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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105551
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】チャタリング防止装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 47/02 20060101AFI20230724BHJP
   F16K 15/03 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
F16K47/02 H
F16K15/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006452
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139516
【弁理士】
【氏名又は名称】藤浪 一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀口 英三
【テーマコード(参考)】
3H058
3H066
【Fターム(参考)】
3H058AA07
3H058BB34
3H058CC01
3H066AA01
3H066BA34
3H066EA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】逆止弁の開弁時のチャタリングを防止するチャタリング防止装置を提供する。
【解決手段】逆止弁の弁体の開閉を制御するダッシュポットに設けられたチャタリング防止装置3であって、前記ダッシュポットは、ピストン27を備えたシリンダ23と、前記ピストンの移動に応じて前記シリンダの内圧側と外圧側とを連通する複数の第1流路70Aと、を備え、前記チャタリング防止装置は、前記シリンダの内圧側に設けられ、前記ピストンの移動に連動するスプールと、当該スプールを収容するスプール押えと、前記スプールの移動に応じて前記シリンダの内圧側と外圧側とを連通する第2流路70Dと、を設け、前記第2流路にバイパス流路51を設けるとともに、当該バイパス流路に、前記逆止弁の弁体が閉じるときは油の流通を止め、弁体が開くときに油を流通させるチェック弁50を設けた。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動可能な弁体を弁箱内に設け、前記弁体の揺動により前記弁体を弁座に接離して弁開閉を行う逆止弁において、前記弁体の開閉を制御するダッシュポットに設けられたチャタリング防止装置であって、
前記ダッシュポットは、ピストンを備えたシリンダと、前記ピストンの移動に応じて前記シリンダの内圧側と外圧側とを連通する複数の第1流路と、を備え、
前記チャタリング防止装置は、前記シリンダの内圧側に設けられ、前記ピストンの移動に連動するスプールと、当該スプールを収容するスプール押えと、前記スプールの移動に応じて前記シリンダの内圧側と外圧側とを連通する第2流路と、を設け、
前記第2流路にバイパス流路を設けるとともに、当該バイパス流路に、前記逆止弁の弁体が閉じるときは油の流通を止め、弁体が開くときに油を流通させるチェック弁を設けたことを特徴とするチャタリング防止装置。
【請求項2】
前記逆止弁の弁体が前記弁座に着座する直前において、複数の前記第1流路のうち前記チャタリング防止装置に最も近い第1流路が連通し、前記第2流路が閉じるように前記スプールが構成されていることを特徴とする請求項1に記載のチャタリング防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャタリング防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ダッシュポット及びチャタリング防止装置が付設された逆止弁が開示されている。特許文献1のチャタリング防止装置は、ダッシュポットのシリンダ内のピストンに連動させ、逆止弁の弁体が弁座に当接する手前でシリンダの内圧側と外圧側とを連通させる流路を設けることで、閉弁時のチャタリングを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-238459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、逆止弁のチャタリングは、閉弁時だけでなく、開弁時にも起こり得る。閉弁時のチャタリングと同様、開弁時のチャタリングも、弁体と弁座とが急激に複数回接触したり、シリンダ内でピストンが急激に上下動したりするため、弁体やピストン等が損傷するという問題がある。
