないフィードバックを提供できるシステムが必要になる。さらに、ユーザに対して、そのユーザのブラッシング技術の改善方法に関するリアルタイムの管理指導を提供できるシステムが必要である。さらに、追加する構成部品の必要性を最小限にしながらも精度を向上できるシステムを提供することが望ましいと思われる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、歯ブラシのブラッシング活動の指示を提供する装置であって、前記歯ブラシの動作から加速度データを作成するように構成した加速度計と、前記加速度データのフィルタリングを行うことにより、重力成分を作成する手段と、前記加速度データのフィルタリングを行うことにより、直線加速度成分を作成する手段と、前記重力成分および前記直線加速度成分をn次元(n≧2)空間内に投射する手段と、前記重力成分および直線加速度成分のn次元空間内への投射に対して、クラスタリング・プロセスを実行することにより、それぞれがブラッシング範囲を表す複数のクラスタを含むクラスタリング結果を作成する手段と、次の加速度データの重力成分および直線加速度成分の、特定のクラスタに対する割当てに基づいて、ブラッシング範囲を判定する手段と、ブラッシング活動の指示を提供するために、前記ブラッシング範囲の判定に基づいて、ユーザにフィードバックを提供する手段とを備える、ことを特徴とする歯ブラシのブラッシング活動の指示を提供する装置を提供する。
【0011】
本発明によれば、前記加速度データを重力成分と直線加速度成分に分割し、この分割した成分をn次元空間内に投射し、この投射したデータに対してクラスタリング・プロセスを実行し、次の加速度データの重力成分および直線加速度成分の、特定のクラスタに対する割当てに基づいてブラッシング範囲を判定する。これにより、前記装置のコストを著しく増加させることなく、ブラッシング活動の判定をより高精度で行え得るという利点を提供できる。特に、本発明によれば、比較的に高コストのセンサーを追加しないで、比較的に低コストで提供できる何らかの追加処理を設けることにより、高精度の結果を提供できる。前記装置ではさらに、外部装置にデータ接続する必要なしに、ユーザに対して、自身のブラッシング技術に関するフィードバックを提供できる。
【0012】
また、前記加速度データの前記重力成分は、歯ブラシの傾きの指示を提供し、前記加速度データの前記直線加速度成分は、歯ブラシがどのように動かされているか(ブラッシング動特性)の指示を提供することが好ましい。従って、上述の傾きとブラッシング動特性の両方を考慮することにより、ブラッシング活動を判定することができる。
【0013】
また、nは自然数であり、例えば、2、3、または、任意の他の(大きい)自然数であることが好ましい。
【0014】
また、前記重力成分および前記直線加速度成分は、極または球の座標系に投射されることが好ましい。例えば、n=2の場合は、二次元空間として極座標系を用い、n=3の場合は、三次元空間として球座標系を用いてもよい。
【0015】
n=2の場合には、上記極座標系における角度方向の座標は、二次元空間内に投射された前記加速度データの前記重力成分から算出され、当該極座標系における半径方向の座標は、当該加速度データの前記直線加速度成分から算出される。従って、上記極座標系における角度は歯ブラシの向きに基づき、上記半径方向の成分は歯ブラシの動きに基づいている。
【0016】
あるいは、n=3の場合には、上記三次元空間における角度方向の座標は、前記加速度データの前記重力成分から算出され、当該三次元空間における半径方向の座標は、(球座標系で検討すると)当該加速度データの前記直線加速度成分から算出される。従って、上記三次元空間における角度は歯ブラシの向きに基づき、上記半径方向の成分は歯ブラシの動きに基づいている。例えば、上記三次元空間における角度方向の座標は、前記加速度データの重力成分を表す三次元ベクトルの角度方向の座標であってもよい。
【0017】
上述の向きとブラッシング動特性の両方を考慮することにより、単独の加速度計を用いて、ユーザがブラッシングを行っている自身の口腔の範囲を判定する改善方法を提供できることが判明している。
【0018】
本発明による装置は、上述のクラスタリング結果を格納する手段と、次の加速度データの重力成分および直線加速度成分を前記格納したクラスタリング結果と比較する手段をさらに備えてもよい。この場合において、別個の比較ステップを用いて、上記ブラッシング範囲を判定してもよい。あるいは、上述のクラスタリング・プロセスの一部として、上記ブラッシング範囲を判定してもよい。この場合は、(上記クラスタリング・プロセスの一部として、上記比較が実行されて)別個の比較ステップを省略できる。
【0019】
本発明の別の一態様によれば、歯ブラシに取り付けられ、または、歯ブラシと一体化されるブラッシング活動の指示を提供する装置であって、前記歯ブラシの動作を検出して動作データを作成するように構成した動作センサーと、前記動作データからブラッシング動特性の推定値を作成する手段と、前記動作データから平均加速度の推定値を作成する手段と、前記ブラッシング動特性の推定値および前記平均加速度の推定値に対して、クラスタリング・プロセスを実行することにより、それぞれがブラッシング範囲を表す複数のクラスタを含むクラスタリング結果を作成する手段と、前記クラスタリング結果を格納する手段と、次のブラッシング動特性の推定値および平均加速度の推定値を前記格納したクラスタリング結果と比較する手段と、ブラッシング活動の指示を提供するために、前記比較の結果に基づいて、ユーザにフィードバックを提供する手段とを備える、ことを特徴とする歯ブラシに取り付けられ、または、歯ブラシと一体化されるブラッシング活動の指示を与える装置を提供する。
【0020】
本発明によれば、別個の装置に対する接続を必要とせずに、ユーザに対して、自身のブラッシング技術に関するフィードバックを提供し得るという利点を提供できる。ユーザに対して、自身のブラッシング活動に関連している直接に関係するフィードバックを提供することにより、上記ユーザは、そのフィードバックに従って行動して自身のブラッシング技術を調整できる。このような支援によって、当該ユーザが歯にブラシを確実に最適な仕方でかけるようになる。これにより、そのユーザは自身の口腔の健康状態を改善または保持することができる。従って、歯ブラシに取り付けられるブラッシング活動の指示を提供する本装置は、歯ブラシの管理指導システムとみなすことができる。
【0021】
上述の態様のいずれにおいても、本装置は、ユーザのブラッシング活動を監視し、当該ブラッシング活動を分析し、その分析に基づいて直接に関係するフィードバックを提供できる、歯ブラシに取り付けられ、または、歯ブラシと一体化される完備した、自給式システムであってもよい。従って、好ましいことは、データを処理し、あるいは、フィードバックをユーザに提供するための外部装置を必要としない。これにより、本装置は、外部装置またはデータ接続の提供に頼ることなく、ユーザに対して、自身のブラッシング活動に関するフィードバックを提供できるという利点を提供できる。その結果、データ接続が利用できない区域であっても、本装置を使用できる。さらに、ユーザが必要とされる処理およびフィードバック機能の実行に適した外部装置を備えていない場合でも、本装置を使用できる。さらに、自給式システムは比較的に簡素なシステムなので、如何なる年齢のユーザ、特に幼いユーザであっても、本装置を容易に操作できる。
【0022】
本装置は、歯ブラシに取り付けるように配設した別個のユニットの一部であってもよい。あるいは、本装置は歯ブラシと一体化されてもよい。この場合には、当該歯ブラシと本装置が単独のユニットとして設けられる。
【0023】
上述の動作センサーは、加速度計であってもよい。上述の動作データは、加速度データであってもよい。容易に利用できる型式の動作センサーなので、加速度計を用いることは有利である。上記動作センサーは、ジャイロスコープ、または、任意の他の適した動作センサーであってもよい。上記動作データは、ジャイロスコープのデータ、または、任意の他の適した動作データであってもよい。
【0024】
上記動作データまたは加速度データは、直線加速度データおよび重力加速度データを含んでもよい。上述の加速度データの重力加速度成分は、地球の重力に対して、歯ブラシがどのような向きに配置されているかの指示を与えることができる。上記直線加速度成分は、歯ブラシがブラッシングの間にどのように動かされているかの指示を与えることができる。
【0025】
本装置は、上述の推定値を作成する前に、上記動作データのフィルタリングを行うように構成した少なくとも1つの低域フィルタを含んでもよい。この少なくとも1つの低域フィルタを用いて、上記データの重力加速度成分を上記動作データから分離できる。
【0026】
本装置は、上述の推定値を作成する前に、上記動作データのフィルタリングを行うように構成した高域フィルタを含んでもよい。この高域フィルタを用いて、上記データの直線加速度成分を上記動作データから分離できる。
【0027】
第2の低域フィルタは、上記直線加速度データのフィルタリングを行うように構成されてもよい。この第2の低域フィルタを用いて、直線加速度データ内に存在するノイズを減少させることができる。当該データ内に存在するノイズを減少させることにより、改善された信号が提供され、改善された処理が実現できる。上記第2の低域フィルタは、上述のブラッシング動特性および平均加速度の推定値を作成する前に、上記データのフィルタリングを行うように構成されてもよい。そのような処理前に上記データのフィルタリングを行うことにより、ノイズが減少するので、当該信号が改善され、より高精度の結果を提供できる。本装置は、複数の低域フィルタ、または、さらに複数の高域フィルタをさらに含んでもよい。
【0028】
