IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ノーリツの特許一覧

<>
  • 特開-燃焼装置及び石油給湯器 図1
  • 特開-燃焼装置及び石油給湯器 図2
  • 特開-燃焼装置及び石油給湯器 図3
  • 特開-燃焼装置及び石油給湯器 図4
  • 特開-燃焼装置及び石油給湯器 図5
  • 特開-燃焼装置及び石油給湯器 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105463
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】燃焼装置及び石油給湯器
(51)【国際特許分類】
   F23Q 3/00 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
F23Q3/00 102E
F23Q3/00 605C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006299
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 芳弘
(57)【要約】
【課題】電極棒の先端に油が付着したとしても電極棒の先端において安定して放電させることが可能な燃焼装置を提供する。
【解決手段】燃焼装置は、第1先端を有する第1電極棒と、第2先端を有する第2電極棒と、補助電極と、液体燃料を噴出する噴出口を有するノズルとを備える。第1電極棒及び第2電極棒は、第1先端及び第2先端が間隔を空けて互いに対向するとともに、第1先端及び第2先端が噴出口と間隔を空けて対向するように配置されている。補助電極は、第2電極棒に接続されている。補助電極と第1電極棒との間の距離の最小値は、第1先端と第2先端との間の距離よりも大きい。補助電極とノズルとの距離の最小値は、第1先端と第2先端との間の距離よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1先端を有する第1電極棒と、
第2先端を有する第2電極棒と、
補助電極と、
液体燃料を噴出する噴出口を有するノズルとを備え、
前記第1電極棒及び前記第2電極棒は、前記第1先端及び前記第2先端が間隔を空けて互いに対向するとともに、前記第1先端及び前記第2先端が前記噴出口と間隔を空けて対向するように配置されており、
前記補助電極は、前記第2電極棒に接続されており、
前記補助電極と前記第1電極棒との間の距離の最小値は、前記第1先端と前記第2先端との間の距離よりも大きく、
前記補助電極と前記ノズルとの距離の最小値は、前記第1先端と前記第2先端との間の距離よりも大きい、燃焼装置。
【請求項2】
前記第1電極棒と前記補助電極との間の距離の最小値は、前記第1先端と前記第2先端との間の距離の1.5倍以上5.0倍以下である、請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記補助電極と前記ノズルとの距離の最小値は、前記第1先端と前記第2先端との間の距離の1.5倍以上である、請求項1又は請求項2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記補助電極は、角部を有している、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の燃焼装置。
【請求項5】
前記補助電極は、板状の部材であり、
前記補助電極の厚さは、0.3mm以上1.0mm以下である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の燃焼装置。
【請求項6】
電極取り付け板と、
絶縁部材とをさらに備え、
前記電極取り付け板には、前記電極取り付け板を厚さ方向に沿って貫通している貫通穴が形成されており、
前記絶縁部材は、前記電極取り付け板に取り付けられる際に前記貫通穴内を通る挿入部を有しており、かつ前記挿入部から前記第1先端を有している前記第1電極棒の部分及び前記第2先端を有している前記第2電極棒の部分が突出するように前記第1電極棒及び前記第2電極棒を保持しており、
前記第1電極棒及び前記第2電極棒は、第1方向において並んでおり、
前記第1先端及び前記第2先端は、前記第1方向に直交している第2方向において、前記噴出口と間隔を空けて対向しており、
前記挿入部は、前記第1方向において、第1端と、前記第1端の反対側の端である第2端とを含んでおり、
前記挿入部は、前記第1方向及び前記第2方向に直交している第3方向において、第1面と、前記第1面の反対面である第2面とを含んでおり、
前記第3方向に沿って見た正面視において、前記補助電極は、前記第1端と前記第2端との間にあり、
