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特開2023-105622生体認証システムおよび生体認証方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105622
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】生体認証システムおよび生体認証方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/35 20140101AFI20230724BHJP
【FI】
G01N21/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006565
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤山 毅
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB12
2G059CC09
2G059CC12
2G059CC16
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE11
2G059HH01
2G059KK04
(57)【要約】
【課題】生体認証に用いられる口唇紋をより容易に取得可能である。
【解決手段】生体認証システムは、被測定物を撮像するカメラと、カメラとの間で通信可能な制御装置と、を備え、カメラは、第1波長帯の照射光と、第1波長帯と異なる波長帯である第2波長帯の照射光とを被測定物に照射し、被測定物を撮像して、撮像された撮像画像から水分または糖類を検出し、水分および糖類が検出されない第1画像と、水分または糖類が検出された第2画像とを比較して、被測定物上の水分または糖類を検出した検出結果を制御装置に送信し、制御装置は、検出結果に基づいて、口唇紋を取得し、取得された口唇紋と、データベースに登録された複数の口唇紋のそれぞれとを照合し、データベースに取得された口唇紋と同一あるいは類似する口唇紋があると判定した場合、同一あるいは類似する口唇紋に対応する人物を、取得された口唇紋に対応する人物であると判定して認証する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を撮像するカメラと、
前記カメラとの間で通信可能な制御装置と、を備える生体認証システムであって、
前記カメラは、
第1波長帯の照射光と、前記第1波長帯と異なる波長帯である第2波長帯の照射光とを被測定物に照射し、
前記被測定物を撮像して、撮像された撮像画像から水分または糖類を検出し、
前記水分および前記糖類が検出されない第1画像と、前記水分または前記糖類が検出された第2画像とを比較して、前記被測定物上の前記水分または前記糖類を検出した検出結果を前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、
前記検出結果に基づいて、口唇紋を取得し、
取得された前記口唇紋と、データベースに登録された複数の口唇紋のそれぞれとを照合し、
前記データベースに取得された前記口唇紋と同一あるいは類似する口唇紋があると判定した場合、前記同一あるいは類似する口唇紋に対応する人物を、取得された前記口唇紋に対応する人物であると判定して認証する、
生体認証システム。
【請求項2】
前記カメラは、
前記第1画像を記憶し、
前記第2画像から前記水分または前記糖類が検出された場合、前記第2画像と、記憶された前記第1画像とを比較して、前記水分または前記糖類を画素ごとに検出する、
請求項1に記載の生体認証システム。
【請求項3】
前記カメラは、
前記水分または前記糖類のOH基に対する吸光度がそれぞれ異なる前記第1波長帯の照射光と前記第2波長帯の照射光とを照射する、
請求項1に記載の生体認証システム。
【請求項4】
前記カメラは、
前記波長帯が1200nmまたは1300nmである前記第1波長帯の照射光と、前記波長帯が1400nmである前記第2波長帯の照射光とを照射する、
請求項3に記載の生体認証システム。
【請求項5】
前記カメラは、
前記第1波長帯の照射光が照射された第1画像の画素ごとの輝度と、前記第2波長帯の照射光が照射された第2画像の輝度との輝度差に基づいて、前記水分または前記糖類を画素ごとに検出する、
請求項1に記載の生体認証システム。
【請求項6】
前記カメラは、
画素ごとの前記輝度差を前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、
前記輝度差に基づいて、前記口唇紋を取得する、
請求項5に記載の生体認証システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記検出結果に基づいて、前記水分または前記糖類が検出された所定の画素数が集合するエリアから前記口唇紋を取得する、
請求項1に記載の生体認証システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記エリアの形状に基づいて、前記口唇紋の向きを推定する、
請求項7に記載の生体認証システム。
【請求項9】
前記制御装置は、
推定された前記口唇紋の向きに基づいて、取得された前記口唇紋の向きを前記データベースに登録された前記複数の口唇紋の向きに回転して照合する、
請求項8に記載の生体認証システム。
【請求項10】
前記制御装置は、
前記エリアの形状に基づいて、検出された口唇形状を推定し、
推定された口唇形状を、前記データベースに登録された前記複数の口唇紋に対応する口唇形状に変形する変形量に基づいて、前記口唇紋を変形し、
変形後の口唇紋と、前記データベースに取得された前記口唇紋とを照合する、
請求項7に記載の生体認証システム。
【請求項11】
前記制御装置は、
前記エリアの形状に基づいて、前記口唇紋の向きをさらに推定し、
推定された前記口唇紋の向きと前記口唇形状とに基づいて、口唇の中心点を推定し、
前記中心点を中心に、取得された前記口唇紋の向きを前記データベースに登録された前記複数の口唇紋の向きに回転し、
回転後の口唇紋を、前記データベースに登録された前記複数の口唇紋に対応する口唇形状に変形する変形量を決定し、
前記変形量に基づいて、前記口唇紋を変形する、
請求項10に記載の生体認証システム。
【請求項12】
前記変形量は、前記口唇形状に基づいて決定される所定の倍率である、
請求項11に記載の生体認証システム。
【請求項13】
前記被測定物は、アルミニウムの粉末が塗装される、
請求項1に記載の生体認証システム。
【請求項14】
複数のコンピュータが行う生体認証方法であって、
第1波長帯の照射光と、前記第1波長帯と異なる波長帯である第2波長帯の照射光とを被測定物に照射し、
前記被測定物を撮像して、撮像された撮像画像から水分または糖類を検出し、
前記水分および前記糖類が検出されない第1画像と、前記水分または前記糖類が検出された第2画像とを比較し、
検出された前記水分または前記糖類に基づいて、口唇紋を取得し、
取得された前記口唇紋と、データベースに登録された複数の口唇紋のそれぞれとを照合し、
前記データベースに取得された前記口唇紋と同一あるいは類似する口唇紋があると判定した場合、前記同一あるいは類似する口唇紋に対応する人物を、取得された前記口唇紋に対応する人物であると判定して認証する、
