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特開2023-10558統合型燃料電池スタックの空気供給装置及びこれを用いた空気流量制御方法
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  • 特開-統合型燃料電池スタックの空気供給装置及びこれを用いた空気流量制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010558
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】統合型燃料電池スタックの空気供給装置及びこれを用いた空気流量制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20230113BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20230113BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20230113BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20230113BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230113BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/249
H01M8/04 J
H01M8/0438
H01M8/04746
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043640
(22)【出願日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】10-2021-0089966
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玄 ミン 秀
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA21
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB17
5H127AC14
5H127AC15
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB39
5H127DB22
5H127DC02
(57)【要約】
【課題】複数の燃料電池スタックに供給される空気量を所望のレベルに制御することが可能な統合型燃料電池スタックの空気供給装置、及びこれを用いた空気流量制御方法を提供する。
【解決手段】本発明の統合型燃料電池スタックの空気供給装置は、複数の燃料電池スタックに空気を供給するための空気供給部と、空気供給部から供給される空気をそれぞれの燃料電池スタックに伝達することができるように構成された複数の配管と、各配管に設置された流量計及びバルブと、各配管を介して流れる空気流量を測定するための複数の流量計と、測定された流量情報に基づいてバルブの開度量を制御することができる制御器と、を含み、制御器によって、それぞれの配管に設置されたバルブの開度量を制御して、各配管に対する空気流量の制御ができることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池スタックに空気を供給するための空気供給部と、
前記空気供給部から供給される空気をそれぞれの燃料電池スタックに伝達することができるように構成された複数の配管と、
それぞれの配管に設置され、各配管を介して流れる空気流量制御ができるように設置される複数のバルブと、
各配管を介して流れる空気流量を測定するための複数の流量計と、
前記流量計によって測定された流量情報に基づいて、前記バルブの開度量を制御することができる制御器と、を含んでなり、
前記制御器は、それぞれの配管に設置されたバルブの開度量を制御して、各配管に対する空気流量の制御が可能であることを特徴とする統合型燃料電池スタックの空気供給装置。
【請求項2】
前記制御器は、前記バルブの開度量に対する初期設定の制御ができるように構成され、
前記初期設定の制御時に、すべてのバルブが開放され、前記空気供給部が予め設定された校正用回転数で動作する状態で、前記制御器によってバルブの開度量を制御して、各配管における流量偏差が予め設定された基準以内に符合するバルブの開度量情報を抽出し、
前記制御器は、抽出されたバルブの開度量情報を初期設定として保存することを特徴とする請求項1に記載の統合型燃料電池スタックの空気供給装置。
【請求項3】
前記制御器は、前記初期設定の制御時に、各流量計によって測定された流量情報に基づいて、最大流量が流れる配管側のバルブの開度を閉方向に調節して、最大流量配管の流量が、各流量計によって測定された値の平均値である平均流量情報に近接するように、前記最大流量配管側のバルブの開度量を制御しながら流量偏差を減少させる過程を1回以上繰り返し行うことを特徴とする請求項2に記載の統合型燃料電池スタックの空気供給装置。
【請求項4】
前記制御器は、前記空気供給部から供給される供給流量を調節することができるように構成され、
すべての燃料電池スタックに対する均等な空気流量調節が要求される場合、
前記空気供給部から供給される流量を調節した状態で、それぞれの流量計によって各配管を介して供給される空気の流量を測定し、
前記制御器は、各流量計によって測定された流量情報に基づいて、最大流量が流れる配管側のバルブの開度を閉方向に調節して、最大流量配管の流量と、各流量計によって測定された値の平均値である平均流量情報との流量偏差が減少するように制御し、
前記制御器は、各配管における流量偏差が予め設定された基準以内に符合するまで平均流量測定及び流量偏差減少制御を繰り返し行うことを特徴とする請求項1に記載の統合型燃料電池スタックの空気供給装置。
【請求項5】
前記制御器は、各流量計によって測定された流量情報に基づいて、各燃料電池スタックに対して要求される流量値に達したかを判断し、
各配管における流量偏差が予め設定された基準以内に符合しても、各燃料電池スタックに対して要求される流量値に達しない場合、要求される流量値に達するまで前記空気供給部の供給空気流量制御、平均流量測定及び流量偏差減少制御を繰り返し行うことを特徴とする請求項4に記載の統合型燃料電池スタックの空気供給装置。
【請求項6】
前記制御器は、前記空気供給部から供給される供給流量を調節することができるように構成され、
