(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010568
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】洗浄料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/36 20060101AFI20230113BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230113BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230113BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230113BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20230113BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
A61K8/36
A61Q19/10
A61K8/19
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064016
(22)【出願日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2021113597
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】栗延 理絵
(72)【発明者】
【氏名】中野 新一郎
(72)【発明者】
【氏名】菅原 明日香
(72)【発明者】
【氏名】三谷 陽香
(72)【発明者】
【氏名】ファレンティナ ステファニー
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB031
4C083AB032
4C083AB332
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC402
4C083AD042
4C083AD111
4C083AD112
4C083BB43
4C083CC23
4C083DD08
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE03
(57)【要約】
【課題】製造時および保存時における増粘が小さい洗浄料の提供。
【解決手段】(A)炭素数12~18の高級脂肪酸、(B)中和剤、(C)多価アルコール(D)特定のポリオキシプロピレングリセリルエーテル、および(E)水
を必須成分として含む洗浄料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数12~18の高級脂肪酸、
(B)中和剤、
(C)多価アルコール
(D)式(I):
【化1】
(式中、
POはプロピレンオキシドであり、
nは1~20であり、
xおよびzは、それぞれ独立に1以上の数であり、
yは0以上の数であり
式中に含まれるプロピレンオキシドの総数は5~80である)
で表されるポリオキシプロピレングリセリルエーテル、および
(E)水
を含む洗浄料。
【請求項2】
前記高級脂肪酸と前記中和剤の合計含有率が、前記洗浄料の総質量を基準として25~60質量%である、請求項1に記載の洗浄料。
【請求項3】
前記中和剤が、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムである、請求項1または2に記載の洗浄料。
【請求項4】
前記多価アルコールの含有率が、前記洗浄料の総質量を基準として10~40質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄料。
【請求項5】
前記多価アルコールが、グリセリンまたはジプロピレングリコールである、請求項1~4のいずれか1項に記載の洗浄料。
【請求項6】
前記ポリオキシプロピレングリセリルエーテルの含有率が、前記洗浄料の総質量を基準として0.01~5質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の洗浄料。
【請求項7】
前記洗浄料100gに含まれるプロピレンオキシドの総数が、5×10-4~5×10-2モルである、請求項1~6のいずれか1項に記載の洗浄料。
【請求項8】
前記nが1~10である、請求項1~7のいずれか1項に記載の洗浄料。
【請求項9】
前記ポリオキシプロピレングリセリルエーテルが、下記式(I-1)~(I-3):
【化2】
のいずれかである、請求項1~8のいずれか1項に記載の洗浄料。
【請求項10】
皮膚洗浄料である、請求項1~9のいずれか1項に記載の洗浄料。
【請求項11】
洗顔フォームである、請求項1~10のいずれか1項に記載の洗浄料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗顔に適した洗浄料に関するものである。さらに詳しくは、優れた洗浄力を発揮できるとともに、経時安定性や使用性にも優れた洗浄料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗顔等に用いられる洗浄料には、洗浄力と起泡性の観点から高級脂肪酸石鹸が配合されることが多い。特に洗顔フォームなどに用いられる洗浄料には、きめ細かい泡が望ましく、それを実現するためには高級脂肪酸が好ましく用いられる。ところが、本発明者らの検討によれば、高級脂肪酸を含む洗浄料において、その洗浄性能を向上させ、あるいは肌に接触させたときの刺激を抑制するために、高級脂肪酸を中和すると、洗浄料が増粘する傾向にあることがわかった。このような増粘は、製造時における製造効率を下げる要因になることがある。さらには、中和された高級脂肪酸を含む洗浄料を高温条件下で保存した場合、あるいは低温条件下に長期間保存した場合にも増粘して、使用性が低下することもある。特に洗顔用途を目的とする洗浄料においては、皮膚に接触させたときの使用感覚が重視されるので、不必要な増粘は避けることが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、上記課題に鑑みて、優れた使用性を与え、かつ製造時、高温下保存時、低温か保存時のいずれにおいても増粘が抑制された洗浄料を提供するものである。
【0004】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] (A)炭素数12~18の高級脂肪酸、
(B)中和剤、
