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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105358
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】ホーニング加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 33/08 20060101AFI20230724BHJP
   B24B 33/02 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B24B33/08
B24B33/02
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006127
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】390003665
【氏名又は名称】株式会社日進製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真吾
(72)【発明者】
【氏名】井上 智宏
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA03
3C158AA12
3C158AB04
3C158CB01
(57)【要約】
【課題】ワークの加工精度を高めることができるホーニング加工装置を提供する。
【解決手段】ホーニング加工装置の第1砥石駆動部16は、長尺であり下端部が第1ウェッジロッド141に連結された接続部材165と、接続部材165に内側拡張軸ベアリング166を介して連結された送り螺子一体型スプライン164と、送り螺子一体型スプライン164の第1送り螺子を回動させるモータ161およびボール減速機162を有する。また、第2砥石駆動部17は、下端部が第2ウェッジロッド142に接続部材177および外側拡張軸ベアリング178を介して連結された送り螺子一体型スプライン176と、送り螺子一体型スプライン176の第2送り螺子を回動させるモータ171およびボール減速機172と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1砥石と複数の第2砥石とを有するホーニングツールと、
長尺筒状であり長手方向における一端部に前記ホーニングツールが固定され長手方向に沿った中心軸周りに回転する回転主軸と、
前記回転主軸を回動させる回転駆動部と、
前記複数の第1砥石を前記中心軸と直交する方向へ駆動する第1砥石駆動部と、
前記複数の第2砥石を前記中心軸と直交する方向へ駆動する第2砥石駆動部と、を備え、
前記ホーニングツールは、
長尺の筒状であり長手方向における一端部に前記複数の第1砥石および前記複数の第2砥石それぞれが挿入可能なスリットが形成されるとともに、長手方向における他端部が前記回転主軸の前記一端部に固定されたツール本体と、
少なくとも一部が前記ツール本体の内側に配置され前記複数の第1砥石それぞれが各別に先端に固定された複数の第1砥石台と、
少なくとも一部が前記ツール本体の内側に配置され前記複数の第2砥石それぞれが各別に先端に固定された複数の第2砥石台と、
長尺であり長手方向における一端部に前記複数の第1砥石台の基端に摺接し長手方向における他端部に近づくほど長手方向と直交する方向へ突出するように傾斜した第1傾斜面を有する第1ウェッジ部を有する第1ウェッジロッドと、
長尺筒状であり長手方向における一端部に前記複数の第2砥石台の基端に摺接し長手方向における他端部に近づくほど長手方向と直交する方向へ突出するように傾斜した第2傾斜面を有する第2ウェッジ部を有し、前記第1ウェッジロッドの外側に外嵌される第2ウェッジロッドと、を有し、
前記第1砥石駆動部は、
長尺であり長手方向における一端部が前記第1ウェッジロッドに少なくとも第1軸受を介して接続された接続部材と、
軸方向における一端部が前記接続部材の長手方向における他端部に接続され軸方向における他端部に第1送り螺子ナットが設けられた第1スプライン軸と、
前記第1スプライン軸を前記軸方向へ摺動自在に支持する第1スプラインナットと、
先端部が前記第1送り螺子ナットに螺合する第1送り螺子と、
前記第1送り螺子を回動させる第1送り螺子駆動部と、を有し、
前記第2砥石駆動部は、
筒状であり軸方向における一端部が前記第2ウェッジロッドに少なくとも第2軸受を介して接続され軸方向における他端部に第2送り螺子ナットが設けられるとともに、内側に前記接続部材が挿通された第2スプライン軸と、
前記第2スプライン軸を前記軸方向へ摺動自在に支持する第2スプラインナットと、
先端部が前記第2送り螺子ナットに螺合する第2送り螺子と、
前記第2送り螺子を回動させる第2送り螺子駆動部と、を有する、
ホーニング加工装置。
【請求項2】
前記第1スプライン軸と前記第2スプライン軸との少なくとも一方は、外壁に設けられた軸方向に延在する溝内を転動する転動体を介して支持されている、
請求項1に記載のホーニング加工装置。
【請求項3】
前記第1送り螺子駆動部は、
前記第1送り螺子を回転駆動する第1モータを有する、
請求項1または2に記載のホーニング加工装置。
【請求項4】
前記第1送り螺子駆動部は、更に、
入力軸に前記第1モータが接続された第1ボール減速機を有し、
前記第1ボール減速機の出力軸に前記第1送り螺子の基端部が連結されている、
請求項3に記載のホーニング加工装置。
【請求項5】
前記第2送り螺子駆動部は、
第2モータと、
入力軸に前記第2モータが接続された第2ボール減速機と、
前記第2ボール減速機の出力軸に接続された第1歯車と、
前記第1歯車に噛合し、回転軸が前記第2送り螺子の回転軸と一致するように前記第2送り螺子に連結された第2歯車と、を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のホーニング加工装置。
【請求項6】
前記第2送り螺子駆動部は、
長尺の筒状であり長手方向における一端部に前記第2歯車が固定されるとともに、他端部に前記第2送り螺子の基端部が固定され、前記第2歯車の回転を前記第2送り螺子に伝達する伝達部材と、
前記伝達部材を回転自在に支持する締結部材と、を更に有し、
前記第2歯車と前記締結部材との相対的な位置関係が一定である、
請求項5に記載のホーニング加工装置。
【請求項7】
前記第2歯車は、前記第1歯車のローラに転がり接触する形で噛合するノンバックラッシュの伝達機構を構成する歯車である、
