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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010573
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ボールジョイント
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/06 20060101AFI20230113BHJP
   F16C 11/08 20060101ALI20230113BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
F16C11/06 B
F16C11/08 E
B25J19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075876
(22)【出願日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2021113354
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000191353
【氏名又は名称】新明工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 勇樹
【テーマコード(参考)】
3C707
3J105
【Fターム(参考)】
3C707CS08
3C707WA15
3J105AA23
3J105AA42
3J105AB14
3J105AB50
3J105AC01
3J105CA40
3J105CB45
3J105CF12
3J105DA15
(57)【要約】
【課題】構造強度を低下させることなく可動範囲を広げることが可能なボールジョイントを提供すること。
【解決手段】ボールジョイント1は、球状のボール部22Aを一体に備える連結部材2と、ボール部22Aに対し球面に沿って摺動可能なように組み付けられるボールリテーナ32を一体に備える接地部材3と、を有する。ボールジョイント1は、更に、連結部材2を接地部材3に対して所定位置に弾性的に保持する引張ばね4を有する。ボール部22Aが、所定位置において引張ばね4を介してボールリテーナ32に対して当接状態又は非当接状態で弾性的に保持されるように組み付けられる。ボールリテーナ32が、ボール部22Aとの当接時には半球面よりも狭い領域に抜け止め力を作用させない非嵌装状態で当接する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状のボール部を一体に備える第1部材と、前記ボール部に対し球面に沿って摺動可能なように組み付けられるボールリテーナを一体に備える第2部材と、を有するボールジョイントであって、
更に、前記第1部材を前記第2部材に対して所定位置に弾性的に保持する弾性体を有し、
前記ボール部が、前記所定位置において前記弾性体を介して前記ボールリテーナに対して当接状態又は非当接状態で弾性的に保持されるように組み付けられ、
前記ボールリテーナが、前記ボール部との当接時には半球面よりも狭い領域に抜け止め力を作用させない非嵌装状態で当接するボールジョイント。
【請求項2】
請求項1に記載のボールジョイントであって、
前記第1部材及び前記第2部材のうちの一方の部材が、接地面上を移動するように動かされる脚部の先に連結される連結部材とされ、他方の部材が、前記脚部の動作により前記接地面に対して斜めの角度で接地したり離地したりする接地部材とされるボールジョイント。
【請求項3】
請求項2に記載のボールジョイントであって、
前記第1部材は、該第1部材から延び出すスタッド部と、該スタッド部の延び出した先端に形成された前記ボール部と、から成るボールスタッドを有するボールジョイント。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のボールジョイントであって、
前記連結部材が、前記ボール部を備える前記第1部材とされ、前記接地部材が、前記ボールリテーナを備える前記第2部材とされ、
前記ボールリテーナが、該ボールリテーナの膨出する前記接地部材の天板面より低い位置に前記ボール部の受け面を有するボールジョイント。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載のボールジョイントであって、
前記接地部材は、その前記接地面側の周縁に、該周縁に沿って面取りされる接地側面取り部を有するボールジョイント。
【請求項6】
請求項2又は請求項3に記載のボールジョイントであって、
前記連結部材は、その前記接地部材と対向する面の周縁に、該周縁に沿って面取りされる対向側面取り部を有するボールジョイント。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のボールジョイントであって、
前記弾性体は、前記ボール部の周囲の複数箇所に周方向に均等に配置される引張ばねとされるボールジョイント。
【請求項8】
請求項2又は請求項3に記載のボールジョイントであって、
前記接地部材の前記接地面への接地を検知するセンサを更に有するボールジョイント。
【請求項9】
請求項8に記載のボールジョイントであって、
前記センサは、前記接地部材の接地により前記接地面から前記接地部材に掛けられる垂直抗力を検知する圧力センサとされるボールジョイント。
【請求項10】
請求項9に記載のボールジョイントであって、
前記ボール部が、前記所定位置において前記弾性体を介して前記ボールリテーナに対して非当接状態で保持されるように組み付けられて、前記接地部材の接地時に前記ボールリテーナに当接するように押し付けられるボールジョイント。
【請求項11】
請求項10に記載のボールジョイントであって、
前記圧力センサは、前記ボールリテーナの受け面の裏側に設けられるセンサ本体と、該センサ本体から突き出る突出部であって前記ボールリテーナのピン貫通孔を通って前記受け面から突出する前記突出部と、を有し、
前記ボールリテーナに押し付けられた前記ボール部により前記突出部が押し込まれることで、前記圧力センサが、前記突出部の押し込み量によって前記接地面から前記接地部材にかかる垂直抗力の大きさを測定するボールジョイント。
【請求項12】
請求項10に記載のボールジョイントであって、
前記弾性体は、前記ボール部の回転中心を取り巻くように螺旋状に延びて、各側の端部が前記連結部材と前記接地部材とに剛接合される一本の圧縮コイルばねとされるボールジョイント。
【請求項13】
請求項10に記載のボールジョイントであって、