【0005】
このような課題を踏まえ、本発明は、逆止弁の開弁時のチャタリングを防止するチャタリング防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、揺動可能な弁体を弁箱内に設け、前記弁体の揺動により前記弁体を弁座に接離して弁開閉を行う逆止弁において、前記弁体の開閉を制御するダッシュポットに設けられたチャタリング防止装置であって、前記ダッシュポットは、ピストンを備えたシリンダと、前記ピストンの移動に応じて前記シリンダの内圧側と外圧側とを連通する複数の第1流路と、を備え、前記チャタリング防止装置は、前記シリンダの内圧側に設けられ、前記ピストンの移動に連動するスプールと、当該スプールを収容するスプール押えと、前記スプールの移動に応じて前記シリンダの内圧側と外圧側とを連通する第2流路と、を設け、前記第2流路にバイパス流路を設けるとともに、当該バイパス流路に、前記逆止弁の弁体が閉じるときは油の流通を止め、弁体が開くときに油を流通させるチェック弁を設けたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、開弁時において、第2流路に加え、チェック弁が設けられたバイパス流路を介して油が内圧側に流入するため、内圧側に流入させる油の流量を多くすることができる。これより、弁体の回動速度を上げることができるため、逆止弁の開弁時のチャタリングを防止することができる。
【0008】
また、前記逆止弁の弁体が前記弁座に着座する直前において、複数の前記第1流路のうち前記チャタリング防止装置に最も近い第1流路が連通し、前記第2流路が閉じるように前記スプールが構成されていることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、全閉直前のピストンの動作を緩やかにすることができ、弁体の着座の衝撃を緩和できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、逆止弁の開弁時のチャタリングを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る逆止弁の弁開閉構造の正面図である。
図2】本実施形態に係る逆止弁の弁開閉構造の側面図である。
図3】本実施形態に係るダッシュポット及びチャタリング防止装置の側断面図である。
図4】本実施形態に係るチャタリング防止装置の断面図である。
図5】本実施形態に係るスプールの側面図である。
図6】本実施形態に係るダッシュポット及びチャタリング防止装置の油圧回路図である。
図7】閉弁時間または開弁時間と、弁体の開度との関係を示すグラフである。
図8図7のグラフの拡大図である。
図9図8のグラフの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。図1は、本実施形態に係る逆止弁の弁開閉構造の正面図である。図2は、本実施形態に係る逆止弁の弁開閉構造の側断面図である。逆止弁の弁開閉構造100は、逆止弁1と、ダッシュポット2と、チャタリング防止装置3とで構成されている。
【0013】
(逆止弁1)
逆止弁1は、ポンプ(図示省略)の吐出側などの配管(図示省略)に介設されており、ポンプの停止などにより配管内が負圧になることによる逆流を防止する弁である。逆止弁1は、軸により揺動する弁体を備えたスイング式で、弁箱12内に、上弁体11a、下弁体11bと、上弁体11aの上弁座13a、下弁体11bの下弁座13bを備え、その下弁体11bの中央には、小弁体である弁体11と、弁座13と、アーム14と、回転軸15とを備えている。弁箱12は、上弁体11a、下弁体11b及び弁体11を収容する中空部を備えた箱状の部材で、配管と接続するためのフランジ12a,12b(図2参照)を備えており、上部には、着脱可能な蓋体16を備えている。
【0014】
上弁体11a、下弁体11bは、板状の部材で、図示しない軸により揺動可能に設けられており、上弁座13a、下弁座13bは、弁箱12内に枠状に設けられ、上弁体11a、下弁体11bとそれぞれの周方向に亘って接触又は離間する部位である。弁体11は、下弁体11bの中央に形成した開口部を開閉する板状の部材で、その開口の縁に弁座13を設けている。アーム14は、弁体11と回転軸15を連結する部材である。回転軸15は、アーム14を介して弁体11を軸回りに揺動させるための軸部材である。
