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特開2023-105664樹木管理システム、樹木管理システムの制御プログラムおよび樹木管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105664
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】樹木管理システム、樹木管理システムの制御プログラムおよび樹木管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/02 20060101AFI20230724BHJP
   A01G 23/00 20060101ALI20230724BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
G01B11/02 H
A01G23/00 551Z
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006634
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】592145268
【氏名又は名称】JR東日本コンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 順一
(72)【発明者】
【氏名】永石 憲道
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健二
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA21
2F065AA24
2F065AA51
2F065BB05
2F065DD06
2F065FF05
2F065JJ03
2F065JJ05
2F065JJ26
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065SS02
2F065SS13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】少労力化や短時間化等、管理を簡便化できる樹木管理技術を提供する。
【解決手段】樹木管理システムは、ステレオカメラ11と、ステレオカメラの位置を取得する位置取得手段13と、ステレオカメラの撮影方向を取得する方向取得手段14と、ステレオカメラによる撮影画像を表示する表示手段15と、ステレオカメラと位置取得手段と方向取得手段と表示手段に対し情報を入出力し、情報処理する制御手段16とを備える。ステレオカメラ11により対象となる樹木を撮影し、表示手段15に対象となる樹木の画像を表示し、画像における基準点を設定し、基準点に対応する樹木の箇所とステレオカメラとの撮影距離を推定し、ステレオカメラの位置とステレオカメラの撮影方向と撮影距離とに基づいて樹木位置を推定し、撮影距離と樹木の画像に基づいて樹木の寸法を推定し、樹木位置と樹木の寸法とを記録する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオカメラと、
前記ステレオカメラの位置を取得する位置取得手段と、
前記ステレオカメラの撮影方向を取得する方向取得手段と、
前記ステレオカメラによる撮影画像を表示する表示手段と、
前記ステレオカメラと位置取得手段と方向取得手段と表示手段に対し情報を入出力し、情報処理する制御手段と
を備えることを特徴とする樹木管理システム。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記表示手段に対象となる樹木の画像を表示する表示処理部と、
前記画像における基準点を設定する基準点設定処理部と、
前記基準点に対応する樹木の箇所とステレオカメラとの撮影距離を推定する撮影距離推定処理部と、
前記ステレオカメラの位置とステレオカメラの撮影方向と撮影距離とに基づいて樹木位置を推定する樹木位置推定処理部と、
前記撮影距離と樹木の画像に基づいて樹木の寸法を推定する樹木寸法推定処理部と
を有する
ことを特徴とする請求項1記載の樹木管理システム。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記画像において樹木相当箇所と背景箇所とに分けて樹木形状を抽出する形状抽出処理部
を有し、
前記樹木寸法推定処理部は、抽出された樹木形状に基づいて測定点を設定する