(C)多価アルコール
(D)式(I):
【化1】
(式中、
POはプロピレンオキシドであり、
nは1~20であり、
xおよびzは、それぞれ独立に1以上の数であり、
yは0以上の数であり
式中に含まれるプロピレンオキシドの総数は5~80である)
で表されるポリオキシプロピレングリセリルエーテル、および
(E)水
を含む洗浄料。
[2] 前記高級脂肪酸と前記中和剤の合計含有率が、前記洗浄料の総質量を基準として25~60質量%である、[1]に記載の洗浄料。
[3] 前記中和剤が、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムである、[1]または[2]に記載の洗浄料。
[4] 前記多価アルコールの含有率が、前記洗浄料の総質量を基準として10~40質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の洗浄料。
[5] 前記多価アルコールが、グリセリンまたはジプロピレングリコールである、[1]~[4]のいずれか1項に記載の洗浄料。
[6] 前記ポリオキシプロピレングリセリルエーテルの含有率が、前記洗浄料の総質量を基準として0.01~5質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の洗浄料。
[7] 前記洗浄料100gに含まれるプロピレンオキシドの総数が、5×10
-4~5×10
-2モルである、[1]~[6]のいずれかに記載の洗浄料。
[8] 前記nが1~10である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の洗浄料。
[9] 前記ポリオキシプロピレングリセリルエーテルが、下記式(I-1)~(I-3):
【化2】
のいずれかである、[1]~[6]のいずれかに記載の洗浄料。
[10] 皮膚洗浄料である、[1]~[9]のいずれかに記載の洗浄料。
[11] 洗顔フォームである、[1]~[10]のいずれかに記載の洗浄料。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、製造時における生産効率が高く、また消費者の取り扱い時には保存安定性に優れ、優れた使用性が長期間にわたって保持できる洗浄料が提供される。
【発明の具体的説明】
【0006】
本発明による洗浄料は、
(A)炭素数12~18の高級脂肪酸、
(B)中和剤、
(C)多価アルコール
(D)特定のポリオキシプロピレングリセリルエーテル、および
(E)水
を必須成分として含むものである。
【0007】
[(A)高級脂肪酸]
本発明に用いることができる高級脂肪酸は、洗浄料材料として一般的に用いられている高級脂肪酸から選択することができる。そして、本発明において高級脂肪酸は、炭素数12~18の脂肪酸であり、直鎖、分枝、飽和、不飽和のいずれであってもよい。また、一塩基酸であっても多塩基酸であってもよいが、多塩基酸の塩は水溶性が高い傾向にあるが、洗浄力が低くなることもあるので、一塩基酸を用いることが好ましい。
【0008】
用いられる高級脂肪酸としては、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、およびイソステアリン酸を挙げることができる、これらの2種以上の組み合わせを使用することも出来る。例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、またはステアリン酸のうちの2種類以上を組み合わせて使用することができ、これら4種の高級脂肪酸をすべて用いることも好ましい
【0009】
[(B)中和剤]
高級脂肪酸は、製造過程において中和剤によって中和される。中和剤として用いられるアルカリとしては、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等の無機アルカリ、トリエタノールアミン等の有機アルカリ、リジンやアルギニン等の塩基性アミノ酸を挙げることが出来る。これらのアルカリのうち、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムが好ましく、水酸化カリウムがより好ましい。
【0010】
本発明による化粧料は、高級脂肪酸と中和剤を含む。その結果、洗浄料中には高級脂肪酸の塩が含まれる。中和によって形成される高級脂肪酸の塩としては、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウムを使用することが好ましく、これら4種の高級脂肪酸塩全て含有することも好ましい。
【0011】
本発明による化粧料において、高級脂肪酸は完全に中和される必要は無い。むしろ、完全に中和されるのではなく、生成物は未反応の高級脂肪酸も含んでいることが好ましい。具体的には、高級脂肪酸の中和率は60~90モル%であることが好ましい。この場合、高級脂肪酸のうち60~90モル%が高級脂肪酸アルカリ塩となり、残りの10~40モル%が高級脂肪酸として存在する。特に中和率は、目的とする化粧料が目的に応じて適切なpHとなるように、例えば75~80モル%、または80~90%であることが好ましい。
【0012】
なお、本発明による化粧料は、高級脂肪酸と中和剤との組み合わせを含むものであるが、高級脂肪酸の塩と、高級脂肪酸との組み合わせを用いることもできる。さらには、高級脂肪酸塩に代えて、高級脂肪酸エステルのケン化物を、それらの一部または全部として用いることもできる。これらの場合、洗浄料に含まれる高級脂肪酸基と、アルカリとの割合が上記の範囲内になることが好ましい。
【0013】
本発明による洗浄料において、上記した高級脂肪酸と中和剤と洗浄効果をもたらす主成分となる。優れた洗浄効果を達成するために、高級脂肪酸と中和剤との合計含有率が、洗浄料の総質量を基準として25~60質量%であることが好ましく、25~35質量%であることがより好ましい。
【0014】
[(C)多価アルコール]
本発明による洗浄料は、多価アルコールを含む。多価アルコールは、一般に、洗浄料に保湿効果などを付与することができるものである。本発明においては、保湿効果の他に、化粧料の安定性を改良する効果も発現する。
【0015】
多価アルコールとしては、一般的に洗浄料に用いることができるものから任意に選択して用いることができる。具体的には、
2価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等);
3価のアルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等);
