(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105245
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】流体透過性ヒーター組立品を持つエアロゾル発生システム
(51)【国際特許分類】
A24F 40/46 20200101AFI20230721BHJP
A24F 40/10 20200101ALI20230721BHJP
A24F 40/40 20200101ALI20230721BHJP
【FI】
A24F40/46
A24F40/10
A24F40/40
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095526
(22)【出願日】2023-06-09
(62)【分割の表示】P 2021202171の分割
【原出願日】2014-12-15
(31)【優先権主張番号】14154554.1
(32)【優先日】2014-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】ミロノフ オレグ
(72)【発明者】
【氏名】バティスタ ルイ ヌーノ
(57)【要約】
【課題】エアロゾル発生システムに適切なヒーター組立品を提供すること等。
【解決手段】流体透過性電気ヒーター組立品を備えたエアロゾル発生システムが提供されており、ヒーター組立品は、電気的に絶縁された基体と、電気的に絶縁された基体内に形成されている開口部と、電気的に絶縁された基体に固定された第一の面を持つヒーター要素とを含み、ヒーター要素は、開口部を横切って、また第一および第二の導電性接点部分に接続された複数の導電性フィラメントを含み、第一および第二の導電性接点部分は開口部の反対側に互いに向かい合って配置されているが、ここで第一および第二の導電性接点部分は外部電源と接触できるように構成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体透過性電気ヒーター組立品を備えたエアロゾル発生システムであって、前記ヒーター組立品が、
電気的に絶縁された基体と、
前記電気的に絶縁された基体内に形成されている開口部と、
前記電気的に絶縁された基体に固定されたヒーター要素とを含み、前記ヒーター要素が前記開口部を横切って、かつ第一および第二の導電性接点部分に接続された複数の導電性フィラメントを含み、前記第一および第二の導電性接点部分が互いに前記開口部の反対側に位置し、また前記複数の導電性フィラメントが隙間を形成し、前記フィラメントによって形成される前記隙間が75μm~25μmの幅を持ち、
前記第一および第二の導電性接点部分が外部電源と接触できるように構成されている、エアロゾル発生システム。
【請求項2】
複数の導電性フィラメントが前記ヒーター組立品の面積の10%~50%の面積を覆う、請求項1に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項3】
前記導電性フィラメントの電気抵抗が、前記接点部分の電気抵抗よりも少なくとも2桁大きい、請求項1または2に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項4】
前記ヒーター要素が前記電気的に絶縁された基体に固定された第一の面を持ち、かつ前記第一および第二の導電性接点部分が前記第一の面と反対にある前記ヒーター要素の第二の面にある外部電源と接触できるように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項5】
前記導電性フィラメントが実質的に平坦な面内にある、請求項1~4のいずれか1項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項6】
前記導電性フィラメントが互いに平行に配列されたフィラメントのアレイから成る、請求項1~5のいずれか1項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項7】
前記導電性フィラメントの面積が25mm2未満の、請求項1~6のいずれか1項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項8】
前記第一および第二の導電性接点部分が前記導電性フィラメントに固定された平面の接点部分を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項9】
前記ヒーター組立品が第一の材料でできた少なくとも一つのフィラメントおよび前記第一の材料とは異なる第二の材料でできた少なくとも一つのフィラメントを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項10】
液体エアロゾル形成基体を含むハウジングを含む液体貯蔵部分をさらに含み、前記ヒーター組立品が前記液体貯蔵部分の前記ハウジングに固定されている、請求項1~9のいずれか1項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項11】
前記システムが電気的に作動する喫煙システムである、請求項1~10のいずれか1項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項12】
エアロゾル発生システムでの使用に適した流体透過性電気ヒーター組立品を製造する方法であって、
電気的に絶縁された基体を提供する工程と、
基体に1つ以上の開口部を形成する工程と、
前記1つ以上の開口部の互いに反対側にある基体に、少なくとも2つの平面の導電性接点部分を提供する工程と、
前記少なくとも2つの平面の導電性接点部分の間に一つ以上の開口部に沿って延びる基体上に複数の導電性フィラメントを提供する工程とを含み、
前記複数の導電性フィラメントが隙間を形成し、また前記フィラメントによって形成された前記隙間が75μm~25μmの幅を持つ、方法。
【請求項13】
前記導電性フィラメントが実質的に平坦な面内にある、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記導電性フィラメントが互いに平行に配列されたフィラメントのアレイから成る、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記導電性フィラメントの面積が25mm2未満である、請求項12、13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を気化するのに適したヒーター組立品を含むエアロゾル発生システムに関連する。特に、本発明は、電気的に作動する喫煙システムなど、手持ち式のエアロゾル発生システムに関連する。
【背景技術】
【0002】
加熱してエアロゾルを形成することにより液体を気化する電気的に作動する喫煙システムは、一般に、液体を保持する毛細管材料の周りに巻かれたワイヤーのコイルを備える。ワイヤーを通過して電流は、毛細管材料内の液体を気化するワイヤーの抵抗加熱を引き起こす。毛細管材料は一般に、空気が芯を通って引き込まれ蒸気に混入されるように、気流経路内に保持される。その後、蒸気は冷却されエアロゾルを形成する。
