(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105730
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】流通品質管理システム、流通品質管理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0833 20230101AFI20230724BHJP
【FI】
G06Q10/08 306
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006728
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000153546
【氏名又は名称】ロジスティード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】川口 寅雄
(72)【発明者】
【氏名】和田 芳昭
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 武彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 総志郎
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA16
5L049CC51
(57)【要約】 (修正有)
【課題】GDPに関するデータを時系列で管理し、このGDPに関するデータを容易に把握する流通品質管理システム、流通品質管理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】医薬品の流通品質を管理する流通品質管理システムは、医薬品の正規流通関係者間で取決めされた業務の契約データを取得し、取得した契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出し、業務中の医薬品の輸送・保管に関する流通管理データを、医薬品の識別情報とともに取得し、抽出した規定と、取得した流通管理データとを照合し、照合結果を医薬品の識別情報とともに記録し、契約データ、流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つを時系列で記録する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品の流通品質を管理する流通品質管理システムであって、
前記医薬品の正規流通関係者間で取決めされた業務の契約データを取得する契約データ取得部と、
取得した前記契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出する抽出部と、
業務中の前記医薬品の輸送・保管に関する流通管理データを、前記医薬品の識別情報とともに取得する流通管理データ取得部と、
抽出した前記規定と、取得した前記流通管理データとを照合する照合部と、
照合結果を前記医薬品の識別情報とともに記録する照合結果記録部と、
前記契約データ、前記流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つを時系列で記録する追跡記録部と、
を備える流通品質管理システム。
【請求項2】
前記業務は、前記医薬品に関する、製造、保管、輸送、販売、廃棄及び返却を含む、
請求項1に記載の流通品質管理システム。
【請求項3】
前記規定が、貯法、偽薬流入防止策及び窃盗防止策の少なくとも一つを含む、
請求項1に記載の流通品質管理システム。
【請求項4】
医薬品の流通品質を管理するコンピュータが実行する流通品質管理方法であって、
前記医薬品の正規流通関係者間で取決めされた業務の契約データを取得するステップと、
取得した前記契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出するステップと、
業務中の前記医薬品の輸送・保管に関する流通管理データを、前記医薬品の識別情報とともに取得するステップと、
抽出した前記規定と、取得した前記流通管理データとを照合するステップと、
照合結果を前記医薬品の識別情報とともに記録するステップと、
前記契約データ、前記流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つを時系列で記録するステップと、
を備える流通品質管理方法。
【請求項5】
医薬品の流通品質を管理するコンピュータに、
前記医薬品の正規流通関係者間で取決めされた業務の契約データを取得するステップ、
取得した前記契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出するステップ、
業務中の前記医薬品の輸送・保管に関する流通管理データを、前記医薬品の識別情報とともに取得するステップ、
抽出した前記規定と、取得した前記流通管理データとを照合するステップ、
照合結果を前記医薬品の識別情報とともに記録するステップ、
前記契約データ、前記流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つを時系列で記録するステップ、
を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の流通品質の管理に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、最終受益者である患者が安心して医薬品を利用できるよう、医薬品の完全性(医薬品が製造販売承認に基づき製造され、市場出荷された状態を維持し、品質の劣化、改ざん、破壊されないことをいう)を保持するため、医薬品の所有者は、流通過程(保管及び輸送)における保証が求められており、GDP(Good Distribution Practices)ガイドラインが、日本でも策定された。このGDPガイドラインにおいて、医薬品の流通経路の管理を保証するため、貯法(例えば、温度、湿度、光等の環境管理)、セキュリティ(例えば、偽薬流入防止策、窃盗防止策)、作業履歴(例えば、作業手順、作業記録)等の文書の記録及び管理が求められている。
例えば、特許文献1では、医薬品の再販売のために、環境条件に関する情報を取得し、物流業者や卸売業者と環境条件に関する情報を連携する技術が提供されている。
また、他には、特許文献2では、輸送中の各種データを特定のユーザから変更不可能な状態で記録し、GDPを準拠することについての技術が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-204200号公報
【特許文献2】特開2019-28965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医薬品の流通過程では、医薬品メーカ、医薬品卸、物流・配送会社等様々な関係者が存在する。すなわち、流通に関わる関係者の各々が、各担当過程で医薬品を管理し、流通の品質を保証する状況である。医薬品の管理は、関係者間で締結する契約に基づいており、医薬品の所有者(「品質責任者」ともいう)は、関係者全体がこの契約を適切に履行し、医薬品が適切な管理状況であったかどうかを確認したいという要望がある。通常、医薬品の所有者が、契約の履行状況や医薬品の管理状況を確認しようとする場合、関係者の各々に確認する必要があり、確認作業が煩雑となっている。
