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特開2023-105700サーチュイン遺伝子活性化剤、医薬組成物、化粧料及び飲食料品
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  • 特開-サーチュイン遺伝子活性化剤、医薬組成物、化粧料及び飲食料品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105700
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】サーチュイン遺伝子活性化剤、医薬組成物、化粧料及び飲食料品
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/60 20170101AFI20230724BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230724BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230724BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230724BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230724BHJP
【FI】
A61K47/60
A61P43/00 111
A61P43/00
A61K8/86
A61Q1/00
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006690
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】501218566
【氏名又は名称】学校法人片柳学園
(71)【出願人】
【識別番号】521166319
【氏名又は名称】株式会社リグノマテリア
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】見正 大祐
(72)【発明者】
【氏名】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】山下 俊
(72)【発明者】
【氏名】加柴 美里
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD08
4B018MD35
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF10
4C076AA95
4C076BB31
4C076CC41
4C076CC50
4C076EE23
4C083AD041
4C083AD042
4C083CC01
4C083EE50
(57)【要約】
【課題】新たなサーチュイン遺伝子活性化剤の提供。
【解決手段】グリコールリグニンを有効成分とするサーチュイン遺伝子活性化剤。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコールリグニンを有効成分とするサーチュイン遺伝子活性化剤。
【請求項2】
前記グリコールリグニンの重量平均分子量が1000以上100000以下である請求項1に記載のサーチュイン遺伝子活性化剤。
【請求項3】
前記グリコールリグニンがポリアルキレングリコール、グリセリン、及びポリグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種で誘導体化されたグリコールリグニンである請求項1又は請求項2に記載のサーチュイン遺伝子活性化剤。
【請求項4】
前記グリコールリグニンがポリアルキレングリコールで誘導体化されたグリコールリグニンである請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のサーチュイン遺伝子活性化剤。
【請求項5】
前記ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである請求項4に記載のサーチュイン遺伝子活性化剤。
【請求項6】
前記ポリアルキレングリコールの分子量が200以上2000以下である請求項4又は請求項5に記載のサーチュイン遺伝子活性化剤。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のサーチュイン遺伝子活性化剤を含有する医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のサーチュイン遺伝子活性化剤を含有する化粧料。
【請求項9】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のサーチュイン遺伝子活性化剤を含有する飲食料品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーチュイン遺伝子活性化剤、医薬組成物、化粧料、及び飲食料品に関する。
【背景技術】
【0002】
サーチュインは、SIRT1~7からなる脱アセチル化酵素である。近年、サーチュインの機能に関する研究が盛んになり抗老化作用、糖尿病改善作用、心血管保護作用、腎疾患改善作用、炎症性サイトカイン産生の抑制作用、神経保護作用等、様々な機能を有することが明らかになった(例えば、非特許文献1参照)。
