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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010569
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】鋼管杭用ビット
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/28 20060101AFI20230113BHJP
   E02D 5/56 20060101ALI20230113BHJP
   E02D 5/72 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
E02D5/28
E02D5/56
E02D5/72
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071851
(22)【出願日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2021113353
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504125964
【氏名又は名称】菅野 雅浩
(71)【出願人】
【識別番号】519111246
【氏名又は名称】株式会社未来考行
(71)【出願人】
【識別番号】521068301
【氏名又は名称】合同会社エムパワー
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】菅野 雅浩
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA04
2D041BA11
2D041BA35
2D041CA05
2D041DB02
(57)【要約】
【課題】地盤に埋設された鋼管杭による支持力を大きくすることができる鋼管杭用ビットを得る。
【解決手段】鋼管杭用ビットにおいて、複数のビット部材2,3,4のそれぞれは、ビット筒状部21,31,41と、ビット筒状部21,31,41の外周部に設けられたビット羽根部22,32,42とを有している。ビット組立体1では、複数のビット筒状部21,31,41が軸線Aに沿った方向へ並ぶことにより筒状組立部5が形成されており、複数のビット羽根部22,32,42が螺旋状に並ぶことにより螺旋羽根組立部6が形成されている。筒状組立部5の内部に鋼管杭10が挿入された状態で、筒状組立部5の接合側端部52が鋼管杭10に接合される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を持つビット組立体
を備え、
前記ビット組立体は、複数のビット部材を有しており、
前記複数のビット部材は、互いに別部材となっているとともに、前記軸線に沿った方向へ並んで組み合わされており、
前記複数のビット部材のそれぞれは、ビット筒状部と、前記ビット筒状部の外周部に設けられたビット羽根部とを有しており、
前記ビット組立体では、複数の前記ビット筒状部が前記軸線に沿った方向へ並ぶことにより筒状組立部が形成されているとともに、複数の前記ビット羽根部が螺旋状に並ぶことにより螺旋羽根組立部が形成されており、
前記筒状組立部の一端部には、ビット先端部が設けられており、
前記筒状組立部の他端部は、接合側端部となっており、
前記接合側端部から前記ビット先端部に向けて前記筒状組立部の内部に鋼管杭が挿入された状態で、前記接合側端部が前記鋼管杭に接合される鋼管杭用ビット。
【請求項2】
前記ビット組立体において互いに隣り合う2つの前記ビット部材の間には、少なくとも1つの嵌合部が設けられており、
前記嵌合部は、一方の前記ビット部材から突出している凸部と、他方の前記ビット部材に形成され、前記凸部が嵌っている凹部とを有している請求項1に記載の鋼管杭用ビット。
【請求項3】
前記ビット先端部には、前記ビット先端部から前記筒状組立部の内部へ突出している突出部が設けられており、
前記突出部には、前記鋼管杭の端部の内周部を受ける受け面が形成されており、
前記受け面は、前記筒状組立部の内部から前記ビット先端部に向かって前記軸線から離れる方向へ前記軸線に対して傾斜している請求項1又は請求項2に記載の鋼管杭用ビット。
【請求項4】
前記鋼管杭の内周面に固定された突起部材
を備え、
前記ビット先端部には、前記ビット先端部から前記筒状組立部の内部へ突出している突出部が設けられており、
前記突出部には、前記突起部材が挿入される窪み部が形成されている請求項1又は請求項2に記載の鋼管杭用ビット。
【請求項5】
前記鋼管杭の内周面に固定された杭内固定部材
を備え、
前記杭内固定部材は、前記鋼管杭の周方向における互いに異なる位置で前記鋼管杭の内周面に固定された複数の固定端部と、前記複数の固定端部に繋がっている連結部とを有しており、
前記ビット先端部には、前記ビット先端部から前記筒状組立部の内部へ突出している突出部が設けられており、
前記突出部には、前記杭内固定部材が挿入される窪み部が形成されている請求項1又は請求項2に記載の鋼管杭用ビット。
【請求項6】
前記接合側端部の内周部には、開先用斜面が前記接合側端部の全周にわたって形成されており、
前記開先用斜面は、前記筒状組立部の内部から前記接合側端部の外側に向かって前記軸線から離れる方向へ前記軸線に対して傾斜しており、
前記鋼管杭が前記筒状組立部の内部に挿入されることにより、前記鋼管杭の外周面と前記開先用斜面との間に溶接用の開先が形成される請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の鋼管杭用ビット。
【請求項7】
前記軸線に沿った方向における前記螺旋羽根組立部の螺旋ピッチは、前記螺旋羽根組立部において前記接合側端部に近い箇所ほど大きくなっている請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の鋼管杭用ビット。
【請求項8】
前記筒状組立部において互いに隣り合う2つの前記ビット筒状部は、筒状の胴部と、前記胴部に設けられた境界側端部とを有しており、
前記2つのビット筒状部のそれぞれの前記境界側端部は、前記2つのビット筒状部の境界を挟んで配置されており、
前記境界側端部の肉厚は、前記胴部の肉厚よりも厚くなっており、
前記境界側端部の内周部は、前記胴部の内周面よりも前記ビット筒状部の径方向内側へ張り出している請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の鋼管杭用ビット。
【請求項9】
前記ビット組立体において互いに隣り合う2つの前記ビット部材の境界では、一方の前記ビット部材に形成された第1対向面と、他方の前記ビット部材に形成された第2対向面とが、前記軸線に沿った方向において互いに対向しており、
前記第1対向面及び前記第2対向面のそれぞれは、前記軸線に直交する平面である請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の鋼管杭用ビット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼管杭に接合される鋼管杭用ビットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基礎杭として地盤に埋設される鋼管杭を地盤中に貫入するために、螺旋羽根を持つ先端部材を鋼管杭の先端に接合することが知られている。鋼管杭と先端部材との接合は、鋼管杭と先端部材との継ぎ目を全周溶接することにより行われる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-111977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地盤に埋設された鋼管杭による支持力は、鋼管杭の長手方向における螺旋羽根の範囲が広いほど大きくなる。しかし、特許文献1に示されている従来の鋼管杭では、先端部材が鋼管杭の先端にのみ接合されるため、螺旋羽根の範囲が鋼管杭の長さに対して極めて狭くなってしまう。これにより、鋼管杭による支持力が低下してしまう。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、地盤に埋設された鋼管杭による支持力を大きくすることができる鋼管杭用ビットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の鋼管杭用ビットは、軸線を持つビット組立体を備え、ビット組立体は、複数のビット部材を有しており、複数のビット部材は、互いに別部材となっているとともに、軸線に沿った方向へ並んで組み合わされており、複数のビット部材のそれぞれは、ビット筒状部と、ビット筒状部の外周部に設けられたビット羽根部とを有しており、ビット組立体では、複数のビット筒状部が軸線に沿った方向へ並ぶことにより筒状組立部が形成されているとともに、複数のビット羽根部が螺旋状に並ぶことにより螺旋羽根組立部が形成されており、筒状組立部の一端部には、ビット先端部が設けられており、筒状組立部の他端部は、接合側端部となっており、接合側端部からビット先端部に向けて筒状組立部の内部に鋼管杭が挿入された状態で、接合側端部が鋼管杭に接合される。
