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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105694
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】主従ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 3/00 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
B25J3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006679
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋介
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707HS27
3C707HT40
3C707JT04
3C707JU14
3C707KS17
3C707KS20
3C707KV01
3C707KV04
3C707KW05
3C707KW07
3C707LS02
3C707LS04
3C707LS13
3C707LU02
3C707LU06
(57)【要約】
【課題】主従ロボットシステムにおいて、主ロボットの姿勢を従ロボットの姿勢に一致させる際に、ユーザが違和感を覚えることを抑制する。
【解決手段】ユーザが加えた外力により姿勢が変更される主ロボット(20)と、主ロボットの姿勢に一致するように姿勢が制御される従ロボット(30)と、主ロボット及び従ロボットを制御する制御部(26,36)と、を備える主従ロボットシステム(10)であって、制御部は、主ロボットの姿勢と従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、主ロボットを動作させる加速度を制限加速度以下に制限して、主ロボットの姿勢を従ロボットの姿勢に一致させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが加えた外力により姿勢が変更される主ロボットと、前記主ロボットの姿勢に一致するように姿勢が制御される従ロボットと、前記主ロボット及び前記従ロボットを制御する制御部と、を備える主従ロボットシステムであって、
前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、前記主ロボットを動作させる加速度を制限加速度以下に制限して、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる、主従ロボットシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、さらに、前記主ロボットを動作させる速度を制限速度以下に制限して、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる、請求項1に記載の主従ロボットシステム。
【請求項3】
前記ユーザが前記主ロボットに前記外力を加えているか否か判定する判定部を備え、
前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、前記外力を加えていないと前記判定部により判定されたことを条件として、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる、請求項1又は2に記載の主従ロボットシステム。
【請求項4】
ユーザが加えた外力により姿勢が変更される主ロボットと、前記主ロボットの姿勢に一致するように姿勢が制御される従ロボットと、前記主ロボット及び前記従ロボットを制御する制御部と、を備える主従ロボットシステムであって、
前記ユーザが前記主ロボットに前記外力を加えているか否か判定する判定部を備え、
前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、前記外力を加えていないと前記判定部により判定されたことを条件として、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる、主従ロボットシステム。
【請求項5】
前記ユーザが前記主ロボットに触れているか否か判定する判定部を備え、
前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、前記主ロボットに触れていないと前記判定部により判定されたことを条件として、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる、請求項1又は2に記載の主従ロボットシステム。
【請求項6】
ユーザが加えた外力により姿勢が変更される主ロボットと、前記主ロボットの姿勢に一致するように姿勢が制御される従ロボットと、前記主ロボット及び前記従ロボットを制御する制御部と、を備える主従ロボットシステムであって、
前記ユーザが前記主ロボットに触れているか否か判定する判定部を備え、
前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、前記主ロボットに触れていないと前記判定部により判定されたことを条件として、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる、主従ロボットシステム。
【請求項7】
前記主ロボットの姿勢に前記従ロボットの姿勢を一致させない状態で前記ユーザが前記従ロボットの姿勢を微調整する微調整操作を可能にするとともに、前記微調整操作の履歴を記憶する微調整部を備え、
前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、前記微調整部により記憶された前記履歴における前記微調整操作の順に従って前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる操作順制御を実行する、請求項1~6のいずれか1項に記載の主従ロボットシステム。
【請求項8】
ユーザが加えた外力により姿勢が変更される主ロボットと、前記主ロボットの姿勢に一致するように姿勢が制御される従ロボットと、前記主ロボット及び前記従ロボットを制御する制御部と、を備える主従ロボットシステムであって、
前記主ロボットの姿勢に前記従ロボットの姿勢を一致させない状態で前記ユーザが前記従ロボットの姿勢を微調整する微調整操作を可能にするとともに、前記微調整操作の履歴を記憶する微調整部を備え、
前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、前記微調整部により記憶された前記履歴における前記微調整操作の順に従って前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる操作順制御を実行する、主従ロボットシステム。
【請求項9】
前記ユーザが前記主ロボットに前記外力を加えているか否か判定する判定部を備え、
