(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105467
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】樹脂成形品及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/13 20060101AFI20230724BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B29C45/13
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006305
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】上代 昌道
(72)【発明者】
【氏名】董 輝
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB22
4F202CB26
4F202CK32
4F202CK52
4F202CK54
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB22
4F206JB24
4F206JL02
4F206JN12
4F206JN27
4F206JQ81
4F206JW23
(57)【要約】
【課題】見栄えを向上することのできる車両用の樹脂成形品を提供する。
【解決手段】樹脂成形品10は、凹凸模様23が設けられた表面21を有する樹脂製の基材20と、可視光透過性を有し、基材20に対して積層されて表面21を覆う樹脂製の表層材30とを備えている。樹脂成形品10は、基材20を一次成形材とし、表層材30を二次成形材として二色成形により形成されたものである。基材20は、表面21に開口する貫通孔26を有している。基材20と表層材30とは、積層方向Xにおいて互いに離間している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸模様が設けられた表面を有する樹脂製の基材と、
可視光透過性を有し、前記基材に対して積層されて前記表面を覆う樹脂製の表層材と、を備え、前記基材を一次成形材とし、前記表層材を二次成形材として二色成形により形成された樹脂成形品であって、
前記基材は、前記表面に開口する貫通孔を有しており、
前記基材と前記表層材とは、前記基材及び前記表層材の積層方向において互いに離間している、
樹脂成形品。
【請求項2】
前記表層材は、前記基材よりも融点の低い樹脂材料により形成されている、
請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項3】
前記表層材は、前記基材よりも成形収縮率の大きい樹脂材料により形成されている、
請求項1または請求項2に記載の樹脂成形品。
【請求項4】
前記貫通孔には、前記貫通孔を封止する封止材が設けられている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の樹脂成形品。
【請求項5】
前記積層方向において前記基材と前記表層材との間には、着色材が充填されている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の樹脂成形品。
【請求項6】
前記表層材は、前記表面を覆う本体部と、前記本体部に連なるとともに前記基材の裏面を覆うアンカー部と、を有している、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の樹脂成形品。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の樹脂成形品の製造方法であって、
前記基材を成形する一次成形工程と、
前記貫通孔における前記表面に開口する開口部を塞いだ状態で、前記表面と成形型との間に形成されるキャビティに溶融樹脂を充填することで前記表層材を成形する二次成形工程と、
前記貫通孔を通じて前記基材と前記表層材との間に圧力を印加することにより、前記積層方向において前記基材と前記表層材とを離間させる離間工程と、を備える、
樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品及び樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、加飾フィルムが開示されている。この加飾フィルムは、第1の合成樹脂フィルムと、第1の合成樹脂フィルムの上面に積層された透明の第2の合成樹脂フィルムとを有している。