特定の燃料電池スタックに対する空気流量調節が要求される場合、
流量を調節しようとする燃料電池スタックを除いた残りの燃料電池スタックに供給される空気の総流量を測定して保存し、
前記制御器は、流量を調節しようとする燃料電池スタックに対するバルブの開度を要求される空気流量に応じて変更制御した状態で、残りの燃料電池スタックに供給される空気に対する総流量をリアルタイムで測定して、リアルタイムで測定された残余スタックに対する総流量が予め保存された残余スタックに対する総流量に達するまで、前記空気供給部から供給される供給流量を調節する過程を1回以上繰り返し行いながら、特定の燃料電池スタックに対する空気流量制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の統合型燃料電池スタックの空気供給装置。
【請求項7】
前記制御器は、前記空気供給部から供給される供給流量を調節することができるように構成され、
2以上の特定の燃料電池スタックに対する空気流量調節が要求される場合、
流量を調節しようとする2以上の燃料電池スタックを除いた残りの燃料電池スタックに供給される空気の総流量を測定して保存し、
前記制御器は、流量を調節しようとする燃料電池スタックに対するバルブの開度を要求される空気流量に応じて変更制御した状態で、残りの燃料電池スタックに供給される空気に対する総流量をリアルタイムで測定して、リアルタイムで測定された残余スタックに対する総流量が予め保存された残余スタックに対する総流量に達するまで、前記空気供給部から供給される供給流量を調節する過程を1回以上繰り返し行いながら、特定の燃料電池スタックに対する空気流量制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の統合型燃料電池スタックの空気供給装置。
【請求項8】
空気流量調節が要求される各燃料電池スタックに対する流量変化の和が予め設定された基準流量を超える場合、
前記制御器は、各燃料電池スタックに対する流量変化の和が予め設定された基準流量以内となるように空気流量制御を分割して行うことを特徴とする請求項7に記載の統合型燃料電池スタックの空気供給装置。
【請求項9】
請求項1による統合型燃料電池スタックの空気供給装置を用いた空気流量制御方法であって、
燃料電池スタックの運転前に、前記制御器によって、前記バルブの開度量に対する初期設定制御過程を含み、
前記初期設定制御過程では、
すべてのバルブが開放され、前記空気供給部が予め設定された校正用回転数で動作する状態で、前記制御器によってバルブの開度量を制御して、各配管における流量偏差が予め設定された基準以内に符合するバルブの開度量情報を抽出し、
前記制御器は、抽出されたバルブの開度量情報を初期設定として保存することを特徴とする空気流量制御方法。
【請求項10】
前記初期設定制御過程は、
すべてのバルブが開放され、前記空気供給部が予め設定された校正用回転数で動作する開始ステップと、
各流量計によって測定された流量情報に基づいて平均流量情報を算出する平均流量算出ステップと、
最大流量が流れる配管側のバルブの開度を閉方向に調節するバルブ開度制御ステップと、
前記バルブ開度制御ステップによって減少した最大流量配管の流量値と平均流量情報との差から決定される最大流量偏差が予め設定された基準以内であるかを確認する流量偏差確認ステップと、
前記最大流量偏差が予め設定された基準以内である場合、各バルブの開度量情報を抽出して初期設定として保存するステップと、を含むことを特徴とする請求項9に記載の空気流量制御方法。
【請求項11】
前記流量偏差確認ステップでは、
前記最大流量偏差が予め設定された基準から外れる場合は、前記最大流量偏差が予め設定された基準以内に達するまで、前記平均流量算出ステップ、前記バルブ開度制御ステップ及び前記流量偏差確認ステップを繰り返し行うことを特徴とする、請求項10に記載の空気流量制御方法。
【請求項12】
請求項1に記載の統合型燃料電池スタックの空気供給装置を用いた空気流量制御方法であって、
燃料電池スタックの運転中に、すべての燃料電池スタックに対する均等な空気流量調節要求が発生する場合、
前記空気供給部から供給される流量を調節する供給流量制御ステップと、
それぞれの流量計によって、各配管を介して供給される空気流量を測定して、平均流量情報を算出する平均流量算出ステップと、
最大流量が流れる配管側のバルブの開度を閉方向に調節するバルブ開度制御ステップと、
前記バルブ開度制御ステップによって減少した最大流量配管の流量値と平均流量情報との差から決定される最大流量偏差が予め設定された基準以内であるかを確認する流量偏差確認ステップと、
各流量計によって測定された流量情報に基づいて、各燃料電池スタックに対して要求される流量値に達したかを判断する要求流量到達確認ステップと、を含むことを特徴とする空気流量制御方法。
【請求項13】
前記流量偏差確認ステップによって前記最大流量偏差が予め設定された基準から外れると確認された場合には、前記最大流量偏差が予め設定された基準以内に達するまで、前記平均流量算出ステップ、前記バルブ開度制御ステップ及び前記流量偏差確認ステップを繰り返し行い、
前記要求流量到達確認ステップを経て、各燃料電池スタックに対して要求される流量値に達しないと確認された場合には、要求される流量値に基づいて、前記空気供給部からの空気供給流量を再び調節して、前記平均流量算出ステップ以下のステップを再び行うことを特徴とする請求項12に記載の空気流量制御方法。
【請求項14】
請求項1に記載の統合型燃料電池スタックの空気供給装置を用いた空気流量制御方法であって、
燃料電池スタックの運転中に、特定の燃料電池スタックに対する空気流量調節要求が発生する場合、
流量を調節しようとする燃料電池スタックを除いた残りの燃料電池スタックに供給される空気の総流量を測定して保存する総流量検出ステップと、
流量を調節しようとする燃料電池スタックに対するバルブの開度を要求される空気流量に応じて調節するバルブ開度制御ステップと、
残りの燃料電池スタックに供給される空気に対する総流量をリアルタイムで測定し、リアルタイムで測定された残余スタックに対する総流量が予め保存された残余スタックに対する総流量に達するまで、前記空気供給部から供給される供給流量を調節する供給流量制御ステップと、を含むことを特徴とする空気流量制御方法。
【請求項15】
請求項1に記載の統合型燃料電池スタックの空気供給装置を用いた空気流量制御方法であって、
燃料電池スタックの運転中に、2以上の特定の燃料電池スタックに対する空気流量調節要求が発生する場合、
流量を調節しようとする2以上の燃料電池スタックを除いた残りの燃料電池スタックに供給される空気の総流量を測定して保存する総流量検出ステップと、