そのため、各関係者のGDPに関するデータの確認作業を簡略化する技術が求められている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の技術では、いわゆる品質責任者は、各関係者のGDPに関するデータを、輸送・保管等の作業を依頼した関係者の各々に対して個別に確認する必要があり、確認作業の簡略化に繋がるものではなかった。
そこで、本発明者らは、各関係者のGDPに関するデータの確認作業を簡略化する仕組みが必要であることに着目した。
【0005】
本発明は、医薬品に関する契約データから輸送・保管に関する規定を抽出し、医薬品の流通作業中に生じた輸送・保管に関係するデータを時系列(トレーサビリティ)で管理し、これらのデータから、その医薬品の流通過程が、例えば、GDPに準拠していることを容易に把握することを可能にする流通品質管理システム、流通品質管理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、医薬品の流通品質を管理する流通品質管理システムであって、
前記医薬品の正規流通関係者間で取決めされた業務の契約データを取得する契約データ取得部と、
取得した前記契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出する抽出部と、
業務中の前記医薬品の輸送・保管に関する流通管理データを、前記医薬品の識別情報とともに取得する流通管理データ取得部と、
抽出した前記規定と、取得した前記流通管理データとを照合する照合部と、
照合結果を前記医薬品の識別情報とともに記録する照合結果記録部と、
前記契約データ、前記流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つを時系列で記録する追跡記録部と、
を備える流通品質管理システムを提供する。
【0007】
本発明によれば、医薬品の流通品質を管理する流通品質管理システムは、前記医薬品の正規流通関係者間で取決めされた業務の契約データを取得し、取得した前記契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出し、業務中の前記医薬品の輸送・保管に関する流通管理データを、前記医薬品の識別情報とともに取得し、抽出した前記規定と、取得した前記流通管理データとを照合し、照合結果を前記医薬品の識別情報とともに記録し、前記契約データ、前記流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つを時系列で記録する。
【0008】
本発明は、システムのカテゴリであるが、方法及びプログラムであっても同様の作用、効果を奏する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、医薬品に関する契約データ、業務中に生じた輸送・保管に関係するデータを時系列で管理し、これらのデータから、流通過程が、例えば、GDPに準拠していることを容易に把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】流通品質管理システム1の概要を説明する図である。
【
図2】GDPガイドラインの概要を説明する図である。
【
図3】流通品質管理システム1の機能構成を示す図である。
【
図4】流通品質管理システム1が実行する契約データ管理処理のフローチャートを示す図である。
【
図5】流通品質管理システム1が実行する流通管理データ管理処理のフローチャートを示す図である。
【
図6】流通品質管理システム1が実行する照合処理のフローチャートを示す図である。
【
図7】インシデント発生通知40の一例を模式的に示した図である。
【
図8】流通品質管理システム1が実行する追跡記録処理のフローチャートを示す図である。
【
図9】分散管理台帳を用いた記録方法を実行する場合のシステム構成の一部を示す図である。
【
図10】格納部50に保持されるデータの一例を示す概念図である。
【
図11】流通品質管理システム1が実行する提供処理のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以降の図においては、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号または符号を付している。
【0012】
[基本概念/基本構成]
図1は、流通品質管理システム1の概要を説明するための図である。流通品質管理システム1は、少なくともコンピュータ10を備える医薬品の流通品質を管理するシステムである。
本実施形態では、流通品質管理システム1は、クラウド等で実現されるコンピュータ10と、製造、保管、輸送の各業務を担当する原薬工場、輸入会社、製薬工場、配送会社、製造会社倉庫、卸会社倉庫(これらの倉庫は、所定の物流会社が所有して良い)の担当者3に入出力させるための担当者コンピュータ20と、荷主となる医薬品の所有者等の本システムの利用者が管理する利用者端末30と、データ通信可能に接続されるシステムである。
【0013】
本実施形態では、前提として、医薬品の製造、保管及び/又は輸送等の業務に関するものであり、各担当者3同士(例えば、製薬工場と製造会社倉庫を運営する物流会社等)が、各々所定の契約を締結しており、各過程を担当する担当者3が、この契約に基づいた業務を行うものである。
【0014】
本発明の流通品質管理システム1と、GDPガイドラインの関係について説明する。
図2に示すように、GDPガイドラインは、医薬品の適正流通を図るため、製造者から薬局、店舗・配置販売業者、医療機関までの流通過程における医薬品の完全性を保証することを目的として、医薬品の完全性が保持されるための手法を定めるものであり、流通に関わる製造販売業者、卸売販売業者、輸送や保管等の業務委託される物流会社や配送会社が関与する。実際の流通の形態によって、卸売販売業者や他の物流会社や輸送会社が介在しないこともある。
なお、GDPガイドラインの適用範囲としては、
図2のように原料メーカを含まないのが原則であるが、以下の実施形態では、
図1のように原薬工場からの出荷を含む態様で説明する。
本発明にかかる流通品質管理システム1においては、原料メーカを含んでいてもいなくても構わない。無論、流通の形態によって、卸売販売業者を含まない場合もあれば、卸売販売業者が自社範囲の流通品質を独自に管理する場合には、製造者を含まない場合もある。
【0015】
流通品質管理システム1が、契約データ、流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つを時系列で記録する場合の処理ステップの概要について、
図1に基づいて説明する。
【0016】
コンピュータ10は、医薬品の正規流通関係者間で取決めされた業務の契約データを取得する(ステップS1)。
契約データは、医薬品の正規流通関係者である担当者3間での医薬品に関する、製造、保管、輸送、販売、廃棄及び返却等の業務の一部又は全部における品質保持のための規定が記載されたデータであり、所定のデータ形式(例えば、PDF(Portable Document Format)、文書ファイル、画像ファイル)である。なお、廃棄については、医薬品に不具合があったときに、メーカ、又は医薬品の所有者等、契約で取り決められた責任を有する関係者によって判断・決定される。なお、医薬品の不具合には、当該医薬品の流通品質を含んでいる。