【発明の効果】
【0007】
この発明の鋼管杭用ビットでは、地盤に埋設された鋼管杭による支持力を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1による鋼管杭用ビットが鋼管杭に接合されている状態を示す側面図である。
図2図1の鋼管杭用ビット及び鋼管杭を示す縦断面図である。
図3図1の先端ビット部材を示す側面図である。
図4図1の中間ビット部材を示す側面図である。
図5図1の接合ビット部材を示す側面図である。
図6図1の複数の嵌合部を示す分解斜視図である。
図7図1の複数の嵌合部を示す分解斜視図である。
図8】実施の形態2による鋼管杭用ビットが鋼管杭に接合されている状態を示す側面図である。
図9】実施の形態3による鋼管杭用ビットが鋼管杭に接合されている状態を示す縦断面図である。
図10図9のX-X線に沿った断面図である。
図11】実施の形態4による鋼管杭用ビットが鋼管杭に接合されている状態を示す縦断面図である。
図12図11のXII-XII線に沿った断面図である。
図13】実施の形態5による鋼管杭用ビットにおいて杭内固定部材が窪み部に挿入されている状態を示す断面図である。
図14】実施の形態6による鋼管杭用ビットにおいて杭内固定部材が窪み部に挿入されている状態を示す断面図である。
図15】実施の形態7による鋼管杭用ビットにおいて杭内固定部材が窪み部に挿入されている状態を示す断面図である。
図16】実施の形態8による鋼管杭用ビットにおいて杭内固定部材が窪み部に挿入されている状態を示す断面図である。
図17】実施の形態9による鋼管杭用ビットにおいて杭内固定部材が窪み部に挿入されている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による鋼管杭用ビットが鋼管杭に接合されている状態を示す側面図である。また、図2は、図1の鋼管杭用ビット及び鋼管杭を示す縦断面図である。図において、鋼管杭10に接合される鋼管杭用ビットは、軸線Aを持つビット組立体1を有している。ビット組立体1は、先端ビット部材2と、中間ビット部材3と、接合ビット部材4とを複数のビット部材として有している。従って、本実施の形態では、ビット組立体1におけるビット部材の数が3つとなっている。
【0010】
先端ビット部材2、中間ビット部材3及び接合ビット部材4は、互いに別部材となっている。ビット組立体1では、先端ビット部材2、中間ビット部材3及び接合ビット部材4が軸線Aに沿った方向へ並んで組み合わされている。ビット組立体1における各ビット部材の並び順は、先端ビット部材2、中間ビット部材3及び接合ビット部材4の順となっている。
【0011】
図3は、図1の先端ビット部材2を示す側面図である。先端ビット部材2は、先端ビット筒状部21と、先端ビット羽根部22とを有している。
【0012】
先端ビット筒状部21の形状は、円筒状である。先端ビット筒状部21は、軸線Aと同軸に配置されている。先端ビット羽根部22は、先端ビット筒状部21の外周部に設けられている。また、先端ビット羽根部22は、先端ビット筒状部21を螺旋状に巻くように配置されている。先端ビット羽根部22は、先端ビット筒状部21の外周部から先端ビット筒状部21の径方向外側へ突出している。
【0013】
図4は、図1の中間ビット部材3を示す側面図である。中間ビット部材3は、中間ビット筒状部31と、中間ビット羽根部32とを有している。
【0014】
中間ビット筒状部31の形状は、円筒状である。中間ビット筒状部31は、軸線Aと同軸に配置されている。中間ビット羽根部32は、中間ビット筒状部31の外周部に設けられている。また、中間ビット羽根部32は、中間ビット筒状部31を螺旋状に巻くように配置されている。中間ビット羽根部32は、中間ビット筒状部31の径方向外側へ中間ビット筒状部31の外周部から突出している。
【0015】
図5は、図1の接合ビット部材4を示す側面図である。接合ビット部材4は、接合ビット筒状部41と、接合ビット羽根部42とを有している。
【0016】
接合ビット筒状部41の形状は、円筒状である。接合ビット筒状部41は、軸線Aと同軸に配置されている。接合ビット羽根部42は、接合ビット筒状部41の外周部に設けられている。また、接合ビット羽根部42は、接合ビット筒状部41を螺旋状に巻くように配置されている。接合ビット羽根部42は、接合ビット筒状部41の径方向外側へ接合ビット筒状部41の外周部から突出している。
【0017】
先端ビット筒状部21、中間ビット筒状部31及び接合ビット筒状部41のそれぞれの外径は、すべて同じである。ビット組立体1では、図1及び図2に示すように、先端ビット筒状部21、中間ビット筒状部31及び接合ビット筒状部41が複数のビット筒状部として軸線Aに沿った方向へ並んでいる。ビット組立体1では、先端ビット筒状部21、中間ビット筒状部31及び接合ビット筒状部41が軸線Aに沿った方向へ並ぶことにより筒状組立部5が形成されている。筒状組立部5の形状は、軸線Aを中心とする円筒状である。軸線Aに沿った方向における筒状組立部5の両端部のうち、一端部は先端側端部51となっており、他端部は接合側端部52となっている。
【0018】
また、ビット組立体1では、先端ビット羽根部22、中間ビット羽根部32及び接合ビット羽根部42が複数のビット羽根部として螺旋状に並んでいる。ビット組立体1では、先端ビット羽根部22、中間ビット羽根部32及び接合ビット羽根部42が螺旋状に並ぶことにより螺旋羽根組立部6が形成されている。螺旋羽根組立部6では、先端ビット羽根部22、中間ビット羽根部32及び接合ビット羽根部42が段差を形成することなく滑らかに連続している。螺旋羽根組立部6は、筒状組立部5を螺旋状に巻くように筒状組立部5の外周部に設けられている。螺旋羽根組立部6の肉厚は、筒状組立部5から離れるほど連続的に薄くなっている。
【0019】
筒状組立部5の外周部から螺旋羽根組立部6の端部までの距離は、軸線Aに沿った方向における螺旋羽根組立部6のどの位置でも同じとなっている。また、図2に示すように、軸線Aに沿って見たときの螺旋羽根組立部6の外径をD1とし、筒状組立部5の外径をD2とする。この場合、螺旋羽根組立部6の外径D1の上限値は、筒状組立部5の外径D2の3.5倍である。本実施の形態では、筒状組立部5の外径D2がφ120mm、螺旋羽根組立部6の外径D1がφ420mmとなっている。
【0020】
また、軸線Aを含む平面におけるビット組立体1の断面には、図2に示すように、螺旋羽根組立部6が複数の羽根断面部6aとして表れている。ここで、軸線Aに沿った方向において互いに隣り合う2つの羽根断面部6aの端部間の距離を、軸線Aに沿った方向における螺旋羽根組立部6の螺旋ピッチとする。この場合、軸線Aに沿った方向における螺旋羽根組立部6の螺旋ピッチは、螺旋羽根組立部6において接合側端部52に近い箇所ほど大きくなっている。従って、ビット組立体1では、筒状組立部5の周囲に螺旋羽根組立部6に沿って形成された螺旋状の空間を螺旋羽根形成空間とすると、軸線Aに沿った方向における螺旋羽根形成空間の寸法が接合側端部52に近い箇所ほど広くなっている。
【0021】
具体的には、図2において、互いに隣り合う2つの羽根断面部6aの間の螺旋ピッチを、先端側端部51から接合側端部52に向かって順に第1螺旋ピッチP1、第2螺旋ピッチP2及び第3螺旋ピッチP3とする。これにより、螺旋羽根組立部6において、第2螺旋ピッチP2の箇所が第1螺旋ピッチP1よりも接合側端部52に近い箇所となり、第3螺旋ピッチP3の箇所が第2螺旋ピッチP2よりも接合側端部52に近い箇所となる。この場合、ビット組立体1では、第3螺旋ピッチP3が第2螺旋ピッチP2よりも大きくなっており、第2螺旋ピッチP2が第1螺旋ピッチP1よりも大きくなっている。即ち、P3>P2>P1の関係が成立している。
【0022】
先端ビット筒状部21は、筒状の先端ビット胴部21aと、環状の先端ビット境界側端部21bと、先端側端部51とを有している。先端ビット境界側端部21bは、軸線Aに沿った方向における先端ビット胴部21aの両端部のうち、中間ビット筒状部31側の端部に設けられている。先端側端部51は、軸線Aに沿った方向における先端ビット胴部21aの両端部のうち、先端ビット境界側端部21bとは反対側の端部に設けられている。先端ビット境界側端部21b及び先端側端部51のそれぞれの肉厚は、先端ビット胴部21aの肉厚よりも厚くなっている。先端ビット境界側端部21b及び先端側端部51のそれぞれの内周部は、先端ビット胴部21aの内周面よりも先端ビット筒状部21の径方向内側へ張り出している。
【0023】
中間ビット筒状部31は、筒状の中間ビット胴部31aと、環状の中間ビット第1境界側端部31bと、環状の中間ビット第2境界側端部31cとを有している。中間ビット第1境界側端部31bは、軸線Aに沿った方向における中間ビット胴部31aの両端部のうち、先端ビット筒状部21側の端部に設けられている。中間ビット第2境界側端部31cは、軸線Aに沿った方向における中間ビット胴部31aの両端部のうち、接合ビット筒状部41側の端部に設けられている。
【0024】