サーチュインのこれらの働きを利用するために、サーチュイン遺伝子を活性化するための研究が盛んになされている。現在までに、サーチュイン遺伝子の活性化能を有する化合物(サーチュイン遺伝子活性化剤)としては、例えば、レスベラトロール、ケルセチン等が知られており、これらの化合物の医薬組成物、化粧料、飲食料品等への利用されている。
【0003】
また、レスベラトロール、及びケルセチン以外のサーチュイン遺伝子の活性化能を有する化合物として、特許文献2には「リグニン配糖体を有効成分として含有するサーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤であって、前記リグニン配糖体は、以下の性質を有することを特徴とするサーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤。
(1)リグニン及び多糖類が結合
(2)分子量は8000から10000
(3)リグニンと多糖類の結合比は1:1~2:1(分子比)
(4)多糖類はウロン酸10~20%、中性糖80~90%で構成されている。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】実験医学 2010年28巻19号 3068-3076頁
【特許文献2】特開2014-185170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の課題は、新たなサーチュイン遺伝子活性化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち
<1> グリコールリグニンを有効成分とするサーチュイン遺伝子活性化剤。
<2> 前記グリコールリグニンの重量平均分子量が1000以上100000以下である前記<1>に記載のサーチュイン遺伝子活性化剤。
<3> 前記グリコールリグニンがポリアルキレングリコール、グリセリン、及びポリグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種で誘導体化されたグリコールリグニンである前記<1>又は<2>に記載のサーチュイン遺伝子活性化剤。
<4>前記グリコールリグニンがポリアルキレングリコールで誘導体化されたグリコールリグニンである前記<1>~<3>のいずれか1つに記載のサーチュイン遺伝子活性化剤。
<5> 前記ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである前記<4>に記載のサーチュイン遺伝子活性化剤。
<6> 前記ポリアルキレングリコールの分子量が200以上2000以下である前記<4>又は<5>に記載のサーチュイン遺伝子活性化剤。
<7> 前記<1>~<6>のいずれか1つに記載のサーチュイン遺伝子活性化剤を含有する医薬組成物。
<8> 前記<1>~<6>のいずれか1つに記載のサーチュイン遺伝子活性化剤を含有する化粧料。
<9> 前記<1>~<6>のいずれか1つに記載のサーチュイン遺伝子活性化剤を含有する飲食料品。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、新たなサーチュイン遺伝子活性化剤が提供される。
また、本開示の他の一実施形態によれば、本開示のサーチュイン遺伝子活性化剤を含有する医薬組成物が提供される。
また、本開示の他の一実施形態によれば、本開示のサーチュイン遺伝子活性化剤を含有する化粧料が提供される。
また、本開示の他の一実施形態によれば、本開示のサーチュイン遺伝子活性化剤を含有する飲食品料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】サーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0011】
<サーチュイン遺伝子活性化剤>
本開示に係るサーチュイン遺伝子活性化剤は、グリコールリグニンを有効成分とする。
ここで、グリコールリグニンを有効成分とするとは、サーチュイン遺伝子活性化剤のうちグリコールリグニンがサーチュイン遺伝子活性化能を示すことを意味する。
ここで、本明細書においてサーチュイン遺伝子活性化能とは、サーチュイン遺伝子の発現量をインビボ(in vivo)、又はインビトロ(in vitro)にて増強することをいう。
本明細書において「サーチュイン遺伝子」とは、例えば、哺乳類におけるSIRT1、SIRT2、SIRT3、SIRT4、SIRT5、SIRT6、およびSIRT7を包含して言う。
【0012】
本開示に係るサーチュイン遺伝子活性化剤は、上記構成により、サーチュイン遺伝子活性化能を示す。その理由は、次の通り推測される。
【0013】
グリコールリグニンは、化学構造上、レスベラトロール、及びケルセチンに類似した構造を有する。具体的には、複数のベンゼン環を有する点、ベンゼン環上に酸素含有官能基を有する点等について類似している。
