(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105579
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】床付き仮設空間の構築設備
(51)【国際特許分類】
B60P 3/335 20060101AFI20230724BHJP
E04B 1/348 20060101ALI20230724BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20230724BHJP
B60P 3/37 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B60P3/335
E04B1/348 C
E04H1/12 Z
B60P3/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006501
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】山本 義徳
(72)【発明者】
【氏名】杉本 マキ
(72)【発明者】
【氏名】菅野 泰史
(72)【発明者】
【氏名】黒田 宏
(57)【要約】
【課題】 複数の移動収容体を用いて構築される床付き仮設空間において、各移動収容体をスムーズに搬出させることができる床付き仮設空間の構築設備を提供する。
【解決手段】 本発明の床付き仮設空間の構築設備100は、3台以上のトレーラハウス10と、床付き台20を備え、床付き台20は、平面形状が多角形である床24を備え、地面上に設置されることで、地面よりも高い位置に床24が配置される。それぞれのトレーラハウス10のハウス本体12が、下記の条件(1)及び(2)を満たす位置にて床付き台20の周りに配置される。
条件(1):それぞれのトレーラハウス10の移動方向と、床24の外縁に含まれる辺の延出方向とが互いに沿った状態で、それぞれのトレーラハウス10の収容体本体が上記の辺と隣り合う。
条件(2):3台以上のトレーラハウス10のうち、互いに最も近い位置にある2台のトレーラハウス10の各々の移動方向が、互いに異なる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に人を収容することが可能な収容体本体と、該収容体本体に取り付けられた移動機構とを備え、前記移動機構の動作によって地面上を移動可能な3台以上の移動収容体と、
平面形状が多角形である床を備え、前記地面上に設置されることで、前記地面よりも高い位置に前記床が配置される床付き台と、を含み、
それぞれの前記移動収容体の前記収容体本体が、下記の条件(1)及び(2)を満たす位置にて前記床付き台の周りに配置される、床付き仮設空間の構築設備。
条件(1):それぞれの前記移動収容体の移動方向と、前記床の外縁に含まれる一辺の延出方向とが互いに沿った状態で、それぞれの前記移動収容体の前記収容体本体が前記一辺と隣り合う。
条件(2):3台以上の前記移動収容体のうち、互いに最も近い位置にある2台の前記移動収容体の各々の移動方向が、互いに異なる。
【請求項2】
前記床付き台が複数の台によって構成され、
前記複数の台の各々は、前記床を備えており、
前記複数の台のうち、隣り合う2つの台の各々が備える前記床が連続するように前記複数の台が配置される、請求項1に記載の床付き仮設空間の構築設備。
【請求項3】
前記複数の台には、平面形状が三角形である前記床を備えた第1台、及び、平面形状が四角形である前記床を備えた第2台のうちの少なくとも一方が含まれる、請求項2に記載の床付き仮設空間の構築設備。
【請求項4】
前記隣り合う2つの台のうち、一方の台が備える前記床の外縁に含まれる一辺と、他方の台が備える前記床の外縁に含まれる一辺とが鈍角をなしており、
2台の前記移動収容体が、前記鈍角の頂点を挟んで隣り合う位置に配置される、請求項2又は3に記載の床付き仮設空間の構築設備。
【請求項5】
前記床付き台には、輸送通路が取り付けられており、
前記輸送通路を通じて、前記収容体本体の内部に資源を供給可能であり、又は、前記収容体本体の内部から不要物を排出可能であり、
前記床付き台が前記地面上に設置された状態では、前記輸送通路が、前記床と前記地面の間の空間に位置する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の床付き仮設空間の構築設備。
【請求項6】
