(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105696
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】カッティング装置、カッティング方法及びカッティングプログラム
(51)【国際特許分類】
B26D 5/00 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
B26D5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006681
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000105062
【氏名又は名称】グラフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】治田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 圭郎
【テーマコード(参考)】
3C024
【Fターム(参考)】
3C024AA03
(57)【要約】
【課題】シート媒体に対し好適にカット処理を行うカッティング装置を提供する。
【解決手段】カッティング装置1は、カッターの一連のカット動作の情報を含むカッティングデータを取得することと、一連のカット動作のうち、搬送方向において第1の向きに向くカット動作の向きを、第1の向きとは反対側の第2の向きへ変更するようにカッティングデータを編集することと、編集データに基づいてカット処理を行うこととを実行する。具体的には、一連のカット動作における基準点から第1の向きに向くカット動作を検出し、第1の向きに向いているカット動作(群)における搬送方向の距離(累積距離)が許容値を超えたか否かを判定し、当該距離が許容値を超えたと判定された場合に、検出されたカット動作の向きを第1の向きから第2の向きへ変更する。そして、上記基準点から、編集データに基づく所定点までカット処理を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート媒体にカッターを接触させた状態で、前記カッターを保持したキャリッジを移動させながら、前記キャリッジの移動方向と交差する搬送方向に前記シート媒体を搬送させることでカット処理を行うカッティング装置であって、
前記シート媒体に所定のカットラインを形成するためのデータであって、前記シート媒体に対する前記カッターの一連のカット動作の情報を含むカッティングデータを取得するデータ取得部と、
前記カッティングデータに含まれる前記一連のカット動作のうち、前記搬送方向において第1の向きに向いているカット動作の向きを、前記搬送方向において前記第1の向きとは反対側の向きとなる第2の向きへ変更するように前記カッティングデータを編集するデータ編集部と、
前記データ編集部によって編集されたカッティングデータに基づいてカット処理を実行するカット実行部と、を備え、
前記データ編集部は、
前記一連のカット動作における基準点から順に、前記第1の向きに向いているカット動作を検出し、
前記一連のカット動作において前記第1の向きに向いているカット動作における前記搬送方向の距離、又は前記第1の向きに連続して向いているカット動作群における前記搬送方向の累積距離が所定の許容値を超えたか否かを判定し、
前記距離又は前記累積距離が前記許容値を超えたと判定された場合に、検出されたカット動作の向きを前記第1の向きから前記第2の向きへ変更し、
前記カット実行部は、前記一連のカット動作における基準点から、前記データ編集部によって編集されたカッティングデータに基づく所定点まで前記カット処理を実行することを特徴とするカッティング装置。
【請求項2】
前記データ編集部は、
前記カット実行部によって前記カット処理が実行された後、前記距離又は前記累積距離をリセットし、
前記一連のカット動作における前記所定点又は前記所定点に応じた地点から、前記カット動作における前記搬送方向の距離、又は前記カット動作群における前記搬送方向の累積距離が前記許容値を超えたか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のカッティング装置。
【請求項3】
前記データ編集部は、
前記距離又は前記累積距離が前記所定の許容値を超えたと判定された場合に、前記一連のカット動作において前記第1の向きに向いているカット動作と、前記第2の向きに向いているカット動作とが切り替わる切り替え点を検出し、
前記切り替え点が検出されたときに、前記一連のカット動作において前記第2の向きに向いているカット動作における前記搬送方向の距離、又は前記第2の向きに連続して向いているカット動作群における前記搬送方向の累積距離が前記所定の許容値を超えたか否かをさらに判定し、
前記第2の向きに向いているカット動作の前記距離、又は前記第2の向きに連続して向いているカット動作群の前記累積距離が前記所定の許容値を超えたと判定された場合に、検出されたカット動作の向きを前記第1の向きから前記第2の向きへ変更し、
前記カット実行部は、前記第1の向きに向いているカット動作を含まず、前記第2の向きに向いているカット動作を含む態様で前記カット処理を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載のカッティング装置。
【請求項4】
前記データ編集部は、
前記距離又は前記累積距離が前記許容値を超えていないときに、前記一連のカット動作において前記第1の向きに向いているカット動作と、前記第2の向きに向いているカット動作とが切り替わる切り替え点を検出した場合には、前記切り替え点において前記距離又は前記累積距離をリセットし、
前記切り替え点から、前記一連のカット動作において前記第2の向きに向いているカット動作における前記搬送方向の距離、又は前記第2の向きに連続して向いているカット動作群における前記搬送方向の累積距離が前記許容値を超えたか否かを判定し、
前記第2の向きに向いているカット動作の前記距離、又は前記第2の向きに連続して向いているカット動作群の前記累積距離が前記所定の許容値を超えたと判定された場合には、検出されたカット動作の向きを前記第1の向きから前記第2の向きへ変更しないこととし、
前記カット実行部は、前記第1の向きに向いているカット動作と、前記第2の向きに向いているカット動作とを含む態様で前記カット処理を実行することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカッティング装置。
【請求項5】
カット処理の対象となる前記シート媒体の性質に関する属性情報を取得するシート属性情報取得部と、
前記シート媒体の属性情報に基づいて前記所定の許容値を設定する許容値設定部と、をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のカッティング装置。
【請求項6】
シート媒体にカッターを接触させた状態で、前記カッターを保持したキャリッジを移動させながら、前記キャリッジの移動方向と交差する搬送方向に前記シート媒体を搬送させることでカット処理を行うコンピュータによって実行されるカッティング方法であって、
前記コンピュータが、
前記シート媒体に所定のカットラインを形成するためのデータであって、前記シート媒体に対する前記カッターの一連のカット動作の情報を含むカッティングデータを取得することと、
前記カッティングデータに含まれる前記一連のカット動作のうち、前記搬送方向において第1の向きに向いているカット動作の向きを、前記搬送方向において前記第1の向きとは反対側の向きとなる第2の向きへ変更するように前記カッティングデータを編集することと、
編集されたカッティングデータに基づいてカット処理を行うことと、を実行し、
前記カッティングデータを編集するにあたって、
前記一連のカット動作における基準点から順に、前記第1の向きに向いているカット動作を検出し、
前記一連のカット動作において前記第1の向きに向いているカット動作における前記搬送方向の距離、又は前記第1の向きに連続して向いているカット動作群における前記搬送方向の累積距離が所定の許容値を超えたか否かを判定し、
前記距離又は前記累積距離が前記許容値を超えたと判定された場合に、検出されたカット動作の向きを前記第1の向きから前記第2の向きへ変更し、
前記カット処理を行うにあたって、前記一連のカット動作における基準点から、編集されたカッティングデータに基づく所定点まで前記カット処理を行うことを特徴とするカッティング方法。
【請求項7】
シート媒体にカッターを接触させた状態で、前記カッターを保持したキャリッジを移動させながら、前記キャリッジの移動方向と交差する搬送方向に前記シート媒体を搬送させることでカット処理を行うカッティング装置としてのコンピュータに、
前記シート媒体に所定のカットラインを形成するためのデータであって、前記シート媒体に対する前記カッターの一連のカット動作の情報を含むカッティングデータを取得するデータ取得処理と、
前記カッティングデータに含まれる前記一連のカット動作のうち、前記搬送方向において第1の向きに向いているカット動作の向きを、前記搬送方向において前記第1の向きとは反対側の向きとなる第2の向きへ変更するように前記カッティングデータを編集するデータ編集処理と、
前記データ編集処理によって編集されたカッティングデータに基づいてカット処理を実行するカット実行処理と、を実行させ、
前記データ編集処理では、
前記一連のカット動作における基準点から順に、前記第1の向きに向いているカット動作を検出し、
前記一連のカット動作において前記第1の向きに向いているカット動作における前記搬送方向の距離、又は前記第1の向きに連続して向いているカット動作群における前記搬送方向の累積距離が所定の許容値を超えたか否かを判定し、