上記ブラッシング動特性は、ユーザが自身の歯にブラシをどの程度、強く、速く、または力強くかけているかの指示を提供してもよい。そのブラッシング動特性の推定は、上記直線加速度の平均化した大きさであってもよい。また、上記平均加速度は、上記重力加速度データを平均化することにより、算出してもよい。ブラッシング動特性および平均加速度は、上述のクラスタリング・プロセスで用いられてもよい。これらの量は、加速度計のデータから容易に導き出され、改善された結果を得ることができるためである。このような極めて短い前処理が、上記クラスタリング・プロセスを実行する前に必要とされる。これによって、上記データの処理行程の速度が速まり、上述のクラスタリング結果を作成し、ユーザにフィードバックを提供できる。さらに、コンピュータによる計算を減少させることにより、その処理を本装置上でそれ自体によって実行でき、処理能力を制限することができる。
【0029】
上記クラスタリング・プロセスは、コサイン距離を用いてクラスタリング結果を作成してもよい。このコサイン距離を用いれば、ユークリッド距離を用いてクラスタリング結果をコンピュータで算出する場合と比較して、上記動作データを処理してクラスタリング結果を作成するのに要する時間および処理に必要な電力を軽減できるためである。それ故に、より少ないコンピュータ計算の資源を用いて、上記クラスタリング結果を作成できる。これにより、上述のようなコンピュータによる計算を本装置上でそれ自体によって実行でき、コンピュータによる計算を外部装置上で実行する必要性が抑制される。
【0030】
特定のクラスタと結び付けられた部位は、事前に設定されていてもよい。従って、各クラスタが表すユーザの口腔の部位は本装置上に事前に格納されていて、次のことを意味する。ユーザが本装置を初めて使用するときに、この装置を直ちに使用し始めることができ、そのユーザのブラッシング・データを事前に格納されたクラスタリング結果と比較できる。その結果、ブラッシング活動の指示を提供できることになる。このことは、ユーザが本装置を初めて使用するときに、ユーザ自身がこの装置を較正または設定する必要がないという利点を有する。これにより、本装置が初めて使用されるときに、この装置が不適正に設定される可能性を減じることができる。
【0031】
上記クラスタリング・プロセスは、距離の閾値を用いて上記データがどのクラスタに属しているかを判定してもよい。当該データがそのような距離の閾値を超えていない場合には、そのデータはクラスタの一部であると判定できる。当該データが上記距離の閾値を超えている場合には、そのデータはクラスタの一部ではないと判定できる。上記距離の閾値は、本装置に事前にプログラム、または事前に格納されてもよい。このことは、ユーザが本装置を初めて使用するときに、ユーザ自身がこの装置を設定する必要なしに、この装置を直ちに使用し始めることができるということを意味する。
【0032】
特定のブラッシング・セッションからのユーザの加速度データは、事前に格納された加速度データと組み合わせられてもよい。このことは、十分なユーザ特有の加速度データが一度存在すれば、上記クラスタリング・プロセスが当該ユーザ特有のデータに対して作動し、ユーザ特有のクラスタリング結果が生成されるということを意味し得る。上記ユーザの加速度データが事前に格納された加速度データに取って代わり、上記ユーザのクラスタリング結果が上述の事前に格納された結果に取って代わる。これにより、上記ユーザ特有の加速度データを用いて生成した上記クラスタリング結果によって、上記加速度データと当該ユーザの口腔との間のより高精度のマッピングが提供されるという利点を提供できる。この結果、上記クラスタリング・プロセスでは、上記事前に設定されたクラスタリング結果の代わりに、上述のようなユーザ特有のクラスタリング結果を用いて、上述の比較を実行することができる。このことは、このようなクラスタリング結果はユーザに特有なので、ユーザに対して、より高精度のフィードバックを提供できるということを意味し得る。
【0033】
上述の距離の閾値は、クラスタリング結果の履歴に基づいて更新されてもよい。例えば、ユーザが自身のブラッシング技術で極めて首尾一貫し、自身の口腔の各範囲に対して明確なブラッシング動作を行っている場合には、上記距離の閾値を減少させる。あるいは、ユーザがより一貫性のないブラッシング様式を有し、当該ユーザの口腔の各範囲に対する自身のブラッシング動作が明確でない場合には、上記距離の閾値を増加させる。ユーザのブラッシング様式に基づいて上記距離の閾値を更新することによって、上記クラスタリング・プロセスを個別のユーザに確実に合わせて調整できる。上記クラスタリング・プロセスはブラッシング技術の異なる様式を考慮することができるので、本装置は特定のユーザに対して、より高精度の、かつ、合わせて調整されたフィードバックを提供できる。
【0034】
上記クラスタリング結果は、少なくとも4個のクラスタを含んでもよい。これらの少なくとも4個のクラスタは、ユーザの口腔の少なくとも以下の範囲:外側の左部、外側の右部、内側の上部および内側の底部を表す。従って、このようなクラスタリング結果は、ユーザがブラッシングを行っている口腔の主要な範囲を表すことができる。ユーザの口腔の異なる部位を表すためにクラスタを用いることにより、口腔のどの範囲にブラッシングを行っているかを判定する明確な方法が提供される。上記クラスタリング結果は5個のクラスタを含んでもよい。第5のクラスタが、ブラッシングが実行されていないことを指示してもよい。上記クラスタリング結果はさらに、ユーザが自身の歯の前部または奥部にブラシをかけているかどうかを指示してもよい。上記クラスタリング結果はさらに、ユーザが自身の上側の歯または下側の歯にブラシをかけているかどうかを指示してもよい。上記クラスタリング結果は、ユーザの口腔の追加の、または、異なる範囲を表すことができる追加の、または、異なるクラスタを含んでもよい。
【0035】
上述の比較プロセスは、ブラッシングを行っている口腔の範囲の指示を提供してもよい。上記比較プロセスでは、動特性のクラスタリングを用いて、口腔のどの範囲にブラッシングを行っているかを判定できる。従って、口腔のどの範囲にブラッシングを行っているかの指示は、以前の比較の結果と現在の加速度データに依存する。それ故、直前の比較の結果を用いて、直後の比較の結果を判定できる。これにより、本装置は、2つのクラスタから等距離のデータを受信すると、口腔のどの範囲にブラッシングを行っているかを予測できるようになる。
【0036】
上述のブラッシング動特性の推定値を作成する手段は、前フィルタリング・モジュールであってもよい。この前フィルタリング・モジュールは、少なくとも1つのプロセッサーを含む。上述の平均加速度の推定値を作成する手段は、前フィルタリング・モジュールであってもよい。この前フィルタリング・モジュールは、少なくとも1つのプロセッサーを含む。同一の前フィルタリング・モジュールを用いて、上記推定値のそれぞれを提供してもよい。1つ、または2つ以上のプロセッサーを用いて上記推定値を作成することは有利である。これら構成要素は容易に利用可能であるためである。さらに、1つ、または2つ以上のプロセッサーを用いれば、本装置が作動するために必要な異なる構成要素の数量を減少させることもできる。これにより、その製造工程が比較的に簡素に保持される。任意の他の適した手段を用いて、ブラッシング動特性と平均加速度の推定値を作成してもよい。
【0037】
上述のクラスタリング・プロセスを実行する手段は、クラスタリング・モジュールであってもよい。このクラスタリング・モジュールは、少なくとも1つのプロセッサーを含む。上述の次のブラッシング動特性の推定値および平均加速度の推定値を前記格納したクラスタリング結果と比較する手段は、比較モジュールであってもよい。この比較モジュールは、少なくとも1つのプロセッサーを含む。上述のクラスタリング結果を格納する手段は、メモリ素子であってもよい。それにより、本装置を簡素な、容易に利用可能な構成要素から作成できる。
【0038】
上記推定値を作成する手段は、上述のクラスタリング・プロセスが実行される前に、上述の検出した動作データがブラッシングに関連している動作に対応するかどうかを判定するように構成してもよい。上記検出した動作データが複数の動作の閾値を超える場合には、その検出した動作データがブラッシングに関連している動作に対応すると判定できる。これら動作の閾値は、加速度の閾値であってもよい。上記動作データは、第1の期間中に上記複数の動作の閾値を超えることが必要である。この第1の期間は1秒と5秒の間である。当該第1の期間は2秒であってもよい。これにより、上述のプロセッサーが直接に関係する動作データのみを確実に処理しているようにできる。ここで、直接に関係する動作データとは、ブラッシング動作に関連している動作データである。従って、例えば、位置Aから位置Bに動いている歯ブラシに対応する動作データは、ブラッシング動特性と平均加速度を作成するために用いられない。直接に関係する動作データのみを処理することにより、高精度のクラスタリング結果を提供できる。クラスタリング結果がより高精度になるので、ユーザに対して、より高精度の、かつ直接に関係するフィードバックを提供できることになる。
【0039】
上述のフィードバックを提供する手段は、フィードバック・モジュールであってもよい。このフィードバック・モジュールはフィードバック・デバイスを含む。当該フィードバック・モジュールは、ユーザにフィードバックをリアルタイムで提供するように構成してもよい。これにより、ユーザが受信するフィードバックが確実に、現在の自身のブラッシング活動に直接に関連しているようにできる。その結果、ユーザはリアルタイムで、自身のブラッシング技術に即座に対応して適切に調節できる。リアルタイムのフィードバックにより、ユーザは、フィードバックの履歴、および、ブラッシング・セッション中の悪しき行為の履歴の記憶に頼る必要がないので、自身のブラッシング技術をはるかに容易に調節できる。
【0040】
上記フィードバック・デバイスは、ユーザがブラッシングを最大限の速さを超える速さで行っていた場合に、当該ユーザに警報を発するように構成してもよい。ユーザが自身の歯にブラシを過度に激しく、または過度に力強くかけている場合は、自身の口腔の内部を損傷する可能性があり得る。
【0041】