請求項5または6に記載のホーニング加工装置。
【請求項8】
前記第2送り螺子駆動部は、更に、
入力軸に前記第2モータが接続された第2ボール減速機を有し、
前記第1歯車は、前記第2ボール減速機の出力軸に接続されている、
請求項5から7のいずれか1項に記載のホーニング加工装置。
【請求項9】
前記第1送り螺子および前記第1送り螺子ナットと、前記第2送り螺子および前記第2送り螺子ナットと、の少なくとも一方は、ボール螺子およびボール螺子ナットである、
請求項1から8のいずれか1項に記載のホーニング加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーニング加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転工具の工具本体に形成された複数のスリットに、粗加工用の研削面を有するホーニング砥石が固定される第1拡張コマと、仕上げ加工用の研削面を有するホーニング砥石が固定される第2拡張コマと、が工具本外の径方向に移動自在に交互に収容されたホーニング加工装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。このホーニング加工装置は、中空構造の第1拡張ロッドと、第1拡張ロッドの内側に位置する第2拡張ロッドと、を備え、第1拡張コマの傾斜面に第1拡張ロッドのコーン部のテーパ面が当接し、第2拡張コマの傾斜面に第2拡張ロッドのコーン部のテーパ面が当接している。そして、第1拡張ロッドと第2拡張ロッドとのいずれか一方を下方へ押し込むことにより、第1拡張コマと第2拡張コマとのいずれか一方を選択的に径方向外方へ押し出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-183614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたホーニング加工装置では、第1拡張ロッドを駆動する駆動機構と第2拡張ロッドとを位置精度良く駆動することにより、第1拡張コマ、第2拡張コマの工具本体の径方向への移動量を高精度に制御することで、ワークの加工精度を高めることが要請されている。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、ワークの加工精度を高めることができるホーニング加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るホーニング加工装置は、
複数の第1砥石と複数の第2砥石とを有するホーニングツールと、
長尺筒状であり長手方向における一端部に前記ホーニングツールが固定され長手方向に沿った中心軸周りに回転する回転主軸と、
前記回転主軸を回動させる回転駆動部と、
前記複数の第1砥石を前記中心軸と直交する方向へ駆動する第1砥石駆動部と、
前記複数の第2砥石を前記中心軸と直交する方向へ駆動する第2砥石駆動部と、を備え、
前記ホーニングツールは、
長尺の筒状であり長手方向における一端部に前記複数の第1砥石および前記複数の第2砥石それぞれが挿入可能なスリットが形成されるとともに、長手方向における他端部が前記回転主軸の前記一端部に固定されたツール本体と、
少なくとも一部が前記ツール本体の内側に配置され前記複数の第1砥石それぞれが各別に先端に固定された複数の第1砥石台と、
少なくとも一部が前記ツール本体の内側に配置され前記複数の第2砥石それぞれが各別に先端に固定された複数の第2砥石台と、
長尺であり長手方向における一端部に前記複数の第1砥石台の基端に摺接し長手方向における他端部に近づくほど長手方向と直交する方向へ突出するように傾斜した第1傾斜面を有する第1ウェッジ部を有する第1ウェッジロッドと、
長尺筒状であり長手方向における一端部に前記複数の第2砥石台の基端に摺接し長手方向における他端部に近づくほど長手方向と直交する方向へ突出するように傾斜した第2傾斜面を有する第2ウェッジ部を有し、前記第1ウェッジロッドの外側に外嵌される第2ウェッジロッドと、を有し、
前記第1砥石駆動部は、
長尺であり長手方向における一端部が前記第1ウェッジロッドに少なくとも第1軸受を介して接続された接続部材と、
軸方向における一端部が前記接続部材の長手方向における他端部に接続され軸方向における他端部に第1送り螺子ナットが設けられた第1スプライン軸と、
前記第1スプライン軸を前記軸方向へ摺動自在に支持する第1スプラインナットと、
先端部が前記第1送り螺子ナットに螺合する第1送り螺子と、
前記第1送り螺子を回動させる第1送り螺子駆動部と、を有し、
前記第2砥石駆動部は、
筒状であり軸方向における一端部が前記第2ウェッジロッドに少なくとも第2軸受を介して接続され軸方向における他端部に第2送り螺子ナットが設けられるとともに、内側に前記接続部材が挿通された第2スプライン軸と、
前記第2スプライン軸を前記軸方向へ摺動自在に支持する第2スプラインナットと、
先端部が前記第2送り螺子ナットに螺合する第2送り螺子と、
前記第2送り螺子を回動させる第2送り螺子駆動部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1砥石駆動部が、第1送り螺子の回転方向を切り替えることにより第1ウェッジロッドを第1スプライン軸の軸方向に沿った両方向へ移動させることができる。また、第2砥石駆動部は、第2送り螺子の回転方向を切り替えることにより第2ウェッジロッドを第2スプライン軸の軸方向に沿った両方向へ移動させることができる。これにより、第1砥石駆動部、第2砥石駆動部は、それぞれ、第1砥石、第2砥石のツール本体から突出させたりツール本体へ没入させたりする制御を高精度に実行することができる。従って、ワークの加工精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係るホーニング加工装置の概略図である。
図2】実施の形態に係るホーニング加工装置のホーニングヘッドの断面図である。
図3】実施の形態に係るホーニングツールの先端部を中心軸に沿った方向から見た正面図である。
図4】実施の形態に係るホーニングツールの先端部の図3のA-A線における断面矢視図である。
図5】実施の形態に係るホーニングツールについて第2砥石が拡張した状態の先端部を示し、(A)は断面図であり、(B)は斜視図である。
図6】実施の形態に係るホーニングツールについて第1砥石が拡張した状態の先端部を示し、(A)は断面図であり、(B)は斜視図である。
図7】実施の形態に係るホーニング加工装置の一部を示す断面図である。