前記距離又は前記累積距離が前記許容値を超えたと判定された場合に、検出されたカット動作の向きを前記第1の向きから前記第2の向きへ変更し、
前記カット実行処理では、前記一連のカット動作における基準点から、前記データ編集処理によって編集されたカッティングデータに基づく所定点まで前記カット処理を実行することを特徴とするカッティングプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッティング装置、カッティング方法及びカッティングプログラムに係り、特に、ロール状のシート媒体に所定のカット処理を連続して行うカッティング装置、カッティング方法及びカッティングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート媒体にカッターの先端を接触又は離反させた状態で、カッターを保持したキャリッジを移動させながら、キャリッジの移動方向と直交する搬送方向にシート媒体を搬送させることで、シート媒体に形成された画像のカット処理を行うカッティング装置が知られている。
カッティング装置には、主として「グリットローリングタイプ」と「フラットベッドタイプ」の2種類のタイプが存在する。グリットローリングタイプの装置では、ロール状のシート媒体を駆動ローラと加圧ローラで挟持し、駆動ローラの回転動作によってシート媒体を搬送させることでカット処理を連続して行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のカッティング装置では、カッターによるカット圧が低い場合であっても、厚みのあるシート媒体をカットできるように工夫されている。
具体的には、カッティング装置は、シート媒体に形成された図形の輪郭線に沿ってカット処理を行うにあたって、シート媒体を引き出す方向に搬送するときにカットする輪郭線の「引き出し区間」と、シート媒体を引き込む方向に搬送するときにカットする輪郭線の「引き込み区間」とを検出することと、検出した「引き出し区間」と「引き込み区間」を分離することと、分離した「引き込み区間」についてはシート媒体を引き出す方向に搬送したときにカットするように変更して「編集カットデータ」を作成することと、作成した「編集カットデータ」に基づいてカット処理を行うこととしている。
つまりは、シート媒体に所定のカットラインを形成するにあたって、シート媒体に対するカッターのカット動作をシート搬送方向において常に一方向(シート媒体を引き出す向きに搬送したときにカッターが相対移動する向き)に揃えるように工夫されている。
そうすることで、カッターによる一連のカット動作(一筆書きのカット動作)によってカットラインを完成できないものの、カッターが常にシート搬送方向の一方向に向かって移動(相対移動)しながらカットするため、シート媒体を一定の圧力でカットすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のようなカッティング装置では、シート媒体に対しより好適にカット処理を行うことが求められていた。
例えば、シート媒体に対し効率良くカット処理を行うことができるように、シート媒体に対するカッターのカット動作をシート搬送方向において一律に揃えるのではなく、カット処理の仕上がりに影響がない範囲内で、極力一連のカット動作(一筆書きのカット動作)によってカット処理を行うことが可能な技術が求められていた。
【0006】
また、カット対象となる種々のシート媒体の中には、例えば厚みが薄いシートが存在し、当該シートに対しカット処理を行う場合には、カッターのカット圧が同じであっても、シート媒体に対するカッターのカット動作の向きに応じて切断抵抗力が異なってくるため、適切にカット処理を行うことが難しかった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シート媒体に対し好適にカット処理を行うことが可能なカッティング装置、カッティング方法及びカッティングプロッタを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、カット処理の仕上がりに影響がない範囲内でシート媒体に対し効率良くカット処理を行うことが可能なカッティング装置、カッティング方法及びカッティングプロッタを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、特に厚みが薄いシート媒体に対しカット処理を適切に行うことが可能なカッティング装置、カッティング方法及びカッティングプロッタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明のカッティング装置によれば、シート媒体にカッターを接触させた状態で、前記カッターを保持したキャリッジを移動させながら、前記キャリッジの移動方向と交差する搬送方向に前記シート媒体を搬送させることでカット処理を行うカッティング装置であって、前記シート媒体に所定のカットラインを形成するためのデータであって、前記シート媒体に対する前記カッターの一連のカット動作の情報を含むカッティングデータを取得するデータ取得部と、前記カッティングデータに含まれる前記一連のカット動作のうち、前記搬送方向において第1の向きに向いているカット動作の向きを、前記搬送方向において前記第1の向きとは反対側の向きとなる第2の向きへ変更するように前記カッティングデータを編集するデータ編集部と、前記データ編集部によって編集されたカッティングデータに基づいてカット処理を実行するカット実行部と、を備え、前記データ編集部は、前記一連のカット動作における基準点から順に、前記第1の向きに向いているカット動作を検出し、前記一連のカット動作において前記第1の向きに向いているカット動作における前記搬送方向の距離、又は前記第1の向きに連続して向いているカット動作群における前記搬送方向の累積距離が所定の許容値を超えたか否かを判定し、前記距離又は前記累積距離が前記許容値を超えたと判定された場合に、検出されたカット動作の向きを前記第1の向きから前記第2の向きへ変更し、前記カット実行部は、前記一連のカット動作における基準点から、前記データ編集部によって編集されたカッティングデータに基づく所定点まで前記カット処理を実行すること、により解決される。
上記構成により、シート媒体(特に厚みが薄いシート媒体)に対し好適にカット処理を行うことが可能なカッティング装置を実現することができる。
詳しく述べると、データ編集部が、所定の許容値を超えたと判定されたときに、検出されたショートベクトルの向きを第1の向きから第2の向きへ変更することとしている。
そうすることで、従来のようにシート媒体に対するカッターのカット動作をシート搬送方向において一律に揃えるのではなく、カット処理の仕上がりに影響がない範囲内で条件(具体的には、許容幅となる許容値)を設定することで、より効率良くカット処理を行うことができる。
【0009】
このとき、前記データ編集部は、前記カット実行部によって前記カット処理が実行された後、前記距離又は前記累積距離をリセットし、前記一連のカット動作における前記所定点又は前記所定点に応じた地点から、前記カット動作における前記搬送方向の距離、又は前記カット動作群における前記搬送方向の累積距離が前記許容値を超えたか否かを判定すると良い。
上記のように、許容値に関する条件を詳細に設定することで、カット処理の仕上がりに影響がない範囲内で、より効率良くカット処理を行うことができる。
【0010】
このとき、前記データ編集部は、前記距離又は前記累積距離が前記所定の許容値を超えたと判定された場合に、前記一連のカット動作において前記第1の向きに向いているカット動作と、前記第2の向きに向いているカット動作とが切り替わる切り替え点を検出し、前記切り替え点が検出されたときに、前記一連のカット動作において前記第2の向きに向いているカット動作における前記搬送方向の距離、又は前記第2の向きに連続して向いているカット動作群における前記搬送方向の累積距離が前記所定の許容値を超えたか否かをさらに判定し、前記第2の向きに向いているカット動作の前記距離、又は前記第2の向きに連続して向いているカット動作群の前記累積距離が前記所定の許容値を超えたと判定された場合に、検出されたカット動作の向きを前記第1の向きから前記第2の向きへ変更し、前記カット実行部は、前記第1の向きに向いているカット動作を含まず、前記第2の向きに向いているカット動作を含む態様で前記カット処理を実行すると良い。
上記のように、複数の条件を設定することで、カット処理の仕上がりに影響がない範囲内で、シート媒体に対し一層効率良くカット処理を行うことができる。
【0011】
このとき、前記データ編集部は、前記距離又は前記累積距離が前記許容値を超えていないときに、前記一連のカット動作において前記第1の向きに向いているカット動作と、前記第2の向きに向いているカット動作とが切り替わる切り替え点を検出した場合には、前記切り替え点において前記距離又は前記累積距離をリセットし、前記切り替え点から、前記一連のカット動作において前記第2の向きに向いているカット動作における前記搬送方向の距離、又は前記第2の向きに連続して向いているカット動作群における前記搬送方向の累積距離が前記許容値を超えたか否かを判定し、前記第2の向きに向いているカット動作の前記距離、又は前記第2の向きに連続して向いているカット動作群の前記累積距離が前記所定の許容値を超えたと判定された場合には、検出されたカット動作の向きを前記第1の向きから前記第2の向きへ変更しないこととし、前記カット実行部は、前記第1の向きに向いているカット動作と、前記第2の向きに向いているカット動作とを含む態様で前記カット処理を実行すると良い。
上記のように、条件次第では、カット実行部が、第1の向きに向いているカット動作と、第2の向きに向いているカット動作とを含む態様でカット処理を実行することもある。