ことを特徴とする請求項2記載の樹木管理システム。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記画像における任意の画素を指定する画素指定処理部
を有し、
前記樹木寸法推定処理部は、指定された画素に基づいて測定点を設定する
ことを特徴とする請求項2記載の樹木管理システム。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記画像において測定点を微小移動させる測定点修正部
を有し、
前記樹木寸法推定処理部は、修正された測定点に基づいて樹木の寸法を推定する
ことを特徴とする請求項3または4記載の樹木管理システム。
【請求項6】
前記制御手段は、
日時取得部と記録部とを有し、
前記記録部は、樹木位置毎に、管理日時と樹木寸法を記録する
ことを特徴とする請求項1~5いずれか記載の樹木管理システム。
【請求項7】
前記樹木は、街路樹または公園樹または庭園樹である
ことを特徴とする請求項1~6いずれか記載の樹木管理システム。
【請求項8】
ステレオカメラと、
前記ステレオカメラの位置を取得する位置取得手段と、
前記ステレオカメラの撮影方向を取得する方向取得手段と、
前記ステレオカメラによる撮影画像を表示する表示手段と、
とを備えた樹木管理システムを制御するプログラムであって、
前記表示手段に対象となる樹木の画像を表示する表示処理と、
前記画像における基準点を設定する基準点設定処理と、
前記基準点に対応する樹木の箇所とステレオカメラとの撮影距離を推定する撮影距離推定処理と、
前記ステレオカメラの位置とステレオカメラの撮影方向と撮影距離とに基づいて樹木位置を推定する樹木位置推定処理と、
前記撮影距離と樹木の画像に基づいて樹木の寸法を推定する樹木寸法推定処理と
を実行する
ことを特徴とする樹木管理システムの制御プログラム。
【請求項9】
ステレオカメラと、
前記ステレオカメラの位置を取得する位置取得手段と、
前記ステレオカメラの撮影方向を取得する方向取得手段と、
前記ステレオカメラによる撮影画像を表示する表示手段と、
前記ステレオカメラと位置取得手段と方向取得手段と表示手段に対し情報を入出力し、情報処理する制御手段と
を備える樹木管理システムにより、
前記表示手段に対象となる樹木の画像を表示し、
前記画像における基準点を設定し、
前記基準点に対応する樹木の箇所とステレオカメラとの撮影距離を推定し、
前記ステレオカメラの位置とステレオカメラの撮影方向と撮影距離とに基づいて樹木位置を推定し、
前記撮影距離と樹木の画像に基づいて樹木の寸法を推定する
ことを特徴とする樹木管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木管理の技術に関し、特に街路または公園または庭園にある樹木の管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
街路樹または公園樹または庭園樹などの都市緑化樹木は、建物や橋などと同様、都市景観を形成する重要な要素である。また、都市緑化樹木は、木陰を提供しヒートアイランドを抑制する等、都市環境を構成する重要な要素でもある。一方、建物や橋などの経時変化は少ないのに対し、樹木は成長する。そのため、経時的管理が重要である。
【0003】
成長不足であれば成長を促進させる対策を取る必要があるし、成長過剰であるならば例えば、車両通行の障害になるおそれがある。したがって、樹木の状態等を経時的(例えば3年毎)に管理し、台帳に記録することが一般的である。当該台帳は都市再開発や周辺工事の際にも有用である。
【0004】
ところで、森林における樹木も管理されている。たとえば、森林における樹木総量を推定することにより、樹木による二酸化炭素の吸収量を推定することもできる。航空機にレーザー走査装置を搭載し、反射を取得することにより、三次元測定し、樹木形状を推定できる(例えば特許文献1)。他にも、地上に複数のレーザー走査装置を配置し、反射を取得することにより、三次元測定し、樹木形状を推定できる(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-111725号公報
【特許文献2】特許5844438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、都市緑化樹木と森林樹木とでは植樹の目的が異なり、管理の目的が若干異なる。具体的には、森林樹木の管理作業における計測は、「林業」としての木材生産量、木材材積の目安となる幹の太さと、太るため環境、受光のための適度な個体間隔の情報を取得することを目的としている。これに対し、都市緑化樹木の場合、整った、安定した樹形であることを示すための情報として、樹木形状(高さ、広がり、太さ)、加えてその配置、位置情報の取得を目的としている。したがって、森林における樹木管理をそのまま適用することは好ましくない。