前記移動収容体がトレーラハウスである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の床付き仮設空間の構築設備。
【請求項7】
前記床付き台が地面上に設置され、且つ、それぞれの前記移動収容体の前記収容体本体が前記床付き台の周りに配置された状態では、前記収容体本体の床が、鉛直方向において前記床と隣り合う位置にある、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の床付き仮設空間の構築設備。
【請求項8】
前記一辺と隣り合う前記収容体本体の数が一つである、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の床付き仮設空間の構築設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床付き仮設空間の構築設備に係り、特に、複数の移動収容体と床付き台とを含む床付き仮設空間の構築設備に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外イベントの会場、あるいは被災地での避難場所等、人が一時的に集まる場所に仮設空間を構築し、その空間に集まった人にサービス等を提供することは、既によく知られている。仮設空間は、サービス提供に十分なスペースが確保される一方で、容易に構築できるものであることが望ましい。そのため、トレーラハウス等のように、内部に人を収容可能な収容体本体に車輪等の移動機構が取り付けられた移動収容体を用いて、仮設空間を構築する場合があり得る(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、ハウス本体の内部にシャワーユニット、トイレユニット及び洗面ユニット等からなる水周りユニットが配置され、用途が限定された装備を備えるトレーラハウスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トレーラハウス等のような移動収容体を用いて仮設空間を構築する際に、デッキ等の床を備えたステージ(台)を配置し、ステージを囲うように複数の移動収容体を配置することにより、床付き仮設空間を構築することができる。その場合、それぞれの移動体収容体は、例えば、各移動体収容体がステージの外縁に沿って配置される。
【0006】
一方、ステージの周りに配置された複数の移動収容体のうちの一台又は数台を、移動収容体内への資材の補充又はメンテナンス等の理由により仮設空間から搬出するケースが想定される。このケースでは、搬出対象の移動収容体が他の移動収容体と干渉せずにスムーズに移動できることが求められる。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の移動収容体を用いて構築される床付き仮設空間において、各移動収容体をスムーズに移動させることが可能な床付き仮設空間の構築設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、本発明の床付き仮設空間の構築設備によれば、内部に人を収容することが可能な収容体本体と、収容体本体に取り付けられた移動機構とを備え、移動機構の動作によって地面上を移動可能な3台以上の移動収容体と、平面形状が多角形である床を備え、地面上に設置されることで、地面よりも高い位置に床が配置される床付き台と、を含み、それぞれの移動収容体の収容体本体が、下記の条件(1)及び(2)を満たす位置にて床付き台の周りに配置されることにより解決される。
条件(1):それぞれの移動収容体の移動方向と、床の外縁に含まれる一辺の延出方向とが互いに沿った状態で、それぞれの移動収容体の収容体本体が上記の一辺と隣り合う。
条件(2):3台以上の移動収容体のうち、互いに最も近い位置にある2台の移動収容体の各々の移動方向が、互いに異なる。
【0009】
上記の構成により、本発明の床付き仮設空間の構築設備によれば、床付き台の周りに3台以上の移動収容体を配置することで構築される床付き仮設空間において、各移動収容体が他の移動収容体との干渉を避けて移動することが、より容易になる。
【0010】
また、本発明の床付き仮設空間の構築設備において、床付き台が複数の台によって構成され、複数の台の各々は、床を備えており、複数の台のうち、隣り合う2つの台の各々が備える床が連続するように複数の台が配置されてもよい。
上記の構成であれば、床付き仮設空間において、床付き台における床面積を容易に拡張することができる。
【0011】