【0015】
逆止弁1は、揺動可能な弁体11を弁箱12内に設け、弁体11の揺動により弁体11を弁座13に接離して弁開閉を行う。弁箱12に流入する水の圧力が所定値以上である場合、弁体11は、水圧によって弁座13から離脱して押し上げられ、弁座13の開口部が開放される。その結果、水は開口部を通過し、フランジ12aに接続された配管に流出する。水の圧力がさらに大きくなると上弁体11a、下弁体11bが開き、上弁座13a、下弁座13bの開口部が開放される。一方、弁箱12に流入する水の圧力が小さくなると、上弁体11a、下弁体11bが自重により下降して上弁座13a、下弁座13bの開口部が閉鎖される。さらに、弁箱12に流入する水の圧力が所定値未満である場合、弁体11は自重により下降して弁座13の開口部を閉塞する。これにより、水の逆流を防ぐことができる。
【0016】
(ダッシュポット2)
ダッシュポット2は、弁体11の開閉を制御する緩衝装置である。図3は、本実施形態に係るダッシュポット及びチャタリング防止装置の側断面図である。ダッシュポット2は、ウェイト21と、上蓋22と、シリンダ23と、クランク24と、クランクピン25と、ピストンロッド26と、ピストン27と、ニードル弁30A,30B,30Cと、流路70A,70B,70Cと、を備えている。
【0017】
ウェイト21は、弁体11の揺動に対してダッシュポット2の釣り合い位置を維持するためのカウンターウェイトである。上蓋22は、ダッシュポット2の略上半分を構成する筐体である。シリンダ23は、ダッシュポット2の下半分を構成する円筒状の筐体である。シリンダ23の上部と上蓋22の下部とが締結具で接続されている。シリンダ23の側壁には、径方向に貫通するポート23a~23eが形成されている。ポート23d,23eはシリンダ23の上部に互いに対向して形成されている。ポート23a,23bは、シリンダ23の真ん中下寄りに形成されている。ポート23bは、ポート23aよりも下方に形成されている。ポート23cはポート23bよりも下方に、かつ、シリンダ23の下部に形成されている。
【0018】
クランク24は、回転軸15の回転をピストン27の上下往復動作に変換する部材である。クランクピン25は、クランク24とピストンロッド26とを回転可能に連結する部材である。ピストンロッド26は、クランク24の回転に従い上下動する棒材である。ピストン27は、シリンダ23の内周面に沿って摺動することでシリンダ23内の油を流通させる部材である。ピストン27は、ピストンロッド26の下端部に接続されており、クランク24の回転に従い上下動する。
【0019】
ピストン27の下面にはシリンダ弁60が設けられている。図4に示すように、シリンダ弁60は、弁体61と、ばね受け62と、コイルばね63と、締結具64とを備えている。弁体61は、略円板状を呈し、ピストン27の底部に周方向に亘って複数個形成された貫通孔27aを覆っている。ばね受け62は、弁体61の下方に弁体61と離間して配置されている。コイルばね63は、弁体61とばね受け62との間に介設され、ばね受け62に対して弁体61を上方に付勢している。締結具64は、シリンダ弁60を構成する部材をピストン27に留め付ける部材である。
【0020】
シリンダ弁60は、通常時は、コイルばね63の付勢により、弁体61がピストン27に当接し、閉弁状態となっている。一方、チャタリング防止装置3、シリンダ23及びピストン27で形成された空間の圧力(内圧側の圧力)が所定値以下になると、コイルばね63の付勢に抗して弁体61がピストン27から離間し開弁状態となる。開弁状態となると、貫通孔27aを介してシリンダ23の外圧側の油が内圧側へ(ピストン27の下方)へ流通する。締結具64は、ピストン27が下方に移動した際、チャタリング防止装置3のスプール34と当接する部位である。
【0021】
図3に示すように、シリンダ23には、ピストン27を介して内圧側と外圧側を連通する複数の第1流路(70A,70B,70C)のそれぞれにニードル弁30A,30B,30Cが設けられている。流路70Aは、ポート23aとポート23dとを連結する配管である。流路70Bは、ポート23bとポート23dとを連結する配管である。流路70Cは、ポート23cとポート23eとを連結する配管である。ニードル弁30A,30B,30Cは、ピストン27の移動速度に応じて各流路70A,70B,70Cの流量を調整する流量調整弁である。ダッシュポット2は、3つの流路70A,70B,70Cを用いて、シリンダ23の油を3段階に分けて流すことができる。