前記制御部は、前記操作順制御の実行中に、前記外力を加えていると前記判定部により判定された場合に、前記操作順制御を中断し、前記中断の後に前記外力を加えていないと前記判定部により判定された場合に、前記操作順制御を前記中断した時点から再開する、請求項7又は8に記載の主従ロボットシステム。
【請求項10】
前記主ロボットの姿勢に前記従ロボットの姿勢を一致させない状態で前記ユーザが前記従ロボットの姿勢を微調整する微調整操作を可能にする操作器を備え、
前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれが所定量を超えた場合にその旨を報知し、
前記操作器は、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させるように前記制御部に指示可能である、請求項1~9のいずれか1項に記載の主従ロボットシステム。
【請求項11】
前記制御部は、前記ユーザが前記操作器を用いて前記微調整操作を実行している場合に、前記ユーザが加えた外力により前記主ロボットの姿勢が変更されることを禁止する、請求項10に記載の主従ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが加えた外力により姿勢が変更される主ロボットと、主ロボットの姿勢に一致するように姿勢が制御される従ロボットと、を備える主従ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業者が操作した操作ロボットの姿勢に一致するように対象ロボットの姿勢を制御する直接制御モードと、検出部で検出した外力の大きさが予め設定されている閾値を超えた場合に、検出した外力の方向に予め設定されている動作単位で対象ロボットの姿勢を制御する詳細制御モードとを切り替えるロボットの教示システムがある(特許文献1参照)。特許文献1に記載の教示システムでは、詳細制御モードにおいて、操作ロボットの姿勢と対象ロボットの姿勢とが乖離している場合に、操作ロボットの姿勢を対象ロボットの姿勢に一致させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-55458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の教示システムでは、操作ロボット(主ロボット)の姿勢を対象ロボット(従ロボット)の姿勢に一致させる際に、操作ロボットの姿勢が作業者(ユーザ)の意図と異なる姿勢に急激に変えられ、作業者が違和感を覚えるおそれがある。
【0005】
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、主従ロボットシステムにおいて、主ロボットの姿勢を従ロボットの姿勢に一致させる際に、ユーザが違和感を覚えることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
ユーザが加えた外力により姿勢が変更される主ロボットと、前記主ロボットの姿勢に一致するように姿勢が制御される従ロボットと、前記主ロボット及び前記従ロボットを制御する制御部と、を備える主従ロボットシステムであって、
前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、前記主ロボットを動作させる加速度を制限加速度以下に制限して、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる。
【0007】
上記構成によれば、主従ロボットシステムは、ユーザが加えた外力により姿勢が変更される主ロボットと、前記主ロボットの姿勢に一致するように姿勢が制御される従ロボットと、前記主ロボット及び前記従ロボットを制御する制御部と、を備えている。このため、ユーザが主ロボットに外力を加えて主ロボットの姿勢を変更する操作を行うことにより、従ロボットの姿勢を主ロボットの姿勢に一致させるように制御すること(以下、「主従ロボット操作」という)ができる。なお、制御部は、主ロボットに設けられて主ロボットを制御する第1制御部と、従ロボットに設けられて従ロボットを制御する第2制御部とを含んでいてもよい。また、制御部は、主ロボット又は従ロボットに設けられて、主ロボット及び従ロボットを制御する1つの制御部であってもよい。
【0008】
ここで、主ロボットの姿勢に従ロボットの姿勢を一致させない状態で従ロボットの姿勢を微調整(変更)すると、主ロボットの姿勢と従ロボットの姿勢とにずれが生じる。また、主ロボットの型式(形状)と従ロボットの型式(形状)とが異なる場合に、主従ロボット操作を実行する間に、主ロボットの姿勢と従ロボットの姿勢とにずれが生じることがある。これらの場合に、主ロボットの姿勢を従ロボットの姿勢に一致させる制御を単純に実行すると、主ロボットの姿勢がユーザの意図と異なる姿勢に急激に変えられ、ユーザが違和感を覚えるおそれがある。
【0009】
この点、前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、前記主ロボットを動作させる加速度を制限加速度以下に制限して、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる。このため、主ロボットを動作させる速度が急激に変化することを抑制することができ、ひいては主ロボットの姿勢が急激に変化することを抑制することができる。したがって、主ロボットの姿勢を従ロボットの姿勢に一致させる際に、主ロボットの姿勢がユーザの意図と異なる姿勢に変えられたとしても、ユーザが違和感を覚えることを抑制することができる。
【0010】
第2の手段では、前記制御部は、主従ロボットシステムは、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、さらに、前記主ロボットを動作させる速度を制限速度以下に制限して、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる。こうした構成によれば、主ロボットの速度が制限速度を超えた状態で、主ロボットの姿勢がユーザの意図と異なる姿勢に変えられることを抑制することができ、ユーザが違和感を覚えることをさらに抑制することができる。
【0011】
第3の手段では、前記ユーザが前記主ロボットに前記外力を加えているか否か判定する判定部を備え、前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、前記外力を加えていないと前記判定部により判定されたことを条件として、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる。
【0012】
第4の手段は、
ユーザが加えた外力により姿勢が変更される主ロボットと、前記主ロボットの姿勢に一致するように姿勢が制御される従ロボットと、前記主ロボット及び前記従ロボットを制御する制御部と、を備える主従ロボットシステムであって、
前記ユーザが前記主ロボットに前記外力を加えているか否か判定する判定部を備え、
前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、前記外力を加えていないと前記判定部により判定されたことを条件として、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる。