前記ボール部が、前記非当接状態において、前記ボールリテーナの凹部領域に入り込むように保持されるボールジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールジョイントに関する。詳しくは、球状のボール部と、ボール部に対して球面に沿って摺動可能なように組み付けられるボールリテーナと、を有するボールジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二部材を互いに揺動自在なように繋ぎ合わせるボールジョイントが開示されている。具体的には、ボールジョイントは、二部材のうちの一方に設けられるボールスタッドと、他方に設けられてボールスタッドのボール部に摺動可能なように嵌合されるボールリテーナと、を備える構成とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/071032号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のボールジョイントでは、ボールリテーナをボール部に対して半球面よりも広い領域に亘って嵌合させることで、二部材を揺動自在に繋ぎ合わせている。そのため、ボールリテーナの開口範囲が狭く、この範囲内で揺動するボールスタッドの可動範囲が狭くなっている。しかし、ボールスタッドの可動範囲を広げるためにスタッド部の径を細くするとボールスタッドの構造強度が低下してしまう。そこで、本発明は、構造強度を低下させることなく可動範囲を広げることが可能なボールジョイントを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のボールジョイントは次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明のボールジョイントは、球状のボール部を一体に備える第1部材と、ボール部に対し球面に沿って摺動可能なように組み付けられるボールリテーナを一体に備える第2部材と、を有する。ボールジョイントは、更に、第1部材を第2部材に対して所定位置に弾性的に保持する弾性体を有する。ボール部が、所定位置において弾性体を介してボールリテーナに対して当接状態又は非当接状態で弾性的に保持されるように組み付けられる。ボールリテーナが、ボール部との当接時には半球面よりも狭い領域に抜け止め力を作用させない非嵌装状態で当接する。
【0007】
上記構成によれば、弾性体により、ボール部をボールリテーナに対して所定位置に弾性的に保持した状態に組み付けることができる。ボールリテーナは、ボール部に当接した際、その半球面よりも狭い領域に浅く嵌合する。このため、第1部材におけるボール部の支持径を太くした構造強度の高い構成にしても、ボールリテーナのボール部に対する可動範囲を広く確保することができる。
【0008】
また、本発明のボールジョイントは、更に次のように構成されていても良い。第1部材及び第2部材のうちの一方の部材が、接地面上を移動するように動かされる脚部の先に連結される連結部材とされ、他方の部材が、脚部の動作により接地面に対して斜めの角度で接地したり離地したりする接地部材とされる。
【0009】
上記構成によれば、可動範囲の広いボールジョイントにより、脚部を接地面に対して斜めの角度から適切に着地させたり、斜めの角度に適切に離地させたりすることができる。
【0010】
また、本発明のボールジョイントは、更に次のように構成されていても良い。第1部材は、第1部材から延び出すスタッド部と、スタッド部の延び出した先端に形成されたボール部と、から成るボールスタッドを有する。
【0011】
上記構成によれば、ボールスタッドにより第1部材と第2部材との間隔を広げられる。そのため、第1部材の第2部材に対する可動範囲をより広げることができる。
【0012】
また、本発明のボールジョイントは、更に次のように構成されていても良い。連結部材が、ボール部を備える第1部材とされ、接地部材が、ボールリテーナを備える第2部材とされる。ボールリテーナが、ボールリテーナの膨出する接地部材の天板面より低い位置にボール部の受け面を有する。
【0013】
上記構成によれば、接地部材の接地後に脚部がボール部の球の中心周りに揺動する際の回転中心を下げることができる。したがって、脚部の揺動を安定させることができる。
【0014】
また、本発明のボールジョイントは、更に次のように構成されていても良い。接地部材は、その接地面側の周縁に、周縁に沿って面取りされる接地側面取り部を有する。
【0015】
上記構成によれば、接地部材が接地面に斜めに当たって倒れ込む際や、接地面から斜めに起こされる際の接地部材の回転半径をより小さくすることができる。
【0016】
また、本発明のボールジョイントは、更に次のように構成されていても良い。連結部材は、その接地部材と対向する面の周縁に、周縁に沿って面取りされる対向側面取り部を有する。
【0017】
上記構成によれば、連結部材が接地部材に対して傾動する際に、連結部材の接地部材と対向する面の周縁が接地面と当たりにくくなる。そのため、連結部材の接地部材に対する傾動の可動範囲をより広げることができる。
【0018】
また、本発明のボールジョイントは、更に次のように構成されていても良い。弾性体は、ボール部の周囲の複数箇所に周方向に均等に配置される引張ばねとされる。
【0019】
上記構成によれば、複数の引張ばねにより、第1部材と第2部材とを所定位置に適切に保持することができる。また、ボールリテーナをボール部から離間させることなく適切に当接させた状態に保持することができる。
【0020】
また、本発明のボールジョイントは、更に次のように構成されていても良い。接地部材の接地面への接地を検知するセンサを更に有する。上記構成によれば、センサの検知信号を用いて接地部材の接地の判定が可能になる。
【0021】
また、本発明のボールジョイントは、更に次のように構成されていても良い。センサは、接地部材の接地により接地面から接地部材に掛けられる垂直抗力を検知する圧力センサとされる。上記構成によれば、接地面への接地により接地部材に過剰な負荷が掛けられているか否かの判定が可能になる。
【0022】
また、本発明のボールジョイントは、更に次のように構成されていても良い。ボール部が、所定位置において弾性体を介してボールリテーナに対して非当接状態で保持されるように組み付けられて、接地部材の接地時にボールリテーナに当接するように押し付けられる。上記構成によれば、接地部材が接地面に当てられた際のボールリテーナのボール部に対する可動範囲をより広げやすくなる。
【0023】
また、本発明のボールジョイントは、更に次のように構成されていても良い。圧力センサは、ボールリテーナの受け面の裏側に設けられるセンサ本体と、センサ本体から突き出る突出部であってボールリテーナのピン貫通孔を通って受け面から突出する突出部と、を有する。ボールリテーナに押し付けられたボール部により突出部が押し込まれることで、圧力センサが、突出部の押し込み量によって接地面から接地部材にかかる垂直抗力の大きさを測定する。
【0024】