【0022】
なお、本実施形態では、流量調整にニードル弁を用いているが、他の種類の弁を用いてもよい。請求項における「複数の第1流路」とは、本実施形態では、3つの流路70A,70B,70Cを意味している。
【0023】
弁体11が開状態にある場合、ピストン27は、回転軸15、クランク24、クランクピン25、およびピストンロッド26を介して、シリンダ23内の上部に位置している(図3のピストン27の仮想線参照)。
【0024】
一方、弁体11が閉動作を開始し、ピストン27が下方に移動すると、シリンダ23の内圧側の油はポート23a~23cから流出し、流路70A,70B,70Cによりニードル弁30A,30B,30Cを介してポート23d,23eから外圧側に流入する。より詳しくは、ピストン27の下降により、シリンダ23の下部の圧力、つまり内圧側の圧力が上昇し、流路70A,70B,70Cを介してシリンダ23の内圧側の油が外圧側に流れる。ピストン27が下降してポート23aを通過すると、流路70Aを介してシリンダ23の内圧側から外圧側に流れた油は停止して、流路70B,70Cを介してシリンダ23の内圧側の油が外圧側に流れる。さらにピストン27が下降してポート23bを通過すると、流路70Bを介してシリンダ23の内圧側から外圧側に流れた油は停止して、流路70Cを介してシリンダ23の内圧側の油が外圧側に流れる。つまり、シリンダ23の内圧側から外圧側に流れる油の流量をピストン27の移動により調整できるようになっている。よって、ダッシュポット2は、このような3段階の緩衝作用によって弁体11の閉弁の衝撃を軽減し、いわゆるウォーターハンマー現象を回避することができる。また、ニードル弁30A,30B,30Cにより各流路70A,70B,70Cの流量を調整できるので、各段階の時間つまり各段階のピストン27の降下速度を調整できる。
【0025】
(チャタリング防止装置3)
チャタリング防止装置3は、ダッシュポット2の下部に設けられた装置である。図4は、本実施形態に係るチャタリング防止装置の断面図である。チャタリング防止装置3は、スペーサフランジ31と、スプール押え32と、案内管33と、スプール34と、ナット35と、スプール受け36と、コイルばね37と、ストッパ38と、プラグ39とを備えている。また、チャタリング防止装置3は、ニードル弁30及び流路70D(図3参照)Dを備えている。
【0026】
図4に示すように、スペーサフランジ31は、スプール押え32とダッシュポット2との接合部材である。スプール押え32は、案内管33及びスプール34を収納する筒状部材である。スプール押え32は、チャタリング防止装置3の外装の側壁面を構成している。スプール押え32の上面とスペーサフランジ31の下面とが接合されている。スプール押え32の側壁には、径方向に貫通するポート32aが形成されている。また、スプール押え32の内周面には、ポート32aに連通し、上下方向に延設された凹部32bが形成されている。ポート32aは、配管で構成された流路70D(図3参照)を介してシリンダ23のポート23eと連通している。流路70D(第2流路)は、スプール34の移動に応じて開閉される流路で、シリンダ23の油を内圧側から外圧側(逆に外圧側から内圧側)に流すものである。ニードル弁30Dは、流路70Dに設置されており、流路70Dの流量を調整する流量調整弁である。
【0027】
なお、本実施形態では、ニードル弁を用いているが、他の種類の弁を用いてもよい。請求項における「第2流路」とは、本実施形態では、流路70Dを意味している。
【0028】
図6は、本実施形態に係るダッシュポット及びチャタリング防止装置の油圧回路図である。図6に示すように、流路70D(本実施形態ではニードル弁30Dの内部)には、バイパス流路51が形成されている。また、バイパス流路51には、チェック弁50が設けられている。チェック弁50は、弁体11が閉じる時(ポート32aからポート23eに油が流れる時)には流路を遮断し、弁体11が開く時(ポート23eからポート32aに油が流れる時)には流路を開放する。なお、本実施形態では、ニードル弁30Dの内部にチェック弁50及びバイパス流路51を設けたが、ニードル弁30Dの外部で流路70Dの一部にこれらを設けてもよい。
