(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105251
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】エクオール含有組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/22 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
C12P7/22 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095701
(22)【出願日】2023-06-09
(62)【分割の表示】P 2022112258の分割
【原出願日】2014-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 眞丈
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 輝之
(57)【要約】
【課題】実質的にアレルゲンを含まないエクオール含有組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】(1)イソフラボン類を、前記イソフラボン類をアグリコンに変換する酵素で処理する工程、(2)前記工程(1)で得られた前記アグリコンを含有する培地で嫌気性微生物を培養し、前記嫌気性微生物により、前記アグリコンをエクオールに変換する工程、及び、(3)前記工程(2)で産生された前記エクオールを含有するエクオール含有組成物を、前記培地から回収する工程、を含む、エクオール含有組成物の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)イソフラボン類を含むマメ科植物の植物体を、前記イソフラボン類をアグリコンに変換する酵素で処理して酵素処理液を得、アグリコンを含有する前記酵素処理液を嫌気性微生物により発酵して、前記アグリコンをエクオールに変換する工程、及び、
(2)前記工程(1)で産生された前記エクオールを含有するエクオール含有組成物を、前記発酵することにより得られた発酵液から回収する工程、
を含む、実質的にアレルゲンを含まないエクオール含有組成物の製造方法
(ただし、大豆を洗浄後、130℃で20分間高圧蒸気で蒸煮し、柔らかくなった大豆に納豆菌もしくは麹菌をかけて1日発酵させ、この工程で、納豆菌もしくは麹菌の産生するβグルコシダーゼによって、配糖体のダイジンをダイゼインへと変換し、嫌気環境に移して、予め培養したdo03株(AHU-1763)(FERM AP-20905)の培養液をかけて、1日発
酵を進める、エクオール高含有の大豆食品素材の製造方法を除く。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エクオール含有組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆には多くの大豆イソフラボン類が含まれており、これらイソフラボン類は、女性ホルモン作用(エストロゲン)や抗酸化作用を有し、イソフラボン類を摂取することにより、乳癌、前立腺癌、骨粗しょう症、高コレステロール血症、心疾患、更年期障害などに対して予防効果があることが明らかにされている(非特許文献1~6)。
【0003】
ところが一方で、大豆は日本の5大アレルギー食品の一つに挙げられており、大豆アレルギーは、大豆に含まれる貯蔵タンパク質中のアレルゲンタンパク質が原因で起こることが分かっている。1992年時点で、16種類の大豆アレルゲンタンパク質が同定されているが、アレルギーの出現頻度の高い主要アレルゲンは、Gly m Bd 30K、Gly m Bd 60K(7Sグロブリンα-サブユニット)およびGly m Bd 28Kであるとみられている。(非特許
文献7)。そのため、大豆アレルゲンを低減化した大豆加工食品などの開発がなされている(特許文献1~3)。
【0004】
近年の研究で、大豆をそのまま粉末化してイソフラボン類を測定すると、表1に示す12種類のイソフラボン類が存在し、そのうちダイジン、マロニルダイジン、ゲニスチン、マロニルゲニスチンが大部分を占めることが明らかにされた(非特許文献8)。
【0005】
【0006】
更に、この大豆イソフラボン類における、上記女性ホルモン作用や抗酸化作用を発揮するための重要な活性本体は、ダイジンが体内で代謝されて、下記のように、ダイゼインからジヒドロダイゼインを経て生成するエクオールに主に由来することが分かってきた。すなわち、大豆内の主なイソフラボン類であるダイジンは、大豆中では糖と結合した配糖体の形で存在するが、この配糖体は、ヒトや動物の体内に入ると消化酵素又は腸内細菌の産生する酵素であるβ-グルコシダーゼ等の働きにより、ジヒドロダイゼインを経て、O-デスメチルアンゴレンシン又はエクオールへと酵素的に変換され、特に、エクオールはエストロゲン活性が高いことが知られている(非特許文献9及び10)。
【0007】
【0008】
