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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105140
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】結晶
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20230721BHJP
   A61K 31/497 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61K31/497
A61P43/00 111
A61P35/02
A61P35/00
A61P7/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093761
(22)【出願日】2023-06-07
(62)【分割の表示】P 2019545595の分割
【原出願日】2018-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2017187297
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004156
【氏名又は名称】日本新薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】冨士原 聡夫
(72)【発明者】
【氏名】ジョアンナ ビス
(72)【発明者】
【氏名】センシル クマー クサラクマリー スクマー
(57)【要約】
【課題】(S)-N-[1-(4-フルオロフェニル)エチル]-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-N-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2,6-ジアミン マレイン酸塩(以下、「化合物A」という。)の新規な結晶を提供すること。
【解決手段】Cu Kα放射線(入=1.54Å)を用いて得られる粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角(2θ)が6.9度、9.4度、12.5度、15.1度、16.4度、18.3度、19.0度、24.9度、25.4度、27.3度および27.7度に回折ピークを示す、化合物AのI型結晶。Cu Kα放射線(入=1.54Å)を用いて得られる粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角(2θ)が6.9度、9.2度、12.4度、14.8度、16.5度、18.1度、18.5度、19.8度、23.6度、24.9度および27.7度に回折ピークを示す、化合物AのII型結晶。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu Kα放射線(λ=1.54Å)を用いて得られる粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角(2θ)が6.9度、9.2度、12.4度、14.8度、16.5度、18.1度、18.5度、23.6度、24.9度および27.7度に回折ピークを示す、(S)-N-[1-(4-フルオロフェニル)エチル]-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-N-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2,6-ジアミン マレイン酸塩のII型結晶。
【請求項2】
示差走査熱量測定において、200土3℃である吸熱ピークを有する、(S)-N-[1-(4-フルオロフェニル)エチル]-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-N-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2,6-ジアミン マレイン酸塩のII型結晶。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の結晶を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の結晶を有効成分として含有するJAK2チロシンキナーゼ阻害剤。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の結晶を有効成分として含有する、真性多血症、本態性血小板血症、特発性骨髄線維症、続発性骨髄線維症、急性骨髄性白血病、続発性急性骨髄性白血病の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(S)-N-[1-(4-フルオロフェニル)エチル]-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-N-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2,6-ジアミン マレイン酸塩(以下、「化合物A」という。)の新規な結晶に関する。