中間ビット第1境界側端部31b及び中間ビット第2境界側端部31cのそれぞれの肉厚は、中間ビット胴部31aの肉厚よりも厚くなっている。中間ビット第1境界側端部31b及び中間ビット第2境界側端部31cのそれぞれの内周部は、中間ビット胴部31aの内周面よりも中間ビット筒状部31の径方向内側へ張り出している。
【0025】
接合ビット筒状部41は、筒状の接合ビット胴部41aと、環状の接合ビット境界側端部41bと、接合側端部52とを有している。接合ビット境界側端部41bは、軸線Aに沿った方向における接合ビット胴部41aの両端部のうち、中間ビット筒状部31側の端部に設けられている。接合側端部52は、軸線Aに沿った方向における接合ビット胴部41aの両端部のうち、接合ビット境界側端部41bとは反対側の端部に設けられている。接合ビット境界側端部41b及び接合側端部52のそれぞれの肉厚は、接合ビット胴部41aの肉厚よりも厚くなっている。接合ビット境界側端部41b及び接合側端部52のそれぞれの内周部は、接合ビット胴部41aの内周面よりも接合ビット筒状部41の径方向内側へ張り出している。
【0026】
即ち、筒状組立部5では、互いに隣り合う2つのビット筒状部である先端ビット筒状部21及び中間ビット筒状部31の境界を挟んで先端ビット境界側端部21b及び中間ビット第1境界側端部31bが配置されている。また、筒状組立部5では、互いに隣り合う2つのビット筒状部である中間ビット筒状部31及び接合ビット筒状部41の境界を挟んで中間ビット第2境界側端部31c及び接合ビット境界側端部41bが配置されている。
【0027】
筒状組立部5の外径は、軸線Aに沿った方向における筒状組立部5のどの位置でも同じになっている。一方、筒状組立部5の内径は、図2に示すように、先端側端部51、先端ビット境界側端部21b、中間ビット第1境界側端部31b、中間ビット第2境界側端部31c、接合ビット境界側端部41b及び接合側端部52のそれぞれの位置において、最も小さくなっている。筒状組立部5の内径は、筒状組立部5の外径よりも小さい。
【0028】
先端側端部51には、ビット先端部7が設けられている。ビット先端部7は、先端側端部51に形成された円形状の開口部を塞いでいる。ビット先端部7の形状は、筒状組立部5から軸線Aに沿った方向の外側へ盛り上がるドーム状である。
【0029】
ビット先端部7には、複数の掘削刃8が設けられている。各掘削刃8は、ビット先端部7の露出面に設けられている。本実施の形態では、4つの掘削刃8がビット先端部7に設けられている。
【0030】
接合側端部52には、鋼管杭10が通される円形状の開口部が形成されている。鋼管杭10は、接合側端部52からビット先端部7に向けて筒状組立部5の内部に挿入されている。鋼管杭10の外径は、筒状組立部5の最小の内径よりも小さくなっている。本実施の形態では、鋼管杭10の外径がφ100mmとなっている。
【0031】
接合側端部52の形状は、開口部を囲む環状となっている。接合側端部52の内周部には、図2に示すように、開先用斜面53が接合側端部52の全周にわたって形成されている。
【0032】
開先用斜面53は、軸線Aに対して傾斜している。また、開先用斜面53は、筒状組立部5の内部から接合側端部52の外側に向かって軸線Aから離れる方向へ傾斜している。本実施の形態では、開先用斜面53の形状が、軸線Aを中心とする円錐台の外周面の形状となっている。従って、鋼管杭10が筒状組立部5の内部に挿入されることにより、鋼管杭10の外周面と開先用斜面53との間に溶接用の開先が形成される。
【0033】
ビット組立体1は、鋼管杭10が筒状組立部5の内部に挿入された状態で、鋼管杭10に接合されている。鋼管杭10の外周面と開先用斜面53との間の開先には、開先を埋める溶接ビード20が接合側端部52の全周にわたって形成されている。これにより、接合側端部52が鋼管杭10に接合されている。
【0034】
ビット先端部7には、図2に示すように、突出部9が設けられている。突出部9は、ビット先端部7から筒状組立部5の内部へ突出している。突出部9には、鋼管杭10の端部の内周部を受ける受け面91が形成されている。
【0035】
受け面91は、軸線Aに対して傾斜している。また、受け面91は、筒状組立部5の内部からビット先端部7に向かって軸線Aから離れる方向へ傾斜している。本実施の形態では、受け面91の形状が、軸線Aを中心とする円錐台の外周面の形状となっている。これにより、内径が異なる複数の鋼管杭10のいずれに対しても、鋼管杭10の端部の内周部を受け面91によって受けることができる。
【0036】
先端ビット部材2、ビット先端部7、突出部9及び複数の掘削刃8は、一体の単一部品として形成されている。また、中間ビット部材3は、一体の単一部品として形成されている。さらに、接合ビット部材4は、一体の単一部品として形成されている。
【0037】
先端ビット部材2と中間ビット部材3との境界では、先端ビット部材2に第1対向面として形成された先端ビット端面23と、中間ビット部材3に第2対向面として形成された中間ビット第1端面33とが互いに対向している。また、中間ビット部材3と接合ビット部材4との境界では、中間ビット部材3に第1対向面として形成された中間ビット第2端面34と、接合ビット部材4に第2対向面として形成された接合ビット端面43とが互いに対向している。即ち、ビット組立体1において互いに隣り合う2つのビット部材の境界では、一方のビット部材に形成された第1対向面と、他方のビット部材に形成された第2対向面とが互いに対向している。先端ビット端面23及び中間ビット第1端面33は、互いに接触している。中間ビット第2端面34及び接合ビット端面43は、互いに接触している。
【0038】
従って、先端ビット端面23は、先端ビット境界側端部21bに形成されている。また、中間ビット第1端面33は中間ビット第1境界側端部31bに形成され、中間ビット第2端面34は中間ビット第2境界側端部31cに形成されている。さらに、接合ビット端面43は、接合ビット境界側端部41bに形成されている。
【0039】
本実施の形態では、先端ビット筒状部21及び先端ビット羽根部22に連続して形成された単一の平面が先端ビット端面23となっている。また、本実施の形態では、中間ビット部材3の一端部において、中間ビット筒状部31及び中間ビット羽根部32に連続して形成された単一の平面が中間ビット第1端面33となっている。また、本実施の形態では、中間ビット部材3の他端部において、中間ビット筒状部31及び中間ビット羽根部32に連続して形成された単一の平面が中間ビット第2端面34となっている。さらに、本実施の形態では、接合ビット筒状部41及び接合ビット羽根部42に連続して形成された単一の平面が接合ビット端面43となっている。本実施の形態では、先端ビット端面23、中間ビット第1端面33、中間ビット第2端面34及び接合ビット端面43のそれぞれが、軸線Aに直交する平面となっている。
【0040】
ビット組立体1において互いに隣り合う2つのビット部材である先端ビット部材2及び中間ビット部材3の間には、複数の嵌合部11が設けられている。本実施の形態では、先端ビット筒状部21及び中間ビット筒状部31の間に2つの嵌合部11が設けられている。
【0041】
各嵌合部11は、一方のビット部材である先端ビット部材2から突出している凸部111と、他方のビット部材である中間ビット部材3に形成された凹部112とを有している。各嵌合部11では、凸部111が凹部112に嵌っている。本実施の形態では、先端ビット筒状部21から凸部111が突出しており、中間ビット筒状部31に凹部112が形成されている。
【0042】
図6は、図1の複数の嵌合部11を示す分解斜視図である。なお、図6では、螺旋羽根組立部6の図示を省略している。複数の嵌合部11のそれぞれの位置は、筒状組立部5の周方向に互いに離れた位置となっている。本実施の形態では、2つの嵌合部11が筒状組立部5の周方向へ等間隔に設けられている。
【0043】
各嵌合部11における凸部111は、先端ビット筒状部21の先端ビット端面23から軸線Aに沿った方向へ突出している。各凸部111の形状は、先端ビット筒状部21の外周部に合わせて湾曲した矩形状となっている。
【0044】
各嵌合部11における凹部112は、中間ビット筒状部31の中間ビット第1端面33に形成されている。筒状組立部5の周方向における各凹部112の位置は、各凸部111の位置と一致している。各凹部112の形状は、各凸部111の形状に合わせた矩形状となっている。
【0045】
ビット組立体1では、各嵌合部11において凸部111が凹部112に嵌ることにより、先端ビット部材2が中間ビット部材3に対して回転することが阻止される。
【0046】
ビット組立体1において互いに隣り合う2つのビット部材である中間ビット部材3及び接合ビット部材4の間には、複数の嵌合部12が設けられている。本実施の形態では、中間ビット筒状部31及び接合ビット筒状部41の間に2つの嵌合部12が設けられている。
【0047】
各嵌合部12は、一方のビット部材である中間ビット部材3から突出している凸部121と、他方のビット部材である接合ビット部材4に形成された凹部122とを有している。各嵌合部12では、凸部121が凹部122に嵌っている。本実施の形態では、中間ビット筒状部31から凸部121が突出しており、接合ビット筒状部41に凹部122が形成されている。