【0003】
第1の合成樹脂フィルムの上面には、凹凸形状を有するシボが形成されている。シボの断面形状は、複数の山が並んだ形状、所謂のこぎり状である。
こうした加飾フィルムでは、第1の合成樹脂フィルムのシボの上に透明な第2の合成樹脂フィルムが積層されるため、シボに汚れや傷が付きにくい。その上、シボの凹凸形状が第2の合成樹脂フィルムを通して明瞭に視認されるため、加飾フィルムに立体感が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうした樹脂成形品においては、樹脂成形品の立体感の向上、ひいては見栄えの向上において改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための樹脂成形品は、凹凸模様が設けられた表面を有する樹脂製の基材と、可視光透過性を有し、前記基材に対して積層されて前記表面を覆う樹脂製の表層材と、を備え、前記基材を一次成形材とし、前記表層材を二次成形材として二色成形により形成された樹脂成形品であって、前記基材は、前記表面に開口する貫通孔を有しており、前記基材と前記表層材とは、前記基材及び前記表層材の積層方向において互いに離間している。
【0007】
同構成によれば、基材と表層材との間に貫通孔を通じて空気や着色材などを注入することで中間層を形成することが可能となる。そして、中間層の屈折率を表層材の屈折率と異ならせれば、基材の凹凸模様の陰影が明瞭となり、凹凸模様の立体感が増すようになる。したがって、樹脂成形品の見栄えを向上することができる。
【0008】
上記樹脂成形品において、前記表層材は、前記基材よりも融点の低い樹脂材料により形成されている。
凹凸模様が形成された基材の表面に可視光透過性を有する表層材を形成して樹脂成形品を製造する場合、表層材の形成に射出成形を採用すると、基材の表面の凹凸模様が射出された溶融樹脂によって崩れるおそれがある。
【0009】
この点、上記構成によれば、二次成形の際に、溶融樹脂の熱により基材の凹凸模様が崩れにくくなる。すなわち、基材の凹凸模様の立体感が維持されやすくなる。これにより、基材の凹凸模様の陰影が一層明瞭となり、凹凸模様の立体感が一層増すようになる。したがって、樹脂成形品の見栄えを一層向上することができる。
【0010】
上記樹脂成形品において、前記表層材は、前記基材よりも成形収縮率の大きい樹脂材料により形成されている。
同構成によれば、二次成形後、表層材が成形収縮することにより、基材の凹凸模様を構成する凸部の側面に対して表層材が圧接するようになる。これにより、基材と表層材との密着性が向上する。したがって、基材と表層材とを積層方向において離間させつつも、基材と表層材との密着性が低減することを抑制できる。
【0011】
上記樹脂成形品において、前記貫通孔には、前記貫通孔を封止する封止材が設けられている。
同構成によれば、中間層を構成する空気や着色材などが貫通孔を通じて漏れ出ることが封止材によって阻止されるようになる。したがって、樹脂成形品の見栄えが劣化することを抑制できる。
【0012】
上記樹脂成形品において、前記積層方向において前記基材と前記表層材との間には、着色材が充填されている。
同構成によれば、着色材の屈折率を適宜設定することによって、基材の凹凸模様の陰影の明瞭性、ひいては凹凸模様の立体感を調整することができる。
【0013】
上記樹脂成形品において、前記表層材は、前記表面を覆う本体部と、前記本体部に連なるとともに前記基材の裏面を覆うアンカー部と、を有している。
同構成によれば、表層材のアンカー部によって、基材と表層材とが密着した状態が維持されやすくなる。したがって、基材と表層材とを積層方向において離間させつつも、基材と表層材との密着性が低減することを抑制できる。
【0014】
上記課題を解決するための樹脂成形品の製造方法は、前記基材を成形する一次成形工程と、前記貫通孔における前記表面に開口する開口部を塞いだ状態で、前記表面と成形型との間に形成されるキャビティに溶融樹脂を充填することで前記表層材を成形する二次成形工程と、前記貫通孔を通じて前記基材と前記表層材との間に圧力を印加することにより、前記積層方向において前記基材と前記表層材とを離間させる離間工程と、を備える。
【0015】
