(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105530
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】通信ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 11/12 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
H01B11/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006412
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】390002598
【氏名又は名称】沖電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 智央
(72)【発明者】
【氏名】青木 雅尚
(57)【要約】
【課題】 簡易な手段で予測したサックアウト周波数に基づき、所望の周波数帯域でのサックアウトの発生を抑制できる通信ケーブルを提供する。
【解決手段】 本発明は、2芯の通信線を互いに撚り合わせることにより形成されたツイストペア線を備える通信ケーブルであって、前記2芯の通信線は、撚り返し加工されており、前記2芯の通信線は、サックアウト周波数が定まる撚りピッチ及び撚り返し率の関係に基づき、所望の周波数帯域でサックアウトが発生しないように、前記撚りピッチ及び撚り返し率が調整されて加工されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2芯の通信線を互いに撚り合わせることにより形成されたツイストペア線を備える通信ケーブルであって、
前記2芯の通信線は、撚り返し加工されており、
前記2芯の通信線は、サックアウト周波数が定まる撚りピッチ及び撚り返し率の関係に基づき、所望の周波数帯域でサックアウトが発生しないように、前記撚りピッチ及び撚り返し率が調整されて加工されている
ことを特徴とする通信ケーブル。
【請求項2】
前記2芯の通信線は、撚り返し率が0であることを特徴とする請求項1に記載の通信ケーブル。
【請求項3】
前記2芯の通信線は、前記所望の周波数帯域より高周波数帯域でサックアウトが発生するように、前記撚りピッチ及び撚り返し率が調整されていることを特徴とする請求項1に記載の通信ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PC(Personal Computer)、タブレット、又は電子部品を搭載したロボット等の電子機器に接続するため様々なインターフェースケーブルが使用されている。
【0003】
機器間の通信用ケーブルとしては、ツイストペア構造を採用するケーブル(LAN(Local Area Network)ケーブル等)が多く使用されているが、需要増加に伴い、更なる高速化が求められている。
【0004】
通信用ケーブルの高速化を目指すにあたり、必要な技術は所望の高周波帯域においても、信号の減衰を少なく、伝送できることである。しかしながら、ある特定周波数において、信号伝送特性が急激に落ち込む現象である「サックアウト」が発生する問題が存在する。
【0005】
サックアウト対策として、例えば、特許文献1では、ケーブル内の撚り対線を覆う金属箔の密着力を調整してサックアウトを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のサックアウト対策は、サックアウトの発生要因を特定せずに、ケーブルの撚りピッチ等を手探り状態で変化させながら、サックアウトを抑制する手段を模索していた。即ち、ケーブルの設計段階でサックアウトが発生する周波数(以下、「サックアウト周波数」とも呼ぶ)が予測できず、試作段階でテストを行って初めてサックアウト周波数が分かることになる。
【0008】