ところが、人が大豆を食べても、その中に含まれるダイゼインを有効なエクオールにまで代謝する能力には個人差があり、日本人で約5割、欧米人で約3割程度の人しか代謝できないことも明らかとなっている(非特許文献11及び12)。そのため、代謝のできない人が、有効成分であるエクオールを直接摂取することができるように、エクオールを含有する大豆発酵物などが開発されており、そのうち大豆アレルゲンが低減されているものも開発されている(特許文献4~6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7-236427号公報
【特許文献2】特開2008-220301号公報
【特許文献3】特開2003-274900号公報
【特許文献4】特許5030790号
【特許文献5】特開2012-228252号公報
【特許文献6】特開2012-161323号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Adlercreutz, H., The Lancet Oncol., 3, 364-373 (2002)
【非特許文献2】Duncan, A. M. et al., Best Pract. Res. Clin. Endocrinol. Metab., 17, 253-271 (2003)
【非特許文献3】Wu, A. H. et al., Carcinogenesis, 23, 1491-1496 (2002)
【非特許文献4】Yamamoto, S. et al., J. Natl. Cancer Inst., 95,906-913 (2003)
【非特許文献5】Onozawa, M. et al., Jpn. J. Cancer Res., 90, 393-398 (1999)
【非特許文献6】Ridges, L. et al., Asia Pac. J. Clin. Nutr., 10, 204-211 (2001)
【非特許文献7】小川正・辻英明・板東紀子(1992)大豆たん白質栄養研究会会誌 Vol.13:86-91
【非特許文献8】Japan Food Research Laboratories, No.42 Sep., 1-2 (2005)
【非特許文献9】Schmitt, E. et al., Toxicol. In Vitro, 15, 433-439 (2001)
【非特許文献10】Sathyamoorthy, N. and Wang, T. T., Eur. J. Cancer, 33, 2384-2389 (1997)
【非特許文献11】Arai, Y. et al., J. Epidemiol., 10, 127-135 (2000)
【非特許文献12】Setchell, K. D. et al., J. Nutr., 133, 1027-1035 (2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ダイゼインを有効なエクオールにまで代謝できない人は、有効成分であるエクオールを直接摂取することが望ましい。しかしながら、アレルゲンを低減したエクオール含有発酵物等は開発されているものの、アレルギーを惹起しない、実質的にアレルゲンをフリーにしたものは未だ開発されていない。
本発明は、実質的にアレルゲンを含まないエクオール含有組成物の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記知見に基づき更に検討を進め、実質的にアレルゲンを含まないエクオール含有組成物を得る方法を検討したところ、イソフラボン類を特定の酵素で処理し、その後に特定の微生物で発酵させることにより、これを達成できることに想到し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下に示すとおりである。
【0013】
〔1〕(1)マメ科植物の植物体に由来するイソフラボン類を、前記イソフラボン類をアグリコンに変換する酵素で処理する工程、(2)前記工程(1)で得られた前記アグリコンを含有する培地で嫌気性微生物を培養し、前記嫌気性微生物により、前記アグリコンをエクオールに変換する工程、及び、(3)前記工程(2)で産生された前記エクオールを含有するエクオール含有組成物を、前記培地から回収する工程、を含む、エクオール含有組成物の製造方法。
〔2〕前記マメ科植物が、大豆、クズ、レッドクローバー、及びカンゾウからなる群から選ばれる1種以上である、〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記マメ科植物の植物体が大豆胚軸である、〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記イソフラボン類がアグリコン配糖体である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕前記アグリコン配糖体が、ダイジン、アセチルダイジン、マロニルダイジン及びスクシニルダイジンからなる群から選ばれる1種以上である、〔4〕に記載の方法。
〔6〕前記嫌気性微生物が、アサッカロバクター・セラツス(Asaccharobacter celatus
)DSM 18785の16S rDNAと95%以上の同一性を有する16S rDNAを保有
する微生物である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕前記嫌気性微生物が、アサッカロバクター(Asaccharobacter)属、スラッキア(Slackia)属、またはアドレクラウチア(Adlercreutzia)属に分類される微生物である、
〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕前記酵素がβ-グルコシダーゼ又はペクチナーゼである、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の方法により製造されたエクオール含有組成物を含む化粧料。
〔10〕〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の方法により製造されたエクオール含有組成物を含む医薬。
〔11〕〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の方法により製造されたエクオール含有組成物を含む食品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、実質的にアレルゲンを含まないエクオール含有組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明におけるFASTKITスリムを用いたアレルゲン検出の結果を示す画像である(図面代用写真)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、具体的な態様を示しながら詳細に説明するが、本発明は例示する具体的態様に限定されないことはいうまでもない。
【0017】
本発明は、
(1)イソフラボン類を、前記イソフラボン類をアグリコンに変換する酵素で処理する工程、
(2)前記工程(1)で得られた前記アグリコンを含有する培地で嫌気性微生物を培養し、前記嫌気性微生物により、前記アグリコンをエクオールに変換する工程、及び、
(3)前記工程(2)で産生された前記エクオールを含有するエクオール含有組成物を、前記培地から回収する工程、
を含む、エクオール含有組成物の製造方法、に関する。
【0018】
本発明に係るエクオール含有組成物の製造方法は、(1)イソフラボン類を、前記イソフラボン類をアグリコンに変換する酵素で処理する「酵素処理工程」、(2)前記工程(1)で得られた前記アグリコンを含有する培地で嫌気性微生物を培養し、前記嫌気性微生物により、前記アグリコンをエクオールに変換する「発酵工程」、及び、(3)前記工程(2)で産生された前記エクオールを含有するエクオール含有組成物を、前記培地から回収する「回収工程」を含む。
【0019】
なお、本発明に係るエクオール含有組成物の製造方法は、上記(1)~(3)の工程を有するものであるが、その他の工程を有していてもよい。
その他の工程としては、例えば、後述する酵素処理工程において酵素処理の基質となるイソフラボン類を調製するに際し、大豆、クズ、レッドクローバー、カンゾウなどのマメ科植物を粉砕、抽出、樹脂精製などにより調製する工程が挙げられる。例えば、特開平11-263786号公報に開示されている大豆胚芽を原料としたイソフラボン化合物の製造方法のように、従来の方法により行うことができる。該工程は後述する酵素処理工程の前に行うことができる。
【0020】
<1.酵素処理工程>
本発明の酵素処理工程は、イソフラボン類を、該イソフラボン類をアグリコンに変換する酵素で処理する工程である。
【0021】
<1-1.イソフラボン類>
本発明のイソフラボン類は、イソフラボンを基本骨格とするフラボノイドの配糖体である。その原料に特に制限はないが、例えば、大豆、クズ、レッドクローバー、カンゾウなどマメ科植物から得ることができる。これらの中でも、アグリコンとしてダイゼインの含有量の多い大豆が好ましく、その中でも大豆胚軸がより好ましい。
【0022】
本発明のイソフラボン類は、特段限定されないが、アグリコンのアセチル化配糖体、アグリコンのマロニル化配糖体、及びアグリコンのスクシニル化配糖体等の任意の誘導体を挙げることができる。
アグリコンの配糖体としては、例えば、ダイジンなどを挙げることができる。アグリコンのアセチル化配糖体としては、アセチルダイジンなどを挙げることができる。アグリコンのマロニル化配糖体としては、マロニルダイジンなどを挙げることができる。アグリコンのスクシニル化配糖体としては、スクシニルダイジンなどを挙げることができる。
本発明のイソフラボン類には、これらの一種が含まれていてもよく、複数種含まれていてもよい。これらの中でも、ダイジンが好ましい。
なお、本明細書において、イソフラボン類とは、アグリコンに糖が結合した上記配糖体等の任意の誘導体を指すものとし、糖が結合していない、すなわちアグリコン自体は含まれないものとする。
【0023】
本発明の酵素処理工程で用いるイソフラボン類は精製されていても、精製されていなくてもよい。大豆胚軸をそのまま用いることもでき、精製されておらず他の成分が含まれていてもよい。市販されているものであれば、例えば、粉砕大豆胚軸(不二製油製)、イソフラボン高含有エキス粉末(タマ生化学株式会社製)などが挙げられる。
【0024】
<1-2.アグリコン>
本発明のアグリコンは、特段限定されないが、例えば、ダイゼイン、6-ヒドロキシダイゼイン、ジヒドロダイゼインなどを挙げることができる。
本発明のアグリコンには、これらの一種が含まれていてもよく、複数種含まれていてもよい。これらの中でも、ダイゼインが好ましい。
【0025】
<1-3.酵素の種類>