【0013】
上記構成によれば、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、ユーザが主ロボットに外力を加えていない場合に、前記主ロボットの姿勢が前記従ロボットの姿勢に一致させられる。一方、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、ユーザが主ロボットに外力を加えている場合には、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる制御が実行されない。したがって、ユーザが主ロボットに外力を加えている場合に、主ロボットの姿勢がユーザの意図と異なる姿勢に変えられることを抑制することができ、ユーザが違和感を覚えることを抑制することができる。
【0014】
第5の手段では、前記ユーザが前記主ロボットに触れているか否か判定する判定部を備え、前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、前記主ロボットに触れていないと前記判定部により判定されたことを条件として、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる。
【0015】
第6の手段は、
ユーザが加えた外力により姿勢が変更される主ロボットと、前記主ロボットの姿勢に一致するように姿勢が制御される従ロボットと、前記主ロボット及び前記従ロボットを制御する制御部と、を備える主従ロボットシステムであって、
前記ユーザが前記主ロボットに触れているか否か判定する判定部を備え、
前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、前記主ロボットに触れていないと前記判定部により判定されたことを条件として、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる。
【0016】
上記構成によれば、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、ユーザが主ロボットに触れていない場合に、前記主ロボットの姿勢が前記従ロボットの姿勢に一致させられる。一方、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、ユーザが主ロボットに触れている場合には、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる制御が実行されない。したがって、ユーザが主ロボットに触れている場合に、主ロボットの姿勢がユーザの意図と異なる姿勢に変えられることを抑制することができ、ユーザが違和感を覚えることを抑制することができる。
【0017】
第7の手段では、前記主ロボットの姿勢に前記従ロボットの姿勢を一致させない状態で前記ユーザが前記従ロボットの姿勢を微調整する微調整操作を可能にするとともに、前記微調整操作の履歴を記憶する微調整部を備え、前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、前記微調整部により記憶された前記履歴における前記微調整操作の順に従って前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる操作順制御を実行する。
【0018】
第8の手段は、
ユーザが加えた外力により姿勢が変更される主ロボットと、前記主ロボットの姿勢に一致するように姿勢が制御される従ロボットと、前記主ロボット及び前記従ロボットを制御する制御部と、を備える主従ロボットシステムであって、
前記主ロボットの姿勢に前記従ロボットの姿勢を一致させない状態で前記ユーザが前記従ロボットの姿勢を微調整する微調整操作を可能にするとともに、前記微調整操作の履歴を記憶する微調整部を備え、
前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、前記微調整部により記憶された前記履歴における前記微調整操作の順に従って前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる操作順制御を実行する。
【0019】
上記構成によれば、微調整部は、前記主ロボットの姿勢に前記従ロボットの姿勢を一致させない状態で前記ユーザが前記従ロボットの姿勢を微調整する微調整操作を可能にするとともに、前記微調整操作の履歴を記憶する。このため、ユーザは、微調整操作を実行することにより従ロボットの姿勢を微調整することができる。このとき、前記主ロボットの姿勢に前記従ロボットの姿勢が一致させられないため、主ロボットの姿勢と従ロボットの姿勢とにずれが生じる。
【0020】
そして、前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれを解消する際に、前記微調整部により記憶された前記履歴における前記微調整操作の順に従って前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させる操作順制御を実行する。このため、前記主ロボットの姿勢が前記従ロボットの姿勢に最少動作で直線的に一致させられることを抑制することができ、ひいては主ロボットの姿勢が急激に変化することを抑制することができる。したがって、主ロボットの姿勢を従ロボットの姿勢に一致させる際に、主ロボットの姿勢がユーザの意図と異なる姿勢に変えられたとしても、ユーザが違和感を覚えることを抑制することができる。
【0021】
第9の手段では、前記ユーザが前記主ロボットに前記外力を加えているか否か判定する判定部を備え、前記制御部は、前記操作順制御の実行中に、前記外力を加えていると前記判定部により判定された場合に、前記操作順制御を中断し、前記中断の後に前記外力を加えていないと前記判定部により判定された場合に、前記操作順制御を前記中断した時点から再開する。
【0022】
上記構成によれば、前記制御部は、前記操作順制御の実行中に、前記外力を加えていると前記判定部により判定された場合に、前記操作順制御を中断する。このため、前記操作順制御を開始していても、ユーザが主ロボットに外力を加えた場合は、前記操作順制御を中断することきができる。したがって、ユーザが主ロボットに外力を加えている場合に、主ロボットの姿勢がユーザの意図と異なる姿勢に変えられることを抑制することができ、ユーザが違和感を覚えることを抑制することができる。
【0023】
そして、前記制御部は、前記中断の後に前記外力を加えていないと前記判定部により判定された場合に、前記操作順制御を前記中断した時点から再開する。このため、前記操作順制御を中断した後に、ユーザが主ロボットに外力を加えなくなった場合は、前記操作順制御を中断した時点から再開することができる。したがって、前記操作順制御を最初からやり直す場合に比べて、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に速やかに一致させることができる。
【0024】