上記構成によれば、非当接状態のボール部が接地部材の接地に伴いボールリテーナに当接するように押し付けられることで、圧力センサの突出部がボール部によって押し込まれる。これにより、接地部材が接地面を押す力を圧力センサが検知することで、その反力である接地面から接地部材に掛けられる垂直抗力を合理的に検知することができる。
【0025】
また、本発明のボールジョイントは、更に次のように構成されていても良い。弾性体は、ボール部の回転中心を取り巻くように螺旋状に延びて、各側の端部が連結部材と接地部材とに剛接合される一本の圧縮コイルばねとされる。上記構成によれば、一本の圧縮コイルばねにより、連結部材と接地部材とを所定位置に弾性的に保持させることができる。また、ボール部をボールリテーナに対して非当接状態で組み付けるように保持させることができる。
【0026】
また、本発明のボールジョイントは、更に次のように構成されていても良い。ボール部が、非当接状態において、ボールリテーナの凹部領域に入り込むように保持される。上記構成によれば、接地部材の接地時にボール部がボールリテーナに対して適切に嵌合するように外れにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1の実施形態に係るボールジョイントが適用されるロボットの斜視図である。
図2】ボールジョイントの斜視図である。
図3】ボールジョイントを連結部材側から見た分解斜視図である。
図4】ボールジョイントを接地部材側から見た分解斜視図である。
図5】連結部材単体の底面図である。
図6】接地部材単体の平面図である。
図7】ボールジョイントの側面図である。
図8】ボールジョイントの平面図である。
図9図8のIX-IX線断面図である。
図10】ボールジョイントがフロアに対し進行方向に斜めに接近する状態を表す側面図である。
図11】接地部材がフロアに対し進行方向に斜めに着地した状態を表す側面図である。
図12】接地部材がフロアに倒れ込んだ状態を表す側面図である。
図13】接地部材が接地した状態で連結部材が進行方向に揺動する状態を表す側面図である。
図14】接地部材がフロアに対し進行方向に斜めに起こされた状態を表す側面図である。
図15】ボールジョイントがフロアから進行方向に斜めに離間する状態を表す側面図である。
図16】第2の実施形態に係るボールジョイントの斜視図である。
図17】ボールジョイントを連結部材側から見た分解斜視図である。
図18】ボールジョイントを接地部材側から見た分解斜視図である。
図19】ボールジョイントの側方断面図である。
図20】接地部材がフロアに着地した状態を表す図20に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態を、図1-20を用いて説明する。以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。
【0029】
<第1の実施形態>
始めに、本発明の第1の実施形態に係るボールジョイント1の構成について説明する。本実施形態に係るボールジョイント1は、図1に示すように、フロアF上を自律走行するロボットRの各脚部RLの先端に取り付けられている。上記ロボットRは、その本体部の左右3箇所ずつに計6本の脚部RLを備えた構成とされる。
【0030】
上記ロボットRは、外部からの指令により各脚部RLを個別に動作させて、フロアF上を前後左右に自由に移動することができる構成とされる。具体的には、ロボットRは、各脚部RLを次のようにフロアF上に着地させたり離地させたりして、フロアF上を移動するようになっている。なお、以下では、説明の便宜上、各脚部RLのうちの1本の動きについて代表して説明することとする。
【0031】
すなわち、先ず、脚部RLは、ロボットRが例えば前方に進行する動作により、図10に示すように、フロアF上から浮いた位置で、その先端が進行方向に斜めに投げ出される形に動かされる。次いで、図11に示すように、脚部RLは、フロアF上に上記斜めの姿勢のまま下ろされて着地する。そして、図12に示すように、脚部RLは、上記フロアF上に着地する力により、その先端に取り付けられたボールジョイント1をフロアF上に倒伏させる形に傾動させて、ボールジョイント1の底面をフロアF上に面当接させた接地状態にする。
【0032】
そしてそこから、図13に示すように、脚部RLは、上記フロアF上に接地されたボールジョイント1を支点に、進行方向に前傾する形となるように揺動される。その後、図14に示すように、脚部RLは、進行方向に前傾した斜めの姿勢のまま、フロアF上から引き上げられる。それにより、脚部RLは、その先端のボールジョイント1をフロアF上から起こし上げながら、図15に示すように、フロアF上から引き上げられる。
【0033】
上記の一連の動作により、脚部RLは、フロアF上を進行方向に移動するように動かされる。本実施形態に係るボールジョイント1は、上記のような動作を行う脚部RLの先端に取り付けられることで、脚部RLのフロアFに対する着地・揺動・離地の各動作を妨げることなく、脚部RLのフロアFとの接地時の面積を広く確保して滑りを生じさせにくくすることができる。
【0034】
以下、ボールジョイント1の具体的な構成について説明する。ボールジョイント1は、図2に示すように、脚部RLの先に連結される連結部材2と、連結部材2に対して傾動可能に組み付けられる接地部材3と、を有する。また、ボールジョイント1は、図3に示すように、連結部材2と接地部材3との間に掛けられた3本の引張ばね4を有する。ここで、各引張ばね4が、本発明の「弾性体」に相当する。また、フロアFが、本発明の「接地面」に相当する。
【0035】
連結部材2は、図9に示すように、球状のボール部22Aを先端に備えるボールスタッド22を一体に有する。接地部材3は、ボール部22Aに対し球面に沿って摺動可能なように組み付けられるボールリテーナ32を一体に有する。ボールリテーナ32は、凹湾曲面形状の受け面を備えている。ボールリテーナ32のボール部22Aに対する組み付けにより、接地部材3は連結部材2に対して傾動可能なように構成される。なお、接地部材3の連結部材2に対する傾動は、ボール部22Aの球の中心を回転中心Cとして行われる。ここで、連結部材2が、本発明の「第1部材」に相当する。また、接地部材3が、本発明の「第2部材」に相当する。
【0036】
上記により、ボールジョイント1は、図12に示すように、脚部RLがフロアFに対して斜めの角度で着地する際に、接地部材3を連結部材2に対して傾動させる。これにより、ボールジョイント1は、接地部材3をフロアF上に倒伏させて面当接させた状態に接地させることができる。また、ボールジョイント1は、図13に示すように、連結部材2を、フロアFに接地された接地部材3に対して揺動させることができる。また、ボールジョイント1は、図14に示すように、脚部RLがフロアFから斜めの角度で離地する際に、接地部材3をフロアFに対して斜めに起こすように離地させることができる。
【0037】