生体認証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体認証システムおよび生体認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被験者にX線を照射するX線発生部と、支持機構を介してX線発生部を支持する本体と、この本体を走行させる移動台車とを備え、被検者を透過したX線を用いてX線画像を撮影する移動型X線装置が開示されている。移動型X線装置は、撮影が予約される被検者(予約被検者)の本人識別情報をマスター情報として記憶し、実際に撮影しようとする被検者(撮影被検者)の本人識別情報を取得し、この取得した本人識別情報をマスター情報と照合し、撮影被検者が予約被検者と同一か否かを判定して、判定結果を出力する。なお、本人識別情報は、例えば被検者の口唇紋等の被験者の生体識別情報である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-185321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、例えば適宜な色素を被検者の唇に塗布し、その唇に適宜なシートを押し当てるなどして、シートに口唇紋を写し取り、一般的なイメージスキャナなどで取り込むことで口唇紋を取得する必要がある。このため、撮影被検者が予約被検者と同一か否かを判定にあたって、本人識別情報である口唇紋の取得がたいへん手間だった。
【0005】
本発明は、上述した従来の状況に鑑みてなされたものであり、生体認証に用いられる口唇紋をより容易に取得可能な生体認証システムおよび生体認証方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、被測定物を撮像するカメラと、前記カメラとの間で通信可能な制御装置と、を備える生体認証システムであって、前記カメラは、第1波長帯の照射光と、前記第1波長帯と異なる波長帯である第2波長帯の照射光とを被測定物に照射し、前記被測定物を撮像して、撮像された撮像画像から水分または糖類を検出し、前記水分および前記糖類が検出されない第1画像と、前記水分または前記糖類が検出された第2画像とを比較して、前記被測定物上の前記水分または前記糖類を検出した検出結果を前記制御装置に送信し、前記制御装置は、前記検出結果に基づいて、口唇紋を取得し、取得された前記口唇紋と、データベースに登録された複数の口唇紋のそれぞれとを照合し、前記データベースに取得された前記口唇紋と同一あるいは類似する口唇紋があると判定した場合、前記同一あるいは類似する口唇紋に対応する人物を、取得された前記口唇紋に対応する人物であると判定して認証する、生体認証システムである。
【0007】
また、本開示は、複数のコンピュータが行う生体認証方法であって、第1波長帯の照射光と、前記第1波長帯と異なる波長帯である第2波長帯の照射光とを被測定物に照射し、前記被測定物を撮像して、撮像された撮像画像から水分または糖類を検出し、前記水分および前記糖類が検出されない第1画像と、前記水分または前記糖類が検出された第2画像とを比較し、検出された前記水分または前記糖類に基づいて、口唇紋を取得し、取得された前記口唇紋と、データベースに登録された複数の口唇紋のそれぞれとを照合し、前記データベースに取得された前記口唇紋と同一あるいは類似する口唇紋があると判定した場合、前記同一あるいは類似する口唇紋に対応する人物を、取得された前記口唇紋に対応する人物であると判定して認証する、生体認証方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生体認証に用いられる口唇紋をより容易に取得可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る生体認証システムの全体構成例、および近赤外線カメラの内部構成例を示すブロック図
図2】実施の形態1における近赤外線カメラのユースケース例(唾液痕未付着時)を説明する図
図3】実施の形態1における近赤外線カメラのユースケース例(唾液痕付着時)を説明する図
図4】近赤外線カメラによる唾液痕の検出の原理説明図
図5】実施の形態1に係る制御装置の内部構成例を示すブロック図
図6】実施の形態1における近赤外線カメラの初期動作手順例を説明するフローチャート
図7】実施の形態1に係る生体認証システムの口唇紋照合手順例を説明するフローチャート
図8】近赤外線カメラにより撮像された唾液痕未付着時および唾液痕付着時のそれぞれの撮像画像を比較する図
図9】3階調色における唾液痕表示画像の生成例を説明する図
図10】8階調色における口唇紋表示画像の生成例を説明する図
図11】口唇紋検出処理例を説明する図
図12】口唇紋変形処理例を説明する図
図13】口唇紋変形処理例を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る生体認証システムおよび生体認証方法を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0011】
まず、図1を参照して、実施の形態1に係る生体認証システム100の全体構成、および近赤外線カメラ1の内部構成について説明する。図1は、実施の形態1に係る生体認証システム100の全体構成例、および近赤外線カメラ1の内部構成例を示すブロック図である。
【0012】
生体認証システム100は、近赤外線カメラ1と、制御装置2とを含んで構成される。生体認証システム100は、近赤外線カメラ1により撮像対象である被測定物PT(例えば、金属、食器等)を撮像し、撮像された撮像画像から唾液痕を検出する。生体認証システム100は、検出された唾液痕をn(n:1以上の整数)階調色で表示した唾液痕表示画像PT31(図9参照)を生成するとともに、この唾液(唾液痕)が付着したエリアを口唇紋エリアとして算出して、制御装置2に送信する。なお、本実施の形態1における唾液痕は、唾液に含まれる水分または糖類に含まれるOH基を示す。
【0013】
生体認証システム100は、制御装置2により唾液痕表示画像PT31を表示させる。また、生体認証システム100は、制御装置2により口唇紋エリアから口唇紋を検出し、検出された口唇紋と、事前に登録された複数の人物の口唇紋とを照合して、被測定物PTに付着した唾液痕が示す口唇紋に対応する人物を特定(認証)する。
【0014】
近赤外線カメラ1は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、ハロゲンランプ等の照明を有する。近赤外線カメラ1は、近赤外線カメラ1から約30cm未満の距離に位置する被測定物PTに、異なる2波長帯の近赤外光(不可視光)を照射する。近赤外線カメラ1は、唾液痕未付着時(例えば、唾液痕付着前、あるいは被測定物PTに付着した唾液痕を清掃した後)の被測定物PTと、唾液痕付着時の被測定物PTとをそれぞれ撮像し、被測定物PTの表面に付着した唾液痕を検出する。
【0015】
なお、唾液痕未付着時の撮像タイミングは、唾液痕付着前の被測定物PTを撮像する前であってもよいし、唾液痕付着前の被測定物PTを撮像した後であって、かつ、唾液痕付着後に被測定物PTの表面に付着した唾液痕を清掃(拭掃)した後であってもよい。