第10の手段では、前記主ロボットの姿勢に前記従ロボットの姿勢を一致させない状態で前記ユーザが前記従ロボットの姿勢を微調整する微調整操作を可能にする操作器を備え、前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれが所定量を超えた場合にその旨を報知し、前記操作器は、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させるように前記制御部に指示可能である。
【0025】
上記構成によれば、操作器は、前記主ロボットの姿勢に前記従ロボットの姿勢を一致させない状態で前記ユーザが前記従ロボットの姿勢を微調整する微調整操作を可能にする。このため、ユーザは、操作器を用いて微調整操作を実行することにより、従ロボットの姿勢を微調整することができる。
【0026】
前記制御部は、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれが所定量を超えた場合にその旨を報知する。このため、ユーザは、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれが所定量を超えたことを知ることができる。そして、ユーザは、前記主ロボットの姿勢と前記従ロボットの姿勢とのずれが所定量を超えたことを知った場合に、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させるように操作器等を介して前記制御部に指示することができる。この場合は、前記主ロボットの姿勢を前記従ロボットの姿勢に一致させるようにユーザが指示しているため、ユーザが違和感を覚えることを抑制することができる。
【0027】
第11の手段では、前記制御部は、前記ユーザが前記操作器を用いて前記微調整操作を実行している場合に、前記ユーザが加えた外力により前記主ロボットの姿勢が変更されることを禁止する。
【0028】
上記構成によれば、前記制御部は、前記ユーザが前記操作器を用いて前記微調整操作を実行している場合に、前記ユーザが加えた外力により前記主ロボットの姿勢が変更されることを禁止する。このため、主従ロボット操作よりも操作器を用いた微調整操作を優先することができ、主従ロボット操作による従ロボットの制御と、操作器を用いた微調整操作による従ロボットの制御とが干渉することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】主従ロボットシステムの模式図。
図2】主従ロボット操作が行われた場合の各軸の角度を示す図。
図3】インチング動作後の各軸の角度を示す図。
図4】ずれ解消操作後の各軸の角度を示す図。
図5】主制御の手順を示すフローチャート。
図6】従制御の手順を示すフローチャート。
図7】インチングモードの手順を示すフローチャート。
図8】ずれ解消動作の手順を示すフローチャート。
図9】主制御の変更例の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、マスタロボットと、スレーブロボットと、制御部とを備える主従ロボットシステムに具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1に示すように、主従ロボットシステム10は、マスタロボット20とスレーブロボット30とを備えている。
【0032】
マスタロボット20(主ロボット)は、例えば6軸の垂直多関節型ロボットであり、基台(ベース)21とアーム22とを備えている。アーム22の隣り合うリンクは、関節を介して相対回転可能に連結されている。各関節(各軸)は、各関節に対応する各モータにより駆動される。
【0033】
アーム22の先端には、ハンド23が取り付けられている。ハンド23は、例えば一対の爪を備えており、一対の爪の間隔を拡大及び縮小する開閉動作を行う。
【0034】
基台21の内部には、後述する微調整操作の履歴を記憶する記憶部25、及びマスタロボット20及びハンド23の動作を制御する制御部26が設けられている。制御部26は、CPU、ROM、RAM、駆動回路、及び入出力インターフェース等を備えるコンピュータとして構成されている。
【0035】
マスタロボット20の各関節(各軸)には、各関節の回転角度を検出するエンコーダ(図示略)がそれぞれ設けられている。すなわち、エンコーダは、アーム22の制御点の位置及び方向(以下、「アーム22の姿勢」という)を検出する。制御点は、アーム22の先端の中央と、一対の爪の中間(TCP:Tool Center Position)とから選択可能である。
【0036】
マスタロボット20の各関節には、ブレーキ(図示略)が設けられている。ブレーキは、各関節を制動して、各関節の角度が変更されることを規制する。
【0037】
制御部26は、アーム22に作用する外力に従って、アーム22の姿勢を制御する。詳しくは、制御部26は、アーム22に作用する重力及び摩擦力のみを補償するトルクを各関節のモータにより発生させ、アーム22を外力に従って動作させる柔軟制御を行う。そして、制御部26は、アーム22に作用する外力がなくなった時のアーム22の姿勢を保持する。すなわち、マスタロボット20は、ユーザが加えた外力によりアーム22の姿勢を変更して保持可能である。本実施形態では、ユーザは、ダイレクトティーチによりアーム22を直接掴んで移動させることができ、そしてアーム22の姿勢を保持することができる(ダイレクトティーチモード)。制御部26は、マスタロボット20の各関節のエンコーダの検出結果を、スレーブロボット30の制御部36へ送信する。
【0038】
マスタロボット20には、ケーブル29によってスレーブロボット30が接続されている。スレーブロボット30(従ロボット)は、例えばマスタロボット20と同型(例えば6軸の垂直多関節型)でマスタロボット20よりも大型のロボットである。スレーブロボット30は、安全柵G内に設置されている。スレーブロボット30は、マスタロボット20よりも大型であること、マスタロボット20と形状が若干異なることを除いて、マスタロボット20と同様の構成を備えている。スレーブロボット30は、基台(ベース)31とアーム32とを備えている。アーム32の先端には、ハンド(図示略)が取り付けられる。スレーブロボット30の各関節(対応関節)は、マスタロボット20の各関節に対応している。
【0039】
基台31の内部には、スレーブロボット30及びハンドの動作を制御する制御部36が設けられている。制御部36は、CPU、ROM、RAM、駆動回路、及び入出力インターフェース等を備えるコンピュータとして構成されている。制御部26と制御部36とはケーブル29を介して通信可能であり、互いに情報を送受信する。
【0040】
スレーブロボット30の各関節(各軸)には、各関節の回転角度を検出するエンコーダ(図示略)がそれぞれ設けられている。すなわち、エンコーダは、アーム32の制御点の位置及び方向(以下、「アーム32の姿勢」という)を検出する。制御点は、アーム32の先端の中央と、例えば一対の爪の中間(TCP:Tool Center Position)とから選択可能である。
【0041】
スレーブロボット30の各関節には、ブレーキ(図示略)が設けられている。ブレーキは、各関節を制動して、各関節の角度が変更されることを規制する。
【0042】
