IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝電機サービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-回転電機 図1
  • 特開-回転電機 図2
  • 特開-回転電機 図3
  • 特開-回転電機 図4
  • 特開-回転電機 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105520
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/14 20060101AFI20230724BHJP
   H02K 5/08 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
H02K1/14 Z
H02K5/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006395
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 文明
(72)【発明者】
【氏名】山崎 学
【テーマコード(参考)】
5H601
5H605
【Fターム(参考)】
5H601AA03
5H601AA08
5H601AA09
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD35
5H601GD08
5H601GD22
5H605CC01
5H605GG04
(57)【要約】
【課題】分割コアの軸方向のズレを抑制できたり等、より不都合が少なくなるよう改善された新規な構成の回転電機を得る。
【解決手段】実施形態の回転電機は、複数の分割コアと、外周リングと、を備える。複数の分割コアは、回転中心の周方向に互いに隣接して設けられる。外周リングは、複数の分割コアの外周面を保持する周壁と、周壁の外周面と面する内周面に設けられ外周面における回転中心の軸方向の両側の角部と面し回転中心の径方向内方に向かうにつれて軸方向の両側に広がるように傾斜した一対の傾斜面と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心の周方向に互いに隣接して設けられた複数の分割コアと、
前記複数の分割コアの外周面を保持する周壁と、前記周壁の前記外周面と面する内周面に設けられ前記外周面における前記回転中心の軸方向の両側の角部と面し前記回転中心の径方向内方に向かうにつれて前記軸方向の両側に広がるように傾斜した一対の傾斜面と、を有した外周リングと、
を備えた、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転中心の周方向に互いに隣接して設けられた複数の分割コアと、複数の分割コアの外周面を保持する周壁を有した外周リングと、を備えた回転電機が、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-131006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の回転電機では、外周リングと複数の分割コアとが焼嵌めによって組付けられている。具体的には、外周リングを加熱し内径寸法を拡径(熱膨張)させ、それを周方向に並んだ分割コアに挿入する。焼嵌め後の外周リングと分割コアとの外径差によって生じる応力によって固定組付けされる。
【0005】
ここで、分割コアの外径と外周リングの内径との寸法差が大き過ぎると焼嵌め工程後に発生する応力が大きくなり、その結果、分割コアが軸方向にズレ、座屈等が発生してしまう虞があった。すなわち、この種の回転電機では、分割コアの軸方向のズレを抑制できたり等、より不都合が少なくなるよう改善された新規な構成が得られれば、有益である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の回転電機は、複数の分割コアと、外周リングと、を備える。複数の分割コアは、回転中心の周方向に互いに隣接して設けられる。外周リングは、複数の分割コアの外周面を保持する周壁と、周壁の外周面と面する内周面に設けられ外周面における回転中心の軸方向の両側の角部と面し回転中心の径方向内方に向かうにつれて軸方向の両側に広がるように傾斜した一対の傾斜面と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態の回転電機の分割コアおよび外周リングの例示的かつ模式的な分解斜視図である。