【0016】
近赤外線カメラ1は、通信部11と、制御部13と、メモリ31と、照明部PJと、撮像部JGと、を含んで構成される。
【0017】
通信部11は、制御装置2の通信部41との間でデータ送受信可能に接続される。なお、近赤外線カメラ1の通信部11と、制御装置2の通信部41との間は、所定のネットワーク(不図示)を介して無線通信可能に接続されていてもよいし、有線通信可能に接続されていてもよい。通信部11は、制御部13から出力された各種データ(例えば、唾液痕表示画像PT31(図9参照)、唾液痕の検出結果、口唇紋エリアの算出結果等)を対応付けて、制御装置2に送信する。
【0018】
なお、ここでいう無線通信は、例えばWi-Fi(登録商標)などの無線LAN(Local Area Network)を介した通信である。
【0019】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成され、各部の動作を制御する。制御部13は、メモリ31と協働して、各種の処理および制御を統括的に行う。具体的には、制御部13は、メモリ31に保持されたプログラムおよびデータを参照し、そのプログラムを実行することにより、照明部PJ、撮像部JG等の各部の機能を実現する。
【0020】
メモリ31は、例えば制御部13の各処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、制御部13の動作を規定したプログラムおよびデータを格納するROM(Read Only Memory)と、を有する。RAMには、制御部13により生成あるいは取得されたデータもしくは情報が一時的に保存される。ROMには、制御部13の動作を規定するプログラムが書き込まれている。
【0021】
照明部PJは、第1投射光源15と、第2投射光源17と、投射光源光学部19と、を含んで構成される。照明部PJは、制御部13により制御され、近赤外線光源(照明)である第1投射光源15および第2投射光源17のそれぞれから異なる2波長帯の照射光LS1,LS2を照射する。第1投射光源15および第2投射光源17のそれぞれは、例えば、LED、LD、ハロゲンランプ等である。
【0022】
なお、第1投射光源15および第2投射光源17のそれぞれがハロゲンランプにより実現される場合、後述する撮像部JGは、撮像光学部21にバンドパスフィルタ(不図示)を、さらに含んで構成される。このバンドパスフィルタは、ハロゲンランプから照射され、被測定物PTの表面により拡散された反射光RV1,RV2のうち所定の波長帯の拡散光のみを透過させる機能を有する。これにより、照明部PJは、第1投射光源15および第2投射光源17のそれぞれがハロゲンランプにより実現される場合であっても、被測定物PTに所定の波長帯の近赤外光を照射できる。
【0023】
第1光源の一例としての第1投射光源15は、制御部13により制御されて、非可視光であって、所定の波長帯(例えば1200nm,1300nm等)の照射光LS1を、投射光源光学部19を介して、被測定物PTに照射する。
【0024】
第2光源の一例としての第2投射光源17は、制御部13により制御されて、非可視光であって、所定の波長帯(例えば1400nm等)の照射光LS2(例えば近赤外光)を、投射光源光学部19を介して、被測定物PTに照射する。
【0025】
投射光源光学部19は、制御部13により制御され、第1投射光源15から照射される照射光LS1と、第1投射光源15から照射される照射光LS2とを、被測定物PTの表面に同時、あるいは順次、一定時間照射する。これにより、投射光源光学部19は、唾液痕の付着が期待される被測定物PTの広範囲にわたって照射光LS1,LS2のそれぞれを照射可能にする。
【0026】
撮像部JGは、撮像光学部21と、受光部23と、信号加工部25と、検出処理部27と、表示処理部29と、を含んで構成される。撮像部JGは、制御部13により制御され、照明部PJから照射され、被測定物PTにより反射された反射光RV1,RV2のそれぞれを受光する。撮像部JGは、受光された反射光RV1,RV2のそれぞれの強度に基づいて、被測定物PTの唾液痕の検出(取得)を実行する。
【0027】
撮像光学部21は、例えば少なくともレンズLS(図2図3参照)を用いて構成される。なお、撮像光学部21は、照明部PJの第1投射光源15および第2投射光源17のそれぞれがハロゲンランプにより実現される場合には、バンドパスフィルタBPFをさらに用いて構成される。
【0028】
撮像光学部21は、バンドパスフィルタBPFとレンズLSとを用いて構成される場合には、近赤外線カメラ1の外部から入射する入射光を集光し、集光された入射光のうちバンドパスフィルタBPFを透過した透過光をレンズLSに入射させる。なお、ここでいう入射光および透過光は、例えば、第1投射光源15および第2投射光源17のそれぞれから照射された照射光LS1,LS2のそれぞれが被測定物PTの表面で拡散し、撮像光学部21に向かって反射する反射光RV1,RV2である。撮像光学部21は、レンズLSに入射した反射光RV1,RV2を受光部23のイメージセンサIMS(図2図3参照)上に結像させる。
【0029】
また、撮像光学部21は、レンズLSを用いて構成される(つまり、バンドパスフィルタBPFが省略された構成である)場合には、近赤外線カメラ1の外部から入射する入射光(つまり、反射光RV1,RV2)を集光し、集光された反射光RV1,RV2を受光部23のイメージセンサIMS(図2図3参照)上に結像させる。
【0030】
受光部23は、照射光LS1の波長帯(例えば、1300nm)と、照射光LS2の波長帯(例えば、1400nm)との両方の波長帯に対する分光感度のピークを有する複数のイメージセンサIMS(図2図3参照)のそれぞれが碁盤目状に並べられて構成される。受光部23は、各イメージセンサIMS上で結像した反射光RV1,RV2の光学像を電気信号に変換する。受光部23の出力は、電気信号(電流信号)として信号加工部25に入力される。
【0031】
信号加工部25は、I/V変換回路、増幅回路、コンパレータ素子、あるいはピークホールド回路等を用いて構成される。信号加工部25は、受光部23から出力された電気信号(電流信号)を、I/V変換回路を用いて電圧信号に変換する。信号加工部25は、増幅回路を用いて、I/V変換回路により変換された電圧信号のレベルを、コンパレータ素子あるいはピークホールド回路等により処理可能なレベルまで増幅する。
【0032】
信号加工部25は、コンパレータ素子あるいはピークホールド回路による電圧信号と所定の閾値との比較結果に基づいて、増幅回路の出力信号を2値化する。信号加工部25は、2値化された出力信号を検出処理部27に出力する。なお、信号加工部25は、コンパレータ素子またはピークホールド回路にADC(Analog Digital Converter)を含み、増幅回路の出力信号(アナログ信号)のAD(Analog Digital)変換結果のピーク(つまり、反射光RV1,RV2のそれぞれの光強度のピーク)を検出して保持するとともに、検出されたピークの情報を検出処理部27に出力する。
【0033】