流量を調節しようとする2以上の燃料電池スタックに対するバルブの開度を要求される空気流量に応じて調節するバルブ開度制御ステップと、
残りの燃料電池スタックに供給される空気に対する総流量をリアルタイムで測定し、リアルタイムで測定された残余スタックに対する総流量が予め保存された残余スタックに対する総流量に達するまで、前記空気供給部から供給される供給流量を調節する供給流量制御ステップと、を含むことを特徴とする空気流量制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに空気を供給するための装置及び方法に係り、より詳細には、発電用燃料電池などのように、複数の燃料電池スタックに空気を供給するための装置及びこれを用いた空気供給制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料が持っている化学エネルギーを燃焼によって熱に変えずに、電気化学的に反応させて電気エネルギーに変換させるエネルギー変換装置であって、産業用、家庭用及び車両用電力を供給するだけでなく、小型の電気/電子製品、携帯機器の電力を供給するためにも利用可能である。
例えば、高い電力密度を有する高分子電解質膜燃料電池(PEMFC:Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)では、最も内側に主要構成部品である膜電極接合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)が位置し、膜電極接合体は、水素イオンを移動させることができる固体高分子電解質膜と、電解質膜の両面に水素と酸素が反応できるように触媒が塗布された電極層であるカソード(Cathode)及びアノード(Anode)で構成される。
【0003】
燃料電池は、内部で電気化学反応を介して電気エネルギーを発生させる燃料電池スタック、燃料電池スタックに水素を供給する水素供給系、燃料電池スタックに酸素を含む空気を供給する空気供給系、及びその他の燃料電池スタックの運転温度を制御する冷却系などを含む。
燃料電池は、建物などで産業用又は家庭用電力を供給するか、或いは車両に搭載されて駆動用電力を供給することができる。特に、建物などに設置され、複数の燃料電池スタックを備えて大容量の電力を発電する発電用燃料電池を製作するためには、大型燃料電池スタックを製作することが要求される。ただし、大型スタックを製作することは、セルの積層、反応物の均一な分配などを実現するのに困難があるので、一般的に燃料電池スタックを複数連結して構成する方式が用いられている。
【0004】
一方、このように複数の燃料電池スタックを用いて大容量の発電用燃料電池システムを構成する場合、空気供給装置から個別スタックへの配管経路がスタックごとに互いに異なるから、依然として空気の均一な配分が難しいという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1358335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、その目的は、大型スタックを構成するために複数のスタックを使用するにあたり、統合された空気マニホールドを適用しなくても、それぞれの燃料電池スタックに供給される空気量を所望のレベルに制御することが可能な統合型燃料電池スタックの空気供給装置、及びこれを用いた空気流量制御方法を提供することにある。
特に、本発明では、個別燃料電池スタックの空気流量の制御ができるように構成することにより、燃料電池スタックの運営及びメンテナンス効率を向上させることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による統合型燃料電池スタックの空気供給装置は、複数の燃料電池スタックに空気を供給するための空気供給部と、空気供給部から供給される空気をそれぞれの燃料電池スタックに伝達することができるように構成された複数の配管と、それぞれの配管に設置され、各配管を介して流れる空気流量制御ができるように設置される複数のバルブと、各配管を介して流れる空気流量を測定するための複数の流量計と、流量計によって測定された流量情報に基づいて、バルブの開度量を制御することができる制御器と、を含んでなり、制御器は、それぞれの配管に設置されたバルブの開度量を制御して、各配管に対する空気流量の制御が可能であることを特徴とする。
【0008】
制御器は、バルブの開度量に対する初期設定の制御ができるように構成され、初期設定の制御時に、すべてのバルブが開放され、空気供給部が予め設定された校正用回転数で動作する状態で、制御器によってバルブの開度量を制御して、各配管における流量偏差が予め設定された基準以内に符合するバルブの開度量情報を抽出し、制御器は、抽出されたバルブの開度量情報を初期設定として保存することことを特徴とする。
【0009】
制御器は、初期設定の制御時に、各流量計によって測定された流量情報に基づいて、最大流量が流れる配管側のバルブの開度を閉方向に調節して、最大流量配管の流量が、各流量計によって測定された値の平均値である平均流量情報に近接するように、最大流量配管側のバルブの開度量を制御しながら流量偏差を減少させる過程を1回以上繰り返し行うことことを特徴とする。
【0010】
制御器は、空気供給部から供給される供給流量を調節することができるように構成され、すべての燃料電池スタックに対する均等な空気流量調節が要求される場合、空気供給部から供給される流量を調節した状態で、それぞれの流量計によって、各配管を介して供給される空気の流量を測定し、制御器は、各流量計によって測定された流量情報に基づいて、最大流量が流れる配管側のバルブの開度を閉方向に調節して、最大流量配管の流量と、各流量計によって測定された値の平均値である平均流量情報との流量偏差が減少するように制御し、制御器は、各配管における流量偏差が予め設定された基準以内に符合するまで平均流量測定及び流量偏差減少制御を繰り返し行うことことを特徴とする。
【0011】
制御器は、各流量計によって測定された流量情報に基づいて、各燃料電池スタックに対して要求される流量値に達したかを判断し、各配管における流量偏差が予め設定された基準以内に符合しても、各燃料電池スタックに対して要求される流量値に達しない場合、要求される流量値に達するまで空気供給部の供給空気流量制御、平均流量測定及び流量偏差減少制御を繰り返し行うことことを特徴とする。
【0012】
