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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105481
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】拘束治具及び拘束システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20230724BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230724BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20230724BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/44 Q
H01M10/0585
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006337
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】丸山 佳樹
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
5H030
【Fターム(参考)】
5H028AA10
5H028BB04
5H028BB10
5H028BB11
5H028BB17
5H028CC05
5H028HH05
5H029AJ02
5H029AJ14
5H029BJ04
5H029BJ12
5H029BJ21
5H029CJ03
5H029CJ28
5H029DJ11
5H029HJ12
5H030AS20
5H030BB01
5H030DD00
5H030DD14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低コストで拘束板の位置精度に優れた拘束治具及び拘束システムを提供する。
【解決手段】拘束治具1は、シート状の正極及び負極をセパレータとともに積層してなる積層体をフィルム状の外装体に封入してなるワーク100を拘束する。拘束治具1は、水平方向に配列した複数の拘束板10と、隣り合う拘束板10の間に位置して両者の間に初期隙間W0を形成する弾性部材21と、隣り合う拘束板10の上側端部11同士の間の隙間W1が上側端部11と反対側の下側端部12同士の間の隙間W2よりも拡開し、拘束板10同士の間にワーク100を挿入可能なように複数の拘束板10を支持する拘束板支持部30と、複数の拘束板10を配列方向Xに押圧して弾性部材20を圧縮して隣り合う拘束板10の間の隙間を初期隙間W0よりも小さくし、隣り合う拘束板10の間に挿入されたワーク100を拘束板10を介して拘束する押圧拘束部40とを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の正極及び負極をセパレータとともに積層してなる積層体をフィルム状の外装体に封入してなるワークを拘束する拘束治具であって、
主面同士が対向するように水平方向に配列した複数の拘束板と、
隣り合う上記拘束板の間に位置して隣り合う上記拘束板の間に初期隙間を形成する弾性部材と、
上記隣り合う上記拘束板における上側端部同士の間の隙間が該上側端部と反対側の下側端部同士の間の隙間よりも拡開して、隣り合う上記拘束板の間に上記ワークを上方から挿入可能なように上記複数の拘束板を支持する拘束板支持部と、
上記複数の拘束板を上記配列方向に押圧して上記弾性部材を圧縮することにより隣り合う上記拘束板の間の隙間を上記初期隙間よりも小さくして、隣り合う上記拘束板の間に挿入された上記ワークを上記拘束板を介して拘束する押圧拘束部と、
を備える、拘束治具。
【請求項2】
上記複数の拘束板は、上記ワークが挿入されたときに、上記外装体によって上記積層体が被覆されてなる積層体部の下端部に当接して上記ワークを支持するワーク支持部を有する、請求項1に記載の拘束治具。
【請求項3】
上記拘束板支持部は、隣り合う上記拘束板の間に上記ワークを挿入する際に、上記下側端部同士の間に、上記ワークにおける上記積層体部よりも下方に突出した外周シール部が挿入可能な隙間が形成されるように構成されている、請求項2に記載の拘束治具。
【請求項4】
上記弾性部材は隣り合う上記拘束板の間において、上下方向に並ぶように複数配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の拘束治具。