本発明の酵素処理工程におけるイソフラボン類に対して、該イソフラボン類をアグリコンに変換するために作用させる酵素は、上述したアグリコン配糖体等の任意の誘導体において、アグリコンと糖との結合を切断する活性を有していれば、特段限定されないが、エクオール生産の観点から、好ましくは酵素番号がEC3に含まれる酵素、より好ましくはEC3.2に含まれる酵素、さらに好ましくはEC3.2.1に含まれる酵素であり、特に好ましくはβ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.21)、ペクチナーゼ(EC 3.2.1.15)であり、生産性の観点から、最も好ましくはペクチナーゼである。
【0026】
<1-4.酵素処理>
<1-4-1.イソフラボン類の含有量>
本発明の酵素処理工程において、酵素処理溶液全量に対するイソフラボン類の含有量は、特段限定されないが、エクオールの生産濃度の観点からイソフラボン類として、0.1g/L以上であることが好ましく、0.5g/L以上であることがより好ましく、1.0g/L以上であることがさらに好ましい。一方、酵素活性の観点から、10g/L以下であることが好ましく、5g/L以下であることがより好ましく、3g/L以下であることがさらに好ましい。
【0027】
<1-4-2.酵素の濃度>
本発明の酵素処理工程において、酵素処理溶液全量に対する酵素の含有量は、酵素処理が効率良く進行すれば特段限定されないが、酵素として、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5%質量以下であることがより好ましく、0.1質量%以上1%質量以下であることがさらに好ましい。
【0028】
<1-4-3.酵素処理温度>
本発明の酵素処理工程において、酵素処理溶液の温度は、酵素活性を保ち、酵素処理が効率良く進行すれば特段限定されないが、酵素を活性化し、迅速な酵素処理を行うために、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることがさらに好ましい。一方、酵素活性の保持の観点から、80℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることがさらに好ましい。
【0029】
<1-4-4.酵素処理時のpH>
本発明の酵素処理工程において、酵素処理溶液のpHは、酵素活性を保ち、酵素処理が効率良く進行すれば特段限定されないが、2以上10以下であることが好ましく、3以上8以下であることがより好ましく、4以上7以下であることがさらに好ましい。
【0030】
<1-4-5.酵素処理時間>
本発明の酵素処理工程において、酵素処理の時間は、酵素活性を保ち、酵素処理が効率良く進行すれば特段限定されないが、酵素活性の観点から、1時間以上であることが好ましく、4時間以上であることがより好ましく、15時間以上であることがさらに好ましい。一方、生産性の観点から、72時間以下であることが好ましく、48時間以下であることがより好ましく、36時間以下であることがさらに好ましい。
【0031】
<2.発酵工程>
本発明の発酵工程は、前記酵素処理工程で得られた前記アグリコンを含有する培地で嫌気性微生物を培養し、前記嫌気性微生物により、前記アグリコンをエクオールに変換する工程である。
なお、上記嫌気性微生物を培養する培地においては、上記酵素処理工程においてイソフラボン類からアグリコンに変化されなかったイソフラボン類をはじめ、その他の成分が含まれていてもよい。
【0032】
<2-1.アグリコン濃度>
本発明の発酵工程におけるアグリコンは、前記酵素処理工程において、イソフラボン類から酵素によって変換されたアグリコンである。
本発明の発酵工程において、該アグリコンの濃度は、特段限定されないが、生産されるエクオールの濃度をより大きくするために、イソフラボン類として、0.1g/L以上であることが好ましく、0.5g/L以上であることがより好ましく、1.0g/L以上であることがさらに好ましい。一方、酵素活性の観点から、10g/L以下であることが好ましく、5g/L以下であることがより好ましく、3g/L以下であることがさらに好ましい。
【0033】
<2-2.嫌気性微生物>
本発明で用いる嫌気性微生物は、前記アグリコンを含有する培地で培養でき、前記アグリコンからエクオールを発酵できる微生物であれば、特段限定されないが、コーリオバクテリアセアエ(Coriobacteriaceae)科に分類される菌、ストレプトコッカセアエ(Streptococcaceae)科に分類される菌、又はこれらの類縁菌を、エクオール生産能を有するも
のとして例示することができる。
【0034】
また、以下の群から選択される属に分類される嫌気性微生物を、エクオール生産能を有するものとして例示することができる。
・コーリオバクテリウム(Coriobacterium)属
・アドレクラウチア(Adlercreutzia)属
・アサッカロバクター(Asaccharobacter)属
・アトポビウム(Atopobium)属
・コリンゼラ(Collinsella)属
・クリプトバクテリウム(Cryptobacterium)属
・デニトロバクテリウム(Denitrobacterium)属
・エガセラ(Eggerthella)属
・エンテロハブダス(Enterorhabdus)属
・ゴードニバクター(Gordonibacter)属
・オルセネラ(Olsenella)属