制御器は、空気供給部から供給される供給流量を調節することができるように構成され、特定の燃料電池スタックに対する空気流量調節が要求される場合、流量を調節しようとする燃料電池スタックを除いた残りの燃料電池スタックに供給される空気の総流量を測定して保存し、制御器は、流量を調節しようとする燃料電池スタックに対するバルブの開度を要求される空気流量に応じて変更制御した状態で、残りの燃料電池スタックに供給される空気に対する総流量をリアルタイムで測定して、リアルタイムで測定された残余スタックに対する総流量が予め保存された残余スタックに対する総流量に達するまで、空気供給部から供給される供給流量を調節する過程を1回以上繰り返し行いながら、特定の燃料電池スタックに対する空気流量制御を行うことことを特徴とする。
【0013】
制御器は、空気供給部から供給される供給流量を調節することができるように構成され、2以上の特定の燃料電池スタックに対する空気流量調節が要求される場合、流量を調節しようとする2以上の燃料電池スタックを除いた残りの燃料電池スタックに供給される空気の総流量を測定して保存し、制御器は、流量を調節しようとする燃料電池スタックに対するバルブの開度を要求される空気流量に応じて変更制御した状態で、残りの燃料電池スタックに供給される空気に対する総流量をリアルタイムで測定して、リアルタイムで測定された残余スタックに対する総流量が予め保存された残余スタックに対する総流量に達するまで、空気供給部から供給される供給流量を調節する過程を1回以上繰り返し行いながら、特定の燃料電池スタックに対する空気流量制御を行うことことを特徴とする。
【0014】
空気流量調節が要求される各燃料電池スタックに対する流量変化の和が予め設定された基準流量を超える場合、制御器は、各燃料電池スタックに対する流量変化の和が予め設定された基準流量以内となるように空気流量制御を分割して行うことことを特徴とする。
【0015】
本発明による空気流量制御方法は、統合型燃料電池スタックの空気供給装置を用いた空気流量制御方法であって、燃料電池スタックの運転前に、制御器によって、バルブの開度量に対する初期設定制御過程を含み、初期設定制御過程では、すべてのバルブが開放され、空気供給部が予め設定された校正用回転数で動作する状態で、制御器によってバルブの開度量を制御して、各配管における流量偏差が予め設定された基準以内に符合するバルブの開度量情報を抽出し、制御器は、抽出されたバルブの開度量情報を初期設定として保存することことを特徴とする。
【0016】
初期設定制御過程は、すべてのバルブが開放され、空気供給部が予め設定された校正用回転数で動作する開始ステップと、各流量計によって測定された流量情報に基づいて、平均流量情報を算出する平均流量算出ステップと、最大流量が流れる配管側のバルブの開度を閉方向に調節するバルブ開度制御ステップと、バルブ開度制御ステップによって減少した最大流量配管の流量値と平均流量情報との差から決定される最大流量偏差が予め設定された基準以内であるかを確認する流量偏差確認ステップと、最大流量偏差が予め設定された基準以内である場合、各バルブの開度量情報を抽出して初期設定として保存するステップと、を含むことことを特徴とする。
【0017】
流量偏差確認ステップでは、最大流量偏差が予め設定された基準から外れる場合、最大流量偏差が予め設定された基準以内に達するまで、平均流量算出ステップ、バルブ開度制御ステップ及び流量偏差確認ステップを繰り返し行うことことを特徴とする。
【0018】
本発明による他の空気流量制御方法は、統合型燃料電池スタックの空気供給装置を用いた空気流量制御方法であって、燃料電池スタックの運転中に、すべての燃料電池スタックに対する均等な空気流流量調節要求が発生する場合は、空気供給部から供給される流量を調節する供給流量制御ステップと、それぞれの流量計によって、各配管を介して供給される空気流量を測定して、平均流量情報を算出する平均流量算出ステップと、最大流量が流れる配管側のバルブの開度を閉方向に調節するバルブ開度制御ステップと、バルブ開度制御ステップによって減少した最大流量配管の流量値と平均流量情報との差から決定される最大流量偏差が予め設定された基準以内であるかを確認する流量偏差確認ステップと、各流量計によって測定された流量情報に基づいて、各燃料電池スタックに対して要求される流量値に達したかを判断する要求流量到達確認ステップと、を含むことことを特徴とする。
【0019】
流量偏差確認ステップによって最大流量偏差が予め設定された基準から外れると確認された場合には、最大流量偏差が予め設定された基準以内に達するまで、平均流量算出ステップ、バルブ開度制御ステップ及び流量偏差確認ステップを繰り返し行い、要求流量到達確認ステップを経て、各燃料電池スタックに対して要求される流量値に達しないと確認された場合には、要求される流量値に基づいて空気供給部からの空気供給流量を再び調節して、平均流量算出ステップ以下のステップを再び行うことことを特徴とする。
【0020】
本発明によるさらに他の空気流量制御方法は、統合型燃料電池スタックの空気供給装置を用いた空気流量制御方法であって、燃料電池スタックの運転中に、特定の燃料電池スタックに対する空気流量調節要求が発生する場合は、流量を調節しようとする燃料電池スタックを除いた残りの燃料電池スタックに供給される空気の総流量を測定して保存する総流量検出ステップと、流量を調節しようとする燃料電池スタックに対するバルブの開度を要求される空気流量に応じて調節するバルブ開度制御ステップと、残りの燃料電池スタックに供給される空気に対する総流量をリアルタイムで測定し、リアルタイムで測定された残余スタックに対する総流量が予め設定された残余スタックに対する総流量に達するまで、空気供給部から供給される供給流量を調節する供給流量制御ステップと、を含むことことを特徴とする。
【0021】
燃料電池スタックの運転中に、2以上の特定の燃料電池スタックに対する空気流量調節要求が発生する場合は、流量を調節しようとする2以上の燃料電池スタックを除いた残りの燃料電池スタックに供給される空気の総流量を測定して保存する総流量検出ステップと、流量を調節しようとする2以上の燃料電池スタックに対するバルブの開度を要求される空気流量に応じて調節するバルブ開度制御ステップと、残りの燃料電池スタックに供給される空気に対する総流量をリアルタイムで測定し、リアルタイムで測定された残余スタックに対する総流量が予め保存された残余スタックに対する総流量に達するまで、空気供給部から供給される供給流量を調節する供給流量制御ステップと、を含むことことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明による統合型燃料電池スタックの空気供給装置及び空気供給制御方法によれば、空気供給装置によってそれぞれのスタックごとに供給される空気に対する個別スタック別の流量制御ができるように構成することにより、スタック別に区分された空気配管経路により発生可能な空気配分問題を解消して、各スタック別に均一な空気供給量の制御が可能であるという効果がある。