【0029】
図4に示すように、案内管33は、スプール34を上下に摺動可能に案内する筒状部材である。案内管33には、径方向内側に周方向に亘って突出する突起部33aと、径方向に貫通するポート33b,33cが形成されている。突起部33aの内径は、後記するスプール34の第1小径部342の外径と略同等になっている。ポート33bは、突起部33aの下方に形成されている。ポート33b,33cは、いずれも凹部32b及びポート32aと連通している。
【0030】
スプール34は、上下に移動することでシリンダ23における内圧側の油量及び外圧側の油量を調整する略円柱体である。ナット35は、スプール押え32に案内管33を締結するための部材である。スプール受け36は、案内管33及びスプール34の下部を収容する有底筒状部材である。コイルばね37は、一端がスプール受け36に当接し、他端がスプール34の一部に当接している。コイルばね37は、スプール受け36に対してスプール34を上方に付勢する弾性部材である。ストッパ38は、案内管33の上端に設けられ、後記するスプール34の頭部341が挿通可能であり、第1小径部342が挿通不能になっている。つまり、ストッパ38は、スプール34の上下方向の移動のうち上限を決める部材である。プラグ39は、スプール受け36の下部に取り付けられている。
【0031】
(スプール34)
図5は、本実施形態に係るスプールの側面図である。スプール34は、頭部341と、第1小径部342と、第1大径部343と、第2小径部344と、第2大径部345と、第3小径部346とからなり一体成形で構成されている。スプール34は、頭部341が上となるようにして、案内管33の中空部内に配置されている。
【0032】
頭部341は、シリンダ弁60の締結具64(図4参照)と当接する部位である。第1小径部342、第2小径部344及び第3小径部346は、同径となっており、第1大径部343及び第2大径部345よりも小径となる部位である。第1大径部343及び第2大径部345は、同径となっており、かつ、案内管33の内径と同径となる部位である。第2大径部345の下端に、コイルばね37の他端が当接する。
【0033】
第1小径部342には、径方向に貫通する十字の連通孔40aが形成されている。第2小径部344には、径方向に貫通する十字の連通孔40bが形成されている。また、第1小径部342の軸方向略中央から第3小径部346の下端に亘って連通する連通孔40cが形成されている。連通孔40a~40cは互いに連通している。
【0034】
[全開時]
次に、本実施形態に係る逆止弁の弁開閉構造100の作用効果について説明する。弁体11が全開状態である時、ピストン27は、シリンダ23の上部に位置している。また、スプール34は、コイルばね37により上方に付勢され、ストッパ38に当接するとともに、第1大径部343が突起部33aに当接している。
【0035】
[閉弁時のチャタリング防止]
弁体11が閉弁方向に移送する際、これに伴ってピストン27が下降し、ダッシュポット2による弁体11の緩閉作用が開始される。仮に、チャタリング防止装置3が設けられていない場合、シリンダ23の内圧側の圧力が上昇し、閉弁直前に弁体11の回動速度が遅くなるためチャタリングが発生するという問題がある。
【0036】
これに対し、本実施形態のように、チャタリング防止装置3が設けられている場合、ピストン27の下端に設けられた締結具64に押されてスプール34が下降する(つまりピストン27とスプール34は連動する)と、第1小径部342の連通孔40aと、案内管33のポート33bとが連通する。より詳しくは、ピストン27に押された油は案内管33の上部から連通孔40a、連通孔40c、連通孔40b、ポート33b、ポート32aに流れ、流路70Dに流れ、ニードル弁30Dを介して、ポート23eからピストン27の外圧側に油が流入する。これにより、弁体11は、閉弁する際に回動速度を速めることができるため、閉弁時のチャタリングを防止することができる。
【0037】
[全閉時]
図3及び図4は、弁体11の全閉時の状態を示している。全閉時では、締結具64によってスプール34が最下位置まで押し込まれる。この時、連通孔40aは、突起部33aに覆われるため、スプール34内及び流路70D内に油は流入しない。つまり、流路70Dは閉鎖状態となっている。一方、流路70Cには油が流通する状態になっている。つまり、シリンダ23の内圧側と外圧側は均圧状態となっている。