同方法によれば、一次成形工程において、基材が成形される。次に、二次成形工程において、基材の貫通孔の開口部を塞いだ状態で、基材の表面と成形型との間に形成されるキャビティに溶融樹脂を充填することで表層材が成形される。次に、離間工程において、基材の貫通孔を通じて基材と表層材との間に圧力を印加することにより、積層方向において基材と表層材とが離間される。このようにして、上記樹脂成形品を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両用の樹脂成形品の見栄えを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、樹脂成形品の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の樹脂成形品について、凹凸模様を中心に拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の凹凸模様について、凸部の側面を中心に拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の樹脂成形品について、アンカー部を中心に拡大して示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図1の樹脂成形品の製造方法について、基材を成形する一次成形工程を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図1の樹脂成形品の製造方法について、表層材を成形する二次成形工程を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図1の樹脂成形品の製造方法について、基材と表層材とを離間させる離間工程を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図1の樹脂成形品の製造方法について、トリミング工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1から
図8を参照して、樹脂成形品及び樹脂成形品の製造方法の一実施形態について説明する。なお、各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示しているため、各構成の寸法比率が実際とは異なる場合がある。また、以降の説明における「直交」は厳密に直交の場合のみでなく、各実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね直交の場合も含まれる。
【0019】
<樹脂成形品10>
図1及び
図2に示すように、樹脂成形品10は、樹脂製の基材20と、基材20に対して積層されるとともに、基材20の表面21を覆う樹脂製の表層材30とを有している。
【0020】
また、樹脂成形品10は、基材20と表層材30との間に設けられる中間層40と、基材20に設けられる封止材50とを有している。
樹脂成形品10は、二色成形により成形された中間体110の端部111をトリミングすることにより形成されている(
図7及び
図8参照)。樹脂成形品10は、例えばインストルメントパネル等の車両の内装材に適用されるものである。
【0021】
なお、以降において、基材20及び表層材30の積層方向を、単に積層方向Xとして説明する。
<基材20>
図1及び
図2に示すように、基材20は、表面21に設けられた凹凸模様23と、表面21から裏面22に向けて基材20を貫通する複数(本実施形態では、2つ)の貫通孔26とを有している。
【0022】
凹凸模様23は、基材20の表面21のうち幅方向Yにおける中央部21aに設けられている。
凹凸模様23は、表面21に並んで設けられる複数の凸部24と、凸部24同士の間に位置する複数の凹部25とから構成されている。複数の凸部24は、積層方向Xに突出している。本実施形態では、複数の凸部24の形状は、各別に設定されている。すなわち、
図2に示すように、各凸部24の幅及び突出高さは、各別に設定されている。なお、
図1では、凹凸模様23の概形を簡略化して示している。
【0023】
以降において、積層方向Xに直交する方向のうち凸部24の幅方向に相当する方向を、単に幅方向Yとして説明する。
図2及び
図3に示すように、各凸部24は、先端面24aと、幅方向Yにおける先端面24aの両側から屈曲して延びる一対の側面24bとを有している。
【0024】
図3に示すように、側面24bは、積層方向Xに延びる仮想直線V1に対して傾斜している。側面24bと仮想直線V1とのなす角度θは、0.5度以上、20度未満であることが好ましい。本実施形態では、仮想直線V1に対する側面24bの傾斜角度θは、0.5度に設定されている。
【0025】
図1及び
図2に示すように、貫通孔26は、幅方向Yにおいて凹凸模様23と隣り合う位置に設けられている。貫通孔26は、幅方向Yにおける凹凸模様23の両側にそれぞれ1つずつ配置されている。各貫通孔26は、積層方向Xにおいて直線状に延びている。