制御部36は、スレーブロボット30の各関節(各軸)の角度を、マスタロボット20の対応する各関節(各軸)の角度に一致させるように、スレーブロボット30の各関節のモータを制御する。すなわち、制御部36は、ユーザがマスタロボット20に外力を加えてマスタロボット20の姿勢を変更する操作を行うことにより、スレーブロボット30の姿勢をマスタロボット20の姿勢に一致させるように制御する(以下、「主従ロボット操作」という)。
【0043】
詳しくは、制御部36は、マスタロボット20の各関節のエンコーダ、及びスレーブロボット30の各関節のエンコーダの検出結果に基づいて、スレーブロボット30の各関節のモータをフィードバック制御する。すなわち、スレーブロボット30の各関節は、マスタロボット20の各関節に倣った動きを追従して行う。制御部36は、スレーブロボット30の各関節のエンコーダの検出結果を、マスタロボット20の制御部26へ送信する。なお、マスタロボット20の制御部26及びスレーブロボット30の制御部36により、制御部が構成されている。
【0044】
図2に示すように、主従ロボット操作が行われることにより、マスタロボット20の各軸の角度θ1~θ6に、スレーブロボット30の各軸の角度θ1~θ6が一致させられる。
【0045】
図3に示すように、マスタロボット20には、操作器40が接続されている。操作器40は、ティーチングペンダント、タブレット端末、スマートフォン、ノートPC、PC等である。なお、操作器40は、デッドマンスイッチを備え、デッドマンスイッチをユーザが強く押す又はデッドマンスイッチからユーザが手を反した場合に、スレーブロボット30を停止させることが望ましい。
【0046】
操作器40は、スレーブロボット30のアーム32を最少単位又は微小単位で動かすインチング動作をユーザが実行可能にする。ユーザは、操作器40を操作して、アーム32の姿勢を変更する単位を、例えば0.1~1.0[mm]に設定可能である。ユーザは、操作器40を操作することにより、制御部26,36を介してアーム32の姿勢を設定した単位でインチング動作させる(以下、「微調整操作」という)。このとき、制御部26は、微調整操作の履歴を記憶部25に記憶させる。なお、操作器40、記憶部25、制御部26、及び制御部36により、微調整部が構成されている。すなわち、微調整部は、マスタロボット20の姿勢にスレーブロボット30の姿勢を一致させない状態でユーザがスレーブロボット30の姿勢を微調整する微調整操作を可能にするとともに、微調整操作の履歴を記憶する。
【0047】
制御部26は、ユーザが操作器40を用いて微調整操作を実行している場合に、ユーザが加えた外力によりマスタロボット20の姿勢が変更されることを禁止する。具体的には制御部26は、ユーザが操作器40を用いて微調整操作を実行している場合に、マスタロボット20の各関節のブレーキを作動させて、各関節の角度を変更不能にする。なお、制御部26は、ユーザが操作器40を用いて微調整操作を実行している場合に、マスタロボット20の各関節の角度を現在の角度に維持する制御を行うことにより、各関節の角度を変更不能にすることもできる。
【0048】
スレーブロボット30の各軸J1~J6の角度がθ1~θ6である時、制御点の座標(X,Y,Z,Rx,Ry,Rz)は座標(X1,Y1,Z1,Rx1,Ry1,Rz1)である。X,Y,Zは、それぞれX軸、Y軸、Z軸の座標である。Rx,Ry,Rzは、それぞれX軸回り、Y軸回り、Z軸回りの回転角度である。
【0049】
ここで、ユーザの微調整操作により、スレーブロボット30の制御点の座標(X,Y,Z,Rx,Ry,Rz)が(a1,a2,a3,a4,a5,a6)だけ変更されたとする。このとき、マスタロボット20の各軸J1~J6の角度は変更不能とされている。微調整操作は、1回の操作であってもよいし、複数回の操作の合計であってもよい。
【0050】
その結果、スレーブロボット30の制御点の座標は、座標(X1+a1,Y1+a2,Z1+a3,Rx1+a4,Ry1+a5,Rz1+a6)となる。スレーブロボット30の制御点の座標が座標(X1+a1,Y1+a2,Z1+a3,Rx1+a4,Ry1+a5,Rz1+a6)である時、スレーブロボット30の各軸J1~J6の角度は、それぞれθ1+b1,θ2+b2,θ3+b3,θ4+b4,θ5+b5,θ6+b6である。したがって、マスタロボット20の各軸J1~J6の角度と、スレーブロボット30の各軸J1~J6の角度とにずれが生じることとなる。
【0051】
そこで、図4に示すように、制御部26は、マスタロボット20の各軸J1~J6の角度(マスタロボット20の姿勢)と、スレーブロボット30の各軸J1~J6の角度(スレーブロボット30の姿勢)とのずれを解消する。詳しくは、制御部26は、姿勢のずれを解消するずれ解消動作をマスタロボット20に実行させる。これにより、マスタロボット20の各軸J1~J6の角度が、スレーブロボット30の各軸J1~J6の角度に一致させられる。このとき、マスタロボット20の各軸J1~J6の角度をスレーブロボット30の各軸J1~J6の角度に一致させる制御を単純に実行すると、マスタロボット20の各軸J1~J6の角度がユーザの意図と異なる角度に急激に変えられ、ユーザが違和感を覚えるおそれがある。
【0052】
この点、制御部26は、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれ量が所定ずれ量を超えた場合に、その旨をユーザに報知する。操作器40は、マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させるように制御部26に指示可能である。そして、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれ量を解消するずれ解消操作(マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させる指示)をユーザが実行したことを条件として、制御部26はずれ解消動作を実行する。さらに、制御部26は、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれを解消する際に、マスタロボット20を動作させる加速度を制限加速度Au以下に制限する。
【0053】
図5は、マスタロボット20の制御部26により実行される主制御の手順を示すフローチャートである。
【0054】
まず、マスタロボット20のモードをダイレクトティーチモードに設定する(S10)。ユーザは、ダイレクトティーチによりマスタロボット20を目標姿勢まで移動させる(S11)。ここで、目標姿勢とは、スレーブロボット30の制御点が設定対象の教示点に到達した状態、あるいは、設定対象の教示点の近傍に到達した状態におけるマスタロボット20の姿勢を意味する。
【0055】
このとき、制御部26は、ユーザの手によってマスタロボット20の姿勢が変更された場合、マスタロボット20の姿勢を特定可能な各モータの回転角度等の情報を教示情報として制御部36に適宜送信する。このとき送信される教示情報には、ダイレクトティーチモードで教示中であることを示す情報も含まれている。
【0056】