また、本発明によれば、個別空気スタック別に流量制御が可能なので、燃料電池システムの運転中にも個別スタックの交換が可能であり、スタックの耐久度又は発電量などの状態情報に基づいて、スタック別に別途の空気供給ロジックを適用することができるという利点がある。
また、燃料電池スタック別に独自の流量制御が可能なので、スタックの耐久性を改善し、所望のレベルの発電量を持続的に維持することができるため、燃料電池システムの運営及びメンテナンスの効率性が改善されるとの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る統合型燃料電池スタックの空気供給装置の概略的な構成を示す構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る統合型燃料電池スタックの空気供給装置を用いた空気流量制御方法を説明するためのフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係る空気流量制御方法において、バルブの初期設定を行う例を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係る空気流量制御方法において、全体空気流量制御を行う例を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る空気流量制御方法において、特定の個別スタックの空気流量制御を行う例を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る空気流量制御方法において、同時に複数のスタックの空気流量制御を行う例を示すフローチャートである。
図7a】10個の燃料電池スタックで同時に空気流量制御が行われる例であって、全体流量変化の絶対値を基準に、同時に複数のスタックの空気流量調節が可能な例である。
図7b】10個の燃料電池スタックで同時に空気流量制御が行われる例であって、全体流量変化の絶対値を基準に、同時に複数のスタックの空気流量調節が不可能な例である。
図7c図7bのような流量制御が要求される場合、区間別に空気流量調節を分割して行う例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による空気供給装置は、発電用燃料電池などのように相対的に大きい電力生産のための大型スタックに適用できる。特に、このような大型スタックを構成する目的で、燃料電池システム内に複数の燃料電池スタックを構成する場合に適する。また、本発明による空気供給装置は、それぞれのスタックに空気を供給するにあたり、単一の空気マニホールドを適用せず、空気ブロワ又は空気圧縮機から複数のスタックを連結する個別的な流路に対する統合的な空気供給量の制御ができるように構成される。特に、本発明に係る空気供給装置では、これらの個別的な流路を介して各燃料電池スタックに供給される空気量の偏差を低減し、必要に応じてスタック別の個別的な流量制御が可能な空気供給装置にできる。
【0025】
これに関連し、本発明の好適な実施形態における燃料電池スタックとは、空気供給部10に連結された独自の流路によって空気の供給を受けることができるように構成されたもので、燃料電池セルによって発電が行われる一つの発電単位を意味する。例えば、このような燃料電池スタックは、複数の単位セルを含むものであり、燃料電池スタックのそれぞれは、それに割り当てられた空気供給流路に連結できる。ただし、本発明における燃料電池スタックは、流量制御が行われる各発電単位を指すために使用されるものに過ぎず、必ずしも単位セルが積層されたスタック形態のみを限定的に意味するものではない。したがって、単一セルであっても、個別的な流路によって連結される発電可能な構成であれば、本発明における燃料電池スタックに含まれるものと解釈できる。
【0026】
また、燃料電池スタックの数は、要求される発電容量などに応じて適宜選択でき、必要に応じてシステム内の一部にのみ本発明に係る空気供給装置が適用されることもある。この場合、統合されたマニホールドによって一括して空気が供給される燃料電池スタックが含まれることができる。
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明の様々な実施形態に係る統合型燃料電池スタックの空気供給装置及びこれを用いた空気流量制御方法を詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明の一実施形態に係る統合型燃料電池スタックの空気供給装置の概略的な構成を示す構成図である。
図1を参照すると、本発明の好適な一実施形態に係る統合型燃料電池スタックの空気供給装置1は、複数の燃料電池スタック51、52、53、54に空気を供給するための空気供給部10と、空気供給部10から供給される空気をそれぞれの燃料電池スタック51、52、53、54へ伝達するための流路として機能する複数の配管11、12、13、14と、を含む。空気供給部10から連結される配管は、各燃料電池スタック51、52、53、54に分岐され、分岐された空気配管11、12、13、14上には流量計21、22、23、24とバルブ31、32、33、34が設置される。各配管11、12、13、14に設置される流量計21、22、23、24は、各配管11、12、13、14で供給される空気流量を測定するためのものであり、バルブ31、32、33、34は、その開度量を制御することにより、バルブ31、32、33、34を介して、各燃料電池スタック51、52、53、54に供給される空気流量を制御するためのものであり、これらのバルブ31、32、33、34は、スロットルバルブで構成できる。
【0029】
空気供給装置内のバルブ31、32、33、34、及び空気供給部10を制御するための制御器40が含まれる。このような制御器40は、流量計21、22、23、24によって検出された流量情報を受信することができるように構成でき、好ましくは、検出された流量情報に基づいて供給空気の流量制御ができるように構成できる。
【0030】