・パラエゲセエラ(Paraeggerthella)属
・スラッキア(Slackia)属
・ラクトコッカス(Lactococcus)属
【0035】
これらの属に分類された微生物から選択され、アグリコンを利用して嫌気発酵によってエクオールを生成する微生物は、本発明における好ましい微生物である。
【0036】
中でも、上記属に分類された微生物のうち、アサッカロバクター・セラツス(Asaccharobacter celatus)DSM 18785又はそれと近縁である、アサッカロバクター・セラツス(Asaccharobacter celatus)DSM 18785の16S rDNA(16S rRNAの遺伝子配列)と95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の同一性を有する16S rDNAを保有する微生物を使用することが好ましい。アサッカロバクター・セラツス(Asaccharobacter celatus)DSM 18785の16S rRNAの遺伝子配列は配列番号1である。
【0037】
さらに上記微生物のうち、アサッカロバクター(Asaccharobacter)属、スラッキア(Slackia)属、アドレクラウチア(Adlercreutzia)属に属する微生物は、本発明における
エクオール産生能を有する微生物としてより好ましい。
【0038】
微生物がエクオールを生成することは、培養物中のダイゼイン、ジヒドロダイゼイン、エクオール等を定量することにより確認することができる。これらの定量は、当業者であれば、例えば、WO2012/033150パンフレット、特開2012-135217号公報、特開2012-135218号公報、特開2012-135219号公報などの記載に基づき行うことができる。
【0039】
さらに、以下の嫌気性微生物を利用することができる。
Adlercreutzia equolifaciens DSM 19450
Enterorhabdus mucosicola DSM 19490
Slackia isoflavoniconvertens HE8(DSM 22006)
Slackia sp. TM-30 FERM P-20729
Eggerthella sp. KCCM-10490
Asaccharobacter celatus DSM 18785
Lactococcus garvieae DSM 6783
【0040】
上記微生物のうち、アサッカロバクター・セラツス(Asaccharobacter celatus)DSM 18785株、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens)DSM 19450株、もしくは、スラッキア・イソフラボニコンバーテンス(Slackia isoflavoniconvertens)DSM 22006株、又はこれらの菌と同様の種としての性質を有する類縁の菌を
より好ましい嫌気性微生物として挙げることができる。
【0041】
上記嫌気性微生物は、その寄託番号に示された寄託機関から入手することができる。各受託番号は、当該嫌気性微生物が、それぞれ次の寄託機関に寄託されていることを示す。
FERM 特許生物寄託センター;International Patent Organism Depositary (IPOD)
http://unit.aist.go.jp/pod/ci/index.html
DSM German Collection of Microorganisms and Cell Cultures (DSMZ)
http://www.dsmz.de/
KCCM Korean Culture Center of Microorganisms
【0042】
<2-3.培養・発酵条件>
本発明で用いる嫌気性微生物は、エクオールの生産に適した条件で、培地中でアグリコンと接触させられ、培養される。
本発明のエクオール含有組成物の生産に適した条件とは、エクオール生成活性を持つ嫌気性微生物の生存と活動が維持されることをいう。より具体的には、嫌気性微生物の生存が可能な気相条件(嫌気性条件)が維持され、該嫌気性微生物の活性と増殖を支持するための栄養素が与えられることをいう。嫌気性微生物の生存に適した種々の培地組成が公知である。したがって、先に示したエクオール生産能を有する嫌気性微生物について、当業者は、適切な培地組成を選択することができる。たとえば、実施例において用いた日水製薬社製のGAMブイヨン培地や、Difco社製のBHI培地等を使用することができる。
【0043】
本発明で用いられる培地には、例えば、水溶性の有機物を炭素源として加えることができる。水溶性の有機物として、ソルボース、フラクトース、グルコース、並びに、吉草酸、酪酸、プロピオン酸、酢酸、及びギ酸など有機酸類等の化合物を挙げることができる。
【0044】
炭素源としての培地に加える有機物の濃度は、効率的に培地中の嫌気性微生物を発育させるために適宜調節することができる。一般的には、0.1~10wt/vol%の範囲から添加量を選択することによって、過不足を避けることができる。
【0045】
