(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105364
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】吸入用水素発生器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/32 20060101AFI20230724BHJP
C01B 3/08 20060101ALI20230724BHJP
C01B 3/06 20060101ALI20230724BHJP
A61M 16/10 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B65D81/32 R
C01B3/08 Z
C01B3/06
A61M16/10 Z
B65D81/32 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006139
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000240949
【氏名又は名称】片山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】平井 秀則
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013AB05
3E013AC11
3E013AC19
3E013AD12
3E013AD14
3E013AD24
3E013AE01
3E013AE12
3E013AF02
3E013AF17
(57)【要約】
【課題】安定的で持続性に優れる水素ガスを発生させる吸入用水素発生器の提供を目的とする。
【解決手段】蓋体と容器本体と、該蓋体又は容器本体に設けた水素取出部とを備え、前記蓋体と容器本体とで形成される内部に、水槽と該水槽内の水を水素発生剤に少しずつ供給するための給水部と、該水素発生剤から発生した水素ガスが前記水素取出部に向けて通過する水素経路とを有していることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体と容器本体と、該蓋体又は容器本体に設けた水素取出部とを備え、
前記蓋体と容器本体とで形成される内部に、水槽と該水槽内の水を水素発生剤に少しずつ供給するための給水部と、該水素発生剤から発生した水素ガスが前記水素取出部に向けて通過する水素経路とを有していることを特徴とする吸入用水素発生器。
【請求項2】
前記水槽は上側に開口部と底部側に前記給水部を取り付け可能な取付部とを有し、
前記水素経路は前記水槽に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の吸入用水素発生器。
【請求項3】
前記給水部は前記水槽内の水を滴下可能なノズルであり、
前記水素発生剤は前記容器本体の底部側に設けたスペーサに載置され、
前記スペーサは前記水素発生剤を水没させないための水没回避手段を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸入用水素発生器。
【請求項4】
前記ノズルはパイプ型、穴型又は芯型であることを特徴とする請求項3に記載の吸入用水素発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素発生剤と水とを反応させることで水素ガスを発生させる水素発生器に関し、特に吸入用の水素発生器に係る。
【背景技術】
【0002】
化学反応による水素発生器として、水素発生剤を水に浸ける水没方式を利用した水素発生器(例えば特許文献1,2)が知られている。
水素ガスの吸入は、代謝力、循環力及び免疫力の増進や体内のpH調整等に役立つことが知られ、一般的には300~500ml/min程度の水素ガスが体にとって好ましいと言われている。
しかし、水没方式を利用した場合には、水素発生剤を水に浸けることで水素発生が開始されると、約3000~4000ml/minで爆発的に水素が発生し、水素発生開始から5分程度で急激に発生量が減少してしまう。
そのため、均一で持続した水素ガスの発生が難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5857139号公報
【特許文献2】特許第6388268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、安定的で持続性に優れる水素ガスを発生させる吸入用水素発生器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る吸入用水素発生器は、蓋体と容器本体と、該蓋体又は容器本体に設けた水素取出部とを備え、前記蓋体と容器本体とで形成される内部に、水槽と該水槽内の水を水素発生剤に少しずつ供給するための給水部と、該水素発生剤から発生した水素ガスが前記水素取出部に向けて通過する水素経路とを有していることを特徴とする。
【0006】