そうすることで、カット処理の仕上がりに影響がない範囲内で、極力シンプルなカット動作でカット処理を行うことを優先させることができる。
【0012】
このとき、カット処理の対象となる前記シート媒体の性質に関する属性情報を取得するシート属性情報取得部と、前記シート媒体の属性情報に基づいて前記所定の許容値を設定する許容値設定部と、をさらに備えていると良い。
上記構成により、シート媒体の性質(例えば素材、厚さ、硬さ)に応じた許容値を設定(自動設定)することができる。そうすることで、シート媒体の性質によらず、当該シート媒体に対し好適にカット処理を行うことが可能なカッティング装置を実現できる。
【0013】
また前記課題は、シート媒体にカッターを接触させた状態で、前記カッターを保持したキャリッジを移動させながら、前記キャリッジの移動方向と交差する搬送方向に前記シート媒体を搬送させることでカット処理を行うコンピュータによって実行されるカッティング方法であって、前記コンピュータが、前記シート媒体に所定のカットラインを形成するためのデータであって、前記シート媒体に対する前記カッターの一連のカット動作の情報を含むカッティングデータを取得することと、前記カッティングデータに含まれる前記一連のカット動作のうち、前記搬送方向において第1の向きに向いているカット動作の向きを、前記搬送方向において前記第1の向きとは反対側の向きとなる第2の向きへ変更するように前記カッティングデータを編集することと、編集されたカッティングデータに基づいてカット処理を行うことと、を実行し、前記カッティングデータを編集するにあたって、前記一連のカット動作における基準点から順に、前記第1の向きに向いているカット動作を検出し、前記一連のカット動作において前記第1の向きに向いているカット動作における前記搬送方向の距離、又は前記第1の向きに連続して向いているカット動作群における前記搬送方向の累積距離が所定の許容値を超えたか否かを判定し、前記距離又は前記累積距離が前記許容値を超えたと判定された場合に、検出されたカット動作の向きを前記第1の向きから前記第2の向きへ変更し、前記カット処理を行うにあたって、前記一連のカット動作における基準点から、編集されたカッティングデータに基づく所定点まで前記カット処理を行うカッティング方法によっても解決される。
【0014】
また前記課題は、シート媒体にカッターを接触させた状態で、前記カッターを保持したキャリッジを移動させながら、前記キャリッジの移動方向と交差する搬送方向に前記シート媒体を搬送させることでカット処理を行うカッティング装置としてのコンピュータに、前記シート媒体に所定のカットラインを形成するためのデータであって、前記シート媒体に対する前記カッターの一連のカット動作の情報を含むカッティングデータを取得するデータ取得処理と、前記カッティングデータに含まれる前記一連のカット動作のうち、前記搬送方向において第1の向きに向いているカット動作の向きを、前記搬送方向において前記第1の向きとは反対側の向きとなる第2の向きへ変更するように前記カッティングデータを編集するデータ編集処理と、前記データ編集処理によって編集されたカッティングデータに基づいてカット処理を実行するカット実行処理と、を実行させ、前記データ編集処理では、前記一連のカット動作における基準点から順に、前記第1の向きに向いているカット動作を検出し、前記一連のカット動作において前記第1の向きに向いているカット動作における前記搬送方向の距離、又は前記第1の向きに連続して向いているカット動作群における前記搬送方向の累積距離が所定の許容値を超えたか否かを判定し、前記距離又は前記累積距離が前記許容値を超えたと判定された場合に、検出されたカット動作の向きを前記第1の向きから前記第2の向きへ変更し、前記カット実行処理では、前記一連のカット動作における基準点から、前記データ編集処理によって編集されたカッティングデータに基づく所定点まで前記カット処理を実行するカッティングプログラムによっても解決される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカッティング装置、カッティング方法及びカッティングプログラムによれば、シート媒体に対し好適にカット処理を行うことが可能となる。
また、カット処理の仕上がりに影響がない範囲内でシート媒体に対し効率良くカット処理を行うことが可能となる。
また、特に厚みが薄いシート媒体に対しても、シートの撓みの発生を抑えてカット処理を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態のカッティング装置の外観斜視図である。
【
図3】カッティング装置の要部拡大図であって、シート搬送機構、キャリッジ移動機構、カッター移動機構を説明する図である。
【
図4】カッティング装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】カッティング装置の機能を示すブロック図である。
【
図6】シート別許容値データの一例を示す図である。
【
図8A】データ編集部による処理の一例を示す図である。
【
図8B】データ編集部による処理の一例を示す図である。
【
図9A】データ編集部、カット実行部による処理の一例を示す図である。
【
図9B】データ編集部、カット実行部による処理の一例を示す図である。
【
図9C】データ編集部、カット実行部による処理の一例を示す図である。
【
図9D】データ編集部、カット実行部による処理の一例を示す図である。
【
図9E】データ編集部、カット実行部による処理の一例を示す図である。
【
図9F】データ編集部、カット実行部による処理の一例を示す図である。
【
図10】カッティング方法の処理の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について
図1~
図10を参照して説明する。
本実施形態は、シート媒体にカッターを接触させた状態で、カッターを保持したキャリッジを移動させながらキャリッジの移動方向と交差する搬送方向にシート媒体を搬送させることでカット処理を行うカッティング装置であって、シート媒体に所定のカットラインを形成するためのカッティングデータを編集しながら随時カット処理を実行するとともに、カット処理の仕上がりに影響がない範囲内で許容値を設定し、極力シンプルなカット動作でカット処理を実行することを主な特徴とする発明に関するものである。
なお、カッターを保持したキャリッジから見たときに、搬送方向(シート搬送方向)の上流側とは、シート媒体においてカット処理前の画像が配置される側を意味し、搬送方向の下流側とは、カット処理後の画像が配置される側を意味するものとする。
【0018】
本実施形態のカッティング装置1は、
図1~
図3に示すように、ユーザー操作の入力を受け付けて、ロール状のシート媒体2に複数形成された画像2aのカット処理を連続して行うカッティングプロッタであって、シート媒体2を搬送台に載置した上で、当該シート媒体2に形成された画像2aの輪郭に沿って所定のカットラインを形成するものである。
なお、カッティング装置1は、グリットローリングタイプのプロッタであるが、特に限定されず変更可能である。例えば、カッティング装置1が、フラットベッドタイプのプロッタであっても良い。あるいは、これらに限定されず、シート媒体2に対しカット処理可能なカッティング装置であれば広く適用可能である。
【0019】
シート媒体2は、
図1に示すように、紙、合成紙、型紙、プラスチックフィルム等のシートからなり、予め画像2aが印刷されたロール状の用紙である。
詳しく述べると、シート媒体2は、その長尺方向に複数並ぶように形成される画像2aを有している。シート媒体2は、画像2a毎に所定位置にコードマーク2bやトンボマーク2cをさらに有していても良い。
コードマーク2bは、画像2aの画像情報及びトンボマーク2cを光学的に読み取るためのバーコードマークであって、トンボマーク2cは、画像2aのカットラインの位置合わせを行うためのマークである。
なお、シート媒体2は、シート媒体の力学的性質による違いから複数種類に分類されている。シート媒体2の種類について、詳細は後述する。
【0020】
<カッティング装置1のハードウェア>
カッティング装置1は、
図1~
図4に示すように、ユーザー操作の入力を受け付けるためのユーザー入力機構10と、各種設定事項の内容やメッセージを表示するための表示機構20と、シート媒体2を搬送方向Xに搬送するシート搬送機構30と、シート媒体2をカット処理するためのカッター41を保持するキャリッジ40と、キャリッジ40を搬送方向Xとは交差する方向に移動させるキャリッジ移動機構50と、カッティング装置1の内部に設けられ、各種演算・制御を実行するための制御コントローラ60と、から主に構成されている。
【0021】
ユーザー入力機構10は、
図1に示すように、ユーザーが各種の設定を行い、シート搬送機構30及びキャリッジ移動機構50等のマニュアル操作を行うための操作入力を受け付けるものであって、具体的には、カッティング装置1の上端に設けられた操作ボタンを操作することで、ユーザーによる入力が受け付けられる。
表示機構20は、カッティング装置1の上端に設けられた表示画面上に、ユーザーによる各種設定事項の内容や、異常発生時のエラーメッセージ等を表示するものである。
【0022】
シート搬送機構30は、
図1~
図3に示すように、ロール状のシート媒体2を水平方向に搬送するための搬送台31と、搬送台31上に載置されたシート媒体2を搬送可能に駆動する駆動ローラ32と、駆動ローラ32と上下方向において対向する位置に取り付けられ、シート媒体2を駆動ローラ32とで挟持する加圧ローラ33と、搬送台31よりも搬送方向Xの上流側(最上流)に位置し、カット処理前のロール状のシート媒体2を設置するためのストックローラ34と、搬送台31よりも搬送方向Xの下流側(最下流)に位置し、カット処理されたシート媒体2を巻き取るための巻き取りローラ35と、から主に構成されている。