図2図2は、実施形態の回転電機の外周リングの例示的かつ模式的な断面図である。
図3図3は、実施形態の回転電機の分割コアおよび外周リングの例示的かつ模式的な断面図である。
図4図4は、変形例の回転電機の外周リングの例示的かつ模式的な断面図である。
図5図5は、変形例の回転電機の分割コアおよび外周リングの例示的かつ模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0009】
また、以下に開示される実施形態および変形例には、同様の構成要素が含まれる。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0010】
[実施形態]
図1は、実施形態の回転電機1の分割コア20および外周リング30の分解斜視図である。図1に示されるように、回転電機1は、ステータ2を構成する複数の分割コア20およびコイル21や、不図示のロータ、外周リング30等を備えている。回転電機1は、いわゆる集中巻モータとして構成されている。
【0011】
なお、以下の説明では、便宜上、回転電機1の回転中心Axの軸方向を、単に軸方向と称し、回転中心Axの径方向を、単に径方向と称し、回転中心Axの周方向を、単に周方向と称する。また、図中、軸方向を矢印Xで示し、周方向を矢印Cで示し、径方向を矢印R(図2参照)で示す。
【0012】
外周リング30は、回転中心Axを中心とした円筒状に構成されている。外周リング30の内周面31aには、ステータ2の複数の分割コア20が周方向Cに並んだ状態で取り付けられる。外周リング30は、ステータ2や、不図示のロータ等を収容するケースの一部を構成している。外周リング30は、保持部材や、拘束部材等とも称される。
【0013】
ステータ2は、複数の分割コア20と、複数のコイル21と、を有している。複数の分割コア20は、互いに周方向Cに隣接して並んでおり、全体として円環状のステータコアを構成している。分割コア20は、複数の鋼板を軸方向Xに積層することによって構成された積層コアである。分割コア20は、それぞれ内周面20bを含みコイル21が巻回されるティースや、外周面20aを含みティースの径方向Rの外方で円弧状に延びるヨーク等を有している。
【0014】
コイル21は、分割コア20のそれぞれにコイルボビン等を介して取り付けられている。コイル21は、U相コイルや、V相コイル、W相コイル等を含んでおり、これらのコイル21は、バスリング等を介して電源との接続用の端子部と電気的に接続される。
【0015】
なお、ステータ2の内周面20bは、不図示のロータの外周面と対向して配置されうる。ステータ2は、コイル21への通電によって外周リング30(ケース)の内部に磁界を発生させ、当該磁界との相互作用によってロータ鉄心ひいてはロータ鉄心の内周部に固定されたロータシャフトを回転させる。
【0016】
図2は、回転電機1の外周リング30の断面図である。図2に示されるように、外周リング30は、周壁31と、取付部32と、を有している。本実施形態では、外周リング30には、周方向Cに互いに間隔をあけて複数の取付部32が設けられている。
【0017】
取付部32は、外周リング30を不図示のケースに取り付ける部分である。取付部32は、周壁31の軸方向Xの他端部31cから径方向Rの外方に突出している。取付部32には、外周リング30と不図示のケースとを結合するボルト等の結合具が軸方向Xに貫通する取付穴が設けられている。
【0018】
周壁31は、複数の分割コア20の外周面20a(図3参照)を保持する部分である。周壁31は、回転中心Axを中心とした円筒状に形成され、軸方向Xに沿って延びている。周壁31は、外周面20aと面する内周面31aと、外周面20aとは反対側を向いた外周面31bと、を有している。
【0019】
図2に示されるように、本実施形態では、周壁31は、軸方向Xの他端部31c側(分割コア20の挿入側)から一端部31d側に向けて先細りとなるテーパ状(漏斗状)に構成されている。具体的には、周壁31は、図2の断面視では、内周面31aおよび外周面31bが軸方向Xの他端部31c側から一端部31d側に向かうにつれて徐々に径方向Rの内方に向かうように傾斜している。
【0020】