また、本発明の床付き仮設空間の構築設備において、複数の台には、平面形状が三角形である床を備えた第1台、及び、平面形状が四角形である床を備えた第2台のうちの少なくとも一方が含まれてもよい。
上記の構成であれば、第1台や第2台を並べることで、床付き台における床全体の形状を自由に設定することができ、床の形状についてのバリエーションが増える。
【0012】
また、本発明の床付き仮設空間の構築設備において、隣り合う2つの台のうち、一方の台が備える床の外縁に含まれる一辺と、他方の台が備える床の外縁に含まれる一辺とが鈍角をなしてもよい。この場合、2台の移動収容体が、鈍角の頂点を挟んで隣り合う位置に配置されると好適である。
上記の構成であれば、鈍角の頂点を挟んで隣り合う2台の移動収容体の各々が、互いに干渉するのを避けてスムーズに移動することができる。
【0013】
また、本発明の床付き仮設空間の構築設備において、床付き台には、輸送通路が取り付けられており、輸送通路を通じて、収容体本体の内部に資源を供給可能であり、又は、収容体本体の内部から不要物を排出可能であってもよい。この場合、床付き台が地面上に設置された状態では、輸送通路が、床と地面の間の空間に位置すると好適である。
上記の構成であれば、床付き台を設置することで輸送通路を同時に設置することができ、また、床付き台の床と地面との間のスペースを利用して、輸送通路を敷設することができる。
【0014】
また、本発明の床付き仮設空間の構築設備において、移動収容体がトレーラハウスであってもよい。
上記の構成であれば、汎用的な収容体本体であるトレーラハウスにより、床付き仮設空間を簡単に構築することができる。
【0015】
また、本発明の床付き仮設空間の構築設備において、床付き台が地面上に設置され、且つ、それぞれの移動収容体の収容体本体が床付き台の周りに配置された状態では、収容体本体の床が、鉛直方向において床と隣り合う位置にあるとよい。
上記の構成であれば、各収容体本体の床を、床付き仮設空間における床の一部分として利用することができ、その分、仮設空間の床面積を広げることができる。
【0016】
また、本発明の床付き仮設空間の構築設備において、上記一辺と隣り合う収容体本体の数が一つであるとよい。
上記の構成によれば、床付き仮設空間において、各移動収容体が移動する際に、各移動収容体は、他の移動収容体との干渉を避け易くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の床付き仮設空間の構築設備によれば、床付き台の周りに配置された3台以上の移動収容体の各々が、他の移動収容体との干渉を避けてスムーズに移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る床付き仮設空間の構築設備と、当該設備により構築された床付き仮設空間とを示す斜視図である。
【
図4】床付き仮設空間の第1のバリエーションを示す平面図である。
【
図5】床付き仮設空間の第2のバリエーションを示す平面図である。
【
図6】床付き仮設空間の第3のバリエーションを示す平面図である。
【
図7】床付き仮設空間の第4のバリエーションを示す平面図である。
【
図8】床付き仮設空間の第5のバリエーションを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<<本発明の一つの実施形態に係る床付き仮設空間について>>
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、図面では、説明を分かり易くするために幾分簡略化及び模式化して各部材を図示している。また、図中に示す各部材のサイズ(寸法)及び部材間の間隔等についても、実際のものとは異なっている。
【0020】
また、本明細書において、「仮設」とは、仮設期間の長さにかかわらず、所定位置に移動可能な状態で配置された状態を意味し、所定位置に移動不能な状態で設置された状態である「本設」とは異なる概念である。なお、本設された構造物や建物は、不動産に該当し、そのような構造物や建物の内部空間は、仮設空間には該当しない。
【0021】
また、本明細書において、「平面形状」とは、ある機器をその真上(鉛直方向における上方位置)から見たときの形状を意味する。
【0022】
また、本明細書において、「同じ」及び「同一」という文言には、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差の範囲が含まれ得る。
【0023】