【0038】
[開弁時のチャタリング防止]
全閉状態から弁体11が開いた直後、元々開状態であった流路70Cに加え、ピストン27の上昇に伴ってスプール34が上方に移動するため、シリンダ23の内圧側と流路70Dが連通する。これにより、流路70C,70Dを介して、ピストン27の外圧側から内圧側に油が流れ、ピストン27が上方に移動し弁体11が徐々に開いていく。
【0039】
しかし、弁体11が開いた直後は、弁体11の回動速度が上がらないため、チャタリングが発生するおそれがある。この点、本実施形態では、ニードル弁30Dにバイパス流路51を設けているため、ニードル弁30Dを介した流量にプラスして、バイパス流路51を介した流量が流路70Dに流れるので、ポート23eからポート32aへ多くの油を流すことができる。これにより、ピストン27の移動速度が増し、弁体11の速度を上げることができるため、チャタリングの発生を防ぐことができる。さらに弁体11が開方向に回動する速度が上がると、流路70C,70Dからの流量では足りなくなり、シリンダ23の内圧側は負圧となると、シリンダ弁60が開放される。つまり、コイルばね63の付勢に抗して弁体61が下方に移動し、貫通孔27aを介して外圧側の油が内圧側に移動する。これにより、ピストン27が一気に上昇するとともに、弁体11が全開状態となる。
【0040】
[全閉時直前]
すでに説明した通り、弁体11の閉弁時には、スプール34が下降し、第1小径部342の連通孔40aと案内管33のポート33bとが連通することで、流路70Dによってシリンダ23の内圧側の油が外圧側に移動する。その結果、閉弁時のチャタリングが防止される。しかし、弁体11の速度を上げてしまうと、着座する際に弁体11が弁座13に勢いよく当たってしまい、互いに損傷するおそれがある。そこで、本実施形態では、当該損傷を防止する損傷防止機構が設けられている。
【0041】
損傷防止機構は、弁体11の全閉直前から全閉時において、流路70Dを閉じる。全閉直前から全閉時にかけて流路70Dが開いていると、流路70C,70Dの両方で内圧側から外圧側に油が流れるため弁体11の速度が速くなってしまう。そこで、本実施形態の損傷防止機構では、チャタリングを防止できた後は、再び弁体11の速度が少し低下するように、流路70Dを閉じる。これにより、全閉直前から全閉時にかけて流路70Cだけで内圧側から外圧側に油が移動するため、ピストン27の下降を緩やかにすることができるとともに、弁体11の回動速度が再度低速になった状態で着座する。これにより、弁体11等の損傷を防ぐことができる。
【0042】
[時間と開度との関係]
次に、各機能が作用するタイミングについて説明する。図7は、閉弁時間または開弁時間と、弁体の開度との関係を示すグラフである。図8は、図7のグラフの拡大図である。図9は、図8のグラフの拡大図である。図7図9において、実線は、実施例の閉弁時を示している。破線は、実施例の開弁時を示している。二点鎖線は、比較例の開弁時を示している。開度とは、弁体11が開く割合を言い、開度100度は全開時、開度0度は全閉時を示す。下記に示す時間と開度との関係はあくまで例示であって、適宜設定することができる。
【0043】
[閉じる時]
図7の時間ta0からta1までの間は、流路70A,70B,70Cは全て流通状態となり、シリンダ23の内圧側の油は流路70A,70B,70Cを介して外圧側に流れる。時間ta1(変曲点S1)において、ピストン27がポート23aを塞ぐため、流路70B,70Cが流通状態となり、内圧側の油は流路70B,70Cを介して外圧側に流れる。また、時間ta2(変曲点S2)において、ピストン27がポート23bを塞ぐため、流路70Cのみが流通状態となり、内圧側の油は流路70Cのみを介して外圧側に流れる。
【0044】
また、時間ta3(変曲点S3)において、ピストン27が下降してスプール34を押圧すると、流路70Dが流通状態となり、シリンダ23の内圧側の油は流路70C,70Dを介して外圧側に流れる。変曲点S3から後記する変曲点S4(図9参照)の間でチャタリング防止装置3が作動する。チャタリング防止作用の開始時間は、例えば、弁体11の開度が4度の時に設定することができる。
【0045】
さらに、図9に示すように、時間ta4(変曲点S4)において、ピストン27がさらに下降してスプール34を押圧すると、流路70Dに油が流れず流路70Cのみが流通状態となり、シリンダ23の内圧側の油は流路70Cのみを介して外圧側に流れる。これにより、全閉時直前では再び弁体11の回動速度が低速になる損傷防止機構が作動する。損傷防止機構は、変曲点S4から全閉時(ta5)までの間で作動する。