上記フィードバック・デバイスは、ユーザがブラッシングをブラッシング・セッション全体に対する最長の合計時間よりも長い合計ブラッシング時間で行っていた場合に、当該ユーザに警報を発するように構成してもよい。その最長の合計ブラッシング時間は2分でもよい。ユーザが自身の歯にブラシを過度に長くかけた場合には、歯の過敏な外側の層を侵食して損傷する可能性がある。また、上記フィードバック・デバイスは、ユーザがブラッシングをブラッシング・セッション全体に対する最長の合計時間よりも短い合計ブラッシング時間で行っていた場合に、当該ユーザに警報を発するように構成してもよい。ユーザが自身の歯にブラシを上記最長の合計時間よりも短くかけた場合は、歯を適切に磨けてないかもしれない。
【0042】
上記フィードバック・デバイスは、ユーザがブラッシングを自身の口腔の特定の範囲に対する最長の時間よりも長い時間で行っていた場合に、当該ユーザに警報を発するように構成してもよい。また、上記フィードバック・デバイスは、ユーザがブラッシングを自身の口腔の特定の範囲に対する最短の時間よりも短い時間で行っていた場合に、当該ユーザに警報を発するように構成してもよい。これにより、ユーザは、自身の口腔の1つの特定の範囲に集中するよりもむしろ、すべての範囲のブラッシングをブラッシング・セッション中に確実に行える。口腔の各範囲に対して、均等な長さの時間を費やしながら、ブラッシングを行うことができる。ユーザは、自身の口腔の各範囲のブラッシングを30秒間行える。従って、本発明による装置では確実に、ユーザの口腔のすべての範囲が適切に留意される。
【0043】
上記フィードバック・デバイスは、任意の他の適したブラッシング・パラメータに基づいて、ユーザに警報を提供するように構成してもよい。ユーザに提供されるフィードバックにより、当該ユーザは、自身の口腔のすべての範囲を十分な長さの時間に亘って、確実にブラッシングを行えるので、適正に自身の歯にブラシをかけることが確実になる。さらに、上記フィードバックにより、ユーザは確実に、自身の歯にブラシをかけるプロセスを通じて急ぐのでなくて、口腔のすべての部位に対して適切な時間と留意を与えることができる。さらに、上記フィードバックにより、ユーザは、不適正な自身の歯のブラッシングを通じて、例えば、過度に激しくまたは過度に力強くブラッシングを行っているときに口腔の内部を潜在的に損傷させてしまうのを防止できる。
【0044】
上述のフィードバックを提供する手段は、視覚フィードバック・デバイスであってもよい。この視覚フィードバック・デバイスは、少なくとも1つのLEDを含む。上記少なくとも1つのLEDは、当該デバイスの外面上に配置できる。これにより、ユーザは、そのLEDが容易に見えるので、与えられているフィードバックを明確に見ることができる。上記少なくとも1つのLEDは、カラー光を発生してもよい。異なる指示を提供するために異なるカラー光を用いるので、ユーザは、自身に与えられているフィードバック指示を容易に見分けることができる。
【0045】
上記フィードバックを提供する手段は、音声フィードバック・デバイスであってもよい。この音声フィードバックは、1つ、または2つ以上の音声による指令である。上述のフィードバック・デバイスは、振動デバイスであってもよい。このような振動フィードバックは、1つ、または2つ以上の振動パルスである。音声および振動フィードバックは、ユーザは、本発明による装置を見ることができない場合であっても、フィードバックを受信できるという利点を提供する。そのような場合が起こるのは、例えば、本装置がユーザの手で覆い隠されているときである。上記フィードバック・デバイスは、視覚および/または音声および/または振動フィードバック・デバイスの組合せであってもよい。視覚、音声、振動を用いたフィードバック、または、これらのフィードバックの任意の組合せは、比較的に簡素な形態のフィードバックである。従って、ユーザは、それらのフィードバック指示を迅速に理解し、当該指示に従って行動することができる。さらに、上記形態のフィードバックを用いることにより、ユーザは、当該形態のフィードバックを理解するために短時間しか必要とせず、それらのフィードバック指示に対して可能な限り早く行動することができる。さらに、短時間の、簡素なフィードバック指示は、以前の冗長な指示が与えられ終えるのを待つ必要がなく、本装置がブラッシング・セッション中の任意の所定の時機に指示を提供できるということを意味する。さらに、上記フィードバック・デバイスは、任意の他の適したフィードバック・デバイスであってもよい。
【0046】
本発明による装置は、ブラッシング・セッションの概要を格納してもよい。そのメモリは、ブラッシング・セッションの履歴の概要を格納するように構成してもよい。本装置は、そのような格納した概要および履歴結果を用いて、上述のクラスタリング・プロセスで使用したパラメータを更新できる。これにより、上記クラスタリング・プロセスとフィードバックがユーザに確実に合わせて調整できる。
【0047】
本装置は、ブラッシング・セッション中の1秒毎のブラッシング部位の全履歴を格納してもよい。すなわち、本装置は、ユーザがブラッシング・セッションを開始した時間から完了した時間までの何時に、自身の口腔のどの部分のブラッシングを行ったかに関する全履歴を格納する。この情報は当該ユーザに提供されるので、自身のブラッシング・セッションのブラッシングの傾向を閲覧することができる。
【0048】
本装置は、特定のブラッシング・セッション中の1秒毎に、ブラッシング動作の速さの全履歴を格納してもよい。すなわち、本装置は、ユーザが上記ブラッシング・セッションを開始した時間から完了した時間まで毎秒当たりどれほど速く、自身の歯にブラシをかけていたかに関する全履歴を格納する。この情報は当該ユーザに提供されるので、自身のブラッシングの速さが上記ブラッシング・セッションの過程に亘って、どれほど変化するかを閲覧することができる。さらに、ユーザは、自身の口腔のどの範囲にブラッシングを行っているかに依存して、自身のブラッシングの速さがどれほど変化するかを確かめることができる。
【0049】
本装置は、上述のクラスタリング結果の時刻を刻印するように構成した時計を備えてもよい。上記クラスタリング結果の時刻を刻印することにより、当該結果を正確な順序で確実に格納できる。本装置はさらに、特定のセッションのブラッシング活動を開始した、および完了した時間を格納してもよい。この情報は当該ユーザに提供されるので、自身のブラッシング・セッションが継続した合計時間を確かめることができる。
【0050】
本装置は、上記クラスタリング結果を外部装置に通信する手段を備えてもよい。このクラスタリング結果を通信する手段は、トランシーバーでもよい。上記外部装置は、スマートフォン・デバイスなどの携帯式デバイス、または任意の他の適した携帯式デバイスである。これにより、クラウドに格納するために、上記クラスタリング結果を外部装置に送信できるようになる。
【0051】
本装置は、上述の比較の結果を外部装置に通信する手段を備えてもよい。この比較の結果を通信する手段は、トランシーバーでもよい。上記外部装置は、携帯式または移動式デバイスである。これにより、クラウドに格納するために、上記比較の結果を外部装置に送信できるようになる。
【0052】
本発明の別の一態様によれば、歯ブラシを使用したブラッシング活動の指示を提供する方法であって、加速度計を用いて前記歯ブラシの動作から加速度データを作成し、前記加速度データのフィルタリングを行うことにより、重力成分を作成し、前記加速度データのフィルタリングを行うことにより、直線加速度成分を作成し、前記重力成分および前記直線加速度成分をn次元(n≧2)空間内に投射し、前記重力成分および直線加速度成分のn次元空間内への投射に対して、クラスタリング・プロセスを実行することにより、それぞれがブラッシング範囲を表す複数のクラスタを含むクラスタリング結果を作成し、次の加速度データの重力成分および直線加速度成分の、特定のクラスタに対する割当てに基づいて、ブラッシング範囲を判定し、ブラッシング活動の指示を提供するために、前記ブラッシング範囲の判定に基づいて、ユーザにフィードバックを提供する、ことを特徴とする歯ブラシを使用したブラッシング活動の指示を提供する方法を提供する。
【0053】
本発明のさらに別の一態様によれば、歯ブラシを使用したブラッシング活動の指示を提供する方法であって、前記歯ブラシの動作を検出して動作データを作成し、前記動作データからブラッシング動特性の推定値を作成し、前記動作データから平均加速度の推定値を作成し、前記ブラッシング動特性の推定値および前記平均加速度の推定値に対して、クラスタリング・プロセスを実行することにより、それぞれがブラッシング範囲を表す複数のクラスタを含むクラスタリング結果を作成し、前記クラスタリング結果を格納し、次のブラッシング動特性の推定値および平均加速度の推定値を前記格納したクラスタリング結果と比較し、ブラッシング活動の指示を提供するために、前記比較の結果に基づいて、ユーザにフィードバックを提供する、ことを特徴とする歯ブラシを使用したブラッシング活動の指示を提供する方法を提供する。
【0054】
本発明の別の一態様によれば、コンピュータ・プログラムがコンピュータによって実行されるときに、前記コンピュータに本明細書において記載された前記方法のステップを実行させる指令を含むことを特徴とする前記コンピュータ・プログラムを提供する。
【0055】
本発明の別の一態様によれば、コンピュータによって実行されるときに、前記コンピュータに本明細書において記載された前記方法のステップを実行させる指令を含むことを特徴とするコンピュータによる読取り可能な媒体を提供する。
【0056】
本発明の一態様の特徴は、いずれの他の態様も備えることができる。装置の特徴は、方法の態様を備えることができ、逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明の実施の形態をここでは、添付図面を参照して例としてのみ説明する。
図1】歯ブラシの管理指導システムの概略図である。
図2】プリント回路基板の概略図である。
図3】フィードバック・プロセスの流れ図である。
図4】処理モジュールの略図である。
図5】前フィルタリング・モジュールの略図である。
図6】動作データのプロット図である。
図7】一実施の形態のクラスタリング結果のプロット図である。
図8】別の実施の形態のクラスタリング結果のプロット図である。