【0003】
このタイプのシステムは、エアロゾルの生成については有効であり、また低コストかつ繰り返し可能な方法での製造には困難が伴う。また、芯およびコイル組立品は、関連付けられた電気的接続とともに、壊れやすく取扱いが困難となる可能性がある。
【0004】
製造が安価でありかつ丈夫な手持ち式電気的に作動する喫煙システムなど、エアロゾル発生システムに適切なヒーター組立品を提供することが望ましい。エアロゾル発生システムの先行するヒーター組立品よりも効率が良いヒーター組立品を提供することがさらに望ましい。
【発明の概要】
【0005】
一つの態様において、流体透過性電気ヒーター組立品を備えたエアロゾル発生システムが提供されており、ヒーター組立品は、電気的に絶縁された基体と、電気的に絶縁された基体内に形成されている開口部と、電気的に絶縁された基体に固定されたヒーター要素とを含み、ヒーター要素は、開口部を横切って、また第一および第二の導電性接点部分に接続された複数の導電性フィラメントを含み、第一および第二の導電性接点部分は開口部の反対側に互いに向かい合って配置されているが、ここで第一および第二の導電性接点部分は外部電源と接触できるように構成されている。
【0006】
複数の導電性フィラメントは、フィラメントのメッシュまたはアレイを形成してもよく、または織物または不織布を含んでもよい。
【0007】
有利なことに、ヒーター要素は、電気的に絶縁された基体に固定された第一の面を持ち、かつ第一および第二の導電性接点部分は、ヒーター要素の第一の面と反対の第二の面にある外部電源と接触できるように構成される。
【0008】
システムは、液体エアロゾル形成基体を含むハウジングを含む液体貯蔵部分をさらに備えうるが、ここでヒーター組立品は液体貯蔵部分のハウジングに固定される。ハウジングは剛直なハウジングであり、流体に対して不透過性であることが好ましい。本明細書で使用される場合、「剛直なハウジング」とは、自立型のハウジングを意味する。液体貯蔵部分の剛直なハウジングは、ヒーター組立品に対する機械的な支持を提供することが好ましい。
【0009】
液体貯蔵部分は、液体エアロゾル形成基体をヒーター組立品に伝達するよう構成された毛細管材料を備えうる。
【0010】
エアロゾル発生システムにこのタイプのヒーター組立品を提供することは、従来的な芯およびコイルの配置に比べていくつかの利点を持つ。フィラメントのメッシュまたはアレイを含むヒーター要素により、気化される液体と接触するヒーターの面積が大きくなる。ヒーター組立品は、容易に入手可能な材料を使用して、かつ大量生産技術を使用して安価に製造できる。ヒーター組立品は丈夫で、製造中の取扱いおよびエアロゾル発生システムの他の部品への固定が許容され、特に取り外し可能なカートリッジの部品を形成できる。ヒーター要素の部品を形成する導電性接点部分の提供により、信頼性がありかつ単純な電源へのヒーター組立品の接続が許容される。
【0011】
導電性フィラメントは、実質的に平坦としうる。本明細書で使用される場合、「実質的に平坦」とは、単一の平面内に形成され、かつ湾曲した形状またはその他の非平面形状に巻かれたりまたはその形状に適合するようになっていなかったりすることを意味する。平面のヒーター組立品は、製造時の取り扱いが簡単にでき、丈夫な構造が与えられる。
【0012】
導電性フィラメントはフィラメント間の隙間を画定でき、隙間の幅は10μm~100μmとしうる。フィラメントは、使用時に気化されることになる液体が隙間内に引き出されてヒーター組立品と液体の間の接触面積が増えるように、隙間内に毛細管作用を引き起こさせることが好ましい。
【0013】
導電性フィラメントは160~600メッシュUS(±10%)(すなわち、1インチ当たりのフィラメント数が160~600個(±10%))のサイズのメッシュを形成しうる。隙間の幅は75μm~25μmが好ましい。メッシュの合計面積に対する隙間の面積の配分量であるメッシュの開口部分の面積率は25~56%が好ましい。メッシュは異なるタイプの織物または格子の構造を使用して形成してもよい。別の方法として、導電性フィラメントは互いに平行に並べられた一連のフィラメントで構成される。
【0014】
導電性フィラメントのメッシュ、アレイまたは繊維はまた、当業界において周知の通り、液体を保持するその能力によって特性付けられうる。
【0015】
導電性フィラメントの直径は8μm~100μmとすることができ、8μm~50μmであることが好ましく、8μm~39μmであることがより好ましい。
【0016】
導電性フィラメントのメッシュ、アレイまたは繊維の面積は小さくすることができ、25mm2未満であり、手持ち式システムへの組み込みが許容されることが好ましい。導電性フィラメントのメッシュ、アレイまたは繊維は、例えば長方形で5mm×2mmの寸法を持つものでもよい。導電性フィラメントのメッシュまたはアレイは、ヒーター組立品の面積の10%~50%の面積を覆うことが好ましい。導電性フィラメントのメッシュまたはアレイは、ヒーター組立品の面積の15~25%の面積を覆うことがより好ましい。
【0017】
導電性フィラメントは、適切な任意の導電性材料を備えうる。適切な材料としては、ドープされたセラミックなどの半導体、「導電性」のセラミック(例えば、二ケイ化モリブデンなど)、炭素、黒鉛、金属、合金およびセラミック材料および金属材料でできた複合材料が挙げられるが、これに限定されない。こうした複合材料は、ドープされたセラミックまたはドープされていないセラミックを含む場合がある。適切なドープされたセラミックの例としては、ドープシリコン炭化物が挙げられる。適切な金属の例としては、チタン、ジルコニウム、タンタル、および白金族の金属が挙げられる。適切な合金の例としては、ステンレス鋼、コンスタンタン、ニッケル-、コバルト-、クロミウム-、アルミニウム-チタン-ジルコニウム-、ハフニウム-、ニオビウム-、モリブデン-、タンタル-、タングステン-、スズ-、ガリウム-、マンガン-および鉄を含有する合金、およびニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼系の超合金、Timetal(登録商標)、鉄-アルミニウム系合金および鉄-マンガン-アルミニウム系合金が挙げられる。Timetal(登録商標)は、Titanium Metals Corporationの登録商標である。フィラメントは、一つ以上の絶縁体で被覆されうる。導電性フィラメント用の好ましい材料は、304、316、304L、316Lステンレス鋼、および黒鉛である。
【0018】
ヒーター要素の導電性フィラメントのメッシュ、アレイまたは繊維の電気抵抗は、0.3~4オームであることが好ましい。導電性フィラメントのメッシュ、アレイまたは繊維の電気抵抗は、0.5~3オームであることがより好ましく、約1オームであることがより好ましい。導電性フィラメントのメッシュ、アレイまたは繊維の電気抵抗は、接点部分の電気抵抗よりも少なくとも1桁大きいことが好ましく、また少なくとも2桁大きいことがより好ましい。これにより、ヒーター要素から電流を通過させることにより発生した熱が確実に導電性フィラメントのメッシュまたはアレイに局在化される。システムの電源が電池である場合、ヒーター要素は全体的に低い抵抗を持つことが有利である。電気接点とメッシュまたはフィラメントの間の無駄な損失を最小化することも、無駄な電力損失を最小化するために望ましい。低抵抗で大電流のシステムにより、ヒーター要素に高電力を供給できる。これにより、ヒーター要素が導電性フィラメントを素早く望ましい温度に加熱できる。