契約データは、例えば、基本契約書、品質協定書、品質協定書記載の規定の具体策である。この具体策は、例えば、貯法、セキュリティ、作業履歴、教育訓練、変更管理、逸脱管理、衛生管理、リスク管理である。
担当者コンピュータ20は、担当者3間で締結された契約データを、コンピュータ10に送信する。
コンピュータ10は、この契約データを受信することにより、業務の契約データを取得する。
【0017】
コンピュータ10は、取得した契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出する(ステップS2)。
輸送・保管に関する規定は、例えば、温度管理等の貯法、偽薬流入防止策や窃盗防止策等のセキュリティ、作業手順や作業記録等の作業履歴である。
コンピュータ10は、取得した契約データに対して、文字認識や画像解析等を実行することにより、契約データの内容を特定する。コンピュータ10は、予め設定された所定の文字列等に基づいて、特定した契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出する。コンピュータ10は、各契約データから、各契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出する。
ここで、規定とは、例えば、以下のような文書である「医薬品Xは-200度以下で保管すること」。規定を抽出するために予め抽出するキーワードを設定しておいて良い。
【0018】
コンピュータ10は、業務中の医薬品の輸送・保管に関する流通管理データを、医薬品の識別情報とともに取得する(ステップS3)。
流通管理データは、例えば、温度管理等の貯法、偽薬流入防止策や窃盗防止策等のセキュリティ、作業手順や作業記録等の作業履歴の各々に関するデータであり、換言すると流通品質データである。医薬品の識別情報は、個品である医薬品毎(梱包毎を含む)の識別情報であるが、製造ロット毎の識別情報であっても良い。
一方、担当者コンピュータ20や配送トラック、倉庫等に設置されたセンサ等は、業務中(配送中や保管中)の医薬品の流通管理データ(例えば、配送中や保管中の温度データ)を、医薬品の識別情報とともにコンピュータ10に送信する。
コンピュータ10は、この流通管理データを、医薬品の識別情報とともに受信することにより、業務中の輸送・保管に関する流通管理データを、医薬品の識別情報とともに取得する。
なお、コンピュータ10は、担当者コンピュータ20を介さず、この流通管理データを、医薬品の識別情報とともにセンサや記録計等から取得しても良い。
【0019】
コンピュータ10は、抽出した規定と、取得した流通管理データとを照合する(ステップS4)。
コンピュータ10は、同一業務における契約データから抽出した輸送・保管に関する規定と、取得した流通管理データとを照合し、照合結果が、規定を満足するものであるかどうかを確認する。例えば、抽出した規定:「医薬品Xは-200度以下で保管すること」を、取得した業務中の流通管理データ(契約データに決められた期間での温度)と照合して、-200度以下で配送保管されたかを確認する。
【0020】
コンピュータ10は、照合結果を医薬品の識別情報とともに記録する(ステップS5)。
【0021】
コンピュータ10は、契約データ、流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つを時系列で記録する(ステップS6)。
【0022】
コンピュータ10は、記録した契約データ、流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つを、利用者に提供する(ステップS7)。
コンピュータ10は、利用者端末30から、記録したデータの提供要求を取得する。コンピュータ10は、取得した提要要求に基づいて、記録したデータを、利用者端末30に送信する。利用者端末30は、このデータを受信し、自身の表示部に表示する。
【0023】
このような流通品質管理システム1によれば、GDPに関するデータを時系列で管理するため、このGDPに関するデータを容易に把握することが可能となる。
【0024】
[機能構成]
図3に基づいて、流通品質管理システム1の機能構成について説明する。
流通品質管理システム1は、少なくともコンピュータ10を備え、コンピュータ10が、各業務を担当する各担当者の各々が管理する担当者コンピュータ20、担当者や医薬品の所有者等の利用者が管理する利用者端末30と、公衆回線網やイントラネット等のネットワーク9を介して、データ通信可能に接続される。
流通品質管理システム1は、コンピュータ10に加え、担当者コンピュータ20、利用者端末30、その他の端末や装置類等が含まれていても良い。この場合、流通品質管理システム1は、後述する処理を、含まれるコンピュータや端末や装置類等の何れか又は複数の組み合わせにより実行する。
【0025】
コンピュータ10は、医薬品の輸送・保管に関する規定を管理するサーバ機能を有するコンピュータやパーソナルコンピュータ等である。
コンピュータ10は、例えば、1台のコンピュータで実現されても良いし、クラウドコンピュータのように、複数のコンピュータで実現されても良い。本明細書におけるクラウドコンピュータとは、ある特定の機能を果たす際に、任意のコンピュータをスケーラブルに用いるものや、あるシステムを実現するために複数の機能モジュールを含み、その機能を自由に組み合わせて用いるものの何れであっても良い。
【0026】
コンピュータ10は、制御部として、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、通信部として、他の端末や装置等と通信可能にするためのデバイス、契約データを取得する契約データ取得部11、流通管理データを取得する流通管理データ取得部12等を備える。
また、コンピュータ10は、記録部として、ハードディスクや半導体メモリ、記録媒体、メモリカード等によるデータのストレージ部、規定と流通管理データとの照合結果を記録する照合結果記録部13、データを時系列で記録する追跡記録部14等を備える。
また、コンピュータ10は、処理部として、各種処理を実行する各種デバイス、契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出する抽出部15、規定と流通管理データとを照合する照合部16等を備える。
【0027】
コンピュータ10において、制御部が所定のプログラムを読み込むことにより、通信部と協働して、契約データ取得モジュール、流通管理データ取得モジュール、通知モジュール、提供要求取得モジュール、提供モジュールを実現する。
また、コンピュータ10において、制御部が所定のプログラムを読み込むことにより、記録部と協働して、契約データ記録モジュール、流通管理データ記録モジュール、照合結果記録モジュール、追跡記録モジュールを実現する。
また、コンピュータ10において、制御部が所定のプログラムを読み込むことにより、処理部と協働して、抽出モジュール、生成モジュール、照合モジュール、判断モジュール、並び替えモジュール、特定モジュールを実現する。
【0028】
担当者コンピュータ20は、各担当者が管理するサーバ機能を有するコンピュータやパーソナルコンピュータ等である。担当者コンピュータ20は、上述したコンピュータ10と同様に、制御部として、CPU、GPU、RAM、ROM等を備え、通信部として、他の端末や装置等と通信可能にするためのデバイス等を備え、処理部として、各種処理を実行する各種デバイス等を備える。
【0029】