図8】(A)は実施の形態に係る第1砥石駆動部の送り螺子一体型ボールスプラインの断面図であり、(B)は実施の形態に係る第2砥石駆動部の送り螺子一体型ボールスプラインの断面図である。
図9】比較例に係るホーニング加工装置の一部を示す断面図である。
図10】(A)は比較例に係るホーニング加工装置の一部を+Z方向側から見た模式図であり、(B)は比較例に係るホーニング加工装置の一部を示す断面図である。
図11】(A)は実施の形態に係るホーニング加工装置の一部を+Z方向側から見た模式図であり、(B)は実施の形態に係るホーニング加工装置の一部を示す断面図である。
図12】比較例に係るホーニング加工装置の動作を説明するための模式図であり、(A)は加工孔の上端部分を研削加工する様子を示す図であり、(B)は加工孔の中央部分を加工する様子を示す図である。
図13】実施の形態に係るホーニング加工装置の動作を説明するための模式図であり、(A)は加工孔の上端部分を研削加工する様子を示す図であり、(B)は加工孔の中央部分を加工する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係るホーニング加工装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係るホーニング加工装置は、複数の第1砥石と複数の第2砥石とを有するホーニングツールと、長尺筒状であり長手方向における一端部にホーニングツールが固定され長手方向に沿った中心軸周りに回転する回転主軸と、回転主軸を回動させる回転駆動部と、複数の第1砥石を中心軸と直交する方向へ駆動する第1砥石駆動部と、複数の第2砥石を中心軸と直交する方向へ駆動する第2砥石駆動部と、を備える。ここで、ホーニングツールは、長尺の筒状であり長手方向における一端部に複数の第1砥石および複数の第2砥石それぞれが挿入可能なスリットが形成されるとともに、長手方向における他端部が前記回転主軸の前記一端部に固定されたツール本体と、少なくとも一部がツール本体の内側に配置され複数の第1砥石それぞれが各別に先端に固定された複数の第1砥石台と、少なくとも一部がツール本体の内側に配置され複数の第2砥石それぞれが各別に先端に固定された複数の第2砥石台と、長尺であり長手方向における一端部に複数の第1砥石台の基端に摺接し長手方向における他端部に近づくほど長手方向と直交する方向へ突出するように傾斜した第1傾斜面を有する第1ウェッジ部が設けられた第1ウェッジロッドと、長尺筒状であり長手方向における一端部に複数の第2砥石台の基端に摺接し長手方向における他端部に近づくほど長手方向と直交する方向へ突出するように傾斜した第2傾斜面が設けられた第2ウェッジ部を有し、第1ウェッジロッドの外側に外嵌される第2ウェッジロッドと、を有する。
【0010】
第1砥石駆動部は、長尺であり長手方向における一端部が第1ウェッジロッドに内側拡張軸ベアリング(第1軸受)を介して接続された接続部材と、軸方向における一端部が接続部材の長手方向における他端部に接続され、軸方向における他端部に第1送り螺子ナットが設けられた第1スプライン軸と、第1スプライン軸を軸方向へ摺動自在に支持する第1スプラインナットと、先端部が第1送り螺子ナットに螺合する第1送り螺子と、第1送り螺子を回動させる第1送り螺子駆動部と、を有する。また、第2砥石駆動部は、筒状であり軸方向における一端部が第2ウェッジロッドに少なくとも外側拡張軸ベアリング(第2軸受)を介して連結され軸方向における他端部に第2送り螺子ナットが設けられるとともに、内側に接続部材が挿通された第2スプライン軸と、第2スプライン軸を軸方向へ摺動自在に支持する第2スプラインナットと、先端部が第2送り螺子ナットに螺合する第2送り螺子と、第2送り螺子を回動させる第2送り螺子駆動部と、を有する。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態に係るホーニング加工装置は、ワークWの加工孔Whの内壁Waを研削加工または研磨加工するものであり、回転主軸12を有するホーニングヘッド1と、回転駆動部5と、ホーニングヘッド1を昇降させる昇降駆動部4と、機体31と、を備える。ここで、ワークWの加工孔Whの目標形状が、Z軸方向に平行な中心軸J2を有するものである場合、回転主軸12は、その中心軸J1が目標形状の加工孔Whの中心軸J2と一致する姿勢で配置される。
【0012】
昇降駆動部4は、長尺の送り螺子403と、モータ401と、モータ401のシャフト401aと送り螺子403の+Z方向側の端部とを連結するカップリング402と、ホーニングヘッド1を支持するヘッド支持体404と、を有する。送り螺子403は、鉛直方向に延在するように配置され、支持部32、33により長手方向に沿った中心軸周りに回転可能な状態で機体31に支持されている。ヘッド支持体404は、送り螺子403に螺合する送り螺子ナット(図示せず)を有する。モータ401は、例えばロータリエンコーダのような位置検出センサが内蔵されたサーボモータであり、位置検出センサによりモータ401の回転量が検出される。モータ401により送り螺子403が回転されると、ヘッド支持体404が昇降する。
【0013】
回転駆動部5は、モータ501と、プーリ502、504と、ベルト503と、長尺のスプライン軸505と、スプライン軸505にその軸方向に沿って摺動自在に外嵌されたスプロケット509と、スプロケット509に噛合するチェーン508と、を有し、ホーニングヘッド1の回転主軸12を回動させる。スプライン軸505は、その長手方向が鉛直方向に沿う姿勢で配置されており、支持部32、33それぞれに軸受510、506を介して支持されている。プーリ504の内側には、スプライン軸505が固定されている。また、プーリ504は、ベルト503を介して、モータ501のシャフト501aに固定されたプーリ502に連結されている。スプロケット509は、チェーン508を介して、回転主軸12に設けられた後述のスプロケット122に連結されている。モータ501は、例えばロータリエンコーダのような位置検出センサとトルクセンサとが内蔵されたサーボモータであり、位置検出センサによりモータ501の回転量が検出される。モータ501によりプーリ502が回転されると、プーリ504に固定されたスプライン軸505およびスプライン軸505に外嵌されたスプロケット509が回転する。そして、スプロケット509の回転に伴い、スプロケット509にチェーン508を介して連結されたスプロケット122を有する回転主軸12が回転する。
【0014】