ここで、吸入用の水素発生剤とは、水と接触することで水素ガスが発生するものであり、公知の様々なものが想定される。
例えば、袋体にパウダー状の酸化カルシウムとパウダー状のアルミニウムを詰めたものが挙げられるが、必要に応じて触媒やpH調整剤等が含まれていてもよい。
このような水素発生剤は、水を浸透させることで化学反応を起して水素ガスを発生させる。
本発明は、水槽内の水を滴下や注入等の方法により少しずつ水素発生剤に供給することで、少しずつ化学反応を起こすため、水素発生速度や発生量の制御を比較的容易にしたものである。
また、少量の水で水素発生が可能であるため、貯水のための水槽を小さくでき、持ち運びが可能な小型の水素発生器の提供が可能である。
【0007】
本発明において、前記水槽は上側に開口部と底部側に前記給水部を取り付け可能な取付部とを有し、前記水素経路は前記水槽に沿って形成されていることが好ましい。
ここで、水素経路が水槽に沿って形成されているとは、水槽と水素発生器(蓋体と容器本体)の内壁との間で直接又は間接的に水素ガスが通過する隙間が形成されていることをいう。
本発明は、水槽の底部側に取り付けた給水部を介して下方の水素発生剤に、水の自重による自然落下を利用して少しずつ水を供給できる。
これにより、水槽内の水があれば電源や熱源などを必要とせずに水素発生が可能であり、水素発生器の使用場所に制限がない。
また、反応開始時に発生する水素ガスと水蒸気の混合気は、上昇する際に水槽の下側等に直接又は間接的に接触することで、水分の除去や発生した高温水素の温度低下が促される。
さらに水槽に沿って上昇した水素ガスは、水素取出部から外部へ給気されるが、この際に水槽の上側が開口していることで、発生水素と水槽内の水表面側の圧力をおよそ等しくでき、水の滴下等が安定して可能である。
なお、給水部を水槽に取り外し可能に設けることで、例えば給水部の交換により給水口径を変更し、水素発生剤への給水量を調整してもよい。
また、給水部に給水量調整弁を設けてもよい。
これにより、水素発生量が調整される。
【0008】
本発明において、前記給水部は前記水槽内の水を滴下可能なノズルであり、前記水素発生剤は前記容器本体の底部側に設けたスペーサに載置され、前記スペーサは前記水素発生剤を水没させないための水没回避手段を有していてもよい。
ここで、前記ノズルはパイプ型、穴型又は芯型であってもよい。
パイプ型としては例えば注射針が挙げられるが、本実施例のコンバージェントタイプのように先端径が小さくなるものも含まれる。
穴型としてはシャワーヘッドのように先端側に複数の穴を有するものが、芯型としては芯が水を吸い上げる吸水芯等が挙げられる。
ノズルによって滴下量をコントロールすれば、安定的な滴下による給水で水素発生量の調整もしやすい。
例えばノズルが芯型であれば、芯の密度や圧縮量の選択により芯を伝って適量の水が滴下するように調整できる。
ここで、スペーサとは、容器本体の底部と水素発生剤との間に一定の間隔を保つためのものであり、例えばスペーサが有する台座部に水素発生剤を載置することで、容器本体の底部から水素発生剤を一定の高さに離隔可能である。
なお、水素発生剤を容器本体の底部から一定の高さに離間可能であれば、水素発生剤が宙吊り状態等であってもよい。
水素発生剤に浸透する水は、滴下量が増えることで水素発生剤を水没させる虞がある。
そこで、スペーサの台座部に例えば貫通孔を設けることで、この貫通孔から容器本体の底部に水を逃がして水素発生剤の水没を防止できる。
また、水素発生量が下がるようなタイミングで、容器本体の底部に貯留した水に水素発生剤が接触するように例えばスペーサの台座部高さを設定することで、水素発生剤をできる限り無駄なく利用可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る吸入用水素発生器は、その水素発生が効率的で持続性に優れるだけでなく、水素発生速度や発生量の制御も比較的容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る吸入用水素発生器の内部構造例を示す。
【
図3】ヒートカバーで保護された吸入用水素発生器の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る吸入用水素発生器の構造例を以下、図に基づいて説明するが本発明はこれに限定されない。
図1に実施例1を、
図2に実施例2を示す。
【0012】
水素発生器は、水素ガスを取り出すための水素取出部11と、蓋体12で開口端が塞がれる容器本体13を備える。
実施例1は略半円状の蓋体12の上部に、略L字型筒状の水素取出部11を取り付けた例であり、実施例2はコップ形状の容器本体13の側面に、略直線型筒状の水素取出部11を2つ設けた例であるが、発生した水素ガスを水素取出部11を介して水素発生器外へ取り出せれば、水素取出部11の構造や配設位置、数等に制限はない。
例えば、蓋体等に設けた通気口に水素取出部を嵌着や螺着により取り付けてあってもよく、水素取出部と容器本体等が一体的な構造であってもよい。