【0048】
図7は、図1の複数の嵌合部12を示す分解斜視図である。なお、図7では、螺旋羽根組立部6の図示を省略している。複数の嵌合部12の位置は、筒状組立部5の周方向に互いに離れた位置となっている。本実施の形態では、2つの嵌合部12が筒状組立部5の周方向へ等間隔に設けられている。
【0049】
各嵌合部12における凸部121は、先端ビット筒状部21の先端ビット端面23から軸線Aに沿った方向へ突出している。各凸部111の形状は、先端ビット筒状部21の外周部に合わせて湾曲した矩形状となっている。
【0050】
各嵌合部11における凹部112は、中間ビット筒状部31の中間ビット第2端面34に形成されている。筒状組立部5の周方向における各凹部122の位置は、各凸部121の位置と一致している。各凹部122の形状は、各凸部121の形状に合わせた矩形状となっている。
【0051】
ビット組立体1では、各嵌合部12において凸部121が凹部122に嵌ることにより、中間ビット部材3が接合ビット部材4に対して回転することが阻止される。
【0052】
次に、鋼管杭用ビットを鋼管杭10に接合するときの手順について説明する。鋼管杭10に対する鋼管杭用ビットの接合は、ビット組立体1を鋼管杭10に接合することにより行う。ビット組立体1は、先端ビット部材2、中間ビット部材3及び接合ビット部材4を組み合わせて予め作製しておく。
【0053】
ビット組立体1を鋼管杭10に接合するときには、ビット組立体1の筒状組立部5の内部に鋼管杭10を挿入する。このとき、筒状組立部5の接合側端部52からビット先端部7に向けて鋼管杭10の端部を筒状組立部5の内部に挿入する。
【0054】
この後、鋼管杭10の端部の内周部を突出部9の受け面91に接触させる。これにより、鋼管杭10は、筒状組立部5の内部においてビット組立体1の軸線Aに対して傾きにくくなる。このとき、筒状組立部5の接合側端部52では、鋼管杭10の外周面と開先用斜面53との間に溶接用の開先が形成される。
【0055】
この後、鋼管杭10の外周面と開先用斜面53との間に形成された溶接用の開先を埋める溶接ビード20を形成しながら、接合側端部52の全周にわたって溶接を行う。これにより、接合側端部52が鋼管杭10に接合される。
【0056】
鋼管杭10には、溶接ビード20の形成によって、ビット組立体1のうちの接合ビット部材4のみが接合される。従って、ビット組立体1が鋼管杭10に接合された状態では、ビット先端部7を下方に向けると、先端ビット部材2及び中間ビット部材3が重力によって鋼管杭10から下方へ外れる可能性がある。
【0057】
しかし、鋼管杭10を地盤に貫入するときには、ビット先端部7を下方に向けてビット組立体1を地盤に押し込みながら、ビット組立体1とともに鋼管杭10を回転させる。従って、鋼管杭10を地盤に貫入するときには、地盤から上方への力をビット組立体1が常に受けることとなり、鋼管杭10から先端ビット部材2及び中間ビット部材3が外れることはない。
【0058】
また、ビット組立体1が回転しても、中間ビット部材3に対する先端ビット部材2の回転が嵌合部11によって阻止され、接合ビット部材4に対する中間ビット部材3の回転が嵌合部12によって阻止される。これにより、ビット組立体1を全体として一体に回転させることができる。
【0059】
このような鋼管杭用ビットでは、ビット組立体1が、先端ビット部材2、中間ビット部材3及び接合ビット部材4を複数のビット部材として有している。また、先端ビット部材2、中間ビット部材3及び接合ビット部材4が軸線Aに沿った方向へ並んで組み合わされている。このため、先端ビット部材2、中間ビット部材3及び接合ビット部材4が並ぶ範囲にわたって螺旋羽根組立部6を形成することができる。これにより、軸線Aに沿った方向における螺旋羽根組立部6の範囲を鋼管杭10に対して拡大することができる。従って、ビット組立体1が接合された鋼管杭10を地盤に埋設した場合、螺旋羽根組立部6の範囲の拡大によって鋼管杭10による支持力を大きくすることができる。
【0060】
また、鋼管杭10の外周部に溶接によって螺旋羽根を直接固定することも考えられるが、鋼管杭10に対する螺旋羽根の固定に要する手間が大きくなってしまう。これに対して、本実施の形態では、ビット組立体1を用いることにより、鋼管杭10に対する螺旋羽根組立部6の形成を容易にすることができる。
【0061】
さらに、鋼管杭10の外径よりも大きい外径を持つ筒状組立部5に螺旋羽根組立部6を設けることができる。これにより、筒状組立部5の外径を基準にして螺旋羽根組立部6の外径の上限値を決定することができ、鋼管杭10の外周部に螺旋羽根を直接固定する場合よりも螺旋羽根組立部6の外径を大きくすることができる。従って、地盤に埋設された鋼管杭10による支持力をさらに大きくすることができる。
【0062】
さらにまた、先端ビット部材2、中間ビット部材3及び接合ビット部材4の各ビット部材の長さを調整することにより、地盤に埋設された鋼管杭10による支持力の大きさを容易に調整することもできる。
【0063】
また、先端ビット部材2と中間ビット部材3との間には嵌合部11が設けられ、中間ビット部材3と接合ビット部材4との間には嵌合部12が設けられている。このため、中間ビット部材3に対する先端ビット部材2の回転を嵌合部11によって阻止することができ、接合ビット部材4に対する中間ビット部材3の回転を嵌合部12によって阻止することができる。これにより、ビット組立体1を一体として回転させることができ、地盤中に鋼管杭10をより確実に貫入させることができる。
【0064】
また、ビット先端部7に設けられた突出部9には、鋼管杭10の端部の内周部を受ける受け面91が形成されている。受け面91は、筒状組立部5の内部からビット先端部7に向かって軸線Aから離れる方向へ軸線Aに対して傾斜している。このため、内径が異なる複数の鋼管杭10のいずれに対しても、鋼管杭10の端部の内周部を受け面91によって受けることができる。これにより、筒状組立部5の内部に挿入された鋼管杭10の状態をより確実に安定させることができる。
【0065】
また、筒状組立部5における接合側端部52の内周部には、開先用斜面53が接合側端部52の全周にわたって形成されている。開先用斜面53は、筒状組立部5の内部から接合側端部52の外側に向かって軸線Aから離れる方向へ軸線Aに対して傾斜している。このため、鋼管杭10が筒状組立部5の内部に挿入されることにより、鋼管杭10の外周面と開先用斜面53との間に溶接用の開先を形成することができる。これにより、鋼管杭10の外周面と接合側端部52との間に溶接ビード20を容易にかつより確実に形成することができ、接合側端部52を鋼管杭10に容易にかつより確実に接合することができる。
【0066】
また、軸線Aに沿った方向における螺旋羽根組立部6の螺旋ピッチは、螺旋羽根組立部6において接合側端部52に近い箇所ほど大きくなっている。このため、螺旋羽根組立部6に沿って形成された螺旋状の空間を接合側端部52に近づくほど拡大することができる。これにより、鋼管杭10がビット組立体1と一体に回転しながら地盤中に貫入するときに、螺旋羽根組立部6における螺旋状の空間に入っている土が接合側端部52側へ送られて排出されやすくすることができる。従って、ビット組立体1が地盤から受ける抵抗力を小さくすることができ、鋼管杭10を地盤に貫入させやすくすることができる。
【0067】
また、先端ビット境界側端部21b、中間ビット第1境界側端部31b、中間ビット第2境界側端部31c及び接合ビット境界側端部41bのそれぞれの内周部は、先端ビット胴部21a、中間ビット胴部31a及び接合ビット胴部41aのそれぞれの内周面よりもビット筒状部21,31,41の径方向内側へ張り出している。このため、鋼管杭10が筒状組立部5の内部に挿入された状態で、先端ビット境界側端部21b、中間ビット第1境界側端部31b、中間ビット第2境界側端部31c及び接合ビット境界側端部41bのそれぞれと、鋼管杭10の外周面との間の隙間を小さくすることができる。これにより、先端ビット筒状部21、中間ビット筒状部31及び接合ビット筒状部41のそれぞれの位置が鋼管杭10に対して軸線Aに直交する方向へずれることを抑制することができる。また、先端ビット筒状部21、中間ビット筒状部31及び接合ビット筒状部41のそれぞれを筒状組立部5の軸線Aに対して傾きにくくすることもできる。このことから、ビット組立体1が地盤から受ける抵抗力をさらに小さくすることができ、鋼管杭10を地盤に貫入させやすくすることができる。
【0068】
また、先端ビット部材2と中間ビット部材3との境界において互いに対向する先端ビット端面23及び中間ビット第1端面33のそれぞれは、軸線Aに直交する平面となっている。さらに、中間ビット部材3と接合ビット部材4との境界において互いに対向する中間ビット第2端面34及び接合ビット端面43のそれぞれは、軸線Aに直交する平面となっている。このため、先端ビット端面23、中間ビット第1端面33、中間ビット第2端面34及び接合ビット端面43のそれぞれを容易に形成することができ、先端ビット部材2、中間ビット部材3及び接合ビット部材4のそれぞれを容易に作製することができる。また、先端ビット部材2、中間ビット部材3及び接合ビット部材4を組み合わせる作業も容易にすることができる。