【0023】
搬送台31は、シート媒体2を搬送する際、及びカット処理する際に当該シート媒体2を下方から支持するための板状部材である。
駆動ローラ32は、不図示の駆動モータの回転によって駆動し、搬送方向Xとは直交方向に延びる回転軸32aを中心として回転可能なローラである。駆動ローラ32は、カッター41を保持したキャリッジ40よりも搬送方向Xの下流側に位置する搬送台31上に配置されている。
加圧ローラ33は、回転軸33aを中心として回転可能なローラであって、シート媒体2を駆動ローラ32とで挟持可能な構成となっている。加圧ローラ33は、キャリッジ40の移動方向Yに所定の間隔を空けて複数配置されており、少なくともシート媒体2のシート幅方向の両端部に相当する位置に配置されている。
なお、加圧ローラ33は、
図2に示す圧縮バネ33bのバネ圧を調整することで、シート媒体2に対する接触圧を調整することができ、駆動ローラ32の回転動作に対応して回転することで、シート媒体2を搬送させることができる。
【0024】
上記において、例えば、シート媒体2が硬くて厚いシートである場合には、シート媒体2を良好に挟持することができるように、加圧ローラ33を3セット又は5セット配置して、当該加圧ローラ33を比較的高い接触圧に調整すると好ましい。また、加圧ローラ33が、シート媒体2のシート幅方向の両端部から20mm程度又はそれ以上内側に配置されていると好ましい。
【0025】
キャリッジ40は、
図1~
図3に示すように、カッター41を保持した状態でキャリッジ移動機構50によって搬送方向Xとは交差する方向に移動する移動体であって、搬送台31と上下方向において対向する位置に配置されており、また、駆動ローラ32及び加圧ローラ33よりも搬送方向Xの上流側に配置されている。
具体的には、キャリッジ40は、シート媒体2を切断可能なカッター41と、カッター41を保持した状態でキャリッジ本体に対し上下方向Zに移動可能なカッターホルダ42と、キャリッジ本体の内部に取り付けられ、カッターホルダ42を上下方向Zに昇降移動させるためのアクチュエータ43(カッター移動機構)と、を備えている。
なお、キャリッジ40は、カッターホルダ42の下端部分に取り付けられ、シート媒体2において画像2a毎に所定位置に形成されたコードマーク2b及びトンボマーク2cの位置を光学的に検出する検出センサと、コードマーク2bに格納された画像情報を光学的に検出する読み取りセンサと、を備えていても良い。
【0026】
カッター41は、
図3に示すように、上下方向に長尺な棒状のカッティングペンであって、カッター41の先端が上下方向においてシート媒体2と接触可能に構成されている。
カッターホルダ42は、カッター41を上下方向に向かって着脱可能に保持する筒状のプランジャーからなり、詳しく述べると、カッター41を上下方向に延びる不図示の回転軸を中心として回転可能に保持する構成となっている。
なお、カッター41は、その刃先が回転軸から所定距離ずれた状態で保持される偏心カッティングペンである。カッター41は、シート媒体2に所定のカットラインを形成するときに、その刃先がシート媒体2に対して最も抵抗の小さい向き、すなわちカッティング方向の向きに追従するように回転する構成となっている。
【0027】
上記構成において、カッターホルダ42は、アクチュエータ43と接続され、アクチュエータ43の駆動によってカッター41と共に上下方向Zに昇降移動することができる。そして、搬送台31上に載置されたシート媒体2に対してカッター41を圧力をかけて接触又は離反させることができる。
言い換えれば、カッターホルダ42及びアクチュエータ43が、シート媒体2に対しカッター41を接触又は離反させる方向に移動させる「カッター移動機構」に相当する。
【0028】
キャリッジ移動機構50は、
図1~
図3に示すように、キャリッジ40をカッティング装置1の幅方向に沿って移動させるための機構を有している。
具体的には、キャリッジ移動機構50は、カッティング装置1の幅方向に沿って延びているスライドレール51と、スライドレール51に対してスライド移動可能となるように取り付けられ、キャリッジ40を保持するスライダ52と、スライダ52をスライドレール51に沿って駆動させるための不図示の駆動モータと、を備えている。
スライドレール51の長尺方向の両端部には、一対の加圧ローラ33が取り付けられており、スライダ52が一対の加圧ローラ33の間に挟まれて配置されている。そのため、キャリッジ40を保持したスライダ52は、一対の加圧ローラ33の間でスライド移動可能となっている。
【0029】
上記構成において、
図3に示すように、カッター41は、カッターホルダ42を上下方向Zに移動させて、キャリッジ40を移動方向Yに移動させて、かつ、シート媒体2を搬送方向Xに搬送させることで、シート媒体2に対して3次元方向に移動することができる。
厳密に言えば、カッター41は、シート媒体2に対して上下方向Z及び移動方向Yに移動することができ、かつ、シート媒体2に対して搬送方向Xに相対移動することができる。
【0030】
制御コントローラ60は、
図4に示すように、データの演算・制御処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)と、記憶装置としてのROM、RAM及びHDD(SSD)と、ホームネットワーク又はインターネットを通じて情報データの送受信を行う通信インタフェースとを備えたコンピュータである(HDDを備えていなくても良い)。制御コントローラ60は、CPUを実装した半導体集積回路又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)により実現されても良い。
なお、カッティング装置1は、USBメモリや外付けハードディスク等の外部記憶装置をさらに備えていても良い。
制御コントローラ60の記憶装置には、
図5に示すように、コンピュータとして必要な機能を果たすメインプログラムに加えて、カッティングプログラムが記憶されており、これらプログラムがCPUによって実行されることにより、カッティング装置1の機能が発揮されることになる。
【0031】
具体的には、制御コントローラ60は、ユーザー入力機構10及び各種センサから信号を受信して、シート搬送機構30、アクチュエータ43(カッター移動機構)及びキャリッジ移動機構50にそれぞれ制御信号を送信することで、シート媒体2に形成された画像のカット処理を行う構成となっている。また、表示機構20に制御信号を送信することで、表示画面上に各種設定事項の内容やエラーメッセージ等を表示する構成となっている。
上記構成によって、カッティング装置1は、シート搬送機構30がシート媒体2を搬送方向Xに移動させることで、またキャリッジ移動機構50がキャリッジ40を移動方向Yに移動させることで、カッター41がシート媒体2に対し搬送方向X及び移動方向Yに移動し、所定のカットラインを形成することができる。
【0032】
<カッティング装置1の機能>
カッティング装置1は、
図5に示すように、機能面から説明すると、「シート別許容値データ」、「図形データ」、「カッティングデータ」のほか、各種プログラム及び各種データを記憶しておく記憶部61と、データ取得部62と、シート選択受付部63と、シート属性情報取得部64と、許容値設定部65と、データ編集部66と、カット実行部67と、を主な構成要素として備えている。
これらは、CPU、ROM、RAM、HDD、通信インタフェース、及び各種プログラム等によって構成されている。
【0033】
記憶部61に記憶される「シート別許容値データ」は、
図6に示すように、シート媒体の種類と、シート媒体の性質に関する属性情報(シート属性情報)及び許容値との対応関係を示すテーブルデータであって、記憶部61に一元管理されている。
当該データを参照することで、シート媒体の種類(シート媒体の属性情報)に対応した好適な許容値を自動設定する機能を利用することができる。
「シート属性情報」には、「素材」、「厚さ」、「硬さ」のほか「粘度」、「比重」等のシート媒体の種々の性質に関する情報が含まれている。
「許容値」は、シート媒体の属性情報に基づいて予め設定された許容幅の閾値である。詳細は後述するが、カット処理の仕上がりに影響がない範囲内で、極力一連のカット動作によってカット処理を行うことができるように設定される閾値である。
「許容値」は、予め初期値が設定されているところ、ユーザー操作の入力を受け付けて手動で初期値を変更することができる。
【0034】
図6の本実施例を見ると、「媒体A」では、シート属性情報について「素材」が素材aであって、「厚さ」が薄く、「硬さ」が柔らかいシート媒体であって、「許容値」が0.0mmと設定されていることが分かる。
一方で、「媒体B」では、シート属性情報について「素材」が素材aであって、「厚さ」が薄く、「硬さ」が硬いシート媒体であって、「許容値」が30.0mmと設定されていることが分かる。
上記設定について説明すると、媒体Aは、媒体Bよりも「硬さ」が柔らかいため、カット処理の際に撓み易くなり適切にカットすることが難しくなる(カット処理の仕上がりに影響し易くなる)。そのため、媒体Aの「許容値」が小さく設定されている。そうすることで、媒体Aに対するカッターのカット動作を搬送方向Xにおいて極力揃えることができる。
同様の考え方から、媒体Aは、媒体Cよりも「厚さ」が薄いため、媒体Aの「許容値」がより小さく設定されている。
なお、「許容値」が0.0mmとは、一連の(一筆書きの)カット動作によってカット処理を行うこと、つまり、常にシート搬送方向Xの一方向の向きでカット処理を行うことを意味している。このような媒体Aとしては、カーフィルム等が想定される。