以降の説明において、照射光LS1の反射光RV1に対応するコンパレータ素子またはピークホールド回路の出力であるピークの情報を、第1出力情報と称する。また、同様に、以降の説明において、照射光LS2の反射光RV2に対応するコンパレータ素子またはピークホールド回路の出力であるピークの情報を、第2出力情報と称する。
【0034】
また、検出処理部27は、第1出力情報および第2出力情報に基づいて、被測定物PTに照射された照射光LS1,LS2のそれぞれの照射位置での唾液痕(唾液)の有無を検出する。
【0035】
具体的に、検出処理部27は、被測定物PTに照射された照射光LS1,LS2のそれぞれの照射位置に対応する第1出力情報および第2出力情報を取得する。なお、検出処理部27は、第1出力情報および第2出力情報の取得した場合、第1出力情報および第2出力情報と、照射光LS1,LS2のそれぞれの照射位置の情報とを対応付けてメモリ31に記録する。検出処理部27は、同一の照射位置に対応する第1出力情報および第2出力情報を再度取得した場合、メモリ31に記憶済みであって、同一の照射位置の情報が対応付けられた第1出力情報および第2出力情報を抽出し、取得された第1出力情報および第2出力情報と、メモリ31から抽出された第1出力情報および第2出力情報との比を算出する。
【0036】
例えば、照射位置に唾液痕(唾液)が存在する場合に取得される反射光RV2の強度は、照射光LS2の一部が吸光され易いため、反射光RV2の強度(つまり、振幅)が減衰する。したがって、検出処理部27は、画角内に含まれる被測定物PTの同一ラインごとに、異なる波長帯を有する反射光RV1(例えば、波長帯=1200nm,1300nm)に対応する第1出力情報と、反射光RV2(例えば、波長帯=1400nm)に対応する第2出力情報との強度(出力)差分、または第1出力情報と第2出力情報の強度(出力)比等に基づいて、照射位置における唾液痕(唾液)の有無を検出することができる。なお、以降で説明する唾液痕の検出処理の説明では、一例として反射光RV1の波長帯が1300nmである例について説明する。
【0037】
また、例えば、検出処理部27は、照射光LS1の反射光RV1の強度(振幅VA,図4参照)と、照射光LS2の反射光RV2の強度(振幅VB,図4参照)との振幅差分(VA-VB)と、振幅VAとの比率RT(図4参照)と所定の検出閾値Mとの大小の比較に応じて、唾液痕の有無を検出してもよい(図4参照)。
【0038】
さらに、検出処理部27は、反射光RV1の強度と反射光RV2の強度とを用いて、画素ごとに唾液痕(唾液)により吸光された吸光度を示す正規化吸光度比NARを算出する。
【0039】
以降、正規化吸光度比NARの算出方法について説明する。正規化吸光度比NARは、同一の照射位置における唾液痕付着時の反射光RV1の強度に対する唾液痕未付着時の反射光RV1の強度の比率を示す強度比Ln(I/I1300と、同一の照射位置における唾液痕付着時の反射光RV2の強度に対する唾液痕未付着時の反射光RV2の強度Iの比率を示す強度比Ln(I/I1400とを用いて、以下に示す(数式1)により算出される。
【0040】
【数1】
【0041】
また、検出処理部27は、(数式1)を用いて吸光度を正規化した正規化吸光度比NARを算出することにより、各波長帯の反射光の強度変化によらず吸光度を算出できる。例えば、第1投射光源15および第2投射光源17以外の他の照明(外部照明)を使用する場合、検出処理部27は、その他の照明と被測定物PTとの角度変化に基づいて、受光部23により受光される反射光RV1,RV2の強度が変化することがある。このような場合であっても、各波長帯の反射光RV1,RV2のそれぞれの強度比の和(つまり、強度比Ln(I/I1300+強度比Ln(I/I1400)で正規化することで、検出処理部27は、各波長帯の反射光の強度変化によらず吸光度を算出できる。
【0042】
検出処理部27は、すべての画素の正規化吸光度比NARをそれぞれ算出した後、算出された正規化吸光度比NARと、被測定物PTにおける唾液痕(唾液)検出の有無を判定するための閾値M1,M2のそれぞれとを画素ごとに比較する。
【0043】
なお、閾値M1,M2のそれぞれは、予め決められた任意の値でもよく、唾液痕(唾液)がない状態(つまり、唾液痕未付着時、あるいは唾液痕拭掃後の被測定物PT)で取得された反射光RV1,RV2のそれぞれの強度に基づく値(例えば、唾液痕がない状態で取得された反射光RV1,RV2のそれぞれの強度(値)に所定のマージンが加算された値)でもよい。
【0044】
つまり、閾値M1,M2のそれぞれは、唾液痕未付着時、あるいは唾液痕拭掃後の被測定物PTが撮像された検出結果画像データと、唾液痕付着時の被測定物PTが撮像された検出結果画像データとを比較することで、決定されてもよい。これにより、検出処理部27は、近赤外線カメラ1の設置環境、被測定物PTの設置環境(例えば、湿度、気温等)により適した閾値M1,M2のそれぞれを用いて唾液痕を検出できるため、唾液痕の検出精度および口唇の外形形状、口唇紋等の検出精度を向上させることができる。
【0045】
検出処理部27は、正規化吸光度比NARが閾値M1>正規化吸光度比NAR>閾値M2であるか否かを判定し、閾値M1>正規化吸光度比NAR>閾値M2である正規化吸光度比NARを有する画素を、唾液痕が検出された画素であると判定する。一方、検出処理部27は、閾値M1>正規化吸光度比NAR>閾値M2でない正規化吸光度比NARを有する画素を、唾液痕が検出されない画素であると判定する。
【0046】
また、検出処理部27は、表示処理部29により生成された唾液痕表示画像PT31に基づいて、唾液痕が占有している画素の集合エリアを判定する。
【0047】
検出処理部27は、画素ごとの正規化吸光度比NARと、画素ごとの唾液痕の検出の有無と、口唇紋エリアAR0の情報とを含む唾液痕の検出結果を生成し、表示処理部29に出力する。
【0048】
表示処理部29は、検出処理部27から出力された画素ごとの唾液痕の検出結果と、画素ごとの正規化吸光度比NARとに基づいて、正規化吸光度比NARにより示される唾液痕の膜厚をn(n:2以上の整数)階調色で可視化した唾液痕表示画像PT31(図9参照)を生成する。表示処理部29は、画素ごとの正規化吸光度比NARに基づいて、唾液痕が検出された画素が、所定の画素数以上集合している集合エリアを、生体認証用の口唇紋を検出する口唇紋エリアAR0(図11参照)として算出する。表示処理部29は、生成された唾液痕表示画像PT31と、口唇紋エリアAR0とを、制御部13に出力する。制御部13は、表示処理部29から出力された唾液痕表示画像PT31と、画素ごとの唾液痕の検出結果と、口唇紋エリアAR0の情報とを対応付けて、通信部11を介して制御装置2に送信する。
【0049】
次に、図2および図3を参照して、近赤外線カメラ1のユースケース例について説明する。図2は、実施の形態1における近赤外線カメラ1のユースケース例(唾液痕未付着時)を説明する図である。図3は、実施の形態1における近赤外線カメラ1のユースケース例(唾液痕未付着時)を説明する図である。なお、図2および図3に示す近赤外線カメラ1は、説明を分かり易くするために、照明部PJおよび撮像部JGのみを図示している。また、図2および図3に示す近赤外線カメラ1の照明部PJおよび撮像部JGと、被測定物PTとの位置関係は、一例であってこれに限定されないことは言うまでもない。
【0050】
