(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105382
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 19/22 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
B65G19/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006169
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 拓也
【テーマコード(参考)】
3F013
【Fターム(参考)】
3F013AA11
3F013AC01
3F013AD12
3F013BB11
(57)【要約】
【課題】ワークを倒すことなく押し出すことができる搬送装置を提供する。
【解決手段】本開示に係る搬送装置は、底面と、傾斜面と、を有し、上方に向かうにつれて傾斜面が底面の端部から離れる方向に傾斜するワークを搬送する搬送装置である。搬送装置は、ワークが載置され、ワークを搬送方向に搬送する搬送部と、搬送部に載置された状態のワークを押し出す押し出し機構と、を備える。搬送部は、ワークの傾斜面が搬送方向の上流となるようにワークが載置される。押し出し機構は、ワークの傾斜面に向けて移動したのち傾斜面と接触し、ワークを搬送方向の下流に向けて押す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と、傾斜面と、を有し、上方に向かうにつれて前記傾斜面が前記底面の端部から離れる方向に傾斜するワークを搬送する搬送装置であって、
前記ワークが載置され、前記ワークを搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部に載置された状態の前記ワークを押し出す押し出し機構と、
を備え、
前記搬送部は、前記ワークの前記傾斜面が前記搬送方向の上流となるように前記ワークが載置され、
前記押し出し機構は、前記ワークの前記傾斜面に向けて移動したのち前記傾斜面と接触し、前記ワークを前記搬送方向の下流に向けて押す、
搬送装置。
【請求項2】
前記押し出し機構が前記傾斜面に向けて移動する方向が、前記搬送部の下方から前記搬送部の上方かつ前記搬送方向の下流に向かう方向である、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記押し出し機構は、前記傾斜面と接触する先端面を有し、
前記先端面と前記搬送方向とがなす第1角度が、前記押し出し機構が前記傾斜面に向けて移動する方向に直交する直交方向と前記搬送方向とがなす第2角度よりも大きい、
請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記押し出し機構を前記傾斜面に向けて移動させるアクチュエータをさらに備え、
前記搬送部は、前記搬送方向に延びるスリットを有し、
前記アクチュエータは前記搬送部の下方に配置され、
前記押し出し機構は前記スリットに挿通し、前記傾斜面に向けて移動するにつれて前記搬送部の上面から突出する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記ワークを前記搬送部上の所定の停止位置で停止させる停止部をさらに備え、
前記押し出し機構は、前記停止位置に停止した前記ワークを押す、
請求項1から4のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記ワークが停止した停止状態と、前記ワークが前記搬送部上を移動可能な解除状態と、を切り替える切替部をさらに備え、
前記押し出し機構は、前記切替部が前記解除状態に切り替えた場合、前記ワークを押す、
請求項1から5のいずれか1項に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、荷物や自動車部品などのワークを搬送する搬送装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような搬送装置では、搬送中にワークが止まることがないようにワークを押し出す必要がある。特許文献1の搬送装置は、コンベヤ上にワークを載せ、コンベヤの動力を用いてワークを搬送する。