【請求項5】
上記弾性部材は導電性を有し、隣り合う上記拘束板の間に挿入された上記ワークが上記押圧拘束部により押圧された状態において、上記弾性部材は上記ワークに備えられた集電タブに接触して上記弾性部材を介して上記ワークに通電可能なように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の拘束治具。
【請求項6】
上記弾性部材は板バネからなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の拘束治具。
【請求項7】
上記弾性部材は、上記弾性部材に所定値以上の電流が流れたときに破損して上記電流を遮断するように構成された電流遮断部を有する、請求項5又は6に記載の拘束治具。
【請求項8】
上記隣り合う上記拘束板における上側端部同士の間の隙間を該上側端部と反対側の下側端部同士の間の隙間よりも拡開して上記ワークを挿入する際に、上記弾性部材は上記ワークに備えられた集電タブに接触しないように構成されている、請求項5~7のいずれか一項に記載の拘束治具。
【請求項9】
上記ワークに設けられた正極集電タブに接触する全ての上記弾性部材と接触するように構成された正極充電端子と、上記ワークに設けられた負極集電タブに接触する全ての上記弾性部材と接触するように構成された負極充電端子と、を備える、請求項5~8のいずれか一項に記載の拘束治具。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の拘束治具と、
上記隣り合う上記拘束板の少なくとも一方における上記上側端部を他方の上記拘束板から離して、上記上側端部同士の間の隙間を上記下側端部同士の間の隙間よりも拡開する拡開装置と、を備える、拘束システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拘束治具及び拘束システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状の正極及び負極をセパレータとともに積層してなる積層体をフィルム状の外装体に封入してなる蓄電デバイスの製造過程において、初回充放電やエージング時に外装体内に発生するガスや電極の膨張などに起因して外装体に積層体を封入してなるワークが変形することがある。これを防止するために、初回充放電やエージングの際に当該ワークを予め拘束しておくための拘束治具が種々提案されている。例えば、特許文献1には、枠体内に拘束板としてのスペーサとワークとを交互に配列して押圧板を介して配列方向に押圧することで、複数のワークを一括して拘束する拘束治具の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-006210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の拘束治具の構成では、拘束板はワークに単に重ねて配列させており、配列の際に拘束板の位置が維持されていない。そのため、拘束板の位置精度が低く、製造品質の悪化を招くおそれがある。一方、拘束治具における拘束板の位置精度を高めるために複雑な機構を設ければ、その分コスト高となり好ましくない。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、低コストで拘束板の位置精度に優れた拘束治具及び拘束システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、シート状の正極及び負極をセパレータとともに積層してなる積層体をフィルム状の外装体に封入してなるワークを拘束する拘束治具であって、
主面同士が対向するように水平方向に配列した複数の拘束板と、
隣り合う上記拘束板の間に位置して隣り合う上記拘束板の間に初期隙間を形成する弾性部材と、
上記隣り合う上記拘束板における上側端部同士の間の隙間が該上側端部と反対側の下側端部同士の間の隙間よりも拡開して、隣り合う上記拘束板の間に上記ワークを上方から挿入可能なように上記複数の拘束板を支持する拘束板支持部と、
上記複数の拘束板を上記配列方向に押圧して上記弾性部材を圧縮することにより隣り合う上記拘束板の間の隙間を上記初期隙間よりも小さくして、隣り合う上記拘束板の間に挿入された上記ワークを上記拘束板を介して拘束する押圧拘束部と、
を備える、拘束治具にある。
【発明の効果】
【0007】