唾液痕未付着時において、照明部PJは、被測定物PTの表面に近赤外線である各波長帯の照射光LS1,LS2を照射する。照射光LS1,LS2のそれぞれは、被測定物PTの表面で拡散され、拡散された拡散光DLのうち一部が撮像部JGに向かう反射光RV1,RV2となって撮像部JGの撮像光学部21に入射し、受光される。
【0051】
唾液痕付着時において、照明部PJは、被測定物PTの表面に近赤外線である各波長帯の照射光LS1,LS2を照射する。照射光LS1,LS2のそれぞれは、被測定物PTの表面に付着した唾液痕SV(唾液)により拡散され、拡散された拡散光DLのうち一部が撮像部JGに向かう反射光RV1,RV2となって撮像部JGの撮像光学部21に入射し、受光される。唾液痕付着時の反射光RV1,RV2の強度Iは、第2投射光源17の照射光LS2が唾液痕(唾液)により吸光されるため、唾液痕未付着時の反射光RV1,RV2の強度Iよりも小さくなる。
【0052】
撮像部JGに受光された反射光RV1,RV2は、バンドパスフィルタBPFを透過して、レンズLSに入射し、イメージセンサIMS上で結合する。なお、バンドパスフィルタBPFは、第1投射光源15および第2投射光源17のそれぞれがハロゲンランプにより実現されない場合には省略されてよい。
【0053】
次に、図4を参照して、唾液痕の検出の原理について説明する。図4は、近赤外線カメラ1による唾液痕の検出の原理説明図である。
【0054】
検出処理部27は、例えば、第1出力情報である振幅VAに対して、第1出力情報の(振幅VA)と第2出力情報(振幅VB)との振幅差分(VA-VB)の比率RT=(VA-VB)/VAを算出する。検出処理部27は、算出された比率RTが、比率RT>閾値M1であると判定した場合、唾液痕が検出されたと判定し、比率RT≦閾値M1であれば唾液痕が検出されないと判定してもよい。なお、図4に示す第2出力情報である振幅VBは、唾液痕がある場合には唾液痕により吸光されるため、第1出力情報である振幅VAよりも小さくなる。
【0055】
以上のように、検出処理部27は、比率RTと閾値M1との比較結果に基づいて、唾液痕の有無を検出することで、ノイズ(例えば外乱光)の影響を排除し、唾液痕の有無をより高精度に検出することができる。
【0056】
次に、図5を参照して、制御装置2の内部構成について説明する。図5は、実施の形態1に係る制御装置2の内部構成例を示すブロック図である。
【0057】
制御装置2は、例えば、PC(Personal Computer)、ノートPC、タブレット端末、スマートフォン等を用いて実現されたり、サーバあるいはクラウドサーバにより実現されたりする。制御装置2は、近赤外線カメラ1から送信された唾液痕表示画像PT31(図9参照)を表示部49に表示する。また、制御装置2は、近赤外線カメラ1から送信されたすべての画素のそれぞれの正規化吸光度比NARに基づいて、口唇紋を取得し、取得された口唇紋と、事前に登録された複数の人物の口唇紋とを照合することで、取得された口唇紋(つまり、被測定物PTに付着した唾液痕)に対応する人物を特定し、人物認証を実行する。
【0058】
制御装置2は、通信部41と、制御部43と、メモリ47と、表示部49と、口唇紋データベースDBと、を含んで構成される。なお、口唇紋データベースDBは、制御装置2と別体で構成されてもいい。また、制御装置2がサーバあるいはクラウドサーバにより実現される場合、表示部49は、制御装置2と別体で構成され、かつ、制御装置2との間でデータ通信可能に接続されたモニタ,ディスプレイ等により実現されてもよい。
【0059】
通信部41は、近赤外線カメラ1の通信部11との間で無線通信あるいは有線通信可能に接続され、データの送受信を実行する。なお、ここでいう無線通信は、例えばWi-Fi(登録商標)などの無線LANを介した通信である。通信部41は、近赤外線カメラ1の通信部11から送信された唾液痕の検出結果と、唾液痕表示画像PT31(図9参照)とを取得して、制御部43に出力する。
【0060】
制御部43は、例えばCPUまたはFPGAを用いて構成され、メモリ47と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、制御部43は、メモリ47に保持されたプログラムを参照し、そのプログラムを実行することにより照合部45等の各部の機能を実現する。制御部43は、取得された唾液痕表示画像PT31を表示部49に出力して、表示させる。
【0061】
照合部45は、近赤外線カメラ1から送信された口唇紋エリアの情報と、この口唇紋エリアに含まれる複数の画素のそれぞれの正規化吸光度比NARとに基づいて、正規化吸光度比NARにより示される唾液痕の膜厚をk(k:3以上の整数,k>n)階調色で可視化した口唇紋表示画像PT41(図10参照)を生成する。
【0062】
照合部45は、生成された口唇紋表示画像PT41から口唇紋を検出して取得する。なお、ここで照合部45は、口唇紋エリアが示す口唇の形状を検出し、検出された口唇の形状が口唇紋の照合により適した形状であるか否かを判定してよい。照合部45は、検出された口唇の形状が口唇紋の照合により適した形状でないと判定した場合、検出された口唇紋を所定の方向に変形することで、検出された口唇の形状を口唇紋の照合により適した形状に変形する。
【0063】
照合部45は、取得された口唇紋、あるいは変形処理後の口唇紋と、口唇紋データベースDBに登録された複数の人物のそれぞれの口唇紋とを照合する。照合部45は、取得された口唇紋、あるいは変形処理後の口唇紋と同一あるは類似する口唇紋に対応する人物を、被測定物PTから検出された唾液痕(口唇紋)に対応する人物であると特定する。一方、照合部45は、取得された口唇紋、あるいは変形処理後の口唇紋と同一あるは類似する口唇紋がないと判定した場合には、被測定物PTから検出された唾液痕(口唇紋)に対応する人物が口唇紋データベースDBに登録済みでない人物(つまり、認証失敗)であると判定する。
【0064】
照合部45は、照合結果を含む画面(不図示)を生成して、表示部49に出力する。なお、人物が特定された(つまり、認証成功した)場合、照合部45は、口唇紋データベースDBに登録済みであって、口唇紋に対応付けて登録されている人物に関する情報(例えば、氏名、年齢、性別等)を含む画面(不図示)を生成してもよい。
【0065】
メモリ47は、例えば制御部43の処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRAMと、制御部43の処理を規定したプログラムを格納するROMとを有する。RAMには、制御部43により生成あるいは取得されたデータが一時的に保存される。ROMには、制御部43の処理を規定するプログラムが書き込まれている。
【0066】
表示部49は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electroluminescence)等の表示用デバイスを用いて構成されてよい。表示部49は、制御部43から出力された唾液痕表示画像PT31(図9参照)、口唇紋表示画像PT41(図10参照)、照合結果を含む画面等を出力(表示)する。
【0067】