【0035】
「許容値」は、「シート媒体の属性情報」に基づいて設定されるものであるが、シート媒体の属性情報と、カッターによるカット処理条件と、カットラインの形状とに基づいて設定されるものであっても良い。
「カット処理条件」としては、例えば「カット速度」、「カット圧」、「カット加速度」等が挙げられる。「カット速度」とは、カッターの移動速度を意味し、「カット圧」とは、カッターのシート媒体に対する圧力を意味し、「カット加速度」とは、カッターの移動加速度を意味する。カット速度、カット加速度の値が大きい場合には、許容値をより小さくすると良い。カット圧の値が小さい場合には、許容値を小さくすると良い。
「カットラインの形状」としては、例えばカットラインの形状がスペードマークのように比較的シンプルである場合には、許容値を比較的大きくしても良い。一方で、カットラインの形状がより複雑である場合には、許容値を比較的小さくしたほうが良い。
【0036】
「図形データ(画像データ)」は、ユーザー操作に基づいて作成され、記憶部61に一元管理されている。
図形データには、直線描画コマンドやベジェ曲線コマンドから構成される「図形の情報(画像の情報)」が含まれている。
「図形の情報」とは、例えば
図7に示すように、シート媒体に予め形成されている図形や模様の情報である。当該図形や模様の情報は必ずしもシート媒体に予め形成されている必要はなく、ペンを搭載したカッティング装置1が、シート媒体に対し図形を描画することとし、当該図形に沿ってカットも行えることとしても良い。
なお、データ取得部62が「図形データ」に基づいて「カッティングデータ」を生成し、当該カッティングデータを取得する。
【0037】
「カッティングデータ」は、
図7に示すように、シート媒体に所定のカットラインを形成するためのデータであって、シート媒体に対するカッターの一連のカット動作を示す「ショートベクトル列の情報」を含むものである。
カッティングデータは、記憶部61に一元管理されている。
当該「カッティングデータ」を参照することで、シート媒体に形成された画像の輪郭に沿って所定のカットラインを形成する機能を利用することができる。
【0038】
「ショートベクトル列の情報」とは、例えば
図7に示すように、シート媒体に形成された画像の輪郭に沿ってカットラインを形成するための、シート媒体に対するカッターの一連のカット動作を示す情報(制御情報)であって、ショートベクトルの集合体の情報である。
言い換えれば、「ショートベクトル列の情報」は、カッティング装置1のXY座標系によって規定される。そして、カッティング装置1にセットされたシート媒体に対するカッターの一連のカット動作を制御する制御情報であるとも言える。
「ショートベクトル列」は、複数の線分からなるカットラインの各頂点をXY座標によって規定したときの線分ベクトルの集合体である。「ショートベクトル」は、線分の大きさと、当該線分の頂点から次の頂点への向きとを併せ持つ量を示すものである。「ショートベクトル」は、シート媒体に対するカット動作(カット要素動作)に相当する。
【0039】
図7に示す「カッティングデータ」を見ると、シート媒体に形成された画像「スペードマーク」の輪郭に沿ってカットラインを形成するためのデータであることが分かる。
例えば、当該データからカットラインを形成する場合には、まず、座標の原点(0,0)から、カッターをシート媒体から離反させた状態でカット開始位置である点A(X1,Y1)上まで動作させる。点Aに到達した後に、当該カッターをシート媒体に圧接させて点Aから点B(X2,Y2)に向けて線分ABのカットラインを形成する。
点Bに到達した後に、カッターをそのままシート媒体に圧接させた状態で点C(X3,Y3)に向かって動作させて、線分BCのカットラインを形成する。
同様にして各線分のカットラインを形成することで、画像「スペードマーク」のカットラインを形成することができる。
【0040】
上記のように、
図7に示す「カッティングデータ」を参照することで、カッティング装置1は、シート媒体に対しカッターによる連続したカット動作(一筆書きのカット動作)によってカット処理を行うことが可能である。
一方で、そうすると、カッターが随時シート搬送方向Xにおいて一方向を向いたり、他方向を向いたりしながらカットするため、例えば薄いシート媒体では押し当てる向きにカットしようとする際にたわみが生じ、シート媒体を一定の圧力でカットすることが難しくなる。
そこで、カッターが常にシート搬送方向Xの一方向に向かって移動(相対移動)しながらカットすることができるように、「カッティングデータ」を編集することが必要となる。以下、詳しく説明する。
【0041】
<<カッティングデータの取得>>
データ取得部62は、上述した「カッティングデータ」を取得する。
詳しく述べると、データ取得部62は、外部の情報端末(コンピュータ)によって作成された「図形データ(画像データ)」を通信ネットワークによって、あるいは補助記憶装置(USBメモリ等)を介することで取得する。そして、取得した「図形データ」を加工し、「図形の情報」と「ショートベクトル列の情報(一連のカット動作の情報)」とを含む「カッティングデータ」を作成する。
なお、データ取得部62は、外部の情報端末によって完成された「カッティングデータ」を直接取得することとしても良い。
【0042】
次に、データ取得部62によって取得した「カッティングデータ」が編集されることになるが、当該データ編集にあたっては「許容値」を予め設定する必要がある。当該許容値は、カット処理の仕上がりに影響がない範囲内で効率良くカット処理を進めるための閾値となる。言い換えれば、データ編集にあたっての所定の編集条件(検出条件)となる。
【0043】
<<許容値の設定処理>>
シート選択受付部63は、カット処理の対象となるシート媒体の種類についてユーザー選択を受け付ける。
シート属性情報取得部64は、当該シート媒体の性質に関する属性情報を取得する。
詳しく述べると、シート属性情報取得部64は、
図6に示す「シート別許容値データ」を参照して、ユーザー操作に基づいて選択されたシート媒体の種類から、当該シート媒体の素材、厚さ、硬さ等の属性情報を取得する。
具体的には、ユーザー操作に基づいて「媒体A」が選択されたときには、媒体Aの素材「素材a」、厚さ「薄い」、硬さ「柔らかい」等の属性情報を取得する。
【0044】
許容値設定部65は、
図6に示す「シート別許容値データ」を参照して、上記シート媒体の属性情報に基づいて所定の許容値を自動設定する。
具体的には、ユーザー操作に基づいて「媒体A」が選択されたときには、媒体Aの属性情報から許容値「0.0mm」を自動設定する。
なお、許容値設定部65は、ユーザー操作の入力を受け付けて、許容値を設定(手動設定)することも可能である。その場合には、ユーザー操作の入力可能な上限値及び下限値を予め設定しておき、当該上限値及び下限値の範囲内で新たな許容値の入力を受け付けるようにすると良い。
上記処理によって、シート媒体の性質に応じた「許容値」が設定される。
【0045】
<<データ編集及びカット処理>>
データ編集部66は、
図7に示す「カッティングデータ」に含まれるショートベクトル列(一連のカット動作)のうち、搬送方向Xにおいて「第1の向き」に向いているショートベクトル(カット動作)の向きを、搬送方向Xにおいて第1の向きとは反対側の向きとなる「第2の向き」へ変更するようにカッティングデータを編集する。
カット実行部67は、データ編集部66によって編集された「カッティングデータ」を参照して、シート媒体に所定のカットラインを形成するカット処理を行う。
ここで、「第1の向き」とは、搬送方向Xにおいてシート媒体を引き出す向きである。具体的には、
図1、
図2に示すように、搬送方向Xにおいてシート媒体をストックローラ34側から巻き取りローラ35側へ引き出す(送り出す)向きである。
「第2の向き」とは、搬送方向Xにおいてシート媒体を引き込む向きである。具体的には、搬送方向Xにおいてシート媒体を巻き取りローラ35側からストックローラ34側へ引き込む(送り戻す)向きである。
【0046】
詳しく述べると、データ編集部66は、具体的な機能としてベクトル検出部66aと、ベクトル変更部66bと、許容値判定部66cとを有しており、主として「第1検出条件」及び「第2検出条件」に従って、カッティングデータを編集する。
まず、「第1検出条件(切り替え点)」について説明する。
(1-1)ベクトル検出部66aは、ショートベクトル列における基準点(始点A)から順に「第1の向き」に向いているショートベクトルを検出する。このとき「第1検出条件」として、ショートベクトル列において「第1の向き」に向いているショートベクトルと、「第2の向き」に向いているショートベクトルとが切り替わる「切り替え点」も併せて検出する。なお、「切り替え点」とは、例えば
図7に示す点D(X4,Y4)や点N(X14,Y14)が相当する。
(1-2)ベクトル変更部66bは、「切り替え点」が検出されたときに、ショートベクトル列における「基準点(点A)」から「切り替え点(切り替え点に応じた地点)」まで、「第1の向き」に向いているショートベクトルの向きを「第2の向き」へ変更する。
そして、カット実行部67は、基準点(点A)から切り替え点まで第1のカット処理を実行する。
(1-3)データ編集部66は、カット実行部67によって第1のカット処理が実行された後、あるいは実行されている間に、上記切り替え点から再び、「第1の向き」に向いているショートベクトルを順に検出することを開始する。
上記一連の処理を繰り返することで、カッティング装置1は、「カッティングデータ」を編集しながら並行して随時第1のカット処理、第2のカット処理、そして第Nのカット処理(Nは3以上の自然数)を行うことができる。データ編集よりもカット処理の実行速度は遅いため、見た目には「カッティングデータ」を編集しながらリアルタイムでカット処理を行うように制御することができる。
