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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105652
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】二重エアゾール容器および内袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/62 20060101AFI20230724BHJP
   B65D 83/38 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B65D83/62
B65D83/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006618
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000238614
【氏名又は名称】武内プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】澤田 孝美
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB02
3E014PC02
3E014PC04
3E014PC07
3E014PC16
3E014PD01
3E014PD22
3E014PE30
3E014PF10
(57)【要約】
【課題】製造時に内袋のフランジ部に損傷が生じるのを抑制し、内容物及び加圧ガスの漏れを抑制する二重エアゾール容器の提供。
【解決手段】開放端を規定する端壁部11a、拡径した肩壁部11bを介して下向きに延びる側壁部11cおよび底壁部11dを有する外部容器11と、フランジ部12a1を有する開放端部12a、フランジ部12a1より拡径した肩部12bを介して下向きに延びる第1胴部12c、その第1胴部12cの下端に接続し、第1胴部12cよりも縮径したくびれ部12d、そのくびれ部12dの下端に接続して下向きに延び、第1胴部12cと実質的に外径が等しい第2胴部12eおよび底部12fを有する内袋12とを具備する。内袋12を外部容器11内に配置したとき、底部12fと底壁部11dとが当接し、フランジ部12a1が端壁部11aより突出する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放端を規定する端壁部と、該端壁部から拡径した部分を介して軸方向下向きに延びる側壁部と、該側壁部の下端を閉じる底壁部とを有する外部容器と、
フランジ部を有する開放端部と、開放端部の下端から前記フランジ部の外径より大きく拡径した部分を介して軸方向下向きに延びる第1胴部と、該第1胴部の下端に接続し、第1胴部よりも縮径したくびれ部と、該くびれ部の下端に接続して下向きに延び、前記第1胴部と実質的に外径が等しい第2胴部と、該第2胴部の下端を閉じる底部とを有する内袋とを具備し、
該内袋を前記外部容器内に配置したとき、前記底部と前記底壁部とが当接し、前記フランジ部が前記端壁部よりも上方に突出するものであることを特徴とする二重エアゾール容器。
【請求項2】
前記くびれ部が、前記第1胴部から軸方向下向きに縮径していく第1縮径部と、前記第2胴部から軸方向上向きに縮径していく第2縮径部とを有することを特徴とする請求項1に記載の二重エアゾール容器。
【請求項3】
前記第1縮径部と第2縮径部との間に、軸方向に延びる筒部を有することを特徴とする請求項2に記載の二重エアゾール容器。
【請求項4】
軸を通過する縦断面視で、開放端部の内径以上の直径を有する内袋の内部表面の領域における任意の点を基点として、軸に対して該基点と反対側の前記開放端部の内面に1点で接する接線を引いたとき、前記基点よりも軸方向上方に位置する直線部分が、内袋の内部表面と交差することなく延びているか、または内袋の内部表面に沿って延びていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の二重エアゾール容器。
【請求項5】
前記内袋が、開放端部から内袋内部表面の全体を視認できる形状とされていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の二重エアゾール容器。