上記の炭素源に加えて、培地には、窒素源を加えることができる。本発明において、窒素原としては通常の発酵に用いうる各種の窒素化合物を用いることができる。好ましい無機窒素源は、アンモニウム塩、及び硝酸塩である。好ましい有機窒素源はアミノ酸類、酵母エキス、ペプトン類、肉エキス、肝臓エキス、消化血清末などである。より好ましい無機窒素源は、硫安、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、硝酸カリウム及び硝酸ソーダである。より好ましい窒素源はアルギニン、シトルリン、オルニチン、リジン、酵母エキス、ペプトン類である。
【0046】
更に、炭素源や窒素源に加えて、偏性嫌気性微生物の培養に適した他の有機物あるいは無機物を培地に加えることもできる。例えば、ビタミンなどの補因子や各種の塩類等の無機化合物を培地に加えることによって、偏性嫌気性微生物の増殖や活性を増強できる場合もある。例えば、無機化合物、ビタミン類、動植物由来の微生物増殖補助因子として以下のものを挙げることができる。
【0047】
無機化合物として、例えば、リン酸二水素カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、塩化ナトリウム、塩化コバルト、塩化カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、明ばん、モリブデン酸ソーダ、塩化カリウム、ホウ酸等、塩化ニッケル、タングステン酸ナトリウム、セレン酸ナトリウム、硫酸第一鉄アンモニウムが挙げられる。
【0048】
また、ビタミン類として、例えば、ビオチン、葉酸、ピリドキシン、チアミン、リボフラビン、ニコチン酸、パントテン酸、ビタミンB12、チオオクト酸、p-アミノ安息香酸が挙げられる。さらに、ポルフィリン化合物であるヘミンを添加するとよい場合がある。
【0049】
これらの無機化合物やビタミン類、あるいは増殖補助因子を添加して培養液を製造する方法は公知である。培地は、液体、半固体、あるいは固体とすることができる。本発明のエクオールの製造方法において、好ましい培地の形態は、液体培地である。
【0050】
本発明で用いる嫌気性微生物は、公知の微生物の培養方法にしたがって培養することができる。工業的な製造には、培地や基質ガスを連続的に供給することができ、かつ培養物を回収するための機構を備えた連続培養システム(continuous fermentation system)が好適である。
【0051】
本発明で用いる嫌気性微生物の培養においては、連続培養システム内への酸素の混入を防ぐことが必要である。培養器は通常用いられる培養槽がそのまま利用できる。嫌気性微生物の培養にも利用することができる培養タンクは市販されている。培養槽内に混入する酸素を、窒素などの不活性気体あるいは水素ガスなどで置換することにより、嫌気的な雰囲気を作ることができる。
【0052】
例えば、嫌気培養ジャー(anaerobic jar)を、嫌気性微生物を培養するためのバイオリアクターとすることができる。嫌気培養ジャーは、金属、ガラス、あるいは合成樹脂製の気密容器で構成され、内部を大気中の酸素から遮断することができる。さらに、嫌気培養ジャーは、嫌気培養ジャー内部の空間や培養液中に含まれる分子状酸素を除去するための機構を備えることができる。たとえば、嫌気培養ジャー内部を吸引する真空ポンプを接続して吸引し、酸素以外の気体を供給することで、内部を嫌気状態に維持することができる。
【0053】
本発明においては、培養槽に付加的な機能を与えることができる。たとえば、通常使用される撹はん混合槽のほか、気泡塔型、ドラフトチューブ型の培養槽も利用できる。液体培地に吹き込まれる混合気体によって微生物は遊離分散され、微生物と培地を十分に接触させることができる。また、バイオトリックリングフィルター(biotrickling filter)のように通気性の高いスラグ、その他セラミック系の無機充てん物、あるいはポリプロピレン等の有機合成物質の充てん層に、水分を滴らせながら微生物を生息させ、そこにガスを通気しながら培養することもできる。さらに、使用する微生物は常法によりカラギーナンゲル、アルギン酸ゲル、アクリルアミドゲル、キチン、セルロース、寒天などに固定化して用いることもできる。
【0054】
本発明の発酵工程においては、上記の基質ガスからなる気相を構成する気体の組み合わせは特に制限されるものではなく、水素、二酸化炭素、窒素等から選択される1種類以上の気体を構成成分として用いることが可能である。当該気相においては、水素が構成成分として含まれていることが好ましい。
【0055】
上記の場合、当該発酵工程の気相において、水素の分圧パーセント濃度が2~100%であることが好ましい。たとえば、2%、4%、6%、10%、20%、30%、40%、50%、80%、100%、又はこれらから選択される2点の分圧パーセント濃度を下限(「~以上、又は、~より高い)及び上限(~以下、又は、~より低い)、とする濃度範囲により示される分圧パーセント濃度であることが好ましい。
【0056】
また、効率よくエクオールを生成させるためには、気相を構成する混合気体の培養槽への通気量は0.01~2.0 V/V/Mガス量/液量/分であることが好ましい。
【0057】
本発明で用いる嫌気性微生物は、通常、37℃付近(30~42℃)の温度でエクオール生産能を有する嫌気性微生物である。
【0058】
本発明において、嫌気性微生物を培養する際の加圧条件は、当該微生物が生育できる条件であれば特に限定されるものではないが、好ましい加圧条件としては、0.02~0.2MPaの範囲を挙げることができる。
【0059】