ボールリテーナ32は、図9に示すように、ボール部22Aに対して半球面よりも狭い領域に浅く嵌合する構成とされる。このため、ボールリテーナ32のボール部22Aの球面に沿った可動範囲が広くなっている。これにより、ボールリテーナ32は、ボールスタッド22が直径の太い強固な構成とされても、接地部材3を連結部材2に対して広い範囲で傾動させることができる。
【0038】
一方で、ボールリテーナ32は、ボール部22Aに対して浅く嵌合することで、ボール部22Aから離間することを防止する抜け止め力を作用させない構成とされる。しかし、ボールリテーナ32は、前出の各引張ばね4により、ボール部22Aに対して当接された状態に保持されるようになっている。詳しくは、各引張ばね4は、連結部材2と接地部材3との間に引っ張り力を作用させることで、連結部材2と接地部材3とを互いに組み付ける。これにより、各引張ばね4は、ボールリテーナ32をボール部22Aから離間させることなく当接させた状態に保持するようになっている。
【0039】
各引張ばね4は、ボール部22Aの周囲に周方向に均等に並ぶように配置される。これにより、各引張ばね4は、接地部材3が連結部材2に対していずれの方向に傾動しても、ボールリテーナ32をボール部22Aから離間させることなく当接させた状態に保持するようになっている。
【0040】
<連結部材2>
以下に、上記ボールジョイント1の各構成について詳しく説明する。連結部材2は、図3及び図4に示すように、円板状に形成された連結側円板部21と、連結側円板部21の底面の中央部から下方に延び出す前出のボールスタッド22と、連結側円板部21の天板面から上方に延び出す締結ねじ23と、を有する。連結部材2は、図2に示すように、締結ねじ23が脚部RLに締結されることで、脚部RLと連結される。また、連結部材2は、図5に示すように、ボールスタッド22の周囲に周方向に均等に並ぶように配置される3つの連結側係止部24を有する。各連結側係止部24には、前出の各引張ばね4の一端がそれぞれ係止されるようになっている。
【0041】
ボールスタッド22は、連結部材2の底面の中央部から下方に円錐状に延びるスタッド部22Bと、スタッド部22Bの延び出た先端部に形成される前出のボール部22Aと、を有する。スタッド部22Bは、円錐状に延びることで、その基端部が太く形成されて構造強度を確保しやすくなる。また、スタッド部22Bは、その先細りとなる先端部の直径がボール部22Aの球の直径よりも小さくなっている。このため、ボールスタッド22は、ボール部22Aとスタッド部22Bとの接続部に形成されたくびれ部22Cを有する。くびれ部22Cにより、ボールリテーナ32が、ボール部22Aに対し球面に沿って摺動する際に、スタッド部22Bに干渉しにくくなる。これにより、ボールリテーナ32の可動範囲がより広くなっている。
【0042】
スタッド部22Bにより、ボール部22Aは、図7に示すように、連結部材2と接地部材3とが互いに組み付けられた状態では、連結部材2よりも接地部材3に近づく位置に配置される。このため、ボール部22AをフロアFに近づけることで、回転中心CをフロアFに近い位置まで下げることができる。したがって、図13に示すように、連結部材2が、接地部材3がフロアFに接地された状態で、接地部材3に対して揺動する動きを安定させることができる。
【0043】
連結側円板部21は、図3に示すように、その周縁から周方向の全域に亘って下方に張り出す張出部21Aと、張出部21Aの外周縁が周方向の全域に亘って面取りされた対向側面取り部21Bと、を有する。連結側円板部21は、図7に示すように、その縦断面が張出部21Aにより下方に開口する断面U字状の形に形成される。張出部21Aは、ボールスタッド22の基端部と各連結側係止部24とを径方向の外側から覆う構成とされる。
【0044】
連結側円板部21は、図13に示すように、フロアFに接地した接地部材3のボールリテーナ32を支点にして揺動する際に、その周縁の対向側面取り部21BによってフロアFと当たりにくくなっている。すなわち、対向側面取り部21Bが形成されることで、連結側円板部21の揺動の可動範囲がより広くなっている。また、連結側円板部21は、接地部材3よりも径方向に一回り大きく形成されている。このため、連結側円板部21は、上記のように揺動した際に接地部材3と干渉しないようになっている。
【0045】
連結部材2は、その連結側円板部21の周縁に張出部21Aが形成されていることにより、接地部材3に対して大きく傾けられても、各連結側係止部24や各引張ばね4を接地部材3やフロアFに衝突させたり強く干渉させたりしないようになっている。具体的には、連結部材2は、接地部材3に対して大きく傾けられることにより、張出部21AがフロアFと当接する。しかし、張出部21AがフロアFと当接しても、各連結側係止部24とフロアFとの間には隙間が形成される。また、各引張ばね4のうち、傾動方向に先行する引張ばね4は、接地部材3と僅かに干渉することはあっても、張出部21AがフロアFと当接することで、接地部材3に強く干渉する位置までは押し付けられない。
【0046】
<接地部材3>
接地部材3は、図3及び図4に示すように、円板状に形成された接地側円板部31と、接地側円板部31の天板面上の中央から膨出する形に形成された前出のボールリテーナ32と、ボールリテーナ32の周囲に周方向に均等に並ぶように配置される3つの接地側係止部33と、を有する。各接地側係止部33には、前出の各引張ばね4の他端がそれぞれ係止されるようになっている。
【0047】
接地側円板部31は、その底面の外周縁に周方向の全域に亘って面取りされる接地側面取り部31Aを有する。このため、接地側面取り部31Aの分だけ、接地側円板部31の底面の直径を短くすることができる。このため、図12に示すように、接地側円板部31がフロアFに倒伏される際の回転半径をより小さくすることができる。接地側面取り部31Aは周方向の全域に亘って面取りされるため、図14に示すように、接地側円板部31がフロアFから斜めに起こされる際にも、接地側円板部31の回転半径をより小さくすることができる。接地側円板部31は、接地側面取り部31Aを有しない場合と比べて、フロアFに対してより早く離地することができる。
【0048】
ボールリテーナ32は、その凹湾曲面形状の受け面が、接地側円板部31の天板面より低い位置に形成される。このため、図13に示すように、連結部材2が、フロアFに接地された接地部材3に対して揺動する際に、ボール部22Aを可能な限りフロアFに対して近づけることができる。これにより、連結部材2の揺動の動きをより安定させることができる。
【0049】
<引張ばね4>
各引張ばね4は、いずれも同じばね力を有する同一部材とされる。各引張ばね4の一端は、前出の各連結側係止部24により、連結側円板部21の中心の周りに周方向に均等に配置されるように係止される。このため、各引張ばね4の引っ張り力が、連結側円板部21の中心の周りに均等にかけられる。また、各引張ばね4の他端は、前出の各接地側係止部33により、接地側係止部33の中心の周りに周方向に均等に配置されるように係止される。このため、各引張ばね4の引っ張り力が、接地側円板部31の中心の周りに均等に掛けられる。これらにより、連結側円板部21と接地側円板部31とは、各引張ばね4によって初期状態では互いに平行に対向するように組み付けられる。