空気流量制御に関連し、制御器40は、それぞれの配管11、12、13、14に設置されたバルブ31、32、33、34の開度量を制御でき、このようなバルブ31、32、33、34の開度量の制御によって、各配管11、12、13、14に対する空気流量制御が可能である。また、制御器40は、空気供給部10を制御でき、空気供給部10は、モータによって駆動され、外気を吸引して配管11、12、13、14を介して燃料電池スタック51、52、53、54へ空気を供給する空気ブロワ又は空気圧縮機である。よって、制御器40は、空気供給部10のモータ回転数を制御することにより、空気供給流量を制御することができる。
【0031】
具体的には、図1に示すように、それぞれの燃料電池スタック51、52、53、54に連結される配管11、12、13、14には、各スタックに対して割り当てられた流量計21、22、23、24及びバルブ31、32、33、34が設置され、好ましくは、各流量計21、22、23、24によって測定された流量情報に基づいて、制御器40が空気供給部10の回転数及び/又はバルブの開度量を制御することにより、空気流量を制御することができる。
このような空気流量制御に関連し、制御器は、各スタックへの配管経路が異なるために発生しうる圧力損失などによる初期流量の差を解消するための校正機能を含むことができる。
【0032】
このため、制御器は、バルブの開度量に対する初期設定制御ができるように構成され、初期設定の制御時に、すべてのバルブが開放され、空気供給部が予め設定された校正用回転数で動作する状態で、制御器によってバルブの開度量を制御して各配管における流量偏差が予め設定された基準以内に符合するバルブの開度量情報を抽出し、制御器は、抽出されたバルブの開度量情報を初期設定として保存することができる。
【0033】
より具体的には、制御器は、初期設定の制御時に、各流量計によって測定された流量情報に基づいて、最大流量が流れる配管側のバルブの開度を閉方向に調節して、最大流量配管の流量が各流量計によって測定された値の平均値である平均流量情報に近接するように、最大流量配管側のバルブの開度量を制御しながら流量偏差を減少させる過程を1回以上繰り返し行いながら、各配管への空気流量が比較的一定になるバルブ開度に対する初期設定値を抽出することができる。
このように抽出されたバルブ開度に対する初期設定値は、制御器内のメモリなどの記憶素子内に保存でき、このような校正機能を介して、燃料電池スタックごとに配管経路が異なることにより発生しうる圧力損失などによる流量偏差を低減させることができる。したがって、このような校正機能を燃料電池スタックの運転の前に行う場合、スタック別に均一な空気流量を提供することができる。
【0034】
また、制御器は、全体空気流量をスタック別に均等に増減制御することができ、必要に応じて個別スタック又は複数のスタックに対する空気流量の増減制御ができるように構成することができる。
これに関連し、制御器によって空気供給流量制御を行う具体的な方法は、添付された図2乃至図6を参照してより詳細に説明する。
【0035】
まず、図2では、本発明の一実施形態に係る統合燃料電池スタックの空気供給装置を用いた空気流量制御方法を説明しており、図3では、バルブの初期設定制御(校正機能)を行う例を説明している。図2を参照すると、燃料電池運転中(S202)に、空気流量制御が必要であるか否かを確認し(S203)、空気流量の制御が必要な場合、制御器によって、空気流量制御を行うことができる(S204)。これに関連し、選択的にバルブの開度量に対する初期設定制御ステップ(S201)が行われることができる。このような初期設定制御ステップ(S201)を介して、燃料電池の運転前に、流量偏差を予め低減させることができるので、各燃料電池スタックへの均一な空気の供給が可能であるのは前述したとおりである。
【0036】
一方、バルブの開度量に対する初期設定制御に関連する具体的なステップは、図3に示されている。校正機能に関連するバルブの開度量に対する初期設定制御の際に、制御器によって、すべてのバルブは完全に開放され(S301)、空気供給部は、予め設定された校正用回転数で動作するように制御される(S302)。このような校正用回転数は、初期設定制御のために予め設定された値であり、特定の回転数で空気供給部を動作させた状態で一律に初期値を設定するために指定される。
【0037】
以後、流量計では、各燃料電池スタックに供給される空気流量をリアルタイムで測定し(S303)、測定の結果、最大流量が流れるバルブを検出する。
最大流量が流れるものと確認された流量計側のバルブは、その流量を減少させるように制御されなければならないが、当該流量を減少させて平均流量に近接するように制御するためである。したがって、制御器は、最大流量が流れるバルブの開度を閉方向に調節し(S304)、制御器では、各流量計でリアルタイムにて検出された流量値が測定された平均流量との関係で基準以内に符合するか否かを確認する(S305)。ここで、平均流量は、ステップS303で測定された流量値の平均値であることもあり、より正確な測定のためには、ステップS304のバルブ開度制御ステップの後、測定された流量値の平均値が使用されることもある。また、ステップS305で基準以内に符合するか否かは、測定された流量値のうちの最大流量値と平均流量との差から決定される最大流量偏差が予め設定された基準流量以内であるかによって決定できる。
【0038】
確認の結果、もし各配管における流量偏差が予め設定された基準以内(すなわち、最大流量偏差が基準流量以内)に符合しなければ、ステップS303に復帰して以下のステップを再び行う。このような過程は、最大流量偏差が予め設定された基準以内に達するまで繰り返し行われることができる。
【0039】
一方、各配管における流量偏差が予め設定された基準以内に符合すれば、初期設定が完了可能な状態なので、現在の各バルブの開度量情報を抽出し、制御器は、抽出されたバルブの開度量情報を初期設定として保存することができる(S306)。
【0040】
図4は本発明の一実施形態に係る空気流量制御方法において全体空気流量制御を行う例を示すフローチャートである。
本発明の一実施形態に係る統合型燃料電池スタックの空気供給装置を用いた空気流量制御方法では、全体空気流量調節が必要な場合、すなわち、燃料電池スタックの運転中にすべての燃料電池スタックに対する均等な空気流量調節要求が発生する場合に実施できる。例えば、全体空気流量調節が必要な場合とは、全体燃料電池スタックに対する空気流量を同一に調節するように要求(全体スタックに対して均等な空気流量増減要求)される場合、又はシステム運転環境の変化により空気供給部の特定の回転数での流量値が要求される流量レベルとの差が発生する場合を意味する。
【0041】
図4に示すように、全体空気流量調節要求が発生する場合(S401)、及び燃料電池スタックに供給される全体供給空気流量の合算値を測定するステップ(S402)が実施できる。検出された全体流量合算値は、後続する一連の制御過程の後に所望の流量に達したか否かを検証するために活用でき、場合によっては、例えば最終的な要求流量が特定される場合には本ステップ(402)が省略されることもある。