【請求項6】
前記外部容器の側壁部の外径が、40mm以下、33mm以上である請求項1~5のいずれかに記載の二重エアゾール容器。
【請求項7】
前記外部容器の側壁部の内径が、内部容器の第1胴部の外径より2~10mm大きく、
前記内部容器のくびれ部の最小径部の外径が、第1胴部の外径より7~14mm小さい請求項1~6のいずれかに記載の二重エアゾール容器。
【請求項8】
二重エアゾール容器に用いる内袋であって、
フランジ部を有する開放端部と、開放端部の下端から前記フランジ部の外径より大きく拡径した部分を介して軸方向下向きに延びる第1胴部と、該第1胴部の下端に接続し、第1胴部よりも縮径したくびれ部と、該くびれ部の下端に接続して下向きに延び、前記第1胴部と実質的に外径が等しい第2胴部と、該第2胴部の下端を閉じる底部とを有し、
前記くびれ部が、前記第1胴部から軸方向下向きに縮径する第1縮径部と、前記第2胴部から軸方向上向きに縮径する第2縮径部とを有することを特徴とする内袋。
【請求項9】
前記第1縮径部と第2縮径部との間に、軸方向に延びる筒部を有することを特徴とする請求項8記載の内袋。
【請求項10】
軸を通過する縦断面視で、開放端部の内径以上の直径を有する内袋の内部表面の領域における任意の点を基点として、軸に対して該基点と反対側の前記開放端部の内面に1点で接する接線を引いたとき、前記基点よりも軸方向上方に位置する直線部分が、内袋の内部表面と交差することなく延びているか、または内袋の内部表面に沿って延びていることを特徴とする請求項8または9記載の内袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二重エアゾール容器およびそれに用いる内袋に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の缶などの外部容器内に、可撓性を有するプラスチック製の内袋を収容した二重エアゾール容器がある。内袋の形状は、加圧ガスを収容する隙間空間を考慮して設計される。一般的な内袋として、フランジ部を有する開放端部と、開放端部の下端からフランジ部の外径より大きく拡径した部分を介して軸方向に沿って延びる胴部と、胴部を閉じる底部とを有するものがある(特許文献1)。また、このような内袋を外部容器内に挿入したときに、内袋の底部が外部容器の底壁部に当接するものがある(特許文献1~3)。
【0003】
このとき、開放端部は、外部容器の開口した端壁部から突出した状態にされ、加圧ガスが内袋と外部容器とで画定される隙間空間に充填される。その後、外部容器及び内袋の開口部に被せられたバルブにカシメ加工が施されることによって、二重エアゾール容器が得られる。
【0004】
このような内袋は、内袋の底部と外部容器の底壁部の間には隙間空間が殆ど得られないため、隙間空間の大部分は、内袋の胴部と外部容器の側壁部との間の環状部分によって形成されることになる。一方、外部容器の開口した端壁部は、汎用のバルブに合う直径、すなわちバルブのマウンティングカップの側壁部の外径(約25.4mm)に合うように設計されている。また、端壁部がカール状に折り曲げられたカール部によって形成される場合、外部容器の胴体部分を構成する側壁部の外径は、カール部の外径よりもやや大きい33mmが最小の外径とされる。
【0005】
外部容器の外径が小さい場合、特に外部容器の外径が40mm以下であると、必要とされる隙間空間が得られないことがある。必要とされる隙間空間を得るため、内袋の胴部を外部容器の端壁部の内径よりもやや小さくすることも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-240760号公報
【特許文献2】特開平9-118380号公報
【特許文献3】特開2005-41547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1の二重エアゾール容器では、フランジ部が胴部の外径よりも半径方向に突出しているため、フランジ部が損傷を受けるおそれがある。隙間空間を広くとると、内袋が容器の製造ライン等の自動化された装置内で移送される際に、内袋の姿勢を安定させるのが難しい。内袋が移送される際に内袋の姿勢が安定しない場合、フランジ部の損傷を招くおそれがある。また、開放端部の所定の位置に配置又は固定されたガスケット等のシール材が所定の位置からずれてしまうおそれがある。このような不具合によって、加圧ガスの漏れにつながるおそれがある。