ホーニングヘッド1は、図2に示すように、回転主軸12の他に、回転主軸12の-Z方向側に配置されたホーニングツール13と、回転主軸12を、軸受152を介して中心軸J1周りに回転可能に支持するヘッド本体151と、ヘッド本体151が固定されるとともに昇降駆動部4のヘッド支持体404に固定されるベース153と、を有する。ホーニングツール13は、図3および図4に示すように、複数(図3では6つ)の第1砥石132Bと複数(図3では6つ)の第2砥石132Aと、ツール本体131と、複数の第1砥石132Bそれぞれが各別に先端に固定された複数の第1砥石台133Bと、複数の第2砥石132Aそれぞれが各別に先端に固定された複数の第2砥石台133Aと、を有する。ここで、ホーニングツール13の長手方向に沿った中心軸J3は、回転主軸12の中心軸J1と一致するように配置され、中心軸J1周りに回転される。ツール本体131は、長尺の円筒状であり、-Z方向側の端部に複数の第1砥石132Bおよび複数の第2砥石132Aそれぞれが挿入可能なスリット131aが形成されている。各スリット131aは、ツール本体131の側壁においてツール本体131の-Z方向側の端部からツール本体131の長手方向に沿って延在している。また、ツール本体131の+Z方向側の端部は、回転主軸12の-Z方向側の端部のチャック部125に固定されている。
【0015】
複数の第1砥石132Bと複数の第2砥石132Aとは、図3に示すように、ツール本体131の複数のスリット131aそれぞれに交互に挿入され、ホーニングツール13の中心軸J3周りに環状に配置されている。ここで、複数の第2砥石132Aは、例えば粗加工用の研削面を備えたホーニング砥石であり、複数の第1砥石132Bは、例えば仕上げ加工用の研削面を備えたホーニング砥石である。複数の第1砥石台133Bは、少なくとも一部がツール本体131の内側に配置され、基端のZ軸方向における両端部それぞれに傾斜面1331B、1332Bが形成されている。また、複数の第2砥石台133Aは、少なくとも一部がツール本体131の内側に配置され、基端のZ軸方向における両端部に傾斜面1331A、1332Aが形成されている。そして、複数の第1砥石132Bおよび複数の第1砥石台133Bと複数の第2砥石132Aおよび複数の第2砥石台133Aとが、それぞれ、ツール本体131のホーニングツール13の中心軸J3に直交する径方向へ移動自在となっている。なお、第1砥石132Bおよび第2砥石132Aは、それぞれ、例えばダイヤモンド、酸化アルミニウム、炭化珪素、二酸化珪素等の砥粒を、青銅や鋳鉄等を主成分とするボンド材で結合したいわゆるメタルボンド砥石が採用される。また、第1砥石台133Bおよび第2砥石台133Aには、第1砥石台133Bおよび第2砥石台133Aをツール本体131の径方向における内側へ付勢するスプリングバンド(図示せず)が収容された収容溝(図示せず)が設けられている。
【0016】
また、ホーニングツール13は、長尺でありツール本体131の内側にZ軸方向に移動自在に挿通された第1ウェッジロッド141と、長尺筒状でありツール本体131の内側に移動自在に挿通されるとともに、第1ウェッジロッド141の外側に外嵌される第2ウェッジロッド142と、を有する。即ち、第1ウェッジロッド141は、第2ウェッジロッド142の内側に位置している。
【0017】
第1ウェッジロッド141は、その-Z方向側の端部に複数の第1砥石台133Bの基端に摺接する第1傾斜面1411a、1412aを有する第1ウェッジ部1411、1412を有する。第1傾斜面1411a、1412aは、いずれも第1ウェッジロッド141の+Z方向側の端部に近づくほど、即ち、+Z方向側ほどZ軸方向と直交する方向へ突出するように傾斜している。ここで、第1傾斜面1411aは、第1砥石台133Bの基端の-Z方向側の端部に設けられた傾斜面1331Bに摺接し、第1傾斜面1412aは、第1砥石台133Bの基端の+Z方向側の端部に設けられた傾斜面1332Bに摺接する。また、第1ウェッジ部1411、1412は、Z軸方向に離間して配置されZ軸方向に延在する接続部1413を介して接続されている。また、第1ウェッジロッド141は、長尺であり第1ウェッジ部1412から+Z方向側へ延在するロッド本体1414を有する。
【0018】
第2ウェッジロッド142は、その-Z方向側の端部に複数の第2砥石台133Aの基端に摺接する第2傾斜面1421a、1422aを有する第2ウェッジ部1421、1422を有する。第2傾斜面1421a、1422aは、いずれも第2ウェッジロッド142の+Z方向側の端部に近づくほど、即ち、+Z方向側ほどZ軸方向と直交する方向へ突出するように傾斜している。ここで、第2傾斜面1421aは、第2砥石台133Aの基端の-Z方向側の端部に設けられた傾斜面1331Aに摺接し、第2傾斜面1422aは、第2砥石台133Aの基端の+Z方向側の端部に設けられた傾斜面1332Aに摺接する。また、第2ウェッジ部1421、1422は、Z軸方向に離間して配置されZ軸方向に延在する接続部1423を介して接続されている。また、第2ウェッジロッド142は、長尺であり第2ウェッジ部1422から+Z方向側へ延在するロッド本体1424を有する。
【0019】
ここで、図5(A)および(B)に示すように、第2ウェッジロッド142に対して矢印AR11に示す方向へ推力が付加されると、第2ウェッジロッド142に対して矢印AR11に示す方向へ移動する。そして、第2ウェッジロッド142が移動すると、傾斜面1331A、1332Aを有する第2砥石台133Aが、第2傾斜面1421a、1422a上を摺動する。そして、矢印AR12に示すように、第2砥石台133Aおよび第2砥石台133Aに固定された第2砥石132Aが、ツール本体131の径方向外方へ拡張移動する。一方、第2ウェッジロッド142が、矢印AR11方向とは反対方向へ移動すると、前述のスプリングバンドの付勢力により、第2砥石台133Aおよび第2砥石132Aがツール本体131の内側に向かって縮小移動する。また、図6(A)および(B)に示すように、第1ウェッジロッド141が、矢印AR21に示す方向へ推力が付加されると、第1ウェッジロッド141に対して矢印AR21に示す方向へ移動する。そして、第1ウェッジロッド141が移動すると、傾斜面1331B、1332Bを有する第1砥石台133Bが、第1傾斜面1411a、1412a上を摺動する。そして、矢印AR22に示すように第1砥石台133Bおよび第1砥石台133Bに固定された第1砥石132Bが、ツール本体131の径方向外方へ拡張移動する。一方、第1ウェッジロッド141が、矢印AR21方向とは反対方向へ移動すると、前述のスプリングバンドの付勢力により、第1砥石台133Bおよび第1砥石台133Bに固定された第1砥石132Bがツール本体131の内側に向かって縮小移動する。