【0050】
上記ボールジョイント1は、接地側円板部31が連結側円板部21に対していずれかの方向に傾動されることで、連結側円板部21と接地側円板部31との間隔が部分的に大きくなるように開かれる(図12-13参照)。この開かれた部位間に掛けられた引張ばね4は、当該部位の開きに伴ってより伸ばされた状態となる。このため、伸ばされた引張ばね4が、上記開かれた部位間の間隔を狭める方向により強い引っ張り力を作用させる。上記引っ張り力により、連結側円板部21と接地側円板部31とは、互いに平行に対向する位置(所定位置)に保持されるようになっている。
【0051】
また、各引張ばね4は、図7に示すように、接地部材3側から連結部材2側に向かって径方向の外側に向かって斜め上がりに延び出す構成とされる。これにより、各引張ばね4の各連結側係止部24に係止される一端は、回転中心Cからより径方向に遠い位置に配置される。このため、接地部材3が連結部材2に対して傾動した際に、各引張ばね4の連結部材2に掛けられる引っ張り力をより強く作用させることができる。また、図13に示すように、各接地部材3が連結部材2の傾動により傾動方向に大きく傾けられたとしても、連結部材2と接地部材3との間で傾けられる後続する引張ばね4が、回転中心Cを越えてターンオーバーすることがない。すなわち、上記引張ばね4の連結側係止部24に対する連結点と接地側係止部33に対する連結点とを結ぶ線分が、初期状態時に径方向の外側に斜め上がりに延び出す形となることから、連結部材2が大きく傾けられたとしても、上記線分が回転中心Cを跨いで傾けられることがない。従って、各引張ばね4の引っ張り力の合力が、常に、ボール部22Aをボールリテーナ32の受け面に押し付ける力として作用しやすい。すなわち、各引張ばね4の引っ張り力の合力が、ボール部22Aをボールリテーナ32の受け面から引き離すようにターンオーバーすることがない。
【0052】
<ボールジョイント1の動作>
以下では、上述したボールジョイント1の構成に基づいて、上述した脚部RLの動作に伴うボールジョイント1の一連の動作について説明する。なお、初期状態として、図10に示すように、脚部RLがフロアFから浮いた状態となっているものとする。そのため、ボールジョイント1の連結部材2と接地部材3とは、フロアFから浮いた位置で互いに平行に対向する。接地部材3は、フロアFに対して斜めの角度を向いている。
【0053】
先ず、脚部RLが、図11に示すように、ロボットRの前方への進行により、進行方向に斜めに投げ出される形に動かされ
る。これにより、接地部材3が、その接地側面取り部31AがフロアFに当接するように、フロアFに対して斜めに接地される。そこから、脚部RLが、進行方向に対して斜めの角度で更に動かされる。すると、図12に示すように、接地部材3が、脚部RLのフロアFに着地する力により、フロアFに向かって倒伏される形に傾動される。これにより、接地部材3が、その底面をフロアFに面当接される形に接地される。
【0054】
次に、図13に示すように、脚部RLが、接地部材3がフロアFに接地された状態で、進行方向に前傾する形となるように動かされる。これにより、連結部材2が、ボール部22Aを支持するボールリテーナ32を支点として、接地部材3に対して進行方向に揺動される。
【0055】
そして、脚部RLが、図14に示すように、進行方向に前傾した斜めの姿勢のまま、進行方向に斜めに引き上げられる。これにより、接地部材3は、連結部材2との間で伸ばされた引張ばね4の強い引っ張り力により、フロアFに対して斜めに起こし上げられる。そこから、脚部RLが、図15に示すように、フロアFから斜めの角度で離間されるように、進行方向に斜めに引き上げられる。これにより、接地部材3が、フロアFに対して斜めの角度で離地される。離地された接地部材3は、各引張ばね4の引っ張り力により、連結部材2に対して平行に対向するように保持される。
【0056】
以上をまとめると、第1の実施形態に係るボールジョイント1は、次のような構成とされている。なお、以下において、括弧書きで示す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0057】
すなわち、第1の実施形態に係るボールジョイント(1)は、球状のボール部(22A)を一体に備える第1部材(2)と、ボール部(22A)に対し球面に沿って摺動可能なように組み付けられるボールリテーナ(32)を一体に備える第2部材(3)と、を有する。ボールジョイント(1)は、更に、第1部材(2)を第2部材(3)に対して所定位置に弾性的に保持する弾性体(4)を有する。ボール部(22A)が、所定位置において弾性体(4)を介してボールリテーナ(32)に対して当接状態又は非当接状態で弾性的に保持されるように組み付けられる。ボールリテーナ(32)が、ボール部(22A)との当接時には半球面よりも狭い領域に抜け止め力を作用させない非嵌装状態で当接する。
【0058】
このような構成となっていることにより、弾性体(4)により、ボール部(22A)をボールリテーナ(32)に対して所定位置に弾性的に保持した状態に組み付けることができる。ボールリテーナ(32)は、ボール部(22A)に当接した際、その半球面よりも狭い領域に浅く嵌合する。このため、第1部材におけるボール部(22A)の支持径を太くした構造強度の高い構成にしても、ボールリテーナ(32)のボール部(22A)に対する可動範囲を広く確保することができる。
【0059】
また、第1部材(2)及び第2部材(3)のうちの一方の部材が、接地面(F)上を移動するように動かされる脚部(RL)の先に連結される連結部材(2)とされ、他方の部材が、脚部(RL)の動作により接地面(F)に対して斜めの角度で接地したり離地したりする接地部材(3)とされる。
【0060】
このような構成となっていることにより、可動範囲の広いボールジョイント(1)により、脚部(RL)を接地面(F)に対して斜めの角度から適切に着地させたり、斜めの角度に適切に離地させたりすることができる。
【0061】
また、第1部材(2)は、第1部材(2)から延び出すスタッド部(22B)と、スタッド部(22B)の延び出した先端に形成されたボール部(22A)と、から成るボールスタッド(22)を有する。
【0062】
このような構成となっていることにより、ボールスタッド(22)により第1部材(2)と第2部材(3)との間隔を広げられる。そのため、第1部材(2)の第2部材(3)に対する可動範囲をより広げることができる。
【0063】