図9】フィードバック指示の表である。
図10】保護フラップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、本発明の一実施の形態における歯ブラシの管理指導システム2のいくらかの部分を示す。図1を参照して、歯ブラシの管理指導システム2は、歯ブラシ6と管理指導装置4を備える。管理指導装置4は、歯ブラシ6を受け容れるためのハウジング8と、端部キャップ60を備える。ハウジング8は歯ブラシ6から取り外し可能なので、多様な異なる歯ブラシを使用できる。端部キャップ60には、プリント回路基板(PCB)10が設けられている。管理指導装置4は、例えば、英国特許第2541416号で開示されているように、歯ブラシ保持器の形態で提供してもよく、その特定事項を本明細書において参照により組み入れている。あるいは、その代わりに、管理指導装置を組み込んだ歯ブラシを提供することもできる。PCB10は、図2に示すように、Bluetooth Low Energy (Bluetooth 4.0/Bluetooth Smart、登録商標)のモジュール12と、プロセッサー14と、時計またはタイマー20と、処理モジュール9を備える。管理指導装置4は、充電可能なバッテリー(図示略)によって電力を供給される。端部キャップ60の内部に、その充電可能なバッテリー、充電回路(図示略)、充電誘導リング(図示略)およびマイクロUSB用充電ステーションをPCB10上に含んでいる。端部キャップ60は、ハウジング8に取り外し可能に取り付けるように構成されている。従って、PCB10は歯ブラシ6から取り外し可能である。これにより、上記充電可能なバッテリーを管理指導装置4から分離し、必要とされるように、および必要があるときに当該バッテリーに充電することができる。
【0059】
管理指導装置4は、歯ブラシ6に取り付ける(もしくは、一体化させる)ように構成したデータ処理システムである。図3は、ユーザのブラッシング技術に関する管理指導を当該ユーザに行う一般的なプロセスを示す。そのような管理指導システムの目的は、ユーザが自身の歯にブラシをかけている間に、リアルタイムで歯のブラッシングに関する指示を当該ユーザに提供することである。その結果、そのユーザは上記受信した指示に従って行動できる。ユーザが自身の歯にブラシをかけているときに、その歯ブラシの動作を検出し(S1)、動作データを作成する(S2)。この実施の形態では、その動作データは加速度データである。上記動作データがブラッシング動作に関連していると一度判定すれば(S3)、上記加速度データは2つの成分に分割される(S4)。次にまず、これら2つのデータ成分のフィルタリングを行って(S5)、その後、処理のためにアルゴリズム内に供給される(S6)。プロセッサー14は、クラスタリング・アルゴリズムを用いて上記加速度データを分析し、クラスタリング結果を作成する(S7)。クラスタリング結果は、それぞれがブラッシング範囲を表す複数のクラスタを含む。このクラスタリング結果は次に、格納される(S8)。その後、次の動作データが上記格納したクラスタリング結果と比較される(S9)。これは、上記クラスタリング・プロセスの一部として行われる(すなわち、新規のデータ点を特定のクラスタに割り当てるときに)。あるいは、別個の比較ステップを実行することもできる。上記次のデータと上記格納したクラスタリング結果の比較によって、上記ユーザが自身の口腔のどの部分にブラッシングを行っているかの指示が提供される。次に、この指示に基づいて、フィードバックが当該ユーザに提供される(S10)。上述のようなリアルタイム管理指導がどのように作動するかについては、さらに詳細な説明を後述する。
【0060】
本明細書に記載した管理指導装置4は、オフライン・モードで作動できるデータ処理システムである。ここで、「オフライン」とは、無線データ接続を必要としないことを意味する。すなわち、システム2は、上述の処理とフィードバック機能を実行可能にするために、スマートフォン、タブレット、または任意の他の移動式デバイスなどの外部装置に接続される必要がない。
【0061】
歯ブラシの管理指導システム2はオフライン・モードで作動するが、システム2は定期的にオンラインで接続されて、その管理指導機能を更新する。この管理指導機能は、上記クラスタリング・プロセスと、このクラスタリング・プロセスに基づいて当該ユーザに提供される。Bluetooth(登録商標)のモジュール12は、外部装置とデータ送信およびデータ受信を行うように構成したトランシーバーを備える。Bluetooth(登録商標)のモジュール12は、無線周波数を利用して、歯ブラシの管理指導システム2を当該外部装置に接続させて、更新情報を管理指導システム2上にダウンロードする。そのような外部装置は、移動式デバイス(例えば、スマートフォンまたはタブレット)である。Bluetooth(登録商標)のモジュール12はさらに、メモリ16に格納したデータを、クラウドに格納するために上記移動式デバイスに送信する。
【0062】
管理指導装置4は時計20を備える。時計20を用いて、作成した上記加速度データの時刻を刻印する。上述のデータ処理システムを用いて初めて管理指導を行う前に、実時間の正確な時刻を取得するために、外部の基準線源に内部時計20上の時刻を最初に合わせる必要がある。例えば、管理指導装置4をスマートフォンまたはタブレットに接続する場合には、そのスマートフォンまたはタブレット上の時計から正確な世界時を取得する。次に、この時刻を利用して、管理指導装置4上の内部時計20の時刻を更新する。その後、管理指導装置4は、その正確な刻印した時刻を収集した上述の動作データに適用させる。これにより、ユーザが自身の歯にブラシをかけた時刻を閲覧することができる。
【0063】
管理指導装置4の電力がなくなっていると、内部時計20は「実時間」と時刻が合わなくなる。このことは、管理指導装置4を一度充電して時刻を合せ直さなかったときに、ブラッシングのために使用した場合には、そこで記録したブラッシング・セッションは不正確な刻印した時刻(「実時間」ではなく「ブートから」)を有するということを意味する。装置4がオンライン接続に接続しているときは、当該刻印した時刻は正される。それらの刻印した時刻を正すために、装置4は上記実世界時と内部時計20上の時刻の間の差を計算する。次に、この時刻の差を内部時計20が記録した上記刻印した時刻上に付加する。従って、装置4がオンライン接続に接続しているときは、上記記録されたデータ・セッションの刻印した時刻は再評価されるので、その正確な刻印した時刻を用いて、当該ユーザのプロフィールと共に/クラウド内に格納される。これにより、このユーザは、自身のブラッシング・セッションの適正な履歴を提供される。
【0064】
電力と記憶容量を節約するために、管理指導装置4は、ブラッシングが実際に行われていると一度確証したときのみ、上述のクラスタリング・プロセスを実行し始める。これによって確実に、管理指導装置4がブラッシング動作に関連していない歯ブラシのシステム2の動作を処理し始めないようにできる。例えば、ユーザが歯ブラシのシステム2を1つの部屋から別の部屋に移動させた場合などである。歯ブラシ6の動作がブラッシングに直接に関係するかどうかをデータ処理前に判断することにより、直接に関係するデータのみを確実に処理できる。従って、歯ブラシのシステム2が必要でないデータを処理かつ格納することにより、貴重な記憶容量、処理電力およびバッテリーの寿命を使い果たしてしまうことを防止する。
【0065】
管理指導装置4を使用可能にする前に、最初に電源をオンにする必要がある。ここで「電源をオンにする」は、装置4をスリープ・モードから完全に作動可能な状態にすることを意味する。従って、装置4は「目覚めた」状態になる。スリープ・モードは電力節約モードであり、管理指導装置4のいくらかの部分のスイッチが必要とされるまでオフになっている。装置4の電源をオンにするために必要なことは、ユーザが単に装置4を手に取るだけである。処理モジュール9は、スリープ・モード中はバックグラウンドで作動し、管理指導装置4が無活動状態の期間から活動状態の期間に移行したことを検出する。その結果、処理モジュール9が管理指導装置4全体の動力を増加させるので、ブラッシングの間、使用することができる。装置4の電源をオフにしてスリープ・モードにするためには、当該ユーザは単に装置4を延長した期間、固定しておけばよい。処理モジュール9は、活動状態の期間から無活動状態の期間に移行したことを検出し、その結果、もはや必要とされない管理指導装置4のモジュールのスイッチをオフにする。
【0066】
歯ブラシのシステム2の動作がブラッシング動作に対応するかどうかを判定するために、管理指導装置4は所定の期間、歯ブラシのシステム2の動作または加速度に関連するデータを捕捉する。典型的には、そのデータを2秒間収集するが、任意の他の適した期間を用いることができる。次に、この最初の加速度データを、歯のブラッシング動作に典型的な、事前に設定された加速度制限値と比較し、当該捕捉した最初のデータがブラッシング動作に対応するかどうかを判定する。管理指導装置4が歯にブラシをかけることに関連している動作が開始されたことを検出すると、管理指導装置4は、このデータに対してクラスタリング・プロセスを実行することによって当該データを処理する。このクラスタリングは、データ点とブラッシング範囲を表す事前に設定された点(クラスタ)とを比較することによって実行される。上記データ点は、それに最も近接したクラスタに(例えば、最も短いコサイン距離を有するクラスタに)割り当てられる。このクラスタリング・プロセスの結果を上記比較段階で用いて、どの範囲にブラッシングを行っているかを指示し、続いて、直接に関係するフィードバックを提供する。
【0067】
従って、歯ブラシの管理指導システム2は、ユーザが自身の歯にブラシをかけ始めたと一度判定すれば、上述のようなオフラインの管理指導機能を自動的に作動させることができる。上記管理指導機能を自動的に作動させることにより、ユーザが率先して当該管理指導機能を開始する必要性を除去できる。従って、すべての直接に関係するデータが処理されるので、より直接に関係するフィードバックを確実に取得できることになる。
【0068】