利用者端末30は、利用者が管理する携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の携帯端末やパーソナルコンピュータ等の端末装置であり、端末制御部として、CPU、GPU、RAM、ROM等を備え、通信部として、他の端末や装置等と通信可能にするためのデバイス等を備え、入出力部として、データの入出力を実行する各種デバイス等を備える。
【0030】
以下、流通品質管理システム1が実行する各処理について、上述した各モジュールが実行する処理と併せて説明する。
本実施形態では、前提として、医薬品の製造、保管及び/又は輸送の業務に関するものであり、各担当者同士が、所定の契約を締結しており、各担当者が、この契約に基づいた業務を行うものである。
【0031】
[コンピュータ10が実行する契約データ管理処理]
図4に基づいて、コンピュータ10が実行する契約データ管理処理について説明する。同図は、コンピュータ10が実行する契約データ管理処理のフローチャートを示す図である。本契約データ管理処理は、上述した契約データの取得処理(ステップS1)、輸送・保管に関する規定の抽出処理(ステップS2)の詳細である。本契約データ管理処理は、担当者間の契約締結時、業務の開始前、業務中等において、適宜行われ、少なくとも後述する流通管理データ管理処理の前又は同時に行われる処理である。
【0032】
契約データ取得モジュールは、医薬品の正規流通関係者間で取決めされた業務の契約データを取得する(ステップS10)。
契約データは、医薬品の正規流通関係者である担当者間での医薬品に関する、製造、保管、輸送、販売、廃棄及び返却等の業務の一部又は全部における流通品質保持のための輸送・保管に関する規定が記載された契約に関するデータであり、所定のデータ形式(例えば、PDF、文書ファイル、画像ファイル)である。なお、契約データのデータ形式は、上述した例に限定されるものではない。また、廃棄については、医薬品及びその流通品質に不具合があったときに、廃棄の決定をメーカ、又は医薬品の所有者等契約で取り決められた責任者が判断し、決定を行う。
契約データは、例えば、基本契約書、品質協定書、品質協定書記載の規定の具体策である。この具体策は、例えば、貯法、セキュリティ、作業履歴、教育訓練、変更管理、逸脱管理、衛生管理、リスク管理である。貯法は、例えば、温度、湿度、光等の環境管理策である。セキュリティは、例えば、偽薬流入防止策及び窃盗防止策である。偽薬流入防止策は、例えば、製品や梱包への偽造防止技術の導入であり、窃盗防止策は、例えば、立入規制、目的外での輸送車両の扉の開閉規制、医薬品の容器の開封規制、保管場所等への立入規制、輸送中の荷崩れ防止策である。作業履歴は、例えば、流通加工作業における作業手順や作業記録である。変更管理は、例えば、拠点、配送会社、設備の管理である。逸脱管理は、例えば、温度管理である。衛生管理は、例えば、防虫、清掃管理である。リスク管理は、変更によるリスクの洗い出し及びその対策等である。なお、契約データは、医薬品の製造、保管、輸送に際して、医薬品の流通品質保持のための規定に関するデータであれば良く、これらの一部のみであっても良いし、これ以外のものであっても良い。
担当者コンピュータ20は、担当者間で締結された契約データを、コンピュータ10に送信する。具体的には、担当者コンピュータ20は、原料メーカと、医薬品製造会社との間で締結された契約データ、原料メーカと、配送会社との間で締結された契約データ、医薬品製造会社と、物流センタとの間で締結された契約データ、医薬品製造会社と、配送会社との間で締結された契約データ、物流センタと、医薬品卸との間で締結された契約データ、物流センタと、配送会社との間で締結された契約データ、医薬品卸と、配送会社との間で締結された契約データの各々を、コンピュータ10に送信する。
契約データ取得モジュールは、これらの契約データを受信することにより、業務の契約データを取得する。
なお、担当者の種類及び数は、上述した例に限定されるものではない。加えて、契約データは、2者により締結される契約のデータに限らず、3者以上により締結される契約のデータであっても良い。
【0033】
抽出モジュールは、取得した契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出する(ステップS11)。
輸送・保管に関する規定は、例えば、温度管理等の貯法、偽薬流入防止策や窃盗防止策等のセキュリティ、作業手順や作業記録等の作業履歴である。
抽出モジュールは、取得した契約データに対して、文字認識や画像解析等を実行することにより、契約データの内容を特定する。抽出モジュールは、予め設定された所定の文字列等に基づいて、特定した契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出する。抽出モジュールは、各契約データから、各契約データ内の輸送・保管に関する規定を各々抽出する。
なお、抽出モジュールが抽出する輸送・保管に関する規定は、貯法、偽薬流入防止策及び窃盗防止策の内の少なくとも一つを含むものであれば良い。また、抽出モジュールが抽出する輸送・保管に関する規定は、上述した例に限定されるものではない。
【0034】
契約データ記録モジュールは、取得した契約データ及び抽出した規定を記録する(ステップS12)。
契約データ記録モジュールは、各契約データと、各契約データから抽出した輸送・保管に関する規定と、各契約データの担当者の識別子とを関連付けて記録する。
なお、契約データ記録モジュールは、取得した契約データのみを記録する構成であっても良いし、抽出した規定のみを記録する構成であっても良い。
【0035】
以上が、契約データ管理処理である。
コンピュータ10は、上述した契約データ管理処理により記録する契約データ及び規定を用いて、後述する処理を実行する。
【0036】
[コンピュータ10が実行する流通管理データ管理処理]
図5に基づいて、コンピュータ10が実行する流通管理データ管理処理について説明する。同図は、コンピュータ10が実行する流通管理データ管理処理のフローチャートを示す図である。本流通管理データ管理処理は、上述した流通管理データの取得処理(ステップS3)の詳細である。本流通管理データ管理処理は、業務中において、随時行われる処理である。
【0037】
流通管理データ取得モジュールは、業務中の医薬品の輸送・保管に関するデータ(流通管理データ)を、医薬品の識別情報とともに取得する(ステップS20)。
流通管理データは、例えば、貯法、セキュリティ、作業履歴の各々に関するデータであり、本実施形態では、貯法に関するデータが、温度データであり、セキュリティに関するデータが、製品や梱包への偽造防止、医薬品の容器の開封、目的地以外での輸送車両の扉の開閉、保管場所への立入者の記録等に関するデータであり、作業履歴に関するデータが、作業手順、作業記録等の文書データである。なお、流通管理データは、上述した例に限定されるものではなく、医薬品の輸送・保管の管理に必要なデータであれば良く、これらの一部のみであっても良いし、これら以外のものであっても良い。
医薬品の識別情報は、個品である医薬品毎(梱包毎を含む)の識別情報であるが、製造ロット毎の識別情報であっても良い。