また、連結部材(2)が、ボール部(22A)を備える第1部材(2)とされ、接地部材(3)が、ボールリテーナ(32)を備える第2部材(3)とされる。ボールリテーナ(32)が、ボールリテーナ(32)の膨出する接地部材(3)の天板面より低い位置にボール部(22A)の受け面を有する。
【0064】
このような構成となっていることにより、接地部材(3)の接地後に脚部(RL)がボール部(22A)の球の中心周りに揺動する際の回転中心(C)を下げることができる。したがって、脚部(RL)の揺動を安定させることができる。
【0065】
また、接地部材(3)は、その接地面(F)側の周縁に、周縁に沿って面取りされる接地側面取り部(31A)を有する。
【0066】
このような構成となっていることにより、接地部材(3)が接地面(F)に斜めに当たって倒れ込む際や、接地面(F)から斜めに起こされる際の接地部材(3)の回転半径をより小さくすることができる。
【0067】
また、連結部材(2)は、その接地部材(3)と対向する面の周縁に、周縁に沿って面取りされる対向側面取り部(21B)を有する。
【0068】
このような構成となっていることにより、連結部材(2)が接地部材(3)に対して傾動する際に、連結部材(2)の接地部材(3)と対向する面の周縁が接地面(F)と当たりにくくなる。そのため、連結部材(2)の接地部材(3)に対する傾動の可動範囲をより広げることができる。
【0069】
また、弾性体(4)は、ボール部(22A)の周囲の複数箇所に周方向に均等に配置される引張ばね(4)とされる。
【0070】
このような構成となっていることにより、複数の引張ばね(4)により、第1部材(2)と第2部材(3)とを所定位置に適切に保持することができる。また、ボールリテーナ(32)をボール部(22A)から離間させることなく適切に当接させた状態に保持することができる。
【0071】
<第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態に係るボールジョイント101の構成について、図16-20を用いて説明する。本実施形態に係るボールジョイント101も、第1の実施形態に係るボールジョイント1と同様、ロボットRの各脚部RLの先端に取り付けられて各脚部RLに対して傾動可能とされる支持部材である。なお、第1の実施形態で示した構成と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略することとする。
【0072】
図16に示すように、ボールジョイント101は脚部RLの先に取り付けられる連結部材102と、連結部材102に対して傾動可能に組み付けられる接地部材103と、連結部材102と接地部材103との間に掛けられる一本の圧縮コイルばね104と、を有する。連結部材102と接地部材103とは圧縮コイルばね104の弾性力により互いに所定位置に保持されるように組み付けられる。
【0073】
図16に示すように、圧縮コイルばね104は、ボール部22Aの回転中心を取り巻くように螺旋状に延びている。また圧縮コイルばね104は、その一端が連結部材102に剛接合される。また圧縮コイルばね104は、その他端が接地部材103に剛接合される。これらにより、圧縮コイルばね104の弾性力がボール部22Aの中心の周りに均等に掛けられる。上記圧縮コイルばね104の組み付けにより、連結側円板部21と接地側円板部31とは、初期状態では互いに平行に対向する位置(所定位置)に弾性的に保持される。ここで、圧縮コイルばね104が本発明の「弾性体」に相当する。
【0074】
図19に示すように、ボール部22Aは、脚部RLがフロアFから離地してボールジョイント101に外力が掛からない状態(自然状態)では、圧縮コイルばね104の弾性力によりボールリテーナ32の受け面に対して接触しない程度に浮いたまま保持される。詳しくは、所定位置において、ボール部22Aはボールリテーナ32の受け面から浮きながら、ボール部22Aの下部がボールリテーナ32の凹部領域に入り込んだ状態に弾性的に保持される。
【0075】
図20に示すように、接地部材103のフロアF上への接地に伴い、ボール部22Aはボールリテーナ32に当接する。上記所定位置におけるボール部22Aの保持により、ボール部22Aがボールリテーナ32から外れることなくボールリテーナ32に適切に当接するようになっている。この当接により、ボールリテーナ32はボール部22Aに半球面よりも狭い領域に浅く嵌合する。これにより、ボールリテーナ32はボール部22Aに対して抜け止め力を作用させないようになっている。
【0076】
またボールジョイント101は、図16及び図19に示すように、接地部材103の内部に設けられる圧力センサ5を有する。圧力センサ5は、ボールリテーナ32の受け面の裏側に配置されるセンサ部51と、センサ部51が接続される基板部52と、端子部53と、を有する。センサ部51は、センサ本体51Bと、センサ本体51Bから突き出る突出部51Aと、を有する。突出部51Aは、センサ本体51Bのゴム状部がセンサ本体51B内部に設けられたピンに内側から押圧されて成る。突出部51Aは、ボールリテーナ32の底部に開口するピン貫通孔32Aからボール部22Aに向かって膨らむように突き出している。また突出部51Aはセンサ本体51Bに向かって押込み可能な構成とされる。センサ部51は、突出部51Aの押し込み量によってセンサ部51に掛けられた力の大きさを測定することができる。ここで、圧力センサ5が本発明の「センサ」に相当する。
【0077】
図20に示すように、突出部51Aは、接地部材103の接地に伴いボールリテーナ32に嵌合したボール部22Aによってボールリテーナ32の内部に押し込まれるようになっている。これによりセンサ部51は、ボール部22Aがボールリテーナ32を押す力の大きさを測定する。すなわちセンサ部51は、接地部材103からフロアFに掛けられる力の大きさを測定可能であり、その反力であるフロアFから接地部材103に掛けられる垂直抗力の大きさを測定することができる。センサ部51の垂直抗力の測定により、接地部材103がフロアFに適切に接地しているかどうかやボールジョイント101や脚部RLに過剰な負荷が掛けられていないかどうかを調べることができる。
【0078】
<連結部材102>
以下に、ボールジョイント101の各構成について詳しく説明する。連結部材102は、図17及び図18に示すように、連結側円板部21と、ボールスタッド22と、連結側円板部21の中央部を取り巻く形に螺旋状に設けられる連結側係止孔25と、を有する。連結側係止孔25には、圧縮コイルばね104の一端が差し込まれる。連結側係止孔25は奥部の孔径が狭められた構成とされて、差し込まれた圧縮コイルばね104の一端を圧入嵌合させて抜け止めするように係止する。
【0079】
<接地部材103>