本実施形態に係る床付き仮設空間(以下、仮設空間Sf)は、屋外に構築され、例えば、屋外イベントや集会の会場、飲食提供の場所、あるいは被災地の避難場所等の用途で利用される。仮設空間Sfは、
図1に示すように、移動収容体としてのトレーラハウス10と、床付き台20とを仮設空間Sfの設営地域に配置することで構築される。つまり、本実施形態に係る床付き仮設空間の構築設備100は、トレーラハウス10と、床付き台20とを含む。
【0024】
トレーラハウス10は、
図1~3に示すように、コンテナ型のハウス本体12と、ハウス本体12の下部に取り付けられた車輪14とを有する。ハウス本体12は、内部に人を収容することが可能な収容体本体に該当し、その側壁には開閉自在な扉を有する。この扉が開いた状態では、ハウス本体12の内部が屋外空間に対して露出し(
図1参照)、人が、ハウス本体12の内部に自由に出入りすることができる。車輪14は、移動機構の一例であり、その周面を接地させた状態で回転軸を中心に回転(つまり、転動)する。この車輪14の回転(転動)動作により、ハウス本体12は、水平方向において車輪14の回転軸と直交する方向を移動方向として当該移動方向に地面上を移動することができる。
【0025】
ハウス本体12の内部には、トイレ、キッチン又はユニットバス(風呂)、冷蔵庫又はレンジ等の調理家電、その他の電化製品等、用途に応じた設備が配置されている。また、ハウス本体12内に配置された設備には、その設備を利用するために必要な資源、具体的には水(上水)及び電気等が、ハウス本体12の外に設置された不図示の供給源から供給される。また、ハウス本体12内で設備の利用に伴って発生する不要物、具体的には汚水及び排泄物等は、ハウス本体12の外にある回収先に向けて排出可能である。
【0026】
なお、トレーラハウス10は、不図示の牽引車(ピラー)によって牽引されるものであってもよく、あるいは、トレーラハウス10自体にエンジンが搭載されて自走可能なものであってもよい。
【0027】
床付き台20は、仮設空間Sfのステージ(床)をなし、地面上に設置される。本実施形態において、床付き台20は、複数の台22によって構成され、具体的には、
図1及び2に示すように、複数の台22を所定の並べ方にて並べることで構成される。それぞれの台22は、平面形状が多角形である床24を備え、換言すると、床付き台20は、台22の数と同数の床24を備える。
【0028】
床24は、デッキであり、
図1及び3に示すように、床24の下面に固定された支持脚26によって支持される。なお、床24の材質は、特に限定されず、木材、金属、又はプラスチックであってもよい。また、床24は、一枚の板材によって構成されたものでもよく、あるいは、簀子のように複数の板片を並べて構成されたものでもよい。
【0029】
床付き台20を構成する複数の台22は、
図2に示すように、台22同士が隣り合うように並べて設置される。台22同士が隣り合うとは、隣り合う2つの台22のうち、一方の台22が備える床24の外縁に含まれる一辺と、他方の台22が備える床24の外縁に含まれる一辺とが互いに接する状態、あるいは、辺同士の間に多少の隙間が設けられた状態を意味する。
【0030】
本実施形態において、複数の台22には、
図2に示すように、平面形状が三角形である床24を備えた第1台22A、及び、平面形状が四角形である床24を備えた第2台22Bが含まれる。なお、
図1~3に示すケースでは、台22の数が3つであり、具体的には、第1台22Aの数が1つ、第2台22Bの数が2つである。ただし、床付き台20を構成する台22の数、第1台22A及び第2台22Bのそれぞれの数については、任意に決めてよい。また、複数の台22には、第1台22A及び第2台22Bのうちの少なくとも一つが含まれていればよい。ちなみに、四角形である平面形状には、角が面取りされた四角形の形状、及び、角がR状に湾曲した四角形の形状が含まれる。
【0031】
また、複数の台22の並べ方についても、特に制限はない。例えば、
図2に示すように、隣り合う2つの台22のうち、一方の台22が備える床24の外縁に含まれる一辺と、他方の台22が備える床24の外縁に含まれる一辺とが鈍角をなすように複数の台22を並べてもよい。
【0032】
そして、支持脚26を地面側に配置した状態で各台22を設置すると、各台22の床24が地面から支持脚26の高さ分だけ嵩上げられた状態で配置される。つまり、床付き台20が地面上に置かれることにより、
図3に示すように、床24が地面よりも高い位置に配置される。なお、床24に上り、また床24から下りるための昇降機器(例えば、階段、踏み台又はスロープ等)が一つ以上の台22に取り付けられてもよく、あるいは、台22とは別機器をなす昇降機器が台22と隣り合う設置に設置されてもよい。