また、グリコールリグニンは、リグニンの少なくとも一部が、後述するグリコール化合物から少なくとも1つのヒドロキシ基を除いた残基で置換されている化合物をいう。そのため、グリコールリグニンはグリコール化合物由来の構造を有する。グリコールリグニン中におけるグリコール化合物由来の構造は疎水性と親水性の両方を有するため、親水性部分が体内での体液と共に移動することを助け、疎水部分が脂質二重層の疎水的な中心部との親和性も増す。そのためグリコールリグニンの生体内への取り込み(例えば、組織間液の浸透圧の原理により細胞内への取り込み)が促進される。
よって、グリコールリグニンのリグニン由来の構造と、グリコール化合物由来の構造と、が組み合わさることでサーチュイン遺伝子活性化能を有する。
【0014】
そのため、本開示に係るサーチュイン遺伝子活性化剤は、上記構成により、サーチュイン遺伝子活性化能を示すと推測される。
【0015】
(グリコールリグニン)
グリコールリグニンとは、リグニンの少なくとも一部が、後述するグリコール化合物から少なくとも1つのヒドロキシ基を除いた残基で置換されている化合物をいう。
つまり、グリコールリグニンは、後述のグリコール化合物で誘導体化された化合物である。
【0016】
グリコールリグニンの誘導体化に用いられるグリコール化合物としては、グリコールのみに限定されず、1分子内にヒドロキシ基を1個以上有するアルコールを含む。
グリコール化合物としては、例えば、1分子内にヒドロキシ基を1個以上有するアルコールが挙げられる。
1分子内にヒドロキシ基を1個以上3個以下有するアルコールであることが好ましく、1分子内にヒドロキシ基を2個以上3個以下有するアルコールであることが好ましく、1分子内にヒドロキシ基を2個有するアルコールであることがより好ましい。
【0017】
1分子内にヒドロキシ基を1個有するアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等が挙げられる。
グリコール化合物としては、1分子内にヒドロキシ基を2個有するアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール;ポリアルキレングリコール;ポリグリセリン;等が挙げられる。
1分子内にヒドロキシ基を3個有するアルコールとしては、例えば、グリセリン;グリセリンにアルキレンオキサイドを付加重合した化合物等が挙げられる。
また、グリコール化合物としては、例えば、ポリグリセリンを用いてもよい。
【0018】
サーチュイン遺伝子活性化能を向上させる観点から、グリコール化合物としてはポリアルキレングリコール、グリセリン、及びポリグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
ここで、ポリアルキレングリコールとは、アルコールにアルキレンオキサイドを付加重合した化合物である。
つまり、グリコールリグニンとしてはポリアルキレングリコール、グリセリン、及びポリグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種で誘導体化されたグリコールリグニンであることが好ましい。
【0019】
サーチュイン遺伝子活性化能をより向上させる観点から、グリコールリグニンとしてはポリアルキレングリコールで誘導体化されたグリコールリグニンであることがより好ましい。
ポリアルキレングリコールとしては、アルコールに炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを付加重合した化合物であることが好ましく、アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加重合した化合物であることがより好ましく、アルコールに炭素数2のアルキレンオキサイドを付加重合した化合物であることが更に好ましい。
【0020】
ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられ、得られるグリコールリグニンの特性およびグリコール化合物としての取り扱いの容易性の観点、及びサーチュイン遺伝子活性化能をより向上させる観点から、ポリエチレングリコールであることが好ましい。
【0021】
サーチュイン遺伝子活性化能を更に向上させる観点から、ポリアルキレングリコールの分子量としては、200以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが好ましく、200以上700以下であることがさらに好ましい。
【0022】
ポリアルキレングリコールの分子量はJIS K1557-1:2007による水酸基価の測定値と、官能基数と、を下記式に代入することで算出される値である。
式:分子量=(56100/水酸基価)×官能基数
なお、水酸基価はJIS K1557-1:2007に準拠して算出される値である。
【0023】
グリコールリグニンはアシル化されたグリコールリグニンであってもよい。
ここで、アシル化されたグリコールリグニンをアシル化グリコールリグニンと呼ぶ。
【0024】
アシル化グリコールリグニンが有するアシル基としては、炭素数1以上6以下のアシル基が挙げられ、抗酸化作用向上の観点から、炭素数1以上4以下のアシル基が好ましく、炭素数1以上2以下のアシル基がより好ましい。