接地部材103は、図17及び図18に示すように、ボールリテーナ32を備える接地側円板部31と、接地側円板部31との間で圧力センサ5を挟み込むように収容可能なケース34と、を有する。また接地部材103は、ボールリテーナ32の底部に設けられるピン貫通孔32Aを有する。接地側円板部31は、その中央部を取り巻く形に螺旋状に設けられる接地側係止孔31Bを有する。接地側係止孔31Bには圧縮コイルばね104の他端が差し込まれる。接地側係止孔31Bは奥部の孔径が狭められた構成とされて、差し込まれた圧縮コイルばね104の他端を圧入嵌合させて抜け止めするように係止する。また接地側円板部31は、接地側円板部31とケース34とを一体的に組み付けるネジ等の締結部材を通す3つのネジ貫通孔31Cを有する。各ネジ貫通孔31Cは、ボールリテーナ32の周囲に周方向に均等に並ぶように配置される。また接地側円板部31は、図16に示すように、圧力センサ5の端子部53を側面から外部に露出させる切欠31Dを有する。
【0080】
図17及び図18に示すように、ケース34は、接地側円板部31を径方向の外側から収容可能なように接地側円板部31よりも一回り大きい有底円筒状とされる。ケース34は、周方向に等間隔に配置される3つのネジ孔34Aを有する。各ネジ孔34Aは、接地側円板部31の上面側から各ネジ貫通孔31Cを通るネジを係止可能な構成とされる。またケース34は、その立壁状の周囲側面の一部から内部に収容した圧力センサ5の端子部53を外部に向かって露出させる切欠34Bを有する。また図17に示すように、ケース34の底面の外周縁には接地側面取り部31Aが形成されている。
【0081】
<圧力センサ5>
図18に示すように、圧力センサ5の基板部52は略円板形状とされる。基板部52は周方向に等間隔に配置される3つの貫通孔52Aを有する。各貫通孔52Aは上記ネジを通す孔として構成される。センサ部51は基板部52の上面中央部に配置される。端子部53は基板部52の上面の周縁近傍に配置される。図16に示すように、端子部53は、接地側円板部31とケース34との組み付けで周方向の位置が重なるように配置された各切欠31D、34Bから外部に露出するように構成される。端子部53には、脚部RLの内部を通ってロボットRの本体部に組み込まれた不図示の制御部と電気的に繋がる不図示の配線が接続される。センサ部51の検知信号は上記配線を通ってロボットRの制御部に送られる。
【0082】
<ボールジョイント101の動作>
ボールジョイント101は、例えば図10-15のように脚部RLがフロアFに対して斜めに動かされる場合であっても、第1の実施形態と同様に脚部RLを斜めの角度で適切に着地させたり離地させたりできる。詳しくは、初期状態として脚部RLはフロアFから離地しており、ボールジョイント101はフロアFから浮いた位置でフロアFに対して斜めの角度を向いている。まず脚部RLがロボットRの進行方向に対し斜めに投げ出される形に動かされることで、ケース34の接地側面取り部31AがフロアFに当接される。そこから更に脚部RLが斜めの角度で動かされることで、ケース34の底面がフロアFに面当接するように接地部材103がフロアFに向かって倒伏される。
【0083】
接地部材103の底面がフロアFに接地したのち、更に脚部RLが斜めの角度で動かされることで、ボール部22Aが圧縮コイルばね104の弾性力に反してボールリテーナ32に当接するように押し付けられる。このボール部22Aのボールリテーナ32への押し付けにより、センサ部51の突出部51Aがボール部22Aに接触してボールリテーナ32の内部に向かって押し込まれる。突出部51Aの押し込みにより、圧力センサ5はフロアFから接地部材103にかかる垂直抗力を測定する。圧力センサ5の垂直抗力の検知により、ロボットRの制御部は、接地部材103がフロアFに接地したと判定する。
【0084】
そしてボール部22Aがボールリテーナ32に対して完全に嵌合するように押し付けられることで、突出部51Aがボールリテーナ32の内部に完全に押し込まれる。このように、突出部51Aが完全に押し込まれた際の垂直抗力を圧力センサ5が測定することで、ロボットRの制御部が、接地部材103に対して過剰な負荷が掛けられていないかを判定することができる。
【0085】
次に、接地部材103がフロアFに接地された状態で、脚部RLが進行方向に前傾する形となるように動かされる。これにより、連結部材102が、ボール部22Aを支持するボールリテーナ32を支点として接地部材103に対して進行方向に揺動される。ボール部22Aは、連結部材102が揺動している間ボールリテーナ32に当接された状態に保持される。これにより、センサ部51の突出部51Aはボールリテーナ32の内部に押し込まれた状態に保持される。
【0086】
そして、脚部RLが進行方向に対し斜めに引き上げられると、接地部材103のフロアFからの離地に伴い、連結部材102と接地部材103とが圧縮コイルばね104の弾性力によって所定位置に戻される。すなわち、傾動により連結側円板部21と接地側円板部31との間の開かれた部位間での圧縮コイルばね104は、その開かれた部位を狭める引っ張り力を作用させる。また、傾動により連結側円板部21と接地側円板部31との間の狭められた部位間での圧縮コイルばね104は、その狭められた部位を広げる反発力を作用させる。
【0087】
上記圧縮コイルばね104の弾性力により、接地部材103は脚部RLの引き上げに伴ってフロアFから斜めに起こし上げられる。そこから更に脚部RLが引き上げられると、接地部材103はフロアFから離地し、連結側円板部21と接地側円板部31とは互いに平行に対向する所定位置に戻される。また、ボール部22Aはボールリテーナ32に対して接触しない程度に浮いた状態に戻される。ボール部22Aがボールリテーナ32から離されることで、突出部51Aのボールリテーナ32内部への押し込みが解除される。これにより、突出部51Aはボールリテーナ32の受け面から突き出た状態に戻されて、圧力センサ5は垂直抗力を検知しなくなる。このため、ロボットRの制御部が接地部材103のフロアFからの離地を判定する。
【0088】
以上をまとめると、第2の実施形態に係るボールジョイント101は、次のような構成とされる。なお、以下において、括弧書きで示す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0089】
すなわち、接地部材(103)には、接地部材(103)の接地面(F)への接地を検知するセンサ(5)を更に有する。このような構成となっていることにより、センサ(5)の検知信号を用いて接地部材(103)の接地の判定が可能になる。
【0090】
また、センサ(5)は、接地部材(103)の接地により接地面(F)から接地部材(103)に掛けられる垂直抗力を検知する圧力センサ(5)とされる。このような構成となっていることにより、接地面(F)への接地により接地部材(103)に過剰な負荷が掛けられているか否かの判定が可能になる。
【0091】
また、ボール部(22A)が、所定位置において弾性体(104)を介してボールリテーナ(32)に対して非当接状態で保持されるように組み付けられて、接地部材(103)の接地時にボールリテーナ(32)に当接するように押し付けられる。このような構成となっていることにより、接地部材(103)が接地面(F)に当てられた際のボールリテーナ(32)のボール部(22A)に対する可動範囲をより広げやすくなる。