【化1】
【背景技術】
【0002】
医薬品は、様々な流通や保管等の条件下でも長期間に渡って品質が保持される必要がある。したがって、有効成分となる化合物には、物理化学的に高い安定性が要求される。このため、医薬品の有効成分は、高い安定性が期待できる結晶が採用されることが一般的である。
医薬品の有効成分の結晶をスクリーニングする過程においては、結晶を得るための最適条件を見出すことが困難なだけではなく、結晶が得られた場合であっても、しばしば結晶多形の存在が問題となることが多い。その問題は、結晶形によって物理化学的な安定性に差異があることに起因する。
また、医薬品の有効成分として採用する結晶形の選択を誤れば、保管時の外部環境によって、純度の低下、結晶形転移等が起こり、化合物を一定の品質に維持することが困難となるため、結晶形によっては、薬効の低下や副作用等の不測の事態を招くことになる。このため、医薬品の有効成分となる化合物の結晶の取得に成功した場合には、その結晶多形について厳密な物理化学的な安定性に関する評価検討が必要とされる。
【0003】
しかしながら、化合物の構造から、結晶多形の有無または安定な結晶形を予測することは不可能であり、さらには結晶を形成できない化合物が存在する場合もあり、化合物毎に結晶を形成させる条件を種々検討する必要がある。
【0004】
一方、化合物Aについては、優れたJAK2チロシンキナーゼ阻害作用を有することから、種々の疾患への治療効果が期待されているが(例えば、特許文献1、特許文献2参照)、結晶多形の存在はおろか、そもそも結晶の形成の可否すら知られていないのが現状であり、最適な結晶の取得が医薬品として開発する上での重要な課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2010/090290A1
【特許文献2】WO2012/020787A1
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】L.Richeldi,et al.,2006,Leukemia,20,2210-2211
【非特許文献2】Peter J.Campbell,et al.,2006,New England Journal of Medicine,355,2452-2466
【非特許文献3】A Tefferi,et al.,2009,Leukemia,23,905-911
【非特許文献4】A Tefferi,et al.,2009,Leukemia,24,1302-1309
【非特許文献5】Robert Kralovics,et al.,2005,New England Journal of Medicine,352,1779-1790
【非特許文献6】Yana Pikman,et al.,2006,PLoS Medicine,3,1140-1151
【非特許文献7】Animesh D,et al.,2006,Blood,108,3472-3476
【非特許文献8】Lyne Valentino,et al.,2006,Biochemical Pharmacology,71,713-721
【非特許文献9】MM Ceesay,et al.,2006,Leukemia,20,2260-2261
【非特許文献10】C.Mullighan,et al.,2009,Proceedings of the National Academy of Science U.S.A,106,9414-9418
【非特許文献11】A.Gaikwad,et al.,2008,British Journal of Haematology,144,930-932
【非特許文献12】Ajoy K.Samanta,et al.,2006,Cancer Research,66,6468-6472
【非特許文献13】Cecile Meier,et al.,2009,Modern Pathology,22,476-487
【非特許文献14】Anja Mottok,et al.,2007,Blood,110,3387-3390
【非特許文献15】Anja Mottok,et al.,2009,Blood,114,4503-4506
【非特許文献16】Ingo Melzner,et al.,2005,Blood,105,2535-2542
【非特許文献17】Anas Young,et al.,2009,51st ASH ANNUAL MEETING AND EXPOSITION
【非特許文献18】Stefan Hert,et al.,2009,51st ASH ANNUAL MEETING AND EXPOSITION
【非特許文献19】L.Neilson,et al.,2007,Molecular Endocrinology,21,2218-2232
【非特許文献20】H.Yu,et al.,2009,Nature Reviews Cancer,9,798-809
【非特許文献21】H.Ogura,et al.,2008,Immunity,29,628-636
【非特許文献22】R.Catlett-Falcone,et al.,1999,Immunity,10,105-115