そのため、簡易な手段で予測したサックアウト周波数に基づき、所望の周波数帯域でのサックアウトの発生を抑制できる通信ケーブルが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、2芯の通信線を互いに撚り合わせることにより形成されたツイストペア線を備える通信ケーブルであって、(1)前記2芯の通信線は、撚り返し加工されており、(2)前記2芯の通信線は、サックアウト周波数が定まる撚りピッチ及び撚り返し率の関係に基づき、所望の周波数帯域でサックアウトが発生しないように、前記撚りピッチ及び撚り返し率が調整されて加工されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な手段で予測したサックアウト周波数に基づき、所望の周波数帯域でのサックアウトの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るUTPケーブルの断面図である。
【
図2】ツイストペア構造の高速伝送ケーブルにおけるサックアウトの一例を示す説明図である。
【
図3】複数種のツイストペア構造のケーブルのサックアウト周波数の調査結果を示す説明図である。
【
図4】撚り返し率を変化させたツイストペア構造の複数のサンプルの減衰特性の実測値を示す説明図である。
【
図5】ツイストペア構造のケーブルのサックアウト周波数の計算値と実測値とを示す説明図である。
【
図6】ツイストペア構造の撚りピッチ、撚り返し率、及びサックアウト周波数の相関関係を示す説明図である。
【
図7】USB3規格に対応する高速伝送ケーブル(撚り返し率が0%)の減衰特性を示す説明図である。
【
図8】ツイストペア構造における電流の集中する箇所をイメージ化した説明図である。
【
図9】撚り返し率0%(撚り返しなし)のツイストペア構造の断面を示す説明図である。
【
図10】撚り返し率100%のツイストペア構造の断面を示す説明図である。
【
図11】撚り返し率50%のツイストペア構造の断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)基本概念
本発明の基本概念と従来技術の問題点とを図面を参照しながら説明する。
【0013】
図2は、従来のツイストペア構造の高速伝送ケーブルにおけるサックアウトの一例を示す説明図である。
図2では、USB(Universal Serial Bus)3 Vision(以下、単に「USB3」と呼ぶ)規格に対応する高速伝送ケーブルの減衰特性が示されている。即ち、ネットワークアナライザ等を用いて測定した各周波数成分の挿入損失(IL:Insertion Loss)が示されている。
【0014】
図2では、高速伝送ケーブル(2系統)の減衰特性を、太線及び点線で示しているが、いずれも、サックアウト発生領域21(3.5GHz手前付近)で、減衰特性に対して急激な落ち込み(サックアウト)が見られる。
【0015】
この点、サックアウトの発生要因を特定し、高速伝送ケーブルの使用帯域(伝送帯域)を広げれば、所望帯域での高速伝送を実現できる。例えば、USB3では、サックアウトを回避できれば、所望の高帯域で5Gbps(Gigabits per second)の伝送が可能となる。次に、他のツイストペア構造のケーブル(高速伝送ケーブル)についてもサックアウトについて調査した結果を示すものとする。
【0016】
図3は、複数種のツイストペア構造のケーブルのサックアウト周波数の調査結果を示す説明図である。
図3では、複数種のケーブルのサックアウト周波数と、各ケーブルの対撚りの条件(撚りピッチ及び撚り返し)とが示されている。
図3では、ケーブルの種類として、USB3規格に対応する高速伝送ケーブルであるケーブルA(固定配線用)及びケーブルBと、エンハンスト・カテゴリ5に対応するLANケーブルであるケーブルCと、カテゴリ6に対応するLANケーブルであるケーブルDとが示されている。
【0017】
対撚り条件は、ツイストペア線のピッチ(1撚りの長さ)を示す「撚りピッチ」と、撚り返し率をパーセント(%)で示した「撚り返し率」の項目で示している。なお、撚り返しとは、撚り合わせの回転方向とは逆の回転方向に、心線自体を捻ることである。撚り返しにより、対撚りの負荷を低減し、可動性能を向上させることができる。
【0018】
また、LANケーブル(ケーブルC、ケーブルD)は、4対のツイストペア線が収容されているため、各ツイストペア線の色の系統ごとに、対撚り条件を示している。
【0019】
