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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105455
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】締固め地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
E02D3/10 104
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006289
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【弁理士】
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】矢部 浩史
(72)【発明者】
【氏名】永石 雅大
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043CA02
2D043CA06
2D043DB02
2D043DB13
2D043EA01
(57)【要約】
【課題】地盤改良において締固め砂杭を造成するときに地盤中に発生する側方変位を小さくしつつ、この地盤改良の作業効率の向上をはかるとともに、地盤改良の工費を安価にする。
【解決手段】ケーシングパイプ3を地盤中の所定深度まで貫入する貫入工程と、貫入したケーシングパイプ3を所定の長さ引抜くとともに砂材料Sを排出する排出工程と、ケーシングパイプ3を所定の長さ貫入して排出した砂材料Sを打ち戻す打ち戻し工程を有し、排出工程と打ち戻し工程を上方に向かって順次繰り返して、地盤中に締固め砂杭Tを造成する締固め地盤改良方法であって、打ち戻し工程では、ケーシングパイプ3を10rpmから20rpmの範囲の回転速度Rで回転するとともに、ケーシングパイプ3を0.5m/minから3.0m/minの範囲の貫入速度Pで貫入する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングパイプを地盤中の所定深度まで貫入する貫入工程と、貫入したケーシングパイプを所定の長さ引抜くとともに砂材料を排出する排出工程と、ケーシングパイプを所定の長さ貫入して排出した砂材料を打ち戻す打ち戻し工程を有し、排出工程と打ち戻し工程を上方に向かって順次繰り返して、地盤中に締固め砂杭を造成する締固め地盤改良方法であって、
打ち戻し工程では、ケーシングパイプを10rpmから20rpmの範囲の回転速度で回転するとともに、ケーシングパイプを0.5m/minから3.0m/minの範囲の貫入速度で貫入することを特徴とする締固め地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良において締固め砂杭を造成するときに地盤中に発生する側方変位を小さくする締固め地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良を行う締固め地盤改良方法は、地盤中に砂材料を排出し、排出した砂材料を圧縮することで、地盤中に拡径した締固め砂杭を造成し、地盤を強固なものに改良するサンドコンパクションパイル工法などが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
締固め地盤改良方法に用いる地盤改良装置は、前部にマストを立設した施工機を備えるとともに、立設したマストに沿って上下に向かう地盤中に貫入可能なケーシングパイプを備える。施工機は、ケーシングパイプの地盤中への貫入又は地盤中からの引抜きを行う。ケーシングパイプは、円筒形の管で、その内部を砂材料の通る供給路にし、その下部に排出口を設けて、排出口から砂材料を地盤中に排出する。
【0004】
締固め地盤改良方法は、ケーシングパイプを地盤中の所定深度まで貫入する貫入工程と、貫入したケーシングパイプを所定の長さ引抜くとともに砂材料を排出する排出工程と、ケーシングパイプを所定の長さ貫入して排出した砂材料を打ち戻す打ち戻し工程を有し、排出工程と打ち戻し工程を上方に向かって順次繰り返す。これにより、地盤中に拡径した締固め砂杭を造成することができ、地盤を強固なものに改良できる。
【0005】