アシル基としては、具体的には、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基(ブタノイル基)、プロペノイル基、ヘキサノイル基等が挙げられる。これらの中でもアシル基としては、抗酸化作用向上の観点から、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基(ブタノイル基)及びプロペノイル基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ホルミル基、及びアセチル基からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0025】
抗酸化作用向上の観点から、アシル化グリコールリグニンのアシル化率は60以上100以下であることが好ましく、90以上100以下であることがより好ましく、95以上100以下であることが更に好ましい。
【0026】
アシル化率とは、アシル化グリコールリグニン1g中に存在する各アセチル基の物質量である。
【0027】
アシル化グリコールリグニンのアシル化率の算出方法は以下の通りである。
アシル化率は、H-NMRの測定により算出される。具体的には、アシル化グリコールリグニン及び内部標準としてのペンタフルオロベンズアルデヒドを溶媒としてのDMSO-d6に溶解し、得られた溶液をH-NMR測定を行う。得られたNMRチャートの内、ペンタフルオロベンズアルデヒドのホルミル基に由来するピークの積分値、及びアシル化グリコールリグニンが含有するアシル基に由来するピークの積分値に基づいてされる。
【0028】
以下、アシル化率の算出方法について、アセチル化率(グリコールリグニンが有するヒドロキシル基がアセチル基により置換されている程度を示す指標)の算出方法を例に挙げて具体的に説明する。
測定物質であるアシル化グリコールリグニン(アシル基はアセチル基)の核磁気共鳴(H-NMR)スペクトル測定を行う。溶媒はDMSO-d6 1mlを用い、これに測定物質14.3mgおよび内部標準としてのペンタフルオロベンズアルデヒド11.5mgを溶解させる。
H-NMRスペクトルにおいて、10.14ppmに内部標準であるペンタフルオロベンズアルデヒドのホルミル基の吸収が観測され、その積分値は0.959である。一方測定物質のアセチル基の共鳴吸収ピークは、2.23ppmにフェノール性水酸基由来のアセチル基のピーク(積分値1.749)、2.00ppmに脂肪族性水酸基由来のアセチル基のピーク(積分値2.434)が観測される。
以上の結果をもとに、内部標準のペンタフルオロベンズアルデヒド(0.059mmol)の積分比0.959から、プロトン1mmolあたりの積分値は、0.959H÷0.059mol=16.25H/mmolであると決定する。一方、アセチル基には、3つのプロトンがあることを考慮し、測定物質1g中に存在する各アセチル基の物質量を計算する。
測定物質1g中に存在するフェノール性水酸基由来のアセチル基は、下記式1の通り算出する。
式1:1.749÷0.0143g÷3÷(0.959÷0.059mol)≒2.49mmol/g
測定物質1g中に存在する脂肪族性水酸基由来のアセチル基は、下記式2の通り算出する。
式2:2.434÷0.0143g÷3÷(0.959÷0.059mol)≒3.50mmol/g
以上の結果から、測定物質のアセチル化率は5.99mmol/gであると決定する。
【0029】
サーチュイン遺伝子活性化能を向上させる観点から、グリコールリグニンの重量平均分子量は1000以上100000以下であることが好ましく、1500以上50000以下であることがより好ましく、1750以上20000以下であることが更に好ましい。
【0030】
グリコールリグニンの重量平均分子量は、下記測定条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法で測定される値である。
・カラム:TSKgel SuperAWM-H x2 (6.0mm I.D. x 15cm x 2)
・カラム温度:40℃
・溶離液:50mMの濃度のLiBr及び100mMの濃度のリン酸を含むDMF
・流速:0.6mL/min
・検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0031】
グリコールリグニンは、例えば、グリコール化合物を溶媒として用い、リグノセルロースを触媒の存在下で加溶媒分解した後、得られた反応溶液からグリコールリグニンを分離することで得られる。
【0032】
加溶媒分解時の反応条件としては特に限定されないが、例えば、110℃以上180℃以下の反応温度で、60分間以上240分間以下の時間撹拌することが好ましい。
ここで、リグノセルロースとは、セルロース、ヘミセルロース、及びリグニンを含有する有機物である。
触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの酸が挙げられる。
【0033】
グリコールリグニンを分離する方法としては、例えば、加溶媒分解後の反応溶液をアルカリ性とすることで、固形分を析出させ、グリコールリグニンを含む溶液である上澄みを回収した後、回収した上澄みを酸性とすることでグリコールリグニンを沈殿させ、グリコールリグニンが沈殿した溶液をろ過することでグリコールリグニンを得る方法が挙げられる。
【0034】
グリコールリグニンの製造方法としては、例えば、特開2017-197517号公報に記載された方法が挙げられる。