【0069】
なお、実施の形態1では、嵌合部11の数を、1つにしてもよいし、3つ以上にしてもよい。また、嵌合部12の数も、1つにしてもよいし、3つ以上にしてもよい。
【0070】
また、実施の形態1では、先端ビット筒状部21と中間ビット筒状部31との間に嵌合部11が設けられているが、先端ビット羽根部22と中間ビット羽根部32との間に嵌合部11を設けてもよいし、先端ビット筒状部21と中間ビット筒状部31との間、及び先端ビット羽根部22と中間ビット羽根部32との間のそれぞれに嵌合部11を設けてもよい。さらに、中間ビット筒状部31と接合ビット筒状部41との間に嵌合部12が設けられているが、中間ビット羽根部32と接合ビット羽根部42との間に嵌合部12を設けてもよいし、中間ビット筒状部31と接合ビット筒状部41との間、及び中間ビット羽根部32と接合ビット羽根部42との間のそれぞれに嵌合部12を設けてもよい。
【0071】
また、実施の形態1では、凸部111が中間ビット部材3から突出し、凹部112が先端ビット部材2に形成されるようにしてもよい。さらに、凸部121が接合ビット部材4から突出し、凹部122が中間ビット部材3に形成されるようにしてもよい。
【0072】
また、実施の形態1において、凸部111及び凹部112のそれぞれの形状は、矩形状に限定されず、例えば半円状であってもよい。さらに、凸部121及び凹部122のそれぞれの形状は、矩形状に限定されず、例えば半円状であってもよい。
【0073】
また、実施の形態1では、中間ビット部材3の数を2つ以上にして、ビット組立体1におけるビット部材の数を4つ以上としてもよい。この場合、ビット組立体1では、4つ以上のビット部材が軸線Aに沿った方向へ並んで組み合わされる。このようにすれば、ビット組立体1におけるビット部材の数を増加させることができ、地盤に埋設された鋼管杭10による支持力をさらに大きくすることができる。
【0074】
また、実施の形態1では、先端ビット部材2と中間ビット部材3との境界に溶接部を形成することにより、先端ビット部材2を中間ビット部材3に固定してもよい。このようにすれば、先端ビット部材2が中間ビット部材3から外れることを防止することができる。この場合、先端ビット部材2と中間ビット部材3との境界に形成する溶接部は、点溶接による溶接部としてもよい。
【0075】
また、実施の形態1では、中間ビット部材3と接合ビット部材4との境界に溶接部を形成することにより、中間ビット部材3を接合ビット部材4に固定してもよい。このようにすれば、中間ビット部材3が接合ビット部材4から外れることを防止することができる。この場合、中間ビット部材3と接合ビット部材4との境界に形成する溶接部は、点溶接による溶接部としてもよい。
【0076】
また、実施の形態1では、先端ビット部材2と中間ビット部材3との境界に溶接部を形成するのであれば、嵌合部11はなくてもよい。さらに、中間ビット部材3と接合ビット部材4との境界に溶接部を形成するのであれば、嵌合部12はなくてもよい。
【0077】
また、実施の形態1では、先端ビット端面23及び中間ビット第1端面33のそれぞれを軸線Aに対して傾斜する平面としてもよい。さらに、中間ビット第2端面34及び接合ビット端面43のそれぞれを軸線Aに対して傾斜する平面としてもよい。
【0078】
また、実施の形態1では、先端ビット端面23において先端ビット筒状部21と先端ビット羽根部22との境界に段差を設けることにより、先端ビット端面23を異なる2つの平面に分けてもよい。この場合、中間ビット第1端面33も、先端ビット端面23に合わせて異なる2つの平面に分けられる。
【0079】
また、実施の形態1では、中間ビット第2端面34において中間ビット筒状部31と中間ビット羽根部32との境界に段差を設けることにより、中間ビット第2端面34を異なる2つの平面に分けてもよい。この場合、接合ビット端面43も、中間ビット第2端面34に合わせて異なる2つの平面に分けられる。
【0080】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2による鋼管杭用ビットが鋼管杭に接合されている状態を示す側面図である。本実施の形態では、ビット組立体1が先端ビット部材2及び接合ビット部材4を複数のビット部材として有している。即ち、本実施の形態では、ビット組立体1におけるビット部材の数が2つとなっている。先端ビット部材2及び接合ビット部材4のそれぞれの構成は、実施の形態1と同様である。
【0081】
ビット組立体1では、先端ビット部材2及び接合ビット部材4が軸線Aに沿った方向へ並んでいる。先端ビット部材2と接合ビット部材4との境界では、軸線Aに沿った方向において先端ビット端面23及び接合ビット端面43が互いに対向している。本実施の形態では、先端ビット端面23及び接合ビット端面43が互いに接触している。ビット組立体1では、先端ビット筒状部21及び接合ビット筒状部41が軸線Aに沿った方向へ並ぶことにより筒状組立部5が形成されている。また、ビット組立体1では、先端ビット羽根部22及び接合ビット羽根部42が螺旋状に並ぶことにより螺旋羽根組立部6が形成されている。
【0082】
先端ビット部材2及び接合ビット部材4の間には、複数の嵌合部13が設けられている。本実施の形態では、先端ビット筒状部21及び接合ビット筒状部41の間に2つの嵌合部13が設けられている。
【0083】
各嵌合部13は、一方のビット部材である先端ビット部材2から突出している凸部131と、他方のビット部材である接合ビット部材4に形成された凹部132とを有している。各嵌合部13では、凸部131が凹部132に嵌っている。本実施の形態では、先端ビット筒状部21から凸部111が突出しており、接合ビット筒状部41に凹部132が形成されている。
【0084】
各嵌合部13における凸部131は、先端ビット筒状部21の先端ビット端面23から軸線Aに沿った方向へ突出している。各凸部131の形状は、先端ビット筒状部21の外周部に合わせて湾曲した矩形状となっている。
【0085】
各嵌合部13における凹部132は、接合ビット筒状部41の接合ビット端面43に形成されている。筒状組立部5の周方向における各凹部132の位置は、各凸部131の位置と一致している。各凹部132の形状は、各凸部131の形状に合わせた矩形状となっている。
【0086】
ビット組立体1では、各嵌合部13において凸部131が凹部132に嵌ることにより、接合ビット部材4に対する先端ビット部材2の回転が阻止される。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0087】
このように、ビット組立体1におけるビット部材の数を、先端ビット部材2及び接合ビット部材4の2つとしても、軸線Aに沿った方向における螺旋羽根組立部6の範囲を鋼管杭10に対して拡大することができる。これにより、地盤に埋設された鋼管杭10による支持力を大きくすることができる。また、ビット組立体1を用いることにより、鋼管杭10に対する螺旋羽根組立部6の形成を容易にすることができる。さらに、螺旋羽根組立部6の外径を大きくすることができ、地盤に埋設された鋼管杭10による支持力をさらに大きくすることができる。さらにまた、地盤に埋設された鋼管杭10による支持力の大きさを容易に調整することもできる。
【0088】
なお、実施の形態2では、嵌合部13の数を、1つにしてもよいし、3つ以上にしてもよい。
【0089】
また、実施の形態2では、先端ビット筒状部21と接合ビット筒状部41との間に嵌合部13が設けられているが、先端ビット羽根部22と接合ビット羽根部42との間に嵌合部13を設けてもよいし、先端ビット筒状部21と接合ビット筒状部41との間、及び先端ビット羽根部22と接合ビット羽根部42との間のそれぞれに嵌合部13を設けてもよい。
【0090】
また、実施の形態2では、凸部131が接合ビット部材4から突出し、凹部132が先端ビット部材2に形成されるようにしてもよい。
【0091】
また、実施の形態2において、凸部131及び凹部132のそれぞれの形状は、矩形状に限定されず、例えば半円状であってもよい。
【0092】
また、実施の形態2では、先端ビット部材2と接合ビット部材4との境界に溶接部を形成することにより、先端ビット部材2を接合ビット部材4に固定してもよい。このようにすれば、先端ビット部材2が接合ビット部材4から外れることを防止することができる。この場合、先端ビット部材2と接合ビット部材4との境界に形成する溶接部は、点溶接による溶接部としてもよい。
【0093】
また、実施の形態2では、先端ビット部材2と接合ビット部材4との境界に溶接部を形成するのであれば、嵌合部13はなくてもよい。
【0094】
また、実施の形態2では、先端ビット端面23及び接合ビット端面43のそれぞれを軸線Aに対して傾斜する平面としてもよい。
【0095】
また、実施の形態2では、先端ビット端面23において先端ビット筒状部21と先端ビット羽根部22との境界に段差を設けることにより、先端ビット端面23を異なる2つの平面に分けてもよい。この場合、接合ビット端面43も、先端ビット端面23に合わせて異なる2つの平面に分けられる。
【0096】
実施の形態3.