口唇紋データベースDBは、所謂ストレージであって、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)あるいはSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を用いて構成される。口唇紋データベースDBは、複数の人物の人物に関する情報と、口唇紋データとを対応付けて格納(登録)する。
【0068】
図6を参照して、近赤外線カメラ1の初期動作手順について説明する。図6は、実施の形態1における近赤外線カメラ1の初期動作手順例を説明するフローチャートである。
【0069】
近赤外線カメラ1における制御部13は、唾液痕を検出するための閾値M1,M2のそれぞれを検出処理部27に設定する(St1)。なお、閾値M1,M2のそれぞれは、被測定物PTの設置環境、被測定物PTの材質等に基づいて、適宜設定されてよい。
【0070】
制御部13は、撮像処理を開始させるための制御信号を撮像部JGの第1投射光源15および第2投射光源17のそれぞれに出力する(St2)。
【0071】
図7を参照して、実施の形態1に係る生体認証システム100の口唇紋照合手順について説明する。図7は、実施の形態1に係る生体認証システム100の口唇紋照合手順例を説明するフローチャートである。なお、ステップSt11~ステップSt19のそれぞれの処理は、近赤外線カメラ1により実行される。また、ステップSt20~ステップSt21のそれぞれの処理は、制御装置2により実行される。
【0072】
生体認証システム100は、近赤外線カメラ1を用いて口唇紋エリアの算出処理を開始する(St11)。
【0073】
近赤外線カメラ1は、照明部PJおよび撮像部JGのそれぞれを駆動させて、唾液痕未付着時あるいは唾液痕拭掃後の被測定物PTに照射光LS1,LS2のそれぞれを照射し、被測定物PTにより反射された反射光RV1,RV2の強度Iを計測する(St12)。また、近赤外線カメラ1は、照明部PJおよび撮像部JGのそれぞれを駆動させて、唾液痕付着時の被測定物PTに照射光LS1,LS2のそれぞれを照射し、被測定物PTの表面に付着した唾液痕SV(唾液)により反射された反射光RV1,RV2の強度Iを計測する(St13)。なお、ステップSt12およびステップSt13の順序は入れ替わってもよい。
【0074】
具体的に、近赤外線カメラ1は、照明部PJの投射光源光学部19により第1投射光源15から照射される照射光LS1と、第1投射光源15から照射される照射光LS2とを被測定物PTの表面に照射する。近赤外線カメラ1は、投射光源光学部19による第1投射光源15および第2投射光源17のそれぞれの照射位置の情報と、受光部23を構成する複数のイメージセンサIMS上の受光位置(画素の位置)情報とに基づいて、フレーム画像の各画素の位置と、被測定物PTの表面における座標(位置情報)とを対応付ける。
【0075】
近赤外線カメラ1は、(数式1)を用いて、フレーム画像(具体的には、図8に示す撮像画像PT11,PT12,PT21,PT22)からすべての画素の正規化吸光度比NARを算出する(St14)。
【0076】
なお、ここで、ステップSt14の処理は、ステップSt12およびステップSt13のいずれかの処理が実行された後に実行されてよい。また、近赤外線カメラ1は、同一の被測定物PTの唾液痕の検出処理として、ステップSt12の処理およびステップSt12に対応するステップSt14の処理と、ステップSt13の処理およびステップSt13に対応するステップSt14の処理とが終了するまで、ステップSt11~ステップSt14の処理を繰り返し実行してもよい。
【0077】
図8を参照して、唾液痕未付着時の撮像画像PT11,PT21と、唾液痕付着時の撮像画像PT12,PT22とを説明する。図8は、近赤外線カメラ1により撮像された唾液痕未付着時および唾液痕付着時のそれぞれの撮像画像PT11,PT12,PT21,PT22を比較する図である。
【0078】
「N描画前」の撮像画像PT11,PT21のそれぞれは、被測定物PTの表面に唾液で文字「N」を描画する前、つまり、唾液痕未付着時に撮像された撮像画像である。撮像画像PT11は、第1投射光源15の波長帯1300nmの照射光LS1が照射された被測定物PTの撮像画像である。撮像画像PT21は、第2投射光源17の波長帯1400nmの照射光LS2が照射された被測定物PTの撮像画像である。
【0079】
「N描画後」の撮像画像PT12,PT22のそれぞれは、被測定物PTの表面に唾液で文字「N」を描画した後、つまり、唾液痕付着時に撮像された撮像画像である。撮像画像PT12は、第1投射光源15の波長帯1300nmの照射光LS1が照射された被測定物PTの撮像画像である。撮像画像PT22は、第2投射光源17の波長帯1400nmの照射光LS2が照射された被測定物PTの撮像画像である。
【0080】
近赤外線カメラ1は、画素ごとの正規化吸光度比NARと、閾値M1,M2のそれぞれとを比較して、正規化吸光度比NARが閾値M1>正規化吸光度比NAR>閾値M2であるか否かを判定する(St15)。なお、本実施の形態1においては、閾値M1=0.6,閾値M2=0.2である例について説明するが、閾値M1,M2のそれぞれの値は、これに限定されないことは言うまでもない。
【0081】
近赤外線カメラ1は、ステップSt15の処理において、正規化吸光度比NARが閾値M1>正規化吸光度比NAR>閾値M2であると判定した場合(St15,YES)、閾値M1>正規化吸光度比NAR>閾値M2であると判定された画素を唾液痕が検出された画素であると判定し、フレーム画像上において任意のn階調色で表示する(St16)。なお、本実施の形態1では、n=1であって、「網掛け1」で唾液痕が検出された画素を表示する例について説明するが、階調色の数(つまり、nの値)および階調色は、それぞれ上述の例に限定されないことは言うまでもない。
【0082】
一方、近赤外線カメラ1は、ステップSt15の処理において、正規化吸光度比NARが閾値M1>正規化吸光度比NAR>閾値M2でないと判定した場合(St15,NO)、閾値M1>正規化吸光度比NAR>閾値M2でないと判定された画素を唾液痕が検出されない画素であると判定し、フレーム画像上において唾液痕以外の背景(被測定物PTの表面)を示す所定の単色で表示する(St17)。なお、本実施の形態1では、唾液痕が検出されない画素を「網掛け2」、照射光LS1,LS2の照射範囲外の画素を「網掛け3」で表示する例について説明するが、背景色の数および色は、それぞれ上述の例に限定されないことは言うまでもない。
【0083】
ここで、図9を参照して、唾液痕表示画像PT31の生成方法について具体的に説明する。図9は、3階調色における唾液痕表示画像の生成例を説明する図である。なお、図9に示す例において、被測定物PTは、唾液を用いて文字「N」が描かれている。
【0084】
近赤外線カメラ1は、-1<正規化吸光度比NAR<-0.4、または0.6<正規化吸光度比NAR<2.0である画素を、唾液痕が検出されない画素を示す「網掛け2」で表示する。近赤外線カメラ1は、-0.4≦正規化吸光度比NAR<0.2である画素を、第1投射光源15および第2投射光源17による照射光LS1,LS2が照射されていない画素を示す「網掛け3」で表示する。また、近赤外線カメラ1は、0.2<正規化吸光度比NAR<0.6である画素を、唾液痕が検出された画素を示す「網掛け1」で表示する。以上により、近赤外線カメラ1は、唾液痕表示画像PT31(図9参照)を生成することで、唾液痕である文字「N」(図9に示す白枠内)を検出できる。