【0035】
グリコールリグニンをアシル化する場合、グリコールリグニンをアシル化する方法としては、上記方法にて製造されたグリコールリグニンとアシル化剤とを反応させる方法が挙げられる。
アシル化剤としては、例えば、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物などが挙げられる。
【0036】
カルボン酸無水物としては、炭素数2以上12以下のカルボン酸無水物が挙げられる。
カルボン酸無水物としては、具体的には、ギ酸無水物、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、ヘキサン酸無水物などが挙げられる。
【0037】
カルボン酸ハロゲン化物としては、炭素数1以上6以下のカルボン酸ハロゲン化物が挙げられる。
カルボン酸ハロゲン化物が含有するハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
カルボン酸ハロゲン化物としては、具体的には、ギ酸クロリド、ギ酸ブロマイド、ギ酸ヨージド、酢酸クロリド、酢酸ブロマイド、酢酸ヨージド、プロピオン酸クロリド、プロピオン酸ブロマイド、プロピオン酸ヨージド、酪酸クロリド、酪酸ブロマイド、酪酸ヨージド、ヘキサン酸クロリド、ヘキサン酸ブロマイド、ヘキサン酸ヨージドなどが挙げられる。
【0038】
アシル化グリコールリグニンは、例えば、グリコールリグニンのアシル化、及びそれに続くアシル化グリコールリグニンの単離によって製造される。
アシル化反応の条件としては、特に限定されないが、例えば、グリコールリグニン及びアシル化剤を溶剤中に添加した後、加熱して撹拌することで行うことが好ましい。
【0039】
アシル化反応は塩基存在下で行うことが好ましい。
塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基;ピリジン、N,N-ジメチルアニリン等の有機塩基等が挙げられる。
塩基としては、アシル化反応の効率化の観点から、ピリジンが特に好ましい。
【0040】
そして、アシル化反応後のアシル化グリコールリグニンの単離は、常法に従って行うことができ、再沈殿、再結晶、クロマトグラフィー等により容易に単離することができる。
【0041】
アシル化反応後のアシル化グリコールリグニンの単離は、単離の容易さの観点から、沈殿によって行うことが好ましい。
具体的には、アシル化グリコールリグニンを含む反応溶液を、水中に滴下することで、アシル化グリコールリグニンを析出し、析出したグリコールリグニンを減圧条件下で乾燥することでアシル化グリコールリグニンを得ることができる。
【0042】
(用途)
本開示に係るサーチュイン遺伝子活性化剤は、医薬組成物、化粧料、飲食料品、試薬品用組成物等の用途に使用することができる。
【0043】
<医薬組成物>
本開示に係る医薬組成物は、本開示に係るサーチュイン遺伝子活性化剤を含有し、サーチュイン遺伝子活性化剤のサーチュイン遺伝子活性化能を著しく妨げない範囲で、添加剤を含有していてもよい。
【0044】
本開示の医薬組成物の形態は、特に限定されない。
経口投与を目的とする医薬組成物の場合、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、徐放剤、溶液剤、シロップ剤、乳剤などが挙げられる。
非経口投与を目的とする医薬組成物の場合、例えば、注射剤、軟膏剤、ローション剤などが挙げられる。
【0045】
サーチュイン遺伝子活性化剤の、医薬組成物中の含有量は、用途、投与を受ける対象の体重などによって適宜調整される。
医薬組成物が経口、又は粘膜吸収により投与される場合、例えば、サーチュイン遺伝子活性化剤の医薬組成物全体に対する含有量は、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
医薬組成物が非経口投与により投与される場合、例えば、サーチュイン遺伝子活性化剤の医薬組成物全体に対する含有量は、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0046】
医薬組成物に含有することができる添加剤としては、医薬品の調製に通常用いられる添加剤が用いられ得る。
添加剤としては、特に限定されないが、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着香料、着色剤、コーティング剤などが挙げられる。
【0047】
本開示に係るサーチュイン遺伝子活性化剤は、医薬用途に有用である。
サーチュインの前記抗老化作用、糖尿病改善作用、心血管保護作用、腎疾患改善作用、炎症性サイトカイン産生の抑制作用、神経保護作用等の機能に基づいて、サーチュインの活性化により種々の疾患異常を治療することが可能である。サーチュイン遺伝子活性化剤が医薬として使用可能であることは、当業者が本開示を参照して理解するであろう。
【0048】