図9は、実施の形態3による鋼管杭用ビットが鋼管杭に接合されている状態を示す縦断面図である。図10は、図9のX-X線に沿った断面図である。鋼管杭用ビットは、ビット組立体1と、複数の突起部材101とを有している。複数の突起部材101は、鋼管杭10の内周面に固定されている。本実施の形態では、鋼管杭10の内周面に固定された突起部材101の数が2つとなっている。また、本実施の形態では、図10に示すように、2つの突起部材101が鋼管杭10の中心線に関して対称位置に配置されている。
【0097】
複数の突起部材101は、鋼管杭10の周方向へ互いに離して配置されている。本実施の形態では、2つの突起部材101が鋼管杭10の周方向へ等間隔に配置されている。各突起部材101は、鋼管杭10の中心線に沿って配置されている。各突起部材101は、鋼管杭10の端部に達している。本実施の形態では、各突起部材101の形状が直方体となっている。
【0098】
突出部9には、突起部材101が挿入される複数の窪み部92が形成されている。突出部9に形成されている窪み部92の数は、鋼管杭10に固定されている突起部材101の数と同じである。複数の窪み部92は、筒状組立部5の周方向へ互いに離して配置されている。突出部9における複数の窪み部92の周方向位置は、鋼管杭10における複数の突起部材101の周方向位置と一致している。
【0099】
各窪み部92の深さ方向は、軸線Aに沿った方向と一致している。また、筒状組立部5の周方向における各窪み部92の寸法は、鋼管杭10の周方向における各突起部材101の寸法に合わせた寸法となっている。これにより、各突起部材101が各窪み部92に挿入された状態では、鋼管杭10に対する先端ビット部材2の回転が阻止される。
【0100】
鋼管杭10が接合側端部52からビット先端部7に向けて筒状組立部5の内部に挿入されると、各突起部材101が各窪み部92に軸線Aに沿った方向へ挿入されながら、鋼管杭10の端部の内周部が突出部9の受け面91に接触する。各突起部材101が各窪み部92に挿入されると、鋼管杭10に対する先端ビット部材2の回転が阻止される。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0101】
このような鋼管杭用ビットでは、複数の突起部材101が鋼管杭10の内周面に固定されており、突起部材101が挿入される複数の窪み部92が突出部9に形成されている。このため、鋼管杭10に固定された各突起部材101を各窪み部92に挿入することにより、鋼管杭10に対する先端ビット部材2の回転をビット先端部7の位置で阻止することができる。これにより、接合側端部52の位置だけでなく、ビット先端部7の位置においても、鋼管杭10に対するビット組立体1の回転を阻止することができる。従って、鋼管杭10からビット組立体1に回転力を直接伝える箇所を、接合側端部52及びビット先端部7の2箇所に分散することができる。このようなことから、鋼管杭10を変形しにくくすることができるとともに、筒状組立部5の内部において鋼管杭10をさらに傾きにくくすることができる。
【0102】
なお、実施の形態3では、鋼管杭10の内周面に固定された突起部材101の数を1つにしてもよいし、3つ以上にしてもよい。この場合、突出部9に形成された窪み部92の数は、鋼管杭10の内周面に固定された突起部材101の数と同じとなる。また、突起部材101の数を3つ以上とした場合、突起部材101は、鋼管杭10の周方向へ互いに間隔をおいて配置される。
【0103】
また、実施の形態3では、鋼管杭10の内周面に突起部材101を固定するとともに突出部9に窪み部92を形成する構成が、実施の形態1による鋼管杭用ビットに適用されている。しかし、鋼管杭10の内周面に突起部材101を固定するとともに突出部9に窪み部92を形成する構成を、実施の形態2による鋼管杭用ビットに適用してもよい。
【0104】
実施の形態4.
図11は、実施の形態4による鋼管杭用ビットが鋼管杭に接合されている状態を示す縦断面図である。図12は、図11のXII-XII線に沿った断面図である。鋼管杭用ビットは、ビット組立体1と、杭内固定部材102とを有している。
【0105】
杭内固定部材102は、鋼管杭10の内周面に固定されている。また、杭内固定部材102は、鋼管杭10の端部に配置されている。杭内固定部材102は、複数の固定端部102aと、連結部102bとを有している。本実施の形態では、杭内固定部材102における固定端部102aの数が2つとなっている。
【0106】
2つの固定端部102aは、鋼管杭10の周方向における互いに異なる位置で鋼管杭10の内周面に固定されている。本実施の形態では、図12に示すように、鋼管杭10の中心線に関して対称位置に2つの固定端部102aが位置している。また、本実施の形態では、各固定端部102aが溶接によって鋼管杭10の内周面に固定されている。
【0107】
連結部102bは、2つの固定端部102aに繋がっている。連結部102bは、2つの固定端部102aと一体になっている。連結部102bは、2つの固定端部102aの一方から他方へ延びている。また、連結部102bは、2つの固定端部102a同士を結ぶ直線上に配置されている。本実施の形態では、鋼管杭10の中心線に直交して配置された直線状の棒状部材が杭内固定部材102として鋼管杭10の内周面に固定されている。杭内固定部材102としては、断面四角形の角棒、断面円形の丸棒などが用いられている。
【0108】
突出部9には、杭内固定部材102が挿入される窪み部92が形成されている。窪み部92の深さ方向は、軸線Aに沿った方向と一致している。窪み部92の形状は、杭内固定部材102の形状に合わせた形状となっている。また、窪み部92の寸法は、杭内固定部材102の寸法に合わせた寸法となっている。これにより、本実施の形態では、窪み部92が軸線Aに直交する溝となっている。杭内固定部材102が窪み部92に挿入された状態では、鋼管杭10に対する先端ビット部材2の回転が阻止される。
【0109】
鋼管杭10が接合側端部52からビット先端部7に向けて筒状組立部5の内部に挿入されると、杭内固定部材102が窪み部92に軸線Aに沿った方向へ挿入されながら、鋼管杭10の端部の内周部が突出部9の受け面91に接触する。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0110】
このような鋼管杭ビットでは、複数の固定端部102aが鋼管杭10の周方向における互いに異なる位置で鋼管杭10の内周面に固定されており、連結部102bが複数の固定端部102aに繋がっている。このため、鋼管杭10の内周面に対する杭内固定部材102の固定状態を安定させることができるとともに、杭内固定部材102が窪み部92に挿入される範囲を拡大することができる。これにより、ビット先端部7の位置において鋼管杭10に対する先端ビット部材2の回転をさらに確実に阻止することができる。従って、鋼管杭10をさらに確実に変形しにくくすることができるとともに、筒状組立部5の内部において鋼管杭10をさらに確実に傾きにくくすることができる。また、杭内固定部材102の形状が直線状の棒状部材であり、窪み部92が直線状の溝である。このため、杭内固定部材102の製造、及び突出部9に対する窪み部92の形成を容易にすることができる。
【0111】
実施の形態5.