図3の調査結果の注目する点として、ケーブルDにおいて、各対のピッチ、撚り返しが異なるが、サックアウトの周波数は、ほぼ同一周波数(2.8~2.9GHz)で発生してる点が挙げられる。発明者は、この結果からある一定の規則性を見出し、周波数と波長の関係式から以下の(1)式を導き出した。
【数1】
【0020】
上記(1)式は、ツイストペア線のサックアウト周波数(fs(GHz))を、算出するものである。上記(1)式において、pは、ツイストペア線の撚りピッチ(m)である。また、bは撚り返し(比率)を示している(例えば、撚り返し率が0~100%の場合には、0~1の値が入力される)。wsは波長短縮率(導体を被覆する絶縁体に依存するが、例えば、0.65~0.8の値が入力される)である。以下、上記(1)式について検証した結果を示すものとする。
【0021】
図4は、撚り返し率を変化させたツイストペア構造の複数のサンプル(撚り返し率が80%、50%、0%のツイストペア線)の減衰特性(測定長1m)の実測値を示す説明図である。
図4では、撚り返し率が0%の減衰特性は、「実線」で示し、撚り返し率が50%の減衰特性は、「点線」で示し、撚り返し率が80%の減衰特性は、「破線」で示している。
図4では、撚り返し率が50%のサンプルは、サックアウト発生領域41(3.6GHz)でサックアウトが発生し、撚り返し率が80%のサンプルは、サックアウト発生領域42(6GHz)でサックアウトが発生しているのが示されている。一方、撚り返し率が0%のサンプルでは、サックアウトは発生していない。
【0022】
図5は、
図4の減衰特性の実測値(サックアウト周波数)と、上記(1)式を用いて撚り返し率が80%、50%、0%の際のサックアウト周波数を算出した計算値とを示している。実測値と計算値とを比較すると、
図5に示すように、ほぼ一致しており、上記(1)式が成立することが確認できる。
【0023】
上記(1)式に基づく、ツイストペア構造の撚りピッチ、撚り返し率、及びサックアウト周波数の相関関係は
図6に示す通りとなる。
図6は、横軸に撚り返し率、縦軸にサックアウト周波数をとったときのピッチごと(12mm(ひし形を含む実線)、16mm(四角形を含む実線)、20mm(三角形を含む実線))の推移を表している。
図6では、ツイストペア線のピッチが細かいほどサックアウト(サックアウト周波数)が高周波数帯域に発生することが示されている。また、撚り返しを高い割合でかけることで高周波数帯域にてサックアウトが発生することが分かる。
【0024】
そして、ツイストペア構造の撚り返し率を0%にすることでサックアウトは解消されることが判明した。
図7は、USB3規格に対応する高速伝送ケーブル(撚り返し率が0%)の減衰特性を示す説明図である。
図7で示している高速伝送ケーブルは、上述の
図3で示したケーブルAの構成を撚り返し率のみ0%にして製造したものである。上述のケーブルAは、
図3で示したように3.6GHzでサックアウトが発生していたが、撚り返し率を0%にすると、
図7に示すようにサックアウトが発生せず、滑らかな減衰特性が得られる結果となった。
【0025】
以上の結果を踏まえて、発明者は、サックアウトが発生する理論を以下のように考察した。サックアウトは、一般的にL成分(インダクタンス)と、C成分(キャパシタンス)の共振によって発生すると言われている。
【0026】
ここで、キャパシタンスは、導体間距離と導体間の誘電率で決定する。ツイストペア構造において撚り返しの有無に関わらず、導体間距離は変わらず、誘電率も変化しないため、C値は一定と考える。一方、インダクタンス(内部インダクタンス)は、磁束と電流で決定する。ツイストペア構造において、撚り返しをかけた場合においても電流量は変化しないが、磁束は変化すると推察した。
【0027】
図8は、ツイストペア構造における電流の集中する箇所をイメージ化した説明図である。
図8は、上記考察から作成したモデルであり、ツイストペア構造70の各導体上に流れる電流が集中している箇所を電流集中箇所71(71-1、71-2)として示している。
図8を参照すると、電流は、近接効果により、導体が一番近いところに集中していることが分かる。そして、発明者は、ツイストペア構造において、撚り返しをかけることで、電流集中位置が導体表面を螺旋状に変化し、伝搬すると仮説を立てた。以下、撚り返し率0%、50%、100%のツイストペア構造の例を挙げて、この仮説を検証する。