すなわち、周壁31の軸方向Xの他端部31c側における半径W2(直径)は、周壁31の軸方向Xの一端部31d側における半径W1(直径)よりも大きい。本実施形態では、周壁31の他端部31c側の直径は、外周面20aの直径と略同じかあるいは僅かに大きく設定され、周壁31の一端部31d側の直径は、外周面20aの直径と略同じかあるいは僅かに小さく設定されている。
【0021】
外周リング30は、このような軸方向Xの他端部31c側が拡径する周壁31によって、複数の分割コア20の周壁31内への挿入性が高められている。そして、周壁31の内周面31aには、複数の分割コア20が圧入や焼嵌めによって組付けられる。圧入では、外周リング30を特に加熱することなく、周壁31の内周面31aに分割コア20を嵌め合わせる。
【0022】
これに対して、焼嵌めでは、外周リング30を加熱して周壁31を径方向Rに膨張(拡径)させ、その膨張した周壁31内に分割コア20を嵌め合わせる。その後、外周リング30を自然冷却することで周壁31が径方向Rに収縮し、収縮した周壁31が分割コア20の外周面20aに圧縮応力を加える。
【0023】
ここで、本実施形態では、周壁31には、複数の分割コア20が係合する凹部33が設けられている。凹部33は、周壁31の内周面31aから径方向Rの外方に凹み、径方向Rの内方に向けて開放されている。凹部33は、底面33aと、一対の傾斜面33b,33cと、を有している。
【0024】
図3は、回転電機1の分割コア20および外周リング30の断面図である。図3に示されるように、底面33aは、凹部33の底部であって複数の分割コア20の外周面20aと面する部分である。
【0025】
本実施形態では、底面33aは、軸方向Xと平行に延びる平坦面状に形成されている。また、図3に示されるように、底面33aの軸方向Xの幅は、分割コア20の外周面20aの軸方向Xの幅と略同じかあるいは僅かに狭く設定されている。
【0026】
傾斜面33bは、凹部33の軸方向Xの一方側の側面であって外周面20aにおける軸方向Xの一方側の角部20cと面する部分である。本実施形態では、傾斜面33bは、底面33aから径方向Rの内方に向かうにつれて軸方向Xの一方側に向かうように傾斜している。
【0027】
傾斜面33bは、外周面20aの軸方向Xの一方側の角部20cに対して径方向Rと軸方向Xとの間の傾斜方向(法線方向)に対向している。傾斜面33bは、角部20cとの当接によって複数の分割コア20の外周リング30に対する軸方向Xの一方側への移動を制限可能である。
【0028】
傾斜面33cは、凹部33の軸方向Xの他方側の側面であって外周面20aにおける軸方向Xの他方側の角部20cと面する部分である。本実施形態では、傾斜面33cは、底面33aから径方向Rの内方に向かうにつれて軸方向Xの他方側に向かうように傾斜している。
【0029】
傾斜面33cは、外周面20aの軸方向Xの他方側の角部20cに対して径方向Rと軸方向Xとの間の傾斜方向(法線方向)に対向している。傾斜面33cは、角部20cとの当接によって複数の分割コア20の外周リング30に対する軸方向Xの他方側への移動を制限可能である。
【0030】
なお、本実施形態では、凹部33における傾斜面33c側の径方向Rの深さが傾斜面33b側の径方向Rの深さよりも小さくなるよう構成されているが、この例には限定されず、互いに略同じ深さとなるように構成されてもよい。
【0031】
以上のように、本実施形態では、回転電機1は、回転中心Axの周方向Cに互いに隣接して設けられた複数の分割コア20と、複数の分割コア20の外周面20aを保持する周壁31と、周壁31の外周面20aと面する内周面31aに設けられ外周面20aにおける回転中心Axの軸方向Xの両側の角部20cと面し回転中心Axの径方向Rの内方に向かうにつれて軸方向Xの両側に広がるように傾斜した一対の傾斜面33b,33cと、を有した外周リング30と、を備える。
【0032】
このような構成によれば、外周面20aにおける軸方向Xの両側の角部20cと一対の傾斜面33b,33cとの当接によって分割コア20の外周リング30に対する軸方向Xのズレを抑制でき、ひいては分割コア20に座屈等が発生してしまうといった不都合を抑制できる。
【0033】
[変形例]
図4は、変形例の回転電機1Aの外周リング30Aの断面図である。変形例の回転電機1Aは、上記実施形態の回転電機1と同様の構成を備えている。よって、変形例の回転電機1Aは、当該同様の構成に基づく上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0034】