担当者コンピュータ20は、業務中に生じた輸送・保管に関するデータである医薬品の流通管理データを、医薬品の識別情報とともにコンピュータ10に送信する。具体的には、温度、湿度、受光、振動等を種々のセンサにより得たデータであり、担当者コンピュータ20は、原料メーカが製造する医薬品原料の製造及び保管時のデータ、原料メーカが製造した医薬品原料の医薬品製造会社への輸送時のデータ、医薬品製造会社が製造する医薬品の製造及び保管時のデータ、医薬品製造会社が製造した医薬品の物流センタへの輸送時のデータ、物流センタが保管する医薬品の保管時のデータ、物流センタが保管する医薬品の医薬品卸への輸送時のデータ、医薬品卸が所有する医薬品の保管時のデータ、医薬品卸が販売する医薬品の医療機関への輸送時のデータの各々を、計測した時刻・時間及び医薬品の識別情報とともにコンピュータ10に送信する。
流通管理データ取得モジュールは、これらの流通管理データを、医薬品の識別情報とともに受信することにより、業務中の医薬品の輸送・保管に関する流通管理データを、医薬品の識別情報とともに取得する。
なお、流通管理データ取得モジュールは、担当者コンピュータ20を介さず、これらの流通管理データを、医薬品の識別情報とともにセンサや記録計等から取得しても良い。
【0038】
貯法に関するデータを取得する場合について、温度データを例として説明する。
担当者コンピュータ20は、業務中の温度データを、常時、コンピュータ10に送信する。この温度データは、保管時の保管場所の温度データ、輸送時の荷室の温度データである。
流通管理データ取得モジュールは、この温度データを受信することにより、温度データを取得する。
セキュリティに関するデータを取得する場合について、偽薬流入防止及び窃盗防止に関するデータを例として説明する。
担当者コンピュータ20は、業務中の医薬品の容器の開封の有無を示すデータ(開封された場合、その日時及び場所)、業務中の目的地以外での輸送車両の扉の開閉の有無を示すデータ(開閉された場合、その日時及び場所)、業務中の保管場所の立入者の有無を示すデータ(立入者が存在する場合、その日時及び場所)を、常時、コンピュータ10に送信する。
流通管理データ取得モジュールは、これらのデータを受信することにより、偽薬流入防止及び窃盗防止に関するデータを取得する。
作業履歴に関するデータを取得する場合について、作業手順や作業記録の文書データを例として説明する。
担当者コンピュータ20は、業務中に行われた作業手順や作業記録の文書データを、常時、コンピュータ10に送信する。
流通管理データ取得モジュールは、この文書データを受信することにより、作業手順や作業記録の文書データを取得する。
【0039】
生成モジュールは、取得した流通管理データの変動ログを生成する(ステップS21)。
変動ログは、取得した流通管理データの変動の記録である。
生成モジュールは、各流通管理データにおける変動ログの各々を生成する。
生成モジュールは、温度データについての変動ログを生成する。生成モジュールは、温度データの変動を随時記録したものを変動ログとして生成する。また、生成モジュールは、保管場所や荷室の温度データに基づいたサーマルマップを変動ログとして生成する。
生成モジュールは、医薬品容器の開封、目的地以外での輸送車両の扉の開閉、保管場所の立入者の各々についての変動ログを生成する。生成モジュールは、医薬品容器の開封の有無、目的地以外での輸送車両の扉の開閉の有無、保管場所の立入者の有無の各々を、随時記録したものを変動ログとして生成する。
生成モジュールは、作業手順や作業記録の文書データについての変動ログを生成する。生成モジュールは、作業手順や作業記録の文書データの変動を随時記録したものを変動ログとして生成する。
【0040】
流通管理データ記録モジュールは、取得した流通管理データ及び医薬品の識別情報を記録する(ステップS22)。
流通管理データ記録モジュールは、取得した各流通管理データと、この各流通管理データから生成した変動ログと、業務を行う担当者の識別子と、医薬品の識別情報とを関連付けて記録する。
なお、流通管理データ記録モジュールは、流通管理データ及び医薬品の識別情報のみを記録する構成であっても良いし、変動ログ及び医薬品の識別情報のみを記録する構成であっても良い。
【0041】
以上が、流通管理データ管理処理である。
コンピュータ10は、上述した流通管理データ管理処理により記録する流通管理データを用いて、後述する処理を実行する。
【0042】
[コンピュータ10が実行する照合処理]
図6に基づいて、コンピュータ10が実行する照合処理について説明する。同図は、コンピュータ10が実行する照合処理のフローチャートを示す図である。本照合処理は、上述した規定と流通管理データとの照合処理(ステップS4)、照合結果の記録処理(ステップS5)の詳細である。本照合処理は、上述した流通管理データ管理処理と同時に行われる処理である。
【0043】
照合モジュールは、抽出した規定と、取得した流通管理データとを照合する(ステップS30)。
照合モジュールは、上述した契約データ管理処理により抽出した輸送・保管に関する規定と、上述した流通管理データ管理処理により取得した流通管理データとを照合する。この時、同一業務における輸送・保管に関する規定と、流通管理データとを照合する。すなわち、照合モジュールは、原料メーカが製造する医薬品原料の製造及び保管時の規定と、この時の流通管理データとを照合し、原料メーカが製造した医薬品原料の医薬品製造会社への輸送時の規定と、この時の流通管理データとを照合し、医薬品製造会社が製造する医薬品の製造及び保管時の規定と、この時の流通管理データとを照合し、医薬品製造会社が製造した医薬品の物流センタへの輸送時の規定と、この時の流通管理データを照合し、物流センタが保管する医薬品の保管時の規定と、この時の流通管理データとを照合し、物流センタが保管する医薬品の医薬品卸への輸送時の規定と、この時の流通管理データとを照合し、医薬品卸が所有する医薬品の保管時の規定と、この時の流通管理データとを照合し、医薬品卸が販売する医薬品の医療機関への輸送時の規定と、この時の流通管理データとを照合する。
【0044】
判断モジュールは、照合結果が、規定を満足するものであるかどうかを判断する(ステップS31)。
判断モジュールは、規定で定められた状態に、流通管理データがあるかどうかを判断する。判断モジュールは、例えば、貯法、セキュリティ又は作業履歴が、規定で定められた状態であるかどうか、すなわち、流通管理データに異常が発生しているかどうかを判断する。
判断モジュールは、温度データ、医薬品容器の開封、目的地以外での輸送車両の扉の開閉、保管場所の立入者、作業手順や作業記録の文書データの各々が、規定で定められた状態から外れているかどうかを、各々、判断する。判断モジュールは、これらの内、規定で定められた状態から外れた状態であるものを、異常として検出し、インシデントが発生したと判断する。
判断モジュールは、取得した温度データが、規定と異なる場合、温度データの異常を検出し、温度データに関するインシデントが発生したと判断する。判断モジュールは、取得した医薬品容器の開封、目的地以外での輸送車両の扉の開閉、保管場所の立入者に関するデータの一部又は全部が、規定と異なる場合、規定と異なる一部又は全部に関するインシデントが発生したと判断する。判断モジュールは、取得した文書データが、規定と異なる場合、作業手順や作業記録の異常を検出し、作業手順や作業記録に関するインシデントが発生したと判断する。なお、判断モジュールは、これら以外の内容についても、同様に、取得した流通管理データが、規定と異なる場合、流通管理データの異常を検出し、インシデントが発生したと判断する。