【0026】
基材20の樹脂材料としては、例えば、PP(ポリプロピレン)、ABS樹脂、PC-ABS(ポリカーボネートとABS樹脂のポリマーアロイ)等を用いることができる。本実施形態では、基材20の樹脂材料としてPC-ABS(融点:約250℃、成形収縮率:約0.7%)が用いられている。
【0027】
<表層材30>
図1及び
図4に示すように、表層材30は、基材20の表面21を覆う本体部31と、本体部31に連なるとともに基材20の裏面22の一部を覆うアンカー部32とを有している。
【0028】
本体部31は、幅方向Yにおいて表面21の全体を覆っている。
図2及び
図3に示すように、本体部31と、基材20の中央部21aとは、積層方向Xにおいて互いに離間している。凹凸模様23においては、凸部24の先端面24a及び凹部25の底面25aと、本体部31とが、積層方向Xにおいて互いに離間している。本体部31と中央部21aとの間には、中間層40が介在している。
【0029】
本体部31と基材20の凹凸模様23とは、幅方向Yにおいて互いに密着している。詳しくは、本体部31と凸部24の側面24bとが、幅方向Yにおいて互いに密着している。
【0030】
図1及び
図4に示すように、アンカー部32は、幅方向Yにおいて本体部31の両側に設けられている。アンカー部32は、幅方向Yにおける本体部31の両端縁から基材20の端面27に沿って延びる基端部33と、基端部33の先端から折り返して基材20の裏面22まで延びる先端部34とを有している。
【0031】
表層材30は、可視光透過性を有する樹脂材料により形成されている。詳しくは、表層材30は、表層材30を通して基材20の凹凸模様23が透けて視認できる程度の可視光透過率を有する樹脂材料により形成されている。ここで、上記樹脂材料としては、無色透明の場合のみでなく、着色材を含有することにより可視光の一部の光しか透過しない場合も含まれる。
【0032】
表層材30は、基材20よりも融点の低い樹脂材料により形成されている。具体的には、表層材30の樹脂材料の融点M2は、基材20の樹脂材料の融点M1よりも50℃以上低いことが好ましい(M1-M2≧50)。また、融点M2は、融点M1よりも70℃以上低いことがより好ましい(M1-M2≧70)。また、融点M2は、融点M1よりも100℃以上低いことがより一層好ましい(M1-M2≧100)。
【0033】
表層材30は、基材20よりも成形収縮率の大きい樹脂材料により形成されている。
表層材30の樹脂材料としては、例えば、硬質のPU(ポリウレタン)またはポリウレア等を用いることができる。本実施形態では、表層材30の樹脂材料として硬質のPU(融点:約150℃、成形収縮率:約1.5%)が用いられている。
【0034】
<中間層40、封止材50>
図2に示すように、中間層40は、表層材30とは屈折率の異なる材料により形成された層である。本実施形態では、中間層40は、空気Aにより構成された層である。
【0035】
図1及び
図2に示すように、封止材50は、基材20の貫通孔26を封止するものであり、2つの貫通孔26の各々に設けられている。
封止材50の材料としては、例えば、UV(紫外線)硬化樹脂等を用いることができる。
【0036】
<樹脂成形品10の中間体110>
図7に示すように、中間体110は、基材120と、表層材130とを有している。
基材120は、中間体110から端部111をトリミングする前の基材20の中間体である。そのため、以降において、基材120のうち基材20と共通する構成については、同一の符号を付すとともにその説明を省略している。
【0037】
基材120は、貫通孔26とは別に、表面121から裏面122に向けて基材120を貫通する複数(本実施形態では2つ)の貫通孔128を有している。貫通孔128の内周面128aの一部は、基材20の端面27により構成されている。
【0038】
表層材130は、中間体110から端部111をトリミングする前の表層材30の中間体である。
表層材130は、基材120の表面121を覆う本体部131と、本体部131に連なるとともに基材120の裏面122を覆うアンカー部132とを有している。アンカー部132の一部は、基材120の貫通孔128に挿通されている。
【0039】
<製造装置60>
次に、樹脂成形品10の中間体110を成形する製造装置60について説明する。
図5及び
図6に示すように、製造装置60は、基材120を成形するための一次成形型70と、表層材130を成形するための二次成形型80とを備えている。