【非特許文献23】M.Narazaki,et al.,1994,Proceedings of the National Academy of Science U.S.A,91,2285-2289
【非特許文献24】P.Heinrich,et al.,2003,Biochemical Journal,374,1-20
【非特許文献25】M.Steiner,et al.,2009,Circulation Research,104,236-244
【非特許文献26】H.Alexander,et al.,2009,Biochemical Pharmacology,78,539-552
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、物理化学的安定性に優れる化合物Aの結晶を提供することおよび当該結晶を有効成分として含有する医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、化合物Aの結晶の形成に成功し、I型およびII型の結晶多形が存在することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明としては、例えば、下記(1)~(5)を挙げることができる。
(1)Cu Kα放射線(入=1.54Å)を用いて得られる粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角(2θ)が6.9度、9.4度、12.5度、15.1度、16.4度、18.3度、19.0度、24.9度、25.4度、27.3度および27.7度に回折ピークを示す、化合物BのI型結晶(以下、「本発明I型結晶」という。)、
(2)示差走査熱量測定において、203土3℃である吸熱ピークを有する本発明I型結晶、
(3)Cu Kα放射線(入=1.54Å)を用いて得られる粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角(2θ)が6.9度、9.2度、12.4度、14.8度、16.5度、18.1度、18.5度、19.8度、23.6度、24.9度および27.7度に回折ピークを示す、化合物BのII型結晶(以下、「本発明II型結晶」という。)、
(4)示差走査熱量測定において、200土3℃である吸熱ピークを有する本発明II型結晶、
(5)(1)~(4)のいずれか1つに記載の結晶を有効成分として含有する医薬組成物(以下、「本発明医薬組成物」という。)。
【0010】
本発明の実施例および特許請求の範囲における回折ピークの回折角2θを特定するときには、得られた値が当該値土0.2度の範囲内として、好ましくは当該値土0.1度の範囲内として理解すべきである。
また、本発明の実施例および特許請求の範囲における赤外吸収スペクトル(以下、「IRスペクトル」という。)の吸収ピークを特定するときには、得られた値が、当該値土2cm-1の範囲内として、好ましくは当該値土1cm-1の範囲内として理解すべきである。
また、本発明の実施例および特許請求の範囲における示差走査熱量計(以下、「DSC」という。)の吸熱ピークを特定するときには、得られた値が、当該値土3℃の範囲内として、好ましくは当該値土2℃の範囲内として理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明I型結晶の粉末X線回折スペクトルのチャートを示す。縦軸はピーク強度(cps)を、横軸は回折角(2θ[°])を表す。
図2】本発明II型結晶の粉末X線回折スペクトルのチャートを示す。縦軸はピーク強度(cps)を、横軸は回折角(2θ[°])を表す。
図3】本発明I型結晶を1分間に10℃ずつ温度を上昇させた場合のDSC測定のチャートを示す。縦軸は一秒あたり発熱量(mW)を示し(マイナスの場合は吸熱量)、横軸は温度(℃)を示す。
図4】本発明II型結晶を1分間に10℃ずつ温度を上昇させた場合のDSC測定のチャートを示す。図の縦軸は発熱量(mW)を示し(マイナスの場合は吸熱量)、横軸は温度(℃)を示す。
図5】本発明I型結晶のIRスペクトルのチャートを示す。縦軸は透過率(%)を、横軸は波数(cm-1)を表す。
図6】本発明II型結晶のIRスペクトルのチャートを示す。縦軸は透過率(%)を、横軸は波数(cm-1)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
A.本発明I型結晶
本発明I型結晶は、Cu Kα放射線(入=1.54Å)を用いて得られる粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角(2θ)が6.9度、9.4度、12.5度、15.1度、16.4度、18.3度、19.0度、24.9度、25.4度、27.3度および27.7度に回折ピークを示すことを特徴とする。また、好ましくは上記回折ピークに加え、19.6度、21.8度および23.5度の回折ピークを示すことを特徴とする。
また、本発明I型結晶は、赤外吸収スペクトル(KBr法)において、波数が1617cm-1、1509cm-1、1351cm-1、1224cm-1および866cm-1に吸収ピークを示すことを特徴とする。