なお、本処理での規定は、契約データから抽出したものだけでなく、法律やGDPガイドライン等から抽出したものが含まれていても良い。
【0045】
判断モジュールは、照合結果が、規定を満足するものではないと判断した場合(ステップS31 NO)、通知モジュールは、インシデント発生を通知する(ステップS32)。
通知モジュールは、インシデントの発生した日時、状況、場所及び内容等を含むインシデント発生通知を作成する(
図7参照)。日時は、インシデントが発生した日付及び時間である。状況は、インシデントが発生した製造中、保管中、輸送中等の業務の状況である。場所は、インシデントが発生した業務を行う担当者の所在地、又は、輸送中の輸送車両の運行場所等の業務の場所である。内容は、発生したインシデントに関する貯法、セキュリティ、作業履歴等について発生した異常の内容である。
【0046】
[インシデント発生通知]
図7に基づいて、インシデント発生通知について説明する。同図は、インシデント発生通知の一例を模式的に示した図である。同図において、インシデントが、温度に関するものである場合を例として説明する。
通知モジュールは、インシデントの発生した日時、状況、場所及び内容を含むインシデント発生通知40を作成する。
インシデント発生通知40は、インシデントが発生したことを示すメッセージ41、インシデントの発生した日時、状況、場所及び内容を示すインシデント欄42が、各々所定の位置に配置された通知である。メッセージ41は、インシデントが発生したことを示す文字列であり、「インシデント発生!」が示されている。インシデント欄42は、インシデントの発生した日時、状況、場所及び内容を示す文字列である。インシデント欄42は、インシデントの発生した日時として、「日時 20201年10月1日 9:00」が示されており、インシデントの状況として、「状況 保管中」が示されており、インシデントの場所として、「場所 物流センタ」が示されており、インシデントの具体的な内容として、「内容 医薬品Xの保管場所で温度異常が発生しました。」が示されている。
【0047】
図6に戻り、照合処理におけるステップS32の処理の続きを説明する。
通知モジュールは、作成したインシデント発生通知を、インシデントの発生場所を所有又は管理する担当者が管理する担当者コンピュータ20又は利用者端末30に送信する。
担当者コンピュータ20又は利用者端末30は、このインシデント発生通知を受信し、自身の表示部に表示する。
通知モジュールは、インシデント発生通知を、担当者コンピュータ20又は利用者端末30に表示させることにより、発生したインシデントを通知する。
担当者は、このインシデント発生通知を閲覧し、インシデントの発生を把握する。
コンピュータ10は、ステップS32の処理を実行後、後述するステップS33の処理を実行する。
【0048】
ステップS31の処理に戻り、判断モジュールが、照合結果が規定を満足するものであると判断する場合の処理ステップについて説明する。
判断モジュールは、照合結果が、規定を満足するものであると判断した場合(ステップS31 YES)、照合結果記録モジュールは、照合結果を医薬品の識別情報とともに記録する。
照合結果記録モジュールは、各照合結果と、業務を行う担当者の識別子と、医薬品の識別情報とを関連付けて記録する。
ここで、照合結果記録モジュールは、規定を満足するものではなかった場合、各照合結果と、インシデントの発生と、業務を行う担当者の識別子と、医薬品の識別情報とを関連付けて記録する。なお、照合結果記録モジュールは、この場合であっても、各照合結果と、業務を行う担当者の識別子と、医薬品の識別情報とを関連付けて記録する構成であっても良い。
【0049】
以上が、照合処理である。
コンピュータ10は、上述した照合処理により記録する照合結果を用いて、後述する処理を実行する。
【0050】
[コンピュータ10が実行する追跡記録処理]
図8に基づいて、コンピュータ10が実行する追跡記録処理について説明する。同図は、コンピュータ10が実行する追跡記録処理のフローチャートを示す図である。本追跡記録処理は、上述した契約データ、流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つを時系列で記録する処理(ステップS6)の詳細である。本追跡記録処理は、上述した契約データ管理処理、流通管理データ管理処理及び照合処理の後に行われる処理である。
【0051】
並び替えモジュールは、契約データ、流通管理データ及び照合結果を、時系列で並び替える(ステップS40)。
時系列で並び替えるとは、業務順で並び替え、更に、各業務内の日時順に並び替えることを意図するものである。業務順は、原料メーカが製造する医薬品原料の製造及び保管、原料メーカが製造した医薬品原料の医薬品製造会社への輸送、医薬品製造会社が製造する医薬品の製造及び保管、医薬品製造会社が製造した医薬品の物流センタへの輸送、物流センタが保管する医薬品の保管、物流センタが保管する医薬品の医薬品卸への輸送、医薬品卸が所有する医薬品の保管、医薬品卸が販売する医薬品の医療機関への輸送の順である。なお、業務は上述した例に限らず、これ以外の種類や数であっても良い。また、業務順は、上述した例に限らず、適宜変更可能である。
並び替えモジュールは、契約データを、上述した業務順に並び替える。並び替えモジュールは、流通管理データを、上述した業務順に並び替え、各業務における流通管理データを、更に、日時順に並び替える。並び替えモジュールは、照合結果を、上述した業務順に並び替え、更に、日時順に並び替える。
なお、契約データは、契約データそのものに限らず、抽出した規定に関するもののみであっても良いし、契約データと規定との両者であっても良い。
【0052】
追跡記録モジュールは、並び替えた契約データ、流通管理データ及び照合結果を、時系列で記録する(ステップS41)。
追跡記録モジュールは、契約データと担当者の識別子と医薬品の識別情報とを関連付けて、時系列で記録し、流通管理データと業務を行う担当者の識別子と医薬品の識別情報とを関連付けて時系列で記録し、照合結果と業務を行う担当者の識別子と医薬品の識別情報とを関連付けて時系列で記録する。
なお、追跡記録モジュールは、契約データ、流通管理データ及び照合結果全てを時系列で記録するのではなく、少なくとも一つを、時系列で記録する構成であれば良い。
【0053】
以上が、追跡記録処理である。
コンピュータ10は、上述した追跡記録処理により記録した内容を用いて、後述する処理を実行する。
【0054】
[分散管理台帳を用いた記録方法]
上述した契約データ管理処理、流通管理データ管理処理、照合処理及び追跡記録処理の各処理において、コンピュータ10自身が、契約データ、流通管理データ、照合結果の各々を記録する構成として説明しているが、分散管理台帳を用いた記録方法も可能である。この場合について
図9及び
図10を用いて説明する。
【0055】
図9は、コンピュータ10が分散管理台帳を用いた記録方法を実行する場合のシステム構成の一部を示した図である。
流通品質管理システム1は、上述した
図3で示した構成に加えて、コンピュータ10が、複数の格納部50とネットワーク9を介してデータ通信可能に接続される。
【0056】
分散管理台帳を構成する複数の格納部50が分散記録するデータについて、