【0008】
上記課題に鑑みて、内袋のフランジ部に損傷が生じるのを抑制し、これにより、二重エアゾール容器の内容物及び加圧剤の漏れを抑制すると共に、単独で移送する場合、あるいは外部容器に収容した状態で移送する場合に内袋が安定する二重エアゾール容器およびそれに用いる内袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の二重エアゾール容器10は、開放端を規定する端壁部11aと、該端壁部11aから拡径した部分(肩壁部11b)を介して軸方向下向きに延びる側壁部11cと、該側壁部11cの下端を閉じる底壁部11dとを有する外部容器11と、フランジ部12a1を有する開放端部12aと、開放端部12aの下端から前記フランジ部12a1の外径より大きく拡径した部分(肩部12b)を介して軸方向下向きに延びる第1胴部12cと、該第1胴部12cの下端に接続し、第1胴部12cよりも縮径したくびれ部12dと、該くびれ部12dの下端に接続して下向きに延び、前記第1胴部12cと実質的に外径が等しい第2胴部12eと、該第2胴部12eの下端を閉じる底部12fとを有する内袋12、12A、12Bとを具備し、該内袋12、12A、12Bを前記外部容器11内に配置したとき、前記底部12fと前記底壁部11dとが当接し、前記フランジ部12a1が前記端壁部11aよりも上方に突出するものであることを特徴とする。
【0010】
このような二重エアゾール容器10においては、前記内袋12、12A、12Bのくびれ部12dが、前記第1胴部12cから軸方向下向きに縮径する第1縮径部12d1と、前記第2胴部12eから軸方向上向きに縮径する第2縮径部12d2とを有するものが好ましい。また、前記第1縮径部12d1と第2縮径部12d2との間に、軸方向に延びる筒部12d3を有するものが好ましい。
【0011】
さらに前記内袋12、12Aが、軸Jを通過する縦断面視で、開放端部12aの内径以上の直径を有する内袋12の内部表面の領域における任意の点を基点として、軸Jに対して該基点と反対側の前記開放端部12aの内面に1点で接する接線Lを引いたとき、前記基点よりも軸方向上方に位置する直線部分が、内袋12の内部表面と交差することなく延びているか、または内袋12の内部表面に沿って延びているものが一層好ましい。前記内袋12が、開放端部12aから内袋12の内部表面の全体を視認できる形状とされていてもよい。
【0012】
また、前記外部容器11の側壁部11cの外径が、40mm以下、33mm以上である二重エアゾール容器10が好ましい。さらに前記外部容器11の側壁部11cの内径が、内部容器12の第1胴部12cの外径より2~10mm大きく、前記内部容器12のくびれ部12dの最小径部の外径が、第1胴部12cの外径より7~14mm小さい二重エアゾール容器が好ましい。
【0013】
本発明の内袋12、12A、12Bは、二重エアゾール容器10に用いる内袋であって、フランジ部12a1を有する開放端部12aと、開放端部12aの下端から前記フランジ部12a1の外径より大きく拡径した部分(肩部12b)を介して軸方向下向きに延びる第1胴部12cと、該第1胴部12cの下端に接続し、第1胴部12cよりも縮径したくびれ部12dと、該くびれ部12dの下端に接続して下向きに延び、前記第1胴部12cと実質的に外径が等しい第2胴部12eと、該第2胴部12eの下端を閉じる底部12fとを有し、前記くびれ部12dが、前記第1胴部12cから軸方向下向きに縮径する第1縮径部12d1と、前記第2胴部12eから軸方向上向きに縮径する第2縮径部12d2とを有することを特徴とする。
【0014】