図4は、上記管理指導機能を実行するために用いる処理モジュール9の一実施の形態を示す。処理モジュール9は、動作センサー18を備え、この場合では加速度計18である。加速度計18は、加速度データを作成する。加速度計18は、前フィルタリング・モジュール13に接続されているので、加速度計18が生成した加速度データは、前フィルタリング・モジュール13に渡される。前フィルタリング・モジュール13は、加速度計18から受け取った上記加速度データに対して前フィルタリング・プロセスを実行する。このような前フィルタリング・プロセスについては、さらに詳細な説明を後述する。前フィルタリング・モジュール13は、クラスタリング・モジュール15と比較モジュール17の両方に接続されている。従って、前フィルタリング・モジュール13から渡された上記データは、クラスタリング・モジュール15と比較モジュール17の両方に渡される。クラスタリング・モジュール15は、前フィルタリング・モジュール13から受け取った上記データに対して、クラスタリング・プロセスを実行する。クラスタリング・モジュール15はメモリ16に接続されている。上記クラスタリング・プロセスでは、クラスタリング結果が作成され、それを格納するために、クラスタリング・モジュール15からメモリ16に渡される。メモリ16は比較モジュール17に接続されている。メモリ16は、その格納したクラスタリング結果を比較モジュール17に渡す。それ故、比較モジュール17は、前フィルタリング・モジュール13からフィルタリングが行われたデータ、および、メモリ16から格納されたクラスタリング結果を受け取る。比較モジュール17は、前フィルタリング・モジュール13からの上記データをメモリ16からの上記クラスタリング結果と比較し、比較の結果を作成する。この比較の結果により、ユーザが自身の口腔のどの範囲にブラッシングを行っているかの指示が提供される。比較モジュール17はフィードバック・モジュール19に接続されている。比較モジュール17は、上記比較の結果をフィードバック・モジュール19に渡す。フィードバック・モジュール19は、その比較の結果に基づいて、当該ユーザにフィードバックを提供する。
【0069】
図4に示す配設では、別個の比較モジュールを用いて、前フィルタリング・モジュール13からの上記データをメモリ16からの上記クラスタリング結果と比較する。これにより、異なる比較パラメータまたは技術を上記クラスタリング・プロセスと上記比較プロセスで用いることができる。あるいは、ユーザの口腔のどの範囲にブラシがかけられているかの判定を上記クラスタリング・プロセス自体の間に実行してもよい。このようにして、(上記クラスタリング・プロセスの一部として)新規のデータ点を特定のクラスタに割り当てることにより、ユーザの口腔のどの範囲にブラシがかけられているかを指示することもできる。この場合には、別個の比較モジュールは必要とせず、クラスタリング・モジュール15は、ユーザが自身の口腔のどの範囲にブラシがかけているかの指示をフィードバック・モジュール19に直接に出力してもよい。
【0070】
好ましい一実施の形態では、上述の動作センサーは3軸加速度計である。この加速度計の出力は、以下のように表される。
d = a + g + e
ここで、dは生の(測定した)加速度データであり、aは上記加速度計の動きによる加速度であり、gは重力成分であり、eは誤差の項である。3軸加速度計の場合では、d、a、gおよびeはそれぞれ、三次元ベクトルである。
【0071】
最初に、プロセッサー14が、加速度計18からの生の加速度データdなどの生の動作データ22を受け取り、x、yおよびz方向の浮動小数点数に変換する。図6は、上述の前フィルタリング、クラスタリング・プロセスおよび比較を実行する前における生の加速度データを示す。加速度計18は管理指導装置4の加速度を測定する。上記加速度データから、前フィルタリング・モジュール13は、後述するように、重力加速度成分gと直線加速度成分a抽出する。上記加速度データの重力加速度成分は、地球の重力に対して、歯ブラシのシステム2がどのような向きに配置されているかの指示を与えることができる。それ故、この重力成分を用いて、歯ブラシのシステム2の向きを判定できる。上記直線加速度成分は、歯ブラシのシステム2がブラッシングの間にどのように動かされているか、もしくは、振り動かされているかの指示を与えることができる。
【0072】
上記重力成分は、以下の式を用いて上記加速度計のデータの低域フィルタリングを行うことによって、当該加速度計のデータから分離される。
gx,new = coeff.gx,old + (1-coeff)accelx,
ここで、gx,newは新たに算出した重力のx成分、gx,oldは重力のx成分の以前の値、accelxはx方向の加速度の現在の値、およびcoeffはフィルター係数である。
【0073】
上記フィルター係数は、以下の式により得られる。
coeff=T/(T+Δt’)
ここで、Tはフィルター時定数、およびΔtはサンプル更新時間である。フィルター時定数0.4秒とサンプル更新0.1秒を用いて、フィルター係数0.8が得られる。当然のことであるが、他のフィルタリングのパラメータを適切なように用いてもよい。
y方向およびz方向の重力成分も同様に算出できる。
【0074】
上記直線加速度成分は、上記加速度データから上記重力成分を減算することにより、以下のように算出される。
linearx = accelx - gx,new,
ここで、linearxは直線加速度のx成分である。y方向およびz方向の直線加速度も同様に算出できる。
【0075】
上記重力と直線加速度のコンピュータ算出に加えて、x方向、y方向およびz方向のそれぞれにおいて上述のフィルタリングが行われた直線加速度成分の二乗の合計の平方根を算出する。さらに、x方向、y方向およびz方向の直線加速度の連続したサンプル間の差の二乗の合計を算出することにより、ユーザがブラッシングを行っているか否かを判定する。
【0076】
図5は、前フィルタリング・モジュール13を示す。前フィルタリング・モジュール13は、増幅器21と、第1の低域フィルタ24と、第2の低域フィルタ28と、第3の低域フィルタ32と、減算器30を備える。増幅器21は、第1および第2の低域フィルタ24および28と減算器30とに接続されている。それ故、増幅器21からのデータは、第1および第2の低域フィルタ24および28と、減算器30の両方に渡される。第2の低域フィルタ28はさらに、減算器30に接続されている。従って、第2の低域フィルタ28は、データを減算器30に渡すことができる。このように、減算器30は、増幅器21と第2の低域フィルタ28からデータを受け取る。減算器30は第3の低域フィルタ32に接続されている。それ故、減算器30からのデータは第3の低域フィルタ32に渡される。
【0077】
上記重力および直線加速度成分は、低域フィルタ24と高域フィルタ26を用いて、生の加速度データ22から分離される。これらの成分を分離する前に、生の加速度データ22が最初に、増幅器21を用いて、適正な振幅に調整される。
【0078】
生の加速度データ22の重力成分は、低域フィルタ24に加速度データ22を通過させることにより、加速度データ22から分離される。低域フィルタ24を用いるのは、加速度データ22の上記重力加速度成分が、上記直線加速度成分より低い周波数を持つためである。低域フィルタ24の遮断周波数は、生のセンサー・データ22の重力成分を通過させるが、ユーザが歯ブラシを手動で動かすことによる加速度成分を通過させないようになっている。生の加速度データ22のx、yおよびz成分は別個に、フィルタリングが行われるので、それらのx、yおよびzの重力成分は別個に分離される。
【0079】
生の加速度データ22の重力成分は、x方向、y方向およびz方向の重力加速度の平均値を提供する(低域フィルタは、一型式の移動平均フィルタとして作動する)。x方向、y方向およびz方向の上記重力成分は、処理のためにクラスタリング・モジュール15上に渡される。
【0080】
上記直線加速度成分は、最初に低域フィルタ28に加速度データ22を通過させることにより、当該データから分離される。低域フィルタ28の遮断周波数は、重力による加速度を通過させるが、ユーザが歯ブラシを手動で動かすことによる加速度を通過させないようになっている。このようにフィルタリングが行われたデータは次に、減算器30を用いて、生の加速度データ22から減算される。それ故、この作動は、重力による加速度を生の加速度データ22から取り除いて、直線加速度成分を残す。低域フィルタ28と減算器30の組合せにより、高域フィルタ26を創作する。生の加速度データ22のx、yおよびz成分は別個に、フィルタリングが行われるので、それらのx、yおよびzの直線成分は別個に分離される。
【0081】
このようにフィルタリングが行われたx、yおよびz直線加速度成分は次に、絶対値計算モジュール31に渡される。絶対値計算モジュール31は、上記x、yおよびz成分の二乗の合計の平方根を見出すことによって、その直線加速度の絶対値を算出する。この直線加速度の絶対値は次に、低域フィルタ32上に渡される。低域フィルタ32は、所定の遮断周波数より低くなるデータのみを通過させる。このようにすれば、低域フィルタ32を用いて、そのデータ内に存在するノイズを減少させることができる。このフィルタリングが行われた絶対値は次に、ブラッシング動特性36の最終値を提供する。ブラッシング動特性36は、ユーザがどれほど力強く、速くまたは激しく、自身の歯にブラシをかけていたかの指示を提供する。従って、動特性推定のベクトル長さを算出することにより、ブラッシング動特性推定36の最終スカラー値を作成する。
【0082】
それ故、上述の前フィルタリングは、上記データにフィルタを通過させ、ブラッシング動特性36と平均重力加速度38、および、x方向、y方向およびz方向の上記重力成分を算出するプロセスを含み、前フィルタリング・モジュール13によって実行される。
【0083】