上記拘束治具においては、主面同士が対向するように水平方向に配列した複数の拘束板において、隣り合う拘束板の間には拘束板同士の間に初期隙間を形成する弾性部材が設けられている。そのため、ワーク挿入前の初期状態では、隣り合う拘束板の間は初期隙間が形成された状態となって初期位置が安定した状態となっており、拘束板の位置精度に優れる。そして、ワークを挿入する際には、隣り合う拘束板の上側端部同士の間の隙間が下側端部同士の間の隙間よりも大きく開くことで、隣り合う拘束板をV字状に開いた状態とする。これにより、隣り合う拘束板の下側端部の位置精度を維持した状態で隣り合う拘束板の間に上側からワークを挿入することができる。ワークを挿入した後は拘束板の拡開を解除し、押圧拘束部により拘束板の位置精度が高い状態でワークを一括して拘束することができる。これにより、簡素な構成で拘束板の位置精度を高く維持できるため、低コストで拘束板の位置精度を向上することができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、低コストで拘束板の位置精度に優れた拘束治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1における、(a)ワークの斜視図、(b)同図(a)のIb-Ib線位置での断面概念図。
図2】実施形態1における、拘束治具の上面図。
図3】実施形態1における、(a)拘束板の斜視図、(b)拘束板の側面図。
図4】実施形態1における、拘束板の正面図。
図5】実施形態1における、拘束板の断面一部拡大図。
図6】実施形態1における、(a)、(b)図1におけるVI-VI線位置断面図であって、拘束治具の使用態様を説明する断面図。
図7】実施形態1における、(a)、(b)図1におけるVI-VI線位置断面図であって、拘束治具の使用態様を説明する他の断面図。
図8】実施形態1における、(a)、(b)図1におけるVI-VI線位置断面図であって、拘束治具の使用態様を説明する他の断面図。
図9】実施形態1における、拘束治具の使用態様を説明する側面図。
図10】実施形態1における、拘束治具の使用態様を説明する(a)第1の側面図、(b)第2の側面図。
図11】実施形態2における、(a)拘束板の斜視図、(b)拘束板の側面図。
図12】実施形態2における、拘束治具の使用態様を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
上記拘束治具の実施形態について、図1図9を用いて説明する。
まず、本実施形態における拘束治具1は、図1(b)に示すように、シート状の正極及び負極をセパレータとともに積層してなる積層体101をフィルム状の外装体102に封入してなるワーク100を拘束するものである。ワーク100は、積層体101をフィルム状の外装体102に封入して構成される。積層体101は図示しないシート状の正極及び負極をセパレータとともに積層してなる。本実施形態では、ワーク100は、キャパシタや二次電池などを含む蓄電デバイスを形成するものであって、ワーク100が形成する蓄電デバイスとして、活物質が塗工された金属製の集電箔からなる複数の正極及と複数の負極がセパレータを介在させて交互に積層されるとともに負極にリチウムイオンがプレドープされた積層体101を、リチウム塩を電解質とする電解液とともに外装体102に封止してなるリチウムイオンキャパシタを採用している。
【0011】
図1(a)に示すように、ワーク100の外形は扁平な四角形状をなしており、積層体部110、外周シール部120、集電タブ130を備える。積層体部110はワーク100の下方中央部分に位置し、図1(b)に示すように、外装体102と積層体101とが厚さ方向Tに重なって形成されている。外周シール部120は積層体部110の外周を囲んでおり、表側と裏側の外装体102aと裏側の外装体102bとが互いに熱溶着されて形成されている。ワーク100の幅方向Sの両端には正極集電タブ130a、負極集電タブ130bがそれぞれ設けられている。一対の集電タブ130a、130bは、図示しないが、積層体101を構成する正極と負極にそれぞれ接続されている。なお、積層体部110の上方には、後に切除される予定のガス抜き部121が設けられている。また、図示しないが、外装体102内には上述の電解液が満たされている。
【0012】
本実施形態1の拘束治具1は、図2に示すように、拘束板10、弾性部材20、拘束板支持部30、押圧拘束部40を備える。拘束板10は複数備えられており、互いの主面10a、10b同士が対向するように水平方向に配列している。拘束板10の数は限定されず、40個以上とすることができる。本実施形態1では拘束板10の数を特定するものではないが、説明の都合上、10個の拘束板10を備える例を示す。なお、本実施形態1において、拘束板10が配列する水平方向であって拘束板10の厚さ方向をX方向とし、拘束板10の幅方向をY方向とし、水平方向に直交する上下方向であって拘束板10の高さ方向をZ方向とする。