【0020】
図2に戻って、回転主軸12は、長尺の円筒状の主軸本体121と、主軸本体121の-Z方向側の端部に設けられホーニングツール13のツール本体131の+Z方向側の端部が連結されるチャック部125と、を有する。また、回転主軸12は、長尺円筒状であり主軸本体121の内側に配置される第1サブ回転軸126と、長尺円筒状であり主軸本体121の内側において第1サブ回転軸126に外嵌された状態で配置される第2サブ回転軸127と、を有する。ここで、第1サブ回転軸126の-Z方向側の端部には、ホーニングツール13の後述の第1ウェッジロッド141の+Z方向側の端部が連結される第1連結部123が設けられている。また、第2サブ回転軸127の-Z方向側の端部には、ホーニングツールの第2ウェッジロッド142の+Z方向側の端部が連結される第2連結部124が設けられている。更に、主軸本体121の-Z方向側の端部には、回転駆動部5のチェーン508に噛合するスプロケット122が外嵌されている。そして、回転主軸12の主軸本体121、第1サブ回転軸126および第2サブ回転軸127が、回転駆動部5によりその長手方向に沿った中心軸J1周りに回転される。
【0021】
また、本実施の形態に係るホーニング装置は、更に、複数の第1砥石132Bを回転主軸12の中心軸と直交する方向、即ち、ツール本体131の径方向へ駆動する第1砥石駆動部16と、複数の第2砥石132Aをツール本体131の径方向へ駆動する第2砥石駆動部17と、を備える。第1砥石駆動部16は、長尺であり-Z方向側の端部が第1サブ回転軸126の+Z方向側の端部に内側拡張軸ベアリング166を介して連結された接続部材165を有する。内側拡張軸ベアリング166は、接続部材165に対して第1サブ回転軸126を回転自在に支持する第1軸受である。また、第1砥石駆動部16は、接続部材165の+Z方向側の端部に接続された送り螺子一体型スプライン164と、モータ161と、ボール減速機162と、ボール減速機162の出力軸162aと送り螺子一体型スプライン164とを締結する締結部材163と、を有する。モータ161は、例えばロータリエンコーダのような位置検出センサが内蔵されたサーボモータであり、位置検出センサによりモータ161の回転量が検出される第1モータである。また、モータ161のシャフト161aは、ボール減速機162の入力軸162bに連結されている。ここで、モータ161とボール減速機162とから、後述の送り螺子一体型スプライン164の送り螺子1641を駆動する第1送り螺子駆動部が構成される。
【0022】
送り螺子一体型スプライン164は、図7に示すように、第1スプライン軸1642と、ヘッド本体151に固定され第1スプライン軸1642をZ軸方向へ摺動自在に支持する第1スプラインナット1643と、長尺の棒状の送り螺子1641と、を有する。第1スプライン軸1642は、軸方向における-Z方向側の端部が接続部材165に連結されている。また、第1スプライン軸1642は、図8(A)に示すように、長尺の円筒状であり、外壁に軸方向に延在する複数の溝1642bが形成され、少なくとも+Z方向側の端部を含む内壁に螺旋状に延在する溝1642aが形成された第1送り螺子ナットとなっている。送り螺子1641は、その先端部が送り螺子1641の外壁で螺旋状に延在する溝1641aと第1スプライン軸1642の内壁に形成された溝1642aとの間を転動する転動体であるボール1644を介して第1スプライン軸1642の内側に螺合している第1送り螺子である。また、第1スプライン軸1642は、複数の溝1642b内を転動するボール1645を介して第1スプラインナット1643に支持されている。
【0023】
図2に戻って、第2砥石駆動部17は、長尺であり-Z方向側の端部が第2サブ回転軸127の+Z方向側の端部に外側拡張軸ベアリング178を介して接続された接続部材177と、を有する。外側拡張軸ベアリング178は、接続部材177に対して第2サブ回転軸127を回転自在に支持する第2軸受である。また、第2砥石駆動部17は、接続部材177の+Z方向側の端部に接続された送り螺子一体型スプライン176と、モータ171と、ボール減速機172と、ボール減速機172の出力軸172aに接続された歯車であるローラピニオン173と、ローラピニオン173に噛合する歯車であるカムリング174と、長尺の円筒状であり+Z方向側の端部にカムリング174が固定され-Z方向側の端部に送り螺子一体型スプライン176が固定されカムリング174の回転を送り螺子一体型スプライン176に伝達する伝達部材179と、伝達部材179を回転自在に支持する締結部材175と、を有する。ここで、伝達部材179の-Z方向側の端部は、送り螺子一体型スプライン176の送り螺子1761の+Z方向側の端部に固定されており、歯車であるカムリング174の回転を送り螺子一体型スプライン176の送り螺子1761に伝達する。モータ171は、例えばロータリエンコーダのような位置検出センサが内蔵されたサーボモータであり、位置検出センサによりモータ171の回転量が検出される第2モータである。また、モータ171のシャフト(図示せず)は、ボール減速機172の入力軸(図示せず)に連結されている。カムリング174は、例えば周面にトロコイド歯が形成されローラピニオン173のローラに転がり接触する形で噛合するいわゆるノンバックラッシュの伝達機構である。ここで、モータ171とボール減速機172とローラピニオン173と歯車174とから、後述の送り螺子一体型スプライン176の送り螺子1761を駆動する第2送り螺子駆動部が構成される。
【0024】
送り螺子一体型スプライン176は、図7に示すように、第2スプライン軸1762と、ヘッド本体151に固定され第2スプライン軸1762をZ軸方向へ摺動自在に支持する第2スプラインナット1763と、長尺の円筒状の送り螺子1761と、を有する。第2スプライン軸1762は、軸方向における-Z方向側の端部が接続部材177に連結されている。また、第2スプライン軸1762は、図8(B)に示すように、長尺の円筒状であり、外壁に軸方向に延在する複数の溝1762bが形成され、少なくとも+Z方向側の端部を含む内壁に螺旋状に延在する溝1762aが形成された第2送り螺子ナットとなっている。送り螺子1761は、少なくともその先端部の外壁で螺旋状に延在する溝1761aと第2スプライン軸1762の内壁に形成された溝1762aとの間を転動する転動体であるボール1764を介して第2スプライン軸1762の内側に螺合している第2送り螺子である。また、第2スプライン軸1762は、複数の溝1762b内を転動するボール1765を介して第2スプラインナット1763に支持されている。更に、送り螺子1761の内側1761bおよび第2スプライン軸1762の内側には、第1砥石駆動部16の接続部材165が挿通されている。