ところが、締固め地盤改良方法では、ケーシングパイプより砂材料を排出する排出工程と、排出した砂材料を打ち戻す打ち戻し工程を繰り返して、地盤中に拡径した締固め砂杭を造成するため、地盤中において水平方向に変位する側方変位が発生する。これにより、作業現場の近傍に、家屋やビルなどの既設構造物があると、地盤中に発生する側方変位によって既設構造物に損傷などの悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、家屋やビルなどの既設構造物が近傍にある作業現場では、この締固め地盤改良方法を用いて地盤改良を行うことができないという問題がある。
【0006】
そこで、この問題に対し、従来、ケーシングパイプを地盤中の所定深度まで貫入する貫入工程で、ジェット水を地盤中のケーシングパイプの周りに噴射してケーシングパイプの周りの領域を緩み状態又は泥状化状態にし、それから排出工程と打ち戻し工程を繰り返して地盤中に拡径した締固め砂杭を造成する。これにより、ケーシングパイプの周りの緩み状態又は泥状化状態の領域により、締固め砂杭を造成するときに地盤中に発生する側方変位を小さくすることができ、家屋やビルなどの既設構造物が近傍にある作業現場でも地盤改良を行うことのできる締固め地盤改良方法が知られている(特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、従来の締固め地盤改良方法では、ケーシングパイプを地盤中に貫入する貫入工程で、ケーシングパイプの周りにジェット水を噴射し、地盤中のケーシングパイプの周りの領域を緩み状態又は泥状化状態にする必要があり、その作業に時間がかかり、作業効率が悪い。
また、ケーシングパイプにジェット水を噴射するための噴射装置や水供給管などの専用機器を設けるとともに、水を供給するための周辺装置に備えなくてはならず、そのため、地盤改良装置が高価なものになり、地盤改良の工費が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8-284146号公報
【特許文献2】特開2018-59285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、地盤改良において締固め砂杭を造成するときに地盤中に発生する側方変位を小さくしつつ、この地盤改良の作業効率の向上をはかるとともに、地盤改良の工費を安価にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、地盤改良において地盤中に発生する側方変位を小さくするために、ケーシングパイプを所定の長さ貫入して排出した砂材料を打ち戻す打ち戻し工程でのケーシングパイプの回転速度とケーシングパイプの貫入速度に着目した。このケーシングパイプの回転速度と貫入速度を所定の速度に、つまりケーシングパイプの単位貫入速度当たりの回転速度を従来のものと比べて上げることで、側方変位を小さくできることを突き止め、本発明の締固め地盤改良方法を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、ケーシングパイプを地盤中の所定深度まで貫入する貫入工程と、貫入したケーシングパイプを所定の長さ引抜くとともに砂材料を排出する排出工程と、ケーシングパイプを所定の長さ貫入して排出した砂材料を打ち戻す打ち戻し工程を有し、排出工程と打ち戻し工程を上方に向かって順次繰り返して、地盤中に締固め砂杭を造成する締固め地盤改良方法であって、打ち戻し工程では、ケーシングパイプを10rpmから20rpmの範囲の回転速度で回転するとともに、ケーシングパイプを0.5m/minから3.0m/minの範囲の貫入速度で貫入する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地盤改良において地盤中に発生する側方変位を小さくすることができ、これとともに、作業を簡単にして作業効率の向上をはかることができ、かつ地盤改良装置が高価なものになるのをなくして、地盤改良の工費を安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】地盤改良装置を示す側面図である。
図2図2Aは、貫入工程でのケーシングパイプの貫入を開始するときの図、図2Bは、貫入工程でのケーシングパイプの貫入が完了したときの図である。
図3図3Aは、排出工程での砂材料を排出しているときの図、図3Bは、打ち戻し工程での砂材料を打ち戻しているときの図である。
図4図4Aは、排出工程での砂材料を排出しているときの図、図4Bは、打ち戻し工程での砂材料を打ち戻しているときの図である。