例えば、サーチュイン遺伝子活性化剤を含む医薬組成物は、動脈硬化の治療薬としての利用が期待されている。脳のサーチュイン量が通常の2~3倍になるように遺伝子操作したマウスを作製し、頸動脈を狭窄させる手術を行って、マウスの認知機能を観察したところ、頸動脈を狭窄しているにもかかわらず認知機能は正常に保たれたことが報告されている。これはサーチュインの働きにより、血管を拡張する物質を合成する酵素の働きが活発となったことにより、脳血管が拡張したことが原因であると報告がされている。このことから、頸動脈を狭窄させる手術を行ったマウスに対して、サーチュイン遺伝子活性化剤を含む医薬組成物を投与することで、脳血管が拡張し、認知機能は正常に保たれる可能性が示唆されている(国立循環器病センターホームページ<https://www.ncvc.go.jp/pr/release/006811/>参照)。
このように、本開示に係るサーチュイン遺伝子活性化剤は、医薬用途に有用である。
【0049】
<化粧料>
本開示に係る化粧料は、本開示に係るサーチュイン遺伝子活性化剤を含有し、サーチュイン遺伝子活性化剤のサーチュイン遺伝子活性化能を著しく妨げない範囲で、添加剤を含有していてもよい。
【0050】
本開示の化粧料の形態は、特に限定されず、ローション、乳液、クリーム、パウダーなどが挙げられる。
【0051】
サーチュイン遺伝子活性化剤の、化粧料中の含有量は、用途などによって適宜調整される。サーチュイン遺伝子活性化剤の化粧料全体に対する含有量は、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0052】
化粧料に含有することができる添加剤としては、化粧品の調製に通常用いられる添加剤が用いられ得る。
添加剤としては、特に限定されないが、油、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、香料、着色料、薬剤などが挙げられる。
【0053】
本開示に係るサーチュイン遺伝子活性化剤は、化粧料用途に適している。
サーチュイン遺伝子活性化剤の化粧料の用途への利用としては既に盛んにおこなわれており、例えばスキンケア商品として、株式会社アテニアからドレスリフト(登録商標)、及びプリマモイスト(登録商標)が販売されている。これらの商品は、SIRT6の発現量を増強するサーチュイン遺伝子活性化剤を含有する。
このように、本開示に係るサーチュイン遺伝子活性化剤は、化粧料用途に適している。
【0054】
<飲食料品>
本開示に係る飲食料品は、本開示に係るサーチュイン遺伝子活性化剤を含有し、サーチュイン遺伝子活性化剤のサーチュイン遺伝子活性化能を著しく妨げない範囲で、添加剤を含有していてもよい。
【0055】
本開示の飲食料品の形態は、特に限定されず、常温(25℃)においてペースト状、固形状(タブレット、顆粒を包含する)、ゼリー状、液状等のいずれの形態をも包含する。
飲食料品の具体的な例としては、キャンディ、グミ、クッキー、ビスケットなどの菓子類;シロップ類;乾燥果実、乾燥野菜等の果実又は野菜加工品;沢庵、キムチ等の漬物類;ビーフジャーキー、ハンバーグ、ハム、ソーセージ等の畜肉又は魚肉製品;ラーメン、うどん、蕎麦、パスタ、素麺等の麺類;食パン、フランスパン、あんぱん、惣菜パン等のパン類;大福、草もち等の餅類;フルーツ缶詰等の缶又はビン詰類;ゼリー;アイスクリーム;栄養補助食品等のサプリメント;果実飲料、茶飲料、コーヒー飲料、乳飲料、アルコール飲料、清涼飲料等の飲料;が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0056】
サーチュイン遺伝子活性化剤の、飲食料品中の含有量は、用途などによって適宜調整される。サーチュイン遺伝子活性化剤の飲食料品全体に対する含有量は、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0057】
飲食料品に含有することができる添加剤としては、飲食料品の調製に通常用いられる添加剤が用いられ得る。
添加剤としては、特に限定されないが、油、保湿剤、増粘剤、防腐剤、香料、着色料などが挙げられる。
【0058】
本開示に係るサーチュイン遺伝子活性化剤は、飲食料品用途に適している。
サーチュイン遺伝子活性化剤の飲食料品の用途への利用としては既に盛んにおこなわれており、例えばサプリメントとして、株式会社分子生理化学研究所からレスベラトロールゴールドなど様々なサプリメントが販売されている。
このように、本開示に係るサーチュイン遺伝子活性化剤は、飲食料品用途に適している。
【実施例0059】
以下に実施例について説明するが、本開示はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0060】
<サーチュイン遺伝子活性化剤の作製>
(実施例1)
リグノセルロースを溶媒である分子量400のポリエチレングリコ―ル中で、酸触媒の存在下、常圧下で加溶媒分解し、グリコールリグニンを含む溶液画分と固形分とを分離し、更に硫酸で酸性化することにより、グリコールリグニンを沈殿物として得た。そののちグリコールリグニンの沈殿物を分離し、グリコールリグニンの沈殿物を分離した後の上清液を集積し、その集積溶液に水酸化ナトリウムを添加して、集積溶液を中和することによって分子量400のポリエチレングリコ―ルで誘導体化されたグリコールリグニン(以下、改質リグニン1と称する。)を得た。得られたグリコールリグニンの重量平均分子量は10000であった。
具体的には、特開2017-197517号公報の実施例1に記載された方法と同一の方法により製造した。なお、溶媒として分子量400のポリエチレングリコ―ルを使用した。