前記第1方向に沿って見た側面視において、前記補助電極は、前記第2電極棒の中心軸に直交しており、かつ前記第1面と前記第2面との間の距離が最大となる前記挿入部の部分を通る仮想直線を前記中心軸と直交した状態を保ちながら前記第2先端まで移動させることにより形成される領域内に配置されている、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の燃焼装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の前記燃焼装置を備える、石油給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置及び石油給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開平05-106840号公報(特許文献1)には、点火装置が記載されている。特許文献1に記載の点火装置は、碍子と、点火電極と、ターゲット電極とを有している。点火電極及びターゲット電極は、碍子に保持されている。点火電極の先端及びターゲット電極の先端は、間隔を空けて対向している。特許文献1に記載の点火装置では、点火電極の先端とターゲット電極の先端との間に電圧が印加されることにより、放電による火花が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05-106840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の点火装置が例えば石油給湯器に用いられる場合、着火性を改善するために、点火電極の先端とターゲット電極の先端との間の距離を大きくして電弧を長くするという対策が行われることがある。しかしながら、点火電極の先端やターゲット電極の先端に油が付着することにより、点火電極の先端とターゲット電極の先端との間で放電を行うために必要な電圧(要求電圧)が増加し、点火電極の先端とターゲット電極の先端との間で放電が生じにくくなる。
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、電極棒の先端に油が付着したとしても電極棒の先端において安定して放電させることが可能な燃焼装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る燃焼装置は、第1先端を有する第1電極棒と、第2先端を有する第2電極棒と、補助電極と、液体燃料を噴出する噴出口を有するノズルとを備える。第1電極棒及び第2電極棒は、第1先端及び第2先端が間隔を空けて互いに対向するとともに第1先端及び第2先端が噴出口と間隔を空けて対向するように配置されている。補助電極は、第2電極棒に接続されている。補助電極と第1電極棒との間の距離の最小値は、第1先端と第2先端との間の距離よりも大きい。補助電極とノズルとの距離の最小値は、第1先端と第2先端との間の距離よりも大きい。
【0007】
上記の燃焼装置では、第1電極棒と補助電極との間の距離の最小値が、第1先端と第2先端との間の距離の1.5倍以上5.0倍以下であってもよい。
【0008】
上記の燃焼装置では、補助電極とノズルとの距離の最小値が、第1先端と第2先端との間の距離の1.5倍以上であってもよい。
【0009】
上記の燃焼装置では、補助電極が、角部を有していてもよい。上記の燃焼装置では、補助電極が、板状の部材であってもよい。補助電極の厚さは、0.3mm以上1.0mm以下であってもよい。
【0010】
上記の燃焼装置は、電極取り付け板と、絶縁部材とをさらに備えていてもよい。電極取り付け板には、電極取り付け板を厚さ方向に沿って貫通している貫通穴が形成されていてもよい。絶縁部材は、電極取り付け板に取り付けられる際に貫通穴内を通る挿入部を有しており、かつ挿入部から第1先端を有している第1電極棒の部分及び第2先端を有している第2電極棒の部分が突出するように第1電極棒及び第2電極棒を保持していてもよい。第1電極棒及び第2電極棒は、第1方向において並んでいてもよい。第1先端及び第2先端は、第1方向に直交している第2方向において、噴出口と間隔を空けて対向していてもよい。挿入部は、第1方向において、第1端と、第1端の反対側の端である第2端とを含んでいてもよい。挿入部は、第1方向及び第2方向に直交している第3方向において、第1面と、第1面の反対面である第2面とを含んでいてもよい。第3方向に沿って見た正面視において、補助電極は、第1端と第2端との間にあってもよい。第1方向に沿って見た側面視において、補助電極は、第2電極棒の中心軸に直交しており、かつ第1面と第2面との間の距離が最大となる挿入部の部分を通る仮想直線を中心軸と直交した状態を保ちながら第2先端まで移動させることにより形成される領域内に配置されていてもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る石油給湯器は、上記の燃焼装置を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係る燃焼装置及び石油給湯器によると、電極棒の先端に油が付着したとしても電極棒の先端において安定して放電させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】燃焼装置100の正面図である。
図2】燃焼装置100の第1側面図である。
図3】燃焼装置100の第2側面図である。
図4】電極取り付け板50の平面図である。
図5】ノズル60を有する燃焼装置100の側面図である。
図6】燃焼装置200の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。本発明の実施形態に係る燃焼装置を、燃焼装置100とする。