【0085】
近赤外線カメラ1は、唾液痕が検出された画素空間として、唾液痕が検出されたことを示す色(ここでは、「網掛け1」)で表示された画素のそれぞれを検出し、この検出された複数の画素が占有する任意の口唇紋エリアを判定する(St18)。
【0086】
近赤外線カメラ1は、口唇紋認証に用いられる口唇紋を含む口唇紋エリアAR0(図11参照)を算出し(St19)、この口唇紋エリアAR0の情報と、画素ごとの正規化吸光度比NARと、唾液痕表示画像PT31と、を少なくとも含む唾液痕の検出結果を生成して、制御装置2に送信する。
【0087】
制御装置2は、近赤外線カメラ1から送信された任意の口唇紋エリアの情報と、画素ごとの正規化吸光度比NARと、唾液痕表示画像PT31とを取得し、口唇紋エリア内から口唇紋を検出する。具体的に、近赤外線カメラ1は、口唇紋エリアAR0に含まれる画素ごとの正規化吸光度比NARに基づいて、唾液痕が検出された画素の表示をk階調色で表示した口唇紋表示画像PT41を生成する(St20)。なお、本実施の形態1では、k=8であって、かつ、「網掛け4」~「網掛け9」のそれぞれで唾液痕が検出された画素を表示する例について説明するが、階調色の数(つまり、kの値)および階調色は、それぞれ上述の例に限定されないことは言うまでもない。
【0088】
ここで、図10を参照して、口唇紋表示画像PT41の生成方法について具体的に説明する。図10は、8階調色における口唇紋表示画像の生成例を説明する図である。
【0089】
制御装置2は、唾液痕が検出された-0.4≦正規化吸光度比NAR<0.2である画素を8階調色でさらに表示する。制御装置2は、-0.4<正規化吸光度比NAR<-0.3である画素を「網掛け4」、-0.3≦正規化吸光度比NAR<-0.2である画素を「網掛け5」、-0.2≦正規化吸光度比NAR<-0.1である画素を「網掛け6」、-0.1≦正規化吸光度比NAR<0である画素を「網掛け7」、0≦正規化吸光度比NAR<0.05である画素を「網掛け8」、0.05≦正規化吸光度比NAR<0.2である画素を「網掛け9」でそれぞれ表示した口唇紋表示画像PT41を生成する。
【0090】
制御装置2は、生成された口唇紋表示画像PT41に基づいて、口唇紋を検出し、検出された口唇紋と、口唇紋データベースDBに登録された複数の人物の口唇紋データのそれぞれとを照合する(St21)。制御装置2は、照合結果を含む画面を生成して、表示部49に出力して表示させる。
【0091】
ここで、図11図13のそれぞれを参照して、口唇紋の検出方法について具体的に説明する。図11は、口唇紋検出処理例を説明する図である。図12は、口唇紋変形処理例を説明する図である。図13は、口唇紋変形処理例を説明する図である。なお、図11に示す口唇紋表示画像PT51は、説明を分かり易くするために、k階調色での表示を省略している。
【0092】
制御装置2は、口唇紋表示画像PT51の口唇紋エリアAR0から口唇紋LCを検出する。なお、図11に示す口唇紋表示画像PT51の口唇紋エリアAR0のうちエリアLARは、唾液痕が残っていないエリアである。
【0093】
制御装置2は、イメージセンサIMS上に設定されたX軸,Y軸を基準として、検出された口唇紋LCの外形形状から口唇の中心位置Pt0(Xc,Yc,θ)を計測する。制御装置2は、計測された口唇の中心位置Pt0の回転角度θ=0(ゼロ)を基準とする(つまり、口唇の中心位置Pt0´(Xc,Yc,0)を中心とする)新たなX´軸,Y´軸を設定し、この新たなX´軸,Y´軸上における口唇紋上のp(p:2以上の整数)点の座標(X1,Y1),…,(Xp,Yp)のそれぞれを計測する。
【0094】
制御装置2は、計測された口唇紋上のp(p:2以上の整数)点の座標(X1,Y1),…,(Xp,Yp)のそれぞれと、口唇紋データベースDBに登録された複数の人物の口唇紋データとを照合して、検出された口唇紋と同一あるいは類似する口唇紋を判定する。制御装置2は、同一あるいは類似する口唇紋に対応する人物を、検出された口唇紋に対応する人物であると特定する。
【0095】
なお、照合処理において、制御装置2は、検出された口唇の外形形状が口唇紋を用いた生体認証(照合処理)に適した外形形状であるか否かを判定してよい。制御装置2は、検出された口唇の外形形状が口唇紋を用いた生体認証(照合処理)に適した外形形状であると判定した場合には、計測された口唇紋上のp点の座標(X1,Y1),…,(Xp,Yp)のそれぞれと、口唇紋データベースDBに登録された複数の人物の口唇紋データとを照合する。
【0096】
一方、制御装置2は、検出された口唇の外形形状が口唇紋を用いた生体認証(照合処理)に適した外形形状でないと判定した場合には、検出された口唇の外形形状から生体認証(照合処理)に適した外形形状への変形係数a,bをそれぞれ算出する。なお、ここでいう変形係数aは、X´軸方向の変形係数である。変形係数bは、Y´軸方向の変形係数である。
【0097】
なお、ここでいう生体認証(照合処理)に適した口唇の外形形状は、口唇紋データベースDBに登録される口唇の形状であって、図13に示す例では、「変形例1」~「変形例3」等に示す形状である。なお、図13に示す例は一例であってこれに限定されないことは言うまでもない。
【0098】
制御装置2は、計測された口唇紋上のp点の座標(X1,Y1),…,(Xp,Yp)のそれぞれに変形係数a1,b1を乗じて、「検出例」に示す口唇の外形形状を「変形例1」に示す口唇の外形形状に変形する。同様にして、制御装置2は、計測された口唇紋上のp点の座標(X1,Y1),…,(Xp,Yp)のそれぞれに変形係数a2,b2を乗じて、「検出例」に示す口唇の外形形状を「変形例2」に示す口唇の外形形状に変形したり、変形係数a3,b3を乗じて、「検出例」に示す口唇の外形形状を「変形例3」に示す口唇の外形形状に変形したりして、口唇紋の照合処理を実行する。
【0099】
以上により、実施の形態1に係る生体認証システム100は、被測定物PTを撮像する近赤外線カメラ1(カメラの一例)と、近赤外線カメラ1との間で通信可能な制御装置2と、を備える生体認証システム100である。近赤外線カメラ1は、第1波長帯(例えば、1200nm,1300nm等)の照射光LS1と、第1波長帯と異なる波長帯である第2波長帯(例えば、1400nm)の照射光LS2とを被測定物PTに照射し、被測定物PTを撮像して、撮像された撮像画像から水分または糖類を検出し、水分および糖類が検出されない第1画像(例えば、図8に示す撮像画像PT11,PT12)と、水分または糖類が検出された第2画像(例えば、図8に示す撮像画像PT21,PT22)とを比較して、被測定物PT上の水分または糖類を検出した正規化吸光度比NAR(検出結果の一例)を制御装置2に送信する。制御装置2は、正規化吸光度比NARに基づいて、口唇紋を取得し、取得された口唇紋と、口唇紋データベースDB(データベースの一例)に登録された複数の口唇紋のそれぞれとを照合し、口唇紋データベースDBに取得された口唇紋と同一あるいは類似する口唇紋があると判定した場合、同一あるいは類似する口唇紋に対応する人物を、取得された口唇紋に対応する人物であると判定して認証する。なお、ここでいう複数のコンピュータは、例えば、被測定物PTを撮像可能な近赤外線カメラ1,口唇紋を検出(取得)可能な制御装置2等である。