ただし、本変形例では、図4に示されるように、凹部33Aが円弧面状の底面33aを有している点が、上記実施形態と相違している。本変形例では、凹部33Aの径方向Rの深さは、軸方向Xの両端部側から軸方向Xの中央部側に向けて除々に深くなっている。すなわち、凹部33Aの底面33aは、軸方向Xに沿って凹面状(曲面状)に湾曲している。
【0035】
また、周壁31は、図4の断面視では、内周面31aおよび外周面31bが軸方向Xの他端部31c側から一端部31d側に向かうにつれて徐々に径方向Rの内方に向かうように傾斜している。すなわち、周壁31の軸方向Xの他端部31c側における半径W2(直径)は、周壁31の軸方向Xの一端部31d側における半径W1(直径)よりも大きい。
【0036】
外周リング30Aは、このような軸方向Xの他端部31c側が拡径する周壁31によって、複数の分割コア20の周壁31内への挿入性が高められている。そして、周壁31の内周面31aには、複数の分割コア20が圧入や焼嵌めによって組付けられる。
【0037】
なお、本変形例では、凹部33Aの底面33aは、焼嵌めによって周壁31内に分割コア20を組付ける場合に、少なくとも外周リング30Aを冷却して周壁31が径方向Rに収縮した取り付け状態で、図4に示す凹面状に湾曲した形状となるように構成されている。
【0038】
図5は、変形例の回転電機1Aの分割コア20および外周リング30Aの断面図である。図5に示されるように、本変形例では、凹部33Aの底面33aは、軸方向Xの一端部33a1と、軸方向Xの他端部33a2と、一端部33a1と他端部33a2との間で外周面20aと間隔をあけて面する中央部分と、を含んでいる。
【0039】
一端部33a1は、外周面20aにおける軸方向Xの一方側の角部20cと面する部分である。本変形例では、一端部33a1は、径方向Rの内方に向かうにつれて軸方向Xの一方側に向かうように傾斜している。一端部33a1は、傾斜面の一例である。
【0040】
一端部33a1は、外周面20aの軸方向Xの一方側の角部20cに対して径方向Rと軸方向Xとの間の傾斜方向(法線方向)に対向している。一端部33a1は、角部20cとの当接によって複数の分割コア20の外周リング30に対する軸方向Xの一方側への移動を制限可能である。
【0041】
他端部33a2は、外周面20aにおける軸方向Xの他方側の角部20cと面する部分である。本変形例では、他端部33a2は、径方向Rの内方に向かうにつれて軸方向Xの他方側に向かうように傾斜している。他端部33a2は、傾斜面の一例である。
【0042】
他端部33a2は、外周面20aの軸方向Xの他方側の角部20cに対して径方向Rと軸方向Xとの間の傾斜方向(法線方向)に対向している。他端部33a2は、角部20cとの当接によって複数の分割コア20の外周リング30に対する軸方向Xの他方側への移動を制限可能である。
【0043】
以上のように、本変形例では、回転電機1Aは、回転中心Axの周方向Cに互いに隣接して設けられた複数の分割コア20と、複数の分割コア20の外周面20aを保持する周壁31と、周壁31の外周面20aと面する内周面31aに設けられ外周面20aにおける回転中心Axの軸方向Xの両側の角部20cと面し回転中心Axの径方向Rの内方に向かうにつれて軸方向Xの両側に広がるように傾斜した一対の傾斜面としての一端部33a1および他端部33a2と、を有した外周リング30Aと、を備える。
【0044】
よって、本変形例によっても、外周面20aにおける軸方向Xの両側の角部20cと一対の傾斜面としての一端部33a1および他端部33a2との当接によって分割コア20の外周リング30Aに対する軸方向Xのズレを抑制でき、ひいては分割コア20に座屈等が発生してしまうといった不都合を抑制できる。
【0045】
以上、本発明の実施形態および変形例が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0046】
1,1A…回転電機、20…分割コア、20a…外周面、20c…角部、30,30A…外周リング、31…周壁、31a…内周面、33,33A…凹部、33a1…一端部(傾斜面)、33a2…他端部(傾斜面)、33b,33c…傾斜面、Ax…回転中心、C…周方向、R…径方向、X…軸方向。
図1
図2
図3
図4
図5