また、本発明II型結晶は、示差走査熱量測定において、203℃である吸熱ピークを有することを特徴とする。
本発明I型結晶は、例えば、後述する実施例1に記載の方法により得ることができる。
【0013】
B.本発明II型結晶
本発明II型結晶は、Cu Kα放射線(入=1.54Å)を用いて得られる粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角(2θ)が6.9度、9.2度、12.4度、14.8度、16.5度、18.1度、18.5度、19.8度、23.6度、24.9度および27.7度に回折ピークを示すことを特徴とする。また、好ましくは上記回折ピークに加え、20.5度、21.2度および21.9度の回折ピークを示すことを特徴とする。
また、本発明II型結晶は、赤外吸収スペクトル(KBr法)において、波数が1617cm-1、1507cm-1、1350cm-1、1224cm-1および865cm-1に吸収ピークを示すことを特徴とする。
また、本発明II型結晶は、示差走査熱量測定において、200℃である吸熱ピークを有することを特徴とする。
本発明II型結晶は、例えば、後述する実施例2に記載の方法により得ることができる。
【0014】
C.医薬用途・本発明医薬組成物
本発明に係る化合物Aは、優れたJAK2チロシンキナーゼ阻害作用を有する(例えば、特許文献1参照)。
従って、本発明I型結晶および本発明II型結晶(以下、まとめて「本発明結晶」という。)または本発明医薬組成物は、例えば、がん[例えば、血液がん{例えば、真性多血症(例えば、非特許文献1参照。)、本態性血小板血症、特発性骨髄線維症(例えば、非特許文献2参照。)、続発性骨髄線維症(例えば、非特許文献3、4参照。)などの骨髄増殖性腫瘍(慢性骨髄増殖性疾患)(例えば、非特許文献5、6、7、8参照。)、骨髄異型性症候群(例えば、非特許文献9参照。)、急性リンパ性白血病(例えば、非特許文献10、11参照。)、急性骨髄性白血病(例えば、非特許文献8参照。)、続発性急性骨髄性白血病(例えば、非特許文献3、4参照。)、慢性骨髄性白血病(例えば、非特許文献12参照。)、多発性骨髄腫}(例えば、非特許文献8参照。)、悪性リンパ腫(例えば、非特許文献13-18)、固形癌{例えば、前立腺癌、乳癌(例えば、非特許文献19)}]、JAK2チロシンキナーゼを介して伝達されるIL-6が病態に関与する疾患{例えば、炎症性疾患(例えば、関節リウマチ、炎症性腸疾患、骨粗髭症、多発性硬化症)、血管障害(例えば、肺高血圧症や動脈硬化、動脈瘤、静脈瘤)}(例えば、非特許文献20-26参照。)の予防剤または治療剤として用いることができる。
【0015】
「悪性リンパ腫」としては、JAK2チロシンキナーゼが関与するリンパ腫であれば特に限定されるものではなく、例えば、再発難治性のものを含む、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫を挙げることができる。
「非ホジキンリンパ腫」としては、例えば、B細胞性リンパ腫またはNK/T細胞性リンパ腫を挙げることができる。
「ホジキンリンパ腫」としては、例えば、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、古典的ホジキンリンパ腫を挙げることができる。
「B細胞性リンパ腫」としては、例えば、前駆Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫/慢性リンパ性白血病、辺縁帯B細胞リンパ腫、節外性濾胞辺縁帯リンパ腫、牌濾胞辺縁帯リンパ腫、節性辺縁帯リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫を挙げることができる。
「NK/T細胞性リンパ腫」としては、例えば、前駆T細胞性リンパ芽球性白血病/リンパ腫、T細胞性前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、急速進行性NK細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、菌状息肉腫、セザリー症候群、原発性皮膚CD30陽性T細胞増殖性疾患、節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型、腸症型T細胞リンパ腫、肝牌T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫・非特異型、未分化大細胞リンパ腫を挙げることができる。
「続発性骨髄線維症」としては、例えば、真性多血症から続発した続発性骨髄線維症、本態性血小板血症から続発した続発性骨髄線維症を挙げることができる。
「続発性急性骨髄性白血病」としては、例えば、真性多血症から続発した続発性急性骨髄性白血病、本態性血小板血症から続発した続発性急性骨髄性白血病および骨髄線維症から続発した続発性急性骨髄性白血病を挙げることができる。
【0016】
本発明結晶は、医薬として投与する場合、そのまま、または医薬的に許容される無毒性かつ不活性の担体中に、例えば、0.1%~99.5%の範囲内で、好ましくは0.5%~90%の範囲内で含有する。