【0019】
第一および第二の導電性接点部分は、導電性フィラメントに直接固定されうる。接点部分は導電性フィラメントと電気的に絶縁された基体の間に配置されうる。例えば、接点部分は、絶縁基体上にメッキされた銅箔から形成されうる。接点部分はまた、絶縁基体よりもフィラメントと簡単に結合しうる。
【0020】
別の方法として、第一および第二の導電性接点部分は、導電性フィラメントと一体型としうる。例えば、ヒーター要素は、導電性シートにエッチングを施して、二つの接点部分間に複数のフィラメントを提供することにより形成されうる。
【0021】
ヒーター組立品は、第一の材料から作製された少なくとも1つのフィラメントと、第一の材料とは異なる第二の材料から作製された少なくとも1つのフィラメントとを備えうる。これは、電気的なまたは機械的な理由から有益でありうる。例えば、一つ以上のフィラメントは、鉄アルミニウム合金など、温度に伴い著しく変動する抵抗を持つ材料から形成されうる。これにより、温度または温度変化を決定するために使用されるフィラメントの抵抗の測定ができる。これは、吸煙検出システム内で、ヒーターを望ましい温度範囲内に保つためにヒーター温度の制御に使用されることができる。
【0022】
電気的に絶縁された基体は、適切な任意の材料を備えうるが、高温(300℃を超える)および急激な温度変化に耐えることができる材料であることが好ましい。適切な材料の一例は、Kapton(登録商標)などのポリイミド膜である。
【0023】
エアロゾル形成基体はエアロゾルを形成できる揮発性化合物を放出する能力を持つ基体である。揮発性化合物はエアロゾル形成基体の加熱により放出されうる。
【0024】
エアロゾル形成基体は植物由来材料を含みうる。エアロゾル形成基体はたばこを含みうる。エアロゾル形成基体は加熱に伴いエアロゾル形成基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含む、たばこ含有材料を含みうる。別の方法として、エアロゾル形成基体は非たばこ含有材料を含みうる。エアロゾル形成基体は均質化した植物由来材料を含みうる。エアロゾル形成基体は均質化したたばこ材料を含みうる。エアロゾル形成基体は少なくとも一つのエアロゾル形成剤を含んでもよい。エアロゾル形成剤は、使用において密度の高い安定したエアロゾルの形成を容易にする、システム動作の使用温度で熱分解に対して実質的に抵抗性のある任意の適切な公知の化合物または化合物の混合物である。適切なエアロゾル形成剤は当業界で周知であり、多価アルコール(トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオールおよびグリセリンなど)、多価アルコールのエステル(グリセロールモノアセテート、ジアセテートまたはトリアセテートなど)、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸またはポリカルボン酸の脂肪族エステル(ドデカン二酸ジメチルおよびテトラデカン二酸ジメチルなど)を含むが、これに限定されない。好ましいエアロゾル形成体は多価アルコールまたはその混合物(トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオールおよびグリセリン(最も好ましい)など)である。エアロゾル形成基体は、その他の添加物および成分(風味剤など)を含みうる。
【0025】
毛細管材料は繊維質または海綿状の構造を有する場合がある。毛細管材料は一束の毛細管を含むことが好ましい。例えば、毛細管材料は複数の繊維もしくは糸、またはその他の微細チューブを含む場合がある。繊維または糸は、一般的に液体をヒーターに移動するように整列されたものとしうる。別の方法として、毛細管材料は海綿体様または発泡体様の材料を含む場合がある。毛細管材料の構造は複数の小さな穴またはチューブを形成し、それを通して液体が毛細管作用によって移動できる。毛細管材料は適切な任意の材料または材料の組み合わせを含みうる。適切な材料の例としては、海綿体または発泡体材料、繊維または焼結粉末の形態のセラミック系またはグラファイト系の材料、発泡性の金属またはプラスチックの材料、例えば紡がれたかまたは押し出された繊維(酢酸セルロース、ポリエステル、または結合されたポリオレフィン、ポリエチレン、テリレンまたはポリプロピレン繊維、ナイロン繊維またはセラミックなど)でできた繊維性材料がある。毛細管材料は異なる液体物理特性で使用されるように、適切な任意の毛細管および空隙率を有する場合がある。液体は毛細管作用により毛細管装置を通過して移動できるようにする粘性、表面張力、密度、熱伝導率、沸点および蒸気圧を含むがこれに限定されない物理的特性を持つ。
【0026】
毛細管材料は、導電性フィラメントと接触しうる。毛細管材料は、フィラメント間の隙間に延びうる。ヒーター組立品は、毛細管作用により液体エアロゾル形成基体を隙間に引き込みうる。毛細管材料は、実質的に開口部の全長にわたり、導電性フィラメントと接触しうる。
【0027】
ハウジングは、二つ以上の異なる毛細管材料を含みうるが、ここでヒーター要素と接触している第一の毛細管材料はより高い熱分解温度を持ち、第一の毛細管材料と接触しているが、ヒーター要素とは接触してない第二の毛細管材料はより低い熱分解温度を持つ。第一の毛細管材料は第二の毛細管材料がその熱分解温度を上回る温度に晒されないように、ヒーター要素を第二の毛細管材料から分離するスペーサーとしての役目を効果的に果たす。本明細書で使用される場合、「熱分解温度」は、材料が分解を始め、ガス状の副産物を発生することにより質量を損失する温度を意味する。第二の毛細管材料は、有利なことに第一の毛細管材料よりも大きな容積を占めうるが、また第一の毛細管材料よりも多くのエアロゾル形成基体を保持しうる。第二の毛細管材料は、第一の毛細管材料よりも優れた芯の性能を持ちうる。第二の毛細管材料は、第一の毛細管材料よりも安価であるか、または高い充填能力を持ちうる。第二の毛細管材料はポリプロピレンとしうる。
【0028】
第一の毛細管材料は、ヒーター組立品を第二の毛細管材料から少なくとも1.5mmの距離だけ分離しうるが、第一の毛細管材料を横切って十分な温度降下を提供するために、1.5~2mmであることが好ましい。
【0029】
導電性フィラメントを通過する空気の流れが気化された液体エアロゾル形成基体に混入されるように、液体貯蔵部分は導電性フィラメントの第一の側に位置し、気流チャネルは導電性フィラメントの反対側から液体貯蔵部分に位置しうる。
【0030】
システムは、ヒーター要素および電力電源に接続された電気回路をさらに備えうるが、電気回路は、ヒーター要素の、またはヒーター要素の一つ以上のフィラメントの電気抵抗をモニターし、ヒーター要素の電気抵抗または特に一つ以上のフィラメントの電気抵抗に依存して、電源からのヒーター要素への動力供給を制御するよう構成される。
【0031】