【0013】
図3(a)に示すように、拘束板10は平面視略矩形の板状をなしている。拘束板10は樹脂製であって絶縁性を有する。拘束板10においてZ方向の上側Z1の端部である上側端部11は、幅方向Y両側において上側Z1に突出している。拘束板10において下側Z2の端部である下側端部12は平面状となっており、幅方向Y両端に略円弧状の切り欠き13を有する。拘束板10の中央には両面から厚さ方向Xに窪んだ凹部14a、14bが形成されている。凹部14a、14bは、幅方向両側Y1、Y2及び下側Z2の三方の壁面を有し、上側Z1には壁面を有しない。当該凹部14a、14bにより下側Z2に形成された段差部が後述するワーク支持部15a、15bとなる。図4に示すように、凹部14a、14b大きさは、ワーク100の積層体部110よりも若干大きくなっている。
【0014】
図3(a)に示すように、拘束板10の幅方向Y両端に凹部16が形成されている。本実施形態1では、凹部16は、拘束板10の幅方向Yの一方側Y1の端部と他方側Y2の端部のそれぞれに上下方向Zに並んで2つずつ、合計4つ形成されている。凹部16は幅方向Y両端から拘束板10の一方の主面10a側に回り込むように形成されている。
【0015】
図3(a)に示すように、凹部16内には弾性部材20が設けられている。弾性部材20は、図3(b)に示す自由状態において拘束板10の一方の主面10aから厚さ方向Zに突出しており、厚さ方向Xに押圧されて凹部16内に収容されるように構成されている。そして、図2に示すように、弾性部材20は、複数の拘束板10が配列した状態において、隣り合う拘束板10の間に位置して、対向する拘束板10に当接して圧縮されることにより、両者を離間させるように付勢している。これにより、図6に示すように、弾性部材20は、隣り合う拘束板10の間に位置して隣り合う拘束板10の間に初期隙間W0を形成している。なお、弾性部材20は、図3(b)に示す自由状態では初期隙間W0よりも突出している。弾性部材20の構成は限定されないが、本実施形態1では、図3(a)に示すように、弾性部材20は板材を屈曲して形成された板バネからなる。また、弾性部材20の材質は限定されないが、本実施形態1では、弾性部材20は金属製であって導電性を有する。
【0016】
図3(a)に示すように、弾性部材20は、拘束板10の幅方向Yの一方側Y1の端部と他方側Y2の端部のそれぞれに上下方向Zに並んで2つずつ、合計4つ設けられている。後述するように、本実施形態1では図4に示すように、隣り合う拘束板10の間にワーク100を挿入したときに、上側に位置する上側弾性部材21が集電タブ130a、130bと重なる位置に位置するように構成されている。
【0017】
図3(a)に示すように、弾性部材20の幅方向Yの両端には幅方向Yの外方に突出する接続端子23を有する。接続端子23は金属製であって導電性を有する。本実施形態1では、接続端子23はつる巻ばね状に形成されている。図5に示すように、接続端子23は、電流遮断部24を介して弾性部材20と電気的に接続されている。電流遮断部24は、電流遮断部24に所定以上の電流が流れたときに破断して接続端子23と弾性部材20との間を絶縁状態にするヒューズとして機能する。
【0018】
図4に示すように、拘束板10は拘束板支持部30により支持されている。拘束板支持部30は、左右2つの上側支持棒31と、左右2つの下側支持棒32とを含む。拘束板10における左右の切り欠き部13の円弧状部分は、左右2つの下側支持棒32に沿う形状となっている。拘束板10は、拘束板10の左右の切り欠き部13において下側支持棒32上に載置された状態となるとともに、左右2つの上側支持棒31は拘束板10の上端の幅方向Yの両側面に当接することにより、上下方向Z及び幅方向Yの位置決めがなされている。
【0019】
図2に示すように、押圧拘束部40は、押圧板41、押圧ばね42、ロッド43、ロック機構44を備えている。押圧板41は複数の拘束板10の配列方向Xの両側に配置されている。押圧ばね42は、両方の押圧板41に接続されており、押圧ばね42の圧縮力により押圧板41を複数の拘束板10に押圧するように構成されている。ロッド43は一方の押圧板41に接続されている。ロック機構44は、ロッド43を複数の拘束板10から離れる方向に引っ張ることで複数の拘束板10への押圧を解除する。初期状態では、ロック機構44により複数の拘束板10への押圧が解除された状態となっている。そして、押圧拘束部40は、ロック機構44においてロッド43を解放することで、複数の拘束板10を配列方向Xに押圧して弾性部材20を圧縮することにより隣り合う拘束板10の間の隙間を初期隙間W0よりも小さくして、隣り合う拘束板10の間に挿入されたワーク100を拘束板10を介して拘束するように構成されている。