【0046】
[開く時]
次に、弁体11が全閉時から開くときについて説明する。図9に示すように、時間tb0から時間tb1(変曲点S5)の間は、損傷防止機構と逆の動作となる。つまり、流路70Dに油が流れず流路70Cのみが流通状態となり、ピストン27の上昇に伴いシリンダ23の外圧側の油が流路70Cを介して内圧側に流入する。流路70Cのみで油が流通し、ピストン27がゆっくりと押し上げられるため、弁体11も緩やかに開く。
【0047】
時間tb1から時間tb2(変曲点S6)までの間は、ピストン27の上昇に伴ってスプール34も上昇し、スプール34と流路70Dとが連通状態になり、流路70C及び流路70Dを介してシリンダ23の外圧側から内圧側に油が流れる。これにより、ピストン27(弁体11)は変曲点S5前に比べて若干速く回動する。
【0048】
時間tb2から時間tb3(変曲点S7)までの間は、ニードル弁30Dのチェック弁50が連通し、ニードル弁30Dを介した流量にプラスして、バイパス流路51を介した流量が流路70Dに流れ、この流路70Dを介してシリンダ23の外圧側から内圧側に油が流れる。これにより、図8の変曲点S6から変曲点S7に示すように、短時間で多くの油が内圧側に流入するため、弁体11の回動速度が速くなる。これにより、開弁時のチャタリングを防止することができる。
例えば、図8の二点鎖線は、比較例(バイパス流路51無し)の開弁時を示しているが、時間tb3での開度を実施例と比較例とで比較すると、実施例の方の開度が大きくなっているのは明らかである。
【0049】
図7に示すように、時間tb3から時間tb4(変曲点S8)までの間は、シリンダ弁60が開放され、シリンダ23の外圧側の油が貫通孔27aを介して内圧側に流入するため、ピストン27が一気に上昇し、時間tb4で全開状態となる。
【0050】
以上説明した本実施形態によれば、開弁時において、流路70D(第2流路)に加え、バイパス流路51を介した油が内圧側に流れるため、開弁時にシリンダ23の内圧側に流れる油の流量を多くすることができる。これより、弁体11の回動速度を上げることができるため、逆止弁1の開弁時のチャタリングを防止することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、逆止弁1の弁体11が弁座13に着座する直前において、複数の流路(第1流路)のうちチャタリング防止装置3に最も近い流路70C(第1流路)が開き、流路70D(第2流路)が閉じるようにスプール34が構成されている。これにより、全閉時直前のピストン27の動作を緩やかにすることができ、弁体11等の損傷を低減することができる。また、スプール34に油が流れないので、逆止弁1の閉鎖状態に生じる管内流体の圧力脈動と弁体11の開閉動作の同期を緩和でき、逆止弁1の動作が安定する。本実施形態は、図1に示すように、上下に分割した上弁体11a、下弁体11bおよび弁体11(下弁体11bを親弁体とする子弁体である)からなる上下分割式親子逆止弁としているが、弁体11のみを有する逆止弁であってもよい。
【0052】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において、適宜設計変更が可能である。例えば、スプール34の連通孔40a~40cの径寸法、形状、位置などは、案内管33のポートに応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0053】
100 弁開閉構造
1 逆止弁
2 ダッシュポット
3 チャタリング防止装置
11 弁体
11a 上弁体
11b 下弁体
12 弁箱
12a,12b フランジ
13 弁座
13a 上弁座
13b 下弁座
14 アーム
15 回転軸
16 蓋体
21 ウェイト
22 上蓋
23 シリンダ
23a~23e ポート
24 クランク
25 クランクピン
26 ピストンロッド
27 ピストン
28 コイルばね
29 ばね受け
30A,30B,30C ニードル弁
30D ニードル弁
34 スプール
40a~40c 連通孔
50 チェック弁
51 バイパス流路
70A,70B,70C 流路(第1流路)
70D 流路(第2流路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9