【0040】
図5に示すように、一次成形型70は、第1型71A及びスライド型71Bと、第1型71A及びスライド型71Bに対して積層方向Xに近接または離間可能に設けられた第2型72とを備えている。
【0041】
第1型71A及びスライド型71Bにおいて第2型72と対向する面には、基材120の裏面122を成形するための成形面73が形成されている。
第1型71Aには、貫通孔26を形成するためのピン91が挿通される挿通孔75が形成されている。ピン91の延在方向における一端91aは、一次成形型70が型締めされた状態において第2型72に当接している。ピン91は、第1型71Aに対して積層方向Xに相対移動可能に構成されている。
【0042】
第1型71Aは、一次成形型70が型開きされる際に、スライド型71B及び成形された基材120から積層方向Xにおいて離間可能に構成されている。
スライド型71Bは、貫通孔128を形成するための成形凸部71bを有している。成形凸部71bの突端は、一次成形型70が型締めされた状態において第2型72に当接している。
【0043】
スライド型71Bは、一次成形型70が型開きされる際、第1型71Aが基材120から離間された状態において、同基材120に対して幅方向Yにスライド可能に構成されている。
【0044】
第2型72において第1型71A及びスライド型71Bと対向する面には、基材120の表面121を成形するための成形面74が形成されている。
成形面74には、凹凸模様23を形成するための成形凹凸部74aが形成されている。
【0045】
成形面73、成形面74、成形凸部71b、及びピン91によって、基材120を成形するための溶融樹脂が充填される空間であるキャビティ76が形成されている。
図6に示すように、二次成形型80は、第1型81と、第1型81に対して積層方向Xに近接または離間可能に設けられた第2型82とを備えている。
【0046】
第1型81において基材120に対向する面には、基材120を支持する支持面83が形成されている。
第1型81には、基材120の貫通孔26に連通する貫通孔85が形成されている。貫通孔26及び貫通孔85には、ピン92が挿通されている。ピン92の延在方向の一端92aは、二次成形型80が型締めされた状態において第2型82から離間している。ピン92は、第1型81に対して積層方向Xに相対移動可能に構成されている。
【0047】
第1型81は、二次成形型80が型開きされる際に、基材120から積層方向Xにおいて離間可能に構成されている。
第2型82において第1型81と対向する面には、表層材130における本体部131の表面131a(
図7参照)を成形するための成形面84が形成されている。
【0048】
第1型81の支持面83の一部、基材120の裏面122、及び貫通孔128の内周面128aによって、アンカー部132を成形するための溶融樹脂が充填される空間であるキャビティ86が形成されている。
【0049】
成形面84及び基材120の表面121により、表層材130の本体部131を成形するための溶融樹脂が充填される空間であるキャビティ87が形成されている。
<樹脂成形品10の製造方法>
次に、
図5から
図8を参照して、製造装置60を用いた樹脂成形品10の製造方法について説明する。
【0050】
まず、
図5に示すように、第1型71A及びスライド型71Bと、第2型72とが型締めされている状態において、第1型71Aの挿通孔75にピン91を挿通する。そして、成形面73、成形面74、成形凸部71b、及びピン91によって形成されるキャビティ76内に溶融樹脂を充填する。これにより、基材120が成形される(以上、一次成形工程)。このとき、成形凹凸部74aにより基材120の表面121に凹凸模様23が形成される。また、ピン91によって、貫通孔26が形成される。また、成形凸部71bによって、貫通孔128が形成される。
【0051】
次に、
図6に示すように、第1型81の支持面83に一次成形型70から取り出された基材120を支持させた状態において、貫通孔85及び貫通孔26にピン92を挿通する。このとき、ピン92により、貫通孔26における表面121に開口する開口部26aが塞がれた状態となっている。そして、第1型81と、第2型82とが型締めされている状態において、成形面84と基材120の表面121との間に形成されるキャビティ87内に溶融樹脂を充填する。このとき、溶融樹脂は、第1型81の支持面83の一部、基材120の裏面122、及び貫通孔128の内周面128aによって形成されるキャビティ86にも充填される。これにより、基材120の表面121を覆う表層材130の本体部131と、アンカー部132とが成形される。すなわち、中間体110が成形される(以上、二次成形工程)。