微生物の十分な生育のため、培養物のpHは、3.0~8.0が好ましく、4.5~7.5がより好ましい。また、エクオールの回収量を増加させるため、培養槽の温度は特に制限されるものではないが、37℃を好ましい温度として挙げることができる。
【0060】
<3.回収工程>
本発明の回収工程は、前記発酵工程で産生された前記エクオールを含有するエクオール含有組成物を、前記培地から回収する工程である。
【0061】
当業者は、生成した嫌気性微生物と培養生成液を分離するために公知の任意の方法を用いることができる。好ましい分離の方法は、ろ過性能、濃縮性能を有するホローファイバー型限外ろ過あるいは精密ろ過膜を利用する方法である。また、微生物と該生成液の分離に十分なろ過速度を得るためには使用する微生物に応じて適当な分画分子量の膜を選択すればよい。生産されたエクオールは当業者に公知の任意の手段で培地から回収することができる。例えば、培養槽から限外ろ過膜を通して分離された培養液からエクオールを回収することができる。エクオールの精製方法は公知である。たとえば、培養物を遠心分離などで菌体を除き、上清を減圧下に濃縮、乾固後、70%エタノールあるいはメタノールで抽出する。抽出液をさらにシリカゲルクロマトグラフィーや晶析などの操作を行うことで精製できる。また、アンバーライトやセパビーズなどスチレン-ジビニルベンゼンの吸着樹脂も用いることができる。
【0062】
本発明の回収工程では、効率よくエクオールを回収するため、培養槽に供給される新鮮な培地の量は、培養槽内の培養物における希釈率が時間当たり0.04~2/hrが好ましい。より好ましい希釈率は0.08~1/hrである。
【0063】
<4.エクオール含有組成物>
本発明の製造方法により得られるエクオール含有組成物は、様々な用途、例えば、化粧料や医薬品、食品などとして提供することができる。飲食品又は医薬品等として摂取することにより、乳癌、前立腺癌、骨粗しょう症、高コレステロール血症、心疾患、更年期障害等を予防できる。
【0064】
<5.化粧料>
本発明のエクオール含有組成物を化粧料の素材として用いる場合、該エクオール含有組成物を水溶液、ローション、スプレー液、懸濁液および乳化液などの液状;粉末、顆粒およびブロック状などの固体状;クリームおよびペーストなどの半固体状;ゲル状等の各種所望の剤形の化粧料に調製することができる。このような化粧料は、洗顔料、乳液、クリーム、ゲル、エッセンス(美容液)、パック・マスク等の基礎化粧料、ファンデーション、口紅等のメーキャップ化粧料、口腔化粧料、芳香化粧料、毛髪化粧料、ボディ化粧料等の各種化粧料として有用である。本発明により得られるエクオールを含有組成物を含む化粧料は、美白用化粧料、ニキビ改善用化粧料、しわ改善化粧料として使用される。
本発明のエクオール含有組成物を含有する化粧料は、常法に従って製造することができる。また、化粧料への配合量、配合方法、配合時期は適宜選択することができる。さらに、必要に応じて、瓶、袋、缶、スプレー缶、噴霧容器、箱、パック等の適宜の容器に封入することができる。
本発明のエクオール含有組成物を化粧料の素材として用いる場合、化粧料全量に対する上記エクオール含有組成物の含有量は、本発明の所望の効果が奏される限り特に限定されないが、エクオールとして、通常0.00005~10質量%であり、好ましくは0.0001~5質量%であり、より好ましくは0.0001~2質量%である。
【0065】
<6.医薬品>
本発明のエクオール含有組成物を医薬品の素材として用いる場合、その剤形は、予防または治療しようとする疾患や医薬品の使用形態、投与経路等に応じて選択することができる。例えば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、注射剤、坐剤、浸剤、煎剤、チンキ剤等が挙げられる。これらの各種製剤は、常法に従って主薬に対して必要に応じて充填剤、増量剤、賦形剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤
などの医薬の製剤技術分野において通常使用し得る既知の補助剤を用いて製剤化することができる。また、この医薬製剤中に着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を含有させてもよい。
本発明のエクオール含有組成物は、乳癌、前立腺癌、骨粗しょう症、心疾患、更年期障害の予防や治療のために使用することができる。
【0066】
本発明のエクオール含有組成物を医薬品の素材として用いる場合、医薬品全量に対する上記エクオール含有組成物の含有量は、本発明の所望の効果が奏される限り特に限定されないが、エクオールとして、通常0.001~30質量%であり、好ましくは0.01~20質量%であり、より好ましくは0.1~10質量%である。また、上記エクオール含有組成物を含有する医薬品の投与量は、患者の年齢、体重、症状の程度等によって適宜設定され得る。
【0067】
<7.食品>
本発明のエクオール含有組成物を食品の素材として用いる場合、一般の食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病者用食品、食品添加物等として使用できる。食品の形態としては、本発明に係るエクオール含有組成物を含む清涼飲料、ミルク、プリン、ゼリー、飴、ガム、グミ、ヨーグルト、チョコレート、スープ、クッキー、スナック菓子、アイスクリーム、アイスキャンデー、パン、ケーキ、シュークリーム、ハム、ミートソース、カレー、シチュー、チーズ、バター、ドレッシング等を例示することができる。