【0047】
次に、「第1検出条件(切り替え点)」、「第2検出条件(許容値)」の両方の条件について説明する。
(2-1)許容値判定部66cは、ショートベクトル列において「第1の向き」に向いているショートベクトルにおける搬送方向の距離、又は「第1の向き」に連続して向いているショートベクトル群における搬送方向の累積距離が「所定の許容値」を超えたか否かを判定する。
(2-2)当該距離又は累積距離が「許容値」を超えたと判定された場合に、ベクトル検出部66aは、ショートベクトル列において「第1の向き」に向いているショートベクトルと、「第2の向き」に向いているショートベクトルとが切り替わる「切り替え点」を検出する。
(2-3)当該「切り替え点」が検出されたときに、許容値判定部66cは、ショートベクトル列において「第2の向き」に向いているショートベクトルにおける搬送方向の距離、又は「第2の向き」に連続して向いているショートベクトル群における搬送方向の累積距離が「所定の許容値」を超えたか否かをさらに判定する。
(2-4)「第2の向き」に向いているショートベクトルの距離又は「第2の向き」に連続して向いているショートベクトル群の累積距離が「所定の許容値」を超えたと判定された場合に、ベクトル変更部66bは、検出されたショートベクトルの向きを「第1の向き」から「第2の向き」へ変更する。
そして、カット実行部67は、基準点(点A)から切り替え点まで第1のカット処理を実行する。この場合、カット実行部67は、「第1の向き」に向いているショートベクトル(カット動作)を含まず、「第2の向き」に向いているショートベクトルを含む態様で第1のカット処理を実行することになる。
(2-5)データ編集部66は、カット実行部67によって第1のカット処理が実行された後、上記「第2の向き」に向いているショートベクトルの次のショートベクトルの始点、又は「第2の向き」に連続して向いているショートベクトル群の次のショートベクトルの始点から、再び、「第1の向き」に向いているショートベクトルを順に検出することを開始する。
上記一連の処理を繰り返することで、カッティング装置1は、「カッティングデータ」を編集しながら随時第1、第2、そして第Nのカット処理を行うことができる。
【0048】
上記の通り、データ編集部66が「第1検出条件」及び「第2検出条件」に従って、カッティングデータを編集することで、カッティング装置1は、シート媒体に対しより効率良くカット処理を行うことができる。すなわち、カット処理の仕上がりに影響がない範囲内で、よりシンプルなカット動作によってカット処理を行うことができる。
なお、データ編集部66は、「第1検出条件」のみに従ってカッティングデータを編集することができる。その場合には、「許容値」を0.0mmに設定するため、効率性にやや劣るものの、カット処理の仕上がりを優先させてカット処理を行うことができる。
【0049】
<<データ編集及びカット処理のその他ルール>>
そのほか、データ編集及びカット処理における「処理ルール」について、
図8A、Bに基づいて説明する。
(3)「許容値」を超えたか否かの判定について
「第2の向き」又は「第1の向き」に連続して向いているショートベクトル群の累積距離は、カッティングデータの編集開始時には「0mm」にリセットする。
また、当該ショートベクトル群の累積距離は、連続するショートベクトルの搬送方向Xにおける向きが変化するごとに、すなわち「切り替え点」が検出されるごとに「0mm」にリセットする。
図8Aの例を見ると、「第2の向き」に連続して向いているショートベクトル群の累積距離は「許容値」を超えておらず、また「第1の向き」に連続して向いているショートベクトル群の累積距離についても「許容値」を超えていないことになる。
【0050】
(4)データ編集処理のモード切り替えについて
データ編集処理では、
図8Bに示すように、3つの処理モード「無方向処理モード」、「第1方向処理モード」、「第2方向処理モード」が切り替わりながら進んでいく。
(4-1)「無方向処理モード」
カッティングデータの編集開始時には、「無方向処理モード」からスタートする。
ショートベクトル列において「第1の向き又は第2の向き」に向いているショートベクトルにおける搬送方向の距離、又は「第1の向き又は第2の向き」に連続して向いているショートベクトル群における搬送方向の累積距離が「許容値」を超えるまでは、「無方向処理モード」が継続する。
「無方向処理モード」のときには、検出される各ショートベクトルは、無条件でメモリに順に記憶される。
仮に「無方向処理モード」のまま、ショートベクトル列の基準点(始点A)から終点(終点A)までデータ編集処理が進んだ場合には、メモリに記憶されたショートベクトル列を含むカッティングデータをそのまま編集後のカッティングデータとし、データ編集処理が終了する。
【0051】
(4-2)「第1方向処理モード(プッシュ方向処理モード)」
データ編集処理が「無方向処理モード」又は「第2方向処理モード」で進んでいるときに、「第1の向き」に向いているショートベクトルの搬送方向の距離、又は「第1の向き」に連続して向いているショートベクトル群における搬送方向の累積距離が「許容値」を超えることで切り替わるモードである(
図8Bに示すモード切替1、4に相当)。
カッターがカット動作する「第1の向き」がシート媒体をカッター刃に押し付けて切る「押し切り」の向きとなることから、「第1方向処理モード」はプッシュ方向処理モードとも称される。 「第1方向処理モード」のときに、「第1の向き」に向いているショートベクトルを検出したときは、当該ショートベクトルの距離(大きさ)を、「第1の向き」に向いているショートベクトル群の累積距離にカウントし、当該ショートベクトルをメモリに順に記憶する。
また、「第1方向処理モード」のときに、「第2の向き」に向いているショートベクトルを検出したときは、当該ショートベクトルの距離を、「第1の向き」に向いているショートベクトル群の累積距離にカウントし、当該ショートベクトルをメモリに順に記憶する。そして、当該累積距離が許容値を超えた場合には、検出された「第1の向き」に向いているショートベクトルの向きを全て「第2の向き」に変更し、「第1方向処理モード」から「第2方向処理モード」へ切り替える(
図8Bに示すモード切替3に相当)。
「第1方向処理モード」のまま、ショートベクトル列の終点(終点A)までデータ編集処理を進めた場合には、メモリに残されたショートベクトル群を含むカッティングデータを編集後のカッティングデータとし、データ編集処理を終了する。
【0052】
(4-3)「第2方向処理モード(プル方向処理モード)」
データ編集処理が「無方向処理モード」又は「第1方向処理モード」で進んでいるときに、「第2の向き」に向いているショートベクトルの搬送方向の距離、又は「第2の向き」に連続して向いているショートベクトル群における搬送方向の累積距離が「許容値」を超えることで切り替わるモードである(
図8Bに示すモード切替2、3に相当)。
カッターがカット動作する「第2の向き」がシート媒体にカッター刃が刺さった状態で引っぱりながら切る向きとなることから、「第2方向処理モード」はプル方向処理モードとも称される。
「第2方向処理モード」のときに、「第1の向き」に向いているショートベクトルを検出したときは、当該ショートベクトルの距離を、「第1の向き」に向いているショートベクトル群の累積距離にカウントし、当該ショートベクトルをメモリに順に記憶する。当該累積距離が許容値を超えた場合には、「第2方向処理モード」から「第1方向処理モード」へ切り替える(
図8Bに示すモード切替4に相当)。
また、「第2方向処理モード」のときに、「第2の向き」に向いているショートベクトルを検出したときは、そのまま次のショートベクトルを検出する。ただし、メモリ内に「第1の向き」を向いているショートベクトルが記憶されている場合には、当該ショートベクトルの向きを変更せず、そのままメモリから出力した上で検出処理を継続する。理由として、メモリに記憶されていた「第1の向き」を向いているショートベクトルが、許容値を超えない距離をもつショートベクトルであって、「第2の向き」に連続して向いているショートベクトル群の一部であるからである。そのため、向きの変更処理は行われない。
「第2方向処理モード」のまま、ショートベクトル列の終点(終点A)までデータ編集処理を進めた場合には、メモリに残されたショートベクトル群を含むカッティングデータを編集後のカッティングデータとし、データ編集処理を終了する。
【0053】
(5)その他
「無方向処理モード」から「第1方向処理モード」又は「第2方向処理モード」へ切り替わるときには、そのままデータ編集処理を継続する。すなわち、メモリに順に記憶されたショートベクトル群を出力せず、そのまま次のショートベクトルを積み上げて記憶する。言い換えれば、ショートベクトル列の基準点(点A)から切り替え点までのカット処理(途中カット処理)を実行することはしない。
一方で、「第1方向処理モード」から「第2方向処理モード」へ切り替わるとき、あるいは「第2方向処理モード」から「第1方向処理モード」へ切り替わるときには、メモリに順に記憶されたショートベクトル群を出力する。すなわち、メモリに記憶されたショートベクトル群の搬送方向における向きを確定させる。そして、ショートベクトル列の基準点から切り替え点までのカット処理(途中カット処理)を実行する。
ショートベクトル列の終点を検出した場合にも、メモリに順に記憶されたショートベクトル群を出力する。すなわち、メモリに記憶されたショートベクトル群の搬送方向における向きを確定させる。そして、ショートベクトル列の基準点(所定地点)から終点までのカット処理を実行する。
【0054】
<<データ編集及びカット処理の具体例>>
以下、