【0007】
特に、都市緑化樹木は都市の一部であり、交通など都市活動の支障にならないように、樹木管理は簡便に行うことが好ましい。
【0008】
従来においては、複数の作業員により、ロープ、棹、測高器などによる寸法計測をし、計測結果を台帳に記入している。樹木位置は別途地図情報と照合する。一連の作業において、煩雑で非常に多くの労力が要される。たとえば、計測作業に2人、記帳作業に1人を要する。そのため、少労力化や短時間化等の簡便化が望まれている。
【0009】
本発明は上記課題を解決するものであり、都市緑化樹木等の管理に係る簡便な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は樹木管理システムであり、ステレオカメラと、前記ステレオカメラの位置を取得する位置取得手段と、前記ステレオカメラの撮影方向を取得する方向取得手段と、前記ステレオカメラによる撮影画像を表示する表示手段と、前記ステレオカメラと位置取得手段と方向取得手段と表示手段に対し情報を入出力し、情報処理する制御手段とを備える。
【0011】
ステレオカメラで対象樹木を撮影することで、樹木位置と樹木形状を推定する。従来管理と比べて簡便である。
【0012】
上記発明において好ましくは、前記制御手段は、前記表示手段に対象となる樹木の画像を表示する表示処理部と、前記画像における基準点を設定する基準点設定処理部と、前記基準点に対応する樹木の箇所とステレオカメラとの撮影距離を推定する撮影距離推定処理部と、前記ステレオカメラの位置とステレオカメラの撮影方向と撮影距離とに基づいて樹木位置を推定する樹木位置推定処理部と、前記撮影距離と樹木の画像に基づいて樹木の寸法を推定する樹木寸法推定処理部とを有する。
【0013】
これにより、撮影距離に基づいて樹木位置と樹木形状を推定できる。
【0014】
上記発明において好ましくは、前記制御手段は、前記画像において樹木相当箇所と背景箇所とに分けて樹木形状を抽出する形状抽出処理部を有し、前記樹木寸法推定処理部は、抽出された樹木形状に基づいて測定点を設定する。
【0015】
これにより、自動で測定点を設定できる。
【0016】
上記発明において好ましくは、前記画像における任意の画素を指定する画素指定処理部を有し、前記樹木寸法推定処理部は、指定された画素に基づいて測定点を設定する。
【0017】
これにより、自動設定が好ましくない場合は、手動で測定点を設定できる。
【0018】
上記発明において好ましくは、前記制御手段は、前記画像において測定点を微小移動させる測定点修正部を有し、前記樹木寸法推定処理部は、修正された測定点に基づいて樹木の寸法を推定する。
【0019】
これにより、不測の不具合が起きた場合でも、測定点を設定できる。
【0020】
上記発明において好ましくは、前記制御手段は、日時取得部と記録部とを有し、前記記録部は、樹木位置毎に、管理日時と樹木寸法を記録する。
【0021】
これにより、ステレオカメラでの対象樹木撮影により、台帳作成できる。
【0022】
上記課題を解決する本発明は樹木管理システムの制御プログラムである。樹木管理システムは、ステレオカメラと、前記ステレオカメラの位置を取得する位置取得手段と、前記ステレオカメラの撮影方向を取得する方向取得手段と、前記ステレオカメラによる撮影画像を表示する表示手段とを備える。制御プログラムは、前記表示手段に対象となる樹木の画像を表示する表示処理と、前記画像における基準点を設定する基準点設定処理と、前記基準点に対応する樹木の箇所とステレオカメラとの撮影距離を推定する撮影距離推定処理と、前記ステレオカメラの位置とステレオカメラの撮影方向と撮影距離とに基づいて樹木位置を推定する樹木位置推定処理と、前記撮影距離と樹木の画像に基づいて樹木の寸法を推定する樹木寸法推定処理とを実行する。
【0023】
ステレオカメラで対象樹木を撮影することで、樹木位置と樹木形状を推定する。従来管理と比べて簡便である。
【0024】
上記課題を解決する本発明は樹木管理システムによる樹木管理方法である。樹木管理システムは、ステレオカメラと、前記ステレオカメラの位置を取得する位置取得手段と、前記ステレオカメラの撮影方向を取得する方向取得手段と、前記ステレオカメラによる撮影画像を表示する表示手段と、前記ステレオカメラと位置取得手段と方向取得手段と表示手段に対し情報を入出力し、情報処理する制御手段とを備える。前記ステレオカメラにより対象樹木を撮影し、前記表示手段に対象となる樹木の画像を表示し、前記画像における基準点を設定し、前記基準点に対応する樹木の箇所とステレオカメラとの撮影距離を推定し、前記ステレオカメラの位置とステレオカメラの撮影方向と撮影距離とに基づいて樹木位置を推定し、前記撮影距離と樹木の画像に基づいて樹木の寸法を推定する。