【0052】
次に、
図7及び
図8に示すように、二次成形型80から取り出された中間体110の貫通孔26を通じて空気Aを注入することにより、基材120と表層材130との間に圧力を印加する。これにより、積層方向Xにおいて基材120と表層材130とを離間させる(以上、離間工程)。このとき、基材120の中央部21aと表層材130との間には、空気Aにより構成された中間層40が形成される。なお、
図7及び
図8では、中間体110を簡略化して示しているため、中間層40の図示を省略している。続いて、貫通孔26にUV硬化樹脂を注入した後、UVを照射して速やかにUV硬化樹脂を硬化させる。これにより、貫通孔26を封止する封止材50が形成される(
図8参照)。
【0053】
次に、中間体110を、貫通孔128の軸線Lを通るとともに、積層方向Xに直交する仮想平面V2に沿ってトリミングすることにより、中間体110から端部111を切り離す。これにより、基材20及び表層材30を備える樹脂成形品10が製造される(以上、トリミング工程)。
【0054】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
(1)樹脂成形品10は、凹凸模様23が設けられた表面21を有する樹脂製の基材20と、表面21を覆う樹脂製の表層材30とを備えている。基材20は、表面21に開口する貫通孔26を有している。基材20と表層材30とは、積層方向Xにおいて互いに離間している。
【0055】
こうした構成によれば、基材20と表層材30との間に貫通孔26を通じて空気Aを注入することで中間層40を形成することが可能となる。そして、中間層40の屈折率を表層材30の屈折率と異ならせることで、基材20の凹凸模様23の陰影が明瞭となり、凹凸模様23の立体感が増すようになる。したがって、樹脂成形品10の見栄えを向上することができる。
【0056】
(2)表層材30は、基材20よりも融点の低い樹脂材料により形成されている。
凹凸模様23が形成された基材20の表面21に可視光透過性を有する表層材30を形成して樹脂成形品10を製造する場合、表層材30の形成に射出成形を採用すると、基材20の表面21の凹凸模様23が射出された溶融樹脂によって崩れるおそれがある。
【0057】
この点、上記構成によれば、二次成形の際に、溶融樹脂の熱により基材20の凹凸模様23が崩れにくくなる。すなわち、基材20の凹凸模様23の立体感が維持されやすくなる。これにより、基材20の凹凸模様23の陰影が一層明瞭となり、凹凸模様23の立体感が一層増すようになる。したがって、樹脂成形品10の見栄えを一層向上することができる。
【0058】
(3)表層材30は、基材20よりも成形収縮率の大きい樹脂材料により形成されている。
こうした構成によれば、二次成形後、表層材30が成形収縮することにより、基材20の凹凸模様23を構成する凸部24の側面24bに対して表層材30が圧接するようになる。これにより、基材20と表層材30との密着性が向上する。したがって、基材20と表層材30とを積層方向Xにおいて離間させつつも、基材20と表層材30との密着性が低減することを抑制できる。
【0059】
(4)貫通孔26には、貫通孔26を封止する封止材50が設けられている。
こうした構成によれば、中間層40を構成する空気Aが貫通孔26を通じて漏れ出ることが封止材50によって阻止されるようになる。したがって、樹脂成形品10の見栄えが劣化することを抑制できる。
【0060】
(5)表層材30は、表面21を覆う本体部31と、本体部31に連なるとともに基材20の裏面22を覆うアンカー部32とを有している。
こうした構成によれば、表層材30のアンカー部32によって、基材20と表層材30とが密着した状態が維持されやすくなる。したがって、基材20と表層材30とを積層方向Xにおいて離間させつつも、基材20と表層材30との密着性が低減することを抑制できる。
【0061】
(6)樹脂成形品10の製造方法は、基材120を成形する一次成形工程と、表層材130を成形する二次成形工程とを備える。また、樹脂成形品10の製造方法は、貫通孔26を通じて基材120と表層材130との間に圧力を印加することにより、積層方向Xにおいて基材120と表層材130とを離間させる離間工程を備える。
【0062】