【0025】
ここで、本実施の形態に係るホーニング加工装置の特徴について、比較例に係るホーニング加工装置と比較しながら説明する。比較例に係るホーニング加工装置の第2砥石駆動部は、図9に示すように、長尺の円筒状であり接続部材177の+Z方向側の端部に接続されるとともに内側に接続部材165が挿通される回転軸91762と、回転軸91762を軸受91764、91765により回転自在に支持し側面に螺子部91763aが設けられた円筒状の滑り螺子91763と、滑り螺子91763の螺子部91763aに螺合する滑り螺子ナット91766と、滑り螺子91763の+Z軸方向側の端部に固定された歯車91761と、を有する。なお、図9において、実施の形態と同様の構成については図7と同一の符号を付している。また、第2砥石駆動部は、モータ171と、回転軸91762と平行に配置された回転軸91731と、回転軸91731に外嵌され歯車91761に噛合する歯車91732と、回転軸91731とモータ171のシャフト171aとを連結するカップリング91781と、を有する。更に、第2砥石駆動部は、回転軸91731を、軸受91782を介して回転自在に支持するとともに、滑り螺子ナット91766が固定される駆動部本体9179を有する。この第2砥石駆動部では、歯車91732が回転軸J92周りに回転すると、歯車91732に噛合する歯車91761と歯車91761が固定された滑り螺子91763とが回転軸J91周りに回転する。そして、これに伴い、滑り螺子91763と滑り螺子91763が支持する回転軸91762との全体が、駆動部本体9179に固定された滑り螺子ナット91766に対して矢印AR91に示す方向へ移動する。この比較例に係る第2砥石駆動部の場合、回転軸91762が矢印AR91に示す方向へ移動する際、滑り螺子91763における滑り螺子ナット91766により支持される支持位置が変化する。このとき、滑り螺子91763の+Z方向側の端部に設けられた歯車91761と滑り螺子91763における滑り螺子ナット91766により支持される支持位置との間の距離が変化することになる。そうすると、歯車91761、91732間のバックラッシュ量が、前述の支持位置を支点とした滑り螺子91763のがたつき量に与える影響が変化することになる。即ち、歯車91761、91732間のバックラッシュ量が一定であっても、前述の支持位置が変化することにより、滑り螺子91763のがたつき量が変化してしまう。そうすると、例えば歯車91761、91732間のバックラッシュ量のみを考慮して第1砥石132B、第2砥石132Aの拡張量が一定となるように歯車91732の回転を制御したとしても、前述の支持位置の変化に伴う滑り螺子91763のがたつき量の変化の影響により、第1砥石132B、第2砥石132Aの拡張量も変化してしまい、その分、拡張精度が変化してしまう。
【0026】
ここで、比較例に係るホーニング加工装置における、接続部材177のZ軸方向への移動量と滑り螺子91763のがたつき量との関係について説明する。ここで、比較例に係るホーニング加工装置において、歯車91761が図10(A)に示す矢印AR92に示す方向へ回転されると、図10(B)に示すように、滑り螺子91763の中心軸が回転軸J91に対してがたつき角θ1だけ傾斜するものとする。また、接続部材177のZ軸方向の移動量をdz、モータ171の回転角度をA[deg]、歯車91761、91732における減速比をI、滑り螺子91763の螺子ピッチをP、歯車91761、91732間のバックラッシュ角度をB1[deg]、滑り螺子91763のがたつき角をθ1[deg]、滑り螺子91763のがたつき量をB2とする。ここで、減速比は、(歯車91761の歯数)/(歯車91732の歯数)となる。そして、歯車91761と滑り螺子91763における滑り螺子ナット91766により支持される支持位置PS9との間の距離をL1とすると、滑り螺子91763のがたつき量B2は、下記式(1)の関係式で表される。
【0027】
【数1】
・・・式(1)
【0028】
また、歯車91732の半径をrとすると、滑り螺子91763のがたつき量B2による伝達ロス角度θ2は、下記式(2)の関係式で表される。
【0029】
【数2】
・・・式(2)
【0030】
そして、接続部材177の移動量dzは、下記式(3)の関係式で表される。
【0031】
【数3】
・・・式(3)
【0032】
比較例に係るホーニング加工装置では、式(1)に示すように、距離L1の変化に伴いがたつき量B2が変化する。そうすると、式(2)に示すように、伝達ロス角度θ2が変化し、それに伴い、式(3)に示すように接続部材177の移動量dzが変化する。このように、歯車91761と前述の支持位置PS9との間の距離L1の変化に伴う滑り螺子91763のがたつき量B2の変化の影響により、接続部材177の移動量dzが変化するとともに、第2ウェッジロッド142の移動量も変化してしまう。このため、第1砥石132B、第2砥石132Aの拡張量も変化してしまい、その分、拡張精度が変化してしまう。
【0033】
次に、本実施の形態に係るホーニング加工装置における、接続部材177のZ軸方向への移動量と回転軸91763のがたつき量との関係について説明する。ここにおいて、本実施の形態に係るホーニング加工装置において、ローラピニオン173が図11(A)に示す矢印AR12に示す方向へ回転されると、図11(B)に示すように、伝達部材179の中心軸が中心軸J1に対してがたつき角θ1だけ傾斜するものとする。また、接続部材177のZ軸方向の移動量をdz、モータ171の回転角度をA[deg]、ローラピニオン173、カムリング174における減速比をI、送り螺子一体型スプライン176の送り螺子1761の螺子ピッチをP、ローラピニオン173、カムリング174間のバックラッシュ角度をB1[deg]、送り螺子1761のがたつき角をθ1[deg]、送り螺子1761のがたつき量をB2とする。ここで、減速比は、(カムリング174の歯数)/(ローラピニオン173の歯数)となる。そして、カムリング174と伝達部材179における締結部材175により支持される支持位置PS1との間の距離をL1とすると、送り螺子1761のがたつき量B2は、前述の式(1)の関係式で表される。また、カムリング174の半径をrとすると、送り螺子1761のがたつき量B2による伝達ロス角度θ2は、前述の式(2)の関係式で表される。