上記担体としては、固形、半固形または液状の希釈剤、充填剤、その他の処方用の助剤を挙げることができる。これらを一種または二種以上用いることができる。
【0017】
本発明医薬組成物は、固形または液状の用量単位で、末剤、カプセル剤、錠剤、糖衣錠、顆粒剤、散剤、懸濁剤、液剤、シロップ剤、エリキシル剤、トローチ剤等の経口投与製剤、注射剤、坐剤等の非経口製剤のいずれの形態をもとることができる。徐放性製剤であってもよい。それらの中で、特に錠剤等の経口投与製剤が好ましい。
末剤は、本発明結晶を適当な細かさにすることにより製造することができる。
散剤は、本発明結晶を適当な細かさにし、次いで同様に細かくした医薬用担体、例えば、澱粉、マンニトールのような可食性炭水化物と混合することにより製造することができる。任意に風味料、保存剤、分散剤、着色剤、香料等を添加することができる。
カプセル剤は、まず上述のようにして粉末状となった末剤や散剤あるいは錠剤の項で述べるように顆粒化したものを、例えば、ゼラチンカプセルのようなカプセル外皮の中へ充填することにより製造することができる。また、滑沢剤や流動化剤、例えば、コロイド状のシリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、固形のポリエチレングリコールを粉末状となった末剤や散剤と混合し、その後、充填操作を行うことにより製造することができる。崩壊剤や可溶化剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムを添加すれば、カプセル剤が摂取されたときの医薬の有効性を改善することができる。
また、本発明結晶の微粉末を植物油、ポリエチレングリコール、グリセリン、界面活性剤中に懸濁分散し、これをゼラチンシートで包んで軟カプセル剤とすることもできる。
錠剤は、粉末化された本発明結晶に賦形剤を加えて粉末混合物を作り、顆粒化またはスラグ化し、次いで崩壊剤または滑沢剤を加えた後、打錠することにより製造することができる。
粉末混合物は、適当に粉末化された本発明結晶を希釈剤や基剤と混合することにより製造することができる。必要に応じて、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール)、溶解遅延化剤(例えば、パラフィン)、再吸収剤(例えば、四級塩)、吸着剤(例えば、ベントナイト、カオリン)等を添加することができる。
顆粒は、まず粉末混合物を、結合剤、例えば、シロップ、澱粉糊、アラビカゴム、セルロース溶液または高分子物質溶液で湿らせ、攪拌混合し、これを乾燥、粉砕することによって製造することができる。このように粉末を顆粒化する代わりに、まず打錠機にかけた後、得られる不完全な形態のスラグを粉砕して顆粒にすることも可能である。このようにして作られる顆粒に、潤沢剤としてステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、ミネラルオイル等を添加することにより、互いに付着することを防ぐことができる。
また、錠剤は、上述のように顆粒化やスラグ化の工程を経ることなく、本発明結晶を流動性の不活性担体と混合した後に直接打錠することによっても製造することができる。
こうして製造された錠剤にフィルムコーティングや糖衣を施すことができる。シュラックの密閉被膜からなる透明または半透明の保護被膜、糖や高分子材料の被膜およびワックスよりなる磨上被膜をも用いることができる。
他の経口投与製剤、例えば、液剤、シロップ剤、トローチ剤、エリキシル剤もまたその一定量が本発明結晶の一定量を含有するような用量単位形態にすることができる。
シロップ剤は、本発明結晶を適当な香味水溶液に溶解して製造することができる。エリキシル剤は、非毒性のアルコール性担体を用いることにより製造することができる。
懸濁剤は、本発明結晶を非毒性担体中に分散させることより製造することができる。必要に応じて、可溶化剤や乳化剤(例えば、エトキシ化されたイソステアリルアルコール類、ポリオキシエチレンソルビトールエステル類)、保存剤、風味付与剤(例えば、ペパーミント油、サッカリン)等を添加することができる。
必要であれば、経口投与のための用量単位処方をマイクロカプセル化することができる。当該処方はまた、被膜をしたり、高分子、ワックス等中に埋め込んだりすることにより作用時間の延長や持続放出をもたらすこともできる。
非経口投与製剤は、皮下、筋肉または静脈内注射とした液状用量単位形態、例えば、溶液や懸濁液の形態をとることができる。当該非経口投与製剤は、本発明結晶の一定量を、注射の目的に適合する非毒性の液状担体、例えば、水性や油性の媒体に懸濁しまたは溶解し、次いで当該懸濁液または溶液を滅菌することにより製造することができる。また、安定剤、保存剤、乳化剤等を添加することもできる。
坐剤は、本発明結晶を低融点の水に可溶または不溶の固体、例えば、ポリエチレングリコール、カカオ脂、半合成の油脂[例えば、ウイテプゾール(登録商標)]、高級エステル類(例えば、パルミチン酸ミリスチルエステル)またはそれらの混合物に溶解または懸濁させて製造することができる。
【0018】