【0033】
また、台22が備える床24の厚み、及び支持脚26の高さは、台22の間で揃っている。したがって、床付き台20を構成する複数の台22は、複数の台22のうち、隣り合う2つの台22の各々が備える床24が連続するように配置されることになる。つまり、床付き台20の上面、すなわち床面は、床付き台20を構成する台22の個数及び並べ方に応じて拡張され、また、床面各部は、鉛直方向において同一の高さ(フロアレベル)に位置する。
【0034】
以上のように、床付き台20は、複数の台22を並べることで構成され、台22の種類、使用数、及び台22の並べ方を変えることで、
図2、4~8に示すように、様々な空間(床上空間)を創り出すことができる。特に、
図8に示すように長く連続した床付き台20を作れば、床の一端が近隣にある建物の敷地に入るまで、床空間を伸ばす(延長する)ことができる。
【0035】
そして、上述した床付き台20の周りに複数のトレーラハウス10を配置することで仮設空間Sfが構築される。本実施形態では、
図1~3に示すように、3台以上のトレーラハウス10を床付き台20の周りに配置する。具体的には、それぞれのトレーラハウス10のハウス本体12が、下記の条件(1)及び(2)を満たす位置にて床付き台20の周りに配置される。
条件(1):それぞれのトレーラハウス10の移動方向と、床24の外縁に含まれる一辺の延出方向とが互いに沿った状態で、それぞれのトレーラハウス10のハウス本体12が上記の一辺と隣り合う。
条件(2):3台以上のトレーラハウス10のうち、互いに最も近い位置にある2台のトレーラハウス10の各々の移動方向が、互いに異なる。
【0036】
条件(1)について補足すると、各トレーラハウス10は、床24の脇位置に配置され、詳しくは、トレーラハウス10の側面に設けられた扉が床24側を向き、ハウス本体12の内部が床付き台20に対して臨むように配置される。
条件(2)を換言すると、3台以上のトレーラハウス10は、各トレーラハウス10の移動方向において2台以上のトレーラハウス10が列をなして並ばないように(つまり、同一直線上に並ばないように)配置される。なお、移動方向とは、トレーラハウス10の前後方向であり、詳しくは、トレーラハウス10の牽引車の正面(トレーラハウス10自体が自走可能である場合にはトレーラハウス10の車両部の正面)が向く方向である。
【0037】
上記の条件(1)及び(2)を満たすことにより、床付き台20の周りに配置された複数のトレーラハウス10の各々は、最も近い位置にある他のトレーラハウス10と干渉せずに移動することができる。これにより、ハウス本体12内への資材の補充やトレーラハウス10のメンテナンス等を理由に、一台又は複数台のトレーラハウス10を仮設空間Sfから搬出する際に、搬出対象のトレーラハウス10を円滑に移動させることができる。
【0038】
なお、
図4~8に示す床24の配置パターンにおいても、上記の条件(1)及び(2)を満たすように3台以上のトレーラハウス10を配置することで、各トレーラハウス10を、他のトレーラハウス10と干渉させることなくスムーズに搬送することができる。
【0039】
また、本実施形態では、
図1及び2に示すように、一つの台22が備える床24の外縁に含まれる一辺と隣り合うトレーラハウス10が一台に限られている。つまり、床付き台20の周りに配置される3台以上のトレーラハウス10の各々のハウス本体12が隣り合う辺は、それぞれ、異なる位置にある辺である。このようにトレーラハウス10を配置すれば、搬送対象のトレーラハウス10と他のトレーラハウス10との干渉がより回避し易くなり、各トレーラハウス10を仮設空間Sfからより一層スムーズに搬出することができる。なお、一つの床24と隣り合うトレーラハウス10の台数は、1台でもよく、あるいは、2台以上でもよく、例えば床24が有する辺の数をnとした場合にn-1以下でもよい。
【0040】
また、
図1及び2に示すケースでは、隣り合う2つの台22のうち、一方の台22が備える床24の外縁に含まれる一辺と、他方の台22が備える床24の外縁に含まれる一辺とが鈍角をなしている。このようなケースでは、2台のトレーラハウス10が、鈍角の頂点を挟んで隣り合う位置に配置されるとよい。このような配置にすれば、トレーラハウス10同士を近付けて配置しながらも、一つのトレーラハウス10を搬出する際には、そのトレーラハウス10と他のトレーラハウス10との干渉を回避することが一層容易になる。これにより、各トレーラハウス10を仮設空間Sfから一段とスムーズに搬出することができる。
