(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105370
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】座席用のシート材
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20230724BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20230724BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20230724BHJP
B32B 3/14 20060101ALI20230724BHJP
A47C 31/11 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B60N2/58
B32B5/02 Z
B32B3/30
B32B3/14
A47C31/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006149
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】304048584
【氏名又は名称】丸和ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】木田 博久
【テーマコード(参考)】
3B087
4F100
【Fターム(参考)】
3B087DE03
3B087DE05
3B087DE10
4F100AK52B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA02B
4F100DC23B
4F100DD04B
4F100DG11A
4F100EH46B
4F100GB08
4F100GB31
4F100GB81
4F100JM01B
(57)【要約】
【課題】長時間にわたって座り心地が良く、汚れが付きにくく、抗菌,抗カビ性に優れた座席用のシート材の提供を目的とする。
【解決手段】座席用のシート材であって、シート用生地の表面にシリコーン樹脂からなる複数の凸部を形成してあることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席用のシート材であって、シート用生地の表面にシリコーン樹脂からなる複数の凸部を形成してあることを特徴とする座席用のシート材。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂は油性のシリコーン又は水性のエマルジョン型シリコーンを原材料に用いたものであることを特徴する請求項1記載の座席用のシート材。
【請求項3】
前記複数の凸部はドットパターン状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の座席用のシート材。
【請求項4】
前記座席は車両の座席,航空機の座席,船舶の座席,建築物の屋内座席,遊戯機器の座席,二輪車のサドル座席のうち、いずれかに用いられることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の座席用のシート材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が座るのに用いられる座席用のシート材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車,航空機等の乗り物に長時間乗車したり、運転したりする場合や、映画館やコンサートホール等にて長時間座っている場合等には、疲れが出たり、汗ばんだりすることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、座席シートの座部及び背もたれ部に、突起部と磁石を配置した技術を開示し、特許文献2にはエンボス模様を形成した座席シート生地を開示する。
また、特許文献3には、表面にポリアクリル酸エステル,ポリエチレン,ポリ塩化ビニル等からなるベース樹脂に発泡剤を混合して、加熱発砲により突起部を形成するシート体を開示する。
【0004】
しかし、上記に開示されている突起部(凸部)は、いずれも樹脂シート材を加熱し、エンボス加工したものや、アクリル系,塩ビ系の樹脂を用いた突起部であるために、汚れが付着しやすかったり、カビ等の発生による抗菌性に劣る。
また、耐熱性が不充分であり、長く人が座っていると軟化し、形状が潰れたり、生地材から剥離したりする恐れがある。
したがって、長時間にわたって座り心地を維持するのが難しかった。
そこで、発明者は、シリコーン樹脂を用いて、シート用生地に複数の凸部を形成することを検討し、本発明に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-17218号公報
【特許文献2】特開2017-113937号公報
【特許文献3】特開2005-185559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、長時間にわたって座り心地が良く、汚れが付きにくく、抗菌,抗カビ性に優れた座席用のシート材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る座席用のシート材は、座席用のシート材であって、シート用生地の表面にシリコーン樹脂からなる複数の凸部を形成してあることを特徴とする。
ここで、シリコーン樹脂は油性のシリコーン又は水性のエマルジョン型シリコーンを原材料に用いたものであってもよい。