電気回路はマイクロプロセッサを備えうるが、これはプログラマブルマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または特定用途向けICチップ(ASIC)または制御能力を持つその他の電子回路としうる。電気回路はさらなる電子構成要素を備えうる。電気回路はヒーターへの動力供給を調節するよう構成しうる。電力はシステムの起動後、ヒーター要素に連続的に供給することも、毎回の吸煙ごとなど断続的に供給することもできる。電力は、電流パルスの形態でヒーター要素に供給されうる。
【0032】
システムはハウジングの本体内に電源(一般にリチウムイオンリン酸型電池などの電源)を備えることが有利である。別の方法として、電源はコンデンサーなど別の形態の電荷蓄積装置としうる。電源は再充電を要するものとすることができ、1回以上の喫煙体験のために十分なエネルギーの蓄積が許容される容量を持ちうる。例えば、電源は従来型の紙巻たばこ1本を喫煙するのにかかる一般的な時間に対応する約6分の時間、または6分の倍数の時間にわたるエアロゾルの連続的な生成を許容するのに十分な容量を持ちうる。別の例で、電源は所定の回数の吸煙、またはヒーターの不連続的な起動を許容する十分な容量を持ちうる。
【0033】
システムは、主要ユニットと、主要ユニットに取り外し可能なように結合されたカートリッジとを含みうるが、ここで液体貯蔵部分およびヒーター組立品がカートリッジ内に提供されており、また主要ユニットは電源を含む。本明細書で使用されるとき、カートリッジが装置に「取り外し可能なように結合された」とは、カートリッジおよび装置が、装置またはカートリッジのいずれも著しく損傷することなく、互いに結合および分離できることを意味する。
【0034】
システムは電気的に作動する喫煙システムとしうる。システムは手持ち式のエアロゾル発生システムでもよい。エアロゾル発生システムは従来型の葉巻たばこや紙巻たばこと匹敵するサイズを持ちうる。喫煙システムの全長は、およそ30mm~およそ150mmとしうる。喫煙システムの外径は、およそ5mm~およそ30mmとしうる。
【0035】
第二の態様において、電気的に絶縁された基体と、電気的に絶縁された基体内に形成されている開口部と、および開口部を横切って、かつ電気的に絶縁された基体に固定された第一の面を持つヒーター要素とを備えた流体透過性電気ヒーター組立品が提供されており、ヒーター要素は第一および第二の導電性接点部分に接続された複数の導電性フィラメントを含み、第一および第二の導電性接点部分は開口部の反対側に互いに向かい合って配置されているが、ここで第一のおよび第二の導電性の接点部分は外部電源と接触できるように構成されている。
【0036】
第三の態様において、エアロゾル発生システムで使用するために適した流体透過性電気ヒーター組立品を製造する方法が提供されており、その方法は、
電気的に絶縁された基体を提供する工程と、
基体に1つ以上の開口部を形成する工程と、
基体上に1つ以上の開口部全体にわたるヒーター要素を提供する工程とを含むが、ヒーター要素は複数の導電性フィラメントおよび互いに1つ以上の開口部の反対側に少なくとも2つの導電性接点部分を含む。
【0037】
第四の態様で、エアロゾル発生システムで使用するために適した複数の流体透過性電気ヒーター組立品を製造する方法が提供されており、その方法は、
電気的に絶縁された基体を提供する工程と、
基体に複数の開口部を形成する工程と、
基体上に複数の導電性接点部分を複数のそれぞれの開口部の互いに反対側に提供する工程と、
ヒーター組立品のアレイを提供するために、複数のそれぞれの開口部を横切って導電性接点部分間に延びる基体上に、複数の導電性フィラメントを提供する工程と、
ヒーター組立品のアレイから複数の個別のヒーター組立品を切断する工程とを含み、各ヒーター組立品は開口部の一つを含む。
【0038】
電気的に絶縁された基体は、柔軟なシート材料としうる。導電性接点部分および導電性フィラメントは、互いに一体型で形成されうる。
【0039】
一つの態様に関連して説明した特徴は、本発明の他の態様に適用されうる。特に、本発明の第一の態様のヒーター組立品に関連して説明した特徴は、本発明の第二の態様のヒーター組立品に同様に適用されうる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「導電性」は比抵抗が1×10-4Ωm以下の材料から形成されていることを意味する。本明細書で使用される場合、「絶縁性」は比抵抗が1×104Ωm以上の材料から形成されていることを意味する。ここで本発明の実施形態を、以下の添付図面を参照しながら、例証としてのみであるが説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1a】
図1aは、本発明の実施形態によりカートリッジが組み込まれたシステムの概略図である。
【
図1b】
図1bは、本発明の実施形態によりカートリッジが組み込まれたシステムの概略図である。
【
図1c】
図1cは、本発明の実施形態によりカートリッジが組み込まれたシステムの概略図である。
【
図1d】
図1dは、本発明の実施形態によりカートリッジが組み込まれたシステムの概略図である。
【
図2】
図2は、
図1のシステムのマウスピース部分用の留め金機構の概略図である。
【
図4】
図4は、
図1a~1dに示したシステムで使用するための代替的なカートリッジの分解図である。
【
図5b】
図5bは、カバーが取り除かれた、
図2のカートリッジの上面の斜視図である。
【
図6】
図6は、
図2に示すカートリッジで使用されるヒーター組立品の詳細図である。
【
図7】
図7は、
図2に示すカートリッジで使用されうる代替的なヒーター組立品の詳細図である。
【
図8】
図8は、
図2に示すカートリッジで使用されうるさらなる代替的なヒーター組立品の詳細図である。
【
図9】
図9は、
図2に示すカートリッジで使用されうる、なおもさらなる代替的なヒーター組立品の詳細図である。
【
図10】
図10は、装置とヒーター組立品との間で電気的接触をするための代替的な機構の詳細図である。
【
図11a】
図11aは、装置内でのカートリッジの正しい整列を確保するために使用されうる、いくつかのカートリッジハウジングの形状を図示したものである。
【
図11b】
図11bは、装置内でのカートリッジの正しい整列を確保するために使用されうる、いくつかのカートリッジハウジングの形状を図示したものである。
【
図12a】
図12aは、ヒーターのフィラメントの詳細図であり、フィラメント間の液体エアロゾル形成基体のメニスカスを示す。
【
図12b】
図12bは、ヒーターのフィラメントの詳細図であり、フィラメント間に延びる毛細管材料との間の液体エアロゾル形成基体のメニスカスを示す。
【
図13a】
図13aは、本発明によるヒーター組立品のための代替的な製造方法を図示する。
【
図13b】
図13bは、本発明によるヒーター組立品のための代替的な製造方法を図示する。
【
図13c】
図13cは、本発明によるヒーター組立品のための代替的な製造方法を図示する。
【
図14】
図14は、ヒーター組立品を組み込んだ液体貯蔵部分の代替的なデザインを図示する。
【
図15a】
図15aは、ヒーター組立品が組み込まれる液体貯蔵部分の追加的な代替的な実施形態を図示する。