一方、スレーブロボット30の制御部36は、マスタロボット20で教示が開始されると、図6に示すように、制御部26から教示情報を受信したか否か判定する(S20)。制御部36は、教示情報を受信していない判定した場合(S20:NO)、教示が完了したか否か判定する(S22)。この判定において、教示が完了していないと判定した場合(S22:NO)、ステップS20の処理から再度実行する。一方、この判定において、教示が完了したと判定した場合(S22:YES)、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0057】
これに対して、制御部36は、制御部26から教示情報を受信したと判定した場合(S20:YES)、教示情報に基づいてスレーブロボット30の姿勢を変更する(S21)。このとき、マスタロボット20がダイレクトティーチモードで動作している場合には、ユーザによってマスタロボット20の姿勢が変更されるごとに教示情報を受信することから、制御部36は、マスタロボット20の姿勢の変化に追従するように、スレーブロボット30の姿勢を変更する。
【0058】
図5に戻り、ユーザは、マスタロボット20を目標姿勢あるいはその近傍まで移動させると、現在のマスタロボット20の姿勢で十分であるか、微調整つまりは詳細な位置決めが必要であるか否か判定する(S12)。そして、ユーザは、微調整が必要でないと判定した場合(S12:NO)、現在のマスタロボット20の姿勢を教示点として設定する(S14)。以下、現在のマスタロボット20の姿勢を、便宜的に現姿勢と称する。具体的には、マスタロボット20の現姿勢における制御点の位置及び方向を教示点として設定する。このとき、制御部26から、マスタロボット20の現姿勢、および現姿勢を教示点とする旨の情報が教示情報として制御部36へ送信される。
【0059】
一方、ユーザが操作器40によりインチングモードへの切り替え操作を入力した場合等、微調整が必要である場合(S12:YES)、制御部26はインチングモードを実行する(S13)。
【0060】
図7は、インチングモードの手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、制御部26により実行される。
【0061】
マスタロボット20の各軸J1~J6のブレーキを作動させる(S130)。微調整操作が入力されたか否か判定する(S131)。この判定において、微調整操作が入力されていないと判定した場合(S131:NO)、微調整操作が終了したか否か判定する(S134)。具体的には、ユーザが操作器40においてインチングモードを終了させる操作を実行した場合に、微調整操作が終了したと判定する。微調整操作が終了していないと判定した場合(S134:NO)、S131の処理から再度実行する。
【0062】
一方、S131の判定において、微調整操作が入力されたと判定した場合(S131:YES)、インチング動作を実行する(S132)。具体的には、入力された微調整操作に応じて、制御部36を介してアーム32の姿勢を設定した単位でインチング動作させる。微調整操作では、ユーザが操作器40のボタンを1度押す毎に設定した単位だけスレーブロボット30を動作させ、ボタンを長押しした場合もボタンを1度押したとして扱う。
【0063】
続いて、入力された微調整操作を、記憶部25に記憶させる(S133)。具体的には、インチングモードに切り替えてから入力された微調整操作(実行したインチング動作)を、記憶部25に時系列に記憶させる。
【0064】
S134の判定において、微調整操作が終了したと判定した場合(S134:YES)、マスタロボット20の各軸J1~J6のブレーキを解除する(S135)。その後、図5のS13の処理の次の処理へ戻る(RET)。
【0065】
図5に戻り、S14の処理の後、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれ量が所定ずれ量を超えているか否か判定する(S15)。具体的には、主従ロボット操作時にはマスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30姿勢とが一致しているとみなして、インチング動作によりスレーブロボット30が1.0[cm]を超えて動かされた場合にずれ量が所定ずれ量を超えていると判定する。なお、マスタロボット20の各軸の角度と、スレーブロボット30の対応する各軸の角度との差に基づいて、ずれ量が所定ずれ量を超えていると判定することもできる。
【0066】
S15の判定において、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれ量が所定ずれ量を超えていると判定した場合(S15:YES)、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれ量が大きいことをユーザに報知する。例えば、操作器40の表示部にずれ量が大きいことを表示させてもよいし、操作器40のスピーカによりずれ量が大きいことを音声案内させてもよい。一方、S15の判定において、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれ量が所定ずれ量を超えていないと判定した場合(S15:NO)、S17の処理へ進む。すなわち、制御部26は、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれ量が所定ずれ量を超えていないと判定した場合は、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とがずれていても主従ロボット操作を継続する。
【0067】
ユーザが操作器40によりずれ解消操作を行ったか否か判定する(S17)。この判定において、ユーザが操作器40によりずれ解消操作を行ったと判定した場合(S17:YES)、ずれ解消動作を実行する(S18)。
【0068】
図8は、ずれ解消動作の手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、制御部26により実行される。
【0069】
微調整操作の履歴を、記憶部25から読み込む(S180)。微調整操作の順にマスタロボット20を動作させる(S181)。詳しくは、記憶された微調整操作の履歴における微調整操作の順に従って、マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させる制御(以下、「操作順制御」という)を実行する。すなわち、スレーブロボット30においてインチング動作が実行された順と同じ順で、インチング動作に対応する動作をマスタロボット20に実行させる。このとき、マスタロボット20を動作させる加速度、具体的には制御点を移動させる際の加速度を制限加速度Au以下に制限して、マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させる。さらに、マスタロボット20を動作させる速度、具体的には制御点を移動させる際の速度を制限速度Vu以下に制限して、マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させる。
【0070】