このような内袋12、12A、12Bにおいては、前記第1縮径部12d1と第2縮径部12d2との間に、軸方向に延びる筒部12d3を有するものが好ましい。さらに軸Jを通過する縦断面視で、開放端部12aの内径以上の直径を有する内袋12、12Aの内部表面の領域における任意の点を基点として、軸Jに対して該基点と反対側の前記開放端部12aの内面に1点で接する接線を引いたとき、前記基点よりも軸方向上方に位置する直線部分が、内袋12、12Aの内部表面と交差することなく延びているか、または内袋12、12Aの内部表面に沿って延びているものが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の二重エアゾール容器は、内袋の第1胴部がフランジ部の外径より大きく拡径した部分を介して軸方向下向きに延びているので、フランジ部の損傷が抑制され、それにより加圧ガスの漏れを抑制することができる。また、内袋にくびれ部があるため、外部容器に内袋を挿入した状態では、外部容器と内袋の間に充分広い隙間空間を形成することができる。そのため、内袋の第1胴部および第2胴部の径を外部容器の内径よりそれほど小さくする必要がない。したがって内袋は外部容器内で安定するので自動化された装置内での内袋の移送が容易となる。
【0016】
このような二重エアゾール容器において、前記内袋のくびれ部が、前記第1胴部から軸方向下向きに縮径していく第1縮径部と、前記第2胴部から軸方向上向きに縮径していく第2縮径部とを有する場合は、外部容器と内袋の間に充填される加圧ガスによって内袋が潰れやすい。また、前記第1縮径部と第2縮径部との間に、軸方向に延びる筒部を有する場合は、外部容器と内袋の隙間空間の容積が大きくなり、充填する加圧ガスの量を多くすることができる。
【0017】
さらに軸を通過する縦断面視で、開放端部の内径以上の直径を有する内袋の内部表面の領域における任意の点を基点として、軸に対して該基点と反対側の前記開放端部の内面に1点で接する接線を引いたとき、前記基点よりも軸方向上方に位置する直線部分が、内袋の内部表面と交差することなく延びているか、または内袋の内部表面に沿って延びている場合は、開放端部から内袋の内部を視認しやすく、ゴミなどの異物を発見しやすい。前記内袋が、開放端部から内袋内部表面の全体を視認できる形状とされている場合も同様の効果を奏する。
【0018】
前記外部容器の側壁部の外径が、40mm以下、33mm以上である場合は、前述の効果を発揮しやすい。前記外部容器の側壁部の内径が、内部容器の第1胴部の外径より2~10mm大きく、前記内部容器のくびれ部の最小径部の外径が、第1胴部の内径より7~14mm小さい場合は、外部容器内に収容した内袋を安定して保持することができ、しかも隙間空間の加圧ガスの量を多くすることができる。
【0019】
本発明の内袋を用いた二重エアゾール容器は、前述の二重エアゾール容器と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の二重エアゾール容器の実施形態をバルブアッセンブリと共に示す断面図である。
図2図1の二重エアゾール容器に用いられている内袋の断面図である。
図3】本発明の内袋の他の実施形態を示す断面図である。
図4】本発明の内袋のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示す二重エアゾール容器10は、外部容器11と、その外部容器11の内部に収容されている内袋12とからなる。図1では内袋12を外部容器11に固着する前の状態で示している。この状態では内袋12の上端は外部容器11の上端から外部に突出しており、その突出している部分にバルブ13を装着している。バルブ13は外部容器11にクリンチする前の状態である。内袋12の内部空間S1は内容物(原液)を充填する空間であり、外部容器11と内袋12の間の隙間空間S2は、加圧ガスを充填する空間である。
【0022】
(実施形態1)
図2に示すように、内袋12は、上端開口を構成する開放端部12aを有する。開放端部12aは、半径方向外向きに延びる環状のフランジ部12a1と、そのフランジ部12a1の内縁から屈曲した部分を介して軸方向に沿って下向きに延びる首部12a2とを有する。開放端部12aの下端には、フランジ部12a1の外径より大きく拡径した部分、すなわち肩部12bが接続している。肩部12bは軸方向下方に向かって拡がるように延びている。本実施形態ではフランジ部12a1は平坦な円環状であり、首部12a2は略円筒状である。肩部12bは略円錐台状であり、軸Jに対する傾斜角度θ1は30~45°程度である。肩部12bは断面形状では内向きの凸と外向きの凸が連続した曲線形状である。