【
図15b】
図15bは、ヒーター組立品が組み込まれる液体貯蔵部分の追加的な代替的な実施形態を図示する。
【
図16】
図16は、エアロゾル発生装置との、気流およびカートリッジの向きの代替的な実施形態を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1a~1dは、本発明の実施形態によるカートリッジを含む、エアロゾル発生システムの概略図である。
図1aは、エアロゾル発生装置10および別個のカートリッジ20の概略図であり、まとめて、エアロゾル発生システムを形成する。この例で、エアロゾル発生システムは電気的に作動する喫煙システムである。
【0043】
カートリッジ20は、エアロゾル形成基体を含み、装置内のくぼみ18内に受けられるように構成される。カートリッジ20は、カートリッジ内に提供されたエアロゾル形成基体が消耗した時に、ユーザーによって交換可能であるべきである。
図1aは、装置への挿入直前のカートリッジ20を示し、
図1aの矢印1は、カートリッジの挿入方向を示す。
【0044】
エアロゾル発生装置10は携帯型で、従来的な葉巻たばこまたは紙巻たばこに匹敵するサイズを持つ。装置10は、本体11およびマウスピース部分12を含む。本体11は、電池14(リン酸鉄リチウム電池など)、制御電子回路16およびくぼみ18を含む。マウスピース部分12は、ヒンジ付接続部21によって本体11に接続され、
図1に示す開位置と
図1dに示す閉位置との間で移動可能である。マウスピース部分12は、カートリッジ20の挿入および除去が許容されるように開位置に置かれ、また以下に説明するとおり、システムがエアロゾルの発生に使用される時に閉位置に置かれる。マウスピース部分は、複数の空気吸込み口13および出口15を含む。使用時に、ユーザーは出口を吸うかまたは吸入して、空気を空気吸込み口13からマウスピース部分を通して出口15に引き出し、その後、ユーザーの口または肺に入る。内部バッフル17は、以下に説明するとおり、マウスピース部分12を通してカートリッジを通過する空気の流れを強制するために提供される。
【0045】
くぼみ18は円形断面を持ち、カートリッジ20のハウジング24を受けるサイズである。電気コネクター19は、制御電子回路16および電池14とカートリッジ20の対応する電気接点との間に電気的接続を提供するために、くぼみ18の側部に提供される。
【0046】
図1bは、カートリッジがくぼみ18に挿入され、カバー26が除去された
図1aのシステムを示す。この位置で、電気コネクターは、以下に説明するとおり、カートリッジ上の電気接点に対して支えられている。
【0047】
図1cは、カバー26が完全に除去され、マウスピース部分12が閉位置に移動された
図1bのシステムを示す。
【0048】
図1dは、マウスピース部分12が閉位置にある
図1cのシステムを示す。マウスピース部分12は、
図2に概略的に図示した通り、留め金機能により閉位置に保持される。
図2は、ヒンジ付き接続部21によって接続された本体11およびマウスピース部分12を図示したものである。マウスピース部分12は、内向きに延びる歯8を含む。マウスピース部分が閉位置にある時、歯8が装置の本体にある留め金6に係合する。留め金6は、バイアスばね5によってバイアスがかけられ歯8と係合する。ボタン4は留め金6に固定される。ボタン4は、歯8を留め金6から解除するためにバイアスばね5の作用に逆らってユーザーが押すことができ、マウスピース部分が開位置に移動できるようになる。ここで、通常の技術を持つ当業者にとっては、マウスピースを閉位置に保持するためのスナップ式装着または磁気式クロージャーなどその他の適切な機構が使用されうることが明らかである。
【0049】
閉位置にあるマウスピース部分12は、システムの向きに関係なく、使用時に良好な電気的接続が維持されるように、カートリッジを電気コネクター19と電気的に接触した状態に保つ。マウスピース部分12は、マウスピース部分12が閉位置にある時に、カートリッジの表面と係合し、剛直なマウスピースハウジング要素とカートリッジとの間で圧縮される環状の弾性要素を含みうる。これにより、製作公差に関係なく、良好な電気的接続が維持される。
【0050】
当然、カートリッジと装置との間の良好な電気的接続を維持するためのその他の機構も、別の方法としてまたは追加的に採用されうる。例えば、カートリッジ20のハウジング24には、くぼみ18の壁内に形成された対応する溝またはねじ山(図示せず)と係合するねじ山または溝(図示せず)が提供されうる。カートリッジと装置の間のねじ山による係合を、正しい回転上の整列のほか、くぼみ内でのカートリッジの保持および良好な電気的接続の確保をするために使用できる。ねじ山による接続部は、カートリッジの半回転以下だけ延びてもよく、または数回転だけ延びてもよい。別の方法として、または追加的に、電気コネクター19は、
図8を参照しながら説明するとおり、カートリッジ上の接点と接触するように偏りを持たせうる。
【0051】
図3は、カートリッジ20の分解図である。カートリッジ20は、くぼみ18内に受けられるように選択されるサイズおよび形状を持つ一般的に円柱状のハウジング24を含む。ハウジングは、液体エアロゾル形成基体内に浸された毛細管材料22を含む。この例では、エアロゾル形成基体は、39重量パーセントのグリセリン、39重量パーセントのプロピレングリコール、20重量パーセントの水および風味剤、および2重量パーセントのニコチンを含む。毛細管材料は、液体を一方の端から他方に能動的に運ぶ材料であり、適切な任意の材料から製造されうる。この例では、毛細管材料はポリエステルから形成される。
【0052】
ハウジングは、ヒーター組立品30が固定される開放端を持つ。ヒーター組立品30は、その中に開口部35が形成された基体34と、基体に固定されかつギャップ33により相互に分離された一対の電気接点32と、開口部を横切って開口部35の反対側にある電気接点に固定された複数の導電性ヒーターフィラメント36とを含む。
【0053】
ヒーター組立品30は、取り外し可能なカバー26によって覆われる。カバーは、ヒーター組立品に接着されるが、簡単に剥がすことができる液体不透過性プラスチックシートを含む。剥がす時にユーザーがカバーを掴むことができるように、タブがカバーの側面に提供されている。接着は不透過性プラスチックシートをヒーター組立品に固定する方法として説明されているが、消費者によってカバーが簡単に除去されうる限り、ヒートシールや超音波溶接を含めた当業者に馴染みのあるその他の方法も使用されうることが、当業者には明らかとなろう。
【0054】
図4は、代替的な模範的カートリッジの分解図である。
図4のカートリッジは
図3のカートリッジと同一のサイズおよび形状であり、同一のハウジングおよびヒーター組立品を持つ。ところが、
図4のカートリッジ内の毛細管材料は
図3の毛細管材料とは異なる。