図9A~
図9Fに基づいて、データ編集及びカット処理の具体例を説明する。
本具体例では、カッティング装置1が、シート媒体に形成された画像「スペードマーク」に沿ってカットラインを形成するための「カッティングデータ」を編集し、編集されたカッティングデータに基づいてカット処理を実行する具体例である。
【0055】
まず、データ編集部66は、編集モードを「無方向処理モード」とし、「累積距離」を0mmとし、データ編集を開始する。
図9Aに示す編集処理(1)では、データ編集部66は、ショートベクトル列のうち、ショートベクトルV1を検出し、メモリに記憶する。当該ショートベクトルV1は、搬送方向の向きを持たないベクトルであるため、「累積距離」を0mmとする。
【0056】
図9Bに示す編集処理(2)では、データ編集部66は、「第1の向き」に向くショートベクトルV2を検出する。新たに「第1の向き」を向くショートベクトルを検出したため、「累積距離」を0mmに初期化した上で、メモリに積み上げて記憶する。この時点では、「無方向処理モード」のままである。
そして、データ編集部66は、「第1の向き」に向くショートベクトルV3を検出し、「第1の向き」に向くショートベクトル群の「累積距離」をカウントし、当該累積距離が「許容値」を超えているか否かを判定する。「累積距離」が「許容値」を超えているため、上記処理ルール(4)-1、処理ルール(5)に従って、「無方向処理モード」から「第1方向処理モード」へ切り替えて、ショートベクトルV3をメモリに記憶する。
なお、仮にこの時点で「第2の向き」に向くショートベクトル群の「累積距離」が「許容値」を超えている場合には、メモリ内のショートベクトルV1~V3の向きを変更せず、当該ベクトルV1~V3をそのまま出力することになる。
【0057】
編集処理(3)では、データ編集部66は、「第2の向き」に向くショートベクトルV4を検出し、ショートベクトルの向きが切り替わる「切り替え点」を検出する。当該切り替え点を検出したため、「累積距離」を0mmにリセットする。
そして、「第1方向処理モード」であるため、「第2の向き」に向くショートベクトルV4、V5の累積距離をカウントし、当該ベクトルV4、V5をメモリに積み上げて記憶する。
編集処理(3)では、「第2の向き」を向くショートベクトル群の「累積距離」が「許容値」を超えないため、引き続き「第1方向処理モード」を継続する。
【0058】
図9Cに示す編集処理(4)では、データ編集部66は、「第1の向き」に向くショートベクトルV6を検出し、ショートベクトルの向きが切り替わる「切り替え点」を検出する。当該切り替え点を検出したため、「累積距離」を0mmにリセットする。
そして、「第1方向処理モード」であるため、「第1の向き」に向くショートベクトルV6の距離をカウントし、当該ベクトルV6をメモリに積み上げて記憶する。
編集処理(4)では、引き続き「第1方向処理モード」を継続する。
【0059】
編集処理(5)では、データ編集部66は、「第1の向き」に向くショートベクトル群V7~V13を検出し、「第1の向き」に向くショートベクトル群V7~V13の累積距離をカウントする。
このとき、データ編集部66は、ショートベクトルV7を検出したときに、「第1の向き」に向くショートベクトル群の「累積距離」が「許容値」を超えたと判定する。一方で、上記処理ルール(4)-2に従って「第1方向処理モード」を継続し(モード切り替えを行わず)、ショートベクトル群V7~V13をメモリに積み上げて記憶する。
【0060】
図9Dに示す編集処理(6)では、データ編集部66は、「第2の向き」に向くショートベクトルV14を検出し、ショートベクトルの向きが切り替わる「切り替え点」を検出する。当該切り替え点を検出したため、「累積距離」を0mmにリセットする。
そして、データ編集部66は、ショートベクトルV15を検出したときに、「第2の向き」に向くショートベクトル群の「累積距離」が「許容値」を超えたと判定する。
なお、この時点では「第1方向処理モード」を実行しているため、データ編集部66は、ショートベクトル群V14、V15をメモリに積み上げて記憶する。
【0061】
編集処理(7)では、データ編集部66が、「第1方向処理モード」で進んでいるときに、「第2の向き」に向いているショートベクトル群における搬送方向の累積距離が「許容値」を超えたと判定したため、上記処理ルール(4)-2、(4)-3に従って「第1方向処理モード」から「第2方向処理モード」へ切り替える。
そして、データ編集部66は、「第1方向処理モード」から「第2方向処理モード」へ切り替わったため、処理ルール(5)に従って、メモリに順に記憶されたショートベクトル群V1~V13を出力する。すなわち、メモリに記憶されたショートベクトル群V1~V13の搬送方向における向きを確定させる(「第1の向き」に向くショートベクトルの向きを「第2の向き」に変更する)。
そして、カット実行部67は、ショートベクトル列の基準点(ショートベクトルV1の始点)から切り替え点(ショートベクトルV13の終点)までの第1のカット処理を実行する。
なお、
図9Bの編集処理(7)において、各ショートベクトルの矢印の黒塗りは「カット処理済」であることを意味する。また、各ショートベクトルの矢印の白塗りは、「カット未処理」であることを意味する。
【0062】
図9Eに示す編集処理(8)では、データ編集部66は、カット実行部67によって第1のカット処理が実行された後、ショートベクトルV15の終点から再び、ショートベクトル列を順に検出する。具体的には、上記処理ルール(4)-3に従って「第2の向き」に向くショートベクトル群V16~V21を順に検出する。
上記処理ルール(4)-3によれば、データ編集部66は、「第2方向処理モード」のときに、「第2の向き」に向いているショートベクトルV16を検出したときは、そのまま次のショートベクトルV17(V18~V21)を検出する(V16~V21をメモリに記憶せずに出力する)。また、メモリ内に「第1の向き」を向いているショートベクトルV14、V15が記憶されている場合には、当該ショートベクトルの向きを変更せず、そのままメモリから出力した上で検出処理を継続する。
【0063】
編集処理(9)では、データ編集部66は、「第1の向き」に向くショートベクトルV22を検出し、ショートベクトルの向きが切り替わる「切り替え点」を検出する。当該切り替え点を検出したため、「累積距離」を0mmにリセットする。
そして、「第2方向処理モード」であるため、「第1の向き」に向くショートベクトル群V22、V23の累積距離をカウントし、当該ベクトルV22、V23をメモリに積み上げて記憶する。
編集処理(9)では、引き続き「第2方向処理モード」を継続する。
【0064】
図9Fに示す編集処理(10)では、データ編集部66は、「第1の向き」に向くショートベクトル群の累積距離が「許容値」を超えない範囲内で、「第2の向き」に向くショートベクトルV24を検出し、ショートベクトルの向きが切り替わる「切り替え点」を検出する。当該切り替え点を検出したため、「累積距離」を0mmにリセットする。
上記処理ルール(4)-3によれば、データ編集部66は、「第2方向処理モード」のときに、「第2の向き」に向いているショートベクトルV24を検出したときは、そのまま次のショートベクトルを検出する(メモリに記憶せず出力する)。また、メモリ内に「第1の向き」を向いているショートベクトルV22、V23が記憶されている場合には、当該ショートベクトルの向きを変更せず、そのままメモリから出力した上で検出処理を継続する。
【0065】
編集処理(11)では、データ編集部66は、ショートベクトル列のうち、「第2の向き」に向いている最後のショートベクトルV25を検出し、ショートベクトル列の終点に到達する。
そして、「第2方向処理モード」のまま、ショートベクトル列の終点までデータ編集を終えたため、処理ルール(4)-3、(5)に従って、カット未処理のショートベクトル群を含むカッティングデータを編集後のカッティングデータとし、データ編集処理を終了する。
そして、カット実行部67は、ショートベクトル列の基準点(ショートベクトルV14の始点)から終点(ショートベクトルV25の終点)までの第2のカット処理を実行する。
【0066】
上記データ編集処理及びカット処理を実行することで、カッティング装置1が、シート媒体に形成された画像「スペードマーク」に沿って好適にカット処理を行うことができる。
すなわち、カット処理の仕上がりに影響がない範囲内でシート媒体に対し効率良くカット処理を行うことができる。また、特に厚みが薄いシート媒体に対しても、シートの撓みの発生を抑えてカット処理を適切に行うことができる。
また、カッティングデータを編集しながら随時カット処理を行うことで、従来のメモリ容量を最大で半分まで減らすことができる。本具体例で言えば、従来のようにショートベクトル列V1~V25をフルにメモリに記憶することなく、カット処理を行うことができる。
【0067】
<カッティング方法>
次に、カッティング装置1で実行されるカッティングプログラム(カッティング方法)の処理について、
図10に基づいて説明する。
本実施形態に係る上記プログラムは、記憶部61を備えたカッティング装置1の機能的な構成要素として、上述したデータ取得部62と、シート選択受付部63と、シート属性情報取得部64と、許容値設定部65と、データ編集部66と、カット実行部67と、を実現させるために各種プログラムを集約させたユーティリティプログラムであって、カッティング装置1のCPUがこのカッティングプログラムを実行する。
上記プログラムは、ユーザーからの操作指示を受け付けて実行されるものである。
【0068】
図10に示すカッティングプロセスでは、まず、データ取得部62が、
図7に示す「カッティングデータ」を取得するステップS1から始まる。