図13は、実施の形態5による鋼管杭用ビットにおいて杭内固定部材が窪み部に挿入されている状態を示す断面図である。なお、図13は、実施の形態4における図12に対応する図である。実施の形態5では、杭内固定部材102における固定端部102aの数が4つとなっている。4つの固定端部102aは、鋼管杭10の周方向における互いに異なる位置で鋼管杭10の内周面に固定されている。本実施の形態では、4つの固定端部102aが鋼管杭10の周方向へ等間隔に配置されている。また、本実施の形態では、各固定端部102aが溶接によって鋼管杭10の内周面に固定されている。
【0112】
連結部102bは、4つの固定端部102aに繋がっている。これにより、連結部102bは、4つの固定端部102aと一体になっている。杭内固定部材102は、2本の棒状部が交差して組み合わされたX形状の部材である。杭内固定部材102を構成する2本の棒状部としては、断面四角形の角棒、断面円形の丸棒などが挙げられる。4つの固定端部102aは、連結部102bのX形状における4つの端部に個別に繋がっている。
【0113】
突出部9には、杭内固定部材102が挿入される窪み部92が形成されている。窪み部92の深さ方向は、軸線Aに沿った方向と一致している。窪み部92は、軸線Aに沿って見たとき、杭内固定部材102の形状に合わせたX形状の溝となっている。また、窪み部92の寸法は、杭内固定部材102の寸法に合わせた寸法となっている。杭内固定部材102が窪み部92に挿入された状態では、鋼管杭10に対する先端ビット部材2の回転が阻止される。本実施の形態における他の構成は、実施の形態4と同様である。
【0114】
このような鋼管杭ビットでは、杭内固定部材102の形状がX形状であり、窪み部92がX形状の溝である。このため、鋼管杭10の内周面に対する杭内固定部材102の固定状態をさらに安定させることができるとともに、杭内固定部材102が窪み部92に挿入される範囲をさらに拡大することができる。これにより、ビット先端部7の位置において鋼管杭10に対する先端ビット部材2の回転をさらに確実に阻止することができる。
【0115】
実施の形態6.
図14は、実施の形態6による鋼管杭用ビットにおいて杭内固定部材が窪み部に挿入されている状態を示す断面図である。なお、図14は、実施の形態4における図12に対応する図である。実施の形態6では、鋼管杭10の形状が断面四角形の筒状であり、筒状組立部5の形状も断面四角形の筒状である。本実施の形態では、鋼管杭10及び筒状組立部5のそれぞれの断面形状が正方形となっている。
【0116】
突出部9の受け面91の形状は、軸線Aを中心とする四角錐台の外周面の形状となっている。これにより、四角形の断面形状を持つ鋼管杭10の端部の内周部を受け面91によって受けることができる。
【0117】
杭内固定部材102における2つの固定端部102aは、鋼管杭10の周方向における互いに異なる位置で鋼管杭10の内周面に固定されている。本実施の形態では、図14に示すように、2つの固定端部102aが鋼管杭10の中心線に関して対称位置に位置している。また、本実施の形態では、鋼管杭10の四角形の断面形状において互いに対向する2つの辺のうち、一方の辺の中央部に一方の固定端部102aが位置しており、他方の辺の中央部に他方の固定端部102aが位置している。これにより、鋼管杭10の中心線に沿って鋼管杭10を見たとき、杭内固定部材102は、鋼管杭10の形状における4つの辺のうち、固定端部102aが位置していない2つの辺と平行に配置されている。
【0118】
突出部9には、杭内固定部材102が挿入される窪み部92が形成されている。窪み部92の深さ方向は、軸線Aに沿った方向と一致している。また、窪み部92の寸法は、杭内固定部材102の寸法に合わせた寸法となっている。これにより、本実施の形態では、窪み部92が軸線Aに直交する溝となっている。また、本実施の形態では、軸線Aに沿って見たとき、筒状組立部5の四角形の形状における4つの辺のうち、互いに対向する2つの辺と平行に窪み部92が形成されている。杭内固定部材102が窪み部92に挿入された状態では、鋼管杭10に対する先端ビット部材2の回転が阻止される。本実施の形態における他の構成は、実施の形態4と同様である。
【0119】
このように、鋼管杭10の断面形状が四角形である場合であっても、鋼管杭10の端部を筒状組立部5の内部に挿入することにより、杭内固定部材102を窪み部92に挿入することができる。これにより、ビット先端部7の位置において鋼管杭10に対する先端ビット部材2の回転をさらに確実に阻止することができる。
【0120】
実施の形態7.
図15は、実施の形態7による鋼管杭用ビットにおいて杭内固定部材が窪み部に挿入されている状態を示す断面図である。なお、図15は、実施の形態5における図13に対応する図である。実施の形態7では、鋼管杭10の形状が断面四角形の筒状であり、筒状組立部5の形状も断面四角形の筒状である。本実施の形態では、鋼管杭10及び筒状組立部5のそれぞれの断面形状が正方形となっている。
【0121】
突出部9の受け面91の形状は、軸線Aを中心とする四角錐台の外周面の形状となっている。これにより、四角形の断面形状を持つ鋼管杭10の端部の内周部を受け面91によって受けることができる。
【0122】
杭内固定部材102における4つの固定端部102aは、鋼管杭10の周方向における互いに異なる位置で鋼管杭10の内周面に固定されている。本実施の形態では、図15に示すように、4つの固定端部102aが鋼管杭10の中心線に関して対称位置に位置している。また、本実施の形態では、鋼管杭10の断面形状である四角形の4つの辺のそれぞれの中央部に4つの固定端部102aが1つずつ位置している。また、本実施の形態では、各固定端部102aが溶接によって鋼管杭10の内周面に固定されている。
【0123】
連結部102bは、4つの固定端部102aに繋がっている。これにより、連結部102bは、4つの固定端部102aと一体になっている。連結部102bの形状は、実施の形態5と同様に、X形状となっている。従って、杭内固定部材102は、実施の形態5と同様に、2本の棒状部が交差して組み合わされたX形状の部材となっている。鋼管杭10の中心線に沿って鋼管杭10を見たとき、鋼管杭10の四角形の形状における4つの辺のうち、互いに対向する2つの辺と杭内固定部材102の一方の棒状部とが互いに平行に配置され、残りの2つの辺と杭内固定部材102の他方の棒状部とが互いに平行に配置されている。
【0124】
突出部9には、杭内固定部材102が挿入される窪み部92が形成されている。窪み部92の形状及び寸法は、実施の形態5と同様に杭内固定部材102の形状及び寸法に合わせられている。また、本実施の形態では、軸線Aに沿って見たとき、筒状組立部5の四角形の形状における4つの辺のうち、互いに対向する2つの辺と平行な溝部と、残りの2つの辺と平行な溝部とが交差するX形状の溝が窪み部92として形成されている。杭内固定部材102が窪み部92に挿入された状態では、鋼管杭10に対する先端ビット部材2の回転が阻止される。本実施の形態における他の構成は、実施の形態5と同様である。
【0125】
このように、鋼管杭10の断面形状が四角形である場合、杭内固定部材102の形状をX形状とし、窪み部92をX形状の溝とすることにより、鋼管杭10の内周面に対する杭内固定部材102の固定状態をさらに安定させることができるとともに、杭内固定部材102が窪み部92に挿入される範囲をさらに拡大することができる。これにより、ビット先端部7の位置において鋼管杭10に対する先端ビット部材2の回転をさらに確実に阻止することができる。
【0126】
実施の形態8.
図16は、実施の形態8による鋼管杭用ビットにおいて杭内固定部材が窪み部に挿入されている状態を示す断面図である。なお、図16は、実施の形態6における図14に対応する図である。杭内固定部材102における2つの固定端部102aは、鋼管杭10の断面における四角形の4つの角部のうち、対角に位置する2つの角部に位置している。これにより、杭内固定部材102は、鋼管杭10の断面における四角形の対角線上に配置されている。本実施の形態では、各固定端部102aが溶接によって鋼管杭10の内周面に固定されている。
【0127】
窪み部92は、軸線Aに沿って見たとき、筒状組立部5の四角形の形状における4つの角部のうち、対角に位置する2つの角部を結ぶ直線、即ち対角線上に位置する溝となっている。杭内固定部材102が窪み部92に挿入された状態では、鋼管杭10に対する先端ビット部材2の回転が阻止される。本実施の形態における他の構成は、実施の形態6と同様である。
【0128】
このように、鋼管杭10の断面における四角形の対角線上に杭内固定部材102を配置し、筒状組立部5の対角線上に窪み部92を形成しても、鋼管杭10の内周面に対する杭内固定部材102の固定状態をさらに安定させることができるとともに、杭内固定部材102が窪み部92に挿入される範囲をさらに拡大することができる。これにより、ビット先端部7の位置において鋼管杭10に対する先端ビット部材2の回転をさらに確実に阻止することができる。
【0129】
実施の形態9.