【0025】
ステレオカメラで対象樹木を撮影することで、樹木位置と樹木形状を推定する。従来管理と比べて簡便である。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る技術によれば、少労力化や短時間化等、管理を簡便化できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】概略システム構成図
図2】機能ブロック図
図3】制御フロー図
図4】実用例イメージ図
図5】表示画面例イメージ図
図6】仮想面設定イメージ図
図7】測定点設定イメージ図
図8】水平幅推定イメージ図
図9】測定点修正例イメージ図
図10】測定点修正例イメージ図
【発明を実施するための形態】
【0028】
~基本構成~
図1は、本実施形態に係る概略構成図である。本システムはステレオカメラ11とスマートフォン、タブレット型端末またはノート型コンピュータ等の携帯端末12とから構成される。
【0029】
市販されている携帯端末12は、標準としてGPSセンサ13、磁気センサ14、表示ディスプレイ15、CPU等の演算機能16、記憶機能(記録機能)17、通信機能18、日時取得機能(図示省略)を備えている。
【0030】
市販されている携帯端末12は一つの装置に上記機能13~18を備えており、廉価で実用可能であり好適であるが、上記機能13~18は別個独立の装置でもよい。
【0031】
ステレオカメラ11を携帯端末12の入出力ポートに接続することにより一体となる。なお、出願時点において、接続するステレオカメラ11が搭載されている市販の携帯端末は少ないが、携帯端末12にステレオカメラ11が搭載されていてもよい。
【0032】
ステレオカメラ11は、左右に並べられた2台のカメラの視差情報により撮影対象の奥行き情報(撮影距離)を得ることができる。
【0033】
GPSセンサ13は、人工衛星(GPS衛星)から送信される電波を受信し、カメラ位置(緯度経度)を特定する。磁気センサ14は、磁力を検知して撮影方向(方角)を特定する。
【0034】
他に、携帯端末12はジャイロセンサを備えている。これにより、撮影方向(仰角)を特定してもよい。なお、本願説明を簡略化するために、撮影仰角はないものと仮定する。
【0035】
表示ディスプレイ15はステレオカメラ11からの合成画像や操作パネル等を表示する。また、タッチパネルやカーソル表示等により入力装置としても機能する。なお、入力装置は別途設けてもよい。
【0036】
演算機能16はステレオカメラ11、GPSセンサ13、磁気センサ14、表示ディスプレイ15、記憶機能17、通信機能18に対し情報を入出力し、情報処理する。すなわち制御装置である。
【0037】
記録機能17は、演算機能16による所定の演算結果を記録する。また、演算機能16の処理は記録機能17に格納されているプログラムにより実行される。
【0038】
演算機能16や記録機能17の一部は、通信機能18やネットワークを介して、サーバ19にあってもよい。通信せず、携帯端末12のみで処理してもよい。
【0039】
~動作および制御概略~
図2は、本実施形態に係る制御装置16の機能ブロック図であり、図3は演算機能16が実行する各処理の制御フロー図である。本願動作を制御とともに説明する。
【0040】
制御装置16は、表示処理部21と、基準点設定処理部22と、撮影距離推定処理部23と、樹木位置推定処理部24と、樹木寸法推定処理部25と、記録部26とを有する。
【0041】
図4はシステム実用例のイメージ図である。図5は表示ディスプレイ15における表示画面例のイメージ図である。対象となる樹木を撮影できる位置にステレオカメラ11を配置し、樹木を撮影する(ステップS1)。ステレオカメラ11による撮影画像は表示処理部21により表示ディスプレイ15に表示される(ステップS2)。対象樹木の全景が入るように、かつ、過度に小さくならないように、撮影位置を調整する。
【0042】
図6は仮想面設定に係るイメージ図である。
【0043】
ところで、街路樹または公園樹または庭園樹などの都市緑化樹木は、森林等の樹木に比べて樹木形状が一定しており、胸高(地表から1.2m付近)における幹を目視できることが多い。本システムでは、一例として、当該位置を基準点とする。