操作順制御の実行中に、ユーザがマスタロボット20に外力を加えているか否か判定する(S182)。この判定において、操作順制御の実行中に、ユーザがマスタロボット20に外力を加えていると判定した場合(S182:YES)、操作順制御を中断する(S184)。そして、操作順制御における中断時のマスタロボット20の動作に対応する微調整操作を記憶する(S185)。
【0071】
続いて、ダイレクトティーチモードに設定する(S186)。ユーザがマスタロボット20に外力を加えているか否か判定する(S187)。この判定において、ユーザがマスタロボット20に外力を加えていると判定した場合(S187:YES)、S186の処理から再度実行する。
【0072】
一方、S187の判定において、ユーザがマスタロボット20に外力を加えていないと判定した場合(S187:NO)、S181の処理から再度実行する。この場合、S181の処理において、S185の処理で記憶した中断時のマスタロボット20の動作に対応する微調整操作から順に、マスタロボット20を動作させる。すなわち、操作順制御の中断の後に、ユーザがマスタロボット20に外力を加えていないと判定した場合に、操作順制御を中断した時点から再開する。
【0073】
また、S182の処理において、操作順制御の実行中に、ユーザがマスタロボット20に外力を加えていないと判定した場合(S182:NO)、微調整操作の履歴における最後の微調整操作までマスタロボット20の動作が完了したか否か判定する(S183)。この判定において、最後の微調整操作までマスタロボット20の動作が完了していないと判定した場合(S183:NO)、S181の処理から再度実行する。一方、この判定において、最後の微調整操作までマスタロボット20の動作が完了したと判定した場合(S183:YES)、図5のS18の処理の次の処理へ戻る(RET)。なお、S182,S187の処理が判定部としての処理に相当する。
【0074】
図5のS19の処理において、全ての教示が完了したか否か判定する(S19)。例えば、ユーザが操作器40によりティーチングを終了する操作を実行した場合に、制御部26は全ての教示が完了したと判定する。この判定において、全ての教示が完了していないと判定した場合(S19:NO)、S11の処理から再度実行する。一方、この判定において、全ての教示が完了したと判定した場合(S19:YES)、この一連の処理を終了する(END)。
【0075】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0076】
・制御部26は、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれを解消する際に、マスタロボット20を動作させる加速度を制限加速度Au以下に制限して、マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させる。このため、マスタロボット20を動作させる速度が急激に変化することを抑制することができ、ひいてはマスタロボット20の姿勢が急激に変化することを抑制することができる。したがって、マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させる際に、マスタロボット20の姿勢がユーザの意図と異なる姿勢に変えられたとしても、ユーザが違和感を覚えることを抑制することができる。
【0077】
制御部26は、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれを解消する際に、さらに、マスタロボット20を動作させる速度を制限速度Vu以下に制限して、マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させる。こうした構成によれば、マスタロボット20の速度が制限速度Vuを超えた状態で、マスタロボット20の姿勢がユーザの意図と異なる姿勢に変えられることを抑制することができ、ユーザが違和感を覚えることをさらに抑制することができる。
【0078】
・制御部26は、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれを解消する際に、記憶部25により記憶された履歴における微調整操作の順に従ってマスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させる操作順制御を実行する。このため、マスタロボット20の姿勢がスレーブロボット30の姿勢に最少動作で直線的に一致させられることを抑制することができ、ひいてはマスタロボット20の姿勢が急激に変化することを抑制することができる。したがって、マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させる際に、マスタロボット20の姿勢がユーザの意図と異なる姿勢に変えられたとしても、ユーザが違和感を覚えることを抑制することができる。
【0079】
・制御部26は、操作順制御の実行中に、ユーザがマスタロボット20に外力を加えていると判定した場合に、操作順制御を中断する。このため、操作順制御を開始していても、ユーザがマスタロボット20に外力を加えた場合は、操作順制御を中断することきができる。したがって、ユーザがマスタロボット20に外力を加えている場合に、マスタロボット20の姿勢がユーザの意図と異なる姿勢に変えられることを抑制することができ、ユーザが違和感を覚えることを抑制することができる。
【0080】
・制御部26は、中断の後にユーザがマスタロボット20に外力を加えていないと判定した場合に、操作順制御を中断した時点から再開する。このため、操作順制御を中断した後に、ユーザがマスタロボット20に外力を加えなくなった場合は、操作順制御を中断した時点から再開することができる。したがって、操作順制御を最初からやり直す場合に比べて、マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に速やかに一致させることができる。
【0081】
・操作器40、及び制御部26,36は、マスタロボット20の姿勢にスレーブロボット30の姿勢を一致させない状態でユーザがスレーブロボット30の姿勢を微調整する微調整操作を可能にする。このため、ユーザは、操作器40を用いて微調整操作を実行することにより、スレーブロボット30の姿勢を微調整することができる。
【0082】
・制御部26は、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれが所定ずれ量(所定量)を超えた場合にその旨を報知する。このため、ユーザは、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれが所定ずれ量を超えたことを知ることができる。そして、ユーザは、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれが所定ずれ量を超えたことを知った場合に、マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させるように制御部26に指示することができる。この場合は、マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させるようにユーザが指示しているため、ユーザが違和感を覚えることを抑制することができる。