図10に基づいて説明する。同図は、格納部50に保持されるデータの一例を示す概念図である。分散管理台帳の一例として、ブロックチェーン技術が挙げられる。本実施形態では、上述した各処理により記録した契約データ、流通管理データ及び照合結果を、各格納部50に分散記録させる。なお、契約データ、流通管理データ及び照合結果全てを分散記録させるのではなく、少なくとも一つを、分散記録させる構成も可能である。また、契約データは、契約データそのものに限らず、抽出した規定に関するデータのみであっても良いし、契約データと規定との両者であっても良い。
【0057】
同図において、第nのブロックは、ブロックチェーンの末尾のブロックを表し、第n+1は、第nまでのブロックが登録されたブロックチェーンに対して、追加しようとしている生成中のブロックを表している。第nのブロックは、前ブロックのハッシュ値、ブロックに固有のナンス値、契約データ、流通管理データ及び照合結果を含む。
【0058】
第nまでのブロックが登録されたブロックチェーンに対して、新たなブロックを追加しようとする場合、格納部50は、そのブロックのハッシュ値が特定の条件を満たすようなナンス値を求める計算を行う。格納部50は、計算結果に基づいて、前ブロックのハッシュ値、ナンス値、契約データ、流通管理データ及び照合結果を含む新たなブロックをブロックチェーンに登録する。
【0059】
以上が、分散管理台帳を用いた記録方法である。
なお、本実施形態では、分散管理台帳の一例として、ブロックチェーンを利用した形態について説明したが、本発明における分散管理台帳は、ブロックチェーンに限られるものではない。
【0060】
[コンピュータ10が実行する提供処理]
図11に基づいて、コンピュータ10が実行する提供処理について説明する。同図は、コンピュータ10が実行する提供処理のフローチャートを示す図である。本提供処理は、上述した時系列で記録した契約データ、流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つを、利用者に提供する処理(ステップS7)の詳細である。
【0061】
提供要求取得モジュールは、利用者から、記録したデータの提供要求を取得する(ステップS50)。
利用者端末30は、利用者から、記録したデータの提供要求の入力を受け付ける。記録したデータは、上述した追跡記録処理により時系列で記録した契約データ、流通管理データ及び照合結果であっても良いし、上述した契約データ管理処理により記録した契約データ及び規定、上述した流通管理データ管理処理により記録した流通管理データ、上述した照合処理により記録した照合結果の一部又は全部であっても良い。
利用者端末30は、提供要求が格納された所定のコード(例えば、1次元コード、2次元コード)を読み取ることにより、記録したデータの提供要求の入力を受け付ける。または、利用者端末30は、所定の入力画面において、提供要求の入力を受け付ける。
利用者端末30は、受け付けた提供要求をコンピュータ10に送信する。
提供要求取得モジュールは、この提供要求を受信することにより、利用者から、記録したデータの提供要求を取得する。
【0062】
特定モジュールは、取得した提供要求におけるデータを特定する(ステップS51)。
特定モジュールは、提供要求における利用者が所望したデータを特定する。特定モジュールは、上述した追跡記録処理により時系列で記録した契約データ、流通管理データ及び照合結果、上述した契約データ管理処理により記録した契約データ及び規定、上述した流通管理データ管理処理により記録した流通管理データ、上述した照合処理により記録した照合結果の一部又は全部の内、利用者が所望したデータを特定する。
【0063】
提供モジュールは、特定したデータを利用者に提供する(ステップS52)。
提供モジュールは、特定したデータを、利用者端末30に送信する。
利用者端末30は、このデータを受信し、自身の表示部に表示する。
提供モジュールは、特定したデータを、利用者端末30に表示させることにより、特定したデータを利用者に提供する。
利用者は、このデータを閲覧することにより、自身が所望したデータを把握することが容易となる。
【0064】
以上が、提供処理である。
【0065】
上述した各処理は、別個の処理として記載しているが、コンピュータ10は、上述した各処理の一部又は全部を組み合わせて実行する構成も可能である。また、コンピュータ10は、各処理において、説明したタイミング以外のタイミングであっても、その処理を実行する構成も可能である。
【0066】
上述した手段、機能は、コンピュータ(CPU、情報処理装置、各種端末を含む)が、所定のプログラムを読み込んで、実行することによって実現される。プログラムは、例えば、コンピュータからネットワーク経由で提供される(SaaS:ソフトウェア・アズ・ア・サービス)形態やクラウドサービスで提供されて良い。また、プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形態で提供されて良い。この場合、コンピュータはその記録媒体からプログラムを読み取って内部記録装置又は外部記録装置に転送し記録して実行する。また、そのプログラムを、記録装置(記録媒体)に予め記録しておき、その記録装置から通信回線を介してコンピュータに提供するようにしても良い。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0068】
(1)医薬品の流通品質を管理する流通品質管理システムであって、
前記医薬品の正規流通関係者間で取決めされた業務の契約データを取得する契約データ取得部(例えば、契約データ取得部11、契約データ取得モジュール)と、
取得した前記契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出する抽出部(例えば、抽出部15、抽出モジュール)と、
業務中に生じた前記医薬品の輸送・保管に関する流通管理データを、前記医薬品の識別情報とともに取得する流通管理データ取得部(例えば、流通管理データ取得部12、流通管理データ取得モジュール)と、
抽出した前記規定と、取得した前記流通管理データとを照合する照合部(例えば、照合部16、照合モジュール)と、
照合結果を前記医薬品の識別情報とともに記録する照合結果記録部(例えば、照合結果記録部13、照合結果記録モジュール)と、
前記契約データ、前記流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つを時系列で記録する追跡記録部(例えば、追跡記録部14、追跡記録モジュール)と、
を備える流通品質管理システム。
【0069】
(1)の発明によれば、医薬品に関する契約データから輸送・保管に関する規定を抽出し、医薬品の流通作業中に生じた輸送・保管に関係するデータを時系列(トレーサビリティ)で管理するので、GDPに関するデータを時系列で管理し、GDPに準拠していることを容易に把握することが可能となる。
【0070】
(2)前記業務は、前記医薬品に関する、製造、保管、輸送、販売、廃棄及び返却を含む、
(1)に記載の流通品質管理システム。
【0071】
(2)の発明によれば、GDPガイドラインにおいて要求されるサプライチェーン全体において、医薬品の完全性が保持されているかどうかを容易に確認することができ、流通上の品質保証を支援することが可能となる。
【0072】
(3)前記規定が、貯法、偽薬流入防止策及び窃盗防止策の少なくとも一つを含む、
(1)に記載の流通品質管理システム。
【0073】
(3)の発明によれば、業務中の貯法、偽薬流入防止策及び窃盗防止策の少なくとも一つにおけるGDPに関するデータを時系列で管理し、このGDPに関するデータを容易に把握することが可能となる。