【0044】
具体的には、表示画面にカーソル表示しておき、当該カーソル位置と基準点が一致する様に、ステレオカメラ11を調整する。または、カーソルを基準点に移動させてもよい。基準点設定処理部22は樹木の基準点と画像上の基準点を関連付ける(ステップS3)。基準点を含み撮影方向と直交する仮想面を設定する。
【0045】
なお、樹木寸法推定(後述)により得られた胸高位置に基準点を再設定したり、樹木寸法推定により得られた幹半径を考慮して基準点を再設定したりしてもよい。
【0046】
撮影距離推定処理部23は、ステレオカメラ11の原理に基づき、基準点とステレオカメラとの撮影距離を推定する(ステップS4)。
【0047】
樹木位置推定処理部24は、GPSセンサ13を介してカメラ位置情報を入力し(ステップS5)、磁気センサ14を介して撮影方向情報を入力する(ステップS6)。さらに、撮影距離推定処理部23から撮影距離を入力し、カメラ位置、撮影方向、撮影距離に基づいて樹木位置(たとえば、緯度経度)を推定する(ステップS7)。
【0048】
樹木寸法推定処理部25は、設定された測定点(ステップS8)とステレオカメラ11による撮影画像に基づいて樹木の寸法を推定する(ステップS9)。詳細は別途後述する。
【0049】
記録部26は、樹木位置推定処理部24による位置情報と樹木寸法推定処理部25による形状情報を入力し、記録装置17に出力する(ステップS10)。
【0050】
~樹木寸法推定~
図7は測定点設定に係るイメージ図である。従来台帳では樹木形状について、樹高、枝張、枝下高、幹周長(あるいは胸高直径)について管理している。本願システムでも従来台帳同様の管理を行う。
【0051】
ステレオカメラ11による画像情報では撮影距離の差によるセマンテックセグメンテーションに基づき、背景画像から対象樹木領域を抽出することができる。一般に対象樹木領域は、下部の比較的細い枝下(幹)と上部の略三角形の樹冠とから構成される。そのため、比較的抽出が容易である。背景画像から人物等被写体を抽出する既存技術を転用して対象樹木領域を抽出してもよい。
【0052】
樹木寸法推定処理部25は測点設定部を有する。樹冠最上部と幹最下部とを測定点と設定し、測定点間距離を樹高とする。樹冠水平最大幅となる左右の測定点を設定し、測定点間距離を枝張とする。枝張には東西方向と南北方向とがあるが少なくともどちらか一方を選択する。樹冠最下部と幹最下部とを測定点と設定し、測定点間距離を枝下高とする。幹胸高水平幅となる左右の測定点を設定し、測定点間距離を胸高直径とする。さらに、胸高直径に円周率を乗じて幹周長とする。
【0053】
測定点設定は対象樹木領域から自動抽出してもよい。また、表示ディスプレイ15を介して例えばタッチパネルで各測定点を手動設定してもよい。タッチパネルを介して指定された箇所に対応する画素を測定点とする。
【0054】
さらに、樹木寸法推定処理部25は測定点修正部を有していてもよい。具体的には、修正対象の測定点を選択し、表示ディスプレイ15に表示される操作パネル(例えば<>アイコン)により、微小移動させる(詳細後述)。自動抽出した測定点を微小移動させてもよい。
【0055】
図8は、枝張寸法(水平幅)推定に係るイメージ図である。枝張寸法の左右の測定点は仮想面上にあるものとする。
【0056】
樹木寸法推定処理部25は、カメラ11から左測定点へ向かう線の為す角度およびカメラ11から右測定点へ向かう線の為す角度を取得する。さらに、撮影距離推定処理部23から撮影距離を入力し、幾何学的関係から左右の測定点間距離を推定する。
【0057】
もしくは、樹木位置推定処理部24の処理(ステップS7)と同様に、左右の測定点の位置(たとえば、緯度経度)を推定し、左右の測定点の位置関係から測定点間距離を推定してもよい。
【0058】
樹木寸法推定処理部25は、枝張寸法と画像情報における画素数とを対応付け、樹高に対応する画素数から樹高を推定する。同様に、枝下高に対応する画素数から枝下高を推定する。
【0059】
樹木寸法推定処理部25は、枝張寸法を推定したのと同様に、幾何学的関係から胸高直径を推定してもよいし、樹高や枝下高を推定したのと同様に、画素数との対応付けに基づいて胸高直径を推定してもよい。さらに、胸高直径に円周率を乗じて幹周長を推定する。
【0060】
なお、街路樹または公園樹または庭園樹は人工的であり、天然の樹木に比べると形状が複雑でなく、樹木間の距離は確保されており、上記により樹木寸法は推定容易である。
【0061】
~測定点修正~