図4のカートリッジには別個の2つの毛細管材料27、28がある。第一の毛細管材料27のディスクが、使用中のヒーター要素36、32と接触するために提供されている。第二の毛細管材料28の大きい方の本体はヒーター組立品への第一の毛細管材料27の反対側に提供されている。第一の毛細管材料および第二の毛細管材料はどちらも、液体エアロゾル形成基体を保持する。ヒーター要素と接触する第一の毛細管材料27は第二の毛細管材料28よりもより高い熱分解温度(少なくとも160℃以上、例えば約250℃など)を持つ。第一の毛細管材料27は第二の毛細管材料がその熱分解温度を上回る温度に晒されないように、ヒーター要素36、32を第二の毛細管材料28から分離するスペーサーとしての役目を効果的に果たす。第一の毛細管材料全体での熱勾配は第二の毛細管材料がその熱分解温度を下回る温度に晒されるようにするためである。第二の毛細管材料28は第一の毛細管材料27への優れた芯の性能を持つものを選択でき、単位体積あたり第一の毛細管材料よりも多くの液体を保持でき、また第一の毛細管材料よりも安価なものとしうる。この例では第一の毛細管材料はガラス繊維またはガラス繊維を含む要素などの耐熱素子であり、また第二の毛細管材料は適切な毛細管材料などのポリマーである。模範的な適切な毛細管材料は、本明細書で考察した毛細管材料を含み、また代替的な実施形態では、高密度ポリエチレン(HDPE)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)が含まれうる。
【0055】
図5aは、
図3のカートリッジの下面の斜視図である。ヒーター組立品は、側方の平面内に延び、ヒーター組立品がハウジング24の上部の周りにリップを形成するようにハウジング24を超えて側方に延びることが
図5aからわかる。電気接点32の露出部分は、カートリッジがくぼみ18内に完全に挿入された時に、接点32の露出部分が電気コネクター19に接触するように、カートリッジの挿入方向を向く。剥がす時にユーザーがカバー26を掴むことができるようにカバーの側面に提供されているタブがはっきりと表示されている。
図5aはまた、装置のくぼみ内でのカートリッジの正しい向きを確保するためにカートリッジの基部に形成された位置決め部分25も図示している。位置決め部分25は、射出成形されたハウジング24の一部であり、くぼみ18の基部にある対応するスロット(図示せず)内に受けられるように構成されている。位置決め部分25がくぼみにあるスロット内に受けられる時、接点32はコネクター19と整列される。
【0056】
図5bは、カバーが取り除かれた、
図3のカートリッジの上面の斜視図である。ヒーターフィラメント36は、気化したエアロゾル形成基体がヒーター組立品を通過する気流内に抜け出すことができるように、基体34の開口部35を通して晒される。
【0057】
ハウジング24は、ポリプロピレンなどの熱可塑性物質から形成される。この例では、ヒーター組立品30はハウジング24に接着される。ところが、カートリッジを組み立てて充填するには考えられるいくつかの方法がある。
【0058】
カートリッジハウジングは射出成形により形成されうる。毛細管材料22、27、28は、毛細管繊維の長いロッドから適切な長さの毛細管材料を切断することにより形成されうる。ヒーター組立品は、
図11a、11bおよび11cに関連して説明した過程を使用して組み立てられうる。一つの実施形態で、カートリッジはまず1つ以上の毛細管材料22、27、28をハウジング24に挿入することにより組み立てられる。次に所定の体積の液体エアロゾル形成基体がハウジング24に導入され、毛細管材料を浸す。次に、ヒーター組立品30がハウジングの開放端に押し付けられ、接着、溶接、ヒートシール、超音波溶接、またはここで当業者にとって明らかとなるその他の方法によってハウジング24に固定される。任意の密封作業中、エアロゾル形成基体の望ましくない揮発を阻止するために、ハウジングの温度は160℃より低く保たれることが好ましい。毛細管材料は、ヒーター組立品によって圧縮されるまで、ハウジング24の開放端から出て延びるような長さに切断されうる。これにより、使用時にヒーター要素の隙間へのエアロゾル形成基体の搬送が促進される。
【0059】
別の実施形態で、ヒーター組立品30をハウジング24に加圧成形してから密封する代わりに、ヒーター組立品およびハウジングの開放端をまず急速加熱してから、ヒーター組立品30をまとめて圧迫してハウジング24に結合しうる。
【0060】
また、ハウジングをエアロゾル形成基体で充填する前にヒーター組立品30をハウジング24に組み立てて、エアロゾル形成基体をハウジング24に導入することも可能である。その場合に、ヒーター組立品は、説明した方法のうちどれかを使用してカートリッジに固定されうる。その後、ヒーター組立品またはハウジングには中空の針を使用して穴が開けられ、エアロゾル形成基体が毛細管材料22、27、28に注入される。次に、中空の針によってできた任意の開口部はヒートシールまたは密封テープを使用して密封される。
【0061】
図6は、本開示による第一のヒーター組立品30を図示したものである。ヒーター組立品は、304Lステンレス鋼から形成されたメッシュで、メッシュサイズが約400メッシュUS(1インチ当たり約400フィラメント)を持つものを備える。フィラメントは、約16μmの直径を持つ。メッシュは、ギャップ33によって相互に分離された電気接点32に接続され、約30μmの厚さを持つ銅箔で形成される。電気接点32は、約120μmの厚さを持つポリイミド基体34上に提供される。メッシュを形成するフィラメントは、フィラメント間の隙間を画定する。この例において、隙間は約37μmの幅を持つが、より大きいまたはより小さい隙間が使用されてもよい。これらの凡その寸法のメッシュを使用することで、隙間内にエアロゾル形成基体のメニスカスが形成され、ヒーター組立品のメッシュが毛細管作用によってエアロゾル形成基体を引き出す。メッシュの開いた部分の面積、すなわち、隙間の面積のメッシュの総面積に対する比は、25~56%が有利である。ヒーター組立品の全抵抗は約1オームである。大半の熱がメッシュによって生成されるように、メッシュがこの抵抗の大部分を提供する。この例において、メッシュは、電気接点32よりも100倍以上高い電気抵抗を持つ。
【0062】
基体34は電気的に絶縁され、またこの例では約120μmの厚さを持つポリイミドシートから形成される。基体は円形であり、8mmの直径を持つ。メッシュは長方形であり、5mmおよび2mmの辺の長さを持つ。これらの寸法により、従来の紙巻たばこまたは葉巻たばこと類似したサイズおよび形状を持つ完全なシステム製造されるようになる。有効さが判明している別の寸法の例は、直径5mmの円形の基体および1mm×4mmの長方形のメッシュである。
【0063】
図7は、本開示による代替的な模範的ヒーター組立品を図示したものである。
図7のヒーター組立品は
図6に示すものと同じであるが、メッシュ36は平行な導電性フィラメント37のアレイによって置き換えられる。フィラメント37のアレイは、304Lステンレス鋼から形成され、約16μmの直径を持つ。基体34および銅接点32は
図6を参照しながら説明したとおりである。
【0064】
図8は、本開示による代替的な別のヒーター組立品を図示したものである。
図8のヒーター組立品は
図7に示すものと同じであるが、
図8の組立品においては、フィラメント37が基体34に直接結合されてから接点32がフィラメント上に結合される。接点32は、以前と同様に絶縁ギャップ33により相互に分離されており、厚さ約30μmの銅箔から形成される。