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような搬送装置では、ワークが倒れないように、ワークを安定させた状態でワークを押し出す必要がある。ところが、例えば、自動車のヘッドレストのようなワークは、底面と、傾斜面と、を有する。ヘッドレストは、上方に向かうにつれて傾斜面が底面の端部から離れるようなオーバーハングを有するので、ワークを押し出す際にワークが倒れやすい。
【0005】
本開示の課題は、ワークを倒すことなく押し出すことができる搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る搬送装置は、底面と、傾斜面と、を有し、上方に向かうにつれて傾斜面が底面の端部から離れる方向に傾斜するワークを搬送する搬送装置である。搬送装置は、ワークが載置され、ワークを搬送方向に搬送する搬送部と、搬送部に載置された状態のワークを押し出す押し出し機構と、を備える。搬送部は、ワークの傾斜面が搬送方向の上流となるようにワークが載置される。押し出し機構は、ワークの傾斜面に向けて移動したのち傾斜面と接触し、ワークを搬送方向の下流に向けて押す。
【0007】
この搬送装置によれば、押し出し機構がワークの傾斜面に接触し、ワークを搬送方向の下流に押し出すため、ワークを倒すことなく、押し出すことができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ワークを倒すことなく押し出すことができる搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態における搬送装置の側面図。
【
図2】本開示の実施形態における搬送装置の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について、図を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、ワークWを搬送する際の手前側を搬送装置1の前、反対側を後、搬送装置1の前側からみて左側を左、右側を右、上側を上、下側を下と明細書および図面に示す。
【0011】
図1に示すように、搬送装置1は、コンベア2(搬送部の一例)と、押し出し機構4と、ストッパ(停止部の一例)6と、制御装置8と、を備える。搬送装置1は、ワークWを搬送方向Fに向かって搬送するための装置である。ワークWは、底面W1と、傾斜面W2と、を有し、上方に向かうにつれて傾斜面W2が底面W1の端部W3から離れる方向に傾斜する。
【0012】
本実施形態では、ワークWは、自動車のシートに使用されるヘッドレストである。このようなヘッドレストは、表皮を袋状に縫製し、袋状の表皮に発泡材料を注入し発泡することによって形成される。このほか、ヘッドレストは、ヘッドレストの形状に形成した発泡体に、表皮を接着することによって形成する場合もある。ヘッドレストは、発泡体の中に図示しないヘッドレストフレームを含む。またヘッドレストは、ヘッドレストフレームから延び、シートに取り付く取付軸W4を含む。このようなヘッドレストの表皮として、例えば、皮革、合成皮革などを用いた場合、底面W1において表皮とコンベア2との抵抗が大きくなる。このため、搬送装置1は、このような表皮であっても、ヘッドレストを搬送方向Fに確実に押し出すことが好ましい。
【0013】
コンベア2には、ワークWの底面W1が上面2aに載置され、傾斜面W2が搬送方向Fの上流となるように、ワークWが載置される。言い換えると、ワークWの重心Gが、ワークWの底面W1の中心から延び、搬送方向Fと上下に直交する線C1よりも、搬送方向Fの上流側に位置するようにワークWが載置される。コンベア2は、ワークWがこのような状態を維持したまま、ワークWを搬送方向Fに搬送する。本実施形態では、コンベア2には、左右方向に配置された回転軸を有するローラ2bが複数並んで配置される。コンベア2は、前後方向に向かうにつれて向けて下方に傾斜して配置される。すなわち、本実施形態では搬送方向Fが上下に傾斜して設けられる。このように、搬送方向Fが上下に傾斜することによって、ワークWの自重によりワークWがローラ2bを転がしながら上面2a上を移動する。
【0014】
図2に示すように、本実施形態のコンベア2の左右方向の中央には、搬送方向Fに延びるスリット2cが設けられる。ローラ2bは、スリット2cの左右に配置される。スリット2cには、後述する押し出し機構4の板状部材4cが挿通する。
【0015】