前述したように、クラスタリング・モジュール15は、前フィルタリング・モジュール13から受け取った、上記フィルタリングが行われたデータに対して、上述のクラスタリング・プロセスを実行する。これは、その動作データが任意の他の動作形態よりもむしろ、ブラッシングに関連していると判定した場合にのみ、実行される。この判定は、ブラッシング動特性36の値を最大限および最小限の加速度の閾値と比較することにより行う。ブラッシング動特性36の値がその最小限の加速度の閾値より小さくなれば、管理指導装置4は、装置4が動いていないと判定するので、上記クラスタリング・プロセスは実行されない。ブラッシング動特性36の値が上記最大限の加速度の閾値を超えれば、管理指導装置4は、その動作は有効でないと判定するので、上記クラスタリング・プロセスは実行されない。
【0084】
上記前フィルタリングの後に、平均重力加速度38と動特性推定36を含む上記フィルタリングが行われた加速度データは、クラスタリング・モジュール15に渡され、クラスタリング・アルゴリズムが実行される。このクラスタリング・アルゴリズムは、複数のクラスタを含むクラスタリング結果を作成する。次の加速度データを特定のクラスタに割り当てることにより、ユーザが任意の所定の時刻に自身の口腔のどの範囲にブラッシングを行っているかを指示できる。
【0085】
クラスタリング・モジュール15において、ブラッシング動作に関連している上記フィルタリングが行われた平均重力加速度データは最初に、デカルト基準系(z方向のデータは脱落されている)上に投射され、次に極座標系でベクトルに変換される。これを行うために、平均重力加速度38のxおよびy成分から、ベクトルの角度方向の座標を算出する。そのベクトルの半径方向の成分は、動特性推定36の値である。このように、極座標系において、ベクトルの角度を上記重力加速度データにより判定し、上記ベクトルの半径方向の成分を動特性推定36により判定する。この結果、(歯ブラシの向きに関連している)上述の重力成分と(歯ブラシの動作に関連している)上述の直線加速度成分の両方を考慮したベクトルが得られる。次に、上記クラスタリング・アルゴリズムが極座標系のデータ点に対して作動される。
【0086】
あるいは、上記フィルタリングが行われた加速度データは、球座標系内に投射されてもよい。これを行うために、平均重力加速度38のxおよびy成分から、ベクトルの角度方向の座標を算出する。すなわち、投射が行われた3D空間における上記ベクトルの極角と方位角は、x方向、y方向およびz方向の上記重力加速度データから形成された、それに対応する三次元ベクトルの角度と同じである。当該投射が行われた3D空間の上記ベクトルの半径方向の成分は、動特性推定36の値である。このように、その投射が行われた3D空間において、ベクトルの角度を上記重力加速度データにより判定し、上記ベクトルの半径方向の成分を動特性推定36により判定する。この結果、(歯ブラシの向きに関連している)上述の重力成分と(歯ブラシの動作に関連している)上述の直線加速度成分の両方を考慮した、修正された三次元空間が得られる。次に、上記クラスタリング・アルゴリズムが、この修正された三次元空間のデータ点に対して作動される。
【0087】
上記クラスタリング・アルゴリズムは、類似したデータ点を系統立ててクラスタを作成する。それ故、各クラスタは、何らかの点で相互に類似したデータ点を含み、他のクラスタに属するデータ点と異なる。この場合では、上記クラスタリング・アルゴリズムは、距離に基づいたクラスタリングを用いる。これは、2つ、または3つ以上のデータ点が距離の点で共に近接している場合には、それらは類似していると判定することを意味する。上記クラスタリング・アルゴリズムは、このようなクラスタの類似性をユークリッド距離の代わりに測定するために、コサイン距離を用いる。上記クラスタリング・アルゴリズムはさらに、上記クラスタの距離を少し短くすることにより、以前のサンプルから当該クラスタを優位にするヒステリシスを含んでもよい。
【0088】
上記クラスタリング・アルゴリズムの目的は、データを分類する、もしくは、データ点にラベルを割り当てることである。最初は、いくらかの訓練データに基づいて、そのラベルまたはクラスタを考案する、すなわち、モデルを創作するステップである。次に、そのモデルは、生データ上で用いられる、当該生データをより有益な座標系に変換するためのパラメータを提供する。次に、各クラスタの中心点に対する上記データ点の類似性(または距離)を算出し、最も近接したクラスタを上記ラベルとして選択する。多数の可能性がある距離の測定値があり、その1つはユークリッド距離で、ベクトルの2つの先端間の「長さ」を測定する。この実施の形態では、2つのベクトル間の角度を測定するコサイン距離を用いて、類似性を判定する。しかし、これをユークリッド距離などの他の測定値と組み合わせてもよいし、もしくは、他の距離測定値を代わりに用いてもよい。上記(4個の)クラスタのそれぞれに対するデータ点の距離を算出し、最も短い距離を持つクラスタを上記ラベル(ユーザの口腔の範囲)として選択する。
【0089】
各クラスタは、ユーザの口腔の特定の部位を表している。従って、それらのクラスタは、ユーザの口腔の表示上に(上記重力成分と直線加速度成分の両方を含む)上記加速度データのマッピングを行うための便利な方法を表している。
【0090】
上述のフィードバック機能を作動させるために、上記クラスタリング・プロセスで用いたクラスタを設定し、ユーザの口腔の特定の部位と結び付ける必要がある。これは、最初に管理指導装置4に実験室試験からの標準加速度データを事前にロードすることにより行われる。次に、装置4がフィードバックを提供することになっている上記口腔の部位の一覧表を認定する。その後、管理指導装置4を上記口腔の特定の部位に配置し、上記事前にロードした加速度データが上記口腔のどの範囲に対応するかを確かめることにより、上記クラスタを設定する。
【0091】
ユーザが管理指導装置4を使用するときに、自身の歯にブラシをかけて、当該ユーザ自身の加速度データを生成する。上述と同じように、その加速度データのフィルタリングを行い、そのマッピングを上述の修正されたn次元空間内に行う。次に、そのユーザの加速度データを上記事前に設定したクラスタと比較して、当該ユーザの加速度データがそのユーザの口腔のどの範囲に対応するかを確かめる。その比較の結果が、当該ユーザがブラッシングを行っていると管理指導装置4が判定した口腔の範囲になる。
【0092】
上記クラスタリング・プロセスと比較プロセスにおいて、上記重力成分と直線加速度成分の両方を含むことにより、管理指導装置4は、歯ブラシの向きとブラッシング動作の両方を考慮できる。典型的なユーザにとって、ブラッシング動作は自身の口腔の異なる範囲の間で変動するので、当該ユーザが自身の口腔のどの範囲にブラッシングを行っているかに関して、重力加速度データのみを用いる場合よりも高精度の判定が可能になる。
【0093】
特定のブラッシング・セッションからの上記ユーザの加速度データを、管理指導装置4上に既に格納されている上記事前に格納された加速度データと組み合わせる。ユーザが装置4を使用すると、上記事前に格納されたデータと組み合わされ、より多量の加速度データを生成することになっている。十分なユーザ特有の加速度データが一度存在すれば、上記事前に設定されたクラスタに頼る代わりに、上記クラスタリング・アルゴリズムが当該ユーザ特有のデータに対して作動し、ユーザ特有のクラスタリング結果が生成される。従って、時間を経て、上記ユーザの加速度データが事前に格納された加速度データに取って代わり、上記ユーザのクラスタリング結果が上述の事前に判定された結果に取って代わる。これにより、上記ユーザ特有の加速度データを用いて生成した上記クラスタリング結果によって、上記加速度データと当該ユーザの口腔との間のより高精度のマッピングが提供される。これにより、そのユーザに対して、より高精度のフィードバックを提供できる。
【0094】
時間を経て、上記クラスタリングおよび管理指導プロセスで用いられたクラスタリングのパラメータは更新され、個別のユーザにとって、より特有なものになる。これは、管理指導装置4が外部装置に対してオンラインのときに起こる。Bluetooth(登録商標)のモジュール12は、Bluetooth(登録商標)の接続を利用して、そのクラスタリングのデータを上記外部装置にトランシーバー15を介して転送する。更新される上記主要なパラメータは、上記加速度データがどのクラスタに属するか、その結果として、ユーザの口腔のどの部位にブラッシングを行っているかを判定するために用いるクラスタの閾値である。論じたように、ユーザがこのような管理指導機能を利用すればするほど、管理指導装置4は、より多数のブラッシング・セッションに対応する、より多量のデータを収集し、格納できる。このデータは上記外部装置に送信され、その外部装置は、当該データの履歴を分析し、上記クラスタリングの閾値が特定のユーザにとって過度に寛大であると判明した場合には、上記クラスタリングの閾値を更新する。
【0095】
これは、例えば、ユーザが自身のブラッシング技術で極めて首尾一貫し、自身の口腔の各範囲に対して明確なブラッシング動作を行っている場合に起こる。この場合には、ユーザの口腔の各部位に対する当該ユーザの最大限と最小限の動作の間の相違は小さい。このことは、ユーザのブラッシング・データは、そのデータ点が共に近接している小さい、明確なクラスタを形成するということを意味する。このタイプのユーザを効果的に管理指導かつ指示するために、各クラスタに対する上述のクラスタリング・アルゴリズムおよび管理指導機能によって用いられる上記距離の閾値がより小さいことが必要である。すなわち、いくらかの点が共に近接して群をなしている場合には、それらの点は単に、同一のクラスタの一部とみなされる。データ点が同一のクラスタの一部とみなされない制限値は、小さくなっている。
【0096】
その一方で、より一貫性のないブラッシング様式を有するユーザは、自身の口腔の各部位に対する最大限と最小限のブラッシング動作間に大きな相違を持つ。このことは、ユーザのブラッシング・データは、境界が曖昧な縁部を有する大きなクラスタを形成するということを意味する。すなわち、各クラスタの制限値が明確になっていない。各クラスタ内のデータ点は広がっている。このことは、各クラスタに対する上記クラスタリング・アルゴリズムおよび管理指導機能によって用いられる上記距離の閾値は、そのようなデータ点の変動を考慮するために、より大きい必要があることを意味する。データ点が同一のクラスタの一部とみなされない制限値がはるかに大きくなっているので、隣接するクラスタの境界は共にかなり近接している。