【0074】
(4)医薬品の流通品質を管理するコンピュータが実行する流通品質管理方法であって、
前記医薬品の正規流通関係者間で取決めされた業務の契約データを取得するステップ(例えば、ステップS10)と、
取得した前記契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出するステップ(例えば、ステップS11)と、
業務中の前記医薬品の輸送・保管に関する流通管理データを、前記医薬品の識別情報とともに取得するステップ(例えば、ステップS20)と、
抽出した前記規定と、取得した前記流通管理データとを照合するステップ(例えば、ステップS30)と、
照合結果を前記医薬品の識別情報とともに記録するステップ(例えば、ステップS33)と、
前記契約データ、前記流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つを時系列で記録するステップ(例えば、ステップS41)と、
を備える流通品質管理方法。
【0075】
(5)医薬品の流通品質を管理するコンピュータに、
前記医薬品の正規流通関係者間で取決めされた業務の契約データを取得するステップ(例えば、ステップS10)、
取得した前記契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出するステップ(例えば、ステップS11)、
業務中の前記医薬品の輸送・保管に関する流通管理データを、前記医薬品の識別情報とともに取得するステップ(例えば、ステップS20)、
抽出した前記規定と、取得した前記流通管理データとを照合するステップ(例えば、ステップS30)、
照合結果を前記医薬品の識別情報とともに記録するステップ(例えば、ステップS33)、
前記契約データ、前記流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つを時系列で記録するステップ(例えば、ステップS41)、
を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラム。
【符号の説明】
【0076】
1 流通品質管理システム
3 担当者
9 ネットワーク
10 コンピュータ
20 担当者コンピュータ
30 利用者端末
40 インシデント発生通知
41 メッセージ
42 インシデント欄
50 格納部
【手続補正書】
【提出日】2023-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品の流通品質を管理する流通品質管理システムであって、
前記医薬品の正規流通関係者間で取決めされた業務の契約データを取得する契約データ取得部と、
取得した前記契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出する抽出部と、
業務中の前記医薬品の輸送・保管に関する流通管理データを、前記医薬品の識別情報とともに取得する流通管理データ取得部と、
抽出した前記規定と、取得した前記流通管理データとを照合する照合部と、
照合結果を前記医薬品の識別情報とともに記録する照合結果記録部と、
業務順の並び替え、それに続く各業務の日時順の並び替えに基づく時系列の並び替えを前記契約データ、前記流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つに適用し、当該適用結果を記録する追跡記録部と、
を備える流通品質管理システム。
【請求項2】
前記業務は、前記医薬品に関する、製造、保管、輸送、販売、廃棄及び返却を含む、
請求項1に記載の流通品質管理システム。
【請求項3】
前記規定が、貯法、偽薬流入防止策及び窃盗防止策の少なくとも一つを含む、
請求項1に記載の流通品質管理システム。
【請求項4】
医薬品の流通品質を管理するコンピュータが実行する流通品質管理方法であって、
前記医薬品の正規流通関係者間で取決めされた業務の契約データを取得するステップと、
取得した前記契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出するステップと、
業務中の前記医薬品の輸送・保管に関する流通管理データを、前記医薬品の識別情報とともに取得するステップと、
抽出した前記規定と、取得した前記流通管理データとを照合するステップと、
照合結果を前記医薬品の識別情報とともに記録するステップと、
業務順の並び替え、それに続く各業務の日時順の並び替えに基づく時系列の並び替えを前記契約データ、前記流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つに適用し、当該適用結果を記録するステップと、
を備える流通品質管理方法。
【請求項5】
医薬品の流通品質を管理するコンピュータに、
前記医薬品の正規流通関係者間で取決めされた業務の契約データを取得するステップ、
取得した前記契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出するステップ、
業務中の前記医薬品の輸送・保管に関する流通管理データを、前記医薬品の識別情報とともに取得するステップ、
抽出した前記規定と、取得した前記流通管理データとを照合するステップ、
照合結果を前記医薬品の識別情報とともに記録するステップ、
業務順の並び替え、それに続く各業務の日時順の並び替えに基づく時系列の並び替えを前記契約データ、前記流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つに適用し、当該適用結果を記録するステップ、
を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、医薬品の流通品質を管理する流通品質管理システムであって、
前記医薬品の正規流通関係者間で取決めされた業務の契約データを取得する契約データ取得部と、
取得した前記契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出する抽出部と、
業務中の前記医薬品の輸送・保管に関する流通管理データを、前記医薬品の識別情報とともに取得する流通管理データ取得部と、
抽出した前記規定と、取得した前記流通管理データとを照合する照合部と、
照合結果を前記医薬品の識別情報とともに記録する照合結果記録部と、
業務順の並び替え、それに続く各業務の日時順の並び替えに基づく時系列の並び替えを前記契約データ、前記流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つに適用し、当該適用結果を記録する追跡記録部と、
を備える流通品質管理システムを提供する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明によれば、医薬品の流通品質を管理する流通品質管理システムは、前記医薬品の正規流通関係者間で取決めされた業務の契約データを取得し、取得した前記契約データ内の輸送・保管に関する規定を抽出し、業務中の前記医薬品の輸送・保管に関する流通管理データを、前記医薬品の識別情報とともに取得し、抽出した前記規定と、取得した前記流通管理データとを照合し、照合結果を前記医薬品の識別情報とともに記録し、業務順の並び替え、それに続く各業務の日時順の並び替えに基づく時系列の並び替えを前記契約データ、前記流通管理データ及び照合結果の少なくとも一つに適用し、当該適用結果を記録する。