投与量は、体重、年齢等の患者の状態、投与経路、病気の性質と程度等によって異なるが、一般的には、成人に対して、本発明結晶の量として、1日あたり、0.001mg~100mgの範囲内が適当であり、0.01mg~10mgの範囲内が好ましい。
場合によっては、これ以下で足りるし、また逆にこれ以上の用量を必要とすることもある。また、1日1回から数回の投与または1日から数日間の間隔で投与することができる。
【0019】
D.化合物Aの製造
化合物Aは、例えば、特許文献1に記載の方法により製造することができるが、以下に記載の製法によっても製造することができる。
【0020】
【化2】
【0021】
工程1 2,6-ジクロロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジンの製造
パラジウム触媒および塩基存在下、2,6-ジクロロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジンと4-ヨード-1-メチル-1H-ピラゾールを反応させることにより、2,6-ジクロロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジンを製造することができる。本反応は、パラジウム触媒を用いたカップリング反応として公知の方法によって行うことができる。使用される反応溶媒としては、例えば、有機溶媒(例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル類またはこれらの混合溶媒)と水との混合溶媒を挙げることができる。使用されるパラジウム触媒としては、例えば、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリド ジクロロメタン錯体(以下、「PdCl(pddf)-CHCl」という。)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(以下、「Pd(PPh」という。)などが挙げられる。使用される塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。4-ヨード-1-メチル-1H-ピラゾールの使用量としては、例えば、2,6-ジクロロ-4-(4,4,5,5)テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジンに対して、1倍モル量~3倍モル量の範囲内が適当であり、好ましくは1倍モル量~2倍モル量の範囲内である。パラジウム触媒の使用量としては、例えば、2,6-ジクロロ-4-(4,4,5,5)テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジンに対して、0.02倍モル量~1倍モル量の範囲内が適当であり、好ましくは0.02倍モル量~0.03倍モル量の範囲内である。塩基の使用量としては、例えば、2,6-ジクロロ-4-(4,4,5,5)テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジンに対して、2倍モル量~10倍モル量の範囲内が適当であり、好ましくは3倍モル量~4倍モル量の範囲内である。反応温度は、使用する原料および試薬の種類によって異なるが、通常80℃~100℃の範囲内で行われる。反応時間は、使用する原料および試薬や溶媒の種類、反応温度によって異なるが、通常1時間~5時間の範囲内が適当である。
【0022】
工程2 化合物Aの製造
パラジウム触媒、リガンドおよび塩基存在下、2,6-ジクロロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジンと(S)-1-(4-フルオロフェニル)エチルアミンを反応させ、さらに2-アミノピリミジンを反応させた後、得られた化合物をマレイン酸塩とすることで化合物Aを製造することができる。
2,6-ジクロロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジンと(S)-1-(4-フルオロフェニル)エチルアミンと2-アミノピリミジンとの反応は、パラジウム触媒、リガンドおよび塩基を用いたカップリング反応として公知の方法によって行うことができる。使用される反応溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル類またはこれらの混合溶媒を挙げることができる。使用されるパラジウム触媒としては、例えば、酢酸パラジウム(以下、「Pd(OAc)」という。)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd(dba))、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(Pd(acac))、PdCl(pddf)-CHCl、Pd(PPhなどが挙げられる。使用されるリガンドとしては、例えば、(±)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(以下、「BINAP」という)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(X-Phos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(S-Phos)などが挙げられる。