【0015】
(燃焼装置100の構成)
以下に、燃焼装置100の構成を説明する。
【0016】
図1は、燃焼装置100の正面図である。図1中では、ノズル60の位置が点線により示されている。図2は、燃焼装置100の第1側面図である。図2中では、ノズル60の図示が省略されている。図3は、燃焼装置100の第2側面図である。図3中では、ノズル60の図示が省略されている。図1から図3に示されるように、燃焼装置100は、第1電極棒10と、第2電極棒20と、絶縁部材30と、補助電極40を有している。燃焼装置100は、例えば、石油給湯器に用いられる燃焼装置である。石油給湯器には、給湯機能、風呂注湯機能、風呂追焚機能及び温水暖房機能の少なくとも1つを有している給湯器が含まれ得る。例えば、温水暖房専用の給湯器であっても、石油給湯器に含まれる。燃焼装置100は、石油ボイラに用いられる燃焼装置であってもよい。
【0017】
第1電極棒10及び第2電極棒20は、導体により形成されている。第1電極棒10及び第2電極棒20は、例えば、金属材料により形成されている。第1電極棒10及び第2電極棒20は、第1方向DR1において隣り合うように配置されている。
【0018】
第1電極棒10は、第1先端11と、第1基端12とを有している。第1基端12は、第1先端11の反対側の端である。第2電極棒20は、第2先端21と、第2基端22とを有している。第2基端22は、第2先端21の反対側の端である。第1先端11及び第2先端21は、第1方向DR1において、間隔を空けて対向している。
【0019】
第1電極棒10は、第1部分13と、第2部分14とを有している。第1部分13は、第2方向DR2に沿って延在している。第1部分13の一方端は、第1基端12に対応している。第2方向DR2は、第1方向DR1に直交している方向である。第1部分13の他方端は、第2部分14の一方端に接続されている。第2部分14は、直線状に延在している。第2部分14の他方端は、第1先端11に対応している。第2部分14の第1先端11側の端部は、第1先端11に近づくにつれて、外径が小さくなっている。
【0020】
第1方向DR1に沿って見た側面視において、第2部分14は、第1先端11に近づくにつれて第3方向DR3における位置が第1部分13から離れるように傾斜している。第3方向DR3は、第1方向DR1及び第2方向DR2に直交している方向である。第3方向DR3に沿って見た正面視において、第2部分14は、第1先端11に近づくにつれて第1方向DR1における位置が第2電極棒20側に向かって第1部分13から離れるように傾斜している。
【0021】
第2電極棒20は、第3部分23と、第4部分24とを有している。第3部分23は、第2方向DR2に沿って延在している。第3部分23の一方端は、第2基端22に対応している。第3部分23の他方端は、第4部分24の一方端に接続されている。第4部分24は、直線状に延在している。第4部分24の他方端は、第2先端21に対応している。第4部分24の第2先端21側の端部は、第2先端21に近づくにつれて、外径が小さくなっている。
【0022】
第1方向DR1に沿って見た側面視において、第4部分24は、第2先端21に近づくにつれて第3方向DR3における位置が第3部分23から離れるように傾斜している。第3方向DR3に沿って見た正面視において、第4部分24は、第2先端21に近づくにつれて第1方向DR1における位置が第1電極棒10側に向かって第3部分23から離れるように傾斜している。
【0023】
絶縁部材30は、電気絶縁性の材料により形成されている。絶縁部材30は、例えば、樹脂材料により形成されている。絶縁部材30は、挿入部31を有している。挿入部31は、絶縁部材30を後述する電極取り付け板50に取り付ける際に後述する貫通穴51を通る絶縁部材30の部分である。
【0024】
挿入部31は、第1方向DR1において、第1端31aと、第2端31bとを有している。第2端31bは、第1端31aの反対側の端である。挿入部31は、第3方向DR3において、第1面31cと、第2面31dとを有している。第1面31cは、後述するノズル60側を向いている面である。第2面31dは、第1面31cの反対面である。
【0025】
絶縁部材30は、第1電極棒10及び第2電極棒20を保持している。第1先端11側にある第1電極棒10の部分(第1部分13の一部及び第2部分14)は、絶縁部材30の下端(挿入部31の下端)から突出している。第1基端12側にある第1電極棒10の部分(第1部分13の一部)は、絶縁部材30の上端から突出している。第2先端21側にある第2電極棒20の部分(第3部分23の一部及び第4部分24)は、絶縁部材30の下端(挿入部31の下端)から突出している。第2基端22側にある第2電極棒20の部分(第3部分23の一部)は、絶縁部材30の上端から突出している。
【0026】
補助電極40は、導体により形成されている。補助電極40は、例えば金属材料により形成されている。補助電極40は、第2電極棒20に接続されている。より具体的には、補助電極40は、絶縁部材30の下端(挿入部31の下端)から突出している第2電極棒20の部分(例えば、第3部分23の一部)に接続されている。
【0027】