【0097】
従って、上記クラスタリングの閾値は、異なるブラッシング様式を考慮するので、個人化した管理指導およびフィードバックが提供される。上記クラスタリングの閾値を更新することによって、管理指導装置4は、各個別のユーザに合わせて調整した管理指導を提供できる。
【0098】
一実施の形態では、図7に示すように、上述の加速度データを三次元空間で5個のクラスタに分類する。これらの5個のクラスタは、ブラッシング活動が無いことを指示する中心クラスタ51を含む。上述のように、このクラスタを事前に取り除くことは可能である。4個の他のクラスタ52、53、54および55は、中心クラスタ51の周囲に配置されている。4個のクラスタ52、53、54および55は、ユーザがブラッシングを行う自身の口腔の4つの主要な範囲を表す。これらの4つの範囲は、内側の上部、内側の底部、外側の左部および外側の右部を表す。
【0099】
別の実施の形態では、図8に示すように、上記加速度データを二次元空間で4個のクラスタに分類する。これらの4個のクラスタは、ユーザがブラッシングを行う自身の口腔の4つの主要な範囲を表す。これらの4つの範囲は、内側の上部、内側の底部、外側の左部および外側の右部を表す。
【0100】
上述の比較プロセスは、動特性のクラスタリングを用いて、ユーザがブラッシングを行っている自身の口腔の部位を指示する。このことは、上記比較プロセスでは、現在の加速度データに加えて、その比較プロセスの以前の結果も用いて、口腔のどの範囲にブラッシングを行っているかを判定するということを意味する。従って、装置4は、2つのクラスタから等距離のデータを受信すると、ユーザが自身の口腔のどの範囲にブラッシングを行っているかを予測できる。これは効果がある。なぜなら、ユーザは典型的に、一貫性を欠いた、無原則な仕方で歯ブラシを自身の口腔の周囲に動かすというよりはむしろ、自身の歯にブラシをかけているときに口腔の隣接した範囲にブラッシングを行うためである。例えば、現在の加速度データがユーザの口腔における外側の左部と内側の上部を表す2つのクラスタの間で等距離にあるが、上記以前の比較の結果がそのユーザは当該外側の左部にブラッシングを行っていると指示した場合には、上記現在のデータが口腔の外側の左部のブラッシングに該当する可能性が極めて高い。これは、ユーザが口腔の外側の左部から口腔の外側の右部に歯ブラシを動かした可能性が、外側の左部から内側の上部に動かした可能性よりも高いためである。
【0101】
これは実用上、上記以前のクラスタに対して、そのコサイン距離(または他の距離の測定値)を所定の長さ(例えば、0.4)だけ短くすることによる少しの「ボーナス」または優遇を付与することによって、達成できる。それ故、そのデータ点は、上記クラスタが変化するように、別のデータの「主要な塊」により近接することになる。
【0102】
ユーザが自身のブラッシング技術を改善するのを支援するために、リアルタイムのフィードバックが提供され、その結果、当該ユーザは自身のブラッシング技術を適切に調節できる。フィードバックは、多様な活動に対して提供される。
【0103】
フィードバックは、ユーザがどれほど長く歯にブラシをかけていたかに基づいて提供される。フィードバックは、合計ブラッシング・セッションの継続時間と、ユーザの口腔の各部位に対するブラッシングの継続時間とに基づいて提供される。ブラッシングが行われている間に、加速度計18は、プロセッサー14に割込みを提供することにより、プロセッサー14に新規のサンプルの加速度データを提供できる。その割込みを50ミリセカンド毎に提供するが、任意の他の適切な割込み時間を用いてもよい。ブラッシング活動の合計時間は、プロセッサー14が受け取った割込みの数量に基づいて判定される。プロセッサー14は、どれほど多数の50ミリセカンドの期間が経過したかを、受け取った割込みの数量またはサンプル・セットの数量に基づいて算出することができる。同様に、ユーザの口腔の各部位に対するブラッシングで費やした時間の長さが、ユーザの口腔の各部位に対応して受け取ったサンプルの数量に基づいて判定される。
【0104】
次に、フィードバックは、処理モジュール9を用いて、実際のブラッシング・セッションの継続時間とブラッシング・セッションの理想の継続時間を比較することによって、ユーザに提供することができる。例えば、ユーザが自身の口腔のブラッシングを、専門家が推奨する合計時間よりも短い合計時間で行っていた場合には、管理指導装置4は、そのユーザに対して、上記所望の時間制限値に達するまでブラッシングをより長い間行う必要があることを指示する。現在では、ユーザが自身の歯に2分の合計継続時間でブラシをかけることが推奨されている。しかしながら、あるいは、任意の他の適切な合計ブラッシング時間を用いてもよい。
【0105】
ユーザが自身の歯に上記推奨された合計時間よりも短い時間でブラシをかけた場合には、適切に歯を磨いていない可能性がある。この場合には、管理指導装置4は、そのユーザがより長い時間でブラッシングを行うように指示する。
【0106】
ユーザが自身の歯に上記推奨された合計時間が終了した後にブラシをかけ続けていた場合には、歯の過敏な外側の層を侵食して損傷する可能性がある。この場合には、管理指導装置4は、そのユーザが自身の歯にブラシをかけるのを停止するように指示する。
【0107】
ユーザが自身の歯に上記推奨された合計時間でブラシをかけることは有益である。その一方で、そのユーザは、自身の口腔の1つの特定の範囲に集中するよりもむしろ、すべての範囲のブラッシングをこの時間中に確実に行っていなければならない。それ故、当該ユーザは、歯ブラシの装置4が特定した口腔の4つの範囲のそれぞれに対して、均等な長さの時間を費やしながら、ブラッシングを行うことが推奨される。ユーザが自身の口腔の各範囲のブラッシングに費やす推奨時間は30秒間であるが、任意の他の適切な期間を用いてもよい。
【0108】
従って、ユーザが自身の口腔の1つの範囲に対するブラッシングを過度に長く行ったり、もしくは、十分な時間で行わなかった場合には、管理指導装置4がそのユーザに指示する。当該ユーザは歯ブラシを、自身の口腔の異なる範囲に動かすか、あるいは、先にブラッシングを行った範囲に戻すかのどちらかをするように指示される。その結果、管理指導装置4では確実に、ユーザの口腔のすべての範囲が適切に留意されたことになる。
【0109】
ユーザの口腔の内部が損傷する可能性を回避するために、そのユーザが自身の歯にブラシを過度に激しく、または過度に力強くかけないことが重要である。管理指導装置4は、ユーザが自身の歯にブラシを過度に力強くかけていると判定した場合には、そのユーザがブラッシングをより注意深く行うように指示する。例えば、管理指導装置4は、加速度の変化が所定の閾値を超えて、ユーザが過度に速くブラッシングを行っていると判定するときは、続いて、そのユーザがブラッシングの速さを緩めるように指示する。管理指導装置4は、単位時間当たりの歯ブラシの速さが最大限の速さの閾値を超え、かつ、所定の期間中この閾値を超えていると判定するとき、これは、ユーザが自身の歯にブラシを過度に速くかけていることを示す。それ故、管理指導装置4は、そのユーザに対して、当該ブラッシングの速さが上記上方の閾値を下回るまで、そのブラッシングの速さを緩めるように指示する。
【0110】
ユーザに対するフィードバックは、多数のフィードバック手段を用いて提供される。フィードバックは、歯ブラシの管理指導システム2上に配置した複数のLED40を用いることによって提供される。LED40は管理指導装置4の外面上に配置されるが、ユーザがLED40を明確に見えることができる任意の他の適切な位置が利用され得る。LED40は、白色、緑色、赤色、または任意の他の色または色の組合せであってもよい。任意の所定の時刻でのLED40の色は、ユーザがどのように自身の歯にブラシをかけているべきかについて、そのユーザに指示するために用いられる。
【0111】
図9は、いくらかの例としての指示を示し、それらは歯ブラシの管理指導システム2内にプログラムされている。例えば、ユーザが自身の口腔の1つの範囲のブラッシングを上記推奨された期間よりも長く、例えば30秒間よりも長く行っていた場合には、LED40が緑色光を明滅することにより、ユーザが自身の口腔の異なる範囲に切り替えるように指示する。
【0112】
ユーザが過度に速くブラッシングを行っていた場合には、LED40が赤色光を明滅することにより、当該ユーザがその速さを緩めるように指示する。
【0113】
ユーザが上述の推奨された合計ブラッシング時間を超える合計ブラッシング時間、例えば2分よりの長く、ブラッシングを行っていた場合には、LED40が赤色光を点灯する。これにより、当該ユーザが自身の歯にブラシをかけるのを停止するように指示する。
【0114】
上記ブラッシング・セッションが完了した後に、管理指導装置4は、そのブラッシング・セッションの概要を装置4上にローカルで格納する。上記ブラッシング・セッションのブラッシング・データは、管理指導装置4のメモリ16上に格納される。このような実際のデータを格納するだけでなく、管理指導装置4はさらに、特定のセッションのブラッシング活動が開始および完了した時間を格納する。次に、上記ブラッシング・セッションの計時を用いて、ユーザに対して、そのブラッシング・セッションが継続した合計時間を指示する。
【0115】
管理指導装置4はさらに、上記ブラッシング・セッション中にユーザが実行した1秒毎のブラッシング部位の全履歴を格納する。すなわち、管理指導装置4は、ユーザがブラッシング・セッションを開始した時間から完了した時間までの何時に、自身の口腔のどの部分のブラッシングを行ったかに関する全履歴を格納する。このデータを用いることにより、ユーザのブラッシング・セッションのブラッシングの傾向に関する指示が当該ユーザに提供される。
【0116】