4価アルコール(例えば、1,2,6-ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等);
5価アルコール(例えば、キシリトール等);
6価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール等);および
多価アルコール重合体(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン等)
などが挙げられる。そのほか、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールエーテルエステル、糖アルコールなどを用いることもできる。これらのうち、グリセリンまたはジプロピレングリコールが好ましい。また、これらの多価アルコールは2シュル以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
本発明による化粧料の多価アルコールの含有率は、特に限定されないが、洗浄料の総質量を基準として10~40質量%であることが好ましく、20~30質量%であることがより好ましい。多価アルコールをこのような範囲内とすることで、化粧料の安定性が改良され、また高い保湿効果も実現できる。
【0017】
[(D)特定のポリオキシプロピレングリセリルエーテル]
本発明による洗浄料は、特定のポリオキシプロピレングリセリルエーテルを含む。この成分は、高級脂肪酸と中和剤とを用いることによって起きやすい、洗浄料の高粘度化を抑制し、製造時の製造効率の改善と、洗浄料の保存安定性の改善に寄与するものである。このポリオキシプロピレングリセリルエーテルは、(D)式(I):
【化3】
(式中、
POはプロピレンオキシドであり、
nは1~20であり、
xおよびzは、それぞれ独立に1以上の数であり、
yは0以上の数であり
式中に含まれるプロピレンオキシドの総数は5~80である)
で表されるものである。すなわち、この成分は、ポリオキシプロピレンモノグリセリルエーテル(n=1)またはポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル(n≧2)である。ここで、nは1~20であるが、1~10であることが好ましい。この成分はプロピレンオキシド構造を有するが、類似するエチレンオキシド構造を有する化合物に比較すると、顕著に優れた効果を奏する。
【0018】
このようなポリオキシプロピレングリセリルエーテルとして、具体的には下記式(I-1)~(I-3)のものが好ましい。
【化4】
【0019】
なお、これらのポリオキシプロピレングリセリルエーテルは、
(I-1) PPG-70グリセリル (分子量:4152)
(I-2) PPG-70ポリグリセリル-10 (分子量:4818)
(I-3) PPG-9ジグリセリル (分子量:656)
とも呼ばれる。
【0020】
本発明による洗浄料において、ポリオキシプロピレングリセリルエーテルの含有率は特に限定されないが、洗浄料の総質量を基準として0.01~5質量%であることが好ましく、0.05~2質量%であることがより好ましい。また、洗浄料100gに含まれるプロピレンオキシドの総数が、5×10-4~5×10-2モルであることが好ましい。このような含有率でポリオキシプロピレングリセリルエーテルを含有することで、洗浄料を製造するときの増粘や、洗浄料の経時による増粘を効果的に抑制することができる。
【0021】
[(E)水]
本発明による洗浄料は、上記の成分に加えて、更に水を含む。水としては、一般的に洗浄料に使用される水を使用することができ、例えば、精製水、イオン交換水、水道水等を使用することができる。
[その他の成分]
【0022】
本発明の洗浄剤組成物は、上記成分に加えて、目的に応じて本発明の効果を損なわない範囲でその他の任意成分を含むことができる。そのような任意成分としては、多糖類、薬剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、香料、タンパク質誘導体など、洗浄剤組成物に一般に配合される成分が挙げられる。
【0023】
多糖類としては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸およびこれらの塩類が挙げられる。
【0024】
薬剤としては、ビタミンC類、ビタミンE類、アミノ酸類、生薬、抗炎症剤、殺菌剤等の化粧品に汎用される薬剤を配合することができる。
その他の界面活性剤としては、一般に化粧品に配合されるものならいずれも用いることができ、例えばカチオン性界面活性剤、親油性非イオン性界面活性剤、親水性非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0025】
本発明による洗浄料の使用形態は特に限定されないが、ヒトの肌に適用したときの感触に優れ、また皮膚の清浄効果も高いため、特にヒトの皮膚洗浄料として好適である。また、剤型も限定されるものではないが、クリーム状、ゲル状などの剤型であり、使用に際して泡立てて用いるものが好ましい。典型的には洗顔フォームの剤型であることが好ましい。ただし、本発明による洗浄料はこのような剤型や使用形態に限定されず、その他の溶液状、乳剤状などの任意の剤型を採用してもよく、また使用形態も、例えばヘアシャンプー、リンスインシャンプー、ボディソープ等に用いることもできる。
【実施例0026】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。含有率は特記しない限り、質量%で示す。
【0027】
[実施例1~6および比較例1~5]
表1に示される配合で、実施例1~6および比較例1~5の洗浄料を調製した。ポリオキシプロピレングリセリルエーテルとしては、上記した式(I-1)~(I-3)の化合物を用いた。また、比較としてポリオキシエチレンを含む化合物(ジイソステアリン酸PEG-8、およびオレス-5)を用いた。
【0028】
さらに、これら洗浄料の性能について、以下の基準で評価を行った。
[中和時製造性]
洗浄料を調製において、高級脂肪酸を中和剤で中和した後の攪拌状況を以下の水準で評価した。
A: 容易に攪拌可能
B: かろうじて攪拌可能
C: 攪拌不可能
【0029】
[安定性(高温時)]
調製した洗浄料を-5℃で4週間保持した後、洗浄料の状態を評価した。
A:凝集が認められない
B:凝集が認められる
【0030】
[安定性(低温時)]
調製した洗浄料を40℃で4週間保持した後、洗浄料を泡立て、皮膚に付着した後の状態を評価した。
A:垂れ落ちなし
B:垂れ落ちないが外観異常あり
C:垂れ落ちる
【0031】