図6に示すとおり、メッシュタイプのヒーターについても、同じ配列の基体フィラメントおよび接点が使用されうる。最も外側の層として接点を持つことは、電源との信頼できる電気接点を提供する上で有益でありうる。
【0065】
図9は、本開示による代替的なヒーター組立品を図示したものである。
図9のヒーター組立品は、電気接点39と一体型で形成された複数のヒーターフィラメント38を備える。フィラメントおよび電気接点のどちらも、エッチングが施されてフィラメント38が画定されているステンレス鋼スチール箔から形成される。接点39は、フィラメント38によってつながれた時を除きギャップ33によって分離される。ステンレス鋼スチール箔がポリイミド基体34上に提供される。ここでも、大半の熱がフィラメントによって生成されるように、フィラメント38はこの抵抗の大部分を提供する。この例において、フィラメント38は、電気接点39よりも100倍以上高い電気抵抗を持つ。
【0066】
図3、
図4、
図5に示すカートリッジにおいて、接点32およびフィラメント36、38は、基体層34とハウジング24の間に位置する。ところが、ヒーター組立品は、ポリイミド基体がハウジング24に直接隣接するように、カートリッジハウジングに逆に取り付けることも可能である。
図10はこのタイプの配置を図示したものである。
図10は、銅箔接点52に固定されたステンレス鋼メッシュ56を含むヒーター組立品を示す。銅接点52はポリイミド基体54に固定される。開口部55はポリイミド基体54内に形成される。ポリイミド基体はカートリッジのハウジング24に溶接される。エアロゾル形成基体に浸された毛細管材料22がハウジングに充填され、開口部を通して延びてメッシュ55に接触する。カートリッジは装置の本体11に受けられ、電気コネクター59とマウスピース部分12との間に保持された状態で表示されている。この実施形態において、電気コネクター59が接点52と電気的接続をするために、図示したとおり、コネクター59はポリイミド基体54に穴を開けるように適合される。電気コネクターは、端部を鋭くして作成され、ばね57によってヒーター組立品と強制的に接触させられる。ポリイミド基体は、良好な電気接点を確保するために予めスコア線を入れてもよく、さらには基体の穴開けが不要なように開口部を提供してもよい。また、ばね57は、重力に対するシステムの向きに関係なく、接点52とコネクター59との間の良好な電気接点が維持されるように確保する。
【0067】
装置のくぼみ18内でのカートリッジ20の正しい向きを確保する一つの手段については、
図5aおよび5bを参照しながらすでに説明した。位置決め部分25は、正しい向きを確保するために、成形したカートリッジハウジング24の一部として形成できる。ところが、カートリッジの正しい向きを確保するその他の方法が可能であることが明らかとなる。特に、ハウジングが射出成形された場合、カートリッジの形状についてはほとんど無限の可能性がある。カートリッジの望ましい内部体積がいったん選択されると、カートリッジ形状は任意のくぼみに適するように適合されうる。
図11aは、考えられる1つのカートリッジハウジング70の底面図であり、考えられる2つの向きに方向付けられる。カートリッジハウジング70は、対称的に配置された2つの溝72を含む。溝は、ハウジング70の上側に部分的または全体的に延びる。対応するリブ(図示せず)は、カートリッジがくぼみ内に考えられる2つの向きのみで受けられるように、装置のくぼみの壁に形成されうる。
図11aの実施形態において、溝72の一つがリブによって充填されず、かつ装置内で空気の流れチャネルとして使用できるように、くぼみ内に単一のリブのみを持つことも考えられる。当然、ハウジング内に単一の溝のみを提供することにより、カートリッジをくぼみ内で単一の向きに制限することも可能である。これについては
図11bに図示されており、これは単一の溝76を持つカートリッジハウジング74を示す。
【0068】
説明した実施形態は、実質的に円形の断面を持つハウジングを備えたカートリッジを持つが、長方形の断面または三角形の断面などその他の形状を持つカートリッジハウジングを形成することも当然ながら可能である。これらのハウジング形状であれば、対応する形状のくぼみ内での望ましい向きが確保され、装置とカートリッジの間の電気的接続が確保されることになる。
【0069】
毛細管材料22は、ハウジング24内で液体をヒーター組立品30に運ぶのに有利に方向付けられる。カートリッジが組み立てられる時、ヒーターフィラメント36、37、38は毛細管材料22と接触でき、そのためエアロゾル形成基体はメッシュヒーターに直接運搬されることができる。
図12aは、ヒーター組立品のフィラメント36の詳細図であり、ヒーターフィラメント36間の液体エアロゾル形成基体のメニスカス40を示す。ヒーター組立品により発生されたほとんどの熱がエアロゾル形成基体内に直接入るように、エアロゾル形成基体はそれぞれのフィラメントのほとんどの表面に接触することがわかる。対照的に、従来的な芯およびコイルヒーター組立品では、ヒーターワイヤーのごく小さな部分がエアロゾル形成基体と接触する。
図12bは、
図12aと同様に、フィラメント36間の隙間内に延びる毛細管材料27の例を示す詳細図である。毛細管材料27は、
図4に示す第一の毛細管材料である。フィラメント36間の隙間内に延びる細かい糸の繊維を含む毛細管材料を提供することにより、フィラメントへの液体の搬送が確保できることがわかる。
【0070】
使用時に、ヒーター組立品は抵抗加熱により動作する。電流は、制御電子回路16の制御に基づき、フィラメント36、37、38を通過し、フィラメントを望ましい温度範囲内に加熱する。フィラメントのメッシュまたはアレイは、高い温度がフィラメントに局所化されるように電気接点32および電気コネクター19よりも著しく高い電気抵抗を持つ。システムは、ユーザーの吸煙に応答して電流をヒーター組立品に供給することにより熱を発生するように構成されてもよく、または装置が「オン」状態にある間に熱を連続的に発生させるよう構成されてもよい。フィラメント用の異なる材料が、異なるシステムで適切でありうる。例えば、連続的加熱システムでは、比較的低い比熱容量を持ち低電流の加熱と両立しうるため、黒鉛フィラメントが適切である。高電流パルスを使用した短時間のバーストで熱が発生される吸煙により作動するシステムでは、高い比熱容量を持つステンレス鋼フィラメントがより適切でありうる。
【0071】
吸煙により作動するシステムでは、装置は、マウスピース部分を通してユーザーが空気を吸い込んだ時を検出するよう構成された吸煙センサーを含みうる。吸煙センサー(図示せず)は制御電子回路16に接続され、制御電子回路16は、ユーザーが装置で喫煙していることが判断された時にのみ電流をヒーター組立品30に供給するよう構成される。マイクロホンなど、適切な任意の空気流センサーが吸煙センサーとして使用されうる。
【0072】