【0028】
図9は、撚り返し率0%(撚り返しなし)のツイストペア構造の断面を示す説明図である。
図9では、心線81-1と心線81-2とを撚り合わせて形成されたツイストペア線80(1ピッチ分)の各断面(撚り角度が0°、90°、180°、270°、360°の際の断面)が示されている。
図9において、電流集中位置82(82-1、82-2)は、導体84上の電流の集中箇所を示している。基準線83(83-1、83-2)は、心線81(81-1、81-2)内の位置関係を説明するために便宜的に示しているものである。
【0029】
撚り返し0%の場合、心線81(心線81-1、心線81-2)は、撚り角度に応じて、同様に回転するだけである。
【0030】
例えば、撚り角度が90°の場合、心線81(心線81-1、心線81-2)自体も左に90°回転するだけなので、結果的に、基準線83(基準線83-1、基準線83-2)の位置は、左に90°回転した位置となる(上向きから左向きとなる)。さらに、90°捻ると、(即ち、撚り角度が180°の場合)、心線81(心線81-1、心線81-2)自体は、同様に左に90°回転するだけなので、基準線83(基準線83-1、基準線83-2)の位置は、さらに左に90°回転した位置となる(左向きから下向きとなる)。以下、撚り角度が270°…360°の場合も同様である。
【0031】
ここで、各撚り角度における基準線83(基準線83-1、基準線83-2)と、電流集中位置82(82-1、82-2)の位置関係(相対的な位置関係)は常に同じある。即ち、
図9に示すように、各撚り角度(0°、90°、180°、270、360°)において、心線81-1では、電流集中位置82-1は基準線83-1の右側に存在し、一方、心線81-2では、電流集中位置82-2は基準線83-2の左側に存在する位置関係となる。
【0032】
以上、撚り返し0%のとき、基準線83と電流集中位置82は常に同じ位置関係にある。即ち、導体は2心平行線と同一ということになる。
【0033】
図10は、撚り返し率100%のツイストペア構造の断面を示す説明図である。ここで、撚り返し率100%の撚り合わせとは、心線81(81-1、81-2)の方向が常に一定方向(
図10では、基準線83が常に上方向)になるように、心線81-1と、心線81-2とを撚り合わせる方法である。
図10も上述の
図9と同様に、ツイストペア線80(1ピッチ分)の各断面(撚り角度が0°、90°、180°、270°、360°の際の断面)が示されている。
【0034】
撚り角度が0°のとき、基準線83(83-1、83-2)と電流集中位置82(82-1、82-2)の位置関係は、上述の撚り返し0%の場合と同様である。撚り角度が90°のとき(即ち、90°捻ると)、撚り返し100%のため基準線83(83-1、83-2)は、上を向いているが、電流集中位置82(82-1、82-2)(
図10中の「黒丸」)は、それぞれ元の位置(
図10中の「白丸」)から90°左に回転する。
【0035】
更に180°捻られると、電流集中位置82(82-1、82-2)は90°のときからさらに90°回転する。そして、270°…360°回転したときに電流集中位置82(82-1、82-2)は1周し、螺旋状に変化していることが分かる。
【0036】
図11は、撚り返し率50%のツイストペア構造の断面を示す説明図である。
【0037】
撚り角度が0°のとき、基準線83(83-1、83-2)と電流集中位置82(82-1、82-2)の位置関係は、上述の撚り返し0%、100%の場合と同様である。撚り角度が90°のとき(即ち、90°捻ると)、撚り返し50%のため基準線83(83-1、83-2)は、左斜め45°の位置となる(撚り角度90°に対して、心線自体が45°逆回転されるため)。電流集中位置82(82-1、82-2)(
図10中の「黒丸」)は、それぞれ元の位置(
図10中の「白丸」)から45°左、45°右に回転する。そして、180°…270°…360°回転(1ピッチ分回転)したときに電流集中位置82(82-1、82-2)は元の位置から180°回転する。即ち、撚り返し50%では、2ピッチ分捻ることで、電流集中位置82(82-1、82-2)は、元の位置から360°回転することになる。