容器本体13は底部13aを有するコップ形状で、実施例1はその開口端が蓋体12内に入り込むように嵌着する例であるが、シール性を有するものであればよく、実施例2のように蓋体12と容器本体13が互いに螺着する構造であってもよい。
本発明において、水素発生器は容器本体13に蓋体12を装着した状態で、その内部に水槽14、給水部15、水素経路16及び水素発生剤2を配設できればよく、蓋体や容器本体の形状に制限はない。
【0013】
水素発生器の内部では、
図1、2に示すように水槽14に取り付けた給水部15の下方に水素発生剤2が配設され、水槽内の水1と水素発生剤2の反応で発生する水素ガスが水素取出部11まで通過可能なように水素経路16が形成されている。
水槽14は、例えば
図1に示すように貯水可能な略半円状の貯水部14aの上部に開口した開口部14bと底部に通水可能な通水孔14cを有し、この通水孔14cを取付部として給水部15を取り付けてある。
具体的には、コンバージェントタイプのノズルを貯水部14aの内側から通水孔14cへ嵌入し、ノズルの上端を貯水部14aの底部に係止した例である。
なお、水槽に貯留した水を給水部に流入可能であれば、水槽に給水部を取り付ける方法に制限はなく、例えば通水孔14cと給水部15が螺着構造であってもよい。
また、給水部15はノズルのほか、先端を絞ったようなチューブ等であってもよく、水槽内の水を水素発生剤に滴下又は注入等の方法により少しずつ供給できれば制限はない。
【0014】
実施例1の水槽14は、
図1に示すように貯水部14aの側面から水平方向外側に突出した複数の係止部14dを有し、この係止部14dが容器本体13の上側に設けた被係止部13bに係止可能な例である。
この際、係止部14dに水素ガスが通過可能な通気孔を設けてあってもよく、複数の係止部14d間に隙間を設けて水素経路を確保してあってもよい。
このように水素発生器の内部に配設された水槽14は、その下方、側方及び上方にそれぞれ水素経路16a、16b、16cが形成されている。
一方、
図2に示す実施例2は、容器本体13に水槽14を包持可能な保持部13cを設け、この保持部13cに水素ガスが通過可能な通気孔を設けた例であるが、水槽は蓋体や容器本体の内壁との間で直接又は間接的に水素経路16を形成できれば、その配設方法や配設のための構造に制限はなく、水槽が直接又は間接的に蓋体に固定可能であってもよい。
また、実施例1の水槽14は、その貯水部14aの底部下側に略筒状の接触部14eを設けた例であり、発生した水素ガスと水蒸気の混合気を貯水部14aの底部や、接触部14eに接触させて水分の除去等をしやすくなっている。
一方、実施例2では保持部13cが、その保持する水槽14の底部よりも下側に天板部13dと、さらに下側に略筒状の接触部13eを有する例である。
天板部13dは、給水部15を貫通可能な貫通口から外側に向かって傾斜を有する略断面ハ字形状であり、天板部13dに付着した水滴が接触部13eに沿って落下しやすくなっている。
これにより、給水部15をつたって水素発生剤2に水滴が落下するのを防止できる。
なお、水槽14の底部が天板部13dのような略断面ハ字形状であってもよい。
【0015】
水素発生剤2は、給水部15の下方に配設される。
例えば、水槽14内の水1が給水部15であるノズルを介して滴下される場合、ノズルの直下に水素発生剤2を配設することで水の浸透がしやすい。
実施例1、2は、容器本体13の底部13aに配設したスペーサ20に水素発生剤2を載置した例である。
スペーサ20は、例えば
図1に示すように容器本体の底部13aから起立した脚部21と、この脚部21に固定されて底部13aから一定の高さを有する台座部22とを有し、水素発生剤2はこの台座部22に載置されている。
なお、スペーサ20は容器本体13と別体であっても、一体的な構造であってもよい。
台座部22には、上下方向に貫通する貫通孔23が設けられている。
給水部15からの給水が持続することで、水素発生剤2から染出る水は台座部22に設けた貫通孔23から容器本体の底部13a側に排水される。
これにより、底部13aに排水が貯留する。
本発明は、給水部15であるノズルの口径等によって給水速度や給水量を調整でき、これにより、水素発生速度や水素発生量を予測できる。
また、水素発生剤の薬剤量を調整することで、水素発生の持続時間の調整も可能である。
そこで、容器本体の底部13aに貯留する排水量を予測し、脚部の高さや脚部に設ける台座部の位置等を調整することで、水素発生量の低下時に水素発生剤が排水に接触するように設定してもよい。
【0016】
本発明は、水素発生剤に水を少しずつ供給し、徐々に化学反応を起こさせるので、従来の水没方式に比べて必要な水量は少なくなる。
例えば、水槽内の貯水量を250ml程度にすることで、水素発生器はコンパクトとなり、持ち運びもしやすい。
さらに、
図3に示すように水素発生器をヒートカバーで覆ってもよい。
本実施例のヒートカバーは、メッシュタイプ等のカゴ容器31に取手32を取り付けて持ち運びやすくしてあり、これにより安全性や移動性にも優れる。
【符号の説明】
【0017】
1 水
2 水素発生剤
11 水素取出部
12 蓋体
13 容器本体
14 水槽
15 給水部
16 水素経路
20 スペーサ