図5】地盤中に拡径した締固め砂杭を造成したときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の締固め地盤改良方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る締固め地盤改良方法(以下、単に本締固め地盤改良方法という)は、地盤改良において締固め砂杭を造成するときに地盤中に発生する側方変位を小さくすることで、既設構造物が近傍にある作業現場でも地盤改良を行えるようにするものである。ここでの既設構造物とは、家屋、ビル、倉庫などの建築物、あるいは道路、鉄道、橋などの構築物である。ただし、これらに限らない。
【0015】
図1は、地盤改良装置を示す側面図である。
本締固め地盤改良方法に用いる地盤改良装置は、図示のように、前部にマスト2を立設した自走可能な施工機1を備えるとともに、立設したマスト2に沿って上下に向かう地盤中に貫入可能なケーシングパイプ3を備える。施工機1には、ケーシングパイプ3を回転するための回転装置4と、ケーシングパイプ3を昇降するための昇降装置5を備え、この施工機1において、ケーシングパイプ3の地盤中への貫入又は地盤中からの引抜きを行う。また、ケーシングパイプ3は、円筒形の管で、その内部を砂材料の通る供給路にする。ケーシングパイプ3の下部には、排出口6を設け、排出口6から砂材料を地盤中に排出する。また、ケーシングパイプ3の上部には、砂材料をケーシングパイプ3の内部に投入する投入口7を備えている。
【0016】
次に、本締固め地盤改良方法について説明する。
図2Aは、貫入工程でのケーシングパイプ3の貫入を開始するときの図、図2Bは、貫入工程でのケーシングパイプ3の貫入が完了したときの図である。図3Aは、排出工程での砂材料Sを排出しているときの図、図3Bは、打ち戻し工程での砂材料Sを打ち戻しているときの図である。図4Aは、排出工程での砂材料Sを排出しているときの図、図4Bは、打ち戻し工程での砂材料Sを打ち戻しているときの図である。図5は、地盤中に拡径した締固め砂杭Tを造成したときの図である。
【0017】
本締固め地盤改良方法は、ケーシングパイプ3を貫入する貫入工程と、ケーシングパイプ3を引抜くとともに砂材料Sを排出する排出工程と、ケーシングパイプ3を貫入して砂材料Sを打ち戻す打ち戻し工程を有する。
【0018】
貫入工程は、図2A図2Bに示すように、ケーシングパイプ3を地盤中の所定深度まで貫入する工程である。このケーシングパイプ3の貫入では、施工機1に備える回転装置4及び昇降装置5によりケーシングパイプ3を回転させながら所定深度まで貫入する。ここでの所定深度は、例えば6mから10mである。ただし、これに限らない。
【0019】
排出工程は、図3Aに示すように、貫入工程で貫入したケーシングパイプ3を所定の長さ引抜くとともに砂材料Sを排出する工程である。この砂材料Sの排出は、ケーシングパイプ3の下部に設ける排出口6から砂材料Sを地盤中に排出する。また、ケーシングパイプ3を引抜くときの所定の長さは、例えば20cmから50cmである。ただし、これに限らない。この所定の長さは、作業現場の地盤の種類(土質)などによって異なる。
【0020】
打ち戻し工程は、図3Bに示すように、ケーシングパイプ3を所定の長さ貫入して排出工程で排出した砂材料Sを打ち戻す工程である。このケーシングパイプ3の貫入では、施工機1に備える回転装置4及び昇降装置5によりケーシングパイプ3を回転させながら所定の長さ貫入する。このケーシングパイプ3を貫入することで、地盤中に排出した砂材料Sを拡径しながら締め固める。
【0021】
続いて、図4A図4Bに示すように、排出工程と打ち戻し工程を上方に向かって順次繰り返し行う。このように、砂材料Sの排出(排出工程)と砂材料Sの締め固め(打ち戻し工程)を繰り返し行うことで、図5に示すように、地盤中に拡径した締固め砂杭Tを造成する。
【0022】
すなわち、本締固め地盤改良方法は、ケーシングパイプ3を地盤中の所定深度まで貫入する貫入工程と、貫入工程で貫入したケーシングパイプ3を所定の長さ引抜くとともに砂材料Sを排出する排出工程と、ケーシングパイプ3を所定の長さ貫入して排出工程で排出した砂材料Sを打ち戻す打ち戻し工程を有し、排出工程と打ち戻し工程を上方に向かって順次繰り返して、地盤中に締固め砂杭Tを造成する。これにより、地盤中に造成した拡径した締固め砂杭Tにより、締固め砂杭Tの周囲の地盤も締め固められ、締固め砂杭Tとともにその周囲の地盤も強固なものに改良することができる。