【0023】
肩部12bの外周端には、軸方向下向きに延びる第1胴部12cが接続している。第1胴部12cの下端には、第1胴部12cよりも縮径したくびれ部12dが接続しており、くびれ部12dの下端には、第1胴部12cと実質的に外径が等しい第2胴部12eが接続している。第2胴部12eの下端は底部12fによって閉じられている。第1胴部12cの上下寸法は、例えば5~20mm程度、くびれ部12dの上下寸法は15~45mm程度、第2胴部12eの上下寸法は5~20mm程度であってもよい。くびれ部12dの最小径部の外径は、第1胴部の外径より7~14mm程度小さくしてもよい。
【0024】
第1胴部12cの上下寸法と第2胴部12eの上下寸法の比率は、約1:1とされているが、1:3~3:1程度、または1:2~2:1程度としてもよい。同程度の長さとすることにより、外部容器11内での内袋12の姿勢が安定しやすい。さらに[第1胴部12cの上下寸法+第2胴部12eの上下寸法]と、[くびれ部12dの上下寸法]の比率は、約2:3とされている。
【0025】
くびれ部12dは、第1胴部12cから軸方向下向きに縮径した第1縮径部12d1と、第2胴部12eから軸方向上向きに縮径した第2縮径部12d2とを有する。本実施形態では、第1縮径部12d1と第2縮径部12d2の間に軸方向に延びる筒部12d3を有する。筒部12d3を省略することもできるが、筒部12d3を備えると、とくに筒部12d3を軸方向に長くすると、外径が最小となる領域が大きくなるため、隙間空間(図1の符号S2)の容積を大きくすることができる。また、第1胴部12cと第2胴部12eの軸方向の間隔が長くなるので、内袋12の姿勢を一層安定させることができる。
【0026】
第1縮径部12d1は、本実施形態では概略的に見れば略円錐台状であり、軸Jに対する傾斜角度θ2は20~45°程度である。さらに第1縮径部12d1は、第1胴部12cに接続する半径方向外向きに凸の曲線部分R1と、筒部12d3に接続する半径方向内向きに凸の曲線部分R2とを備える。第1縮径部12d1の傾斜角度θ2は、もっと大きくすることができ、傾斜角度θ2を大きくすることにより、第1縮径部12d1の上下寸法が短くなる。そのため第2縮径部12d2の上下寸法を長くすることができ、隙間空間S2の容積を広くすることができる。さらに後述する第2縮径部12d2の傾斜角度θ3を小さくすることができる。
【0027】
第2縮径部12d2は、第2胴部12eの上端から軸方向上方に向かって順に、第2胴部12eと接続する屈曲した部分(以下、屈曲部という)P1と、直線状に延びる部分(以下、直線部)T1と、曲線状に延びる部分(以下、曲線部)R3とを備える。直線部T1と曲線部R3の順序は逆でもよい。それらのうち、いずれか一方を省略し、全体を曲線状または直線状に延びるようにすることもできる。直線部T1は略円錐台状であり、軸Jに対する傾斜角度θ3は10~20°程度と小さくしている。傾斜角度θ3が大きい場合は、上端開口から見たとき、直線部T1が視認できないことがあるが(図4参照)、傾斜角度θ3を小さくしたため、上端開口から内袋12の内面全体を視認することができる。
【0028】
前記曲線部R3では、軸方向上にいくに従って軸Jとなす傾斜角度θが徐々に小さくなっている。言い換えると、曲線部R3の傾斜角度は、軸方向上向きに、直線部T1の角度と等しい角度θ3から徐々に0度に近似する角度に変化する。このように角度の変化が緩やかで、曲率半径が小さい湾曲部が少ないため、内容物を吐出した後、扁平に変形しやすい。
【0029】
また、この実施形態では、内袋12は、軸Jを含む縦断面視で、開放端部12aの内径以上の直径を有する内袋12の内部表面の領域における任意の点を基点として、軸Jに対して基点と反対側の開放端部12aの内面に1点で接する接線Lを引いたとき、基点よりも軸方向上方に位置する直線部分が、内袋12の内部表面と交差することなく延びている。内袋12の内部表面が、接線Lに対してこのように配置されると、開放端部12aの外側から内袋12の内部を目視したときに、内袋12の内部表面の全体を視認するのが容易となる。また、内袋12を外部容器11に入れた後でも、内袋12内を視認しやすい。さらにエアブローによる洗浄や紫外線による消毒が容易である。