また、本実施形態では、コンベア2の左右方向の長さがヘッドレストの取付軸W4の配置間隔より狭く形成される。このようにコンベア2を形成することによって、取付軸W4がコンベア2の左右方向の両端を通過して下方にむけて延び、取付軸W4に案内されてヘッドレストが搬送方向Fに移動する。これによって、ヘッドレストがコンベア2の左右方向に外れることなく搬送方向Fに向けて移動できる。
【0016】
図3に示すように、押し出し機構4は、コンベア2に載置された状態のワークWを押し出す。押し出し機構4は、アクチュエータ4aと、先端面4bを有する板状部材4cと、作動部4dと、を有する。作動部4dは、移動方向Vに対して変位する。アクチュエータ4aは、作動部4dを空圧や油圧によって動かす方式、作動部4dをモータなどによって電気的によって動かす方式など、種々の方式の機械であればよい。アクチュエータ4aは、制御装置8によって作動部4dの作動が制御される。本実施形態では、作動部4dの移動方向Vが、上方かつ搬送方向Fの下流に向くように、作動部4dを上下方向に対して後方に傾斜させてアクチュエータ4aが配置される。
【0017】
板状部材4cは、アクチュエータ4aの作動部4dに取り付けられる。板状部材4cのコンベア2の左右方向の厚さは、スリット2cの幅よりも狭い。これによって、板状部材4cがスリット2cを挿通する。先端面4bは、板状部材4cの上端に形成される。板状部材4cは、樹脂、木材、など種々の材料で形成されればよい。先端面4bには、発泡体などの緩衝部材を設けてもよい。
【0018】
アクチュエータ4aは、コンベア2のスリット2cの下方に配置される。板状部材4cは、スリット2cに挿通し、傾斜面W2に向けて移動するにつれてコンベア2の上面2aから突出する。このように、コンベア2の左右方向の中央にあるスリット2cを介して、板状部材4cを突出させることによって、ワークWの左右方向の中央を押し出すことができる。これによって、ワークWが左右方向に傾いて押されることを防止できる。この結果、ワークWがバランスを崩すことなく押し出される。
【0019】
板状部材4cは、ワークWの傾斜面W2と接触し、ワークWを搬送方向Fの下流に向けて押し出す。また、板状部材4cは、ワークWの重心Gに向かって移動し、ワークWを押し出す際に、ワークWを重心Gの下方から支えることによってワークWが倒れることを防止している。
【0020】
本実施形態では、板状部材4cの先端面4bと搬送方向Fとがなす第1角度a1が、移動方向Vの直交方向C2が搬送方向Fとがなす第2角度a2よりも大きい。具体的には先端面4bは、傾斜面W2に面接触するように、傾斜面W2の搬送方向Fに対する角度a3と略同一の角度で形成される。一方、作動部4dの移動方向Vの変位量は、搬送方向Fの変位量V1と、搬送方向Fと直交方向の変位量V2に分解できる。したがって、移動方向Vが搬送方向Fの直交方向に近いほど、先端面4bが傾斜面W2に面接触するまでの、作動部4dの変位量V2を短くできる。このため、第1角度a1を第2角度a2よりも大きくし、先端面4bを傾斜面W2の形状に合わせて搬送方向Fよりも下方に傾斜させることによって、アクチュエータ4aはより短いストロークでワークWを押し出すことができる。
【0021】
また、変位量V1は、搬送方向Fの押し出し量となる。このため、変位量V1が大きすぎると、ワークWが倒れる原因となる。このため、第1角度a1を第2角度a2と異なる角度にすることによって、傾斜面W2の角度に依存することなく、変位量V1が決定できる。これによって、押し出し機構4がより適切な押し出し量で、ワークWを搬送方向Fの下流に押し出すことができる。
【0022】
ストッパ6は、ワークWを所定の位置に停止させる装置である。本実施形態ではストッパ6は、コンベア2の下部に配置され、ヘッドレストの取付軸W4を搬送方向Fの下流側から支持する装置である。また、本実施形態では、ストッパ6は、押し出し機構4の搬送方向Fの下流側に配置される。しかし、押し出し機構4とストッパ6との位置関係は、ワークWの大きさに合わせて適宜変更してもよい。
【0023】
ストッパ6は、コンベア2の左右方向にスライドするスライド部材6aを動かすことによって、ワークWが停止した停止状態と、ワークWがコンベア2上を移動可能な解除状態と、を切り替える。ストッパ6は、スライド部材6aを空圧や油圧によって動かす方式、スライド部をモータなどによって電気的によって動かす方式など、種々の方式の機械であればよい。ストッパ6は、制御装置8と接続されスライド部材6aの作動が制御される。
【0024】