具体的には、データ取得部62は、外部のコンピュータによって作成された「図形データ(画像データ)」を通信ネットワークによって取得し、取得した「図形データ(画像データ)」を加工する。つまりは、当該図形データをショートベクトル列に変換し、ショートベクトル列の情報を含む「カッティングデータ」を作成する。
【0069】
次に、ステップS2で、シート選択受付部63が、カット処理の対象となるシート媒体のユーザー選択を受け付ける。
例えば、シート媒体が「薄葉紙」の場合には、「媒体E」のユーザー選択を受け付けることになる。
そして、ステップS3で、シート属性情報取得部64が、
図6に示す「シート別許容値データ」を参照して、ユーザー選択されたシート媒体の「素材」、「厚さ」、「硬さ」等の属性情報を取得する。
具体的には、「媒体A」が選択されたときには、媒体Aの素材「素材a」、厚さ「薄い」、硬さ「柔らかい」等の属性情報を取得する。
【0070】
次に、ステップS4で、許容値設定部65が、取得したシート媒体の属性情報に基づいて所定の許容値を自動設定する。
具体的には、ユーザー操作に基づいて「媒体E」が選択されたときには、媒体Eの属性情報から許容値「10.0mm」を自動設定する。
【0071】
次に、ステップS5で、データ編集部66が、ユーザーからの操作指示を受け付けて、データ取得部62によって取得された「カッティングデータ」の編集を開始する。
まずは、ステップS6で、データ編集部66は、「カッティングデータ」に含まれるショートベクトル列のうち、搬送方向において「第1の向き」に向いているショートベクトルの向きを検出する。
具体的には、データ編集部66は、ショートベクトル列における基準点から順に、「第1の向き」に向いているショートベクトルを検出する。言い換えれば、「第1の向き」に向いているショートベクトルが検出されたか否かを判定する。
「第1の向き」に向くショートベクトルが検出された場合には(ステップS6:Yes)、ステップS7に進む。一方で、当該ショートベクトルが検出されないまま、ショートベクトル列の終点まで到達した場合には(ステップS6:Nо)、ステップS11に進む。
【0072】
次に、ステップS7で、データ編集部66が、各ショートベクトルの検出にあたって、「所定の検出条件」が満たされたか否かを判定する。
当該「所定の検出条件」とは、上述した(1)第1検出条件(切り替え点)、(2)第2検出条件(許容値)、(3)「許容値」を超えたか否かの判定、(4)データ編集処理のモード切り替え、(5)その他のルールに基づくものである。
【0073】
「所定の検出条件」が満たされたと判定された場合には(ステップS7:Yes)、ステップS8に進み、データ編集部66は、検出された「第1の向き」に向いているショートベクトル群の向きを「第2の向き」へ変更する。
一方で、「所定の検出条件」が満たされていないと判定された場合には(ステップS7:Nо)、ステップS9に進み、データ編集部66は、検出された「第1の向き」に向いているショートベクトルの向きをそのままの向きとする。例えば、ショートベクトル列において「第1の向き」に向いているショートベクトルにおける搬送方向の距離、又は「第1の向き」に連続して向いているショートベクトル群における搬送方向の累積距離が「許容値」を超えていないと判定された場合には、ショートベクトルの向きをそのままの向きとする。
【0074】
次にステップS10で、データ編集部66が、各ショートベクトルの検出にあたって、「所定のカット条件」が満たされたか否かを判定する。
当該「所定のカット条件」とは、上述した(1)第1検出条件、(2)第2検出条件、(3)「許容値」を超えたか否かの判定、(4)データ編集処理のモード切り替え、(5)その他のルールに基づくものである。
【0075】
「所定のカット条件」が満たされたと判定された場合には(ステップS10:Yes)、ステップS11に進み、データ編集部66が編集したカッティングデータをカット実行部67に渡してから、カット実行部67が、データ編集部66によって編集されたカッティングデータに基づいてカット処理を実行する。具体的には、ショートベクトル列における基準点から、データ編集部66によって編集されたカッティングデータに基づく所定点までカット処理を実行する。
一方で、「所定のカット条件」が満たされていないと判定された場合には(ステップS10:Nо)、ステップS6に戻る。
【0076】
最後にステップS12で、カット実行部67が、カット処理を完了したか否かを判断する。カット処理が完了した場合には(ステップS12:Yes)、
図10のプロセスを終了する。一方で、カット処理を完了しておらず、未処理のカットラインが残っている場合には、ステップS5に戻る。
【0077】
上記のカッティングプログラムの処理フローにより、シート媒体に対し好適にカット処理を行うことが可能となる。また、カット処理の仕上がりに影響がない範囲内でシート媒体に対し効率良くカット処理を行うことが可能となる。
すなわち、カット処理の仕上がりに影響がない範囲内でシート媒体に対し効率良くカット処理を行うことができる。
なお、カッティング装置1(カッティング方法)では、条件を満たせば、データ編集部66による処理と、カット実行部67による処理とが並行して実行される場合がある。そうすると、カッティング装置1は、見た目にはカッティングデータを編集しながらリアルタイムでカット処理を行っているように制御することができる。
【0078】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、
図1に示すように、カッティング装置1は、カッターを搭載するカッティングプロッタであったが、カッター及びペンを搭載するカッティングプロッタであっても良い。
カッター及びペンを搭載するカッティングプロッタの場合には、カット処理を行う場合だけでなく、ペン処理を行う場合にも本発明の技術を応用させることができる。すなわち、カッティングプロッタは、シート媒体に所定の描画を形成するための描画データを編集しながら随時ペン処理を実行するとともに、ペン処理の仕上がりに影響がない範囲内で許容値を設定し、極力シンプルなペン動作でペン処理を実行することができる。
さらには、本発明に係る装置がペンのみを搭載するペンプロッタであっても良く、ペン処理を行う場合に本発明の技術を応用させることができる。
【0079】
上記実施形態では、カッティング装置1は、シート媒体にカットラインを形成するためのカッティングデータを編集しながら随時カット処理を実行するとともに(機能1)、カット処理の仕上がりに影響がない範囲内で許容値を設定し、極力シンプルなカット動作でカット処理を実行するものである(機能2)。
上記に限定されず、例えば、カッティング装置1が、シート媒体にカットラインを形成するためのカッティングデータを編集しながら随時カット処理を実行するものであって、特に「許容値」を設けないこととしても良い。すなわち、カッティング装置1が、上記機能1を有し、上記機能2を有さないものであっても良い。
また例えば、カッティング装置1が、カット処理の仕上がりに影響がない範囲内で許容値を設定し、極力シンプルなカット動作でカット処理を実行するものであって、特にカッティングデータを編集しながら随時カット処理を実行しなくても良い(リアルタイムのカット処理を行わなくても良い)。すなわち、カッティング装置1が、上記機能2を有し、上記機能1を有さないものであっても良い。
【0080】
上記実施形態では、データ編集部66は、ショートベクトル列のうち、搬送方向において「第1の向き」に向いているショートベクトルの向きを「第2の向き」へ揃えるようにカッティングデータを編集しているが、特に限定されず変更可能である。
逆に、データ編集部66は、搬送方向において「第2の向き」に向いているショートベクトルの向きを「第1の向き」へ揃えるようにカッティングデータを編集しても良い。
なお、好ましくは「第2の向き」に揃えると良い。すなわち、搬送方向においてシート媒体を引き込む向きに揃えると良い。そうすることで、シート媒体に撓みが発生し難くなり、シート媒体に対し好適にカット処理を行うことができる。
【0081】
上記実施形態では、カッティング装置1が読み取り可能な記録媒体にカッティングプログラムが記憶されており、カッティング装置1が当該プログラムを読み出して実行することによって処理が実行される。ここで、カッティング装置1が読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。
また、このカッティングプログラムを通信回線によって不図示のユーザー端末に配信し、この配信を受けたユーザー端末自身が、映像処理装置として機能し、当該プログラムを実行するように構成しても良い。
【0082】
本実施形態では、主として本発明に係るカッティング装置、カッティング方法及びカッティングプログラムに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
1 カッティング装置
2 シート媒体
2a 画像
2b コードマーク
2c トンボマーク
10 ユーザー入力機構
20 表示機構
30 シート搬送機構
31 搬送台
32 駆動ローラ
32a 回転軸
33 加圧ローラ
33a 回転軸
33b 圧縮バネ
34 ストックローラ
35 巻き取りローラ
40 キャリッジ
41 カッター
42 カッターホルダ
43 アクチュエータ(カッター移動機構)
50 キャリッジ移動機構
51 スライドレール
52 スライダ
60 制御コントローラ
61 記憶部
62 データ取得部
63 シート選択受付部
64 シート属性情報取得部
65 許容値設定部
66 データ編集部
66a ベクトル検出部
66b ベクトル変更部
66c 許容値判定部
67 カット実行部
X 搬送機構(シート搬送方向)
Y 移動方向(キャリッジ移動方向)
Z 上下方向