【0030】
内袋12の底部12fは、本実施形態では、第2胴部12eから下方に向かって縮径した窄まり部12f1を有する。窄まり部12f1は、縦断面視で弧状に延びているが、テーパ状に真っ直ぐに延びていてもよい。内袋12がブロー成形によって形成される場合、底部12fの外部側すなわち下面側に、金型に挟み込まれることによって形成されるピンチオフ部12f2を有してもよい。ピンチオフ部12f2は、底部12fを第2胴部12e側に向かって突出させた凹所12f3内に形成し、底部12fの最下端部から突出しないように形成してもよい。それにより内袋12を外部容器11内で安定して立たせることができる。
【0031】
内袋12は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアミド等の合成樹脂を1種以上用いて単層又は多層に形成することができる。内袋12の厚さは、0.3~0.6mmに形成されてもよい。内袋12は、ブロー成形等によって形成される。内袋12は、図1の状態からバルブ13と共に外部容器11内に押し込むとき、上下方向あるいは半径方向に縮小するように、また、二重エアゾール容器10を使用して内袋12内の内容物を吐出するにしたがって扁平に潰れていくように、適度の可撓性を有する。このような変形が可能であれば、合成樹脂フィルムに金属箔を積層したものも使用することができる。
【0032】
図1に戻って、外部容器11は、開放端を規定する端壁部11aと、端壁部11aから拡径した部分、言い換えると肩壁部11bを介して軸方向に沿って延びる側壁部11cと、側壁部11cの下端開口を閉じる底壁部11dとを有する。側壁部11cは円筒状である。ただし実用的な範囲で凹凸を設けてもよい。側壁部11cの外径は、通常は40mm以下、33mm以上である。側壁部11cの内径は、内袋12の第1胴部12cや第2胴部12eの外径よりもわずかに、例えば2~10mm程度大きい。それにより同心状に収容したときの側壁部11cの内面と第1胴部12c、第2胴部12eの外面との隙間G1(直径同士の差の1/2)は、1~5mm程度である。その隙間G1は外部容器11内への内袋12の挿入に支障がない範囲で狭い方が好ましく、それにより外部容器11内での内袋12の姿勢が安定する。
【0033】
他方、側壁部11cの内面と筒部12d3の外面との隙間G2(直径同士の差の1/2)は8~16mm程度である。この隙間G2は大きい方が隙間空間S2の容積が大きくなるので好ましい。ただしブロー成形のしやすさや内容物の吐出後に扁平になりやすさを考慮する。外部容器11の端壁部11aは、カールするように折り曲げられたカール部であってもよい。端壁部11aにはバルブ13のマウンティングカップ13aがクリンチによって取り付けられる。
【0034】
外部容器11は、アルミニウム、アルミニウム合金、スチール等の金属材料又はポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂材料で形成されてもよい。本実施形態では、底壁部11d、側壁部11c、肩壁部11bおよび端壁部11aが一体に形成されている。例えば、インパクト成形、絞りしごき成形等により底壁部11dと側壁部11cが一体に形成された有底筒状の予備成形体を作り、この予備成形体の開口した側の一部分に二次成形を施して、肩壁部11bと端壁部11aを形成している。しかし、底壁部11d、側壁部11c、肩壁部11bから上方の3つの部分をそれぞれ別体で構成し、その後に一体に結合してもよく、隣接する2つの部分を一体とし、残りを別体で構成し、その後にこれらを結合してもよい。
【0035】
内袋12は、外部容器11の端壁部11aの開口から外部容器11内に挿入され、内袋12の底部12fを外部容器11の底壁部11dに当接させて立たせる。この状態において、内袋12のフランジ部12a1は、外部容器11の端壁部11aよりも軸方向上方に突出する。また、フランジ部12a1よりも軸方向下方に位置する首部12a2の全部又は一部を、端壁部11aよりも軸方向上方に突出させてもよい。
【0036】