制御装置8は、作動制御部8aと、切替部8bと、を有する。制御装置8は、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等と、を含むマイクロコンピュータによって構成され、このマイクロコンピュータが空圧、油圧、電気を制御してもよい。作動制御部8aは、アクチュエータ4aを作動させる。切替部8bは、スライド部材6aを作動させワークWが停止した停止状態と、ワークWがコンベア2上を移動可能な解除状態と、を切り替える。制御装置8は、切替部8bが解除状態に切り替えた場合、押し出し機構4のアクチュエータ4aを作動させてワークWを押す。
【0025】
次に
図4を用いて、ワークWの搬送手順を説明する。なお、本実施形態ではワークWがヘッドレストである例を用いて説明する。
【0026】
まず、
図4(a)に示すように、コンベア2の上面2aに底面W1が接するようにヘッドレストを載置する。このとき、ストッパ6は停止状態の位置にスライド部材6aを作動させる。ヘッドレストは搬送方向Fに流れ、ストッパ6のスライド部材6aに取付軸W4が接触し停止する。ストッパ6の位置では、検査装置などによってヘッドレストの品質などの検査が行われる。
【0027】
ヘッドレストの検査が終了したのち、制御装置8の切替部8bがスライド部材6aを作動させて解除状態に切り替える。制御装置8の作動制御部8aは、切替部8bが解除状態に切り替えたことを示す信号を受信し、押し出し機構4のアクチュエータ4aを作動させる。
図4(b)に示すように、アクチュエータ4aは、作動部4dを作動させて板状部材4cを傾斜面W2に向けて移動させる。
【0028】
押し出し機構4の作動部4dが作動し、板状部材4cの先端面4bが傾斜面W2に接触すると、先端面4bがヘッドレストを搬送方向Fに押し出す。
図4(c)に示すように、押し出し機構4に押し出されたヘッドレストは、ストッパ6の位置から移動し、自重によってコンベア2上を移動する。
【0029】
このようなヘッドレストは、皮革、合成皮革などを用いた場合、底面W1において表皮とコンベア2との抵抗が大きくなる。したがって、ヘッドレストが所定の停止位置で停止状態となった場合、自重によっては搬送方向Fに移動しない場合もある。しかし、このような構成の搬送装置1を用いれば、所定の停止位置に停止したヘッドレストがバランスを崩し倒れることなく、確実に搬送方向Fに移動する。
【0030】
以上説明した通り、本開示によれば、ワークWを倒すことなく押し出すことができる搬送装置1を提供することがきる。
【0031】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0032】
(a)上記実施形態では、ワークWはヘッドレストを例に説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。ワークWは、底面と、傾斜面と、を有し、上方に向かうにつれて傾斜面が底面の端部から離れる方向に傾斜するものであれば、いかなるワークWであってもよい。
【0033】
(b)上記実施形態では、コンベア2は、ローラ2bを複数配置するものを例に説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。コンベア2は、例えば、ワークWを滑らせるレールなどであってもよい。また、コンベア2は、搬送方向Fに向けて下方に傾斜するものを例に説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、コンベア2が搬送方向Fに水平に配置されたものでもよい。押し出し機構4は、水平に配置されたコンベア2上に載置されたワークWを押し出すために用いてもよい。
【0034】
(c)上記実施形態では、ストッパ6によって所定の停止位置に停止状態となったワークWを、押し出し機構4によって押し出す例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。押し出し機構4は、コンベア2上のいずれかの位置で停止したワークWを押し出すものであればよい。
【符号の説明】
【0035】
1:搬送装置,2:コンベア(搬送部の一例),2a:上面
2b:ローラ,2c:スリット,4:押し出し機構,4a:アクチュエータ
4b:先端面,4c:板状部材,6:ストッパ(停止部の一例),
8:制御装置,8a:作動制御部,8b:切替部
F:搬送方向
G:重心,V:移動方向,V1:変位量,V2:変位量
W:ワーク,W1:底面,W2:傾斜面,W3:端部,W4:取付軸
a1:第1角度,a2:第2角度,a3:角度