【0008】
ここで、油性のシリコーンは、Si-O-Siのシロキサン結合を骨格とし、アルキル基,アルケニル基,フェニル基等の官能基が結合していることで、オイル状になったり、有機溶媒にて液状になっている。
これらは、加熱や結合剤(硬化剤)の添加により高分子化し、シリコーン樹脂になるが、ゴム弾性を有しているものも本発明におけるシリコーン樹脂に含まれる。
油性シリコーンを用いると、シリコーンの含有率を水性シリコーンよりも多くすることができ、硬化前の液状シリコーンにおいてシリコーンの含有率18~25質量%、硬化後のシリコーン含有率20~40質量%にすることができる。
【0009】
また、水性のエマルジョン型シリコーンは、環状シロキサン等の固形分をエマルジョン化して水溶性にしたものである。
この場合に、必要に応じてポリアクリル酸系等の増粘剤を加えて使用する。
【0010】
本発明において、シート用生地の表面にシリコーン樹脂からなる複数の凸部を形成するのは、人が座席に座った際に座部や背もたれが、その臀部や背部にフィットし、ずれを防止する。
また、凸部を有することで通気性を有し、汗ばむのを抑える。
したがって、座席の用途等により、凸部の形状や配置パターンを選定することができる。
例えば、複数の凸部をドットパターン状に形成してもよい。
ドットの大きさは外径が1~8mm程度、ドットの間隔は3~20mmで、格子状,千鳥状等に配置してもよい。
【0011】
本発明が適用される座席としては、乗用車,トラック,タクシー,バス,農機,建設機械等の車両の座席、旅客機やヘリコプター等の航空機の座席、電車や鉄道車両の座席、各種船舶等の座席、コンサート会場,映画館,ホテル等の屋内用の座席、自転車,オートバイ等の二輪車用のサドル座席等、人が座るのに用いられる座席に用いることができる。
さらには、医療,介護,福祉等の各種施設において、人が座ったり、横になって移動するのに使用される移動機器のシート材にも適用できる。
【0012】
上記の座席において、シリコーン樹脂からなる複数の凸部を臀部に位置する座部にドット状に設けると、ずれを防止するとともに適度の刺激を与えるので、座り心地がよい。
また、背もたれ部に複数の凸部をドット状に設けると、背部のずれを抑えるとともに、通気性を確保することができる。
また、座席のシート材として直接的に用いても、シートカバーとして用いてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る座席用のシート材にあっては、複数の凸部をシリコーン樹脂で形成したので、従来のアクリルや塩化ビニルを用いたものと比較し、適度なシリコーン弾性を有し、耐久性に優れる。
シリコーン樹脂は、防汚性,抗菌性に優れ、衛生的である。
また、耐熱性に優れるので、人が座っている際のずれによる熱変形も小さい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】座席用の生地にシリコーン樹脂の凸部を形成した例を示す。(a)は縦横格子状にドットを配列した例、(b)はチドリ状に交互に配列した例を示す。
【
図2】本発明に係るシート材の製造例を示す。(a)は複数のドット孔を形成したスクリーンと生地の配置関係を示し、(b)は硬化凸部の形状例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る表面にシリコーン樹脂の凸部を形成した例としてドットパターンの例を
図1に示し、その製造方法を
図2に示す。
本発明は、これに限定されるものではないが、以下、図に基づいて代表例をを説明する。
【0016】
図1(a)は、シート生地1に間隔d
1からなる複数のドット状にシリコーン樹脂からなる凸部2を形成した例であり、
図1(b)はチドリ状に凸部を形成した例である。
【0017】
このようなドットパターンは、生地シートの表面にシンナー等の溶済を用いて油性シリコーンの流動性を調整し、パターン状に滴下して得ることもできる。
幅広のシート生地に一度に複数の凸部を形成するには、例えば
図2に示したスクリーン印刷法が適している。
【0018】
シート生地1の上に極く僅かな隙間d
0を有するようにシルクスクリーンと一般的に称されている版3を配置する。
版3には、要求されるドットの配列パターンに合せて複数の穴3aが形成されている。
版3の上に流動性を調整した油性の液状シリコーンを置き、スキージー4等のヘラにて、この液状シリコーンを引き延ばしながら版3をシート生地1側に押し付ける。
その後に版3を取り外すと、
図2(b)に示すように液状シリコーンが、その表面張力等により球面形状になり、遠赤外線照射等の加熱乾燥工程を経て硬化される。
なお、水性エマルジョン型シリコーンを用いても同様に製造できる。
このような工程を経ることで、シート生地に強固に固着されたシート材が得られる。
【0019】
本実施例では、球面凸状の例を示したが、その大きさや配置間隔は座席の用途に応じて選定される。
例えば、ドットの外径が1~5mm程度であれば、粘度を高めに調整し、球面形状にし、ドットの外径を5~8mm程度のやや大きいものにする場合には、粘度を下げ、硬化時に表面が緩やかな凸形状にすることができる。
さらには、シルクスクリーンの開口部の形状を異形にすることで、星形,楕円形状,四角形やその他の多角形に形成することもできる。
【0020】
本発明に用いられるシート生地は、織物,編み物,不織布であってもよく、天然繊維,合成繊維,ファブリックであってもよい。
いずれの場合にも液状のシリコーンを用いることで、生地との密着性に優れる。
【符号の説明】
【0021】
1 シート生地
2 凸部
4 スキージー