内袋12に組み付けられるバルブ13は、外部容器11の端壁部11aに固着されるマウンティングカップ13aと、そのマウンティングカップ13aによって保持される、内容物を通過させる通路を開閉する吐出部13bとを備えている。マウンティングカップ13aは、吐出部13bを固着する中央壁部13cと、外壁部13dと、外壁部13dの上端から半径方向外向きに延びる縁壁部13eと、中央壁部13cと外壁部13dのそれぞれの下端を接続する横断壁部13fとを有する。
【0037】
バルブ13と内袋12とは、マウンティングカップ13aの外壁部13dが内袋12の開放端部12a内に挿入されることによって、仮に固定される。この状態において、加圧ガスが、内袋12の開放端部12aと外部容器11の端壁部11aとの隙間を介して、外部容器11と内袋12の間の隙間空間S2に充填される(アンダーカップ充填)。その後、マウンティングカップ13aの縁壁部13eが端壁部11aに被さる高さになるまで、バルブ13が軸方向下方に押しつけられる。このとき、内袋12のフランジ部12aの下方に位置するシール材14が端壁部11aに当接する。また、内袋12は軸方向に縮められる。この状態で、外壁部13dが部分的に外向きに突出するようにカシメ加工され、バルブ13と内袋12が外部容器11に固着される。
【0038】
内袋12の内部空間S1に収容される内容物は、バルブ13と内袋12が仮に固定される前又は後に、内部空間S1内に充填される。内袋12の内部空間S1の容積と、内袋12と外部容器11の間の隙間空間S2の容積との比率は、60:40とされているが、80:20~30:70としてもよく、75:25~55:45を許容される範囲としてもよい。通常の内袋であれば隙間空間を大きくしようとすると、内袋の胴部の径が小さくなるため、不安定になるが、本発明では隙間空間を大きくしても第1胴部および第2胴部の径を外部容器の内径とほぼ同等にできるので、安定して収容できる。
【0039】
本実施形態では、内袋12のフランジ部12a1の外径が第1胴部12cおよび第2胴部12eの外径よりも小さいので、フランジ部12a1の損傷が抑制される。また、第1胴部12cと第2胴部12eとが実質的に等しい外径を有するため、内袋12が容器の製造ライン等で移送される際に、内袋12の姿勢が安定する。また、内袋12の姿勢が安定することによって、フランジ部12a1の損傷が抑制される。そして第2縮径部12d2の傾斜角度θ3が小さいため、上端開口から内面を視認するとき、陰になる部位がない。したがって視認しやすい。
【0040】
(実施形態2)
図3に示す内袋12Aは、図2の内袋12と同様に、外部容器11内に収容して二重エアゾール容器として使用するものである(図1参照)。この内袋12Aでは、くびれ部12dの形状が図2の内袋12と異なる。すなわち第1縮径部12d1の上下寸法および傾斜角度θ2を第2縮径部12d2の上下寸法および傾斜角度θ3とほぼ同等にしている。また、各縮径部12d1、12d2の軸Jに対する傾斜角度θ2、θ3は、例えば10~20°程度である。筒部12d3の上下寸法は5~26mm程度と、図2の内袋12に比して長い。
【0041】
さらにくびれ部12dの第1縮径部12d1が、第1胴部12cに接続する屈曲部P2と、直線部T2と、筒部12d3に接続する屈曲部P3で構成される点において、図2の内袋12(実施形態1)と異なる。また、第2縮径部12d2が、曲線部(図2の符号R3)を有さず、第2胴部12eと接続する屈曲部P1と、直線部T1と、筒部12d3に接続する屈曲部P4で構成される点においても、実施形態1と異なる。
【0042】
また、図3の内袋12Aでは、底部12fに凹所(図2の符号12f3参照)を設けず、ピンチオフ部12f2が底部12fの下面から下方に突出している。この内袋12Aは金型構造が簡単であるため、ブロー成形しやすい。他の点は図2の内袋12と実質的に同一である。
【0043】
図3の内袋12Aにおいても、各胴部12c、12eの外径がフランジ部12a1の外径より大きい。そのため、図2の実施形態1と同様に、フランジ部12a1の損傷が抑制され、内袋12Aを移送する際に内袋12Aの姿勢が安定する。また、くびれ部12dを有するので、外部容器に収容したとき、外部容器と内袋12Aの胴部12c、12eの隙間が小さくても、外部容器と内袋12Aの間の隙間空間の容積が広く、加圧ガスの充填量を充分多くすることができる。
【0044】