【0092】
また、圧力センサ(5)は、ボールリテーナ(32)の受け面の裏側に設けられるセンサ本体(51B)と、センサ本体(51B)から突き出る突出部(51A)であってボールリテーナ(32)のピン貫通孔(32A)を通って受け面から突出する突出部(51A)と、を有する。ボールリテーナ(32)に押し付けられたボール部(22A)により突出部(51A)が押し込まれることで、圧力センサ(5)が、突出部(51A)の押し込み量によって接地面(F)から接地部材(103)にかかる垂直抗力の大きさを測定する。
【0093】
このような構成となっていることにより、非当接状態のボール部(22A)が接地部材(103)の接地に伴いボールリテーナ(32)に当接するように押し付けられることで、突出部(51A)がボール部(22A)によって押し込まれる。これにより、接地部材(103)が接地面(F)を押す力を圧力センサ(5)が検知することで、その反力である接地面(F)から接地部材(103)に掛けられる垂直抗力を合理的に検知することができる。
【0094】
また、弾性体(104)は、ボール部(22A)の回転中心を取り巻くように螺旋状に延びて、各側の端部が連結部材(102)と接地部材(103)とに剛接合される一本の圧縮コイルばね(104)とされる。このような構成となっていることにより、一本の圧縮コイルばね(104)により、連結部材(102)と接地部材(103)とを所定位置に弾性的に保持させることができる。また、ボール部(22A)をボールリテーナ(32)に対して非当接状態で組み付けるように保持させることができる。
【0095】
また、ボール部(22A)が、非当接状態において、ボールリテーナ(32)の凹部領域に入り込むように保持される。このような構成となっていることにより、接地部材(103)の接地時にボール部(22A)がボールリテーナ(32)に対して適切に嵌合するように外れにくくすることができる。
【0096】
<その他の実施形態>
以上、本発明を2つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態の他に各種の形態で実施することができるものである。
【0097】
1.ボールジョイントは、球状のボール部を備える第1部材が接地面に接地される接地部材とされ、ボールリテーナを備える第2部材が接地面上を移動する脚部の先に連結される連結部材とされる構成であっても良い。上記実施形態では、接地面上を移動するように動かされる脚部として、ロボットの脚部を例示したが、脚部は、人が地面を歩行する際の助けとして使われる杖であっても良い。また、脚部は、フロア以外の接地面に当てられる各種アームであっても良い。接地面は、立壁面や天井面など、フロア以外の面であっても良い。その他、ボールジョイントは、その取り付ける対象や取り付ける位置は特に限定されず、二つの部材を互いに揺動可能に連結する関節部として設けられるものであれば、どのような構成に設けられるものであっても良い。
【0098】
2.脚部は、接地面に対して斜めの姿勢で動かされるものであっても良いし、接地面に対して垂直な姿勢で動かされるものであっても良い。また、脚部は、接地面に対して斜めの姿勢のまま接地面に対して垂直に着地されたり離地されたりするものであっても良い。接地面は、凹凸を有したり傾斜したり湾曲したりするものであっても良い。上記のような場合でも、ボールジョイントは、第1部材を第2部材に対して傾動させることで、脚部を接地面に対して適切に着地させたり離地させたりすることができる。
【0099】
3.第1部材は、そのボール部の支えにスタッド部を有しない構成であっても良い。ボールスタッドは、くびれ部を有しない構成であっても良い。ボール部は、第2部材よりも第1部材に近い位置に配置されるものであってもよい。スタッド部は、軸径が一様な寸胴形状から成るものであっても良いし、段差状の形から成るものであっても良い。第1部材は、平板形状でなく曲げ板形状であっても良い。また、第1部材は、円板形状でなく角板形状であっても良い。連結部材は、対向側面取り部を有しない構成であっても良い。
【0100】
4.第2部材のボールリテーナは、凹湾曲面形状の受け面を有しなくても良く、ボール部に対して点や線で当接して球面に対して摺動するものであっても良い。ボールリテーナは、接地面から遠い位置に受け面を有しても良い。接地面に接地される接地部材は、接地面に押し当てられることで接地面に吸着する吸盤を備える構成であっても良い。接地部材は、平板形状でなく湾曲した形状であっても良い。また、接地部材は、円板形状でなく矩形状であっても良い。接地部材は、接地側面取り部を有しない構成であっても良い。
【0101】
5.弾性体は、第1部材を第2部材に対して傾動させた状態で弾性的に保持するものであっても良い。弾性体は、圧縮ばねやトーションばね等の引張ばね以外のばねであっても良い。また、ゴム等のばね以外の弾性体であっても良い。弾性体の第1部材及び第2部材に対する連結は、単にばねの端部を引っ掛けるようないわゆるピン接合の連結であっても良いが、ばねやゴムの端部を一体的に結合するようないわゆる剛接合の連結であっても良い。弾性体は、3本の他、2本や4本以上の数で複数設けられても良いし、1本だけ設けられても良い。
【0102】
6.センサは、力の大きさを検知する圧力センサの他、オンオフで接地の判定のみを行う接触式のセンサであっても良い。センサは、接地部材の底面に設けられて接地面に接触したり突出部が押し込まれたりする構成であっても良い。ボールリテーナの受け面の裏側に設けられる圧力センサは、突出部がボール部に向かって受け面側に延び出る構成であれば、上記受け面に沿ったボールリテーナの底部以外の箇所に設けられても良い。
【符号の説明】
【0103】
1 ボールジョイント
2 連結部材(第1部材)
21 連結側円板部
21A 張出部
21B 対向側面取り部
22 ボールスタッド
22A ボール部
22B スタッド部
22C くびれ部
23 締結ねじ
24 連結側係止部
3 接地部材(第2部材)
31 接地側円板部
31A 接地側面取り部
32 ボールリテーナ
33 接地側係止部
4 引張ばね(弾性体)
R ロボット
RL 脚部
C 回転中心
F フロア(接地面)
101 ボールジョイント
102 連結部材
25 連結側係止孔
103 接地部材
31B 接地側係止孔
31C ネジ貫通孔
31D 切欠
32A ピン貫通孔
34 ケース
34A ネジ孔
34B 切欠
5 圧力センサ(センサ)
51 センサ部
51A 突出部
51B センサ本体
52 基板部
52A 貫通孔
53 端子部
104 圧縮コイルばね(弾性体)
図1
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