【0038】
以上より、撚り返しをかけること(上述の撚り返し100%、50%)で長手方向に電流が螺旋状に変化すると推察できる。そして、螺旋状に電流が変化することで磁束が変化すると推察できる。
【0039】
以上ここまで判明したこととし、ツイストペア構造の撚りピッチと撚り返し、サックアウトの相関関係が判明した。次に、この相関関係を利用した通信ケーブルの一例を示すものとする。
【0040】
(B)主たる実施形態
以下、本発明に係る通信ケーブルの一実施形態を、図面を参照しながら詳述する。この実施形態では、本発明に係る通信ケーブルをUTP(Unshielded Twisted Pair)ケーブルに適用した例について示す。
【0041】
(B-1)実施形態の構成
図1は、実施形態に係るUTPケーブルの断面図である。
【0042】
図1に示すように、実施形態に係るUTPケーブル10では、導体13が絶縁体14により被覆された構成の絶縁心線12が、2本撚り合わさることでツイストペア線11が構成されている。UTPケーブル10では、複数組のツイストペア線11(11-1~11-4)が配置される。
図1に示すUTPケーブル10では、ツイストペア線11が4対配置されているが、ツイストペア線11の数は限定されないものである。UTPケーブル10は、4対のツイストペア線11の外周をひとまとめに被覆したシース15により構成されている。
【0043】
上記導体13は、通常のケーブル(LANケーブル等)に用いられるもの、例えば、軟銅、硬銅又はアルミニウム等を用いればよく、特に限定はされない。
【0044】
上記絶縁体14は、電気絶縁性の樹脂組成物により形成される。かかる樹脂組成物としては、例えば、ポリエチレン樹脂(PE)等が挙げられる。
【0045】
上記シース15は、例えば、耐油性PVC(polyvinyl chloride:ポリ塩化ビニル)等である。
【0046】
本実施形態のツイストペア線11は、上述の(1)式に基づいて、撚りピッチ及び撚り返し率が定められる。例えば、ケーブルの仕様上、撚りピッチを細かく設定しなければならないが、可動性能は必要ない場合には、撚り返し率を0(即ち、撚り返し率をなし)にする。また、ある程度の可動性能が必要な場合には、所望帯域(使用帯域)より高帯域でサックアウトを発生するように、撚りピッチ及び撚り返し率を調整する。
【0047】
(B-2)実施形態の効果
本実施形態によれば、ツイストペア構造の撚りピッチと撚り返し、及びサックアウトの相関関係に基づいて、ツイストペア線11の撚りピッチ及び撚り返し率を調整することで、所望の周波数帯域でのサックアウトの発生を抑制できる。
【0048】
即ち、設計段階でサックアウト周波数を予測できるので、従来のように、サックアウトにより試作を繰り返す必要がなくなる。また、従来のような、個々の製品ごとの場当たり的なサックアウト対策の作りこみも不要となり、撚りピットと撚り返し率の調整によるだけで、いかなるツイストペア構造を採用するケーブルに対しても汎用的なサックアウト対策を施すことができる。
【0049】
(C)他の実施形態
上述した実施形態においても種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用できる。
【0050】
(C-1)上述した実施形態では、本発明をUTPケーブルに適用する例を挙げたが、ツイストペア構造を採用するケーブルであれば、STP(Shielded Twisted Pair)ケーブル等にも適用できる。また、ケーブルの規格(USBやLANケーブル等の規格)にも影響されることは無い。
【0051】
(C-2)上述した実施形態では、撚り返し率が、0~100%の例を示したが、撚り返し率は100%超えても良い。例えば、撚り返し率が150%であれば、上述の(1)式のbに1.5を入力すれば良い。
【符号の説明】
【0052】
10…UTPケーブル、11…ツイストペア線、12…絶縁心線、13…導体、14…絶縁体、15…シース、21、41、42…サックアウト発生領域、70…ツイストペア構造、71(71-1、71-2)…電流集中箇所、80…ツイストペア線、81(81-1、81-2)…心線、82(82-1、82-2)…電流集中位置、83…基準線(83-1、83-2)、84(84-1、84-2)…導体。