【0041】
また、床付き台20が地面上に設置され、且つ、それぞれのトレーラハウス10(厳密には、各トレーラハウス10のハウス本体12)が床付き台20の周りに配置された状態では、前述したように、各ハウス本体12の内部が床24側を向いている。このとき、ハウス本体12の床は、鉛直方向において床24と隣り合う位置にある。ハウス本体12の床が床24と隣り合うとは、ハウス本体12の床面と床24の上面とが同じ高さに位置することを意味する。
【0042】
トレーラハウス10において、ハウス本体12の床は、車輪14の高さ分(具体的には、数十センチ程度)、地面から嵩上げされている。この高低差を解消するため、ハウス本体12の床面と床付き台20の床24の上面とが同じ高さに位置するように、トレーラハウス10を床付き台20の周りに配置する。これにより、ハウス本体12の床を、仮設空間Sfにおける床の一部分(床24の延長部分)として利用することができ、その分、仮設空間Sfの床面積を広げることができる。
【0043】
以上の理由から、より多くのトレーラハウス10を床付き台20の周りに配置するケースが考えられ得る。その場合であっても、上述の条件(1)及び(2)を満たすように各トレーラハウス10を配置すれば、搬出対象のトレーラハウス10を、他のトレーラハウス10との干渉を抑えつつ、スムーズに搬出することができる。すなわち、トレーラハウス10の移動性を損なうことなく、十分な仮設空間Sfを確保することができる。
【0044】
以上の要領で構築された仮設空間Sfでは、床付き台20の床上空間と各トレーラハウス10のハウス本体12内部とが連続し、仮設空間Sfに集まった人は、これらの連続した空間内を動くことができる。また、ハウス本体12内では、ハウス本体12内に設置された設備を利用することができる。そのような設備の利用を可能にするため、床付き台20には、輸送通路30が取り付けられている。輸送通路30は、資材の供給又は不要物の排出用に敷設される通路である。ここで、「輸送」とは、水等の液体、ガスのような気体、汚泥や排泄物等のような流動体(液状混合物)を搬送先に向けて搬送することに加え、電気又は光(電気信号又は光信号を含む)を伝送することをも含む。
【0045】
輸送通路30は、例えば、配管やダクト等からなり、台22毎に分断されている。そして、複数の台22を並べた際に、台22毎に分断された輸送通路30の断片をジョイント(接合)することで、連続した輸送通路30が形成される。また、輸送通路30は、途中位置で分岐し、分岐した通路のそれぞれの先端は、ハウス本体12の内部に設置された設備に繋がれている。また、輸送通路30の基端は、資源の供給源、あるいは不要物の回収先に接続されている。
【0046】
仮設空間Sfでは、上記輸送通路30を通じて、各トレーラハウス10のハウス本体12の内部に資源を供給可能であり、又は、ハウス本体12の内部から不要物を排出可能である。また、床付き台20が地面上に設置された状態では、
図3に示すように、輸送通路30が、床24と地面との間の空間に位置する。このように本実施形態では、嵩上げされた床24と地面との間のスペースを有効利用して輸送通路30を敷設することができる。
【0047】
<<その他の実施形態について>>
以上までに、本発明の床付き仮設空間の構築設備に関する一つの実施形態を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【0048】
また、上記の実施形態では、床付き台20が複数の台22によって構成されることとしたが、これに限定されず、床付き台20が単一の台によって構成されてもよい。ただし、床付き台20が複数の台22によって構成される場合には、台22の種類、数及び並べ方等を変えることで任意の床上空間を作り出すことができる。かかる点では、上記の実施形態の方が好ましい。
【0049】
また、上記の実施形態では、移動収容体の一例としてトレーラハウス10を挙げたが、トレーラハウス以外の移動収容体、例えば、キャンピングカーを用いてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 トレーラハウス(移動収容体)
12 ハウス本体(収容体本体)
14 車輪(移動機構)
20 床付き台
22 台
22A 第1台
22B 第2台
24 床
26 支持脚
30 輸送通路
100 床付き仮設空間の構築設備
Sf 仮設空間(床付き仮設空間)