使用される塩基としては、例えば、t-ブトキシカリウム、メトキシカリウム、エトキシカリウム、t-ブトキシナトリウムまたはこれらの混合塩基が挙げられる。(S)-1-(4-フルオロフェニル)エチルアミンの使用量としては、例えば、2,6-ジクロロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジンに対して、1倍モル量~3倍モル量の範囲内が適当であり、好ましくは1倍モル量~2倍モル量の範囲内である。パラジウム触媒の使用量としては、例えば、2,6-ジクロロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジンに対して、0.02倍モル量~1倍モル量の範囲が適当であり、好ましくは0.02倍モル量~0.03倍モル量の範囲内である。リガンドの使用量としては、例えば、2,6-ジクロロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジンに対して、0.02倍モル量~1倍モル量の範囲が適当であり、好ましくは0.02倍モル量~0.03倍モル量の範囲内である。塩基の使用量としては、例えば、2,6-ジクロロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジンに対して、1倍モル量~3倍モル量が適当であり、好ましくは1倍モル量~1.5倍モル量の範囲内である。(S)-1-(4-フルオロフェニル)エチルアミンを反応させるときの温度としては、使用する原料および試薬の種類によって異なるが、通常55~65℃の範囲内が適当であり、反応時間としては、使用する原料および試薬や溶媒の種類、反応温度によって異なるが、通常1時間~5時間の範囲内が適当である。
2-アミノピリミジンの使用量としては、例えば、2,6-ジクロロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジンに対して、1倍モル量~3倍モル量の範囲内が適当であり、好ましくは1倍モル量~2倍モル量の範囲内である。2-アミノピリジンを反応液中に添加する際に、さらに塩基を追加してもよい。塩基の使用量としては、例えば、2,6-ジクロロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジンに対して、1倍モル量~3倍モル量が適当であり、好ましくは1倍モル量~1.5倍モル量の範囲内である。2-アミノピリジンを反応させるときの温度としては、使用する原料および試薬の種類によって異なるが、通常80~110℃の範囲内が適当であり、反応時間としては、使用する原料および試薬や溶媒の種類、反応温度によって異なるが、通常1時間~24時間の範囲内が適当である。
マレイン酸の使用量としては、例えば、2,6-ジクロロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジンに対して、1倍モル量~5倍モル量の範囲内が適当であり、好ましくは1倍モル量~3倍モル量の範囲内である。反応温度としては、通常50℃~60℃の範囲内が適当であり、反応時間としては、反応温度によって異なるが、通常1時間~24時間の範囲内が適当である。
【0023】
上記化合物Aの製法において原料として用いられる各化合物は、公知化合物であるか、または公知の方法に準じて製造することができる。
【実施例0024】
以下に、実施例、試験例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
【0025】
粉末X線回折スペクトルは、SmartLab((株)リガク製)(光学系:集中法、電圧:45kV、電流:200mA、波長:Cu Kα、ソーラースリット:5.0度、走査範囲:4~40度、走査速度:47.3度/分、試料回転:60度/分)により測定した。
IRスペクトルは、IR Affinity-1((株)島津製作所製)(測定モード:%Transmittance、積算回数:32回、分解:2.0、波数範囲:400~4000cm-1)により測定した。
DSCは、DSC-50((株)島津製作所製)(セル:アルミナ(オープン)、ガス:窒素(20.0mL/分)、加熱速度:10.0℃/分、ホールド温度:300℃、ホールド時間:0分)により測定した。
【0026】
実施例1 化合物Aの製造
2,6-ジクロロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン(35.6kg)のテトラヒドロフラン(213L)およびトルエン(106L)の懸濁液に、(S)-1-(4-フルオロフェニル)エチルアミン(23.9kg)、Pd(OAc)(1.75kg)および(±)-BINAP(6.3kg)を加え、60℃にて1時間撹拌した。さらにt-ブトキシカリウム(21.0kg)を加え、60℃にて1時間撹拌した。室温まで冷却後、2-アミノピリミジン(17.8kg)およびt-ブトキシカリウム(19.3kg)を加え、90℃にて5時間撹拌した。60℃まで冷却後、エチレンジアミン水溶液で有機層を洗浄後、溶媒を減圧下留去した。濃縮残湾に酢酸エチル(356L)を加え、55℃にてマレイン酸溶液(マレイン酸(21.7kg)を2-プロパノール(71L)に溶解したもの)を加え、55℃にて30分撹拌した。10℃以下まで冷却した後、1時間撹拌した。生じた析出物をろ過し、酢酸エチル(107L)で析出物を洗浄した。当該析出物を50℃にて減圧下乾燥し、目的化合物(35.9kg)を得た。