【0023】
次に、本締固め地盤改良方法での地盤中に発生する側方変位を小さくする方法について説明する。
砂材料Sを排出する排出工程と砂材料Sを打ち戻す打ち戻し工程を上方に向かって順次繰り返して、地盤中に締固め砂杭Tを造成するが、拡径する締固め砂杭Tにより、その周囲の地盤に水平方向に押し出す力が加わり、これにより、地盤中において水平方向に変位する側方変位が発生する。
【0024】
そこで、本締固め地盤改良方法では、地盤中に発生する側方変位を小さくするため、図3B図4Bに示すように、ケーシングパイプ3を回転させながら所定の長さ貫入して砂材料Sを打ち戻す打ち戻し工程で、ケーシングパイプ3を貫入するときのケーシングパイプ3の回転速度Rとケーシングパイプ3の貫入速度Pを以下の所定の速度にする。この所定の速度については、ケーシングパイプ3の単位貫入速度当たりのケーシングパイプ3の回転速度を従来のものと比べて上げたものである。
【0025】
打ち戻し工程でのケーシングパイプ3の回転速度Rを、10rpmから20rpmの範囲にする。この10rpmから20rpmの範囲の回転速度Rは、従来のケーシングパイプの回転速度が無回転あるいは5rpm程度であるので、従来の回転速度の倍以上の速い速度である。これとともに、打ち戻し工程でのケーシングパイプ3の貫入速度Pを、0.5m/minから3.0m/minの範囲にする。この0.5m/minから3.0m/minの範囲の貫入速度Pは、従来のケーシングパイプの貫入速度が5.0~10.0m/minであるので、従来の貫入速度の半分近くかそれ以下の遅い速度である。
【0026】
打ち戻し工程でのケーシングパイプ3の回転速度Rを、10rpmから20rpmの範囲にすると、従来の無回転あるいは5rpm程度の回転速度のときと比べて、砂材料Sを締め固めて拡径するときの拡径する力が強くなる。これとともに、ケーシングパイプ3の貫入速度Pを、0.5m/minから3.0m/minの範囲にすることで、従来の5.0~10.0m/minの貫入速度のときと比べて、砂材料Sを締め固めて拡径するときの拡径する速度が遅くなり、拡径する力が周囲の地盤に一気に作用することがなく、徐々に作用する。
【0027】
すなわち、ケーシングパイプ3の回転速度Rを、10rpmから20rpmの範囲にして、砂材料Sを締め固めて拡径するときの拡径する力が強くなっても、ケーシングパイプ3の貫入速度Pを、0.5m/minから3.0m/minの範囲にして、砂材料Sを締め固めて拡径するときの拡径する速度を遅くすることで、拡径する力が周囲の地盤に徐々に作用するようになり、これにより、地盤中に発生する側方変位を小さくすることができる。
【0028】
また、打ち戻し工程でのケーシングパイプ3の回転速度Rについては、10rpmから20rpmの範囲にしているが、この回転速度Rを10rpmよりも遅くすると、砂材料Sを締め固めて拡径するときの拡径する力が弱くなり、地盤中に造成する締固め砂杭Tを所定の大きさまで拡径することができなくなる。また、ケーシングパイプ3の回転速度Rを20rpmよりも速くするには、ケーシングパイプ3を回転する施工機1の回転装置4を通常よりも大型のものにしなければならない。そのため、大型の回転装置を取り付けるには、施工機1全体を大型化する必要があり、現実的に難しい。
【0029】
また、打ち戻し工程でのケーシングパイプ3の貫入速度Pについては、0.5m/minから3.0m/minの範囲にしているが、この貫入速度Pを3.0m/minよりも速くすると、砂材料Sを締め固めて拡径するときの拡径する速度が速くなり、拡径する力が周囲の地盤に一気に作用することで、地盤中に発生する側方変位が大きくなる。また、ケーシングパイプ3の貫入速度Pを0.5m/minよりも遅くすると、締固め砂杭Tを1本造成するのに時間がかかる。地盤改良では、締固め砂杭Tを数十本から数百本造成するため、1本の締固め砂杭Tの造成に時間がかかると、工期が大幅に延びるという問題が起こる。
【0030】
以上説明したように、打ち戻し工程でのケーシングパイプ3の回転速度Rとケーシングパイプ3の貫入速度Pを所定の速度(回転速度Rは10rpmから20rpmの範囲の速度、貫入速度Pは0.5m/minから3.0m/minの範囲の速度)にすることで、地盤改良において地盤中に発生する側方変位を小さくすることができる。これにより、家屋やビルなどの既設構造物が近傍にある作業現場でも、既設構造物に側方変位による悪影響を及ぼすことなく、地盤改良を行うことができる。