【0100】
これにより、実施の形態1に係る生体認証システム100は、被測定物PTに異なる波長帯の照射光LS1,LS2のそれぞれを照射して撮像し、撮像された撮像画像を用いて被測定物PT上の水分または糖類のOH基に基づく唾液痕を検出し、検出された唾液痕に基づいて、人物の口唇紋を取得することにより、口唇紋を用いた人物認証を実行することができる。したがって、生体認証システム100は、生体認証に用いられる口唇紋をより容易に取得できる。
【0101】
また、以上により、実施の形態1に係る近赤外線カメラ1は、第1画像を記憶し、第2画像から水分または糖類が検出された場合、第2画像と、記憶された第1画像とを比較して、水分または糖類を画素ごとに検出する。これにより、実施の形態1に係る生体認証システム100は、撮像画像から水分または糖類を画素ごとに検出することで、口唇紋生体認証に用いられる口唇紋をより容易に取得できる。
【0102】
また、以上により、実施の形態1に係る近赤外線カメラ1は、水分または糖類のOH基に対する吸光度がそれぞれ異なる第1波長帯の照射光LS1と第2波長帯の照射光LS2とを照射する。これにより、実施の形態1に係る生体認証システム100は、被測定物PT上で反射した時に、照射光LS1と照射光LS2とが被測定物PT上に付着した水分または糖類のOH基によりそれぞれ吸光される。したがって、生体認証システム100は、第1画像および第2画像のそれぞれに映る第1波長帯の反射光RV1と第2波長帯の反射光RV2とに基づいて、被測定物PT上に付着した水分または糖類を検出できる。
【0103】
また、以上により、実施の形態1に係る近赤外線カメラ1は、波長帯が1200nmまたは1300nmである第1波長帯の照射光LS1と、波長帯が1400nmである第2波長帯の照射光LS2とを照射する。これにより、実施の形態1に係る生体認証システム100は、第1画像および第2画像のそれぞれに映る第1波長帯の反射光RV1と第2波長帯の反射光RV2とに基づいて、被測定物PT上に付着した水分または糖類を検出できる。
【0104】
また、以上により、実施の形態1に係る近赤外線カメラ1は、第1波長帯の照射光LS1が照射された第1画像の画素ごとの輝度と、第2波長帯の照射光LS2が照射された第2画像の輝度との輝度差に基づいて、水分または糖類を画素ごとに検出する。これにより、実施の形態1に係る生体認証システム100は、第1画像および第2画像のそれぞれに映る第1波長帯の反射光RV1の輝度と第2波長帯の反射光RV2の輝度との輝度差に基づいて、被測定物PT上に付着した水分または糖類を検出できる。
【0105】
また、以上により、実施の形態1に係る近赤外線カメラ1は、画素ごとの輝度差を制御装置2に送信する。制御装置2は、輝度差に基づいて、口唇紋を取得する。これにより、実施の形態1に係る生体認証システム100は、第1画像および第2画像のそれぞれに映る第1波長帯の反射光RV1の輝度と第2波長帯の反射光RV2の輝度との輝度差に基づいて、被測定物PT上に付着した口唇紋を取得できる。
【0106】
また、以上により、実施の形態1に係る制御装置2は、検出結果に基づいて、水分または糖類が検出された所定の画素数が集合する口唇紋エリアAR0(エリアの一例)から口唇紋を取得する。これにより、実施の形態1に係る生体認証システム100は、水分または糖類(つまり、唾液痕)が検出された所定の画素数が集合する口唇紋エリアAR0から口唇紋を取得することで、生体認証に用いられる口唇紋をより効率的に取得できる。
【0107】
また、以上により、実施の形態1に係る制御装置2は、口唇紋エリアAR0の形状に基づいて、口唇紋の向きを推定する。これにより、実施の形態1に係る生体認証システム100は、生体認証に用いられる口唇紋をより効率的に取得できる。
【0108】
また、以上により、実施の形態1に係る制御装置2は、推定された口唇紋の向きに基づいて、取得された口唇紋の向きを口唇紋データベースDBに登録された複数の口唇紋の向きに回転して照合する。これにより、実施の形態1に係る生体認証システム100は、生体認証に用いられる口唇紋をより効率的に取得できるとともに、取得された口唇紋を生体認証により適した口唇紋の向きに回転(変形)できるため、口唇紋を用いた生体認証精度を向上させることができる。
【0109】
また、以上により、実施の形態1に係る制御装置2は、口唇紋エリアAR0の形状に基づいて、検出された口唇形状を推定し、推定された口唇形状を、口唇紋データベースDBに登録された複数の口唇紋に対応する口唇形状に変形する変形量に基づいて、口唇紋を変形し、変形後の口唇紋と、口唇紋データベースDBに取得された口唇紋とを照合する。これにより、実施の形態1に係る生体認証システム100は、取得された口唇紋を、生体認証により適した口唇紋に変形できるため、口唇紋を用いた生体認証精度を向上させることができる。
【0110】
また、以上により、実施の形態1に係る制御装置2は、口唇紋エリアAR0の形状に基づいて、口唇紋の向きをさらに推定し、推定された口唇紋の向きと口唇形状とに基づいて、口唇の中心位置Pt0(中心点の一例)を推定し、中心位置Pt0を中心に、取得された口唇紋の向きを前記データベースに登録された複数の口唇紋の向きに回転し、回転後の口唇形状を、口唇紋データベースDBに登録された複数の口唇紋に対応する口唇形状に変形する変形量を決定し、変形量に基づいて、口唇紋を変形する。これにより、実施の形態1に係る生体認証システム100は、取得された口唇紋を、生体認証により適した口唇紋に変形できるため、口唇紋を用いた生体認証精度を向上させることができる。
【0111】
また、以上により、実施の形態1に係る制御装置2が決定する変形量は、口唇形状に基づいて決定される所定の倍率である。これにより、実施の形態1に係る生体認証システム100は、取得された口唇紋を、生体認証により適した口唇紋に変形できるため、口唇紋を用いた生体認証精度を向上させることができる。
【0112】
また、以上により、実施の形態1に係る被測定物PTは、アルミニウムの粉末が塗装される。これにより、実施の形態1に係る生体認証システム100は、水分または糖類をより高精度に検出できるため、口唇紋をより高精度に取得でき、口唇紋を用いた生体認証精度を向上させることができる。
【0113】
以上、添付図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本開示は、生体認証に用いられる口唇紋をより容易に取得可能な生体認証システムおよび生体認証方法として有用である。
【符号の説明】
【0115】
1 近赤外線カメラ
2 制御装置
11,41 通信部
13,43 制御部
15 第1投射光源
17 第2投射光源
19 投射光源光学部
21 撮像光学部
23 受光部
25 信号加工部
27 検出処理部
29 表示処理部
31,47 メモリ
100 生体認証システム
AR0 口唇紋エリア
DB 口唇紋データベース
LS1,LS2 照射光
PT 被測定物
Pt0 中心位置
PT11,PT12,PT21,PT22 撮像画像
RV1,RV2 反射光
図1
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