【0020】
次に、本実施形態1の拘束治具1の使用態様について、説明する。
まず、初期状態では、拘束治具1は、図6(a)に示すように、ロック機構44により複数の拘束板10への押圧が解除された状態となっており、複数の拘束板10において、弾性部材20により隣り合う拘束板10の間に初期隙間W0が形成されている。
【0021】
次に、図6(b)に示すように、拡開装置2により、隣り合う拘束板10の少なくとも一方における上側端部11を他方の拘束板10から離して、上側端部11同士の間の隙間W1を下側端部12同士の間の隙間W2よりも拡開する。なお、拡開装置2は拘束治具1とともに拘束システム200を構成している。上述のように上側端部11同士の間の拡開することにより、一方の拘束板10に設けられた上側弾性部材21は、対向する他方の拘束板10から離間するが、下側弾性部材22は対向する他方の拘束板10に当接して付勢された状態が維持されている。これにより、隣り合う拘束板10はV字状に開いた状態となる。そして、上側端部11同士の間の隙間W1はワーク100の積層体部110の厚さD1よりも十分大きくなっている。一方、下側端部12同士の間の隙間W2はワーク100の積層体部110の厚さD1よりは小さく、ワーク100の外周シール部120の厚さD2よりも大きくなっている。
【0022】
そして、図6(b)に示すように、ワーク100を、拡開された上側端部11同士の間から、矢印Pで示すように上側Z1から下側Z2に向けて隣り合う拘束板10の間に挿入する。図7(a)に示すように、当該ワーク100において、隣り合う拘束板10の間に挿入されたワーク100の外周シール部120の下方部分は拘束板10の下側端部12同士の間を挿通する。そして、ワーク100の積層体部110の下端部111a、111bが拘束板10のワーク支持部15a、15bにそれぞれ当接した状態となる挿入位置まで挿入される。
【0023】
図7(a)に示すように、ワーク100を挿入位置まで挿入することにより、積層体部110の下端部111a、111bがワーク支持部15a、15bに面接触で当接して、ワーク100がワーク支持部15a、15bに支持されることとなる。なお、ワーク100のガス抜き部121は隣り合う拘束板10の間には収まらずに拘束板10から上方に突出した状態となっている。なお、ワーク100を挿入する際は、上側弾性部材21は対向する拘束板10から離間することにより、当該上側弾性部材21に集電タブ130a、130bが接触しないようになっている。
【0024】
図7(a)に示すように、ワーク100が挿入位置まで挿入されると、図7(b)に示すように、拡開装置2はワーク100が挿入された一対の拘束板10の上側端部11の拡開を解除する。そして、次の隣り合う拘束板10の上側端部11の拡開及び次のワーク100の挿入を上述と同様に実施する。これを順次繰り返すことで、図8(a)に示すように、隣り合う拘束板10の間のすべてにワーク100が挿入される。
【0025】
その後、図8(b)に示すように、押圧拘束部40におけるロック機構44を解除して押圧板41により拘束板10を配列方向Xに押圧することにより、隣り合う拘束板10の間に挿入されたすべてのワーク100を一括して拘束する。さらに、これとともに、図9(a)に示すように、一方の側面におけるすべての上側弾性部材21と正極集電タブ130aとを一括して接触させ、図9(b)に示すように、他方の側面におけるすべての上側弾性部材21と負極集電タブ130bとを一括して接触させる。これにより、押圧拘束部40は、複数の拘束板10を配列方向Xに押圧して弾性部材20を圧縮することにより隣り合う拘束板10の間の隙間W3を初期隙間W0(図2参照)よりも小さくする。
【0026】