図3の内袋12A(実施形態2)においては、軸Jを通過する縦断面視で、第2縮径部12d2の内面の上端及び軸Jを通過するように開放端部12aの内面に接する接線Lを引いたとき、第2縮径部12d2の内面が、接線L上に位置している。したがって図3の内袋12Aにおいても、図2の実施形態1と同様、開放端部12aの外側から、第2縮径部12d2、第2胴部12e及び底部12fの各内面を目視するのが容易である。なお、第2縮径部12d2の直線部T1の軸Jに対する角度θ3を接線Lの軸Jに対する角度より小さくすれば(T1a参照)、内袋12Aの内面を視認しやすい。逆に直線部T1の角度θ3を接線の角度より大きくすると(T1b参照)、開放端部12aから第2縮径部12d2の内面を視認できない。
【0045】
(実施形態3)
図4に示す内袋12B(実施形態3)では、くびれ部12dの第1縮径部12d1が、半径方向内向きに凸の曲線部分を備えておらず、半径方向外向きに凸の曲線部分R1のみで構成され、筒部12d3に接続する部分が屈曲部P3とされている点において、図2の内袋12(実施形態1)や図3の内袋12A(第2実施形態)と異なる。また、第2縮径部12d2も同様に、半径方向外向きに凸の曲線部分R3のみで構成され、筒部12d3と接続する部分が屈曲部P4とされている点において、実施形態1と異なる。
【0046】
図4の実施形態3においても、各胴部12c、12eの外径がフランジ部12a1の外径より大きい。そのため、図2の実施形態1、図3の実施形態2と同様に、フランジ部12a1の損傷が抑制され、内袋12Bを移送する際に内袋12Bの姿勢が安定する。また、くびれ部12dを有するので、外部容器に収容したとき、外部容器と内袋12Bの隙間空間の容積が広く、加圧ガスの充填量を充分多くすることができる。
【0047】
一方で、図4の内袋12B(実施形態3)は、開放端部12aの外側から、第2縮径部12d2、第2胴部12e及び底部12fの各内面の全体を目視することができるように構成されていない点において、実施形態1及び2と異なる。すなわち、実施形態3において、軸Jを通過する縦断面視で、第2縮径部12d2の内面の上端及び軸Jを通過するように開放端部12aの内面に接する接線Lを引いたとき、第2縮径部12d2の内面が、接線Lよりも半径方向外側に位置することになる。言い換えれば第2縮径部12d2の上端の軸Jに対する傾斜角度θ3が接線Lの軸Jに対する角度θ4より大きい。
【0048】
この場合は開放端部12aの外側から第2縮径部12d2の内面や第2胴部12eの上部を目視することができない。しかしフランジ部12a1の損傷が抑制され、内袋12Bを移送する際に内袋12Bの姿勢が安定するという効果は、実施形態1、実施形態2と同様に奏される。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形例を採用することができる。例えば図1の二重エアゾール容器10では、バルブ13の下端にディップチューブなどの筒状の流路部材を設けていないが、内容物によっては設けてもよい。図2の内袋12の第2縮径部12d2は、下部では直線状に延びているが、内側に向かって凸となるように緩やかに湾曲してもよく、外側に向かって凸となるように緩やかに湾曲してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 二重エアゾール容器
11 外部容器
11a 端壁部
11b 肩壁部
11c 側壁部
11d 底壁部
12、12A、12B 内袋
12a 開放端部
12a1 フランジ部
12a2 首部
12b 肩部
12c 第1胴部
12d くびれ部
12d1 第1縮径部
12d2 第2縮径部
12d3 筒部
R1、R2、R3 曲線部(曲線状に延びる部分)
P1、P2、P3、P4 屈曲部(屈曲した部分)
T1、T2、T1a、T1b 直線部(直線状に延びる部分:テーパ部)
12e 第2胴部
12f 底部
12f1 窄まり部
12f2 ピンチオフ部
12f3 凹所
S1 内部空間
S2 隙間空間
L 接線
J 軸
θ1 肩部の傾斜角度
θ2 第1縮径部の傾斜角度
θ3 第2縮径部の傾斜角度
θ4 接線の角度
13 バルブ
13a マウンティングカップ
13b 吐出部
13c 中央壁部
13d 外壁部
13e 縁壁部
13f 横断壁部
14 シール材
図1
図2
図3
図4