補助電極40は、第3方向DR3に沿って見た正面視において、例えば、長手方向が第1方向DR1に沿っている矩形形状になっている。このことを別の観点から言えば、補助電極40は、角部を有している。補助電極40は、第3面40aと、第4面40bとを有している。第3面40a及び第4面40bは、補助電極40の厚さ方向における端面である。補助電極40の厚さ方向は、第3方向DR3に沿っている。第3面40aは、後述するノズル60側を向いている面である。第4面40bは、第3面40aの反対面である。補助電極40は、第4面40bにおいて、第2電極棒20に接続されている。補助電極40の厚さは、好ましくは、0.3mm以上1.0mm以下である。なお、図2からは補助電極40が第1電極棒10に接触しているように見えるが、補助電極40は、第1電極棒10には接触していない(例えば、図1参照)。
【0028】
第3部分23の表面の少なくとも一部は、平坦面を有していてもよい。例えば、第3部分23の少なくとも一部の断面形状の外形は、直線部を含むD字状になっていてもよい。この平坦面と第4面40bとが接触するように、補助電極40が第3部分23に取り付けられる。この場合、第2電極棒20に対する補助電極40の位置決めが容易になる。
【0029】
補助電極40と第1電極棒10との間の距離の最小値は、第1先端11と第2先端21との間の距離よりも大きい。補助電極40と第1電極棒10との間の距離の最小値は、第1先端11と第2先端21との間の距離の1.5倍以上であることが好ましい。補助電極40と第1電極棒10との間の距離の最小値は、第1先端11と第2先端21との間の距離の5.0倍以下であることが好ましい。
【0030】
補助電極40は、第1方向DR1において、第1端31aと第2端31bとの間に配置されていることが好ましい。第1方向DR1に沿って見た側面視において、補助電極40は、第2電極棒20の中心軸に直交しており、かつ第1面31cと第2面31dとの間の距離が最大となる挿入部31の部分を通る仮想直線を第2電極棒20の中心軸と直交した状態を保ちながら第2先端21まで移動させることにより形成される領域(図3中の点線により示される領域)内に配置されていることが好ましい。
【0031】
図4は、電極取り付け板50の平面図である。図4に示されるように、燃焼装置100は、電極取り付け板50をさらに有している。電極取り付け板50は、板状部材である。電極取り付け板50には、貫通穴51及び貫通穴52が形成されている。貫通穴51及び貫通穴52は、電極取り付け板50を厚さ方向に沿って貫通している。貫通穴51には、挿入部31、挿入部31の下端から突出している第1電極棒10の部分、挿入部31の下端から突出している第2電極棒20の部分及び補助電極40が通される。これにより、電極取り付け板50に、絶縁部材30が取り付けられる。貫通穴52には、後述するノズル60が取り付けられる。貫通穴51及び貫通穴52は、第3方向DR3において、隣り合って配置されている。
【0032】
図5は、ノズル60を有する燃焼装置100の側面図である。図5に示されるように、燃焼装置100は、ノズル60をさらに有している。ノズル60は、第2方向DR2に沿って延在している。ノズル60の先端(下端)は噴出口61になっており、噴出口61からは液体燃料が噴出される。第1先端11及び第2先端21は、第2方向DR2において噴出口61と間隔を空けて対向するように配置されている。
【0033】
ノズル60と補助電極40との間の距離の最小値は、第1先端11と第2先端21との間の距離よりも大きい。ノズル60と補助電極40との間の距離の最小値は、第1先端11と第2先端21との間の距離の1.5倍以上であることが好ましい。
【0034】
(燃焼装置100の効果)
以下に、燃焼装置100の効果を説明する。
【0035】
燃焼装置100では、第1先端11の電圧と第2先端21の電圧とが正負逆となるように、第1電極棒10と第2電極棒20との間に交流電圧が印加される。これにより、第1先端11と第2先端21との間に電界が発生し、当該電界により第1先端11及び第2先端21からの電子放出が促され、第1先端11と第2先端21との間に放電による電弧が発生する。この電弧が噴出口61から噴出される液体燃料と接触することにより、液体燃料に対する着火が行われることになる。
【0036】
燃焼装置100は、石油給湯器又は石油ボイラに用いられるため、第1先端11及び第2先端21に油(灯油)が付着することがある。第1先端11及び第2先端21に油が付着すると、第1先端11及び第2先端21から電子放出が放出されにくくなり、第1先端11と第2先端21との間に放電による電弧が生じなくなることがある。すなわち、第1先端11及び第2先端21に油が付着すると、液体燃料に対する着火が失敗してしまうことがある。
【0037】
しかしながら、燃焼装置100では、第2電極棒20に補助電極40が接続されているため、補助電極40と第1先端11との間にも電界が生じることになる。補助電極40と第1先端11との間に生じる電界は、第1先端11からの電子放出を促す。そのため、燃焼装置100によると、第1先端11及び第2先端21に油が付着していても、第1先端11と第2先端21との間で放電が安定して生じやすい。
【0038】