そして、図10(a)及び(b)に示すように、すべてのワーク100に一括して正極充電端子50及び負極充電端子51が接続される。図10(a)に示すように、正極充電端子50は、略棒状をなしており、図9(a)に示す接続端子23を介してすべての上側弾性部材21に接触する。これにより、正極充電端子50は上側弾性部材21を介して全ての正極集電タブ130aと接触するように構成されている。また、図10(b)に示すように、図10(a)とは反対側において、すべてのワーク100に負極充電端子51が接続される。負極充電端子51は、正極充電端子50と同様に略棒状をなしており図9(a)に示す接続端子23を介してすべての上側弾性部材21に接触する。これにより、負極充電端子51は上側弾性部材21を介して全ての負極集電タブ130bと接触するように構成されている。なお、正極充電端子50及び負極充電端子51は図示しない充放電装置に接続されている。当該正極充電端子50及び負極充電端子51により、すべてのワーク100を並列接続した状態とすることが可能となっている。このようにして、拘束治具1を用いることにより、すべてのワーク100を一括して拘束した状態で一括して並列で初回充電を行うことができる。
【0027】
次に本実施形態1の拘束治具1における作用効果について詳述する。
本実施形態1の拘束治具1では、主面10a、10b同士が対向するように水平方向Xに配列した複数の拘束板10において、隣り合う拘束板10の間には拘束板10同士の間に初期隙間W0を形成する弾性部材20が設けられている。そのため、ワーク100の挿入前の初期状態では、隣り合う拘束板10の間は初期隙間W0が形成された状態となって初期位置が安定した状態となっており、拘束板10の位置精度に優れる。そして、ワーク100を挿入する際には、隣り合う拘束板10の上側端部11同士の間の隙間W1が下側端部12同士の間の隙間W2よりも大きく開くことで、隣り合う拘束板10をV字状に開いた状態とする。これにより、隣り合う拘束板10の下側端部12の位置精度を維持した状態で隣り合う拘束板10の間にワーク100を挿入することができる。ワーク100を挿入した後は、押圧拘束部40により拘束板10の位置精度が高い状態でワーク100を一括して拘束することができる。これにより、簡素な構成で拘束板10の位置精度を高く維持できるため、低コストで拘束板10の位置精度を向上することができる。
【0028】
また、本実施形態1では、拘束板10は、ワーク100が挿入されたときに、外装体102によって積層体101が被覆されてなる積層体部110の下端部111a、111bに当接してワーク100を支持するワーク支持部15a、15bを有する。これにより、剛性の低い外周シール部120でワーク100を支持する場合に比べて、ワーク支持部15a、15bが積層体部111の下端部111a、111bとの面接触でワーク100を刺させることとなるため、外周シール部120の変形や破損を防止することができるとともに、ワーク100を安定して支持することができる。なお、本実施形態1では、ワーク支持部15a、15bを拘束板10に形成した凹部14a、14bにより形成された段差部により構成することとしたが、これに限らず、当該段差部と同等の形状を形成する別部材を拘束板10に取り付けてワーク支持部を構成してもよい。
【0029】
また、本実施形態1では、拘束板支持部30は、隣り合う拘束板10の間にワーク100を挿入する際に、下側端部12同士の間に、ワーク100における積層体部110よりも下方に突出した外周シール部120が挿入可能な隙間W2が形成されるように構成されている。これにより、ワーク100を挿入する際に外周シール部120が拘束板10に接触することを防止して、外周シール部120の変形や破損を一層防止することができる。
【0030】
また、本実施形態1では、弾性部材20は隣り合う拘束板10の間において、上下方向Zに並ぶように複数配置されている。これにより、隣り合う拘束板10をV字状に開いた状態にしても、下側に設けられた下側弾性部材22によって隣り合う拘束板10の間の隙間W2を確保して拘束板10の位置精度を維持するとともに、上側に設けられた上側弾性部材21により、隣り合う拘束板10の上側端部11同士の間に初期隙間W0を形成して、上側端部11を拡開してV字状に開きやすくすることができる。そのため、拘束板10の位置精度の維持と作業性の向上が図られる。
【0031】
また、本実施形態1では、弾性部材20は導電性を有し、隣り合う拘束板10の間に挿入されたワーク100が押圧拘束部40により押圧された状態において、弾性部材20はワーク100に備えられた集電タブ130a、130bに接触して弾性部材20を介してワーク100に通電可能なように構成されている。これにより、初期隙間W0を形成する弾性部材20が集電タブ130a、130bへの通電端子としての機能も発揮することとなる。そのため、ワーク100を充放電する際に、集電タブ130a、130bに充放電端子を直接接触させる必要がないことから、集電タブ130a、130bの変形を防止することができる。
【0032】