管理指導装置4はさらに、特定のブラッシング・セッション中の1秒毎に、ブラッシング動作の速さの全履歴を格納する。すなわち、管理指導装置4は、ユーザが上記ブラッシング・セッションを開始した時間から完了した時間まで毎秒当たりどれほど速く、自身の歯にブラシをかけていたかに関する全履歴を格納する。このデータは当該ユーザに渡されるので、自身のブラッシングの速さが上記ブラッシング・セッションの過程に亘って、どれほど変化したかを閲覧することができる。さらに、ユーザは、自身の口腔のどの範囲にブラッシングを行っていたかに依存して、自身のブラッシングの速さがどれほど変化したかを確かめることができる。
【0117】
歯ブラシのシステム2がオンラインであるとき、管理指導装置4は、内部メモリ16上に格納した上記ブラッシングの概要を外部装置と同期させる。その結果、その外部装置は、実行された上記ブラッシング・セッションすべての完全な、最新の記録を持つことができる。次に、ユーザは外部装置を用いて、過去のブラッシング・セッションを閲覧して、それらのデータを比較する。
【0118】
記録、分析、およびブラッシング・データの対応するフィードバックを含む、管理指導装置4およびその管理指導機能の利用は、多量の電力を必要とする。このことは、バッテリーが適切に保護されないと、そのバッテリーの寿命が低下してしまうという可能性がある。
【0119】
バッテリーの寿命の改善を支援するために、上述のバッテリー充電回路は、管理指導システム2の他の部分から分離される。これにより、電力が低下している場合に、全システム2内に電力を供給するよりもむしろ、当該バッテリーのみを充電できる。これは、全システム2ではなく、上記バッテリー充電回路の電力を増加させるためである。この結果、バッテリー充電がより迅速になり、その全電気回路網のより小さな一部が充電中に用いられる。上記バッテリーが一度満充電になれば、全管理指導システム2の電力が増加し、電源をオンにすることができる。あるいは、上記バッテリーの充電レベルが上方の閾値を一度超えたときに、全システム2の電源がオンになってもよい。
【0120】
上記バッテリーの電力が消費されて、上記充電レベルが下方の閾値よりも低下したときは、管理指導システム2は、その自体の作動を終了する。最小限の閾値を用いて、それより小さくなると管理指導システム2が作動しないようにすることにより、充電を使い果たして上記バッテリーを完全に空にしてしまう可能性が小さくなる。そのバッテリーの充電を完全に使い果たしてしまうことを防止すれば、当該バッテリーの寿命(寿命期間の延長)に役立つ。すなわち、上記バッテリーは経年するにつれて、より長い充電サイクルで継続、もしくは、より多量の充電を保持できるようになる。上述のように、より早期に作動を終了させることにより、装置4は、いくらかの電力を保持して内部時計20を作動させ続けることができるので、上述のオフラインのセッションの時刻を正確に刻印できる。電力がなくても、そのデータはフラッシュ(永久メモリ)で安全である。
【0121】
あるいは、歯ブラシの管理指導システム2は、電子デバイスが水によって損壊される可能性がある環境で、使用してもよい。管理指導装置4上の充電ポート、例えばマイクロUSB用充電ポートは、水が管理指導装置4の内部電気回路網に入る通路を提供している。
【0122】
水が管理指導装置4に入って上記電気回路網を損壊させる可能性を最小限にするために、図10(c)に示すように、端部キャップ60は可撓性フラップ64を備える。フラップ64は内面66と外面68を備える。外面68は、管理指導装置4上に存在する他の構成部品に干渉しないように、平滑面で構成されている。
【0123】
図10(a)および図10(b)に示すように、水の侵入を防止するために、保護フラップ64の内面66を充電ポート62内に挿入させる。それ故、内面66はその上に、突起70を有する。フラップ64の内面66上の突起70は、充電ポート62の内部形状に対応するように構成される。フラップの突起70を充電ポート62内に挿入させると、突起70の構造体がポート62内にぴったりと嵌合するので、水密シールが形成される。さらに、このようにぴったりと嵌合することにより、突起70が確実に、充電ポート62から滑り抜けないようになる。
【0124】
保護フラップ64は、軟質プラスチックから形成される。可撓性と防水性の両方がある任意の他の適切な材料を用いてもよい。
【0125】
本明細書に記載した実施の形態は、取り外し可能なハウジング8と、PCB10を有する端部キャップ60とを用いて説明したが、他の実施の形態では、そのようなハウジングと端部キャップ、それ故、およびPCBは、歯ブラシ6に恒久的に取り付けられてもよい。
【0126】
上述の管理指導機能は、オフライン・モードで作動するように説明したが、いくらかの実施の形態では、管理指導装置4がオンラインで外部装置に接続される場合は、ユーザに対して、外部装置に接続されている間に、上記管理指導機能がオンライン・モードで作動してフィードバックを提供する、もしくは、管理指導を行う。
【0127】
いくらかの実施の形態では、ユーザが装置4を手に取って、および装置4を置き戻して電源をオン、およびオフにする代わりに、ユーザは、歯ブラシの管理指導システム2をしっかりと振り動かしてもよい。歯ブラシのシステム2を振り動かすと、装置4のスリープ・モード中にバックグラウンドで作動している処理モジュール9が、その動作を検出する。処理モジュール9は、この動作がブラッシング動作に関連していないと認識し、その結果、処理モジュール9が管理指導装置4全体の動力を増加させる。その後、当該ユーザは、歯ブラシのシステム2を使い始めて、歯にブラシをかけることができる。同様に、そのユーザは、歯にブラシをかけ終えたときに装置4しっかりと振り動かすことにより、装置4の電源をオフにしたり、もしくは、装置4をスリープ・モードにさせたりできる。処理モジュール9が、上記動作がブラッシング動作に関連していないと再度認識し、その結果、もはや必要としない如何なるモジュールのスイッチもオフにする。
【0128】
いくらかの実施の形態では、多数の他のフィードバック指示がそれに対応するLED信号を用いて、歯ブラシの管理指導システム2内にプログラムされてもよい。図9に示す上記指示とそれに対応するLED信号は、典型例のみであり、それらの同一の指示に対して異なる信号、異なる指示や追加の指示、または異なる信号や追加の信号を用いてもよい。
【0129】
視覚フィードバックに加えて、歯ブラシの管理指導システム2のいくらかの実施の形態では、音声フィードバックを提供する。この場合では、歯ブラシの管理指導システム2は、上記フィードバック指示をユーザに通信するためのスピーカを備える。そのスピーカは、管理指導装置4内に配置されるが、ユーザがそのような音声指示を十分に聞くことができる、任意の他の適切な位置を利用してもよい。この音声フィードバックを、上記視覚フィードバックに付加することもできるし、もしくは、その代わりにもできる。音声フィードバックのいくらかの例では、「速さを緩めてください」、「範囲を変えてください」および「停止してください」などの指示を含む。
【0130】
さらに、いくらかの実施の形態では、振動フィードバックを提供する。この振動フィードバックは、上記視覚および/または音声フィードバックに付加して、もしくは、それらの代わりに提供される。いくらかの実施の形態では、振動、音声および視覚フィードバックの任意の組合せを用いて、管理指導の指示をユーザに提供する。振動フィードバックの場合では、歯ブラシの管理指導システム2は振動デバイスを備える。その振動デバイスは、管理指導装置4内に配置されるが、ユーザがそのような振動に気づくことができる、任意の他の適切な位置を利用してもよい。振動フィードバックのいくらかの例では、長いまたは短い振動パルス、または、それらの組合せを含む。
【0131】
いくらかの実施の形態では、ブラッシング・パラメータに関連している他のデータは、上述のブラッシングの概要に格納される。いくらかの実施の形態では、管理指導装置4は、その特定のブラッシング・セッションと結び付けられた総得点を記録して格納する。この総得点は、上述のフィードバック・デバイスから受信したリアルタイムの指示に対する追従の度合いに基づいている。良好なブラッシング・セッションを表す高レベルの追従は、高い総得点に対応する。不十分なブラッシング・セッションを表す低レベルの追従は、低い総得点に対応する。ユーザは、自身のブラッシング技術が異なるブラッシング・セッションの間でどれほど変わったかを一見して確かめることができる。これにより、ユーザは、自身のブラッシング技術が時間を経て改善しているか否かを容易に確認できる。
【0132】
いくらかの実施の形態では、連続した過去のブラッシング・セッションからのデータが上述の外部装置と一度同期したなら、その外部装置は、そのデータを分析する。次に、ユーザに対して、自身のブラッシング技術が時間と共にどれほど変わったかを示す多様なグラフおよび情報が渡される。管理指導装置4は、その内部メモリ16から外部装置と同期したデータを取り除く、もしくは、削除する。これにより、空間が空けられて、より多量のブラッシング・セッションを記録できるようになる。
【0133】
いくらかの実施の形態では、装置4がオンラインのときに、他のパラメータが更新されるが、上述の低域フィルタ24の1つ、あるいは2つ以上のどちらかに用いる遮断周波数を含む。ユーザに指示を与えるために用いる特定のフィードバックの応答も更新することができる。例えば、特定の活動に応答して用いる上述の光の色を更新できる。
【0134】
いくらかの実施の形態では、上述の充電可能なバッテリー、充電回路網およびPCB10は、その他の構成部品と共に、ハウジング8内に一体化されてもよい。その結果、端部キャップが電子部品を収納する必要がなくなる。この場合には、保護フラップ64はハウジング8の表面上に存在して、水が管理指導装置4に入るのを防止する。
【0135】
本発明の実施の形態を例としてのみ説明してきたが、細部の修正は当業者にとって明白であると理解されよう。例えば、1つの実施の形態の特徴は、任意の他の実施の形態と共に用いることができる。さらに、本発明はこれら実施の形態に限定されず、細部の変更が添付した請求の範囲内でなされることができる。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10