こうした方法によれば、一次成形工程において、基材120が成形される。次に、二次成形工程において、基材120の貫通孔26の開口部26aを塞いだ状態で、基材120の表面121と第2型82の成形面84との間に形成されるキャビティ86に溶融樹脂を充填することで表層材130が成形される。次に、離間工程において、基材120の貫通孔26を通じて基材120と表層材130との間に圧力を印加することにより、積層方向Xにおいて基材120と表層材130とが離間される。このようにして、上記樹脂成形品10の中間体110を製造することができる。
【0063】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0064】
・本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、本実施形態のようにトリミング工程を有するものに限定されず、トリミング工程を省略することができる。この場合、中間体110が本発明に係る樹脂成形品に相当し、基材120及び表層材130が本発明に係る基材及び表層材に相当することとなる。
【0065】
・アンカー部32,132は、省略してもよい。この場合、貫通孔128も省略することができる。また、これに伴って、一次成形型70から成形凸部71bを有するスライド型71Bを省略することができる。
【0066】
こうした構成によれば、一次成形型70の構成が複雑化することが抑制される。
・凹凸模様23の配置は、本実施形態で例示したように表面21のうち中央部21aに設けられるものに限定されず、樹脂成形品10の仕様に合わせて適宜配置を変更することができる。
【0067】
・貫通孔26の配置は、本実施形態で例示したように幅方向Yにおいて凹凸模様23と隣り合う位置に設けられるものに限定されない。貫通孔26を通じて空気Aを注入することにより、基材120と表層材130との間に圧力を印加できるものであれば、その配置を適宜変更することができる。例えば、貫通孔26を積層方向Xにおいて凹凸模様23と重なる位置に設けるようにしてもよい。
【0068】
・貫通孔26の数は、本実施形態で例示した2つに限定されず、1つでもよいし、3つ以上設けるようにしてもよい。
・貫通孔26は、本実施形態で例示したように、積層方向Xにおいて直線状に延びるものに限定されない。例えば、貫通孔26は、表面21に開口するものであれば、積層方向Xに対して傾斜して延びるものであってもよい。
【0069】
・中間層40は、本実施形態で例示したように空気Aにより構成されるものに限定されず、中間層40の屈折率を表層材30の屈折率と異ならせるものであれば、適宜材料を変更してもよい。例えば、基材20と表層材30との間に、着色材を充填することにより、着色材からなる中間層を形成することもできる。
【0070】
こうした構成によれば、着色材の屈折率を適宜設定することによって、基材20の凹凸模様23の陰影の明瞭性、ひいては凹凸模様23の立体感を調整することができる。
・封止材50は、省略してもよい。この場合、中間層を形成する材料としては粘性を有する着色材等を用いるようにすればよい。
【0071】
・表層材30は、基材20よりも成形収縮率の大きい樹脂材料により形成されるものに限定されない。例えば、表層材30の樹脂材料の成形収縮率S2が、基材20の樹脂材料の成形収縮率S1と同じであってもよいし(S2=S1)、成形収縮率S2が、成形収縮率S1よりも小さくてもよい(S2<S1)。こうした場合であっても、表層材30の樹脂材料の融点M2が、基材20の樹脂材料の融点M1よりも大きいものであればよい。
【0072】
・本発明に係る樹脂成形品は、インストルメントパネル等の車両の内装材に適用されるものに限定されず、例えば、車両の外装材に対して適用することもできる。
【符号の説明】
【0073】
θ…角度
A…空気
L…軸線
M1,M2…融点
S1,S2…成形収縮率
V1…仮想直線
V2…仮想平面
X…積層方向
Y…幅方向
10…樹脂成形品
20,120…基材
21,121…表面
21a…中央部
22,122…裏面
23…凹凸模様
24…凸部
24a…先端面
24b…側面
25…凹部
25a…底面
26…貫通孔
26a…開口部
27…端面
30,130…表層材
31,131…本体部
32,132…アンカー部
33…基端部
34…先端部
40…中間層
50…封止材
60…製造装置
70…一次成形型
71A…第1型
71B…スライド型
71b…凸型
72…第2型
73…成形面
74…成形面
74a…成形凹凸部
75…挿通孔
76…キャビティ
80…二次成形型
81…第1型
82…第2型
83…支持面
84…成形面
85…貫通孔
86…キャビティ
87…キャビティ
91…ピン
91a…一端
92…ピン
92a…一端
110…中間体
111…端部
128…貫通孔
128a…内周面
131a…表面