考えられる実施形態において、一つ以上のフィラメント36、38の比抵抗または全体としてヒーター要素の比抵抗の変化が、ヒーター要素の温度の変化を検出するために使用されうる。これは、望ましい温度範囲内に維持されるように、ヒーター要素に供給される電力の調整のために使用されることができる。急激な温度の変化も、システムのユーザーの喫煙に起因するヒーター要素を通過する空気の流れの変化を検出する手段として使用されうる。一つ以上のフィラメントは、専用の温度センサーとすることができ、鉄アルミニウム合金、ニッケルクロム、プラチナ、タングステンまたは合金ワイヤーなど、その目的で適切な抵抗の温度係数を持つ材料から形成されうる。
【0073】
システムが使用されている時にマウスピース部分を通過する空気の流れを
図1dに示す。マウスピース部分は、マウスピース部分の外壁と一体型で成形され、かつ空気が入口13から出口15に引き込まれる時に、エアロゾル形成基体が気化されるカートリッジにあるヒーター組立品30上を流れるようにする内部バッフル17を含む。空気がヒーター組立品を通過する時、気化された基体は気流に混入し、出口15から出る前に冷却されてエアロゾルを形成する。従って、使用時、エアロゾル形成基体は、それが気化される際にフィラメント36、37、38間の隙間を通過することにより、ヒーター組立品を通過する。
【0074】
ヒーター組立品の製造および材料については、数多くの可能性がある。
図13aは、ヒーター組立品の第一の製造方法の概略図である。ポリイミド膜80のロールには、その内部に開口部82のアレイが提供されている。開口部82はスタンピングにより形成されうる。銅箔84の帯がポリイミド膜80上の開口部の間にメッキされる。次に、ステンレス鋼メッシュ86のリボンが、銅箔の帯と直交する方向に銅箔84の上から開口部82を覆ってポリイミド膜80にクラッディングされる。次に、個別のヒーター組立品30は、それぞれの開口部82の周りで切断またはスタンピングが可能である。各ヒーター組立品30は、開口部の反対側に電気接点を形成する銅箔の部分を含み、ステンレス鋼メッシュの細片は、
図6に示す通り、銅の一方の部分から他方の部分まで開口部全体にわたる。
【0075】
図13bは考えられる別の製造工程を図示したものである。
図13bの工程において、
図13aの工程で使用されているタイプのポリイミド膜80は、ステンレス鋼スチール箔90でクラッディングされる。ポリイミド膜80は、その内部に形成された開口部82のアレイを持つが、これらの開口部はステンレス鋼スチール箔90によって覆われる。次に、箔90がエッチングされ、開口部82全体にわたるフィラメント38を画定し、開口部の反対側に接点部分を分離する。次に、個別のヒーター組立品92は、それぞれの開口部82の周りで切断またはスタンピングが可能である。これにより、
図9に示すタイプのヒーター組立品が提供される。
【0076】
図13cは、さらなる代替的な過程を図示する。
図13cの工程において、黒鉛ベースの繊維100がまず準備される。黒鉛ベースの繊維100は、ヒーターフィラメントとしての使用に適し、比較的非伝導性の繊維の帯に隣接した、電気抵抗性のある繊維の帯を含む。これらの繊維の帯は、抵抗性で非導電性の繊維と直角をなして延びる比較的導電性の繊維の帯と一緒に織られる。次に、この繊維100は、
図13aおよび13bを参照しながら説明したタイプの、開口部82のアレイを持つポリイミド膜80の層に結合される。次に、個別のヒーター組立品102は、それぞれの開口部の周りで切断またはスタンピングが可能である。各ヒーター組立品102は、開口部の反対側に導電性繊維の帯の部分および開口部にわたる電気抵抗性のある繊維の帯を含む。
【0077】
図5aおよび5bに示すカートリッジ設計は、いくつかの利点を持つ。ところが、同じタイプのヒーター組立品を使用した代替的なカートリッジ設計も可能である。
図14は、システムを通る異なるパターンの気流に適した代替的なカートリッジ設計を図示したものである。
図14に示す実施形態において、カートリッジ108は、矢印110によって示される方向に装置に挿入されるように構成される。カートリッジ108は、半円筒のような形状で、一方が開放されているハウジング112を含む。ヒーター組立品114は、開放側全体にわたり提供され、ハウジング112に接着または溶接される。ヒーター組立品114は、その中に開口部が形成されたポリイミドなどの電気的に絶縁された基体116を含む。ステンレス鋼メッシュ118および一対の接点細片120を含むヒーター要素は、電気的に絶縁された基体116に結合され、開口部全体にわたる。接点細片120は、ハウジング112の周りで曲げられ、ハウジングの曲面に接点パッドを形成する。電気接点パッドは、エアロゾル発生装置内の対応する接点(図示せず)と接触するように構成されている。ハウジング112は、
図1a~1dで示した実施形態を参照しながら説明した通り、エアロゾル形成基体に浸された毛細管材料(
図14には図示せず)で充填される。
【0078】
図14に示したカートリッジは、ヒーター組立品114を矢印110と反対方向に通過する気流に合わせて構成されている。空気は、装置の本体に提供された空気吸込み口を通してシステムに引き込まれ、ヒーター組立品114を通して、装置(またはカートリッジ)のマウスピース部分に吸い込まれ、ユーザーの口に入る。システムに引き込まれる空気は、例えば、適切に空気吸込み口を配置することにより、メッシュ118に沿って平行な方向に方向付けしうる。
【0079】
カートリッジ108の代替的な実施形態を
図15aおよび15bに図示する。
図15aはさらに、メッシュ118を持つ面と間隙を介し、その長さ方向に延びる接点細片120を含む。
図15bはさらに、およそL字型をした接点120を含む。
図15aおよび15bに図示されている両方のカートリッジ設計は、必要に応じて接点19との簡単な接触をさらに確保する、さらに大きな接触面積を提供するために使用されうる。
図15aに図示されている細片120はまた、カートリッジをさらに位置付ける細片120を受けるためのレール構成(図示せず)で構成された接点19内にスライドするよう構成されうる。こうしたレールタイプの構成は、カートリッジの挿入および除去がレールにスライドして出たり入ったりする接点の摩擦によって清掃効果を持つことになるため、接点19の定期的な掃除を有利にも提供しうる。
【0080】
図16は、流体透過性電気ヒーター組立品を備えたエアロゾル発生システムのなおも別の実施形態を図示する。
図16は、ヒーター組立品30がマウスピース部分12とは反対の、カートリッジ20の端部に提供されているシステムを図示する。気流は、空気吸込み口1601に入り、組立品のそばを、空気出口1603を通して、流れ経路1605に沿って通過する。電気接点を都合の良い位置に配置しうる。こうした構成は、システム内で短めの電気的接続が許容されるために有利である。
【0081】
当業者であれば、本開示によるヒーター組立品を組み込んだその他のカートリッジ設計を考案することができるだろう。例えば、カートリッジはマウスピース部分を含んでもよく、複数のヒーター組立品を含んでもよく、望ましい任意の形状を持つものでよい。その上、本開示によるヒーター組立品は既に説明したその他のタイプのシステムで使用することができ、これには加湿器、エアフレッシュナー、およびその他のエアロゾル発生システムなどがある。
【0082】
上述の例示的な実施形態は例証するが限定はしない。上記で考察した例示的な実施形態に照らすことにより、上記の例示的な実施形態と一貫したその他の実施形態は今や当業者には明らかとなろう。