なお、燃焼装置100では、補助電極40と第1電極棒10との間の距離の最小値が第1先端11と第2先端21との間の距離よりも大きくなっているため、補助電極40と第1先端11との間で放電が生じがたい。また、燃焼装置100では、ノズル60と補助電極40との間の距離の最小値が第1先端11と第2先端21との間の距離よりも大きいため、補助電極40とノズル60との間で放電が生じがたい。
【0039】
補助電極40と第1電極棒10との間の距離の最小値が第1先端11と第2先端21との間の距離の1.5倍以上になっている場合、補助電極40と第1先端11との間で放電がさらに生じがたい。補助電極40と第1電極棒10との間の距離の最小値が第1先端11と第2先端21との間の距離の5.0倍以下になっている場合、補助電極40により第1先端11からの電子放出を十分に促すことができる。ノズル60と補助電極40との間の距離の最小値が第1先端11と第2先端21との間の距離の1.5倍以上になっている場合、補助電極40とノズル60との間で放電がさらに生じがたい。
【0040】
補助電極40が角部を有している場合、当該角部には電界集中が生じやすいため、第1先端11及び第2先端21に油が付着していても、第1先端11と第2先端21との間で放電がさらに安定して生じやすい。
【0041】
補助電極40の厚さが1.0mm以下である場合、電界集中が生じやすくなり、第1先端11及び第2先端21に油が付着していても、第1先端11と第2先端21との間で放電がさらに安定して生じやすい。補助電極40の厚さが0.3mm以上である場合、補助電極40の強度を確保することができる。
【0042】
補助電極40が第1方向DR1において第1端31aと第2端31bとの間に配置されており、かつ補助電極40が図3中に示されている点線の領域内に配置されている場合、貫通穴51の寸法を挿入部31の寸法と同程度にしても、挿入部31、挿入部31の下端から突出している第1電極棒10の部分、挿入部31の下端から突出している第2電極棒20の部分及び補助電極40を、貫通穴51に通すことができる。その結果、この場合には、挿入部31と貫通穴51との間の隙間が小さくなり、第1先端11及び第2先端21の位置精度が高まるため、第1先端11と第2先端21との間に発生した電弧が噴出口61から噴出された液体燃料と接触しないことによる着火失敗の発生を抑制できる。
【0043】
(放電試験)
燃焼装置100の効果を確認するため、放電試験を行った。この放電試験には、燃焼装置100に加え、比較例に係る燃焼装置(以下「燃焼装置200」とする)が供された。図6は、燃焼装置200の正面図である。図6中では、ノズル60の図示が省略されている。図6に示されるように、燃焼装置200は、補助電極40を有していない。その他の点に関して、燃焼装置200の構成は、燃焼装置100の構成と同一である。この放電試験は、ノズル60を取り外した状態で行われた。
【0044】
この放電試験では、第1電極棒10と第2電極棒20との間に、電圧90ボルト、周波数60Hzの交流電圧が印加された。この交流電圧は、5秒間のオン状態及び5秒間のオフ状態を1セットとして、30分間印加された。すなわち、上記の条件で交流電圧が180回印加された。なお、燃焼装置100及び燃焼装置200では、この放電試験が行われる前に、挿入部31の下端から突出している第1電極棒10の部分及び第2電極棒20の部分を灯油に一旦浸漬して引き上げることにより、第1先端11及び第2先端21に灯油が付着した状態とされた。
【0045】
また、燃焼装置100及び燃焼装置200では、第1先端11と第2先端21との間の距離が、3.6mmとされた。さらに、燃焼装置100では、補助電極40と第1電極棒10との間の距離の最小値が、7.5mmとされた。
【0046】
この放電試験の結果は、表1に示されている。表1に示されるように、燃焼装置200では、180回の交流電圧の印加のうち、74回の放電失敗が生じた。他方、燃焼装置100では、180回の交流電圧の印加のうちで放電失敗は0回であった。この比較から、燃焼装置100が補助電極40を有することにより、第1先端11及び第2先端21に油が付着していても、第1先端11と第2先端21との間で放電が安定して生じやすくなることが、実験的にも明らかになった。
【0047】
【表1】
【0048】
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上記の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
上記の実施形態は、燃焼装置及びそれを有する石油給湯器又は石油ボイラに特に有利に適用されるものである。
【符号の説明】
【0050】
10 第1電極棒、11 第1先端、12 第1基端、13 第1部分、14 第2部分、20 第2電極棒、21 第2先端、22 第2基端、23 第3部分、24 第4部分、30 絶縁部材、31 挿入部、31a 第1端、31b 第2端、31c 第1面、31d 第2面、40 補助電極、40a 第3面、40b 第4面、50 電極取り付け板、51,52 貫通穴、60 ノズル、61 噴出口、100,200 燃焼装置、DR1 第1方向、DR2 第2方向、DR3 第3方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6