【0027】
実施例2 本発明I型結晶の製造
実施例1で製造した化合物A(35.9kg)とSi-Thiol(バイオタージ ジャパン社製)(1.76kg)および活性炭(1.84kg)をN,N-ジメチルホルムアミド(107L)に60℃にて溶解し、同温にて30分撹拌した。この溶液をろ過し、N,N-ジメチルホルムアミド(72L)で洗浄し、得られたろ液を減圧下で濃縮した。濃縮物に50℃にて酢酸エチル(539L)を加え、徐々に冷却し、10℃以下にて1時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、酢酸エチル(108L)で洗浄した。80℃にて減圧乾燥し、本発明I型結晶(31.6kg)を得た。
本発明I型結晶の粉末X線回折の測定、DSC測定およびIR測定の結果を、それぞれ図1図3および図5に示す。
回折角2θ: 6.9度、9.4度、12.5度、15.1度、16.4度、18.3度、19.0度、19.6度、21.8度、23.5度、24.9度、25.4度、27.3度および27.7度
IR吸収ピーク: 1617cm-1、1509cm-1、1351cm-1、1224cm-1および866cm-1
DSC吸熱ピーク: 203℃
【0028】
実施例3 本発明II型結晶の製造
実施例1で製造した化合物A(0.5g)を80%アセトン水溶液(4mL)に懸濁し、室温にて1時間撹拌した。懸濁液を濾過し、少量の80%アセトン水溶液で洗浄し、ろ液に水(40mL)を添加し、室温にて1日撹拌した。さらに混合液を濾過し、少量の水で洗浄し、ろ液を減圧濃縮してアセトンを留去した。濃縮後、濃縮液を室温にて1時間撹拌し、析出した結晶をろ取し、水で洗浄した。60℃にて減圧乾燥し、本発明II型結晶(0.13g)得た。
本発明II型結晶の粉末X線回折の測定、DSC測定およびIR測定の結果を、それぞれ図2図4および図6に示す。
回折角2θ: 6.9度、9.2度、12.4度、14.8度、16.5度、18.1度、18.5度、19.8度、20.5度、21.2度、21.9度、23.6度、24.9度および27.7度
IR吸収ピーク: 1617cm-1、1507cm-1、1350cm-1、1224cm-1および865cm-1
DSC吸熱ピーク: 200℃
【0029】
試験例1 種々溶媒での結晶化実験結果
本発明I型結晶(数mg)に各種溶媒を加え、以下の操作方法にて化合物Aの結晶を析出させ、析出した結晶に対して結晶形を確認した。操作方法1から4の結果を表1および表2に、操作方法4の結果を表3に示す。なお、表1~表3に記載の符号「-」は、析出物が得られなかったことを意味する。
【0030】
操作方法1:
本発明I型結晶に各種溶媒(50μL)を加えて懸濁し、4~40℃の間で冷却および昇温を2日間繰り返しながら撹拌した。
操作方法2:
本発明I型結晶に各種溶媒(50μL)を加えて40℃で溶解した。溶解しない場合は、不溶物を濾過し溶液とした。その溶液を4℃まで冷却し、3日間撹拌した。
操作方法3:
本発明I型結晶に各種溶媒(50μL)を加えて40℃で溶解した。溶解しない場合は、不溶物を濾過し溶液とした。室温でゆっくり溶媒を留去した。
操作方法4:
本発明I型結晶に各種溶解溶媒(最小容量)を加え飽和溶液を調製した。各種貧溶媒を添加した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】

上記のように、各種溶媒からの晶析では、本発明I型結晶が優先的に晶析し、本発明II型結晶は含水アセトン、含水エタノール、含水テトラヒドロフランのような医薬品原薬製造には使用しない含水系においてのみ晶析した。
【0034】
試験例2 安定性試験
化合物AのII型結晶をガラス瓶に入れ、密栓して90℃に保存した。1日、3日および7日後に試料を取出し、1mg/mlの濃度でメタノールに溶解してHPLCにて類縁物質測定を行うと共に、7日後の結晶については結晶形を確認した。その結果を表4に示す。
【0035】
【表4】

上記結果から、いずれの結晶形においても、化学的および物理的安定性が非常に高いことが明らかとなった。
【0036】
試験例3 溶媒媒介転移試験
化合物AのI型結晶に各溶媒を加えて室温にて24時間撹拌した後、不溶物を濾過して飽和溶液を調製した。それぞれの溶液にI型とII型の1:1混合結晶(約10mg)を添加し、室温にて5日間撹拌した。形成した結晶をろ取し、結晶形を確認した。その結果を表5に示す。
【0037】
【表5】

上記のように、各種結晶形の混合物は、室温におけるアセトニトリル、酢酸エチル、含水アセトン中において、5日後に全て本発明I型結晶に転移した。この結果から、本発明I型結晶は、各溶媒中において熱力学的に安定であることが明らかとなった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6