なお、本実施形態1では、弾性部材20のうち、上側弾性部材21が集電タブ130a、130bに接触するようにしたが、これに限らず、ワーク100の集電タブ130a、130bの配置に合わせて、例えば、下側弾性部材22が集電タブ130a、130bに接触するようにしたり、幅方向Yの一方側に設けられた上下の弾性部材21、22が集電タブに接触したりするようにしてもよい。
【0033】
また、本実施形態1では、弾性部材20は板バネからなる。これにより、弾性部材20を薄型に構成しても十分な弾性力を確保することができる。そのため、ワーク100の挿入前には隣り合う拘束板10の間に初期隙間W0を維持し、ワーク100の挿入後に拘束した状態では、隣り合う拘束板10の隙間を極めて小さくして拘束板10の拘束状態を良好に保つことができる。
【0034】
また、本実施形態1では、弾性部材20は、弾性部材20に所定値以上の電流が流れたときに破損して上記電流を遮断するように構成された電流遮断部24を有する。これにより、ワーク100において弾性部材20を介して形成された並列接続回路の一部に異常電流が発生しても、電流遮断部24により当該異常電流が発生した領域への通電を遮断した状態で他の領域への通電を維持できるため、異常電流による機器へのダメージ発生のリスクを低減することができる。
【0035】
また、本実施形態1では、隣り合う拘束板10における上側端部11同士の間の隙間W1を上側端部11と反対側の下側端部12同士の間の隙間W2よりも拡開してワーク100を挿入する際に、弾性部材20はワーク100に備えられた集電タブ130a、130bに接触しないように構成されている。これにより、ワーク100挿入時に集電タブ130a、130bの変形や破損が発生することを防止することができる。
【0036】
また、本実施形態1では、ワーク100に設けられた正極集電タブ130aに接触する全ての弾性部材21と接触するように構成された正極充電端子50と、ワーク100に設けられた負極集電タブ130bに接触する全ての弾性部材21と接触するように構成された負極充電端子51とを備える。これにより、すべてのワーク100を一括して充放電させることが容易となり、作業性が向上する。
【0037】
また、本実施形態1では、拘束治具1と拡開装置2とを備える拘束システム200が提供される。拡開装置2は、隣り合う拘束板10の少なくとも一方における上側端部11を他方の拘束板10から離して、上側端部11同士の間の隙間W1を下側端部12同士の間の隙間W2よりも拡開する。当該拘束システム200によれば、拡開装置2により、上側端部11同士の間の隙間W1を拡開するのを自動化することができ、作業性が一層向上する。
【0038】
以上のごとく、本実施形態1によれば、低コストで拘束板10の位置精度に優れた拘束治具1を提供することができる。
【0039】
(実施形態2)
上述の実施形態1では、図8(b)に示すように、ワーク支持部15a、15bによりワーク100の積層体部110の下端部111a、111bを支えることにより、ワーク100を支持することとしたが、これに替えて、本実施形態2では、図11(a)及び(b)に示すように、拘束板10の下方領域に板状部材150を設けて、板状部材150の上面をワーク支持部15cとしている。
【0040】
本実施形態2では、図12に示すように、隣り合う拘束板10の間にワーク100を挿入する際に、ワーク100の外周シール部120の下端部がワーク支持部15cに当接する位置まで挿入する。これにより、ワーク支持部15cは当該外周シール部120の下端部でワーク100を支持する。なお、本実施形態2におけるその他の構成は、実施形態1の場合と同様であって同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
本実施形態2の拘束治具1によれば、実施形態1におけるワーク支持部15a、15bによる作用効果を除いて、実施形態1の場合と同等の作用効果を奏する。
【0042】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1:拘束治具、2:拡開装置、10:拘束板、11:上側端部、12:下側端部、15a・15b・15c:ワーク支持部、20、21:弾性部材、24:電流遮断部、30:拘束板支持部、40:押圧拘束部、50:正極充電端子、51:負極充電端子、100:ワーク、111:積層体部、111a、111b:下端部、120:外周シール部、200:拘束システム
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