【0068】
本発明のエクオール含有組成物は、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を主成分として使用することができる。タンパク質としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、及びこれらの加水分解物、バターなどが挙げられる。糖質としては、糖類、加工澱粉(デキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられ、ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレン、乳清ミネラルなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸などが挙げられる。これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用してもよく、合成品及び/又はこれらを多く含む食品を用いてもよい。
【0069】
本発明のエクオール含有組成物を含有する食品は、常法に従って製造することができる。また、食品への配合量、配合方法、配合時期は適宜選択することができる。さらに、必要に応じて、瓶、袋、缶、箱、パック等の適宜の容器に封入することができる。
本発明のエクオール含有組成物を食品の素材として用いる場合、食品全量に対する上記エクオール含有組成物の含有量は、本発明の所望の効果が奏される限り特に限定されないが、エクオールとして、通常0.01~10質量%であり、好ましくは0.05~5質量%であり、より好ましくは0.1~2質量%である。
【実施例0070】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
[実施例1]
<1.イソフラボン類の調製>
本実施例では、イソフラボン類として、大豆胚軸(不二製油製)をワーリングブレンダーを用いて、1分間×3回(計3分間)、粉砕したものを用いた。
【0072】
<2.酵素処理>
酵素処理溶液としては、イソフラボン類として270gの大豆胚軸(不二製油製)、酵素として2.7gのペクチナーゼGアマノ、および1180gの脱イオン水を用いて、計1450gとし、pHを4~7に調整して調製した。酵素処理は、50℃で20~24時間、撹拌しながら行った。
【0073】
<3.嫌気性微生物による発酵>
(種培養)
GAMブイヨン培地(日水製薬製)5.9gとL-アルギニン塩酸塩1.2gを純水100mLに溶かし、窒素ガスを通じながら20mLずつ嫌気性菌培養用18mm試験管(三紳工業製)に分注し、ブチルゴム栓、プラスチックキャップをして115℃、15分間滅菌した。
この培地に-80℃で凍結保存していたアサッカロバクター・セラツス(Asaccharobacter celatus) DSM 18785株を植菌し、無菌フィルターを通した水素ガスで気相を2分間
以上置換した後、37℃、250spmで16時間振とう培養を行った。
【0074】
(発酵)
上記種培養液と同様に、L-アルギニン塩酸塩を添加したGAMブイヨン培地を、115℃、15分間オートクレーブ滅菌し、室温まで冷却後、上述した種培養液を植菌し、気相を水素ガスで無菌的に2分間以上置換した後、37℃、250spmの条件で振とう培養し、発酵を行った。
【0075】
<4.エクオール含有組成物の回収>
上記発酵後の培養液を3000rpmで10分遠心し、0.45μmのMF膜でろ過し、不溶物を除去して、エクオール含有組成液を回収した。組成液を乾燥処理(スプレード
ライ処理)することによりエクオール含有物(EQ-N)を得た。
【0076】
<5.アレルゲンの検出>
得られたエクオール含有組成物について、FASTKITスリム大豆(日本ハム中央研究所製
)を用いてアレルゲンの検出を行った。
具体的な方法は、FATKITスリムのマニュアルに従った。サンプルとしてEQ-N 2gを使用し、キット中の抽出用緩衝液38mLを加え、30~60分混合後、3回抽出し、その後、3000×g、4℃、20分で遠心分離後し、上清をろ紙でろ過し、キット内の希釈用緩衝液で10倍に希釈し測定サンプルとした。測定は、テストストリップに100μLを滴下し、15分展開後目視判定をした。
【0077】
[比較例1]
上記酵素処理および発酵を行わず、粉砕した大豆胚軸について、上記と同様にしてアレルゲンの検出を行った。
【0078】
<6.結果>
アレルゲンが存在する場合には、
図1に示すテストストリップにおいて、矢印で示す位置にバンドが出現するところ、酵素処理および発酵を経てエクオール含有組成物が回収された実施例1においてはアレルゲンの存在を示すバンドは検出されなかった。一方、酵素処理および発酵を経なかった比較例1においてはアレルゲンの存在を示すバンドが検出さ
れた。
以上より、本発明上記酵素処理および発酵を行うことで、実質的にアレルゲンを含まないエクオール含有組成物が得られることがわかった。
本発明の方法により製造されたエクオール含有組成物を、飲食品又は医薬品等として摂取することにより、乳癌、前立腺癌、骨粗しょう症、高コレステロール血症、心疾患、更年期障害等を予防できる。