図17は、実施の形態9による鋼管杭用ビットにおいて杭内固定部材が窪み部に挿入されている状態を示す断面図である。なお、図17は、実施の形態7における図15に対応する図である。杭内固定部材102における4つの固定端部102aは、鋼管杭10の断面における四角形の4つの角部に1つずつ位置している。また、本実施の形態では、各固定端部102aが溶接によって鋼管杭10の内周面に固定されている。
【0130】
連結部102bは、4つの固定端部102aに繋がっている。これにより、連結部102bは、4つの固定端部102aと一体になっている。連結部102bの形状は、実施の形態5と同様に、X形状となっている。従って、杭内固定部材102は、実施の形態5と同様に、2本の棒状部が交差して組み合わされたX形状の部材となっている。鋼管杭10の中心線に沿って鋼管杭10を見たとき、杭内固定部材102における2本の棒状部は、鋼管杭10の四角形の形状における2つの対角線上に配置されている。
【0131】
窪み部92は、軸線Aに沿って見たとき、X形状の溝となっている。窪み部92は、軸線Aに沿って見たとき、筒状組立部5の四角形の形状における4つの角部のうち、2つの角部を結ぶ対角線と、残りの2つの角部を結ぶ対角線とが交差するX形状の線上に位置している。杭内固定部材102が窪み部92に挿入された状態では、鋼管杭10に対する先端ビット部材2の回転が阻止される。本実施の形態における他の構成は、実施の形態6と同様である。
【0132】
このように、鋼管杭10の断面において互いに交差する対角線上にX形状の杭内固定部材102を配置し、筒状組立部5における互いに交差する対角線上にX形状の窪み部92を形成しても、鋼管杭10の内周面に対する杭内固定部材102の固定状態をさらに安定させることができるとともに、杭内固定部材102が窪み部92に挿入される範囲をさらに拡大することができる。これにより、ビット先端部7の位置において鋼管杭10に対する先端ビット部材2の回転をさらに確実に阻止することができる。
【0133】
なお、実施の形態1~3では、鋼管杭10の断面形状が円形となっており、筒状組立部5の断面形状が円形となっている。しかし、実施の形態1~3においても、鋼管杭10の断面形状を四角形とし、筒状組立部5の断面形状を四角形としてもよい。
【0134】
また、各上記実施の形態では、軸線Aに沿った方向における螺旋羽根組立部6の螺旋ピッチが、螺旋羽根組立部6において接合側端部52に近い箇所ほど大きくなっている。しかし、これに限定されない。軸線Aに沿った方向における螺旋羽根組立部6の螺旋ピッチは、軸線Aに沿った方向における螺旋羽根組立部6のどの箇所でも同じであってもよい。
【0135】
以下、この発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0136】
(付記1)
軸線を持つビット組立体
を備え、
前記ビット組立体は、複数のビット部材を有しており、
前記複数のビット部材は、互いに別部材となっているとともに、前記軸線に沿った方向へ並んで組み合わされており、
前記複数のビット部材のそれぞれは、ビット筒状部と、前記ビット筒状部の外周部に設けられたビット羽根部とを有しており、
前記ビット組立体では、複数の前記ビット筒状部が前記軸線に沿った方向へ並ぶことにより筒状組立部が形成されているとともに、複数の前記ビット羽根部が螺旋状に並ぶことにより螺旋羽根組立部が形成されており、
前記筒状組立部の一端部には、ビット先端部が設けられており、
前記筒状組立部の他端部は、接合側端部となっており、
前記接合側端部から前記ビット先端部に向けて前記筒状組立部の内部に鋼管杭が挿入された状態で、前記接合側端部が前記鋼管杭に接合される鋼管杭用ビット。
(付記2)
前記ビット組立体において互いに隣り合う2つの前記ビット部材の間には、少なくとも1つの嵌合部が設けられており、
前記嵌合部は、一方の前記ビット部材から突出している凸部と、他方の前記ビット部材に形成され、前記凸部が嵌っている凹部とを有している付記1に記載の鋼管杭用ビット。
(付記3)
前記ビット先端部には、前記ビット先端部から前記筒状組立部の内部へ突出している突出部が設けられており、
前記突出部には、前記鋼管杭の端部の内周部を受ける受け面が形成されており、
前記受け面は、前記筒状組立部の内部から前記ビット先端部に向かって前記軸線から離れる方向へ前記軸線に対して傾斜している付記1又は付記2に記載の鋼管杭用ビット。
(付記4)
前記鋼管杭の内周面に固定された突起部材
を備え、
前記ビット先端部には、前記ビット先端部から前記筒状組立部の内部へ突出している突出部が設けられており、
前記突出部には、前記突起部材が挿入される窪み部が形成されている付記1又は付記2に記載の鋼管杭用ビット。
(付記5)
前記鋼管杭の内周面に固定された杭内固定部材
を備え、
前記杭内固定部材は、前記鋼管杭の周方向における互いに異なる位置で前記鋼管杭の内周面に固定された複数の固定端部と、前記複数の固定端部に繋がっている連結部とを有しており、
前記ビット先端部には、前記ビット先端部から前記筒状組立部の内部へ突出している突出部が設けられており、
前記突出部には、前記杭内固定部材が挿入される窪み部が形成されている付記1又は付記2に記載の鋼管杭用ビット。
(付記6)
前記接合側端部の内周部には、開先用斜面が前記接合側端部の全周にわたって形成されており、
前記開先用斜面は、前記筒状組立部の内部から前記接合側端部の外側に向かって前記軸線から離れる方向へ前記軸線に対して傾斜しており、
前記鋼管杭が前記筒状組立部の内部に挿入されることにより、前記鋼管杭の外周面と前記開先用斜面との間に溶接用の開先が形成される付記1~付記5のいずれか一項に記載の鋼管杭用ビット。
(付記7)
前記軸線に沿った方向における前記螺旋羽根組立部の螺旋ピッチは、前記螺旋羽根組立部において前記接合側端部に近い箇所ほど大きくなっている付記1~付記6のいずれか一項に記載の鋼管杭用ビット。
(付記8)
前記筒状組立部において互いに隣り合う2つの前記ビット筒状部は、筒状の胴部と、前記胴部に設けられた境界側端部とを有しており、
前記2つのビット筒状部のそれぞれの前記境界側端部は、前記2つのビット筒状部の境界を挟んで配置されており、
前記境界側端部の肉厚は、前記胴部の肉厚よりも厚くなっており、
前記境界側端部の内周部は、前記胴部の内周面よりも前記ビット筒状部の径方向内側へ張り出している付記1~付記7のいずれか一項に記載の鋼管杭用ビット。
(付記9)
前記ビット組立体において互いに隣り合う2つの前記ビット部材の境界では、一方の前記ビット部材に形成された第1対向面と、他方の前記ビット部材に形成された第2対向面とが、前記軸線に沿った方向において互いに対向しており、
前記第1対向面及び前記第2対向面のそれぞれは、前記軸線に直交する平面である付記1~付記8のいずれか一項に記載の鋼管杭用ビット。
【符号の説明】
【0137】
1 ビット組立体、2 先端ビット部材(ビット部材)、3 中間ビット部材(ビット部材)、4 接合ビット部材(ビット部材)、5 筒状組立部、6 螺旋羽根組立部、7 ビット先端部、9 突出部、10 鋼管杭、11,12,13 嵌合部、21 先端ビット筒状部(ビット筒状部)、21a 先端ビット胴部(胴部)、21b 先端ビット境界側端部(境界側端部)、22 先端ビット羽根部(ビット羽根部)、23 先端ビット端面(第1対向面)、31 中間ビット筒状部(ビット筒状部)、31a 中間ビット胴部(胴部)、31b 中間ビット第1境界側端部(境界側端部)、31c 中間ビット第2境界側端部(境界側端部)、32 中間ビット羽根部(ビット羽根部)、33 中間ビット第1端面(第2対向面)、34 中間ビット第2端面(第1対向面)、41 接合ビット筒状部(ビット筒状部)、41a 接合ビット胴部(胴部)、41b 接合ビット境界側端部(境界側端部)、42 接合ビット羽根部(ビット羽根部)、43 接合ビット端面(第2対向面)、52 接合側端部、53 開先用斜面、91 受け面、92 窪み部、101 突起部材、102 杭内固定部材、102a 固定端部、102b 連結部、111,121,131 凸部、112,122,132 凹部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17