【0042】
全体空気流量制御のためには、空気供給部に回転数を増加又は減少させて所望のレベルに流量変化が発生するように制御することができる(S403)。これに関連し、空気供給部からの供給流量を変更制御するにあたり、要求される流量の変化量だけを即座に変更させて制御することができる。ただし、より精密な制御のためには、予め設定された単位流量変化「q」だけの微細流量変化のみが発生するように空気供給部の回転数を制御することができ、このような微細流量変化の後、後述するスタック間の流量偏差を最小化させる一連の制御過程を繰り返し行うことにより、高精度の制御を行うことができる。このような高精度の制御時に、燃料電池スタックに供給される空気量に一時的に大きく変化が発生することを防止することができるという点で、より安定的でる。
【0043】
空気供給部から供給される流量を調節する供給流量制御ステップ(S403)の後、それぞれの流量計によって各配管を介して供給される空気流量を測定して、平均流量情報を算出する平均流量算出ステップ(S404)が行われる。
【0044】
一方、制御器では、各流量計から得られた流量情報から、最大流量が流れる燃料電池スタックを確認し、最大流量が流れる配管側のバルブの開度を閉方向に調節することにより、当該配管側の流量(最大流量)が平均流量に近接するように制御するバルブ開度制御ステップ(S405)を行うことができる。このようなバルブ開度制御ステップは、最大流量が流れるバルブの開度量を平均流量に十分に近接するまで微調整する過程になることができる。このとき、最大流量バルブの開度量が平均流量に十分に近接したか否かは、バルブの開度制御に基づいて減少した最大流量配管の流量値と平均流量との差から決定される最大流量偏差が予め設定された基準以内であるかを確認する流量偏差確認ステップ(S406)を介して確認できる。
【0045】
このような流量偏差確認ステップを経て、最大流量バルブの開度量が平均流量に十分に近接したと判断された場合、各流量計によって測定された流量情報に基づいて、各燃料電池スタックに対して要求される流量値に達したのかを判断する要求流量到達確認ステップ(S407)が行われる。
【0046】
一方、流量偏差確認ステップ(S406)を介して、最大流量偏差が予め設定された基準から外れると確認された場合には、最大流量偏差が予め設定された基準以内に達するまで、平均流量算出ステップ(S404)、バルブ開度制御ステップ(S405)、及び流量偏差確認ステップ(S406)を繰り返し行う。また、要求流量到達確認ステップ(S407)を介して、各燃料電池スタックに対して要求される流量値に達しないと確認された場合には、ステップS403に復帰して、要求される流量値に基づいて、空気供給部からの空気供給流量を再び調節し、平均流量算出ステップ(S404)以下のステップを再び行うことができる。
【0047】
一方、空気流量の制御時に、特定の個別スタックの問題のため、個別スタックに対する空気流量制御が必要な場合が発生することがある。図5は、このように特定の個別スタックの空気流量制御が必要な場合、このような空気流量制御を行う例を示すフローチャートである。
【0048】
図5によれば、燃料電池スタックの運転中に特定の燃料電池スタックに対する空気流量調節要求が発生した場合(S501)、流量を調節しようとする燃料電池スタックを除いた残りの燃料電池スタックに供給される空気の総流量を測定して保存する総流量検出ステップ(S502)が行われる。
その後、流量を調節しようとする燃料電池スタックに対するバルブの開度を要求される空気流量に応じて調節するバルブ開度制御ステップ(S503)が行われることができる。このようなバルブ開度制御ステップの場合、前述のように要求される空気流量制御を1回行うことができ、好ましくは、バルブの開度を徐々に開放して、十分な時間をおいて単位流量変化「q」だけの微細流量変化が起こるように構成することができる。
【0049】
先立って図4の例で説明したのと同様に、高精度の制御を行うためには、単位流量変化「q」をできるだけ小さく設定し、流量制御を繰り返し行うことが好ましい。このようなバルブ開度制御ステップ(S503)を介して、調節しようとするスタック側への流量変化が発生すると、当該スタックに対する空気流量の増減に応じて、残りのスタックに供給される総流量の変化が発生する。したがって、このような総流量の変化を補償するために、空気供給部の供給流量を増加又は減少させる制御が必要である。例えば、1回のスタックに対する流量を単位流量変化「q」だけ増加させる場合、1回のスタックの流量増加だけ残りのスタックの総流量が減少するので、これを補償するために、残りのスタックの総流量が1回のスタックに対する流量制御の前と同じレベルに増加するように、空気供給部の回転数を徐々に上昇させることが必要である。これに対し、1回のスタックに対する流量減少制御が必要な場合、単位流量変化「q」値を負(-)とし、空気供給部の回転数を減少させるように制御することにより、流量減少制御を達成することができる。
【0050】
このため、図5に示すように、残余燃料電池スタックに供給される空気に対する総流量をリアルタイムで測定し、リアルタイムで測定された残余スタックに対する総流量が、予め保存された残余スタックに対する総流量に達するまで、空気供給部から供給される供給流量を調節する供給流量制御ステップ(S504)が行われることができる。
残余スタックに対する流量値が以前と同じレベルに回復した場合には、空気供給部に対する制御を終了し、調節しようとした特定のスタックの空気流量が、最初に要求された空気流量値に達したか否かを確認するステップ(S505)が行われることができる。
【0051】
確認の結果、要求される空気流量に達した場合には、制御を終了し、要求される空気流量に達していない場合には、要求される空気流量値に達するまでステップ(S502)以下のステップを繰り返し行うことができる。
【0052】
一方、図6は本発明の一実施形態に係る空気流量制御方法を示すもので、図5とは異なり、同時に複数のスタックの空気流量制御が行われる場合の例を説明している。
図6に示すように、燃料電池スタックの運転中に、2以上の複数の燃料電池スタックに対する空気流量調節要求が発生する場合(S601)、流量を調節しようとする2以上の燃料電池スタックを除いた残りの燃料電池スタックに供給される空気の総流量を測定して保存する総流量検出ステップ(S602)が行われることができる。
【0053】