【0083】
・制御部26は、ユーザが操作器40を用いて微調整操作を実行している場合に、ユーザが加えた外力によりマスタロボット20の姿勢が変更されることを禁止する。このため、主従ロボット操作よりも操作器40を用いた微調整操作を優先することができ、主従ロボット操作によるスレーブロボット30の制御と、操作器40を用いた微調整操作によるスレーブロボット30の制御とが干渉することを抑制することができる。
【0084】
なお、上記の実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0085】
図7において、S130の処理及びS135の処理を省略することもできる。
【0086】
・スレーブロボット30が微調整操作の履歴を記憶する記憶部35を備え、制御部26は記憶部35に記憶された微調整操作の履歴を読み込んでもよい。
【0087】
図8のS184の処理において操作順制御を中断した時に、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれ量が所定ずれ量以下である場合に、図8のずれ解消動作の一連の処理を終了することもできる。また、図8のS184の処理において操作順制御を中断し、その後に外力の入力がなくなった場合に、ずれ解消動作の開始時の状態にマスタロボット20を戻し、記憶部25に記憶された微調整操作の履歴の最初から操作順制御をやり直すこともできる。
【0088】
・マスタロボット20は、ユーザがマスタロボット20に外力を加えているか否か判定する判定部を備えていてもよい。判定部は、例えば各関節のモータの電流値を測定し、電流値に比例するトルクを算出することにより、外力の大きさと方向と(外力の有無)を判定する。そして、制御部26は、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれを解消する際に、図9に示すように、ユーザがマスタロボット20に外力を加えていないと判定部により判定されたことを条件として(S30)、マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させる、といった構成を採用することもできる。なお、モータにトルクセンサを設け、トルクセンサの検出結果からトルクを算出することもできる。
【0089】
上記構成によれば、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれを解消する際に、ユーザがマスタロボット20に外力を加えていない場合(S30:NO)に、マスタロボット20の姿勢がスレーブロボット30の姿勢に一致させられる。一方、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれを解消する際に、ユーザがマスタロボット20に外力を加えている場合(S30:YES)には、マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させる制御が実行されない。したがって、ユーザがマスタロボット20に外力を加えている場合に、マスタロボット20の姿勢がユーザの意図と異なる姿勢に変えられることを抑制することができ、ユーザが違和感を覚えることを抑制することができる。なお、S30の処理を、図5のS17の処理とS18の処理との間に入れることもできる。
【0090】
・マスタロボット20は、ユーザがマスタロボット20に触れているか否か判定する判定部を備えていてもよい。判定部は、例えばアーム22に設けられた静電容量センサ等の検出結果に基づいて、ユーザがマスタロボット20に触れているか否か判定する。そして、制御部26は、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれを解消する際に、マスタロボット20に触れていないと判定部により判定されたことを条件として、マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させる、といった構成を採用することもできる。この場合、図9のS30の処理を、ユーザがマスタロボット20に触れているか否か判定する処理に変更してもよいし、図5のS17の処理とS18の処理との間に、ユーザがマスタロボット20に触れているか否か判定する処理を入れてもよい。
【0091】
上記構成によれば、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれを解消する際に、ユーザがマスタロボット20に触れていない場合に、マスタロボット20の姿勢がスレーブロボット30の姿勢に一致させられる。一方、マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれを解消する際に、ユーザがマスタロボット20に触れている場合には、マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させる制御が実行されない。したがって、ユーザがマスタロボット20に触れている場合に、マスタロボット20の姿勢がユーザの意図と異なる姿勢に変えられることを抑制することができ、ユーザが違和感を覚えることを抑制することができる。
【0092】
図8のS181の処理において、マスタロボット20を動作させる速度、具体的には制御点を移動させる際の速度を制限速度Vu以下に制限することを、省略することもできる。また、図8のS181の処理において、マスタロボット20を動作させる加速度、具体的には制御点を移動させる際の加速度を制限加速度Au以下に制限することを、省略することもできる。
【0093】
・インチングモードは、ユーザが操作器40により微調整操作を入力する構成に限らず、特開2019-55458号公報に記載された詳細制御モードの構成により実現することもできる。
【0094】
・マスタロボット20の姿勢とスレーブロボット30の姿勢とのずれ量を解消するずれ解消操作をユーザが実行したことを条件として、制御部26がずれ解消動作を実行する構成であれば、最少動作で直線的にマスタロボット20を動作させることによりずれを解消してもよい。その場合であっても、マスタロボット20の姿勢をスレーブロボット30の姿勢に一致させるようにユーザが指示しているため、ユーザが違和感を覚えることを抑制することができる。
【0095】
・制御部は、マスタロボット20又はスレーブロボット30に設けられて、マスタロボット20及びスレーブロボット30を制御する1つの制御部であってもよい。
【0096】
・マスタロボット20とスレーブロボット30とは、同形状で大きさのみ異なるロボットであってもよい。また、マスタロボット20とスレーブロボット30とは、形状及び大きさが同一のロボットであってもよい。
【符号の説明】
【0097】
10…主従ロボットシステム、20…マスタロボット(主ロボット)、26…制御部、30…スレーブロボット(従ロボット)、36…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9