【0061】
<サーチュイン遺伝子活性化能の評価>
(サーチュイン遺伝子活性化)
グリコールリグニンをアルミホイルに包み、121℃で20分間、オートクレーブ処理を行い、滅菌を行った。
クリーンベンチ内で滅菌後のグリコールリグニンを無菌的にD-MEM培地(ダルベッコ改変イーグル培地、富士フイルム和光純薬社製、♯043-3-85)に溶かし、グリコールリグニン入りの培地を作製した。なお、グリコールリグニン入りの培地中のグリコールリグニンの濃度は100μg/3mLとした。
HepG2細胞を3.75×10cells/wellになるように6-wellプレートの6つのウェルに播種した。細胞播種から4時間後に細胞のウェルへの接着を顕微鏡で確認した。なお、HepG2細胞は大日本住友製薬株式会社から購入したものを、濃度が10%のFBS(Fetal Bovine Serum)、濃度が62.5μg/mlのペニシリン、及び濃度が100μg/mlのストレプトマイシンを含むD-MEM培地を用いて培養したものを使用した。培養はCOインキュベータ(5%CO、37℃、加湿下)で行った。
細胞の上清を除去し、3つのウェルにグリコールリグニン入りの培地を3mLずつ添加した(この3つのウェルをサンプル区と称する)。コントロールとして、別の3つのウェルにグリコールリグニンを含有しないD-MEM培地を3mL添加した(この3つのウェルをコントロール区と称する)。COインキュベータ(5%CO、37℃、加湿下)で48時間培養を行い、サーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現を行った。
【0062】
(トータルRNA抽出、及び逆転写)
サンプル区及びコントロール区のウェルに含まれるHepG2細胞から、トータルRNAをそれぞれ抽出した。トータルRNAの抽出は、TRIzol Reagent (#15596026,Thermo Fisher SCIENTIFIC)のプロトコルに従って行った。トータルRNAの抽出は、各ウェル個別に行い、サンプル区のウェルに含まれるHepG2細胞から抽出した3種のトータルRNA(以下、サンプル区のウェルに含まれるHepG2細胞から抽出したトータルRNAを「サンプル区トータルRNA」とも称する)、及びコントロール区のウェルに含まれるHepG2細胞から抽出した3種のトータルRNA(以下、コントロール区のウェルに含まれるHepG2細胞から抽出したトータルRNAを「コントロール区トータルRNA」とも称する)の合計6種のトータルRNAを得た。
続いて、抽出したトータルRNAの純度を、紫外可視分光光度計(UV-1800、SHIMADZU社製)を用いて行った。抽出したトータルRNAを水(DEPC水)に溶解して測定用サンプルとし、測定用サンプルの260nmの波長の光の吸光度(A260nm)及び測定用サンプルの280nmの波長の光の吸光度(A280nm)をそれぞれ測定した。
測定した260nmの波長の光の吸光度(A260nm)を、280nmの波長の光の吸光度(A280nm)で除した値(A260nm/A280nm)を算出し、この値が1.5以上であることを確認した。
続いて、抽出した6種のトータルRNAからそれぞれ個別にcDNAを合成(即ち、逆転写)し、合計6種のcDNAを得た。すなわち、3種のサンプル区トータルRNAから合成した3種のcDNA(以下、サンプル区トータルRNAから合成したcDNAを「サンプル区cDNA」とも称する)、及び3種のコントロール区トータルRNAから合成した3種のcDNA(以下、コントロール区トータルRNAから合成したcDNAを「コントロール区cDNA」とも称する)を得た。
逆転写は、QuantiTect Reverse Transcription Kit(# 205314,QIAGEN社製)のプロトコルに従って行った。
【0063】
(リアルタイムPCR)
合成したcDNAに含まれるサーチュイン遺伝子を含む領域のDNA及び、後述のハウスキーピング遺伝子を含む領域のDNAをリアルタイムPCRにより増幅し、DNAの増幅曲線を得た。
なお、リアルタイムPCRによるDNAの増幅は、合成したcDNAごとに下記条件で行い、それぞれ個別にDNAの増幅曲線を得た。
【0064】
なお、リアルタイムPCRの条件は以下の通りである。
-リアルタイムPCRの条件-
・PCR装置:QuantStudio5(Thermo Fisher SCIENTIFIC社製)
・反応条件:95℃で15分の第1変性を行った後、第2変性、アニーリング及び伸長反応(95℃で15秒、72℃で30秒、及び60℃で30秒を1サイクルとし、合計40サイクル)を行った。
・ノーマライザー(ハウスキーピング遺伝子):β-アクチン(ACTB)
・プライマーシークエンス(SIRT1増幅用):フォーワード 5’-TGAGTGGCTGGAACAGTGAG-3’,リバース 5’-AGCGCCATGGAAAATGTAAC-3’
・プライマーシークエンス(ACTB増幅用):フォーワード 5’-ATTGCCGACAGGATGCAGAA-3’,リバース 5’-GCTGATCCACATCTGCTGGAA-3’
・DNAの定量:QuantiTect SYBR Green PCR Kits(# 204145,QIAGEN社製)を用いた。
【0065】
(サーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量の測定)
得られたDNAの増幅曲線を用いてΔΔCt法(デルタ・デルタCt法)によりサーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量を算出した。
なお、サーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量は、後述の式Ct7によって求められる値とする。
【0066】
以下に、ΔΔCt法によるサーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量の算出手順について具体的に説明する。
【0067】
-ΔCt値の算出-
3種のサンプル区cDNAを使用して得た3種のDNA増幅曲線から、それぞれ個別に3つのΔCt値(すなわち、サーチュイン遺伝子を含む領域のDNAの増幅曲線におけるCt値と、ハウスキーピング遺伝子を含む領域のDNAの増幅曲線におけるCt値と、の差分の絶対値)を算出した。算出した3つのΔCt値を、それぞれΔCt値S1、ΔCt値S2、及びΔCt値S3と称する。
また、3種のコントロール区cDNAを使用して得た3種のDNA増幅曲線から、それぞれ個別に3つのΔCt値を算出した。算出した3つのΔCt値を、それぞれΔCt値C1、ΔCt値C2、及びΔCt値C3と称する。
そして、ΔCt値C1、ΔCt値C2、及びΔCt値C3の算術平均値を算出した。得た算術平均値をΔCt値CAve.と称する。
なお、サーチュイン遺伝子を含む領域のDNAの増幅曲線におけるCt値、及びハウスキーピング遺伝子を含む領域のDNAの増幅曲線におけるCt値は、装置の自動計算法で算出されたものを使用した。
【0068】
-ΔΔCt値の算出-
下記式Ct1~式Ct6からΔΔCt値(すなわち、ΔCt値とΔCt値CAve.との差分の絶対値)を算出した。
式Ct1:|ΔCt値S1-ΔCt値CAve.|=ΔΔCt値S1
式Ct2:|ΔCt値S2-ΔCt値CAve.|=ΔΔCt値S2
式Ct3:|ΔCt値S3-ΔCt値CAve.|=ΔΔCt値S3
式Ct4:|ΔCt値C1-ΔCt値CAve.|=ΔΔCt値C1
式Ct5:|ΔCt値C2-ΔCt値CAve.|=ΔΔCt値C2
式Ct6:|ΔCt値C3-ΔCt値CAve.|=ΔΔCt値C3
【0069】
-サンプル区のサーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量の算出-
ΔΔCt法において常用される下記式Ct7に、上記式Ct1~式Ct3から算出したΔΔCt値(すなわち、ΔΔCt値S1、ΔΔCt値S2、及びΔΔCt値S3)をそれぞれ代入し、3つのサーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量を算出した。
式Ct7:サーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量=2-ΔΔCt
【0070】
-コントロール区のサーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量の算出-
ΔΔCt法において常用される上記式Ct7に、上記式Ct4~式Ct6から算出したΔΔCt値(すなわち、ΔΔCt値C1、ΔΔCt値C2、及びΔΔCt値C3)をそれぞれ代入し、3つのサーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量を算出した。
【0071】
サーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量の算出結果を図1に示す。
図1中の「改質リグニン1」は、グリコールリグニンとして改質リグニン1を含む培地を使用したサンプル区のサーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量を示す。
図1中の「control」は、コントロール区のサーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量を示す。
【0072】
図1中における棒グラフは、3つのサーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量の算術平均値を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
図1中の*は、サーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量の算出結果についてスチューデントのt検定を行い、統計的に有意であることを示す。なお、スチューデントのt検定におけるP値が0.05以下である場合、測定結果が統計的に有意であるとした。
【0073】
上記結果から、サンプル区のサーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量は、コントロール区のサーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量が多いことが分かる。よって、グリコールリグニンはサーチュイン遺伝子活性化能を有することが分かる。
図1