その後、流量を調節しようとする2以上の燃料電池スタックに対するバルブの開度を、要求される空気流量に応じて調節して流量変化を発生させるバルブ開度制御ステップ(S603)が行われることができる。このようなバルブ開度制御ステップ(S603)において、先立って図5の例のように、流量変化は、単位流量変化「q」だけ段階的にゆっくりと調節できる。
【0054】
流量変化のためのバルブ開度制御ステップ(S603)が行われた後には、残余スタックに対する総流量の変化を補償するために、残りの燃料電池スタックに供給される空気に対する総流量をリアルタイムで測定し、リアルタイムで測定された残余スタックに対する総流量が、予め保存された残余スタックに対する総流量に達するまで、空気供給部から供給される供給流量を調節する供給流量制御ステップ(S604)が行われることができる。
【0055】
例えば、1番乃至3番スタックに対する流量をそれぞれ単位流量変化「q」だけ増加させる場合、1番乃至3番スタックの流量増加だけ残りのスタックの総流量が減少するので、これを補償するために、空気供給部の回転数を徐々に上昇させて残余スタックの総流量を増加させる制御が行われる。これに対し、1番乃至3番スタックに対する流量減少制御が必要な場合には、単位流量変化「q」値を負(-)とし、空気供給部の回転数を減少させるように制御することにより、残余スタックに対する総流量減少制御が行われることができる。
【0056】
一方、本発明の別の実施形態では、総流量検出ステップ(S602)の前に、空気流量調節が要求される各燃料電池スタックに対する流量変化の和が予め設定された基準流量を超えるか否かを判断するステップをさらに含むように構成することもできる。このような例では、空気流量調節が要求される各燃料電池スタックに対する流量変化の和、すなわち全体流量変化Qが基準流量を超える場合には、空気流量制御をグループ別に分割して行うことに特徴がある。したがって、このような実施形態では、分割されたグループ別に総流量検出ステップ(S602)、バルブ開度制御ステップ(S603)及び供給流量制御ステップ(S604)などが行われる。
【0057】
例えば、単位流量変化を「q」とし、バルブ調節を行う時間を「T」とすると、T時間の間の全体流量変化Qは、各スタック別単位流量変化「q」の合算値になる。このとき、複数のスタックに対して一律に流量減少制御が要求されるか、或いは一律に流量増加制御が要求される場合には、全体流量変化Qが過度に大きくなる。これは、流量調節をしない燃料電池スタックの流量の変化を過度に大きくするおそれがあるので、燃料電池スタックの安定な運転環境には適さない。
【0058】
したがって、本発明の好適な実施形態では、このように全体流量変化Qが過度に大きくなることを防止するために、制御時間Tでの流量調節しようとするスタック全体の流量の変化Qが予め設定された基準流量を超えるか否かを判断するように構成できる。判断の結果、制御時間内に要求される流量変化の和、すなわち全体流量変化Qが基準流量を超える場合、全体流量変化Qが基準流量以内となるように、空気流量を調節する燃料電池スタックを複数のグループに分割して流量制御を行う。したがって、燃料電池スタックは、分割されたグループ別に制御スケジュールが区分され、各制御スケジュールに割り当てられたグループに対する流量制御が順次行われるように制御する。これに関連し、基準流量は、燃料電池スタックの運転安定性を考慮して適切に選定でき、また、流量変更が不要な残余スタックの数に従属して可変される値である。
【0059】
これについての具体的な例は、図7a~図7cで説明する。
図7a~図7cは10個の燃料電池スタックで同時に複数のスタックの空気流量制御が行われる例を示している。
【0060】
まず、図7aは全体流量変化の絶対値を基準に、同時に複数のスタックの空気流量調節が可能な例である。図7aを参照すると、1番、2番、4番、8番、9番スタックは単位流量変化「q」だけ流量増加制御が要求され、3番、5番、6番、7番スタックは単位流量変化「q」だけ流量減少制御が要求される。一方、10番スタックは、変更が不要なスタックである。
【0061】
図7aの場合、全体流量変化Qは「q」に過ぎず、よって、全体流量変化Qの絶対値が過度に大きくない場合なので、流量変更をしない10番スタックへの影響が微々たるものである場合といえる。よって、同時に9つのスタックに対する空気流量制御が可能な例であるといえる。
【0062】
一方、図7bは全体流量変化の絶対値を基準に、同時に複数のスタックの空気流量調節が不可能な例を説明するものである。すなわち、図7bの例では、10番スタックは、変更が不要なスタックであり、流量調節が必要なスタックのうち、6番スタックのみが単位流量変化「q」だけ流量減少制御されることが要求される。一方、1番乃至5番、7番乃至9番スタックは、単位流量変化「q」だけ流量増加制御が要求される。
【0063】
したがって、図7bの例では、全体流量変化Qは「7q」になり、この場合、全体流量変化Qの絶対値が過度に大きくなるので、流量制御を行わない10番スタックへの影響が大きくなるという問題が発生する。本発明の好適な実施形態では、各スタックに対する流量制御を分割して行うことにより、この問題を解決しようとするものである。
【0064】
これに関連し、図7cでは、図7bのような流量制御が必要な場合、区間別に空気流量調節を分割して行う例を示している。図7cの例では、分割されるT1時間の間は1番乃至3番スタックに対する空気流量制御が行われ、T2時間の間は4番乃至6番スタックに対する空気流量制御、T3時間の間は7番乃至9番スタックに対する空気流量制御が区分されて行われている。
【0065】
例えば、T1制御時間の間の全体流量変化Qは「3q」に減少するだけでなく、空気流量の変化が行われないスタックが、10番スタックの一つから4番~10番スタックの7つに増えるので、各燃料電池スタックに対する流量変化を大幅に低減させることができるという効果がある。
【0066】
本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明の技術的思想を逸脱することなく、本発明に多様な改良及び変化を加え得ることは、当業分野における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【符号の説明】
【0067】
10 空気供給部
11、12、13、14 空気配管
21、22、23、24 流量計
31、32、33、34 バルブ
40 制御器
51、52、53、54 燃料電池スタック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c