そして、接続部材177の移動量dzは、前述の式(3)の関係式で表される。ここで、本実施の形態に係るホーニング加工装置では、カムリング174と締結部材175との位置関係が一定で維持される、即ち、カムリング174と前述の支持位置PS1との間の距離L1が一定であるため、式(1)に示すがたつき量B2も一定である。そうすると、式(2)に示すように、伝達ロス角度θ2も一定となるため、式(3)に示すように接続部材177の移動量dzも一定となる。このように、送り螺子1761のがたつき量B2が一定であるため、接続部材177の移動量dzも一定となるとともに、第2ウェッジロッド142の移動量も一定となる。従って、本実施の形態に係るホーニング加工装置では、送り螺子一体型スプライン176の送り螺子1761および第2スプライン軸1762の一定のがたつき量のみを考慮してカムリング174の回転を制御することにより、第1砥石132B、第2砥石132Aの拡張精度を高い精度で維持できるという利点がある。
【0034】
また、本実施の形態に係るホーニング加工装置では、第2砥石駆動部17が、送り螺子一体型スプライン176により、接続部材177が連結された第2スプライン軸1762に対して第2スプライン軸1762の中心軸に沿った方向へ均等な力を作用させることができる。
【0035】
次に、本実施の形態に係るホーニング加工装置の特徴について、第1砥石駆動部が、油圧により第1ウェッジロッド141を駆動する比較例と比較しながら説明する。比較例に係る第1砥石駆動部は、油圧により第1ウェッジロッド141をホーニングツールの先端方向へ押し出すことにより第1砥石を拡張移動させる。そして、この第1砥石駆動部は、第1ウェッジロッド141に加える圧力が一定で維持されるように油圧を制御する。このため、比較例に係るホーニング加工装置の場合、加工孔Whの形状に応じて第1砥石132Bの突出量が変化することになる。従って、例えば図10(A)に示すように加工孔Whが中心軸J4方向に沿って縮径した形状を有する場合、ホーニングツールの中心軸J3と第1砥石132Bの先端部との間の距離が加工孔Whの形状に応じてそれぞれ距離W931となる。そして、ホーニングツール13を矢印AR93に示す方向へ移動させると、例えば図10(B)に示すように、ホーニングツールの中心軸J3と内壁Waとの間の距離が変化することに伴い、中心軸J3と第1砥石132Bの先端部との間の距離がそれぞれ距離W941に変化する。従って、ワークWは、その加工孔Whが中心軸J4方向に沿って縮径した形状を有する場合、中心軸J4方向に沿って縮径した形状が維持されつつ研削加工が進められることになる。従って、比較例に係るホーニング加工装置の場合、第1砥石132Bを用いて、加工孔Whの形状を、その内壁Waがホーニングツール13の中心軸J4に平行な面となるような形状に矯正するように研削加工を行うことが難しい。
【0036】
これに対して、本実施の形態に係るホーニング加工装置では、第1砥石駆動部16が、モータ161の駆動力を利用して第1ウェッジロッド141をホーニングツールの先端方向へ押し出すことにより第1砥石を拡張移動させる。このため、本実施の形態に係るホーニング加工装置の場合、加工孔Whの形状に関わらず第1砥石132Bの突出量を一定で維持することができる。従って、例えば図11(A)に示すように加工孔Whが中心軸J4方向に沿って縮径した形状を有する場合であっても、ホーニングツールの中心軸J3と第1砥石132Bの先端部との間の距離がそれぞれ距離W1で維持される。そして、ホーニングツール13を矢印AR31に示す方向へ移動させる際、例えば図11(B)に示すように、ホーニングツールの中心軸J3と第1砥石132Bの先端部との間の距離がそれぞれ距離W1で維持されることにより、加工孔Whの内壁Waにホーニングツール13の中心軸J3に平行な面P1を形成することができる。そして、第1砥石132Bを拡張移動させながら研削加工を進めることにより、加工孔Whの形状を、その内壁Waがホーニングツール13の中心軸J3に平行な面となるような形状に矯正することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態に係るホーニング加工装置では、第1砥石駆動部16が、送り螺子一体型スプライン164の送り螺子1641の回転方向を切り替えることにより第1ウェッジロッド141をZ軸方向に沿った両方向へ移動させることができる。また、第2砥石駆動部17は、送り螺子一体型スプライン176の送り螺子1761の回転方向を切り替えることにより第2ウェッジロッド142をZ軸方向に沿った両方向へ移動させることができる。これにより、第1砥石駆動部16、第2砥石駆動部17は、それぞれ、第1砥石132B、第2砥石132Aのツール本体131から突出させたりツール本体131へ没入させたりする制御を高精度に実行することができる。従って、ワークWの加工精度を高めることができる。また、第1ウェッジロッド141、第2ウェッジロッド142それぞれをZ軸方向へ移動させるときの推力を高精度に制御することができるので、第1砥石132B、第2砥石132AのワークWの加工孔Whの内壁Waの押圧力を高精度に制御できるという利点もある。
【0038】
また、本実施の形態に係るホーニング加工装置では、第1砥石駆動部16が、第1ウェッジロッド141に第1サブ回転軸126および接続部材165を介して接続された第1スプライン軸1642を駆動することにより第1ウェッジロッド141を駆動する。また、第2砥石駆動部17が、内側に接続部材165が挿通される円筒状の送り螺子1761および第2スプライン軸1762を駆動することにより第2ウェッジロッド142を駆動する。これにより、第1ウェッジロッド141と連動する第1スプライン軸1642に第2ウェッジロッド142と連動する第2スプライン軸1762が外嵌された状態で同軸配置されるので、その分、第1砥石駆動部16および第2砥石駆動部17を小型化することができ、ひいては、装置全体の小型化を図ることができる。
【0039】
更に、本実施の形態に係る送り螺子一体型スプライン164では、第1スプライン軸1642が、その外壁に設けられた軸方向に延在する溝1642a内を転動するボール1645を介して第1スプラインナット1643に支持されている。また、送り螺子一体型スプライン176では、第2スプライン軸1762が、その外壁に設けられた軸方向に延在する溝1762a内を転動するボール1765を介して第2スプラインナット1763に支持されている。つまり、第1スプラインナット1643が、第1スプライン軸1642を、ボール1645を介して転がり支持し、第2スプラインナット1763が、第2スプライン軸1762を、ボール1765を介して転がり支持している。これにより、例えば図9を用いて説明した互いに噛合する歯車91761、91732による摺動機構に比べて、第1スプライン軸1642、第2スプライン軸1762をZ軸方向に沿って移動させる際の摩擦の影響を低減できるので、モータ161、171の負荷を軽減できる。