図9は樹木寸法推定処理部25における測定点修正例のイメージ図である。一般に針葉樹は真っ直ぐ伸び円錐形の樹形になることが多く、広葉樹は枝分かれして丸く膨らむような樹形となることが多い。その結果、針葉樹では樹冠最上部を目視可能であるが、広葉樹では樹冠最上部を目視できないおそれがある。
【0062】
本システムにおいては、仮想面を設定して樹高を推測しているため、画像の対象樹木領域最上部を測点とした場合、過大評価となるおそれがある。測定者の推測により、上側測点を下方に微小移動させる。これにより、過大評価を抑制できる。
【0063】
図10は樹木寸法推定処理部25における別の測定点修正例のイメージ図である。
【0064】
原則として樹木撮影は樹木全景を取得できるように配置することに留意する。特に、周りに低木等がある場合は、幹最下部を目視できるような配置とする。一方で、諸事情にて幹最下部を目視できないおそれもある。
【0065】
本システムにおいては、仮想面を設定して樹高を推測しているため、画像の対象樹木領域最下部を測点とした場合、過小評価となるおそれがある。測定者の推測により、下側測点を下方に微小移動させる。これにより、過小評価を抑制できる。
【0066】
なお、測点修正の旨を記録装置17に記録しておき、次回管理時には前回修正した旨を警告する。さらに、前回の測定点微小移動幅も通知する。これにより、測定者の違いによる揺らぎを抑制できる。
【0067】
また、別の修正手段を備えていてもよい。例えば、表示処理部21は動画対応とする。すなわち、単位時間において複数の撮影画像を取得できる。樹木が振動したとき、複数の撮影画像のなかから最も高い樹冠最上部である撮影画像を選択し、当該画像に基づいて樹高を推測する。これにより推定精度が向上する。このとき、別の作業員により樹木を加振してもよい。
【0068】
~台帳~
作業員がカメラ撮影をすることにより、管理日時、樹木の位置情報、形状情報、撮影画像が自動的に記録される。位置情報毎に樹木登録番号を付与する。さらに、作業員は、樹木の病気の有無、生育状況、剪定実施等のメモを記入することもできる。
【0069】
実質的な作業は作業員がカメラ撮影をするのみである。作業員は、好適な撮影位置を判断し、一の樹木の撮影を終えたら、次の樹木の撮影を繰り返し、複数の街路樹または公園樹または庭園樹を撮影する。このとき、別途地図データベースと連動させ樹木の位置情報と地図情報を照合してもよい。
【0070】
上記一連の作業により、記録装置17には自動的に台帳が形成される。管理台帳は、一覧表示としてもよいし、地図表示してもよい。
【0071】
上記使用例では作業員が各樹木を撮影することを前提としているが、可能であれば、本システムを自律走行可能な車両や自律飛行可能なドローンに搭載してもよい。
【0072】
経時的(例えば3年毎)に管理することで、管理時毎の形状情報や撮影画像を比較して、樹木の経時変化を確認することができる。記録装置17の容量が少ない場合は、前回管理データに上書きデータ更新してもよい。
【0073】
ところで、街路樹のうち並木は特に統一美が重要視される。本願台帳によれば、各樹木の位置、樹高、枝下高、枝張を再現できる。これにより、並木の統一性を確認できる。また、並木の樹間は、適度な緑量を確保できるように定められている。想定以上に樹木が成長すると、逆に都市景観を損なう。本願台帳によれば、道路景観と並木を合わせて再現でき、調和のとれた都市景観が形成できているか確認できる。
【0074】
~効果~
従来作業では、樹木位置計測、樹木寸法計測、カメラ撮影、台帳記入と複数の作業となるのに対し、本システムでは、カメラ撮影のみにより樹木位置推定、樹木寸法推定、台帳作成がされる。樹木位置推定精度および樹木寸法推定精度は、従来計測と同程度であることを実証済みである。すなわち、樹木管理として所定の目的を達するのに十分な精度を有する。
【0075】
その結果、本システムによれば、少労力化や短時間化等の簡便化を図ることができる。たとえば、現在、最少人数1人から運用可能である。将来的には無人化も可能である。
【符号の説明】
【0076】
11 ステレオカメラ
12 携帯端末
13 GPSセンサ
14 磁気センサ
15 表示ディスプレイ
16 演算機能(制御装置)
17 記憶機能(記録装置)
18 通信機能
19 外部サーバ
21 表示処理部
22 基準点設定処理部
23 撮影距離推定処理部
24 樹木位置推定処理部
25 樹木寸法推定処理部
26 記録部
図1
図2
図3
図4
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図10