【0031】
また、打ち戻し工程でのケーシングパイプ3の回転速度Rとケーシングパイプ3の貫入速度Pを所定の速度にするだけであるから、従来のケーシングパイプの周りにジェット水を噴射してケーシングパイプの周りの領域を緩み状態又は泥状化状態にする作業などが不要になり、作業を簡単にして作業効率の向上をはかることができる。これとともに、ジェット水を噴射するための噴射装置や水供給管などの専用機器また周辺装置を備える必要がなくなることで、地盤改良装置が高価なものになるのをなくし、地盤改良の工費を安価にすることができる。
【0032】
次に、本締固め地盤改良方法における地盤中に発生する側方変位について、実験を行ったので、これを説明する。
実験では、地盤中に地中変位計を設置する。地中変位計は、地盤中の地中変位(ここでは、側方変位である)を測定するものである。この地中変位計を使用し、実際に地盤中に締固め砂杭Tを造成し、そのとき発生する側方変位を測定する。この実験において、地盤中に造成する締固め砂杭Tの長さは6m(深度6m)である。
地中変位計は、締固め砂杭Tを造成する位置(締固め砂杭の中心位置)から2m離れた位置に設置する。また、地中変位計では、深度7.5m、深度6.5m、深度5.5m、深度4.5m、深度3.5m、深度2.5m、深度1.5mの各深度で測定する。
実験は、本締固め地盤改良方法による実験例1と、これと比較するための比較例1、比較例2、比較例3である。
【0033】
実験例1は、打ち戻し工程でのケーシングパイプ3の回転速度Rを10rpm、貫入速度Pを2.5m/minにしたものである。
比較例1は、打ち戻し工程でのケーシングパイプ3の回転速度Rを0rpmすなわち無回転、貫入速度Pを5m/minにしたものである。
比較例2は、打ち戻し工程でのケーシングパイプ3の回転速度Rを5rpm、貫入速度Pを5m/minにしたものである。
比較例3は、打ち戻し工程でのケーシングパイプ3の回転速度Rを10rpm、貫入速度Pを5m/minにしたものである。
その結果を、以下の表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示すように、実験例1では、深度7.5mから深度1.5mまで、側方変位が6.0cmを超えることがなかった。
これに対し、比較例1、2、3では、造成する締固め砂杭Tの深度(6m)より下側の深度7.5mと深度6.5mは実験例1と近い値になるが、深度5.5mより上は実験例1の値と大きく異なり、深度4.5mから深度1.5mまで、側方変位が5.0cmを超えており、深度3.5mで、6.0cm以上、深度2.5mで、7.0cm以上、深度1.5mで、8.0cm以上であり、側方変位が大きいことがわかった。
【0036】
以上の通り、本締固め地盤改良方法による実験例1では、締固め砂杭Tを造成するときに地盤中に発生する側方変位を小さくできることが確認できた。
【0037】
また、前述の実験例1と比較例1、比較例2、比較例3において、造成した締固め砂杭Tの外側の地盤の密度を調べた。この地盤の密度は、地盤の複数の深度で密度をそれぞれ調べて、その調べた値の平均値である。
その結果、実験例1が地盤の密度が一番高く、比較例3、比較例2、比較例1の順で密度が低くなった。このことから、本締固め地盤改良方法による実験例1では、造成した締固め砂杭Tの周囲の地盤を密実にできることがわかった。
【0038】
また、前述の実験例1と比較例1、比較例2、比較例3において、締固め砂杭Tを造成したときの盛り上がり土(締固め砂杭Tを造成するときに地盤中から地表面に出てくる土)の量を調べた。
その結果、実験例1での盛り上がり土の量は、約1.1mであり、比較例1と比較例3での盛り上がり土の量は、約1.3m、比較例2での盛り上がり土の量は、約1.5mであった。
この実験例1での盛り上がり土の量が少ないのは、造成した締固め砂杭Tの周囲の地盤が密実になったためで、これにより、盛り上がり土の量が減った。
このように本締固め地盤改良方法による実験例1では、比較例1、比較例2、比較例3と比べても、盛り上がり土の量を少なくできることがわかった。これにより、盛り上がり土の量を少なくできることで、この盛り上がり土の処分のための費用を抑えることができる。
【符号の説明】
【0039】
1…施工機、2…マスト、3…ケーシングパイプ、4…回転装置、5…昇降装置、6…排出口、7…投入口。
図1
図2
図3
図4
図5