【0040】
また、本実施の形態に係る第1砥石駆動部16は、バックラッシュが少ないボール減速機162を有し、ボール減速機162の入力軸162bにモータ161が接続され、ボール減速機162の出力軸162aに送り螺子1641の基端部が連結されている。これにより、モータ161のシャフト161aの回転量と送り螺子1641の回転量との差分量を低減することができるので、その分、第1ウェッジロッド141の移動量を高精度に制御することができる。
【0041】
更に、本実施の形態に係る第2砥石駆動部17は、バックラッシュが少ないボール減速機172と、バックラッシュが少ないローラピニオン173およびカムリング174と、を有する。そして、ボール減速機172の入力軸にモータ171のシャフトが接続され、ボール減速機172の出力端172aにローラピニオン173が接続されている。これにより、モータ171のシャフトの回転量とカムリング174が外嵌された送り螺子1761の回転量との差分量を低減することができるので、その分、第2ウェッジロッド142の移動量を高精度に制御することができる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、ボール減速機162、ボール減速機172の代わりに、サイクロイド減速機、RV減速機、波動歯車装置を備えるものであってもよい。また、ボール減速機162の代わりに、内歯車が締結部材163を介して送り螺子一体型スプライン164に連結され、太陽歯車がモータ161のシャフト161aに連結され、内歯車と太陽歯車とが複数の遊星歯車に噛合する遊星歯車減速機或いは不思議遊星歯車装置を備えるものであってもよい。
【0043】
実施の形態では、第1スプライン軸1642が、その外壁の溝1642a内を転動するボール1645を介して第1スプラインナット1643に支持され、第2スプライン軸1762が、その外壁の溝1762a内を転動するボール1765を介して第2スプラインナット1763に支持されている例について説明した。但し、溝1642a、1762a内を転動する転動体は、ボール1645、1765に限定されるものではなく、例えば円柱状のころであってもよい。或いは、第1スプライン軸1642が、転動体を介さずに第1スプラインナット1643に第1スプライン軸1642の軸方向へ摺動自在に支持されているものであってもよい。また、第2スプライン軸1762が、転動体を介さずに第2スプラインナット1763に第2スプライン軸1762の軸方向へ摺動自在に支持されているものであってもよい。
【0044】
実施の形態では、送り螺子一体型スプライン164、176が、それぞれ、送り螺子1641、1761がボール1644、1764を介して第1スプライン軸1642、第2スプライン軸1762に螺合する送り螺子ナット構造を有する例について説明した。但し、これに限らず、例えば、送り螺子1641、1761がボール1644、1764を介さずに第1スプライン軸1642、第2スプライン軸1762に螺合する滑り螺子ナット構造を有するものであってもよい。
【0045】
実施の形態では、第1砥石駆動部16が、ボール減速機162を有し、第2砥石駆動部17が、ボール減速機172を有する例について説明したが、これに限らず、第1砥石駆動部16と第2砥石駆動部17との少なくとも一方が、減速機を備えないものであってもよい。例えば、第1砥石駆動部16のモータ161が直接送り螺子1641を回転駆動するものであってもよいし、第2砥石駆動部17のモータ171が直接ローラピニオン173を回転駆動するものであってもよい。
【0046】
実施の形態では、第2砥石駆動部17が、ローラピニオン173とカムリング174とを有する例について説明したが、これに限らず、ローラピニオン173、カムリング174の代わりに、他の種類の互いに噛合する2つの歯車を採用してもよい。
【0047】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ホーニングツールを交換すること無く粗面加工と仕上げ加工とを実行できるホーニング加工装置として好適である。
【符号の説明】
【0049】
1:ホーニングヘッド、4:昇降駆動部、5:回転駆動部、12:回転主軸、13:ホーニングツール、16:第1砥石駆動部、17:第2砥石駆動部、31:機体、32,33:支持部、121:主軸本体、122,509:スプロケット、123:第1連結部、124:第2連結部、125:チャック部、126:第1サブ回転軸、127:第2サブ回転軸、131:ツール本体、131a:スリット、132A:第2砥石、132B:第1砥石、133A:第2砥石台、133B:第1砥石台、141:第1ウェッジロッド、142:第2ウェッジロッド、151:ヘッド本体、152,506,510:軸受、153:ベース、161,171,401,501:モータ、161a,401a,501a:シャフト、162,172:ボール減速機、162a,172a:出力軸、162b:入力軸、163:締結部材、164,176:送り螺子一体型スプライン、165,177,1413:接続部材、166:内側拡張軸ベアリング、173:ローラピニオン、174:カムリング、175:締結部材、178:外側拡張軸ベアリング、179:伝達部材、402:カップリング、403,1641,1761:送り螺子、404:ヘッド支持体、502,504:プーリ、503:ベルト、505:スプライン軸、508:チェーン、1331A,1332A,1331B,1332B:傾斜面、1411,1412:第1ウェッジ部、1411a,1412a:第1傾斜面、1421,1422:第2ウェッジ部、1421a,1422a:第2傾斜面、1414,1424:ロッド本体、1642:第1スプライン軸、1642a,1642b,1762a,1762b:溝、1643:第1スプラインナット、1644,1645,1764,1765:ボール、1761b:内側、1762:第2スプライン軸、1763:第2スプラインナット、J1,J2,J3,J4:中心軸、W:ワーク、Wa:内壁、Wh:加工孔
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